(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961319
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】二輪車のカーブ走行時の操舵トルクを低減する方法
(51)【国際特許分類】
B62K 21/18 20060101AFI20160719BHJP
B62J 99/00 20090101ALI20160719BHJP
【FI】
B62K21/18
B62J99/00 K
B62J99/00 J
【請求項の数】12
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-503790(P2015-503790)
(86)(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公表番号】特表2015-514039(P2015-514039A)
(43)【公表日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】EP2013052531
(87)【国際公開番号】WO2013149746
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2014年10月3日
(31)【優先権主張番号】102012205520.7
(32)【優先日】2012年4月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】ハース,ハーディ
(72)【発明者】
【氏名】レメイダ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァール,アーニャ
【審査官】
鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−126432(JP,A)
【文献】
特開2009−292258(JP,A)
【文献】
特表2011−507744(JP,A)
【文献】
特開2009−083578(JP,A)
【文献】
特開2012−025181(JP,A)
【文献】
特開昭63−064888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 21/18
B62J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車のカーブ走行時の操舵トルクを低減する方法において、
カーブ走行時に前輪(4)で制動された場合に、カーブ走行を特徴づける少なくとも1つの状態変数の関数であるアダプティブ・ステアリングダンパの減衰度を高め、
カーブ走行を特徴づける前記状態変数が二輪車の傾斜角(φ)であり、該傾斜角(φ)の増大に伴いステアリングダンパの減衰度を高め、
カーブ走行を特徴づける前記状態変数として、ヨーレートを考慮する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記前輪(4)のブレーキトルクの増大に伴いステアリングダンパの減衰度を高める方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
カーブ走行を特徴づける前記状態変数として、操舵角、操舵トルク、および/または車両速度を考慮する方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法において、
所定時間経過後に前記ステアリングダンパの減衰度の変更を取り消す方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法において、
カーブ走行を特徴づける状態変数が所定の閾値を超過した場合にのみ前記ステアリングダンパの減衰度の変更を行う方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法において、
カーブ走行を特徴づける前記状態変数が所定の閾値を下回った場合に、前記ステアリングダンパの減衰度の変更を取り消す方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法を実施するための閉ループもしくは開ループ制御器。
【請求項8】
請求項7に記載の閉ループもしくは開ループ制御器を備える二輪車において、
アダプティブ・ステアリングダンパと、カーブ走行を特徴づける少なくとも1つの状態変数を検出し、前輪(4)に作用するブレーキトルクを検出ためのセンサ装置とを備える二輪車。
【請求項9】
請求項8に記載の二輪車において、
傾斜度(φ)を検出するためのセンサ装置を備える二輪車。
【請求項10】
請求項8または9に記載の二輪車において、
操舵角、操舵トルク、ヨーレート、および/または車両速度を検出するためのセンサ装置を備える二輪車。
【請求項11】
請求項8から10までのいずれか一項に記載の二輪車において、
アンチロック・ブレーキシステム(ABS)を備える二輪車。
【請求項12】
請求項8から11までのいずれか一項に記載の二輪車において、
操舵トルクをアクティブに調節するための操舵トルク調節器を備える二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車のカーブ走行時の操舵トルクを低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車がカーブ走行時に前輪で制動された場合、これにより二輪の操舵軸線を中心として自動二輪車を直立させる操舵妨害トルクが生じる。ドライバはこのような操舵妨害トルクに抵抗する必要があり、さもなければ、二輪車は予定された車線を外れ、事故が発生する。操舵妨害トルクは、傾斜に基づいてタイヤ接触点がタイヤ外周の側部に移動し、ブレーキ力が前輪のタイヤ接触点に作用することにより生じる。傾斜が進むにつれて、摂動力レバーアームが拡大され、これにより二輪車を直立させる不都合な操舵妨害トルクが増大する。タイヤが広幅である場合、摂動力レバーアームおよび操舵妨害トルクはさらに増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の基礎をなす課題は、カーブのブレーキプロセスにおける二輪車の操作性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴により解決される。従属請求項は好ましい他の実施形態を示す。
【0005】
操舵トルクを低減する方法は、モーター付き二輪車、特に自動二輪車のカーブ走行時に同時に二輪車の前輪でブレーキプロセスが行われた場合に関係している。この場合に発生し、二輪車の操舵軸線を中心として作用し、二輪車を直立させようとする操舵妨害トルクを低減し、これにより二輪車の操作性を改善するために、二輪車にはアダプティブ・ステアリングダンパが設けられており、このステアリングダンパの減衰機能は走行時に開ループもしくは閉ループ制御器によって調節することができる。操舵妨害トルクを低減するためには、カーブ走行を特徴づける少なくとも1つの状態変数の関数であるアダプティブ・ステアリングダンパの減衰度が高められ、これにより、操舵妨害トルクのピークが防止され、全体として操舵妨害トルクのレベルが低減される。これに応じて、操舵妨害トルクを補正するためにドライバによって加えられる操舵反力トルクは小さくなり、これにより、客観的および主観的に良好な操作性が得られ、ひいては走行特性が改善される。ドライバにより補正のために操舵動作が行われなくても、カーブ半径の拡大により生じた操舵妨害トルクの結果として二輪車が直立させられ、車線から外れる危険性が低減されている。走行安全性は著しく高められる。
【0006】
基本的に、多種のアダプティブ・ステアリングダンパを使用することができる。例えば、電気流体式、磁性流体式、および油圧式のアダプティブ・ステアリングダンパが考慮され、これらのステアリングダンパの減衰作用は走行時に調節可能である。
【0007】
アダプティブ・ステアリングダンパの減衰度を調節する方法は、二輪車の閉ループもしくは開ループ制御器で行われ、好ましくは、二輪車のセンサ装置は、カーブ走行を特徴づける実際の状態変数に関する情報を供給し、これらの情報は閉ループもしくは開ループ制御器で処理される。アダプティブ・ステアリングタンパは閉ループもしくは開ループ制御器で生成される信号を介して行われる減衰度調節のためのアクチュエータを備える。
【0008】
好ましくは、カーブ走行を特徴づける状態変数は、垂線に対する自動二輪車中心面の傾斜を表す傾斜角である。カーブを通過するために自動二輪車は傾斜され、これにより、タイヤ接触点、すなわちタイヤ接触面の有効中心点は、タイヤ外周の中心から側部へ移動する。しかも前輪が制動され、タイヤ接触点にブレーキ力が有効となった場合に、タイヤ中心との側方間隔は、垂直方向軸線を中心とした操舵妨害トルクをもたらす。傾斜度の増大に伴い、操舵妨害トルクは大きくなり、同様により広幅なタイヤは摂動力レバーアーム、ひいては操舵妨害トルクを増大する。
【0009】
操舵妨害トルクを制限するために、傾斜角の関数であるステアリングダンパの減衰度が調節される。傾斜角の増大に伴い減衰度が高められ、このことは操舵妨害トルクに反作用を及ぼし、これに応じて、ドライバは操舵妨害トルクを補正し、所望の傾斜度を保持するためにより小さい操舵反力トルクのみを加えればよい。
【0010】
基本的には、傾斜角に対して代替的または付加的に、アダプティブ・ステアリングダンパの減衰度を変更することが望ましいかどうかを判断するためには、カーブ走行を特徴づけるその他の状態変数を使用してもよい。例えば、付加的または代替的には、操舵角を使用してステアリングダンパの減衰度の検出することが可能である。車両の操舵トルクまたはヨーレートも考慮される。さらに、必要に応じて、特に車両の縦方向‐および/または横方向動特性に関する他の車両状態変数、例えば車両速度を、ステアリングダンパの減衰度を検出する場合に考慮してもよい。状態変数は、適宜なセンサ装置によって測定されるか、または、例えば、適宜な車両モデルに応じて測定された変数から計算により求められる。さらに、センサ装置によって、例えば、油圧ブレーキ装置のブレーキ圧から、前輪に実際に作用しているブレーキトルクが求められる。二輪車がアンチロック・ブレーキシステム(ABS)を備えている場合、ABSに設けられた、ブレーキ圧を検出するためのセンサ装置を使用してもよい。
【0011】
前輪のブレーキ装置のブレーキ圧が比較的ゆっくり形成された場合には、操舵妨害トルクは連続的に形成され、これに対して、ブレーキ圧が急激に形成された場合には、操舵角および操舵トルクが変化する過程で揺動が生じる場合もある。なぜなら、自動二輪車フレーム、前輪フォークおよびタイヤの結合部が揺動可能なシステムを形成するからである。操舵トルクもしくは操舵角による揺動発生時にも、アダプティブ・ステアリングダンパの作用による減衰が可能である。
【0012】
二輪車は、有効操舵トルクのアクティブな調節を可能にする操舵トルク調節器を必要に応じて備えていてもよい。基本的には、操舵トルク調節器により操舵妨害トルクに反作用をもたらすこともでき、この場合、完全な補正のためには比較的大きい寸法の操舵トルク調節器が必要となる。アダプティブ・ステアリングダンパとの組合せにより、機能制限を受けることなしに寸法の小さい操舵トルク調節器を使用することもできる。アダプティブ・ステアリングダンパは、素早い作動形式および高いトルクピークの減衰という利点を有し、これに対して、操舵トルク調節器によって、付加的な機能、例えば、過剰制御防止機能または補助的なサーボステアリングをコンフォート機能として実現することができる。操舵トルク調節器は、少なくとも部分的に操舵妨害トルクを補正するために補助的に使用することもできる。
【0013】
必要に応じて、カーブ走行を特徴づける状態変数の下限閾値が考慮され、これにより、ステアリングダンパの減衰度の変更は、状態変数が閾値を超過した場合にのみ行われる。減衰度の変更は、カーブ走行時に、減衰度変更が既に行われた後に状態変数が閾値を再び下回った場合には取り消される。
【0014】
さらなる利点および好ましい実施形態が、他の請求項、図面の説明、および図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】カーブの通過時に傾斜した自動二輪車を示す図である。
【
図2】カーブと同時にブレーキ力が作用した場合の傾斜時の前輪の力およびトルクを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、カーブ走行時の自動二輪車1を示す。この自動二輪車1は、傾斜しており、傾斜角φは、車両中心面2と垂線3との間の角度位置を示す。自動二輪車1が直立した位置をとっている場合には、車両中心面2は垂線3と重なる。
【0017】
図2は、傾斜した前輪4の詳細図を示す。傾斜に基づいて路面7におけるタイヤ4のタイヤ接触点6は操舵軸線5が延在するタイヤ中央からタイヤ側部へ移動する。タイヤ接触点6はタイヤ中央との間隔aを備え、この間隔aは摂動力レバーアームを形成する。前輪4が制動された場合、タイヤ接触点6ではブレーキ力F
brが作用する。摂動力レバーアームaと共に、垂直方向軸線もしくは操舵軸線を中心として操舵妨害トルクM
Zをもたらし、この場合、操舵妨害トルクは、自動二輪車を直立させようとする。操舵妨害トルクM
Zは、関係式:M
Z=s(φ)・F
br
にしたがって、傾斜角φに従属する関数sおよびブレーキ力F
brから検出することができる。ブレーキ力F
brは、例えば線形の一次近似で前輪のブレーキ装置における油圧ブレーキ圧の関数として決定することができ、この場合、ブレーキ圧は、例えばアンチロック・ブレーキシステムABSにおいて決定される。傾斜角φは、適宜なセンサ装置によって測定することができる。
【0018】
カーブ走行時のブレーキプロセスにおける自動二輪車の操作性を改善し、安全性を高めるために、自動二輪車内で使用されるアクティブに調節可能なアダプティブ・ステアリングタンパの減衰度が高められる。ステアリングダンパLDAの制御は、妨害トルクM
Zおよび時間tの関数として、
LDA=f(M
Z,t)
にしたがって得られる。
【0019】
ステアリング減衰度の増大により、より小さい操舵妨害トルクのみが作用し、これに応じてドライバはより小さい操舵抵抗トルクのみを補正のために加えればよい。ブレーキプロセスに基づいて自動二輪車の速度は減じられるので、傾斜角φも同様に減少し、これにより、操舵妨害トルクM
Zが低減される。したがって、アダプティブ・ステアリングダンパの制御は、好ましくは、既に短時間後に再び減じられる。これにより、操舵はすぐに再び滑らかになり、揺動および車両操作性に関する欠点が防止される。
【0020】
好ましくは、ステアリング減衰度の変更、特に、所定時間経過後の増大は取り消されるか、または少なくとも減じられ、これにより、ステアリングがすぐに再び滑らかになり、揺動および車両操作性に関する欠点が防止される。
【0021】
必要に応じて、ステアリング減衰度の調節時に自動二輪車内に組み込まれたセンサ装置によって検出される付加的な状態変数、例えば、操舵角、操舵トルク、ヨーレートおよび/または車両速度が考慮される。センサにより検出されたデータの処理は、閉ループもしくは開ループ方式の制御器で行われ、制御器ではアダプティブ・ステアリングタンパを調節するためのセンサ信号が生成される。