特許第5961326号(P5961326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社テイエルブイの特許一覧

特許5961326機器監視システム、機器監視プログラム、及び、機器監視方法
<>
  • 特許5961326-機器監視システム、機器監視プログラム、及び、機器監視方法 図000002
  • 特許5961326-機器監視システム、機器監視プログラム、及び、機器監視方法 図000003
  • 特許5961326-機器監視システム、機器監視プログラム、及び、機器監視方法 図000004
  • 特許5961326-機器監視システム、機器監視プログラム、及び、機器監視方法 図000005
  • 特許5961326-機器監視システム、機器監視プログラム、及び、機器監視方法 図000006
  • 特許5961326-機器監視システム、機器監視プログラム、及び、機器監視方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961326
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】機器監視システム、機器監視プログラム、及び、機器監視方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   G05B23/02 T
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-553692(P2015-553692)
(86)(22)【出願日】2015年7月17日
(86)【国際出願番号】JP2015070573
(87)【国際公開番号】WO2016021395
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2015年11月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-158719(P2014-158719)
(32)【優先日】2014年8月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 守
【審査官】 青山 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−182206(JP,A)
【文献】 特開平11−296224(JP,A)
【文献】 特開平07−286892(JP,A)
【文献】 特開2011−060269(JP,A)
【文献】 特開2003−132476(JP,A)
【文献】 久保田 明,スチームトラップの状態監視に適したワイヤレスアコースティック伝送器,計装,日本,(有)工業技術社,2012年 6月 1日,第55巻,第6号,第11−14頁
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象機器の物理量を検出動作の動作時間中に検出する検出器と、前記検出器による検出結果に基づいて対象機器の作動状態を診断する診断部とを備える機器監視システムであって、
前記検出器が瞬間的な検出動作を周期的に行う簡易検出モードと、前記検出器が前記簡易検出モードにおける一回の検出動作の動作時間よりも動作時間の長い連続的な検出動作を行う詳細検出モードとに、前記検出器の検出動作モードを切り換える制御部を備え、
前記診断部は、前記簡易検出モードにおいて、前記検出器による検出結果に基づいて対象機器の作動状態が正常状態か要注意状態かを診断する構成にし、
前記制御部は、前記簡易検出モードにおいて、対象機器の作動状態が正常状態であると前記診断部が診断したときには、前記簡易検出モードを保持し、対象機器の作動状態が要注意状態であると前記診断部が診断したときには、前記検出器の検出動作モードを前記簡易検出モードから前記詳細検出モードに切り換える構成にしてある機器監視システム。
【請求項2】
前記診断部は、前記詳細検出モードにおいて、所定時間における前記検出器による検出結果に基づき対象機器の作動状態が正常状態か要注意状態かを診断することを繰り返し、この繰り返しにおいて予め定めた異常認定回数だけ連続して対象機器の作動状態が要注意状態であると診断されたときに、対象機器の作動状態が異常状態であると診断する構成にしてある請求項1に記載の機器監視システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記詳細検出モードにおける診断部による診断の繰り返しにおいて、対象機器の作動状態が正常状態であると前記診断部が診断したときに、前記検出器の検出動作モードを前記詳細検出モードから前記簡易検出モードに切り換える構成にしてある請求項2に記載の機器監視システム。
【請求項4】
前記診断部は、前記詳細検出モードにおいて、所定時間における前記検出器による検出結果に基づき対象機器の作動状態が正常状態か要注意状態かを診断することを繰り返し、この繰り返しにおいて所定回数の診断を行った後、対象機器の作動状態が要注意状態であると診断された回数が予め定めた異常認定回数以上であったときに、対象機器の作動状態が異常状態であると診断する構成にしてある請求項1に記載の機器監視システム。
【請求項5】
前記検出器は、検出結果にばらつきの出にくい物理量である第1グループの物理量と検出結果にばらつきの出やすい物理量である第2グループの物理量とを検出可能な構成にし、
前記診断部は、前記簡易検出モードにおいて、前記第1グループの物理量について対象機器の作動状態が正常状態か異常状態かを診断し、前記第1グループの物理量について対象機器の作動状態が正常状態であると前記診断部が診断したときに、前記第2グループの物理量について対象機器の作動状態が正常状態か要注意状態かを診断する構成にし、
前記制御部は、前記簡易検出モードにおいて、前記第2グループの物理量について対象機器の作動状態が正常状態であると前記診断部が診断したときに、前記簡易検出モードを保持し、前記第2グループの物理量について対象機器の作動状態が要注意状態であると前記診断部が診断したときに、前記検出器の検出動作モードを前記簡易検出モードから前記詳細検出モードに切り換える構成にしてある請求項1〜4のいずれか1項に記載の機器監視システム。
【請求項6】
前記診断部は、前記簡易検出モードにおいて、前記第1グループの物理量については、1回の検出動作における検出結果に基づいて対象機器の作動状態を診断し、前記第2グループの物理量については、複数回の検出動作における検出結果の移動平均に基づいて対象機器の作動状態を診断する構成にしてある請求項5に記載の機器監視システム。
【請求項7】
前記第1グループの物理量は温度を含む請求項5又は6に記載の機器監視システム。
【請求項8】
前記第2グループの物理量は超音波振動又は音響を含む請求項5〜7のいずれか1項に記載の機器監視システム。
【請求項9】
前記診断部は、予め定めた閾値に対する検出結果の大小関係に基づいて対象機器の作動状態を診断する構成にしてある請求項1〜8のいずれか1項に記載の機器監視システム。
【請求項10】
前記閾値は、前記検出器の試験運転において前記検出器により検出される検出結果の最大値又は最小値に設定してある請求項9に記載の機器監視システム。
【請求項11】
前記閾値は、前記検出器の初期運転時において一定期間に検出された検出結果のばらつき範囲に基づいて、前記検出器ごとに設定してある請求項9に記載の機器監視システム。
【請求項12】
前記閾値を、前記検出器の運転中において一定期間に検出された検出結果のばらつき範囲に基づいて、前記検出器ごとに適時更新する請求項11に記載の機器監視システム。
【請求項13】
前記診断部により対象機器の作動状態が異常状態と診断された場合に警報を行う警報部を備える請求項1〜12のいずれか1項に記載の機器監視システム。
【請求項14】
検出器による検出動作の動作時間中に対象機器の物理量を前記検出器に検出させて、前記検出器による検出結果に基づいて対象機器の作動状態を診断部に診断させる機器監視プログラムであって、
前記検出器に、瞬間的な検出動作を周期的に行う簡易検出モードの検出動作を行わせ、
前記診断部に、前記検出器による検出結果に基づいて対象機器の作動状態が正常状態か要注意状態かを診断させ、
対象機器の作動状態が正常状態であると前記診断部が診断したときには、前記簡易検出モードを保持して前記検出器に検出動作を行わせ、対象機器の作動状態が要注意状態であると前記診断部が診断したときには、前記検出器の検出動作モードを前記簡易検出モードから前記簡易検出モードにおける一回の検出動作の動作時間よりも動作時間の長い連続的な検出動作を行う詳細検出モードに切り換えて前記検出器に検出動作を行わせる機器監視プログラム。
【請求項15】
検出器による検出動作の動作時間中に対象機器の物理量を前記検出器により検出し、前記検出器による検出結果に基づいて対象機器の作動状態を診断する機器監視方法であって、
前記検出器により、瞬間的な検出動作を周期的に行う簡易検出モードの検出動作を行い、
前記検出器による検出結果に基づいて対象機器の作動状態が正常状態か要注意状態かを診断し、
対象機器の作動状態が正常状態であると診断したときには、前記簡易検出モードを保持して前記検出器により検出動作を行い、対象機器の作動状態が要注意状態であると診断したときには、前記検出器の検出動作モードを前記簡易検出モードから前記簡易検出モードにおける一回の検出動作の動作時間よりも動作時間の長い連続的な検出動作を行う詳細検出モードに切り換えて前記検出器により検出動作を行う機器監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象機器の物理量を検出し、検出器での検出結果に基づいて対象機器の作動状態を診断するための機器監視システム、機器監視プログラム、及び、機器監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の機器監視システムとして、例えば、特許文献1において、対象機器を常時監視しながらも検出器(特許文献1においては端末器)の消費電力を低減するために、基本的には検出器を休眠状態とし、予め定めた時間間隔ごとに検出器を覚醒状態にして検出動作を行い、検出動作終了後は次の検出動作を行うまで検出器が休眠状態となる間欠的な検出動作を検出器が行う機器監視システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2003−131707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、間欠的な検出動作を行うにしても、如何にして消費電力を抑えながら対象機器の作動状態を確度高く診断するかというところまでは考えられていなかった。
【0005】
つまり、検出器の消費電力を抑えようとすれば、間欠的な検出動作において、各回の検出動作の時間を短く瞬間的なものにして、検出器の起動時間を減らすことが考えられるが、そうすると、検出器の検出する物理量が対象機器で発生する超音波振動や音響のような周期的に変動し検出結果にばらつきが出やすい物理量の場合、検出結果が異常と診断されても、それが対象機器の作動状態が異常であることに起因するだけでなく、対象機器の作動状態は正常であり単に検出結果のばらつきによる可能性もあり、診断の確度において問題がある。
【0006】
これに対し、正確に対象機器の作動状態を診断するために、各回の検出動作の時間を十分に長くすることが考えられるが、そうすると、診断の確度は高くなるものの、検出器の起動時間が長くなり消費電力が嵩むこととなる。
【0007】
この実情に鑑み、本開示の主たる課題は、検出器の消費電力を抑え、且つ、対象機器の作動状態を確度高く診断することができる機器監視システム、機器監視プログラム、及び、機器監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る機器監視システムは、
対象機器の物理量を検出動作の動作時間中に検出する検出器と、前記検出器による検出結果に基づいて対象機器の作動状態を診断する診断部とを備える機器監視システムであって、
前記検出器が瞬間的な検出動作を周期的に行う簡易検出モードと、前記検出器が前記簡易検出モードにおける一回の検出動作の動作時間よりもその動作時間の長い連続的な検出動作を行う詳細検出モードとに、前記検出器の検出動作モードを切り換える制御部を備え、
前記診断部は、前記簡易検出モードにおいて、前記検出器による検出結果に基づいて対象機器の作動状態が正常状態か要注意状態かを診断する構成にし、
前記制御部は、前記簡易検出モードにおいて、対象機器の作動状態が正常状態であると前記診断部が診断したときには、前記簡易検出モードを保持し、対象機器の作動状態が要注意状態であると前記診断部が診断したときには、前記検出器の検出動作モードを前記簡易検出モードから前記詳細検出モードに切り換える構成にしてある。
【0009】
つまり、上記構成では、検出器の検出動作を、瞬間的な検出動作を周期的に行う簡易検出モードと連続的な検出動作を行う詳細検出モードとの2つの検出動作モードで行うこととし、まず、簡易検出モードにおいて、異常の兆候を発見することを目的に、対象機器の作動状態が正常状態か要注意状態かの簡易な診断を行い、簡易検出モードにおいて診断結果が要注意状態の場合に(即ち、異常の兆候が発見された場合に)、検出器の検出動作モードを詳細検出モードに切り換えて、連続的な検出動作によりデータを重点的に収集して対象機器の作動状態を詳細に診断する。
【0010】
このため、上記構成によれば、基本的には瞬間的な検出動作を行う簡易検出モードの検出動作を行って消費電力を抑えつつ、簡易検出モードにおける診断結果が要注意状態の場合にのみ、連続的な検出動作により消費電力が嵩むこととなる詳細検出モードの検出動作を行うから、全体として検出器の消費電力を効果的に抑えることができる。そして、瞬間的な検出動作のため、簡易検出モードにおいては、その診断結果が、対象機器の作動状態が異常であることに起因するものであるのか、対象機器の作動状態は正常であり単に検出結果のばらつきによるものなのかの判別がつきがたいものであっても、詳細検出モードの検出動作を行ってその検出結果を詳細に診断するから、最終的には対象機器の作動状態が正常状態か異常状態かを確度高く診断することができる。
【0011】
即ち、上記構成によれば、検出器の消費電力を効果的に抑え、且つ、対象機器の作動状態を確度高く診断することができる。
【0012】
以下、本開示に係る蒸気使用設備評価システムの好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本開示の範囲が限定される訳ではない。
【0013】
一つの態様として、前記診断部は、前記詳細検出モードにおいて、所定時間における前記検出器による検出結果に基づき対象機器の作動状態が正常状態か要注意状態かを診断することを繰り返し、この繰り返しにおいて予め定めた異常認定回数だけ連続して対象機器の作動状態が要注意状態であると診断されたときに、対象機器の作動状態が異常状態であると診断する構成にしてあると好適である。
【0014】
つまり、上記構成によれば、詳細検出モードにおいて、連続的な検出動作により収集された検出結果に基づいて対象機器の作動状態を診断して、簡易検出モードにおける診断に比べ確度の高い診断を行い、さらに、この確度の高い診断を繰り返して診断の確からしさを繰り返し確認した後に対象機器の作動状態が異常状態であると診断するから、対象機器の作動状態を極めて確度高く診断することができる。
【0015】
なお、上記構成における所定時間は、一定のものでなくてもよく、例えば、診断を繰り返すごとにその時間を長くするなど、診断の繰り返し回数に応じて適宜変更してもよい。
【0016】
また、検出器における検出動作のパターンは、所定時間の連続的な検出動作を行った後検出動作を休止し、診断部が診断を終えた後に検出動作を再開するものであっても、所定時間の検出動作を行った後に休止することなく、絶えず連続的な検出動作を行い続けるものであってもよい。
【0017】
一つの態様として、前記制御部は、前記詳細検出モードにおける診断部による診断の繰り返しにおいて、対象機器の作動状態が正常状態であると前記診断部が診断したときに、前記検出器の検出動作モードを前記詳細検出モードから前記簡易検出モードに切り換える構成にしてあると好適である。
【0018】
つまり、詳細検出モードでは連続的な検出動作を行うことにより確度の高い診断を行うことができるものの、その分簡易検出モードの検出動作に比べ消費電力は嵩んでしまうが、上記構成によれば、詳細検出モードにおける診断の繰り返しにおいて、対象機器の作動状態が正常状態であると前記診断部が診断したときには、診断の繰り返しをやめて、直ちに検出器の検出動作モードを消費電力が抑えられた簡易検出モードに切り換えるから、詳細検出モードにより検出動作を行うことによる検出器の消費電力の増加を効果的に抑えることができる。
【0019】
一つの態様として、前記診断部は、前記詳細検出モードにおいて、所定時間における前記検出器による検出結果に基づき対象機器の作動状態が正常状態か要注意状態かを診断することを繰り返し、この繰り返しにおいて所定回数の診断を行った後、対象機器の作動状態が要注意状態であると診断された回数が予め定めた異常認定回数以上であったときに、対象機器の作動状態が異常状態であると診断する構成にしてあると好適である。
【0020】
詳細検出モードにおいて、連続的な検出動作により収集された検出結果に基づいて対象機器の作動状態を診断して、簡易検出モードにおける診断に比べ確度の高い診断を行い、さらに、この確度の高い診断を所定回数繰り返して、所定回数の診断結果に基づいて診断を行う形式をとるから、対象機器の作動状態を極めて確度高く診断することができる。
【0021】
なお、上記構成における所定時間は、一定のものでなくてもよく、例えば、診断を繰り返すごとにその時間を長くするなど、診断の繰り返し回数に応じて適宜変更してもよい。
【0022】
また、検出器における検出動作のパターンは、所定時間の連続的な検出動作を行った後検出動作を休止し、診断部が診断を終えた後に検出動作を再開するものであっても、所定時間の検出動作を行った後に休止することなく、絶えず連続的な検出動作を行い続けるものであってもよい。
【0023】
一つの態様として、前記検出器は、検出結果にばらつきの出にくい物理量である第1グループの物理量と検出結果にばらつきの出やすい物理量である第2グループの物理量とを検出可能な構成にし、前記診断部は、前記簡易検出モードにおいて、前記第1グループの物理量について対象機器の作動状態が正常状態か異常状態かを診断し、前記第1グループの物理量について対象機器の作動状態が正常状態であると前記診断部が診断したときに、前記第2グループの物理量について対象機器の作動状態が正常状態か要注意状態かを診断する構成にし、前記制御部は、前記簡易検出モードにおいて、前記第2グループの物理量について対象機器の作動状態が正常状態であると前記診断部が診断したときに、前記簡易検出モードを保持し、前記第2グループの物理量について対象機器の作動状態が要注意状態であると前記診断部が診断したときに、前記検出器の検出動作モードを前記簡易検出モードから前記詳細検出モードに切り換える構成にしてあると好適である。
【0024】
検出対象とする物理量によって対象機器の作動状態のどのような種類の異常を検出可能かが異なるものであり、対象機器の作動状態を総合的に診断するのに検出器は複数の物理量が検出可能であることが好ましい。しかし、検出対象とする物理量には、周期的に変動して検出結果にばらつきが出やすいものや(例えば超音波振動や音響)、時間変動が少なく検出結果にばらつきが出にくいもの(例えば温度など)がある。そして、検出結果にばらつきの出やすい物理量にとっては、診断の確度を高くするために、ある程度まとまった時間の検出動作における検出結果に基づいて診断を行うことが必要となる。これに対し、検出結果にばらつきの出にくい物理量については瞬間的な検出動作における検出結果で十分な確度の診断が可能である。
【0025】
つまり、検出結果にばらつきの出やすい物理量については、簡易検出モードの検出結果では診断の確度は不十分であり、確度の高い診断を行うためには詳細検出モードの検出結果に基づいて診断することが必要となる。一方、検出結果にばらつきの出にくい物理量については、簡易検出モードの検出結果で十分な確度の診断を行うことができ、詳細検出モードの検出動作までさらに行うこととすると無駄に電力を消費することとなる。このように、検出結果にばらつきの出やすい物理量と検出結果にばらつきの出にくい物理量とを一緒くたにして同じパターンで診断を行うとすると、少なくとも一方について消費電力に無駄が生じるか、又は、診断の確度が下がることになる。
【0026】
そこで、上記構成では、検出器が検出する物理量の診断パターンを2つに分けて、第1グループの物理量については、詳細検出モードには移行せずに、簡易検出モードにおける検出結果に基づく診断のみを行い、第2グループの物理量については、簡易検出モードにおける検出結果に基づく診断に加え、さらに詳細検出モードにおける検出結果に基づく診断を行う。つまり、上記構成によれば、検出結果にばらつきの出にくい物理量を第1グループの物理量とすれば、簡易検出モードにおける診断のみで確度の高い診断を行いつつ詳細検出モードにおける検出動作や診断を省いて消費電力を効果的に抑えることができる。同時に、検出結果にばらつきの出やすい物理量を第2グループの物理量とすれば、基本的には簡易検出モードの検出動作を行い消費電力を効果的に抑えながらも、最終的には詳細検出モードにおける検出結果に基づく診断を行うから、十分な確度の診断が可能となる。このように、上記構成によれば、検出結果にばらつきの出やすい物理量と検出結果にばらつきの出にくい物理量との検出結果に基づきそれぞれ診断を行う場合でも、検出器の消費電力を効果的に抑え、且つ、確度高く対象機器の作動状態を診断することができる。
【0027】
一つの態様として、前記診断部は、前記簡易検出モードにおいて、前記第1グループの物理量については、1回の検出動作における検出結果に基づいて対象機器の作動状態を診断し、前記第2グループの物理量については、複数回の検出動作における検出結果の移動平均に基づいて対象機器の作動状態を診断する構成にしてあると好適である。
【0028】
つまり、上記構成では、第2グループの物理量については、複数回の検出動作における検出結果の移動平均に基づいて対象機器の作動状態を診断するから、簡易検出モードにおける第2グループの物理量についての対象機器の作動状態が正常状態か要注意状態かの診断の確度を高めることができる。そして、診断の確度を高めることにより、消費電力が嵩むこととなる詳細検出モードへの不要な切り換えを減らすことができるから、消費電力を一層効果的に抑えることができる。
【0029】
一つの態様として、前記第1グループの物理量は温度を含むと好適である。
【0030】
つまり、温度は時間変動が少なく検出結果にばらつきの出にくいため、瞬間的な検出動作を行う簡易検出モードにおける検出結果のみで十分な確度の診断が可能なところ、上記構成によれば、温度を簡易検出モードにおける検出結果に基づく診断のみを行う第1グループの物理量とするから、温度に適した検出動作パターン及び診断を行うことができる。
【0031】
一つの態様として、前記第2グループの物理量は超音波振動又は音響を含むと好適である。
【0032】
つまり、超音波振動及び音響は周期的に変動し検出結果にばらつきの出やすいため、確度の高い診断を行うためには詳細検出モードにおける検出結果に基づく診断が必要なところ、上記構成によれば、超音波振動又は音響を、簡易検出モードにおける検出結果に基づく診断に加え、さらに詳細検出モードにおける検出結果に基づく診断を行う第2グループの物理量とするから、超音波振動又は音響に適した検出動作パターン及び診断を行うことができる。
【0033】
一つの態様として、前記診断部は、予め定めた閾値に対する検出結果の大小関係に基づいて構成にしてあると好適である。
【0034】
つまり、上記構成によれば、予め定めた閾値に対する検出結果の大小関係を求めるのみの簡易な部で、対象機器の作動状態を容易に診断することができる。
【0035】
一つの態様として、前記閾値は、前記検出器の試験運転において前記検出器により検出される検出結果の最大値又は最小値に設定してあると好適である。
【0036】
つまり、上記構成によれば、予め行う試験運転において検出される検出結果の最大値または最小値に基づいて対象機器の作動状態を診断するから、検出結果が正常の範囲内にあるかどうかの診断を確実に行うことができる。
【0037】
一つの態様として、前記閾値は、前記検出器の初期運転時において一定期間に検出された検出結果のばらつき範囲に基づいて、前記検出器ごとに設定してあると好適である。
【0038】
つまり、上記構成によれば、設置場所などの各対象機器の実情に応じた閾値が各対象機器に設定されるから、各対象機器に応じた作動状態の診断をすることができる。
【0039】
一つの態様として、前記閾値を、前記検出器の運転中において一定期間に検出された検出結果のばらつき範囲に基づいて、前記検出器ごとに適時更新すると好適である。
【0040】
つまり、上記構成によれば、初期運転時における閾値の設定後、継続運転による各対象機器の実情の変動に応じて閾値を対象機器ごとに適時更新するから、運転後の変化も加味して各対象機器に応じた作動状態の診断をすることができる。
【0041】
一つの態様として、前記診断部により対象機器の作動状態が異常状態と診断された場合に警報を行う警報部を備えると好適である。
【0042】
つまり、上記構成によれば、対象機器の作動状態が異常状態と診断された場合に警報を行うから、対象機器の作動状態の異常に対し、早期に対処することができる。
【0043】
本開示に係る機器監視プログラムは、
検出器による検出動作の動作時間中に対象機器の物理量を前記検出器に検出させて、前記検出器による検出結果に基づいて対象機器の作動状態を診断部に診断させる機器監視プログラムであって、
前記検出器に、瞬間的な検出動作を周期的に行う簡易検出モードの検出動作を行わせ、
前記診断部に、前記検出器による検出結果に基づいて対象機器の作動状態が正常状態か要注意状態かを診断させ、
対象機器の作動状態が正常状態であると前記診断部が診断したときには、前記簡易検出モードを保持して前記検出器に検出動作を行わせ、対象機器の作動状態が要注意状態であると前記診断部が診断したときには、前記検出器の検出動作モードを前記簡易検出モードから前記簡易検出モードにおける一回の検出動作の動作時間よりもその動作時間の長い連続的な検出動作を行う詳細検出モードに切り換えて前記検出器に検出動作を行わせる。
【0044】
つまり、上記構成によれば、本開示に係る機器監視システムを好適に実施することができて、これにより、本開示に係る機器監視システムで得られる前述の作用効果を効果的に得ることができる。
【0045】
本開示に係る機器監視方法は、
検出器による検出動作の動作時間中に対象機器の物理量を前記検出器により検出し、前記検出器による検出結果に基づいて対象機器の作動状態を診断する機器監視方法であって、
前記検出器により、瞬間的な検出動作を周期的に行う簡易検出モードの検出動作を行い、
前記検出器による検出結果に基づいて対象機器の作動状態が正常状態か要注意状態かを診断し、
対象機器の作動状態が正常状態であると診断したときには、前記簡易検出モードを保持して前記検出器により検出動作を行い、対象機器の作動状態が要注意状態であると診断したときには、前記検出器の検出動作モードを前記簡易検出モードから前記簡易検出モードにおける一回の検出動作の動作時間よりもその動作時間の長い連続的な検出動作を行う詳細検出モードに切り換えて前記検出器により検出動作を行う。
【0046】
つまり、上記構成によれば、本開示に係る機器監視システムを好適に実施することができて、これにより、本開示に係る機器監視システムで得られる前述の作用効果を効果的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】機器監視システムの概略平面図
図2】検出器を示す斜視図
図3】検出器の構成を示すブロック図
図4】中央管理装置の構成を示すブロック図
図5】機器監視システムによる機器監視のフローチャート
図6】機器監視システムによる機器監視のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、工場やプラント等に分散配備された多数の蒸気トラップ1を対象機器として、蒸気トラップ1の状態を監視する機器監視システムを示し、対象機器である各蒸気トラップ1に夫々装備されて蒸気トラップの物理量を検出する検出器2と、各検出器2による検出結果に基づいて各蒸気トラップ1の作動状態を診断する診断部と、診断結果に基づき警報を行う警報部とを有する中央管理装置3とから構成される。
【0049】
検出器2は、図2に示すように、例えば、蒸気配管4に介装された蒸気トラップ接続用の接続部材5に2つ装備されている。この接続部材5を介して、各検出器2は蒸気トラップ1の物理量をそれぞれ検出する。接続部材5内部には図示しない入口通路と出口通路とがあり、蒸気トラップ1の入口と出口とは、接続部材5の入口通路と出口通路とを介して接続部材5の両側の蒸気配管4と連通状態となっている。また、蒸気送給先の蒸気使用機器の不使用時や蒸気トラップ交換時において、蒸気トラップ1や出口側蒸気配管4への蒸気の流入を防ぐため、接続部材5には入口通路の仕切弁としての入口バルブ5aと出口通路の仕切弁としての出口バルブ5bとが設けられている。そして、接続部材5の入口側と出口側とにそれぞれ検出器2が装備されている。なお、検出器2は、接続部材5ではなく、蒸気トラップ1や、蒸気トラップ1近傍の蒸気配管4に装備してもよく、また、検出器の数は2つに限らず、1つ又は3つ以上装備してもよい。
【0050】
検出器2は、図3に示すように、蒸気トラップ1における温度を検出する温度センサ6、蒸気トラップ1から発生する超音波振動を検出する振動センサ7、温度センサ6及び振動センサ7と接続されたアナログ回路部8、マイクロプロセッサを用いた制御部としてのデジタル回路部9、中央管理装置3との情報の送受信を行なう通信部10、アナログ回路部8及び通信部10への供給電力を制御する電源制御部11、電源電池12、設定情報などを記憶する記憶部13から構成される。また、アナログ回路部8には、複数のセンサ6,7の検出結果を順次に入力するための入力切換用スイッチ回路8aを設けてある。
【0051】
検出器2による蒸気トラップ1の温度・振動の検出から検出結果の中央管理装置3への送信まで説明すると、まず、検出器2による検出動作として、デジタル回路部9が、中央管理装置3から無線通信により付与された設定情報に従い、周期的にアナログ回路部8を電源制御部11による供給電力制御により休眠状態から覚醒状態にして、覚醒状態の間に検出される温度センサ6及び振動センサ7の検出結果を入力する(温度及び振動の両者を検出する場合は、デジタル回路部9による入力切換用スイッチ回路8aの操作により複数の接続センサ2の検出結果を順次に入力する)。この入力処理の後は、デジタル回路部9が電源制御部11による供給電力制御によりアナログ回路部8を再び休眠状態に戻す。
【0052】
なお、ここでいう中央管理装置3から付与される設定情報とは、検出動作の動作時間(つまり、アナログ回路部8を覚醒状態とする時間)や、検出動作の時間間隔(つまり、アナログ回路部8を休眠状態から覚醒状態へと切り換える時間間隔)、入力切換用スイッチ回路8aの操作である。
【0053】
そして、入力したセンサ検出結果はデジタル回路部9で処理され、その後、検出器2による通信動作として、デジタル回路部9が、中央管理装置3から無線通信により付与された設定情報に従い、アナログ回路部8と同様に、通信部10を電源制御部11による供給電力制御により休眠状態から覚醒状態にして、デジタル回路部9で処理したセンサ検出結果を中央管理装置3へ送信するとともに中央管理装置3からの指示情報を受信する。この通信処理の後は、デジタル回路部9が電源制御部11による供給電力制御により通信部10を再び休眠状態に戻す。
【0054】
なお、ここでいう中央管理装置3から付与される設定情報とは、通信動作のタイミング(デジタル回路部9へのセンサ検出結果の入力処理ごとに通信動作を行うのか、又は、センサ検出結果の入力処理を所定回数行うごとに通信動作を行うのかなど)である。
【0055】
また、各検出器のデジタル回路部9は、通信部10が休眠状態下において自身宛ての中央管理装置3からの信号を受信したときには、それに対する対応のために通信部10を一時的に覚醒状態にする。
【0056】
このように、本機器監視システムでは、検出器2による検出動作や検出結果の中央管理装置3への送信において、アナログ回路部8及び通信部10を供給電力制御により必要時にのみ覚醒状態にすることで消費電力を節減し、これにより電源電池12の交換を長期間にわたって不要にする。
【0057】
中央管理装置3は、コンピュータ及びそれの周辺機器などから構成してあり、図4に示すように、各検出器との通信を行う通信部14、各検出器2から送信される検出結果が入力される入力部15、入力された検出結果の基づき各蒸気トラップ1の作動状態を診断する診断部16、各蒸気トラップ1の作動状態の診断における温度及び振動それぞれに対する閾値や各蒸気トラップ1の位置情報など各種情報を記憶してある記憶部17、蒸気トラップ1の診断結果などを出力する出力部18、診断結果に基づいて検出器2への指示を生成する指示生成部19から構成される。
【0058】
中央管理装置3の診断部16における各蒸気トラップ1の作動状態の診断は、入力部15に入力された温度及び振動の検出結果ごとに、記憶部17に記憶してある温度及び振動それぞれに対する閾値との比較をすることにより行う。診断部16は、温度についてはその検出結果に基づき蒸気トラップ1の作動状態が正常状態か異常状態かを診断し、振動については、その検出結果に基づき蒸気トラップ1の作動状態が正常状態か要注意状態かを診断し、所定回数(異常認定回数na)連続して蒸気トラップ1の作動状態が要注意状態であると診断されたときに蒸気トラップ1の作動状態が異常状態であると診断する。これは、温度については検出結果にばらつきが出にくいため、1回の診断で蒸気トラップ1の作動状態が正常状態か異常状態かを確度高く診断できるのに対し、振動については検出結果にばらつきが出やすいため、検出結果が正常でない場合に即座に蒸気トラップ1の作動状態が異常状態であるとするのでなく、検出結果が正常でない場合には蒸気トラップ1の作動状態を要注意状態と診断し、その後の複数回の診断で蒸気トラップ1の作動状態が正常状態か異常状態かを最終的に診断する必要があるためである。
【0059】
蒸気トラップ1の作動状態が正常状態か異常状態か又は正常状態か要注意状態かの診断は、温度については、閾値より検出結果が低い場合に蒸気トラップ1の作動状態が異常状態にあると診断し、そうでない場合に蒸気トラップ1の作動状態が正常状態であると診断する。温度の検出結果が閾値より低い状態とは、つまり、低温異常の状態であり、これは蒸気トラップ1においてドレンの排出が適切に行われていない詰まり異常の状態にあることを示す。また、振動については、閾値より検出結果が高い場合に蒸気トラップ1の作動状態が要注意状態にあると診断し、そうでない場合に蒸気トラップ1の作動状態が正常状態であると診断する。振動の検出結果が閾値より高い状態は、蒸気トラップ1における蒸気漏れに起因する振動が検出されていることを意味し、蒸気トラップ1が蒸気漏れを起こしていることを示す。
【0060】
なお、温度に対する閾値は、低温異常と診断するのに十分な温度を適宜設定すればよい。また、振動に対する閾値は、予め実験として蒸気トラップ1の作動状態が正常状態の運転を行いそこで検出された検出結果の最大値を設定すればよい。これにより、検出結果が正常の範囲内にあるかどうかの診断を確実に行うことができる。また、振動に対する閾値は、検出器2の初期運転時において一定期間に検出された検出結果のばらつき範囲に基づいて検出器2ごとに設定してもよい。これにより、設置場所などの各蒸気トラップ1の実情に応じて各蒸気トラップ1の作動状態を診断することができる。また、初期運転時に限らず、その運転中においても各検出器2により一定期間に検出された検出結果のばらつき範囲に基づいて閾値を設定しなおしてもよく、そうすれば、運転後の変化も加味して各対象機器に応じた作動状態の診断をすることができる。
【0061】
診断部16において蒸気トラップ1の作動状態が診断された場合、診断結果に基づいて指示生成部19により対応する検出器2への指示(例えば、後述する検出動作モードの切り換えなど)を生成し、通信部14により対応する検出器2に対して診断結果に基づく指示を送信する。また、蒸気トラップ1の作動状態が異常状態と診断されたときには、記憶部17を参照し、検出情報の送信元の検出器2に設置した蒸気トラップ1の識別符号や設置場所、その発生異常種(蒸気漏れ異常、詰まり異常)等の情報を警報として出力部18に出力する。さらに、必要に応じて、図示しないアラーム部(警報部に相当)により工場やプラント等の管理者に異常トラップ1の存在を報知する、又は、通信部14(警報部に相当)により工場やプラント等の管理者や管理業者のコンピュータや携帯電話などの通信端末に異常トラップ1の存在やその異常の原因・対処情報などを送信するなど所定の警報も行う。また、蒸気トラップ1の作動状態が異常状態と診断されたときは、低温異常が単に対象の蒸気トラップ1に蒸気が入ってきていないことに起因するのかを確認するために、対象の蒸気トラップ1の上流側のバルブなどを管理者が直接確認する、又は、対象のバルブなどの機器状態情報を取得して確認する。
【0062】
本機器監視システムは以上のように構成されるが、本機器監視システムでは、さらに、検出器2が、デジタル回路部9の制御により、瞬間的な検出動作を周期的に行う簡易検出モードと連続的な検出動作を行う詳細検出モードとの、それぞれ検出動作の動作時間及び時間間隔の異なる2つの検出動作モードの検出動作を、中央管理装置3からの指示に従って適時切り換えて行う構成にしてある。そして、基本的には、検出器2は簡易検出モードの検出動作を行って中央管理装置3の診断部16により簡易な診断を行い、簡易検出モードにおいて診断結果が要注意状態の場合に(即ち、異常の兆候が発見された場合に)、検出器2の検出動作モードを詳細検出モードに切り換えて、連続的な検出動作によりデータを重点的に収集して蒸気トラップ1の作動状態を詳細に診断する構成にしてある。また、診断部16は詳細検出モードにおける検出結果を診断する場合、診断結果が要注意状態である回数の要注意回数ncをカウントする構成にしてある。
【0063】
そして、後述するように、温度については、検出結果にばらつきが出にくく、検出結果の点数が少なくても診断部としての中央管理装置3は十分な確度の診断が可能なため、簡易検出モードにおいては入力する検出結果の点数を少なくし、詳細検出モードでは温度の検出は行わないようにしてある。
【0064】
簡易検出モード、及び、詳細検出モードでは、例えば、検出器2がそれぞれ次の動作を行うように設定してある。
【0065】
〔簡易検出モード〕
(1)1秒間隔で(より詳しくは、各回の検出動作の開始時間の時間間隔が1秒間隔で)ミリ秒単位の動作時間の瞬間的な検出動作を周期的に60回行い、入力した検出結果(温度・振動)をデジタル回路部9にて処理して記憶部13に記憶する。ここで入力切換用スイッチ回路8aは、60回のうち、最初の1回の検出動作のみ、温度及び振動の両者の検出結果が入力され、他の検出動作については振動の検出結果のみが入力されるように操作する。
(2)60回の検出動作を行った後に(つまり、1分間ごとに)、デジタル回路部9は記憶部13に記憶した振動の検出結果60点の移動平均を求め、この移動平均データを振動の検出結果として温度の検出結果とともに通信部10により中央管理装置へ送信する。
(3)検出結果の送信後に、記憶部に記憶した検出結果を消去する。
(4)中央管理装置3からの指示を待って、中央管理装置3から簡易検出モードの続行の指示があれば、(1)〜(3)を繰り返し、詳細検出モードへの切り換え指示があれば、詳細検出モードに検出動作モードを切り換える。
【0066】
〔詳細検出モード〕
(a)入力切換用スイッチ回路8aが15秒間連続的な検出動作を行い、デジタル回路部9に入力した検出結果(振動)をデジタル回路部9にて処理する。ここで入力切換用スイッチ回路8aは、振動の検出結果のみが入力されるように操作する。
(b)処理した検出結果を通信部10により中央管理装置へ送信する。
(c)中央管理装置3からの指示を待って、詳細検出モードの続行の指示があれば、(a)に戻り、簡易検出モードへの切り換え指示があれば、簡易検出モードに検出動作モードを切り換える。
【0067】
本機器監視システムにおける蒸気トラップ1の作動状態の診断は、例えば、図5に示すフローチャートに従って行われる。まず、ステップS1として検出器2が簡易検出モードの検出動作を行ってその検出結果を中央管理装置3に送信する。その後、ステップS2に進む。
【0068】
ステップS2では、中央管理装置3の診断部16は、検出器2から送信された簡易検出モードの検出結果のうち、まず温度の検出結果について診断を行う。温度の検出結果に基づいて蒸気トラップ1の作動状態が異常状態であると診断された場合、ステップS9に進む。温度の検出結果に基づいて蒸気トラップ1の作動状態が正常状態であると診断された場合、ステップS3に進む。
【0069】
ステップS3では、中央管理装置3の診断部16は、検出器2から送信された簡易検出モードの検出結果のうち、振動の検出結果について診断を行う。振動の検出結果に基づいて蒸気トラップ1の作動状態が正常状態であると診断された場合、指示生成部19が簡易検出モード続行の指示を生成し、生成した指示を通信部14が対応する検出器2に対して送信し、ステップS1に戻る。振動の検出結果に基づいて蒸気トラップ1の作動状態が要注意状態であると診断された場合、ステップS4に進む。
【0070】
ステップS4では、指示生成部19が簡易検出モードから詳細検出モードへの切り換え指示を生成し、生成した指示を通信部14が対応する検出器2に対して送信するとともに、詳細検出モードにおける要注意回数ncを0に設定し(nc=0)、ステップS5に進む。
【0071】
ステップS5では、検出器2が詳細検出モードの検出動作を行って、その検出結果(振動のみ)を中央管理装置3に送信する。その後、ステップS6に進む。
【0072】
ステップS6では、中央管理装置3の診断部16は、詳細検出モードの検出動作を行う検出器2から送信された振動の検出結果について診断を行う。振動の検出結果に基づいて蒸気トラップ1の作動状態が正常状態であると診断された場合、指示生成部19が詳細検出モードから簡易検出モードへの切り換え指示を生成し、生成した指示を通信部14が対応する検出器2に対して送信し、ステップS1に戻る。振動の検出結果に基づいて蒸気トラップ1の作動状態が要注意状態であると診断された場合、ステップS7に進む。
【0073】
ステップS7では、詳細検出モードにおける要注意回数ncに1を加算し(nc=nc+1)、ステップS8に進む。ステップS8では、加算後の要注意回数ncが異常認定回数naより低ければ(nc<na)、ステップS5に戻り、詳細検出モードの検出・診断を繰り返す。加算後の要注意回数ncが異常認定回数naと等しければ(nc=na)、蒸気トラップ1の作動状態が異常状態であると診断し、ステップS9に進む。
【0074】
ステップS9では、指示生成部19が検出動作の中止指示を生成し、生成した指示を通信部14が対応する検出器2に対して送信し、上述した警報を行う。
【0075】
以上のように、本機器監視システムでは、基本的には瞬間的な検出動作を行う簡易検出モードの検出動作を行って消費電力を抑えつつ、簡易検出モードにおける診断結果が要注意状態の場合にのみ、連続的な検出動作により消費電力が嵩むこととなる詳細検出モードの検出動作を行うから、全体として検出器の消費電力を効果的に抑えてある。そして、診断の確度が簡易検出モードでは不十分なものであっても、最終的には詳細検出モードの検出動作を行ってその検出結果を詳細に診断するから、蒸気トラップ1の作動状態が正常状態か異常状態かを確度高く診断できる。
【0076】
そして、検出結果にばらつきの出にくい温度と検出結果にばらつきの出やすい振動とをそれぞれ異なるパターンの診断を行い、温度については簡易検出モードにおける診断のみで確度の高い診断を行いつつ詳細検出モードにおける検出動作や診断を省いて消費電力を抑え、振動については基本的には簡易検出モードの検出動作を行い消費電力を抑えながらも、最終的には詳細検出モードにおける検出結果に基づく診断を行うから、十分な確度の診断が可能となる。このため、温度と振動との検出結果に基づきそれぞれ診断を行う場合でも、検出器の消費電力を抑え、且つ、確度高く対象機器の作動状態を診断することができる。
【0077】
(別実施形態)
前述の実施形態では、各検出器2により検出した検出結果を中央管理装置3に送信し、中央管理装置3にて各蒸気トラップ1の作動状態を診断し、その結果に応じて検出動作モードの切換を判断してその指示を各検出器2に対して送信するものを示したが、これに限定されず、検出器2のデジタル回路部9において、対象の蒸気トラップ1の作動状態の診断、検出動作モードの切換の判断を行うようにしてもよい。
【0078】
この場合、検出した検出結果や蒸気トラップ1の作動状態の診断結果は、検出や診断の度に、又は、対象の蒸気トラップの作動状態が異常状態であると診断された場合にのみ、中央管理装置3に送信すればよい。または、検出結果や診断結果を検出器2の記憶部13に蓄積的に記憶しておき、中央管理装置3やその他携帯端末を用いて通信により検出器2の記憶部13から診断結果や検出結果を適時取得するようにしてもよい。また、検出器2に別途警報部を設け、対象の蒸気トラップの作動状態が異常状態であると診断された場合に、警報部により警報を発報してもよい。
【0079】
各検出動作モードにおける検出動作の動作時間や時間間隔、入力切換用スイッチ回路8aの操作(つまり、温度及び振動のいずれの検出を行うか)、通信動作のタイミングは、前述の実施形態に示したものに限られず、例えば、図5のS5〜S8における詳細検出モードの検出・診断の繰り返しにおいて、繰り返すごとに検出動作の動作時間を長くする又は短くするなど、必要に応じて適宜変更してもよい。
【0080】
前述の実施形態では、図5のフローチャートにおけるステップS6のように、詳細検出モードにおける診断の繰り返しにおいて、蒸気トラップ1の作動状態が正常状態であると診断したときには、対応する検出器2に対して詳細検出モードから簡易検出モードへの切り換え指示を送信し、ステップS1に戻る構成を採用したが、これに限らず、蒸気トラップ1の作動状態が正常状態であると診断されても、詳細検出モードの続行を指示して、ステップS5に進み、詳細検出モードの検出動作を続行するようにしてもよい。
【0081】
この場合、蒸気トラップ1の作動状態が正常状態であると診断されたときに要注意回数ncを0に設定し直してもよい(nc=0)。また、診断部16がその診断ごとに詳細検出モードにおける診断回数nをカウントし、ステップS7において要注意回数ncが異常認定回数naに達する前に、予め定めた診断終了回数nfに診断回数nが達した場合に、対応する検出器2に対して詳細検出モードから簡易検出モードへの切り換え指示を送信し、ステップS1に戻る構成にしてもよい。
【0082】
また、本機器監視システムにおける蒸気トラップ1の作動状態の診断は、例えば、図6に示すフローチャートに従って行ってもよい。図6のフローチャートのS1´〜S3´及びS10´は図5のフローチャートのステップS1〜S3及びS9と同じであり、ステップS4´〜S9´が次のようになっている。
【0083】
ステップS4´では、指示生成部19が簡易検出モードから詳細検出モードへの切り換え指示を生成し、生成した指示を通信部14が対応する検出器2に対して送信するとともに、詳細検出モードにおける診断回数n及び要注意回数ncを0に設定し(n=0、nc=0)、ステップS5´に進む。
【0084】
ステップS5´では、検出器2が詳細検出モードの検出動作を行って、その検出結果(振動のみ)を中央管理装置3に送信する。その後、ステップS6´に進む。
【0085】
ステップS6´では、中央管理装置3の診断部16は、詳細検出モードの検出動作を行う検出器2から送信された振動の検出結果について診断を行う。ステップS6´において蒸気トラップ1の作動状態が正常状態であると診断された場合は、ステップS7a´に進み、詳細検出モードにおける診断回数nに1を加算して(n=n+1)、ステップS8´に進む。ステップS6´において蒸気トラップ1の作動状態が要注意状態であると診断された場合、ステップS7b´に進み、詳細検出モードにおける診断回数nに1を加算するとともに(n=n+1)、詳細検出モードにおける要注意回数ncに1を加算し(nc=nc+1)、ステップS8´に進む。
【0086】
ステップS8´では、診断回数nが予め定めた診断終了回数nfより低ければ(n<nf)、ステップS5´に戻って詳細検出モードの検出・診断を繰り返す。また、診断回数nが診断終了回数nfと等しければ(n=nf)、ステップS9´に進む。
【0087】
ステップS9´では、要注意回数ncと異常認定回数naを比較する。そして、要注意回数ncが異常認定回数naより低ければ(nc<na)、蒸気トラップ1の作動状態が正常状態であると診断し、中央管理装置3の通信部14は対応する検出器2に対して詳細検出モードから簡易検出モードへの切り換え指示を送信し、ステップS1に戻る。また、要注意回数ncが異常認定回数na以上であれば(nc≧na)、蒸気トラップ1の作動状態が正常状態であると診断し、ステップS10´に進む。
【0088】
図5のフローチャートにおける異常認定回数naは、必要に応じて適宜設定すればよく、1以上のどのような数であってもよい。また、図6のフローチャートにおける異常認定回数na及び診断終了回数nfについても、異常認定回数naが診断終了回数nfを超える数でなければ、1以上のどのような数であってもよい。なお、図5図6のフローチャートにおいて異常認定回数na及び診断終了回数nfがそれぞれ1の場合、詳細検出モードの検出・診断を繰り返すことなく、1回の詳細検出モードの検出・診断で蒸気トラップ1の作動状態の正常状態・異常状態を診断することになる。
【0089】
前述の実施形態では、総裁検出モードにおける検出器における検出動作のパターンは、所定時間の連続的な検出動作を行った後検出動作を休止し、中央管理装置3からの指示の後に検出動作を再開するものであったが、これに限らず、検出動作後に休止することなく、絶えず連続的な検出動作を行い続けるものであってもよい。
【0090】
詳細検出モードにおける蒸気トラップ1の作動状態の診断は、検出器2の一定時間の連続的な検出動作の間、常に検出結果が異常値である場合に、蒸気トラップ1の作動状態を異常状態と診断し、連続的な検出動作の途中に検出結果が正常値に戻った場合に蒸気トラップ1の作動状態を異常状態と診断するようにしてもよい。
【0091】
前述の実施形態では、本機器監視システムの対象機器は蒸気トラップとしたが、これに限られず、弁、ポンプ、タービン、熱交換器、タンクなどであってもよく、本開示は種々の機器の監視に適用できる。
【0092】
前述の実施形態では、検出器2は接続部材5に対しその入口側と出口側との合計2つ装備されていたが、これに限られず、検出器2は接続部材5の入口側、又は、出口側のいずれか一方に1つ装備するのみでもよい。
【0093】
前述の実施形態では、検出器2はセンサとして温度センサ6と振動センサ7との双方を備えるものであったが、これに限られず、温度センサ6又は振動センサ7のみとしてもよく、また、これらに代えて、圧力センサ、音響センサなど、対象機器や目的に応じて種々のセンサを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本開示の機器監視システムは各種分野における種々のプラントや工場に施設される機器の監視に適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 対象機器(蒸気トラップ)
2 検出器
9 制御部(デジタル回路部)
14 警報部(通信部)
16 診断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6