特許第5961328号(P5961328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5961328
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】口腔内歯科吸引及び分離システム
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/00 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   A61C17/00
【請求項の数】35
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-563172(P2015-563172)
(86)(22)【出願日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】US2014032892
(87)【国際公開番号】WO2015088577
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2015年11月25日
(31)【優先権主張番号】14/100,323
(32)【優先日】2013年12月9日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515283655
【氏名又は名称】インセプト、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ングイエン、シエン
(72)【発明者】
【氏名】ファム、タム、ターン
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0063129(US,A1)
【文献】 特表2012−505702(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/134295(WO,A1)
【文献】 特公昭44−5515(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げることができる材料から構成される曲面で形成された歯科用マウスピースであって、
前記曲面の中央における本体部と、
前記本体部に接続された口角鉤部と、
真空吸引源に前記本体の内側部分を接続するための吸引コネクタ部であって、前記口角鉤部とは反対側の端部において前記本体部に接続された吸引コネクタ部とを含み、
前記本体部は、前記曲面の内側の前壁、前記曲面の外側の後壁、及び前記前壁と前記後壁の間にある側壁を有する所定のポケットを備え、前記前壁、前記後壁、及び前記側壁は、前記所定のポケットの内側部分を画定し、
前記後壁は、前記後壁の内面から突出した波形状のブリッジ構造を含み、突出した前記ブリッジ構造は、吸引時に前記前壁を前記後壁から分離された状態に保つ離間した複数の接触点を備え、
前記離間した複数の接触点は、前記波形の頂部にあり、前記離間した複数の接触点の間の前記波形の谷部は、前記ブリッジ構造を通して吸引を可能にし、
前記口角鉤部は、当該歯科用マウスピースが曲げられたときに圧力を加える表面を有し、前記圧力は前記曲げることができる材料の弾性にもとづくことを特徴とする歯科用マウスピース。
【請求項2】
前記側壁が複数の穿孔を含む請求項1に記載のマウスピース。
【請求項3】
前記前壁及び後壁のそれぞれが複数の穿孔を含む請求項1に記載のマウスピース。
【請求項4】
前記前壁はさらに中心軸に沿ったスリットを含む請求項1に記載のマウスピース。
【請求項5】
前記後壁の内面から突出する安定バーをさらに含み、前記安定バーの厚さは、当該歯科用マウスピースの曲げ時に安定性を強化する請求項1に記載のマウスピース。
【請求項6】
前記本体部、前記口角鉤部、及び前記吸引コネクタ部が一体に射出成形される請求項1に記載のマウスピース。
【請求項7】
記材料は、可撓性があり、半透明であり、高耐熱性であり、高圧蒸気滅菌処理可能である、シリコーン系材料である請求項1に記載のマウスピース。
【請求項8】
前記吸引コネクタ部は、前記真空吸引源またはバキュームアダプタの位置決めを支援するための内部留め具を含む請求項1に記載のマウスピース。
【請求項9】
取り外し可能な開口器をさらに含む請求項1に記載のマウスピース。
【請求項10】
前記取り外し可能な開口器は、前記吸引コネクタ部の周囲に嵌合するように構成されたストラップを含み、前記吸引コネクタ部の外面は前記ストラップに対応する切り欠き領域を含み、前記ストラップが前記切り欠き領域に位置するとき、前記ストラップの外面は前記吸引コネクタ部の残りの外表面とほぼ同一平面にある請求項に記載のマウスピース。
【請求項11】
前記ストラップおよび前記開口器の他の部分は一体射出成形される請求項10に記載のマウスピース。
【請求項12】
前記吸引コネクタ部はさらに、前記開口器の開口部に対応した外部プラグ突起部を含む請求項に記載のマウスピース。
【請求項13】
前記プラグ突起部は、らなる破砕耐性を提供し、圧縮性を低下させるために前記開口部に嵌合する請求項12に記載のマウスピース。
【請求項14】
前記吸引コネクタ部は、連結嵌合のためにバキュームアダプタ上の突出部に対応する切欠部を含む請求項1に記載のマウスピース。
【請求項15】
前記前壁及び前記後壁は異なる厚さを有する請求項1に記載のマウスピース。
【請求項16】
前記本体部は、第1端部において前記吸引コネクタ部と接続されるベース部と、前記ベース部の前記第1端部とは反対にある前記ベース部の第2端部に接続される口角鉤コネクタ部とを含み、
前記口角鉤コネクタ部は前記ベース部よりも狭く、前記口角鉤部は前記口角鉤コネクタ部において前記本体部と接続する請求項1に記載のマウスピース。
【請求項17】
1以上の前記壁は保護壁であり、マウスピースの外部の小片は吸引および/または前記保護壁によって捕獲される請求項1に記載のマウスピース。
【請求項18】
曲げることができる材料から構成される曲面で形成された歯科用マウスピースであって、
前記曲面の中央における本体部と、
前記本体部に接続された口角鉤部と、
真空吸引源に前記本体の内側部分を接続するための吸引コネクタ部であって、前記口角鉤部とは反対側の端部において前記本体部に接続された吸引コネクタ部と、
取り外し可能な開口器とを含み、
前記本体部は、前記曲面の内側の前壁、前記曲面の外側の後壁、及び前記前壁と前記後壁の間にある側壁を有する所定のポケットを備え、前記前壁、前記後壁、及び前記側壁は、前記所定のポケットの内側部分を画定し、
前記口角鉤部は、当該歯科用マウスピースが曲げられたときに圧力を加える表面を有し、前記圧力は前記曲げることができる材料の弾性にもとづき、
前記取り外し可能な開口器は、前記吸引コネクタ部の周囲に嵌合するように構成されたストラップを含み、前記吸引コネクタ部の外面は前記ストラップに対応する切り欠き領域を含み、前記ストラップが前記切り欠き領域に位置するとき、前記ストラップの外面は前記吸引コネクタ部の残りの外表面とほぼ同一平面にあることを特徴とする歯科用マウスピース。
【請求項19】
前記側壁が複数の穿孔を含む請求項18に記載のマウスピース。
【請求項20】
前記前壁及び後壁のそれぞれが複数の穿孔を含む請求項18に記載のマウスピース。
【請求項21】
前記前壁はさらに中心軸に沿ったスリットを含む請求項18に記載のマウスピース。
【請求項22】
前記後壁の内面から突出する安定バーをさらに含み、前記安定バーの厚さは、当該歯科用マウスピースの曲げ時に安定性を強化する請求項18に記載のマウスピース。
【請求項23】
前記本体部、前記口角鉤部、及び前記吸引コネクタ部が一体に射出成形される請求項18に記載のマウスピース。
【請求項24】
前記材料は、高圧蒸気滅菌処理可能であるシリコーン系材料である請求項18に記載のマウスピース。
【請求項25】
前記後壁の内面から突出したブリッジ構造をさらに含み、突出した前記ブリッジ構造は、吸引時に前記前壁を前記後壁から分離された状態に保つ離間した複数の接触点を備える請求項18に記載のマウスピース。
【請求項26】
前記ブリッジ構造は波形状に前記後壁の内面から突出しており、前記離間した複数の接触点は前記波形の頂部にある請求項25に記載のマウスピース。
【請求項27】
前記波形の谷部は、前記ブリッジ構造を通して吸引を可能にする請求項26に記載のマウスピース。
【請求項28】
前記吸引コネクタ部は、前記真空吸引源またはバキュームアダプタの位置決めを支援するための内部留め具を含む請求項18に記載のマウスピース。
【請求項29】
前記ストラップおよび前記開口器の他の部分は一体射出成形される請求項18に記載のマウスピース。
【請求項30】
前記吸引コネクタ部はさらに、前記開口器の開口部に対応した外部プラグ突起部を含む請求項18に記載のマウスピース。
【請求項31】
前記プラグ突起部は、さらなる破砕耐性を提供し、圧縮性を低下させるために前記開口部に嵌合する請求項30に記載のマウスピース。
【請求項32】
前記吸引コネクタ部は、連結嵌合のためにバキュームアダプタ上の突出部に対応する切欠部を含む請求項18に記載のマウスピース。
【請求項33】
前記前壁及び前記後壁は異なる厚さを有する請求項18に記載のマウスピース。
【請求項34】
前記本体部は、第1端部において前記吸引コネクタ部と接続されるベース部と、前記ベース部の前記第1端部とは反対にある前記ベース部の第2端部に接続される口角鉤コネクタ部とを含み、
前記口角鉤コネクタ部は前記ベース部よりも狭く、前記口角鉤部は前記口角鉤コネクタ部において前記本体部と接続する請求項18に記載のマウスピース。
【請求項35】
1以上の前記壁は保護壁であり、マウスピースの外部の小片は吸引および/または前記保護壁によって捕獲される請求項18に記載のマウスピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に歯科マウスピースの分野に関する。より具体的には、本発明は、口腔内歯科用吸引及び分離マウスピースに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々なマウスピースが歯科の分野において歯科医療従事者、歯科衛生士、および歯科助手によって使用されている。過去、歯科患者は歯科専門家と歯科助手を含む従来2人のチームによって治療されてきた。さらに、そのチームは多くの異なる種類の歯科用機器および用具を使用して歯科治療を提供することもある。このような歯科用機器および道具は口腔内ミラー、咬合阻止器、低速吸引排出器、高速吸引排出器、ガーゼ、コットンロール、ドライアングルなどのアイテムを含む。あるアイテムはいくつかのタイプの歯科サービスの組み合わせで使用することもできるが、歯科用機器の各アイテムを異なる目的のために使用してもよい。このように、このような歯科サービスを提供しようとする歯科専門家は、歯科用機器の複数のアイテムを使用する必要がある。したがって、歯科助手の重要な役割は、さまざまな機器や道具のこれらの複数のアイテムの使用を調整する際に歯科専門家を支援することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、より効率的で快適で安全な方法で歯科患者に歯科サービスを提供する改善されたシステム及び方法に対する必要性が当該技術分野に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施の形態は、歯科処置時にチェアサイドでハンズフリーの吸引・分離により歯科スタッフを支援するために高吸引歯科用アダプタに取り付けられるマウスピースを含んでもよい。このようなマウスピースは、本体部、口角鉤部、及び吸引コネクタ部を含んでもよい。いくつかの実施の形態では、本体部、口角鉤部、及び吸引コネクタ部(及びそのサブ部分)は、好ましくは、射出成形によって一体に成形してもよい。典型的な実施の形態では、マウスピースは、可撓性があり、半透明で、射出成形に向いており、高耐熱性で、高圧蒸気滅菌処理(オートクレーブ)可能である材料で作ってもよい。このような材料にはシリコーンが含まれる。マウスピースを高い耐熱性及び高圧蒸気滅菌処理可能な材料で作ることができるため、そのようなマウスピースは再利用可能である。
【0005】
本体部は、前壁、後壁、および前壁と後壁の間にある側壁で構成された囲まれたポケットを備えていてもよい。側壁は穿孔されて、複数の穿孔を有してよい。このような複数の穿孔は、メッシュを構成してもよい。前壁および後壁の上に付加的な穿孔を配置してもよい。本体部はさらに、前壁上に長手方向の中心軸に沿ったスリットを含んでもよい。このような開口部(例えば、穿孔とスリット)により、患者の口から開口部を介して内部に、さらに吸引源に向かって吸引コネクタ部へと空気、流動物、および小片(ゴミ)を吸引することができる。マウスピースは、可撓性があり弾力性のある材料(例えば、シリコーン)で形成されているため、患者の口の中に置かれたとき、口の形状に適合するようにマウスピースを曲げることができる。正しく配置されると、吸引コネクタ部が患者の口の片側から突出する一方、本体が患者の口の奥に対して位置し、口角鉤部が患者の口の反対側で患者の頬を押圧する。
【0006】
本体はさらに後壁の内面に突出したブリッジ構造を含んでもよい。このようなブリッジ構造は、頂部と谷部を有する波形で内面から突出していてもよい。頂部は、吸引中に前壁を後壁から分離された状態に保つために前壁と接触する複数の接触点を与える。一方、谷部は、ブリッジ構造を通って空気、流動物、および小片を吸引することを可能にする隙間を与える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】取り外し可能な開口器を有する典型的なマウスピースの斜視図である。
図1B図1Aの典型的なマウスピースおよび取り外し可能な開口器の上面図である。
図1C図1Aの典型的なマウスピースおよび取り外し可能な開口器の底面図である。
図1D図1Aの典型的なマウスピースおよび取り外し可能な開口器の側面図である。
図1E図1Aの典型的なマウスピースおよび取り外し可能な開口器の断面図である。
図2A】取り外し可能な開口器が取り外された図1Aの典型的なマウスピースの斜視図である。
図2B図2Aの典型的なマウスピースの上面図である。
図2C図2Aの例示的なマウスピースの底面図である。
図2D図2Aの例示的なマウスピースの側面図である。
図2E図2Aの例示的なマウスピースの断面図である。
図3A】典型的な開口器の正面図である。
図3B図3Aの典型的な開口器の背面図である。
図3C図3Aの典型的な開口器の底面図である。
図3D図3Aの典型的な開口器の斜視図である。
図3E図3Aの典型的な開口器の側面図である。
図3F図3Aの典型的な開口器の上面図である。
図4】典型的なマウスピースにおける典型的なメッシュ側面の拡大図である。
図5】典型的なマウスピースにおける内部ブリッジの拡大図である。
図6A】典型的なマウスピースにおける典型的な補強バーの拡大図である。
図6B図6Aの例示的な補強バーの断面図である。
図7A】典型的なマウスピースにおける典型的な口角鉤部の拡大図である。
図7B図7Aの典型的な口角鉤部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の形態は、本体部、口角鉤部、及び吸引コネクタ部を含むマウスピースを提供する。いくつかの実施の形態では、本体部、口角鉤部、及び吸引コネクタ部(及びそのサブ部分)は、好ましくは、射出成形によって一体に成形してもよい。典型的な実施の形態では、マウスピースは、可撓性があり、半透明で、射出成形に向いており、高耐熱性で、高圧蒸気滅菌処理(オートクレーブ)可能である材料から作ってもよい。このような材料にはシリコーンが含まれる。マウスピースを高い耐熱性及び高圧蒸気滅菌処理可能な材料で作ることができるため、そのようなマウスピースは再利用可能である。
【0009】
図1A図1Eは、取り付け可能開口器(マウス・プロップ)160を有する典型的なマウスピースの様々な図である。図2A図2Eは、取り付け可能開口器160が取り外された図1Aの典型的なマウスピースの様々な図である。このようなマウスピースは、本体部110、吸引コネクタ部120、および口角鉤(チーク・リトラクタ)部130を含んでもよい。
【0010】
本体部110は、メッシュまたは穿孔140、安定バー150、開スリット170、および内部ブリッジ180を含んでもよい。本体部110は、一端で吸引コネクタ部120に、他端で口角鉤部130に接続されてもよい。このような口角鉤部130は、患者の頬を押圧し、患者の頬を患者の歯から後退させるように構成されてもよい。患者の口の中に置かれたとき、吸引コネクタ部120が患者の口の片側から突出する一方、本体部110は患者の口の奥に対して位置し、口角鉤部130が患者の口の反対側にある患者の頬を後退させてもよい。マウスピースを形成するために使用される材料には可撓性があるため、マウスピースは患者の口の中に置かれたときに曲がることが可能である。しかしながら、この材料は十分に弾性があるため、口角鉤部が患者の頬の内側に対して押圧し、その圧力は頬を患者の歯から離れさせるのに十分である。
【0011】
典型的な本体部110は、口の中に配置されたとき、口の正面に面する前壁(例えば、スリット170がある側)と、口の奥に面する後壁を含んでもよい。これら二つの壁は上壁と下壁においてつながり、少なくとも部分的に封入される本体を形成してもよい。
【0012】
「上」とは、患者の口の中に置かれたとき、口の屋根に当接する側を指すためにここでは使用され、「下」とは、患者の口の床面に当接する側を指すために使用される。上側および下側を同じように形成してもよく、それにより、マウスピースは、新しい向きにおいて上側が下側として現れる、あるいはその逆になるように向きを変更することが可能である。使用時に、本体部110の各辺は、口の上部および口/舌の底部を保護し、分離する働きをしてもよい。また、本体部110は、落下する小片(ゴミ)から口の奥(例えば、咽喉及び気道)を保護する働きをしてもよい。
【0013】
マウスピースの本体部110の大部分は、その根元が一般に患者の口の口腔内形状に適合する直線の矢じりまたは盾として成形される。大人と子どもの異なる大きさの口に対して、異なるサイズのマウスピースを提供してもよい。矢じりの根元側の部分は、本体の残りの部分よりも厚い壁で形成されてもよい。このように厚くすることによりさらなる安定性を提供することができる。
【0014】
また、マウスピースの本体部110は、口腔からの水、唾液、およびゴミの吸引を補助するために前方壁および後方壁の上側および下側の辺に沿って分布する複数の孔140を含んでもよい。いくつかの実施の形態では、孔の集合が、上側および下側の縁の壁に沿ったメッシュを形成してもよい。図4は、典型的なマウスピースにおける典型的なメッシュ壁の拡大図である。
【0015】
口角鉤部130に接続する矢じりの狭い端部において、本体部110は、矩形状の部分を含んでもよい。矩形部は矢じりの根元よりも狭く、矩形部はさらに補強バー(または安定バー)150(以下でさらに詳細に説明する)を含んでもよく、矩形部は、本体部110のポケットの内部へのスリット170(以下でさらに詳細に説明する)と少なくとも部分的に交差してもよい。
【0016】
安定バー150は、突起物さもなければ厚くなった領域であってもよく、これは矩形部分の安定性を強化し、この領域を患者の口の口腔内後部形状に成形するのに役立つ。図6Aは、典型的なマウスピースの典型的な安定バー150の拡大図である。図6Bは、図6Aの口角鉤部における典型的な補強バーの断面図である。
【0017】
いくつかの実施の形態では、内部の矩形状の補強または安定バー150は、内部の波状ブリッジ構造180に遠位で配置され、本体と矩形部の後面の内側の両方に取り付けられてもよい。配置されたマウスピースが最も後方の下顎歯の舌側から始まり、最も後方の歯の先端側の周囲、さらに最も後方の下顎歯の前方側までを包む領域にこのような安定バー150を配置してもよく、これにより、マウスピースを患者の口の一般的な口腔内形状に成形するのを助けることができる。
【0018】
マウスピースの様々な実施の形態はさらに、その前面に本体のおよそ三分の二に亘る長手方向の開スリット170を含んでもよい。スリット170は本体の中心に沿って矩形部および矢じりのほとんどを横切るものであり、このようなスリット170は、水や唾液、ゴミを捕獲し、吸引するのを助けるだけでなく、クリーニングやメンテナンスの手助けにもなる。
【0019】
また、マウスピースの本体は、吸引中に前面と後面が分離した状態にとどまることを確実にするために、内面にブリッジ構造180を含んでもよい。図1Eは、ブリッジ構造180が図示されたマウスピースの断面図である。図5は、本体部の周囲壁のないブリッジ構造180の拡大図である。このようなブリッジ構造180は、前壁と後壁の間の距離(例えば1ミリメートル以内)に一般的に対応する波状突起として形成されてもよく、その波の頂部において実質的にその距離全体まで上がり、その谷部において実質的に表面と同一平面まで落ちる。いくつかの実施の形態では、ブリッジ構造180は、マウスピースの本体部110の中央に配置されてもよい。ブリッジ構造180の波と波の間のギャップ(または谷)は、吸引コネクタ部120および最終的には中央の吸引バキュームに水と唾液を吸引駆動で転送するのを助ける。いくつかの実施の形態では、ブリッジ構造180は、ロゴ(例えば、矢じりまたはシールド)の形状に従ってもよい。
【0020】
吸引コネクタ部120は楕円形状であってもよく、また、本体部110に取り付けてもよい。吸引コネクタ部120は、本体部110よりも厚い壁で形成され、高吸引バキュームアダプタに取り付けられ、口腔から水、唾液、およびゴミを除去するために外部アダプタに転送するのを補助するように構成されてもよい。吸引コネクタ部120はまた、所望の深さまで当該アダプタにマウスピースをスライドさせるのを補助するための内部留め具を含んでもよい。吸引コネクタ部120はさらに外部の凹の切り欠き領域210を有してもよい。この切り欠き領域210は取り外し可能なストラップに対応しており、ストラップが所定の位置にあるとき、ストラップの外壁とコネクタ部の残りの部分が同一平面になるように構成される。
【0021】
口角鉤部130は、本体部110に取り付けることができるハンマーヘッド先端領域として図示されている。図7Aは、典型的なマウスピースでの典型的な口角鉤部130の拡大図である。図7Bは、図7Aの典型的な口角鉤部130の断面図である。
【0022】
図1A図1E(開口器160付き)および図2A図2E(開口器160無しで図示)に示すようにマウスピースは開口器160と共に使用してもよい。図3A図3Eは典型的な開口器160の様々な拡大図である。患者の口腔および歯を開けたままにするために使用される開口器160に取り外し可能ストラップ310を取り付けてもよい。この点で、吸引コネクタ部120はさらに吸引コネクタ部120の後方側から突出する外部プラグ220(図2C)を有してもよい。このようなプラグ220は、開口器160の開口部に対応し、開口部に接続するように機能してもよい。開口器160は開口部にプラグ220が存在することによって補強されてもよく、これによって、より破砕耐性があり、ほぼ非圧縮であり、安定した開口器160がもたらされる。いくつかの実施の形態では、吸引コネクタ部120はさらに切欠部230(例えばそれをロゴとして成形してもよい)を有し、切欠部230が外部の高吸引バキュームアダプタ上の対応する突起(たとえばそれもまたロゴとして成形してもよい)との連結を追加で提供してもよい。
【0023】
開口器160は、吸引コネクタ部の周囲に対応する弾性ストラップをもたせて一体的に厚いシリコーン材料の射出成形により作られてもよい。開口器160は、マウスピースの吸引コネクタ部120の外部の矩形オス型プラグ220にぴったりと合うように設計された、内部の矩形メス型スロットを有する。開口器は、様々な大きさの口のために様々なサイズで作られてもよい。開口器及びマウスピースは互いに着脱可能であるため、特定の患者の口に対する必要に応じて、各々を様々なサイズで混合して合わせることができる。
【0024】
ここに記載されるマウスピースは、一体成形の高圧蒸気滅菌処理(オートクレーブ)可能で高吸引のバキュームアダプタとともに使用することができる。このような高吸引バキューム本体アダプタは単一の均質な材料で作られてもよい。そのようなバキュームアダプタは、単一レバー設計であり、水、唾液、およびゴミを口腔から外部バキューム源へ除去するのを制御する際、現在のすべての高吸引バキューム吸引器及び唾液エジェクタと同様に機能することができる。単一レバーは、少なくとも部分的に囲まれた本体から吸引コネクタ部内の単一の大きな排気管を通して水、唾液、およびゴミを除去するのを制御するように設計されてもよい。
【0025】
様々な実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は例としてのみ提示されており、限定するものではないことが理解されるべきである。説明は、本明細書に記載された特定の形態に本発明の範囲を限定するものではない。したがって、好ましい実施の形態の広さおよび範囲は、上述の例示的な実施の形態のいずれによっても限定されるべきではない。なお、上記の説明は例示であって制限的なものではないことを理解すべきである。反対に、本説明は、添付の特許請求の範囲によって定義され、そうでなければ当業者によって理解されるように、本発明の趣旨および範囲に含まれるような代替、修正、および均等物を包含することを意図する。従って、本発明の範囲は上記の説明を参照して決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の全範囲を参照して決定されるべきである。
【要約】
【解決手段】歯科処置時にチェアサイドでハンズフリーの吸引・分離により歯科スタッフを支援するために高吸引歯科用アダプタに取り付けられるマウスピースを提供する。マウスピースは、本体部、口角鉤部及び吸引コネクタ部を含む。実施の形態では、本体部、口角鉤部及び吸引コネクタ部(及びそのサブ部分)は、好ましくは射出成形によって一体に成形される。典型的な実施の形態では、マウスピースは、可撓性があり、半透明で、射出成形に向いており、高耐熱性で、高圧蒸気滅菌処理可能である材料で作ってもよい。このような材料にはシリコーンが含まれる。マウスピースを高い耐熱性及び高圧蒸気滅菌処理可能な材料で作ることができるため、マウスピースは再利用可能である。
【選択図】図4
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B