(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記メサ型構造部の高さが3〜10μmであって、平面視した前記傾斜側面の幅が0.5〜7μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
前記ウェットエッチングを、リン酸/過酸化水素水混合液、アンモニア/過酸化水素水混合液、ブロムメタノール混合液、ヨウ化カリウム/アンモニアの群から選択される少なくとも1種以上を用いて行うことを特徴とする請求項14に記載の発光ダイオードの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を適用した発光ダイオード及びその製造方法について、図を用いてその構成を説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
なお、本発明の効果を損ねない範囲で以下に記載していない層を備えてもよい。
【0025】
〔発光ダイオード(第1の実施形態)〕
図1に、本発明を適用した発光ダイオードの一例である共振器型発光ダイオードの断面模式図である。
図2は、
図1で示した発光ダイオードを含むウェハ上に形成された発光ダイオードの斜視図である。
以下に、
図1及び
図2を参照して、本発明を適用した一実施形態の発光ダイオードについて詳細に説明する。
【0026】
図1に示す発光ダイオード100は、基板1上に反射層2と活性層3を含む化合物半導体層とを備えた発光ダイオードであって、その上部に平坦部6と、傾斜側面7a及び頂面7bを外面として有するメサ型構造部7とを有し、平坦部6及びメサ型構造部7はそれぞれ、少なくとも一部は保護膜8、電極膜9によって順に覆われてなり、メサ型構造部7は少なくとも活性層3の一部を含むものであって、傾斜側面7aはウェットエッチングによって形成されてなると共に頂面7bに向かって水平方向の断面積が連続的に小さく形成されてなり、保護膜8は、平坦部6の少なくとも一部と、メサ型構造部7の傾斜側面7aと、メサ型構造部7の頂面7bの周縁領域7baとを少なくとも覆うとともに、平面視して周縁領域7baの内側に化合物半導体層の表面の一部を露出する通電窓8bを有し、電極層9は、通電窓8bから露出された化合物半導体層の表面に直接接触すると共に、平坦部6上に形成された保護膜8の一部を少なくとも覆い、メサ型構造部7の頂面7b上に光射出孔9bを有するように形成された連続膜であって、反射層2はDBR反射層(下部DBR反射層)であり、活性層3の基板1と反対側に上部DBR反射層4に備え、化合物半導体層は電極層9に接触するコンタクト層5を有するものである。
本実施形態の共振器型発光ダイオードのメサ型構造部7は、平面視して矩形であり、電極層9の光射出孔9bは平面視して円形である。メサ型構造部7の平面視は矩形に限定されず、また、光射出孔9bの平面視も円形に限定されない。
メサ型構造部7の電極膜上に、側面からの光の漏れを防止するための光漏れ防止膜16を備えている。
また、基板1の下面側には裏面電極10を備えている。
【0027】
本発明の発光ダイオードは、
図2に示すように、ウェハ状の基板上に多数の発光ダイオード100を作製した後、各発光ダイオードごとにストリート(切断予定ライン)21(点線22はストリート21の長手方向の中心線)に沿って切断することにより製造することができる。すなわち、点線22に沿ってストリート21の部分にレーザーやブレード等を当てることにより、各発光ダイオードごとに切断することができる。
【0028】
メサ型構造部7は、平坦部6に対して上方に突出した構造であり、傾斜側面7aと頂面7bとを外面として有する。
図1で示した例の場合、傾斜側面7aは、活性層3の全層、上部DBR層4及びコンタクト層5の傾斜断面上に保護膜を介して形成された電極層(おもて面電極層)9の表面からなり、頂面7bは、保護膜8の中央部分を覆う部分8dの表面と、電極層9(符号9ba、9bb及び9dの部分)の表面とからなる。
【0029】
また、本発明のメサ型構造部7の内部は、コンタクト層5と、上部DBR層4と、活性層3の少なくとも一部とを含む。
図1で示した例の場合、メサ型構造部7の内部は、コンタクト層5と、上部DBR層4と、活性層3の全層とを含む。メサ型構造部7の内部には、活性層3の一部だけを含んでもよいが、活性層3の全層がメサ型構造部7の内部に含まれるのが好ましい。活性層3で発光した光を全てメサ型構造部内で生ずることになり、光取り出し効率が向上するからである。また、メサ型構造部7の内部に下部DBR層2の一部を含んでもよい。
【0030】
また、メサ型構造部7は、その傾斜側面7aはウェットエッチングによって形成されてなると共に、基板1側から頂面に向かって水平方向の断面積が連続的に小さく形成されてなる。傾斜側面7aはウェットエッチングによって形成されたものなので、下に凸状に形成されてなる。メサ型構造部7の高さhは3〜7μmであって、平面視した傾斜側面7aの幅wが0.5〜7μmであるのが好ましい。この場合、メサ型構造部7の側面が垂直若しくは急傾斜でなく、緩やかな傾斜であるために、保護膜や電極用金属膜を一様な膜厚で形成するのが容易となり、不連続な膜になるおそれがなく、そのため、不連続な膜に起因したリークや通電不良がなく、安定で高輝度の発光が担保されるからである。
また、高さが7μmを超えるまでウェットエッチングを行うと、傾斜側面がオーバーハング形状(逆テーパ状)になりやすくなるので好ましくない。オーバーハング形状(逆テーパ状)では保護膜や電極膜を均一な膜厚で不連続箇所なく形成することが垂直側面の場合よりもさらに困難になる。
なお、本明細書において、高さhとは、平坦部6上の保護膜を介して形成された電極膜9(符号9cの部分)の表面から、保護膜8の符号8baの部分を覆う電極膜9(符号9baの部分)の表面までの垂直方向の距離(
図1参照)をいう。また、幅wとは、保護膜8の符号8baの部分を覆う電極膜9(符号9baの部分)のエッジからそのエッジにつながった傾斜側面の電極膜9(符号9aの部分)の最下のエッジの水平方向の距離(
図1参照)をいう。
【0031】
図3は、メサ型構造部7近傍の断面の電子顕微鏡写真である。
図3で示した例の層構成は、コンタクト層がAl
0.3Ga
0.7Asからなり、層厚が3μmである点以外は、後述する実施例と同様な構成である。
【0032】
本発明のメサ型構造部はウェットエッチングによって形成されてなるので、その頂面側から基板側へ行くほど(図で下方に行くほど)、メサ型構造部の水平断面積(又は、幅もしくは径)の増大率が大きくなるように形成されている。この形状によってメサ型構造部がドライエッチングではなく、ウェットエッチングによって形成されたものであることを判別することができる。
図3で示した例では、高さhは7μmであり、幅wは3.5〜4.5μmであった。
【0033】
メサ型構造部7は、平面視して矩形であるのが好ましい。製造時のウェットエッチングにおける異方性の影響でエッチング深さによりメサ形状が変化することが抑制され、メサ型構造部の各面の面積の制御が容易なので、高精度の寸法形状が得られるからである。
【0034】
発光ダイオードにおけるメサ型構造部7の位置は、
図1及び
図2に示すように、素子の小型化のためには発光ダイオードの長軸方向の一方に片寄っているのが好ましい。平坦部6はボンディングワイヤ(図示せず)を取り付けるのに要する広さが必要であるため、狭くするのには限界があり、メサ型構造部7をもう一方に寄せることにより、平坦部6の範囲を最小化でき、素子の小型化を図ることができるからである。
【0035】
平坦部6は、メサ型構造部7の周囲に配置する部分である。本発明では、十分な荷重(及び超音波)をかけることが可能な電極層の平坦部に位置する部分にワイヤボンディングがなされるので、接合強度の強いワイヤボンディングが実現できる。
【0036】
平坦部6の上には、保護膜8、電極層(おもて面電極層)9が順に形成されており、電極層9の上にはボンディングワイヤ(図示せず)が取り付けられる。平坦部6の保護膜8の直下に配置する材料は、メサ型構造部7の内部の構成により決まる。
図1で示した例の場合、メサ型構造部7の内部はコンタクト層5と、上部DBR層4と、活性層3の全層とを含み、活性層3の直下の層である下部DBR層の最上面が平坦部6の保護膜8の直下に配置するので、平坦部6の保護膜8の直下に配置する材料は下部DBR層の最上面の材料である。
【0037】
保護膜8は、メサ型構造部7の傾斜側面7aを覆う部分8aと、平坦部6の少なくとも一部を覆う部分8c(メサ型構造部7を挟んで反対側の平坦部を覆う部分8ccも含む)と、メサ型構造部7の頂面7bの周縁領域7baを覆う部分8baと、前記頂面7bの中央部分を覆う部分8dとからなり、平面視して周縁領域7baの内側にコンタクト層5の表面の一部を露出する通電窓8bを有する。
本実施形態の通電窓8bは、メサ型構造部7の頂面7bにおいてコンタクト層5の表面のうち、周縁領域7baの下に位置する部分8baと中央部分を覆う部分8dの下に位置する部分との間の径の異なる2つの同心円間の領域を露出する。
【0038】
保護膜8の第1の機能は発光が生じる領域及び光を取り出す範囲を狭くするために、おもて面電極層9の下層に配置しておもて面電極層9と裏面電極10との間の電流が流れる領域を制限することである。すなわち、保護膜8を形成した後、保護膜8を含む全面におもて面電極層を形成し、その後、おもて面電極層をパターニングするが、保護膜8を形成した部分についてはおもて面電極層を除去しなくても裏面電極10との間に電流が流れることはない。裏面電極10との間の電流を流したいところに保護膜8の通電窓8bを形成する。
従って、第1の機能を持たせるように、メサ型構造部7の頂面7bの一部に通電窓8bを形成する構成であれば、通電窓8bの形状や位置は
図1のような形状や位置に限定されない。
【0039】
保護膜8の第2の機能は、第1の機能は必須の機能であるのに対して必須の機能ではないが、
図1に示す保護膜8の場合、第2の機能として、平面視しておもて面電極層9の光射出孔9a内のコンタクト層5の表面に配置して、保護膜8越しに光を取り出すことができ、かつ、光を取り出すコンタクト層5の表面を保護することである。
なお、後述する第2の実施形態では、光射出孔の下に保護膜を有さず、保護膜を介さずに光射出孔9bから直接、光を取り出す構成であり、第2の機能を有さない。
【0040】
保護膜8の材料としては絶縁層として公知のものを用いることができるが、安定した絶縁膜の形成が容易であることから、シリコン酸化膜が好ましい。
なお、本実施形態では、この保護膜8(8d)越しに光を取り出すので、保護膜8は透光性を有する必要がある。
【0041】
また、保護膜8の膜厚は、0.3〜1μmが好ましい。0.3μm未満では絶縁が十分ではないからであり、1μmを超えると形成するのに時間がかかり過ぎるからである。
【0042】
電極層(おもて面電極層)9は、保護膜8のうち傾斜側面7aを覆う部分8aを覆う部分9aと、保護膜8のうち平坦部6の少なくとも一部を覆う部分8cを覆う部分9cと、保護膜8のうちメサ型構造部7の頂面7bの周縁領域7baを覆う部分8baの部分を覆う部分9baと、保護膜8の通電窓8bを埋め込む部分9bb(以下適宜、「コンタクト部分」という)と、メサ型構造部7の頂面7bにおいて保護膜8のうち頂面7bの中央部分を覆う部分8dの外周縁部を覆う部分9dとからなる。
【0043】
電極層(おもて面電極層)9の第1の機能は裏面電極10との間に電流を流すことであり、第2の機能は発光した光が射出される範囲を制限することである。
図1で示した例の場合、第1の機能はコンタクト部分9bbが担い、第2の機能は中央部分を覆う部分8dの外周縁部を覆う部分9dが担っている。
第2の機能については非透光性の保護膜を用いることにより、その保護膜に担わせる構成でもよい。
【0044】
電極層9は平坦部6の保護膜8全体を覆っていてもよいし、その一部を覆っても構わないが、ボンディングワイヤが適切に取り付けるためにはできるだけ広範囲を覆っているのが好ましい。コスト低減の観点から、
図2に示すように、各発光ダイオードごとに切断する際のストリート21には電極層を覆わないのが好ましい。
【0045】
この電極層9はメサ型構造部7の頂面7bにおいてコンタクト部分9bbでしかコンタクト層5に接触していないので、電極層9と裏面電極10とは、コンタクト部9bbと裏面電極10との間でしか電流が流れない。そのため、発光層13において平面視して光射出孔9bと重なる範囲に電流が集中し、その範囲に発光が集中するため、効率的に光を取り出すことができる。
【0046】
電極層9の材料としては公知の電極材料を用いることができるが、良好なオーミックコンタクトが得られることから、AuBe/Auが最も好ましい。
また、電極層9の膜厚は、0.5〜2.0μmが好ましい。0.5μm未満では均一かつ良好なオーミックコンタクトを得ることが困難な上、ボンディング時の強度、厚みが不十分だからであり、2.0μmを超えるとコストがかかり過ぎるからである。
【0047】
図1に示すように、活性層で発光した光がメサ型構造部7の側面から素子外に漏れることを防止する光漏れ防止膜16を備えてもよい。
【0048】
光漏れ防止膜16の材料としては公知の反射材料を用いることができる。電極層9と同じAuBe/Auでもよい。
【0049】
本実施形態においては、光射出孔9bの下に保護膜8d(8)が形成されており、メサ型構造部7の頂面において保護膜8d(8)を介して光射出孔9bから光を取り出す構成である。
【0050】
光射出孔9bの形状は、平面視して円形又は楕円であるのが好ましい。矩形等の角を持つ構造に比べ均一なコンタクト領域を形成しやすく、角部での電流集中等の発生を抑制できる。また、受光側でのファイバー等への結合に適しているからである。
【0051】
光射出孔9bの径は、50〜150μmであるのが好ましい。50μm未満では射出部での電流密度が高くなり、低電流で出力が飽和してしまう一方、150μmを超えると射出部全体への電流拡散が困難であるため、注入電流に対する発光効率が低下するからである。
【0052】
基板1としては、例えば、GaAs基板を用いることができる。
【0053】
GaAs基板を用いる場合は、公知の製法で作製された市販品の単結晶基板を使用できる。GaAs基板のエピタキシャル成長させる表面は、平滑であることが望ましい。GaAs基板の表面の面方位は、エピ成長しやすく、量産されている(100)面および(100)から、±20°以内にオフした基板が、品質の安定性の面からのぞましい。さらに、GaAs基板の面方位の範囲が、(100)方向から(0−1−1)方向に15°オフ±5°であることがより好ましい。
【0054】
GaAs基板の転位密度は、下部DBR層2、活性層3及び上部DBR層4の結晶性を良くするために低い方が望ましい。具体的には、例えば、10,000個cm
−2以下、望ましくは、1,000個cm
−2以下であることが好適である。
【0055】
GaAs基板は、n型であってもp型であってもよい。GaAs基板のキャリア濃度は、所望の電気伝導度と素子構造から、適宜選択することができる。例えば、GaAs基板がSiドープのn型である場合には、キャリア濃度が1×10
17〜5×10
18cm
−3の範囲であることが好ましい。これに対して、GaAs基板がZnをドープしたp型の場合には、キャリア濃度2×10
18〜5×10
19cm
−3の範囲であることが好ましい。
【0056】
GaAs基板の厚さは、基板のサイズに応じて適切な範囲がある。GaAs基板の厚さが適切な範囲よりも薄いと、化合物半導体層の製造プロセス中に割れてしまうおそれがある。一方、GaAs基板の厚さが適切な範囲よりも厚いと材料コストが増加することになる。このため、GaAs基板の基板サイズが大きい場合、例えば、直径75mmの場合には、ハンドリング時の割れを防止するために250〜500μmの厚さが望ましい。同様に、直径50mmの場合は、200〜400μmの厚さが望ましく、直径100mmの場合は、350〜600μmの厚さが望ましい。
【0057】
このように、GaAs基板の基板サイズに応じて基板の厚さを厚くすることにより、活性層3に起因する化合物半導体層の反りを低減することができる。これにより、エピタキシャル成長中の温度分布が均一となることため、活性層3の面内の波長分布を小さくすることができる。なお、GaAs基板の形状は、特に円形に限定されず、矩形等であっても問題ない。
【0058】
反射層(下部DBR層2)及び化合物半導体層(活性層3、上部DBR層4、コンタクト層5)の構造には、公知の機能層を適時加えることができる。例えば、素子駆動電流を発光部の全般に平面的に拡散させるための電流拡散層、逆に素子駆動電流の通流する領域を制限するための電流阻止層や電流狭窄層など公知の層構造を設けることができる。
【0059】
基板1上に形成される反射層(下部DBR層)及び化合物半導体層は、下部DBR層2、活性層3及び上部DBR層4が順次積層されて構成されている。
【0060】
DBR(Distributed Bragg Reflector)層は、λ/(4n)の膜厚で(λ:反射すべき光の真空中での波長、n:層材料の屈折率)、屈折率が異なる2種類の層を交互に積層した多層膜からなるものである。反射率は2種類の屈折率の差が大きいと、比較的少ない層数の多層膜で高反射率が得られる。通常の反射膜のようにある面で反射されるのでなく、多層膜の全体として光の干渉現象に基づき反射が起きることが特徴である。
DBR層の材料は発光波長に対して透明であることが好ましく、又、DBR層を構成する2種類の材料の屈折率の差が大きくなる組み合わせとなるよう選択されるのが好ましい。
【0061】
下部DBR層2は、屈折率の異なる2種類の層が交互に10〜50対積層されてなるのが好ましい。10対以下である場合は反射率が低すぎるために出力の増大に寄与せず、50対以上にしてもさらなる反射率の増大は小さいからである。
下部DBR層2を構成する屈折率の異なる2種類の層は、組成の異なる2種類の(Al
XhGa
1−Xh)
Y3In
1−Y3P(0<Xh≦1、Y3=0.5)、(Al
XlGa
1−Xl)
Y3In
1−Y3P;0≦Xl<1、Y3=0.5)の対であり、両者のAlの組成差ΔX=xh−xlが0.5より大きいか又は等しくなる組み合わせか、又は、GaInPとAlInPの組み合わせか、又は、組成の異なる2種類のAl
xlGa
1−xlAs(0.1≦xl≦1)、Al
xhGa
1−xhAs(0.1≦xh≦1)の対であり、両者の組成差ΔX=xh−xlが0.5より大きいか等しくなる組み合わせかのいずれかから選択されるのが効率よく高い反射率が得られることから望ましい。
組成の異なるAlGaInPの組み合わせは、結晶欠陥を生じやすいAsを含まないので好ましく、GaInPとAlInPはその中で屈折率差を最も大きくとれるので、反射層の数を少なくすることができ、組成の切り替えも単純であるので好ましい。また、AlGaAsは、大きな屈折率差をとりやすいという利点がある。
【0062】
上部DBR層4も、下部DBR層2と同様の層構造を用いることができるが、上部DBR層4を透過させて光を射出する必要があるので、下部DBR層2よりも反射率が低くなるように構成する。具体的には、下部DBR層2と同じ材料からなる場合、下部DBR層2よりも層数が少なくなるように、屈折率の異なる2種類の層が交互に3〜10対積層されてなるのが好ましい。2対以下である場合は反射率が低すぎるために出力の増大に寄与せず、11対以上にすると上部DBR層4を透過する光量が低下しすぎるからである。
【0063】
本発明の発光ダイオードは、活性層3を低反射率の上部DBR層4と高反射率の下部DBR層2で挟み、活性層3で発光した光が上部DBR層4と下部DBR層2と間で共振して定在波の腹が発光層に位置させる構成をとることにより、レーザ発振させないで、従来の発光ダイオードよりも指向性が高く、高効率の発光ダイオードとなっている。
【0064】
図4に示すように、活性層3は、下部クラッド層11、下部ガイド層12、発光層13、上部ガイド層14、上部クラッド層15が順次積層されて構成されている。すなわち、活性層3は、放射再結合をもたらすキャリア(担体;carrier)及び発光を発光層13に「閉じ込める」ために、発光層13の下側及び上側に対峙して配置した下部クラッド層11、下部ガイド層12、及び上部ガイド層14、上部クラッド層15を含む、所謂、ダブルヘテロ(英略称:DH)構造とすることが高強度の発光を得る上で好ましい。
【0065】
図4に示すように、発光層13は、発光ダイオード(LED)の発光波長を制御するため、量子井戸構造を構成することができる。すなわち、発光層13は、バリア層(障壁層ともいう)18を両端に有する、井戸層17とバリア層18との多層構造(積層構造)とすることができる。
【0066】
発光層13の層厚は、0.02〜2μmの範囲であることが好ましい。発光層13の伝導型は特に限定されるものではなく、アンドープ、p型及びn型のいずれも選択することができる。発光効率を高めるには、結晶性が良好なアンドープ又は3×10
17cm
−3未満のキャリア濃度とすることが望ましい。
【0067】
井戸層17の材料としては公知の井戸層材料を用いることができる。例えば、AlGaAs、InGaAs、AlGaInPを用いることができる。
【0068】
井戸層17の層厚は、3〜30nmの範囲が好適である。より好ましくは、3〜10nmの範囲である。
【0069】
バリア層18の材料としては、井戸層17の材料に対して適した材料を選択するのが好ましい。バリア層18での吸収を防止して発光効率を高めるため、井戸層17よりもバンドギャップが大きくなる組成とするのが好ましい。
【0070】
例えば、井戸層17の材料としてAlGaAs又はInGaAsを用いた場合にはバリア層18の材料としてAlGaAsやAlGaInPが好ましい。バリア層18の材料としてAlGaInPを用いた場合、欠陥を作りやすいAsを含まないので結晶性が高く、高出力に寄与する。
井戸層17の材料として(Al
X1Ga
1−X1)
Y1In
1−Y1P(0≦X1≦1,0<Y1≦1)を用いた場合、バリア層18の材料としてよりAl組成の高い(Al
X4Ga
1−X4)
Y1In
1−Y1P(0≦X4≦1,0<Y1≦1,X1<X4)または井戸層(Al
X1Ga
1−X1)
Y1In
1−Y1P(0≦X1≦1,0<Y1≦1)よりバンドギャップエネルギーが大きくなるAlGaAsを用いることができる。
【0071】
バリア層18の層厚は、井戸層17の層厚と等しいか又は井戸層17の層厚より厚いのが好ましい。トンネル効果が生じる層厚範囲で十分に厚くすることにより、トンネル効果による井戸層間への広がりが抑制されてキャリアの閉じ込め効果が増大し、電子と正孔の発光再結合確率が大きくなり、発光出力の向上を図ることができる。
【0072】
井戸層17とバリア層18との多層構造において、井戸層17とバリア層18とを交互
に積層する対の数は特に限定されるものではないが、2対以上40対以下であることが好ましい。すなわち、活性層11には、井戸層17が2〜40層含まれていることが好ましい。ここで、活性層11の発光効率が好適な範囲としては、井戸層17が5層以上であることが好ましい。一方、井戸層17及びバリア層18は、キャリア濃度が低いため、多くの対にすると順方向電圧(V
F)が増大してしまう。このため、40対以下であることが好ましく、20対以下であることがより好ましい。
【0073】
下部ガイド層12及び上部ガイド層14は、
図4に示すように、発光層13の下面及び上面にそれぞれ設けられている。具体的には、発光層13の下面に下部ガイド層12が設けられ、発光層13の上面に上部ガイド層14が設けられている。
【0074】
下部ガイド層12および上部ガイド層14の材料としては、公知の化合物半導体材料を用いることができ、発光層13の材料に対して適した材料を選択するのが好ましい。例えば、AlGaAs、AlGaInPを用いることができる。
【0075】
例えば、井戸層17の材料としてAlGaAs又はInGaAsを用い、バリア層18の材料としてAlGaAs又はAlGaInPを用いた場合、下部ガイド層12および上部ガイド層14の材料としてはAlGaAs又はAlGaInPが好ましい。下部ガイド層12および上部ガイド層14の材料としてAlGaInPを用いた場合、欠陥を作りやすいAsを含まないので結晶性が高く、高出力に寄与する。
井戸層17の材料として(Al
X1Ga
1−X1)
Y1In
1−Y1P(0≦X1≦1,0<Y1≦1)を用いた場合、ガイド層14の材料としてよりAl組成の高い(Al
X4Ga
1−X4)
Y1In
1−Y1P(0≦X4≦1,0<Y1≦1,X1<X4)または井戸層(Al
X1Ga
1−X1)
Y1In
1−Y1P(0≦X1≦1,0<Y1≦1)よりバンドギャップエネルギーが大きくなるAlGaAsを用いることができる。
【0076】
下部ガイド層12及び上部ガイド層14は、夫々、下部クラッド層11及び上部クラッド層15と活性層11との欠陥の伝搬を低減するために設けられている。このため、下部ガイド層12および上部ガイド層14の層厚は10nm以上が好ましく、20nm〜100nmがより好ましい。
【0077】
下部ガイド層12及び上部ガイド層14の伝導型は特に限定されるものではなく、アンドープ、p型及びn型のいずれも選択することができる。発光効率を高めるには、結晶性が良好なアンドープ又は3×10
17cm
−3未満のキャリア濃度とすることが望ましい。
【0078】
下部クラッド層11及び上部クラッド層15は、
図4に示すように、下部ガイド層12の下面及び上部ガイド層14上面にそれぞれ設けられている。
【0079】
下部クラッド層11及び上部クラッド層15の材料としては、公知の化合物半導体材料を用いることができ、発光層13の材料に対して適した材料を選択するのが好ましい。例えば、AlGaAs、AlGaInPを用いることができる。
【0080】
例えば、井戸層17の材料としてAlGaAs又はInGaAsを用い、バリア層18の材料としてAlGaAs又はAlGaInPを用いた場合、下部クラッド層11及び上部クラッド層15の材料としてはAlGaAs又はAlGaInPが好ましい。下部クラッド層11及び上部クラッド層15の材料としてAlGaInPを用いた場合、欠陥を作りやすいAsを含まないので結晶性が高く、高出力に寄与する。
井戸層17の材料として(Al
X1Ga
1−X1)
Y1In
1−Y1P(0≦X1≦1,0<Y1≦1)を用いた場合、クラッド層15の材料としてよりAl組成の高い(Al
X4Ga
1−X4)
Y1In
1−Y1P(0≦X4≦1,0<Y1≦1,X1<X4)または井戸層(Al
X1Ga
1−X1)
Y1In
1−Y1P(0≦X1≦1,0<Y1≦1)よりバンドギャップエネルギーが大きくなるAlGaAsを用いることができる。
【0081】
下部クラッド層11と上部クラッド層15とは、極性が異なるように構成されている。また、下部クラッド層11及び上部クラッド層15のキャリア濃度及び厚さは、公知の好適な範囲を用いることができ、活性層11の発光効率が高まるように条件を最適化することが好ましい。なお、下部および上部クラッド層は設けなくてもよい。
また、下部クラッド層11及び上部クラッド層15の組成を制御することによって、化合物半導体層20の反りを低減させることができる。
【0082】
コンタクト層5は、電極との接触抵抗を低下させるために設けられている。コンタクト層5の材料は、発光層13よりバンドギャップの大きい材料であることが好ましい。また、コンタクト層5のキャリア濃度の下限値は、電極との接触抵抗を低下させるために5×10
17cm
−3以上であることが好ましく、1×10
18cm
−3以上がより好ましい。キャリア濃度の上限値は、結晶性の低下が起こりやすくなる2×10
19cm
−3以下が望ましい。コンタクト層5の厚さは、0.05μm以上が好ましい。コンタクト層5の厚さの上限値は特に限定されないが、エピタキシャル成長に係るコストを適正範囲にするため、10μm以下とすることが望ましい。
【0083】
本発明の発光ダイオードは、ランプ、バックライト、携帯電話、ディスプレイ、各種パネル類、コンピュータ、ゲーム機、照明などの電子機器や、それらの電子機器を組み込んだ自動車などの機械装置等に組み込むことができる。
【0084】
〔発光ダイオード(第2の実施形態)〕
図5に、本発明を適用した発光ダイオードの一例である共振器型発光ダイオードの他の例を示した断面模式図を示す。
第1の実施形態においては、光射出孔の下に保護膜が形成されており、メサ型構造部の頂面において保護膜を介して光射出孔から光を取り出す構成であったが、第2の実施形態は、光射出孔の下に保護膜を有さず、保護膜を介さずに光射出孔9bから直接、光を取り出す構成である。
すなわち、第2の実施形態に係る共振器型発光ダイオード200では、保護膜28は、平坦部6の少なくとも一部28cと、メサ型構造部7の傾斜側面7aと、メサ型構造部7の頂面7bの周縁領域7baとを覆うとともに、平面視して周縁領域7baの内側にコンタクト層5の表面を露出する通電窓28bを有し、電極膜29は、保護膜28を介して平坦部6の少なくとも一部と、保護膜28を介してメサ型構造部7の傾斜側面7aと、保護膜28を介してメサ型構造部7の頂面7bの周縁領域7baとを覆い、さらに、メサ型構造部7の頂面において通電窓28bから露出するコンタクト層5の表面の一部だけを覆ってコンタクト層5の表面の他の部分5aを露出する光射出孔29bを有する、ことを特徴とする。
【0085】
図5に示すように、第2の実施形態の保護膜28は、メサ型構造部7の傾斜側面7aを覆う部分28aと、平坦部6の少なくとも一部を覆う部分28c(メサ型構造部7を挟んで反対側の平坦部を覆う部分28ccも含む)と、メサ型構造部7の頂面7bの周縁領域7baを覆う部分28baとからなり、平面視して周縁領域7baの内側にコンタクト層5の表面を露出する通電窓28bを有する。すなわち、通電窓28bはメサ型構造部7の頂面7bにおいてコンタクト層5の表面のうち、周縁領域7baの下に位置する部分以外を露出する。保護膜8の上に電極層(おもて面電極層)9を形成するが、この電極層9と裏面電極10との間において電流を流さない部分に保護膜8を形成している。
【0086】
また、
図5に示すように、第2の実施形態の電極層(おもて面電極層)29は、保護膜28のうち傾斜側面7aを覆う部分28aを覆う部分29aと、保護膜28のうち平坦部6の少なくとも一部を覆う部分28cを覆う部分29cと、保護膜28のうちメサ型構造部7の頂面7bの周縁領域7baを覆う部分28baの部分を覆う部分29baと、メサ型構造部7の頂面7bにおいて保護膜28のうち符号28baの部分を越えて光射出孔29bを開口するようにコンタクト層5を覆う部分29bbとからなる。
第2の実施形態の電極層(おもて面電極層)29では、部分29bbが上記の第1の機能及び第2の機能の両方を担っている。
【0087】
〔発光ダイオード(第3の実施形態)〕
本発明を適用した第3の実施形態の発光ダイオードは、第1の実施形態の発光ダイオードと比較すると、上部DBR反射層がなく、その替わりに電流拡散層を備えた点が異なる。
【0088】
図6に、第3の実施形態に係る発光ダイオード300の一例の断面模式図を示す。
図6に示すように、発光ダイオード300は、活性層3上に電流拡散層40を備えた構成である。
【0089】
本実施形態では、電流拡散層40の材料としては、例えば、AlGaAs等を用いることができる。
電流拡散層40の厚さとしては、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。0.1μm未満では電流拡散効果が不十分だからであり、10μmを超えると効果に対しエピタキシャル成長に係わるコストが大きすぎるからである。
【0090】
〔発光ダイオード(第4の実施形態)〕
本発明を適用した第4の実施形態の発光ダイオードは、第1の実施形態の発光ダイオードと比較すると、上部DBR反射層がなく、また、下部DBR反射層に替えて金属からなる反射層を備えると共に、基板として金属基板やシリコンやゲルマニウム等からなる基板の導電性基板を備えた点が異なる。
なお、本実施形態では、上部クラッド層が第3の実施形態における電流拡散層40の電流拡散機能をも有する構成としてもよい。
【0091】
図7に、第4の実施形態に係る発光ダイオード400の一例の断面模式図を示す。
図7に示すように、発光ダイオード400は、導電性基板51上に金属からなる反射層52、GaP層53、活性層54、コンタクト層5を順に備えた発光ダイオードである。また、導電性基板51の下面側には裏面電極56を備えている。
【0092】
金属からなる反射層52としては、発光波長に対して90%以上の反射率を有する金属が好ましく、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、又はこれらの合金やAgPdCu合金(APC)により構成される。
【0093】
活性層54は、上部クラッド層63aと、発光層64と、下部クラッド層63bとを含む構成であるが、上部クラッド層に、第3の実施形態における電流拡散層40の電流拡散機能をも持たせる場合、上部クラッド63aの厚さとしては、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。0.1μm未満では電流拡散効果が不十分だからであり、10μmを超えると効果に対しエピタキシャル成長に係わるコストが大きすぎるからである。
【0094】
GaP層53は、金属からなる反射層52と、化合物半導体からなる活性層54の両方に対して接触抵抗を低く両者を電気的に接続することができる。かかる機能を有する材料であれば、GaPに限らず、(Al
xGa
(1−x))
(1−y)In
yP、(Al
xGa
(1−x))
(1−y)In
yAs等を用いることができる。
GaP層53の厚さとしては、1μm以上5μm以下であることが好ましい。1μm未満では接合界面の応力により、発光出力が低下するからであり、5μmを超えると効果に対しエピタキシャル成長に係わるコストが大きすぎるからである。
【0095】
導電性基板51の材料としては、金属、Si、Ge、GaP、GaInP、SiC等を用いることができる。Si基板、Ge基板は安価で耐湿性に優れているという利点がある。GaP、GaInP、SiC基板は、発光部と熱膨張係数が近く、耐湿性に優れ、熱伝導性が良いという利点がある。金属基板はコスト面、機械強度、放熱性の観点から優れており、また、後述するように、複数の金属層(金属板)を積層した構造とすることにより、金属基板全体として熱膨張係数を調整できるという利点がある。
【0096】
導電性基板51として金属基板を用いる場合、複数の金属層(金属板)を積層した構造とすることができる。
複数の金属層(金属板)を積層した構造とする場合、2種類の金属層が交互に積層されてなるのが好ましく、特に、この2種類の金属層(例えば、これらを第1の金属層、第2の金属層という)の層数は合わせて奇数とするのが好ましい。
【0097】
例えば、第2の金属層を第1の金属層で挟んだ金属基板とした場合、金属基板の反りや割れの観点から、第2の金属層として化合物半導体層より熱膨張係数が小さい材料を用いるときは、第1の金属層、を化合物半導体層3より熱膨張係数が大きい材料からなるものを用いるのが好ましい。金属基板全体としての熱膨張係数が化合物半導体層の熱膨張係数に近いものとなるため、化合物半導体層と金属基板とを接合する際の金属基板の反りや割れを抑制することができ、発光ダイオードの製造歩留まりを向上させることができるからである。同様に、第2の金属層として化合物半導体層2より熱膨張係数が大きい材料を用いるときは、第1の金属層、を化合物半導体層2より熱膨張係数が小さい材料からなるものを用いるのが好ましい。金属基板全体としての熱膨張係数が化合物半導体層の熱膨張係数に近いものとなるため、化合物半導体層と金属基板とを接合する際の金属基板の反りや割れを抑制でき、発光ダイオードの製造歩留まりを向上できるからである。
以上の観点からは、2種類の金属層はいずれが第1の金属層でも第2の金属層でも構わない。
2種類の金属層としては、例えば、銀(熱膨張係数=18.9ppm/K)、銅(熱膨張係数=16.5ppm/K)、金(熱膨張係数=14.2ppm/K)、アルミニウム(熱膨張係数=23.1ppm/K)、ニッケル(熱膨張係数=13.4ppm/K)およびこれらの合金のいずれかからなる金属層と、モリブデン(熱膨張係数=5.1ppm/K)、タングステン(熱膨張係数=4.3ppm/K)、クロム(熱膨張係数=4.9ppm/K)およびこれらの合金のいずれかからなる金属層との組み合わせを用いることができる。
好適な例としては、Cu/Mo/Cuの3層からなる金属基板があげられる。上記の観点ではMo/Cu/Moの3層からなる金属基板でも同様な効果が得られるが、Cu/Mo/Cuの3層からなる金属基板は、機械的強度が高いMoを加工しやすいCuで挟んだ構成なので、Mo/Cu/Moの3層からなる金属基板よりも切断等の加工が容易であるという利点がある。
【0098】
金属基板全体としての熱膨張係数は例えば、Cu(30μm)/Mo(25μm)/Cu(30μm)の3層からなる金属基板では6.1ppm/Kであり、Mo(25μm)/Cu(70μm)/Mo(25μm)の3層からなる金属基板では5.7ppm/Kとなる。
【0099】
また、放熱の観点からは、金属基板を構成する金属層は熱伝導率が高い材料からなるのが好ましい。これにより、金属基板の放熱性を高くして、発光ダイオードを高輝度で発光させることができるとともに、発光ダイオードの寿命を長寿命とすることができるからである。
例えば、銀(熱伝導率=420W/m・K)、銅(熱伝導率=398W/m・K)、金(熱伝導率=320W/m・K)、アルミニウム(熱伝導率=236W/m・K)、モリブデン(熱伝導率=138W/m・K)、タングステン(熱伝導率=174W/m・K)およびこれらの合金などを用いることが好ましい。
それらの金属層の熱膨張係数が化合物半導体層の熱膨張係数と略等しい材料からなるのがさらに好ましい。特に、金属層の材料が、化合物半導体層の熱膨張係数の±1.5ppm/K以内である熱膨張係数を有する材料であるのが好ましい。これにより、金属基板と化合物半導体層との接合時の発光部への熱によるストレスを小さくすることができ、金属基板を化合物半導体層と接続させたときの熱による金属基板の割れを抑制することができ、発光ダイオードの製造歩留まりを向上させることができる。
金属基板全体としての熱伝導率は例えば、Cu(30μm)/Mo(25μm)/Cu(30μm)の3層からなる金属基板では250W/m・Kとなり、Mo(25μm)/Cu(70μm)/Mo(25μm)の3層からなる金属基板では220W/m・Kとなる。
【0100】
また、金属基板の上面及び下面を金属保護膜で覆うことが好ましい。さらにその側面も金属保護膜で覆うことが好ましい。
金属保護膜の材料としては、密着性に優れるクロム、ニッケル、化学的に安定な白金、又は金の少なくともいずれか一つを含む金属からなるものであることが好ましい。
金属保護膜は密着性がよいニッケルと耐薬品に優れる金を組み合わせた層からなるのが最適である。
金属保護膜の厚さは特に制限はないが、エッチング液に対する耐性とコストのバランスから、0.2〜5μm、好ましくは、0.5〜3μmが適正な範囲である。高価な金の場合は、厚さは2μm以下が望ましい。
【0101】
〔発光ダイオード(第1の実施形態)の製造方法〕
次に、本発明の発光ダイオードの製造方法の一実施形態として、第1の実施形態の発光ダイオード(共振器型発光ダイオード)の製造方法を説明する。
図8は、発光ダイオードの製造方法の一工程を示す断面摸式図である。また、
図9は、
図8の後の一工程を示す断面摸式図である。
【0102】
(化合物半導体層の形成工程)
まず、
図8に示す化合物半導体層20を作製する。
化合物半導体層20は、基板1上に、下部DBR層2と、活性層3と、上部DBR層4と、コンタクト層5とを順次積層して作製する。
【0103】
基板1と下部DBR層2との間に、緩衝層(バッファ)を設けてもよい。緩衝層は、基板1と活性層3の構成層との欠陥の伝搬を低減するために設けられている。このため、基板の品質やエピタキシャル成長条件を選択すれば、緩衝層は、必ずしも必要ではない。また、緩衝層の材質は、エピタキシャル成長させる基板と同じ材質とすることが好ましい。緩衝層には、欠陥の伝搬を低減するために基板と異なる材質からなる多層膜を用いることもできる。緩衝層の厚さは、0.1μm以上とすることが好ましく、0.2μm以上とすることがより好ましい。
【0104】
本実施形態では、分子線エピタキシャル法(MBE)や減圧有機金属化学気相堆積法(MOCVD法)等の公知の成長方法を適用することができる。なかでも、量産性に優れるMOCVD法を適用することが、最も望ましい。具体的には、化合物半導体層のエピタキシャル成長に使用する基板1は、成長前に洗浄工程や熱処理等の前処理を実施して、表面の汚染や自然酸化膜を除去することが望ましい。上記化合物半導体層を構成する各層は、直径50〜150mmの基板1をMOCVD装置内にセットし、同時にエピタキシャル成長させて積層することができる。また、MOCVD装置としては、自公転型、高速回転型等の市販の大型装置を適用することができる。
【0105】
上記化合物半導体層20の各層をエピタキシャル成長する際、III族構成元素の原料としては、例えば、トリメチルアルミニウム((CH
3)
3Al)、トリメチルガリウム((CH
3)
3Ga)及びトリメチルインジウム((CH
3)
3In)を用いることができる。また、Mgのドーピング原料としては、例えば、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(bis−(C
5H
5)
2Mg)等を用いることができる。また、Siのドーピング原料としては、例えば、ジシラン(Si
2H
6)等を用いることができる。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH
3)、アルシン(AsH
3)等を用いることができる。
さらに、各層のキャリア濃度及び層厚、温度条件は、適宜選択することができる。
【0106】
このようにして作製した化合物半導体層は、活性層3を有するにもかかわらず結晶欠陥が少ない良好な表面状態が得られる。また、化合物半導体層20は、素子構造に対応して研磨などの表面加工を施しても良い。
【0107】
(裏面電極の形成工程)
次に、
図8に示すように、基板1の裏面に、裏面電極10を形成する。
具体的には、例えば、基板がn型基板である場合には、蒸着法により、例えば、Au、AuGeを順に積層してn型オーミック電極の裏面電極10を形成する。
【0108】
(メサ型構造部の形成工程)
次に、メサ型構造部(保護膜及び電極膜を除く)を形成するために、メサ型構造部以外の部分の化合物半導体層すなわち、コンタクト層と上部DBR層と活性層の少なくとも一部と、又は、コンタクト層と上部DBR層と活性層と下部DBR層の少なくとも一部とをウェットエッチングする。
具体的には、まず、
図9に示すように、化合物半導体層の最上層であるコンタクト層上にフォトレジストを堆積し、フォトリソグラフィによりメサ型構造部以外に開口23aを有するレジストパターン23を形成する。
レジストパターンにおいてメサ型構造部形成予定箇所の大きさを、「メサ型構造部」の頂面より各辺上下左右10μm程度大きめに形成するのが好ましい。
【0109】
次いで、例えば、リン酸/過酸化水素水混合液を用いて、メサ型構造部以外の部分のコンタクト層と上部DBR層と活性層の少なくとも一部、又は、コンタクト層と上部DBR層と活性層と下部DBR層の少なくとも一部をエッチングして除去する。
リン酸/過酸化水素水混合液としては例えば、H
2PO
4:H
2O
2:H
2O=1〜3:4〜6:8〜10のリン酸/過酸化水素水混合液を用いて、ウェットエッチング時間を30〜120秒間として、上記エッチング除去を行うことができる。
その後、レジストを除去する。
【0110】
メサ型構造部の平面視形状はレジストパターン23の開口23aの形状によって決まる。レジストパターン23に所望の平面視形状に対応する形状の開口23aを形成する。
また、エッチングの深さすなわち、化合物半導体層のうち、どの層までエッチング除去するかは、エッチャントの種類及びエッチング時間によって決まる。
【0111】
図10に、H
2PO
4:H
2O
2:H
2O=2:5:9(100:250:450)、56%(H
2O)、液温30℃〜34℃のエッチャントを用いて、後述する実施例1で示した化合物半導体層についてウェットエッチングを行った場合のエッチング時間に対する深さ及び幅の関係を示す。表1にその条件及び結果を数値で示す。
【0113】
図10及び表1から、エッチング深さ(
図1の「h」に相当)はエッチング時間(sec)にほぼ比例するが、エッチング幅はエッチング時間が長くなるほど増大率が大きくなることがわかる。すなわち、
図3に示すように、深くなるほど(図で下方に行くほど)、メサ型構造部の水平断面積(又は、幅もしくは径)の増大率が大きくなるように形成される。このエッチング形状はドライエッチングによるエッチング形状とは異なる。従って、メサ型構造部の傾斜斜面の形状から、メサ型構造部がドライエッチングで形成されたのか、又は、ウェットエッチングで形成されたのかを判別することができる。
【0114】
(保護膜の形成工程)
次に、全面に保護膜8の材料を成膜する。具体的には、例えば、SiO
2を全面にスパッタリング法により成膜する。
【0115】
(ストリートおよびコンタクト層の部分の保護膜の除去工程)
次に、全面にフォトレジストを堆積し、フォトリソグラフィによりコンタクト層上の通電窓8bに対応する部分とストリートに対応する部分と、を開口とするレジストパターンを形成する。
次いで、例えば、バッファードフッ酸を用いてウェットエッチングにより、メサ型構造部の頂面の通電窓8bに対応する部分とストリートに対応する部分の保護膜8の材料を除去して保護膜8を形成する。
図11に、保護膜8の通電窓8b近傍の平面図を示す。
その後、レジストを除去する。
【0116】
(おもて面電極層の形成工程)
次に、おもて面電極層9を形成する。すなわち、保護膜8上、及び、保護膜8の通電窓8bから露出しているコンタクト層5上に、光射出孔9bを有するおもて面電極層9を形成する。
具体的には、全面にフォトレジストを堆積し、フォトリソグラフィにより光射出孔9bに対応する部分と、ウェハ基板上の多数の発光ダイオード間の切断部分(ストリート)とを含む、電極膜が不要な部分以外を開口とするレジストパターンを形成する。次いで、電極層材料を蒸着する。この蒸着だけではメサ型構造部の傾斜側面には電極層材料が十分には蒸着されない場合は、さらに、メサ型構造部の傾斜側面に電極層材料を蒸着するために蒸着金属が回りこみやすいプラネタリタイプの蒸着装置を用いて蒸着を行う。
その後、レジストを除去する。
【0117】
光射出孔9bの形状はレジストパターン(図示せず)の開口の形状によって決まる。この開口形状を所望の光射出孔9bの形状に対応するものとしたレジストパターンを形成する。
【0118】
(個片化工程)
次に、ウェハ基板上の発光ダイオードを個片化する。
具体的には、例えば、ダイシングソーもしくはレーザーにより、ストリート部分を切断してウェハ基板上の発光ダイオード毎に切断して個片化する。
【0119】
〔発光ダイオード(第2の実施形態)の製造方法〕
本発明の発光ダイオード(第2の実施形態)は、発光ダイオード(第1の実施形態)と保護膜及び電極の配置構成が異なるだけであり、その製造方法は発光ダイオード(第1の実施形態)の製造方法と同様に行うことができる。
【0120】
〔発光ダイオード(第3の実施形態)の製造方法〕
本発明の発光ダイオード(第3の実施形態)の製造方法において、発光ダイオード(第1の実施形態)の製造方法と異なる点は、化合物半導体層の形成工程で、基板1上に、下部DBR層2と、活性層3とを積層した後、活性層3上に電流拡散層40を積層する点であり、その他は発光ダイオード(第1の実施形態)の製造方法と同様に行うことができる。
【0121】
〔発光ダイオード(第4の実施形態)の製造方法〕
次に、本発明の発光ダイオード(第4の実施形態)の製造方法を説明する。
基板51として金属基板を用いた場合について説明する。
【0122】
<金属基板の製造工程>
図12(a)〜
図12(c)は、金属基板の製造工程を説明するための金属基板の一部の断面模式図である。
金属基板51として、熱膨張係数が活性層の材料より大きい第1の金属層(第1の金属板)51bと、熱膨張係数が活性層の材料より小さい第2の金属層(第2の金属板)51aとを採用して、ホットプレスして形成する。
【0123】
具体的にはまず、2枚の略平板状の第1の金属層51bと、1枚の略平板状の第2の金属層51aを用意する。例えば、第1の金属層51bとしては厚さ10μmのCu、第2の金属層51aとしては厚さ75μmのMoを用いる。
次に、
図12(a)に示すように、2枚の第1の金属層51bの間に第2の金属層51aを挿入してこれらを重ねて配置する。
【0124】
次に、重ね合わせたそれらの金属層を所定の加圧装置に配置して、高温下で第1の金属層51bと第2の金属層51aに矢印の方向に荷重をかける。これにより、
図12(b)に示すように、第1の金属層51bがCuであり、第2の金属層51aがMoであり、Cu(10μm)/Mo(75μm)/Cu(10μm)の3層からなる金属基板1を形成する。
金属基板51は、例えば、熱膨張係数が5.7ppm/Kとなり、熱伝導率は220W/m・Kとなる。
【0125】
次に、
図12(c)に示すように、金属基板1の全面すなわち、上面、下面及び側面を覆う金属保護膜51cを形成する。このとき、金属基板は各発光ダイオードに個片化のために切断される前なので、金属保護膜が覆う側面とは金属基板(プレート)の外周側面である。従って、個片化後の各発光ダイオードの金属基板51の側面を金属保護膜51cで覆う場合には別途、金属保護膜で側面を覆う工程を実施する。
図12(c)は、金属基板(プレート)の外周端側でない箇所の一部を示しているものであり、外周側面の金属保護膜は図に表れていない。
【0126】
金属保護膜は公知の膜形成方法を用いることができるが、側面を含めた全面に膜形成が
できるめっき法が最も好ましい。
例えば、無電解めっき法では、ニッケルその後、金をめっきし、金属基板の上面、側面、
下面をニッケル膜及び金膜(金属保護膜)で覆われた金属基板51を作製できる。
めっき材質は、特に制限はなく、銅、銀、ニッケル、クロム、白金、金など公知の材質
が適用できるが、密着性がよいニッケルと耐薬品に優れる金を組み合わせた層が最適であ
る。
めっき法は、公知の技術、薬品が使用できる。電極が不要な無電解めっき法が、簡便で
望ましい。
【0127】
<化合物半導体層の形成工程>
まず、
図13に示すように、半導体基板(成長用基板)61の一面61a上に、複数のエピタキシャル層を成長させて活性層54を含むエピタキシャル積層体80を形成する。
半導体基板61は、エピタキシャル積層体80形成用基板であり、例えば、一面61aが(100)面から15°傾けた面とされた、Siドープしたn型のGaAs単結晶基板である。エピタキシャル積層体80としてAlGaInP層またはAlGaAs層を用いる場合、エピタキシャル積層体80を形成する基板として砒化ガリウム(GaAs)単結晶基板を用いることができる。
【0128】
活性層54の形成方法としては、有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法、分子線エピタキシャル(Molecular Beam Epitaxicy:MBE)法や液相エピタキシャル(Liquid Phase Epitaxicy:LPE)法などを用いることができる。
【0129】
本実施形態では、トリメチルアルミニウム((CH
3)
3Al)、トリメチルガリウム((CH
3)
3Ga)及びトリメチルインジウム((CH
3)
3In)をIII族構成元素の原料に用いた減圧MOCVD法を用いて、各層をエピタキシャル成長させる。
なお、Mgのドーピング原料にはビスシクロペンタジエニルマグネシウム((C
5H
5)
2Mg)を用いる。また、Siのドーピング原料にはジシラン(Si
2H
6)を用いる。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH
3)又はアルシン(AsH
3)を用いる。
なお、p型のGaP層53は、例えば、750°Cで成長させ、その他のエピタキシャル成長層は、例えば、730°Cで成長させる。
【0130】
具体的には、まず、成長用基板61の一面61a上に、Siをドープしたn型のGaAsからなる緩衝層62aを成膜する。緩衝層62aとしては、例えば、Siをドープしたn型のGaAsを用い、キャリア濃度を2×10
18cm
−3とし、層厚を0.2μmとする。
【0131】
次に、本実施形態では、緩衝層62a上にエッチングストップ層62bを成膜する。
エッチングストップ層62bは、半導体基板をエッチング除去する際、クラッド層および発光層までがエッチングされてしまうことを防ぐための層であり、例えば、Siドープの(Al
0.5Ga
0.5)
0.5In
0.5Pからなり、層厚を0.5μmとする。
【0132】
次に、エッチングストップ層62b上に例えば、Siドープしたn型のAl
xGa
1−xAs(0.1≦X≦0.3)からなるコンタクト層5を成膜する。
【0133】
次に、コンタクト層5上に例えば、Siをドープしたn型の(Al
0.7Ga
0.3)
0.5In
0.5Pからなるクラッド層63aを成膜する。
【0134】
次に、クラッド層63a上に例えば、Al
0.17Ga
0.83As/Al
0.3Ga
0.7Asの対からなる井戸層/バリア層の3対の積層構造からなる発光層64を成膜する。
【0135】
次に、発光層64上に例えば、Mgをドープしたp型のAl
0.7Ga
0.3)
0.5In
0.5Pからなるクラッド層63bを成膜する。
【0136】
次に、クラッド層63b上に例えば、Mgドープしたp型のGaP層53を成膜する。
後述する金属基板等の基板に貼り付けする前に、貼り付け面を整える(すなわち、鏡面加工する。例えば、表面粗さを0.2nm以下とする)ため、例えば、1μm程度研磨することが好ましい。
【0137】
なお、クラッド層と発光層との間にガイド層を設けてもよい。
【0138】
<反射層の形成工程>
次に、
図13に示すように、p型のGaP層53上に例えば、Auからなる反射層52を形成する。
【0139】
<金属基板の接合工程>
金属基板51を、反射層52に接合する前に、反射層52上に、バリア層(図示せず)及び/又は接合層(図示せず)を形成してもよい。
【0140】
バリア層は、金属基板に含まれる金属が拡散して反射層52と反応するのを抑制することができる。
バリア層の材料としては、ニッケル、チタン、白金、クロム、タンタル、タングステン、モリブデン等を用いることができる。バリア層は、2種類以上の金属の組み合わせ、たとえば白金とチタンの組み合わせなどにより、バリアの性能を向上させることができる。
なお、バリア層を設けなくても、接合層にそれらの材料を添加することにより接合層にバリア層と同様な機能を持たせることもできる。
接合層は、活性層54を含む化合物半導体層10等を密着性よく金属基板1に接合するための層である。
接合層の材料としては、化学的に安定で、融点の低いAu系の共晶金属などを用いられる。Au系の共晶金属としては、例えば、AuGe、AuSn、AuSi、AuInなどの合金の共晶組成を挙げることができる。
【0141】
次に、
図14に示すように、エピタキシャル積層体80や反射層6等を形成した半導体基板61と、金属基板の製造工程で形成した金属基板51とを減圧装置内に搬入して、その接合層の接合面と金属基板51の接合面51Aとが対向して重ね合わされるように配置する。
次に、減圧装置内を3×10
−5Paまで排気した後、重ね合わせた半導体基板61と金属基板51とを400℃に加熱した状態で、500kgの荷重を印加して接合層の接合面と金属基板51の接合面51Aとを接合して、接合構造体90を形成する。
【0142】
<半導体基板および緩衝層除去工程>
次に、
図15に示すように、接合構造体90から、半導体基板61及び緩衝層62aをアンモニア系エッチャントにより選択的に除去する。
このとき、本発明の金属基板は金属保護膜に覆われており、エッチャントに対する耐性が高いため、金属基板が品質劣化することが防止される。
【0143】
<エッチングストップ層除去工程>
さらに、
図15に示すように、エッチングストップ層62bを塩酸系エッチャントにより選択的に除去する。
本発明の金属基板は金属保護膜に覆われており、エッチャントに対する耐性が高いため、金属基板が品質劣化することが防止される。
【0144】
(裏面電極の形成工程)
次に、
図15に示すように、金属基板51の裏面に、裏面電極56を形成する。
【0145】
(メサ型構造部の形成工程)
次に、発光ダイオード(第1の実施形態)の製造方法と同様に、メサ型構造部(保護膜及び電極膜を除く)を形成するために、メサ型構造部以外の部分の化合物半導体層すなわち、電流拡散層と活性層の少なくとも一部と、又は、電流拡散層と活性層の全部とをウェットエッチングする。
具体的には、まず、発光ダイオード(第1の実施形態)の製造方法と同様に、レジストパターンを形成する。
【0146】
次に、メサ型構造部以外の部分の化合物半導体層についてウェットエッチングを行う。
ウェットエッチングに用いるエッチャントとしては限定的ではないが、AlGaAs等のAs系の化合物半導体材料に対してはアンモニア系エッチャント(例えば、アンモニア/過酸化水素水混合液)が適しており、AlGaInP等のP系の化合物半導体材料に対してはヨウ素系エッチャント(例えば、ヨウ化カリウム/アンモニア)が適しており、リン酸/過酸化水素水混合液はAlGaAs系に、ブロムメタノール混合液はP系に適している。
また、As系のみで形成されている構造では燐酸混合液、As/P系が混在している構造ではAs系構造部にアンモニア混合液、P系構造部にヨウ素混合液を使用してもよい。
【0147】
上記に示したような化合物半導体層の場合すなわち、最上層のAlGaAsからなるコンタクト層5、AlGaInPからなるクラッド層63a、AlGaAsからなる発光層64、AlGaInPからなるクラッド層63b、GaP層53の場合、As系のコンタクト層5及び発光層64と、他のP系の層とでそれぞれにエッチング速度が高い、異なるエッチャントを用いることが好ましい。
例えば、P系の層のエッチングにはヨウ素系エッチャントを用い、As系のコンタクト層5及び発光層64のエッチングにはアンモニア系エッチャントを用いることが好ましい。
ヨウ素系エッチャントとしては例えば、ヨウ素(I)、ヨウ化カリウム(KI)、純水(H
2O)、アンモニア水(NH
4OH)を混合したエッチャントを用いることができる。
また、アンモニア系エッチャントとしては例えば、アンモニア/過酸化水素水混合液(NH
4OH:H
2O
2:H
2O)を用いることができる。
【0148】
この好ましいエッチャントを用いてメサ型構造部以外の部分を除去する場合を説明すると、まず、メサ型構造部以外の部分のAlGaAsからなるコンタクト層5をアンモニア系エッチャントを用いてエッチング除去する。
このエッチングの際、次の層であるAlGaInPからなるクラッド層55がエッチングストップ層として機能するので、エッチング時間を厳密に管理することは要しないが、例えば、コンタクト層5の厚さを0.05μm程度とすると、10秒程度エッチングを行えばよい。
【0149】
次に、メサ型構造部以外の部分のAlGaInPからなるクラッド層55をヨウ素系エッチャントを用いてエッチング除去する。
エッチング速度は、ヨウ素(I)500cc、ヨウ化カリウム(KI)100g、純水(H
2O)2000cc、水酸化アンモニア水(NH
4OH)90ccの比率で混合されたエッチャントを用いた場合、0.72μm/minだった。
このエッチングの際も、次の層であるAlGaAsからなる発光層64がエッチングストップ層として機能するので、エッチング時間を厳密に管理することは要しないが、このエッチャントの場合、クラッド層55の厚さが4μm程度とすると、6分間程度エッチングを行えばよい。
【0150】
次に、メサ型構造部以外の分のAlGaAsからなる発光層64をアンモニア系エッチャントを用いてエッチング除去する。
このエッチングの際も、次の層であるAlGaInPからなるクラッド層63bがエッチングストップ層として機能するので、エッチング時間を厳密に管理することは要しないが、発光層64の厚さを0.25μm程度とすると、40秒程度エッチングを行えばよい。
【0151】
次に、メサ型構造部以外の部分のAlGaInPからなるクラッド層63bをヨウ素系エッチャントを用いてエッチング除去する。
このクラッド層63bの下にはGaP層53があるが、GaP層53の下の金属からなる反射層52が露出すると電気特性上好ましくないので、GaP層53まででエッチングを止める必要がある。
例えば、GaP層を3.5μm形成し、その後1μm研磨したとするとGaP層の厚さは2.5μmとなり、クラッド層63bの厚さを0.5μmとすると、上記のヨウ素系エッチャントを用いた場合には、エッチング時間は4分間以下にする必要がある。
【0152】
この後の保護膜の形成工程、ストリートおよびコンタクト層の部分の保護膜の除去工程、おもて面電極層の形成工程については、発光ダイオード(第1の実施形態)の製造方法と同様に行うことができる。
【0153】
(個片化工程)
次に、ウェハ基板上の発光ダイオードを、エッチングとレーザー切断を順に行って個片化する。
具体的には、ストリート部分に開口を有するレジストパターンを形成した後、ストリート上の化合物半導体層と反射層とをエッチング除去し、次いで、金属基板をレーザー切断して個片化を完了する。化合物半導体層だけエッチングしたり、化合物半導体層及び反射層の他に金属保護層もエッチングした後に、レーザー切断を行うなど、エッチングする層の選択は上記の場合に限らない。
【0154】
(金属基板側面の金属保護膜形成工程)
個片化された発光ダイオードの切断された金属基板の側面にについて、上面及び下面の金属保護膜の形成条件と同様な条件で金属保護膜を形成してもよい。
【実施例】
【0155】
以下に、本発明の発光ダイオード及びその製造方法を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例にのみ限定されるものではない。本実施例では、特性評価のために発光ダイオードチップを基板上に実装した発光ダイオードランプを作製した。
【0156】
(実施例1)
実施例1の発光ダイオードは、第1の実施形態の発光ダイオードの実施例である。
実施例1の発光ダイオードは、まず、Siをドープしたn型のGaAs単結晶からなるGaAs基板上に、化合物半導体層を順次積層してエピタキシャルウェハを作製した。GaAs基板は、(100)面を成長面とし、キャリア濃度を2×10
18cm
−3とした。また、GaAs基板の層厚は、約250μmとした。化合物半導体層とは、SiをドープしたGaAsからなるn型の緩衝層、SiをドープしたAl
0.9Ga
0.1AsとAl
0.1Ga
0.9Asの40対の繰り返し構造であるn型の下部DBR反射層、SiをドープしたAl
0.4Ga
0.6Asからなるn型の下部クラッド層、Al
0.25Ga
0.75Asからなる下部ガイド層、GaAs/Al
0.15Ga
0.85Asの3対からなる井戸層/バリア層、Al
0.25Ga
0.75Asからなる上部ガイド層、CをドープしたAl
0.4Ga
0.6Asからなるp型の上部クラッド層、CをドープしたAl
0.9Ga
0.1AsとAl
0.1Ga
0.9Asの5対の繰り返し構造であるp型の上部DBR反射層、Cドープしたp型Al
0.1Ga
0.9Asからなるコンタクト層である。
【0157】
本実施例では、減圧有機金属化学気相堆積装置法(MOCVD装置)を用い、直径50mm、厚さ250μmのGaAs基板に化合物半導体層をエピタキシャル成長させて、エピタキシャルウェハを形成した。エピタキシャル成長層を成長させる際、III族構成元素の原料としては、トリメチルアルミニウム((CH
3)
3Al)、トリメチルガリウム((CH
3)
3Ga)及びトリメチルインジウム((CH
3)
3In)を使用した。また、Cのドーピング原料としては、テトラブロモメタン(CBr
4)を使用した。また、Siのドーピング原料としては、ジシラン(Si
2H
6)を使用した。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH
3)、アルシン(AsH
3)を使用した。
また、各層の成長温度としては、700℃で成長させた。
【0158】
GaAsからなる緩衝層は、キャリア濃度を約2×10
18cm
−3、層厚を約0.5μmとした。下部DBR反射層はキャリア濃度を約1×10
18cm
−3、層厚を約54nmとしたAl
0.9Ga
0.1Asと、キャリア濃度を約1×10
18cm
−3、層厚を約51nmとしたAl
0.1Ga
0.9Asを交互に40対積層した。下部クラッド層は、キャリア濃度を約1×10
18cm
−3、層厚を約54nmとした。下部ガイド層は、アンドープで層厚を約50nmとした。井戸層は、アンドープで層厚が約7nmのGaAsとし、バリア層はアンドープで層厚が約7nmのAl
0.15Ga
0.85Asとした。また、井戸層とバリア層とを交互に3対積層した。上部ガイド層は、アンドープで層厚を約50nmとした。上部クラッド層は、キャリア濃度を約1×10
18cm
−3、層厚を54nmとした。また、上部DBR反射層はキャリア濃度を約1×10
18cm
−3、層厚を約54nmとしたAl
0.9Ga
0.1Asと、キャリア濃度を約1×10
18cm
−3、層厚を約51nmとしたAl
0.1Ga
0.9Asを交互に5対積層した。
Al
0.1Ga
0.9Asからなるコンタクト層は、キャリア濃度を約3×10
18cm
−3、層厚を約250nmとした。
【0159】
次に、裏面電極として基板裏面に、AuGe、Ni合金を厚さが0.5μm、Ptを0.2μm、Auを1μmとなるように真空蒸着法によって成膜し、n型オーミック電極を形成した。
【0160】
次に、メサ型構造部を形成するため、パターニングしたレジスト(AZ5200NJ(クラリアント社製))を用いて、H
2PO
4:H
2O
2:H
2O=2:5:9のリン酸/過酸化水素水混合液を用いて、60秒間、ウェットエッチングを行って、メサ型構造部及び平坦部を形成した。このウェットエッチングによって、コンタクト層、上部DBR反射層及び活性層の全層を除去して、頂面の大きさが190μm×190μm、高さhが7μm、幅wが5μmの平面視矩形のメサ型構造部(保護膜及び電極膜を除く)を形成した。
【0161】
次に、保護膜を形成するため、SiO
2からなる保護膜を0.5μm程度形成した。
その後、レジスト(AZ5200NJ(クラリアント社製))によるパターニング後、バッファードフッ酸を用いて、平面視同心円形(外径dout:166μm、内径din:154μm)の開口(
図11参照)、および、ストリート部の開口を形成した。
【0162】
次に、おもて面電極(膜)を形成するため、レジスト(AZ5200NJ(クラリアント社製))によるパターニング後、Auを1.2μm、AuBeを0.15μmを順に蒸着し、リフトオフにより平面視円形(径:150μm)の光射出孔9bを有する、長辺350μm、短辺250μmに形成してなるおもて面電極(p型オーミック電極)を形成した。
その後、450℃で10分間熱処理を行って合金化し、低抵抗のp型およびn型オーミック電極を形成した。
【0163】
次に、メサ型構造部の側面に光漏れ防止膜16を形成するため、レジスト(AZ5200NJ(クラリアント社製))によるパターニング後、Tiを0.5μm、Auを0.17μmを順に蒸着し、リフトオフにより光漏れ防止膜16を形成した。
【0164】
次に、化合物半導体層側からダイシングソーを用いストリート部で切断し、チップ化した。ダイシングによる破砕層および汚れを硫酸・過酸化水素混合液でエッチング除去して、実施例の発光ダイオードを作製した。
【0165】
上記のようにして作製した実施例の発光ダイオードチップを、マウント基板上に実装した発光ダイオードランプを100個組み立てた。この発光ダイオードランプは、マウントは、ダイボンダーで支持(マウント)し、p型オーミック電極とp電極端子とを金線でワイヤボンディングした後、一般的なエポキシ樹脂で封止して作製した。
【0166】
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)について、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク波長850nmとする赤外光が出射された。順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(V
F)は1.6Vであった。順方向電流を20mAとした際の発光出力は1.5mWであった。また、応答速度(立ち上がり時間:Tr)は12.1nsecだった。
【0167】
作製した100個の発光ダイオードランプのいずれについても、同程度の特性が得られ、保護膜が不連続な膜になった場合のリーク(短絡)や電極用金属膜が不連続な膜になった場合の通電不良が原因と思われる不良はなかった。
【0168】
図16は、発光ダイオードの直上における光スペクトル(グラフ右の摸式図参照)の測定結果を示すグラフである。縦軸は光の強度、横軸は波長を示す。
図16に示すように、実施例の発光ダイオードでは、発光スペクトルの線幅が狭く(単色性が高く)、半値幅(HWHM)は6.3nmであった。
【0169】
図17は、発光した光の指向性(グラフ右の摸式図参照)の測定結果を示すグラフである。グラフ中の横軸の「−1」から「1」につながる円周は光の強度(Int.)として13000を示すものである。従って、例えば、ある方向で光の強度が6500の場合には、その方向では横軸の「−0.5」から「0.5」につながる円周上にグラフがくることになる。また、例えば、実施例の発光ダイオードでは、真上(90°)から±10°の方向では約「−0.9」から「0.9」につながる円周(図示なし)上にグラフがあるので、その範囲では光の強度は13000の90%程度であることがわかる。
図17に示すように、実施例の発光ダイオードでは、光射出孔の直上から±15°程度の範囲に高い強度(13000の70%程度以上)を有しており、高い指向性を示した。
【0170】
(実施例2)
実施例2の発光ダイオードは、第4の実施形態の発光ダイオード(金属基板を用いた場合)の実施例である。
【0171】
まず、厚さ75μmのMo層(箔、板)、2枚の厚さ10μmのCu層(箔、板)で挟み、加熱圧着して厚さ95μmの金属板プレート(個片化の切断前)を形成した。この金属板プレートの上面と下面を研磨し、上面を光沢面とした後に、有機溶剤で洗浄し、汚れを除去した。次に、この金属板プレートの全面に、無電解めっき法により金属保護膜として2μmのNi層、1μmのAu層を順に形成して金属基板(個片化の切断前の金属基板)51を作製した。
【0172】
次に、Siをドープしたn型のGaAs単結晶からなるGaAs基板上に、化合物半導体層を順次積層して発光波長730nmのエピタキシャルウェハを作製した。
GaAs基板は、(100)面から(0−1−1)方向に15°傾けた面を成長面とし、キャリア濃度を2×10
18cm
−3とした。また、GaAs基板の層厚は、約0.5μmとした。化合物半導体層としては、SiをドープしたGaAsからなるn型の緩衝層62a、Siドープの(Al
0.5Ga
0.5)
0.5In
0.5Pからなるエッチングストップ層62b、Siドープしたn型のAl0.3GaAsからなるコンタクト層5、Siをドープした(Al
0.7Ga
0.3)
0.5In
0.5Pからなるn型の上部クラッド層63a、Al
0.4Ga
0.6Asからなる上部ガイド層、Al
0.17Ga
0.83As/Al
0.3Ga
0.7Asの対からなる井戸層/バリア層64、Al
0.4Ga
0.6Asからなる下部ガイド層、Mgをドープした(Al
0.7Ga
0.3)
0.5In
0.5Pからなるp型の下部クラッド層63b、(Al
0.5Ga
0.5)
0.5In
0.5Pからなる薄膜の中間層、Mgドープしたp型GaP層53である。
【0173】
本実施例では、減圧有機金属化学気相堆積装置法(MOCVD装置)を用い、直径50mm、厚さ250μmのGaAs基板に化合物半導体層をエピタキシャル成長させて、エピタキシャルウェハを形成した。エピタキシャル成長層を成長させる際、III族構成元素の原料としては、トリメチルアルミニウム((CH
3)
3Al)、トリメチルガリウム((CH
3)
3Ga)及びトリメチルインジウム((CH
3)
3In)を使用した。また、Mgのドーピング原料としては、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(bis−(C
5H
5)
2Mg)を使用した。また、Siのドーピング原料としては、ジシラン(Si
2H
6)を使用した。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH
3)、アルシン(AsH
3)を使用した。
また、各層の成長温度としては、p型GaP層は750℃で成長させた。その他の各層では700℃で成長させた。
【0174】
GaAsからなる緩衝層は、キャリア濃度を約2×10
18cm
−3、層厚を約0.5μmとした。エッチングストップ層は、キャリア濃度を2×10
18cm
−3、層厚を約0.5μmとした。コンタクト層は、キャリア濃度を約2×10
18cm
−3、層厚を約0.05μmとした。上部クラッド層は、キャリア濃度を約1×10
18cm
−3、層厚を約3.0μmとした。井戸層は、アンドープで層厚が約7nmのAl
0.17Ga
0.83Asとし、バリア層はアンドープで層厚が約19nmのAl
0.3Ga
0.7Asとした。また、井戸層とバリア層とを交互に3対積層した。下部ガイド層は、アンドープで層厚を約50nmとした。下部クラッド層は、キャリア濃度を約8×10
17cm
−3、層厚を約0.5μmとした。中間層は、キャリア濃度を約8×10
17cm
−3、層厚を約0.05μmとした。GaP層は、キャリア濃度を約3×10
18cm
−3、層厚を約3.5μmとした。
【0175】
次に、GaP層を表面から約1μmの深さに至る領域まで研磨して、鏡面加工した。この鏡面加工によって、電流拡散層の表面の粗さを0.18nmとした。
【0176】
次に、GaP層上に、Auからなる反射層を厚さ0.7μm形成した。さらに、反射層上にバリア層としてTi層を厚さ0.5μm形成し、バリア層上に接合層としてAuGe層を厚さ1.0μm形成した。
【0177】
次に、GaAs基板上に化合物半導体層及び反射層等を形成した構造体と、金属基板とを対向して重ね合わせるように配置して減圧装置内に搬入し、400℃で加熱した状態で、500kg重の荷重でそれらを接合して接合構造体を形成した。
【0178】
次に、接合構造体から、化合物半導体層の成長基板であるGaAs基板と緩衝層とをアンモニア系エッチャントにより選択的に除去し、さらに、エッチングストップ層を塩酸系エッチャントにより選択的に除去した。
【0179】
(裏面電極の形成工程)
次に、金属基板51の裏面に、Auを1.2μm、AuBeを0.15μmを順に真空蒸着法によって成膜し、裏面電極56を形成した。
【0180】
次に、メサ型構造部を形成するため、レジストパターンを形成後、アンモニア/過酸化水素水混合液(NH
4OH:H
2O
2:H
2O)を用いて、10秒間ウェットエッチングを行って、メサ型構造部以外の部分の電流拡散層55を除去した。
次に、ヨウ素(I)500cc、ヨウ化カリウム(KI)100g、純水(H
2O)2000cc、水酸化アンモニア水(NH
4OH)90ccの比率で混合されたヨウ素系エッチャントを用いて、45秒間ウェットエッチングを行って、メサ型構造部以外の部分の上部クラッド層55を除去した。
次に、上記アンモニア/過酸化水素水混合液(NH
4OH:H
2O
2:H
2O)を用いて、40秒間ウェットエッチングを行って、メサ型構造部以外の部分の上部ガイド層、発光層64及び下部ガイド層を除去した。
次に、上記ヨウ素系エッチャントを用いて、50秒間ウェットエッチングを行って、メサ型構造部以外の部分の下部クラッド層63bを除去した。
こうしてメサ型構造部を形成した。
【0181】
次に、保護膜を形成するため、SiO
2からなる保護膜を0.5μm程度形成した。
その後、レジストパターンを形成後、バッファードフッ酸を用いて、平面視同心円形(外径dout:166μm、内径din:154μm)の開口(
図11参照)、および、ストリート部の開口を形成した。
【0182】
次に、おもて面電極(膜)を形成するため、レジストパターンを形成後、AuGe、Ni合金を厚さが0.5μm、Ptを0.2μm、Auを1μmとなるように真空蒸着法によって成膜し、リフトオフにより平面視円形(径:150μm)の光射出孔9bを有する、長辺350μm、短辺250μmに形成してなるおもて面電極(n型オーミック電極)を形成した。
その後、450℃で10分間熱処理を行って合金化し、低抵抗のn型オーミック電極を形成した。
【0183】
次に、メサ型構造部の側面に光漏れ防止膜16を形成するため、レジストパターンを形成後、Tiを0.5μm、Auを0.17μmを順に蒸着し、リフトオフにより光漏れ防止膜16を形成した。
【0184】
次に、ウェットエッチングとレーザー切断を順に行って個片化して、実施例の発光ダイオードを作製した。
【0185】
上記のようにして作製した実施例の発光ダイオードチップを、マウント基板上に実装した発光ダイオードランプを100個組み立てた。この発光ダイオードランプは、マウントは、ダイボンダーで支持(マウント)し、p型オーミック電極とp電極端子とを金線でワイヤボンディングした後、一般的なエポキシ樹脂で封止して作製した。
【0186】
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)について、n型及びp型電極間に電流を流したところ、ピーク波長730nmとする赤外光が出射された。順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(V
F)は1.6Vであった。順方向電流を20mAとした際の発光出力は3.2mWであった。また、応答速度(立ち上がり時間:Tr)は12.6nsecだった。
【0187】
作製した100個の発光ダイオードランプのいずれについても、同程度の特性が得られ、保護膜が不連続な膜になった場合のリーク(短絡)や電極用金属膜が不連続な膜になった場合の通電不良が原因と思われる不良はなかった。
【0188】
(比較例)
液相エピタキシャル法で、厚膜成長し、基板除去した構造の波長850nmの発光ダイオードの例を示す。
GaAs基板に、スライドボート型成長装置を用いてAlGaAs層を成長した。
スライドボート型成長装置の基板収納溝にp型GaAs基板をセットし、各層の成長用に用意したルツボにGaメタル、GaAs多結晶、金属Al、及びドーパントを入れた。成長する層は、透明厚膜層(第1のp型層)、下部クラッド層(p型クラッド層)、活性層、上部クラッド層(n型クラッド層)の4層構造とし、この順序で積層した。
これらの原料をセットしたスライドボート型成長装置を、石英反応管内にセットし、水素気流中で950℃まで加温し、原料を溶解した後、雰囲気温度を910℃まで降温し、スライダーを右側に押して原料溶液(メルト)に接触させたあと0.5℃/分の速度で降温し、所定温度に達した後、またスライダーを押して順次各原料溶液に接触させたあと高温させる動作を繰り返し、最終的にはメルトと接触させた後、雰囲気温度を703℃まで降温してnクラッド層を成長させた後、スライダーを押して原料溶液とウェハを切り離してエピタキシャル成長を終了させた。
【0189】
得られたエピタキシャル層の構造は、第1のp型層は、Al組成X1=0.3〜0.4、層厚64μm、キャリア濃度3×10
17cm
−3、p型クラッド層は、Al組成X2=0.4〜0.5、層厚79μm、キャリア濃度5×10
17cm
−3、p型活性層は、発光波長が760nmの組成で、層厚1μm、キャリア濃度1×10
18cm
−3、n型クラッド層は、Al組成X4=0.4〜0.5、層厚25μm、キャリア濃度5×10
17cm
−3、であった。
【0190】
エピタキシャル成長終了後、エピタキシャル基板を取り出し、n型GaAlAsクラッド層表面を保護して、アンモニア−過酸化水素系エッチャントでp型GaAs基板を選択的に除去した。その後、エピタキシャルウェハ両面に金電極を形成し、長辺が350μmの電極マスクを用いて、直径100μmのワイヤボンディング用パッドを中央に配置された表面電極を形成した。裏面電極には、直径20μmのオーミック電極を80μm間隔に形成した。その後、ダイシングで分離、エッチングすることにより、n型AlGaAs層が表面側となるようにした350μm角の発光ダイオードを作製した。
【0191】
比較例の発光ダイオードのn型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク波長を850nmとする赤外光が出射された。順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(V
F)は1.9Vであった。順方向電流を20mAとした際の発光出力は5.0mWであった。また、応答速度(Tr)は15.6nsecであり、本発明の実施例に比べて遅かった。
【0192】
図16に示すように、比較例の発光ダイオードでは、発光スペクトルの線幅が広く、半値幅(HWHM)は42nmであった。
【0193】
図17に示すように、比較例の発光ダイオードでは、発光ダイオードを中心として半球状に光を13000の20%程度以下の強度の光を発光しており、指向性は実施例に比較してかなり低かった。