特許第5961370号(P5961370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961370
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】サポーター
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/08 20060101AFI20160719BHJP
   A41D 13/08 20060101ALI20160719BHJP
   A41D 13/06 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   A63B71/08 A
   A41D13/08
   A41D13/06
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-265763(P2011-265763)
(22)【出願日】2011年12月5日
(65)【公開番号】特開2013-116265(P2013-116265A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599057652
【氏名又は名称】河村繊維株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501443098
【氏名又は名称】株式会社アクト
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 隆太
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和則
(72)【発明者】
【氏名】山内 康司
【審査官】 大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−038230(JP,A)
【文献】 特開2009−050418(JP,A)
【文献】 特開2005−152402(JP,A)
【文献】 特開2008−106404(JP,A)
【文献】 特開平04−343868(JP,A)
【文献】 意匠登録第1094419(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/08
A41D 13/06
A41D 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する素材で構成され、一方端と他方端とを有する筒状の本体部と、
前記本体部において関節に隣接する領域に、前記本体部の周方向に沿って設けられ、前記本体部よりも伸縮性が低く、前記本体部の着用時のずれを抑制する環状の固定部と、
前記本体部に設けられ、前記本体部よりも伸縮性が低く、前記固定部に対し40度以上55度以下の角度で前記固定部から前記本体部の一方端に向かって延びる第1緊締部と、
前記本体部に設けられ、前記本体部よりも伸縮性が低く、前記固定部に対し40度以上55度以下の角度で前記固定部から前記本体部の他方端に向かって延びる第2緊締部とを備える、サポーター。
【請求項2】
前記本体部と、前記固定部と、前記第1緊締部と、前記第2緊締部とは、編み部もしくは織り部で構成された、請求項1に記載のサポーター。
【請求項3】
前記第1緊締部および前記第2緊締部は、前記固定部と交差するように設けられた、請求項1または請求項2に記載のサポーター。
【請求項4】
前記第1緊締部および前記第2緊締部は、全体として螺旋状の形状を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のサポーター。
【請求項5】
前記固定部を、前記本体部において着用時に着用者の関節部近傍に配置される部分に設けた、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のサポーター。
【請求項6】
前記固定部の幅は、前記第1および第2緊締部の幅よりも広い、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のサポーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サポーターに関し、より特定的には、低伸縮部を備えたサポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
サポーターは、手足の関節や局部等の体の一部を保護する機能や、テーピング効果をもたらすものであり、様々なタイプのサポーターが開発されている。サポーターには、その用途等に応じて、様々な工夫が施されている。
【0003】
例えば、特公平6−51921号公報には、伸縮素材より成る筒状サポーターもしくはストッキングであって、緊締力に富む強い伸縮特性を持つ帯状片を、本体部にスパイラル状に配置し、裏打ち縫合することでテーピング処置と同等の効果を有する下腿部用サポーターもしくはストッキングが記載されている。
【0004】
また、特開2000−197655号公報には、装着箇所の捻れを防止するため、前腕上部を締める第1バンドと手関節部を締める第2バンドとを連結する連結バンドを、弾性体により螺旋状に構成したサポーターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−51921号公報
【特許文献2】特開2000−197655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のサポーターでは、着用者の関節部を保護しながら該関節部に対するテーピング効果をも得るという点に全く着目していない。
【0007】
具体的には、特公平6−51921号公報には、膝下下腿部のみにテーピング効果を有するサポーターまたはストッキングが開示されているが、関節部の保護については考慮されていない。
【0008】
また、特開2000−197655号公報には、装着部分の捻りを制限するサポーターが開示されているが、関節部に加わる捻り以外のストレス、例えば外反ストレスに対してサポート可能な構造ではない。そのため、捻り以外のストレスが加わる運動時においては、関節部を有効に保護できない。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものである。この発明の主たる目的は、着用者の関節部を保護しながら該関節部に対するテーピング効果をも得ることが可能となるサポーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るサポーターは、伸縮性を有する素材で構成され、一方端と他方端を有する筒状の本体部と、該本体部において関節に隣接する領域に、本体部の周方向に沿って設けられ本体部より伸縮性が低く、本体部の着用時のずれを抑制する環状の固定部と、本体部に設けられ本体部より伸縮性が低く固定部に対し40度以上55度以下の角度で該固定部から本体部の一方端に向かって延びる第1緊締部と、本体部に設けられ本体部より伸縮性が低く固定部に対し40度以上55度以下の角度で固定部から本体部の他方端に向かって延びる第2緊締部とを備える。本体部と、固定部と、第1緊締部と第2緊締部とは編み部もしくは織り部で構成可能である。
【0011】
上記の第1緊締部と第2緊締部とは、固定部と交差するように設けることができる。たとえば、全体として螺旋状の形状とすることもできる。また、上記の固定部を、本体部において着用時に着用者の関節部の近傍に配置される部分に設けてもよい。上記固定部の幅は、第1緊締部および第2緊締部の幅よりも広く設けられてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のサポーターは、本体部より伸縮性の低い固定部を備えるので、該固定部を着用者の関節部近傍に配置することで、着用者の関節部近傍にサポーターを固定することができる。また、固定部の両側に、本体部より伸縮性の低い第1と第2緊締部を備えているので、第1と第2緊締部により着用者の関節部の両側に位置する部分に適度に圧力を付与することができる。その結果、着用者の関節部を保護しながら該関節部に対するテーピング効果をも得ることが可能となる
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態1におけるサポーターを着用し、肘内側から見た図である。
図2図1に示すサポーターを肘外側から見た図である。
図3】本発明の実施の形態2におけるサポーターを着用し、手掌側から見た図である。
図4図3に示すサポーターを手の甲側から見た図である。
図5】本発明の実施の形態3におけるサポーターを着用し、膝正面側から見た図である。
図6図5に示すサポーターを膝裏側から見た図である。
図7】本発明の実施の形態1におけるサポーターが効果的に作用する動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の実施の形態では肘部等の特定の部位に装着可能なサポーターの一例について説明するが、本実施の形態のサポーターは、人体の様々な箇所に着用されるサポーターに適用可能である。例えば、手首部、膝部等に着用可能なサポーターにも適用可能である。
【0015】
(実施の形態1)
まず、図1および図2を参照して実施の形態1に係るサポーター1を説明する。図1および図2に示すように、サポーター1は、伸縮性を有する素材で構成された本体部2と、低伸縮部3a〜3cとを備える。
【0016】
本体部2は筒状形状を有し、一方端2aと他方端2bを有する。本体部2の素材としては、伸縮性を有するものであれば任意の素材を使用可能である。本体部2は、編み部もしくは織り部で構成でき、伸縮性を有する任意の繊維素材を使用可能である。例えば、2方向に伸縮性が求められる場合には、本体部2は編み部で構成すればよい。
【0017】
より詳しくは、本体部2は、例えば海島型複合繊維と、ポリエステル糸条とを用いた編み部で構成可能である。一方の糸条に海島型複合繊維を用いることにより、編み部を形成した後に海島型複合繊維の海成分を溶解除去することで、単繊維径が1000nm以下の糸条から成る編み部を得ることができる。このとき、単繊維径が1000nm以下の糸条は、編み部の一方表面に露出される。これにより、編み部と皮膚との摩擦係数を高めることができ、この編み部で形成された本体部2の着用時のずれを抑制することができる。他方の糸条には、好ましくは一方に比べて摩擦係数が低い糸条を用いる。これにより、サポーター1の体表面に接する側に摩擦係数が高い糸条を露出させることができ、運動時のサポーター1の位置ずれを抑制することができる。他方、サポーター1の体表面に接しない側については、摩擦係数が低い側の糸条を露出させることで、たとえば着衣の下にサポーター1を着用して運動する場合であっても、動作の妨げにならない。
【0018】
低伸縮部3a〜3cは、本体部2に設けられ、本体部2より伸縮性が低い部分である。該低伸縮部3a〜3cの素材としては、本体部2より伸縮性が低いものであれば任意の素材を使用可能である。
【0019】
好ましくは、低伸縮部3a〜3cは、本体部2と一体的に設けられる。例えば低伸縮部3a〜3cを、編み部や織り部で構成可能である。低伸縮部3a〜3cは、本体部2と同じ糸条を用いて構成してもよい。本体部2と同じ糸条を用いた場合には、編む方法もしくは織る方法を本体部2と変更することで、伸縮性を低くすることができる。具体的には、密に編む、もしくは織ることで伸縮性を出すことができ、疎に編む、もしくは織ることで伸縮性を抑えることができる。
【0020】
本実施の形態では、低伸縮部3a〜3cは、機能によって第1緊締部3a、第2緊締部3b、固定部3cに区分できる。固定部3cは、本体部2において、着用時に着用者の関節部の近傍に位置する部分に環状に設けられ、着用時の動作によるサポーター1の位置ずれを抑制する。運動動作を妨げないようにするため、固定部3cを着用者の関節部上に設けない方が好ましい。
【0021】
緊締部は、固定部3cの両側に設けられ、図1および図2の例では、本体部2の一方端2aに向かって延びる第1緊締部3aと、本体部2の他方端2bに向かって延びる第2緊締部3bとを含む。第1緊締部3aおよび第2緊締部3bは、サポーター1の着用時に、従来のテーピング技術で緊締支持されるべき箇所に概ね沿うよう設けられる。該第1緊締部3aと第2緊締部3bとは、例えば固定部3cに対し斜め方向に延在するように設けることができる。具体的には、第1緊締部3aと第2緊締部3bは、固定部3cに対し40度〜55度(好ましくは、50度)の角度をなすように傾斜して設けられ、それぞれ本体部2の一方端2aもしくは他方端2bに向かって斜め方向に延在することになる。より好ましくは、図1および図2の例にあるように、第1緊締部3aと第2緊締部3bとは、全体として螺旋形状を有するように本体部2に設けられる。
【0022】
ところで、関節部の近傍をテーピングする方法としては、筋肉に加わるストレスや痛みを分散するよう緊締する方法や、障害が起こりやすい部位を補強するよう緊締する方法、ストレスが加えられる特定方向の動作を制限するよう緊締する方法等がある。テーピングする目的や部位により、テーピング方法は様々であり、本発明の実施の形態1に係るサポーター1は、緊締部の配設箇所や緊締力を変更することで様々な態様を採用可能である。
【0023】
図1および図2の例では、第1緊締部3aおよび第2緊締部3bは、肘に対するテーピング箇所を着用時に緊締支持できるように設けられている。このように第1緊締部3aおよび第2緊締部3bを本体部2に設けることにより、肘を保護しながら、肘に対してテーピングしたのと同様の効果を期待できる。
【0024】
図2に示すように、第1緊締部3aおよび第2緊締部3bは、固定部3cと交差するように設けられている。また、本実施の形態1における第1緊締部3aおよび第2緊締部3bは、全体として螺旋状の形状を有する。それにより、着用者の手に巻き付くように第1緊締部3aおよび第2緊締部3bを設けることができ、様々な動きに対し、着用者の様々な部位をサポートすることができる。
【0025】
上記固定部3cの幅W2を、第1緊締部3aや第2緊締部3bの幅W1と同一としてもよいが、これらを異ならせてもよい。例えば、固定部3cの幅W2を、第1緊締部3aや第2緊締部3bの幅W1よりも大きくすることが考えられる。それにより、より効果的にサポーター1を着用者の体の所望の部位に固定することができる。なお、第1緊締部3aの幅と第2緊締部3bの幅とを異ならせてもよい。また、第1緊締部3aや第2緊締部3bの幅を局所的に大きくしたり、小さくすることも可能である。
【0026】
第1緊締部3aや第2緊締部3bの形状についても、任意に選択可能であり、図1図2に示すように第1緊締部3aや第2緊締部3bを略直線状の形状としてもよいが、これらを湾曲形状としてもよい。第1緊締部3aや第2緊締部3bを編み部や織り部で構成することにより、これらの幅や形状を容易に任意の幅および形状とすることができる。
【0027】
さらに、本実施の形態1では、第1緊締部3aと第2緊締部3bとが本体部2に対し斜め方向に連続的に形成されているが、部分的に断続部を設けることも考えられる。また、第1緊締部3aや第2緊締部3bの数も任意に選択可能である。第1緊締部3aと第2緊締部3bとを、同数としてもよく、異なる数としてもよい。また、第1緊締部3aの数を第2緊締部3bの数よりも多くしてもよく、第2緊締部3bの数を第1緊締部3aの数よりも多くしてもよい。
【0028】
次に、図7を用いて、本実施の形態1に係るサポーター1を着用して投球動作を行った場合について説明する。
【0029】
図7を参照して、投球動作の加速期においては、肘には外反ストレスが加わる。さらに続くフォロースルー期においては、肘には捻りのストレスが加わる。この投球動作によって、図1に示すように、肘関節内側にストレス部位4が生じる。このような投球動作を繰り返すことで、ストレス部位4に炎症等の障害が発症するリスクが高まる。
【0030】
そこで、第1緊締部3aおよび第2緊締部3bを、投球動作にて生じる、加速期における肘関節の過外反と、フォロースルー期における肘関節の過回内の抑制を補助し、これらの動きによって加わる肘へのストレスや痛みを低減できるように、従来のテーピング技術に従って配設する。それにより、ストレス部位4に炎症等の障害が発症するリスクを低減することができる。
【0031】
なお、本体部2は伸縮性を有するため、投球動作時の関節の動きを妨げない。また、本体部2の体表面と接する面は摩擦係数が高いため、サポーター1は投球動作時に着用者に対して滑りにくくなり、サポーター1の位置ずれを抑制することができる。
【0032】
さらに、関節部近傍の固定部3cにより、投球動作時の関節部においてもサポーター1の位置ずれを抑制できる。つまり、固定部3cによっても第1緊締部3aおよび第2緊締部3bの位置ずれを抑制できるため、投球動作を繰り返しても緊締の効果を継続して得ることができる。また、本体部2の体表面と接しない面は、摩擦係数が体表面側より低く、着衣の下にサポーター1を着用する場合においても、着衣とサポーター1とはひっかかりにくく動作を妨げない。
【0033】
(実施の形態2)
次に、図3および図4を用いて、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態2では、手首部用のサポーター1に本発明の思想を適用している。
【0034】
図3および図4に示すように、本実施の形態2でも、固定部3cの両側に第1緊締部3aおよび第2緊締部3bを設けている。該第1緊締部3aおよび第2緊締部3bは、本体部2において、手首に対してのテーピング箇所を着用時に緊締支持できるような位置に設けられている。それにより、実施の形態1の場合と同様の効果を期待できる。
【0035】
(実施の形態3)
次に、図5および図6を用いて、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態3では、膝部用のサポーター1に本発明の思想を適用している。
【0036】
図5および図6に示すように、本実施の形態3でも、固定部3cの両側に第1緊締部3aおよび第2緊締部3bを設けている。第1緊締部3aおよび第2緊締部3bは、膝に対してのテーピング箇所を緊締支持できるような位置に設けられている。それにより、実施の形態1の場合と同様の効果を期待できる。
【0037】
図1図4図5に示すように、運動によりストレスが加わり障害が発生しやすい部位である、ストレス部位4は、それぞれ関節部の近傍に存在する。そこで、図1図4図5の例では、ストレス部位4にかかる痛みやストレスを分散し、かつ動作を補助できることにも配慮して、第1緊締部3aおよび第2緊締部3bを配設している。
【0038】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲のすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0039】
1 サポーター、2 本体部、2a 一方端、2b 他方端、3 低伸縮部、3a 第1緊締部、3b 第2緊締部、3c 固定部、4 ストレス部位。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7