【実施例1】
【0011】
図1(a)は、本発明の実施例1による、発光素子の基本的な電極構造(以下、電極構造E1ともいう。)を模式的に示す上面図であり、
図1(b),(c)は、それぞれ
図1(a)のV1−V1線及びV2−V2線に沿った断面を模式的に示す断面図である。より詳細には、半導体層11上に絶縁層12が形成されている。絶縁層12上には、ボンディングワイヤなどによって外部回路に接続されて電流供給を受ける接続電極であるパッド電極14が形成されている。また、パッド電極14に電気的に接続された配線電極15が形成されている。配線電極15は、パッド電極14との接続部から絶縁層12上を半導体層11の表面に沿って伸張し、
図1(b),(c)に示すように、パッド電極14との接続端部において幅W1を有し、終端部(又は遠端部)において幅W2を有している。なお、以下においては、配線電極15の幅が一定(すなわちW1=W2=W)の場合を例に説明する。しかし、配線電極15の幅は、パッド電極14との接続端部から終端部まで変化、例えば、線形(リニア)に変化していてもよい。また、配線電極の幅、及び後述するコンタクト領域の幅は、配線電極の伸長方向に垂直な方向における幅として定義する。
【0012】
また、
図1(a)に、配線電極15と半導体層11との接触(コンタクト)領域16を破線で示している。すなわち、配線電極15は、パッド電極14との接続端部15Aにおいて、配線電極15の幅Wよりも狭い幅D1(D1<W)で半導体層11に接触しており、終端部15Bにおいて幅D2(D2<W又はD2=W)で半導体層11に接触している。コンタクト領域16の幅Dは接続端部15Aから終端部15Bまで、配線電極15の伸張(長手)方向に向かって、リニアに増加している。より具体的には、パッド電極14との接続端部15Aから終端部15Bまでその幅DがD1からD2に伸張方向にリニアに増加する開口(幅:D)が絶縁層12に設けられ、当該開口から露出する半導体層11に配線電極15が接触(オーミックコンタクト)している。また、例えば、
図1(b)に示すように、配線電極15は、コンタクト領域16の外側の領域は、絶縁層12上にその両側が載り上げるように形成されている非接触(非コンタクト領域)である。すなわち、配線電極15は、絶縁層12に開けられた開口から露出する半導体層11に表面にその一部が部分的に接触しつつ半導体層11の表面に沿って伸張している。
【0013】
また、
図2(a)は、実施例1の電極構造E1に対する比較例1の電極構造(以下、電極構造C1ともいう。)を模式的に示す上面図であり、
図2(b),(c)は、それぞれ
図2(a)のV1−V1線及びV2−V2線に沿った断面を模式的に示す断面図である。同様に、
図3(a)は、実施例1の電極構造E1の比較例2の電極構造(以下、電極構造C2ともいう。)を模式的に示す上面図であり、
図3(b),(c)は、それぞれ
図3(a)のV1−V1線及びV2−V2線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【0014】
比較例1の電極構造C1においては、配線電極21は、パッド電極14との接続端部21Aから終端部21Bまで一定の幅W11を有するとともに、
図2(b),(c)に示すように、配線電極21は、接続端部21Aから終端部21Bまでの全領域で半導体層11に接触し(すなわちコンタクト幅D=W11)、非コンタクト領域を有しない。具体的には、パッド電極14との接続端部21Aから終端部21Bまで配線電極21の伸長方向に一定の幅W11を有する開口が絶縁層12に設けられ、当該開口から露出する半導体層11に配線電極21の全領域が接触している。
【0015】
比較例2の電極構造(以下、電極構造C2ともいう。)においては、配線電極22は、パッド電極14との接続端部22Aから終端部22Bまでその幅がW21からW22に伸張方向にリニアに増加するとともに、
図3(b),(c)に示すように、配線電極22は、接続端部22Aから終端部22Bまでの全領域で半導体層11に接触し、非コンタクト領域を有しない。すなわちコンタクト幅Dも、接続端部22Aから終端部22BまでW21からW22にリニアに増加している。具体的には、パッド電極14との接続端部22Aから終端部22Bまでその幅がW21からW22に配線電極22の伸長方向に沿ってリニアに増加する開口が絶縁層12に設けられ、当該開口から露出する半導体層11に配線電極22が接触している。
【0016】
[シミュレーション]
1.シミュレーションモデル
上記した実施例1の電極構造E1、及び比較例1、2の電極構造C1、C2について、電流分布のシミュレーションを行った。
図4(a),(b)は、それぞれシミュレーションに用いたシミュレーションモデル及び等価回路を模式的に示す図である。
図4(a)に示すように、配線電極をその伸張方向(すなわち、パッド電極との接続端部から終端部方向)にN分割し(ここでは、N=100とした)、
図4(b)に示すように、それぞれの分割位置で配線電極に流れる電流、当該配線電極から分岐した配線電極に流れる電流を計算していくことによって各分割位置において半導体に流れる電流を算出することができ、配線電極の伸張方向に沿った電流分布を求めることができる。
【0017】
図4(b)の等価回路において、Rc(j)は金属−半導体間の抵抗(j=1,2,..,N)、Rm(k)は配線抵抗(k=1,2,..,N-1)、V0はパッド電極14への印加電圧、I0はパッド電極14からの注入電流である。金属−半導体間の抵抗Rcは、金属−半導体間の接触抵抗より次のように求めることができる。すなわち、Rc=接触抵抗/(配線電極の半導体との接触線幅×分割長さ)として求めることができる。一方、配線抵抗Rmは、Rm=抵抗率×分割長さ/(配線電極の厚さ×配線電極の幅)で表わすことができる。それぞれの抵抗値を求め、配線電極全体に流れる電流を定義することによってそれぞれの位置で流れる電流値、電圧値をオームの法則より求めることができる。この方法を用いて各位置の半導体に流れる電流を求めることによって電流分布を算出する。なお、配線電極の電流値の最大値と最小値の差分をとり、最大値を100%と定義した時の最大値との差を電流不均一度と定義し、例えば、電流不均一度を10%以下にすることを目的(すなわち、均一電流分布)とする。
【0018】
なお、配線電極の抵抗率を2×10
-8Ωm、注入電流I0=350mA、配線電極の厚さを3μm、配線電極の長さLを750μmと仮定し、接触抵抗をパラメータとしてシミュレーションを行った。また、半導体11の裏面全体に接続された第2の電極19(配線電極と反対極性)についても配線電極の抵抗率と同じ値とした。なお、
図1(a)−(c)ないし
図3(a)−(c)(電極構造E1、電極構造C1、C2)においては、当該裏面電極については図示を省略している。
【0019】
2.シミュレーション結果
2.1 比較例1の電極構造(C1)
比較例1の電極構造C1では、前述のように、配線電極21は一定の幅W11を有する。配線電極21の幅W11=10μmとした場合のシミュレーション結果を
図5に示す。縦軸は電流不均一(%)である。当該電流不均一(%)は、算出された電流値の最大値と最小値の差分をとり、最大値を100%と定義したときの最大値とのズレとして定義した。横軸は半導体と配線電極の接触抵抗である。接触抵抗が2×10
-4Ωcm
2(以下、2E−4Ωcm
2のように指数表記する場合がある。)以上である場合に電流不均一が10%以下に抑えられ、電流が均一に流れることが分かる。しかし、比較例の電極構造C1では、接触抵抗が高いため、駆動電圧が高くなるというデメリットが生じる。
【0020】
2.2 比較例2の電極構造(C2)
比較例2の電極構造C2では、前述のように、配線電極22は、パッド電極14との接続端部22Aから終端部22Bまでその幅がW21からW22に長手方向にリニアに増加し、またその全領域で半導体層11に接触している。電極構造C1では、接触抵抗が2×10
-4Ωcm
2以下の場合には電流不均一を抑制できないことがわかる。電極構造C2は、ボンディングパッドから枝別れする配線電極を電流が集中する部分の幅を狭くすることによって、その部分の配線抵抗を高くし電流を均一に流す構造である。なお、接続端部22Aにおける配線電極22の幅W21を9μm、終端部22Bにおける配線電極22の幅W22を10μmとしてシミュレーションを行った。
【0021】
図5に示すように、接触抵抗が1×10
-4Ωcm
2以下であっても電流不均一を10%以下に抑えられることがわかる。また、接触抵抗が4×10
-4Ωcm
2以下の場合に、電極構造C1よりも電流不均一が小さいことがわかる。従って、電極構造C2は接触抵抗が4×10
-4Ωcm
2以下の場合に有効であることがわかる。
【0022】
次に、
図6に、さらに低い接触抵抗の場合の配線電極の電極構造C2についてシミュレーションを行った結果を示す。縦軸は、
図5の場合と同様に、電流不均一(%)である。横軸は、配線電極22の接続端部22Aの幅W21及び終端部22Bの幅W22を、「W21−W22」のように表記して示している。また、接触抵抗が、1×10
-3、5×10
-4、1×10
-4、5×10
-5、1×10
-5Ωcm
2の場合のシミュレーション結果である。
【0023】
接触抵抗が1×10
-4Ωcm
2では、接続端部22A及び終端部22Bの幅(W21−W22)が8μm−10μmの場合に電流不均一が最も小さい(すなわち、電流均一度が高い)。接触抵抗が5×10
-5Ωcm
2では、7μm−10μmの構造の場合に電流不均一が最も小さい。しかし、接触抵抗が1×10
-5Ωcm
2の場合では、電流不均一を10%以下に抑制することはできないが、パッド電極14との接続端部22Aにおける配線電極幅W21を小さく(狭く)することによって電流不均一が改善されることが分かる。しかし、配線電極幅を狭くし過ぎると電流が集中して配線電極が断線したり、パターニングが困難になるという問題がある。また、配線電極自体を狭くしていることによって配線抵抗が高くなり駆動電圧が上昇するという問題がある。
【0024】
2.3 実施例1の電極構造(E1)
実施例1の電極構造E1は、絶縁層12を利用し、配線電極15と半導体層11との接触面積を電流集中部である接続端部15Aにおいて小さくすることによって電流不均一を改善する構造である。すなわち、接続端部15Aにおいて接触面積が小さくなると半導体と配線電極との間の抵抗が高くなるため配線電極15の伸長方向における電流分布を均一化できる。
図7に、電極構造E1についてシミュレーションを行った結果を示す。縦軸は、電流不均一(%)である。横軸は、配線電極15の接続端部15Aにおける接触幅D1及び終端部15Bにおける接触幅D2を、「D1−D2」のように表記して示している。なお、配線電極15の幅は一定(すなわちW1=W2=W)で、W=10μmとしてシミュレーションを行った。また、接触抵抗が、1×10
-3、5×10
-4、1×10
-4、5×10
-5、1×10
-5Ωcm
2の場合のシミュレーション結果である。
【0025】
図7に示すように、比較例2の電極構造C2では電流不均一を解決できなかった接触抵抗が1×10
-5Ωcm
2の場合であっても、電極構造E1によれば電流不均一を10%まで改善できることが分かる。従って、特に接触抵抗が1×10
-5Ωcm
2以下の場合に、均一な電流分布を得ることができる。電極構造E1及び電極構造C2の駆動電圧を比較したグラフを
図8に示す。縦軸は電圧、横軸は、電極構造E1の場合では接続端部15Aにおける接触幅D1及び終端部15Bにおける接触幅D2を示し(「D1−D2」と表記)、電極構造C2の場合では接続端部における配線電極幅及び終端部の配線電極幅(「W21−W22」と表記)を示している。
図8に示すように、電極構造E1の方が電極構造C2の場合よりも電圧が低いことが分かる。また、電極構造E1では配線電極自体の幅(W)を変えずに配線電極と半導体の接触面積を変更しているため、パッド電極14との接続端部15Aにおける接触幅D1を狭くしても配線電極が剥がれたり又は切れたりする問題がない。
【実施例2】
【0026】
図9(a)、(b)は、本発明の実施例2の電極構造(以下、電極構造E2ともいう。)の上面図及び電極構造E2を有するLED50の部分的断面図である。なお、
図9(b)は
図9(a)の一部(破線で示す領域P1)の断面を模式的に示している。
図9(b)に示すように、LED50は、例えばMOCVD(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いてC面サファイア等の成長基板上にAlGaInP系半導体層で構成される半導体積層体を形成した後、Si等の支持基板と半導体積層体とを接合層を介して貼り合せ、成長基板をレーザリフトオフ法(LLO法)等で除去することによって形成される。より詳細には、LED50は、支持基板51、接合層52、光反射膜53、透明電極層(p電極)54、p型半導体層55、発光層56、n型半導体層57、絶縁膜58及びn電極(配線電極)61(透明電極層54と反対極性)から構成されている。LED50の表面、すなわちn型半導体層57の表面が光取り出し面であり、絶縁膜58は発光層56からの放射光に対して透明若しくは透光性の材料から形成されている。
【0027】
なお、かかる構成はLED50の例示に過ぎず、本発明の電極構造は、種々の構成の半導体層を有するLEDに適用することができる。例えば、上記のp型半導体層55、発光層56及びn型半導体層57から半導体積層体が、さらに電流拡散層、クラッド層、コンタクト層を有していてもよい。また、半導体層及び電極の極性(n型、p型)も上記と反対であってもよい。
【0028】
図9(a)に示すように、LED50の表面には、外部回路から電流供給を受ける2つのパッド電極60、互いに平行に配された4つの第1の配線電極61、第2の配線電極62A及び第3の配線電極62Bからなるn電極が形成されている。より詳細には、2つのパッド電極60は第2の配線電極62Aで互いに接続されている。第2の配線電極62Aはまた、素子駆動電圧が印加されて電流注入がなされる、外部回路との接続電極としても機能する。そして、第1の配線電極61はその一端が第2の配線電極62Aに接続され、その接続端が上記した接続電極に接続された接続端部として機能する。また、第1の配線電極61の終端部は第3の配線電極62Bに接続されている。
【0029】
図10(a)は、
図9(a)の第1の配線電極61の部分(破線で示す領域P2)を拡大して示す平面図である。第1の配線電極61は第2の配線電極62Aとの接続端部61Aにおいて配線電極61の幅Wよりも狭い幅D1(D1<W)でn型半導体層57に接触している。より詳細には、
図10(a)に示すように、第1の配線電極61(長さ:L)は、第2の配線電極62Aに接続され、接続端部61Aから伸張する第1の電極部61P1と、第1の電極部61P1からさらに伸張する第2の電極部61P2からなる。
図10(b)、(c)は、それぞれ第1の電極部61P1及び第2の電極部61P2のV1−V1線、V2−V2線に沿った断面を模式的に示す断面図である。また、
図10(a)に、第1の配線電極61と半導体層11とのコンタクト領域61Kを破線のハッチングで示すが、第1の電極部61P1(長さ:LA)において、接続端部61Aから第1の配線電極61の伸長方向に、第1の配線電極61とn型半導体層57とのコンタクト幅Dは増加している。第2の電極部61P2(長さ:LB=L−LA)では、配線電極61の幅Wとコンタクト幅Dは同一である(D=W)。なお、配線電極61の幅Wはその全領域、すなわち第1の電極部61P1及び第2の電極部61P2に亘ってコンタクト幅Dよりも大きくてもよい。
【0030】
[素子作製]
図9(a)、(b)に示す構造の素子を作製し、その特性の評価を行った。LED50は、MOCVD法を用いてC面サファイア成長基板上にAlGaInP系半導体層で構成される半導体積層体を形成した。より具体的には、成長基板上にn型半導体層57、発光層56、p型半導体層55を順次成長し、半導体積層体を形成した。半導体積層体が形成されたエピウエハを用いて、LED50を作製した。
【0031】
まず、不活性ガス雰囲気中にての熱処理によってp型半導体層55の活性化を行った後、半導体層表面にインジウム錫酸化物(ITO)層(層厚20nm)を形成した。次に、フォトリソグラフィ法により、ITO層を所望の形状にパターニングし、p型半導体層55上の一部に透明電極層(p電極)54を形成した。そして、フォトレジスト除去後、酸素を含む雰囲気中で400℃〜700℃の温度でITO層を加熱処理した。p型半導体層55側へ放射された光を再び光放射面であるn型半導体層57側へ反射させる為に、発光波長に対して高反射性を有する金属層からなる光反射膜53を形成した。光反射膜53は、Ag、Al、Rh、Pd等の単層膜、又はこれらの合金、又はこれらのうち1つ以上とTi又はNiを介して積層した構成からなる積層膜より形成することができる。更に、光反射膜の最表層としては、支持基板51に設けられた接合層との密着性を向上させる為にAuを用いた。光反射膜の厚さは、100nm以上が好ましい。これより薄いと十分な光反射性が得られない。
【0032】
LED50は縦型給電光半導体素子であり、成長基板を剥離して成る構造を有するため導電性支持基板に貼り付けて形成される。導電性支持基板51としてはSi、SiCを用いることができる。支持基板51の一方の面には、成長基板上に成長した半導体層上に透明電極層54と光反射膜53を形成した半導体素子とを接合する為の接合層が形成されている。接合層としては、AuSn層を用いた。AuSn層の厚さは1〜2μmが好ましい。尚、接合層はAuSnに限るものではない。成長基板側の半導体素子と支持基板51側のAuSn接合は、ウエハーボンダー装置を用いて加熱加圧し、接合界面のAuSn共晶化によって行った。次に、半導体層を成長していない側の成長基板裏面から高出力パルスレーザー光を照射するLLO(Laser Lift off)により成長基板の剥離を行った。
【0033】
次に、スパッタ法により厚さ350nmのSiO
2膜を形成し、フォトリソグラフィ法により、配線電極とn電極とのコンタクト領域となる開口を開けた絶縁膜58を形成した。絶縁膜58上にEB(電子ビーム)蒸着法により厚さ約1nmのTi、厚さ約1000nmのAlを順次成膜し、フォトリソグラフィ法によって配線電極61、62A、62B、パッド電極60を形成した。なお、パッド電極にはAuワイヤボンディングのため、Au(金)のプレーティングを行った。かかる絶縁膜58及び配線電極61、62A、62B、パッド電極60の形成によって、
図9(a)、(b)及び
図10(a)−(c)に示す構造の電極構造E2の形成を行った。第1の配線電極61の長さLは735μm、第1及び第2の電極部61P1、61P2の長さLA、LBはそれぞれ370μm、365μmとした。また、第1の配線電極61の幅Wは10μmとし、接続端部61Aにおける第1の配線電極61のコンタクト幅D1は8μmで、第1の配線電極61のコンタクト幅Dが第1の配線電極61の伸長方向にリニアに増加するように構成した。また、素子サイズは、横(LX)1000μm、縦(LY)1170μmであり、第1の配線電極61間の間隔(LS)は245μmとした。
【0034】
また、実施例2の電極構造E2を有するLED50(以下、LED(実施例)とも表記する。)との電流分布特性の比較評価のため、比較例1の電極構造C1を有するLED(以下、LED(比較例)とも表記する。)の製作を行った。すなわち、LED(比較例)の構成は、電極構造E2の第1の配線電極61を比較例1の電極構造C1で置き換えた以外はLED(実施例)と同一である。
【0035】
[素子評価結果]
上記したLED(実施例)及びLED(比較例)に駆動電流を流し、光取り出し面であるLED50の表面、すなわち絶縁膜58及び電極構造E2が形成された面(
図9(a))からの光強度分布を測定した結果をそれぞれ
図11、
図12に示す。具体的には、
図9(a)に示す線M−Mに沿って、すなわち電極構造E2及び電極構造C1の配線電極の伸張方向に沿って、光強度分布の測定を行った。なお、測定された光強度分布が電流分布に比例するような電流値で素子の駆動を行った。また、
図11、
図12中の光強度のディップは配線電極62A及び62Bによって発光層からの発光が遮られたことによるものである。
【0036】
図11に示すように、LED(実施例)では、光強度分布の不均一は10%以下に抑制されているのに対し、
図12に示すように、LED(比較例)では35%と光強度分布に大きな不均一が観測された。この結果から、上記した本発明の電極構造によれば、配線電極の伸張方向に沿って、電流集中が無く、均一な電流分布を実現する電極を提供できることが確認された。従って、本発明の電極構造によれば、発光層に均一に電流を拡散・注入可能で、高輝度で高発光効率を有する半導体発光素子を提供することができる。また、素子駆動電圧の上昇を招来することが無く、配線電極の密着性も良い。さらに、配線電極のパターニングも容易であるという利点を有する。
【実施例3】
【0037】
上記実施例1、2においては、配線電極が半導体層に接触するコンタクト領域の幅が、接続電極(例えばパッド電極)との接続部から配線電極の伸張方向に沿って増加する場合について説明したが、これに限らない。要は、配線電極の幅を狭くすることなく、配線電極の伸張方向に沿って配線電極のコンタクト面積が、等価的に増加するように構成されていればよい。
【0038】
図13(a)は、本発明の実施例3による、コンタクト面積が等価的に増加するように構成された配線電極の一例を示す電極構造(以下、電極構造E3ともいう。)を模式的に示す上面図であり、
図13(b),(c)は、それぞれ
図13(a)のV1−V1線及びV2−V2線に沿った断面を模式的に示す断面図である。より詳細には、半導体層11上に絶縁層12が形成され、絶縁層12上にパッド電極14に電気的に接続された配線電極71が形成されている。配線電極71は、パッド電極14との接続部から伸張し、
図13(a)−(c)に示すように、配線電極71の伸長方向に垂直な方向に一定の幅Wを有している。絶縁層12には開口が設けられ、当該開口において、配線電極71が半導体層11に接触し、コンタクト領域CR(1)〜CR(4)が形成されている。コンタクト領域CR(1)〜CR(4)の各々の間は、配線電極71が絶縁層12上に形成され、配線電極71が半導体層11に非接触である非コンタクト領域IR(1)〜IR(3)によって電気的に分離されている。コンタクト領域CR(1)〜CR(4)及び非コンタクト領域IR(1)〜IR(3)は、配線電極71の伸長方向に垂直な方向に同一の幅Wを有している。
【0039】
コンタクト領域CR(1)〜CR(4)の各々の長さ、すなわち配線電極71の伸長方向の長さは、LC(1)<LC(2)<LC(3)<LC(4)のように、パッド電極14との接続端部71Aから配線電極71の伸長方向に順次長くなっている。すなわち、コンタクト領域CR(1)〜CR(4)の面積は配線電極71の伸長方向に順次大きくなっている。
図13においては、非コンタクト領域IR(1)〜IR(3)も面積が配線電極71の伸長方向に順次大きくなっている(LI(1)<LI(2)<LI(3))例を示したが、これに限らず、非コンタクト領域の面積はいずれも同じでも構わない。また、伸長方向に行くに従いコンタクト領域の面積割合が非コンタクト領域よりも増えていくようにしてもよい。電極パッド付近ではコンタクト領域よりも隣接する非コンタクト領域の方の面積が大きく、電極パッドから離れたところでは非コンタクト領域よりも隣接するコンタクト領域の方の面積が大きくなっていてもよい。
【0040】
かかる例に限らず、前述のように、配線電極のコンタクト面積が配線電極の伸張方向に沿って増加するように変調された構成を有していればよい。すなわち、コンタクト領域CR(1)〜CR(4)の長さ又は幅を配線電極71の伸長方向に順次増加させる、あるいは非コンタクト領域IR(1)〜IR(3) の長さ又は幅を配線電極71の伸長方向に沿って調整する、の一方又は両者によって、コンタクト領域CR(1)〜CR(4)の面積が配線電極の伸張方向に沿って増加するように変調された構成を有していればよい。また、コンタクト領域の数は上記した例に限らず、CR(j)(j=1,2,…,N)のようにその数(N)を適宜設定することができる。また、他の変形例として、実施例1、2と組合せて、コンタクト領域CR(j)の各々の長さ及び幅の両者を変化させて、配線電極の伸張方向に沿って配線電極のコンタクト面積が増加するように構成することができる。さらに、配線電極の数、配置構成、伸張方向などは上記した例に限らず、電流を均一化したい所望の方向、領域の大きさや形状に応じて適宜設定すればよい。
【0041】
なお、上記した実施例においては、配線電極15、61,71の幅が一定の場合を例に説明したが、一定である必要はない。本発明は、コンタクト面積が配線電極の伸張方向に沿って増加し、かつ配線電極の伸張方向に沿って配線電極とは異なった面積変化又は面積変調を有することを特徴とする。配線電極は、要は、電流集中が生じず、配線電極の密着性が確保されるような幅を有しており、配線電極の伸張方向に沿った配線電極の幅は、配線電極の伸張方向に沿ったコンタクト面積の増加の程度に応じて設計すればよい。
【0042】
以上、詳細に説明したように、本発明の電極構造によれば、配線電極の伸張方向に沿って、電流集中が無く、均一な電流分布を実現することができる。従って、当該電極構造を設けることにより、発光層に均一に電流を注入可能で、高輝度で高発光効率を有する半導体発光素子を実現することができる。また、素子駆動電圧の上昇を招来することが無く、配線電極の密着性も良い。さらに、配線電極のパターニングも容易であるという利点を有する。
【0043】
なお、上記した実施例、変形例は適宜組み合わせ、又は改変して適用することができる。また、上記した半導体組成、材料、数値等は例示に過ぎない。