【実施例1】
【0018】
図1は、本発明に係る燃料噴射弁1の全体構成を示した縦断面図である。
【0019】
図1において、燃料噴射弁1は、ステンレス製の薄肉パイプ13にノズル体2、弁体6を収容し、この弁体6を外側に配置した電磁コイル11で往復動作(開閉動作)させる構造である。以下、構造の詳細について説明する。
【0020】
電磁コイル11を取り囲む磁性体のヨーク10と、電磁コイル11の中心に位置し、一端がヨーク10と磁気的に接触したコア7と、所定量リフトする弁体6と、この弁体6に接する弁座面3と、弁体6と弁座面3の隙間を通って流れる燃料の通過を許す燃料噴射室4、および燃料噴射室4の下流に複数個の燃料噴射孔23a、23b、23c、23d(
図2、
図3参照)を有するオリフィスプレート20を備えている。
【0021】
また、コア7の中心部には、弁体6を弁座面3に押圧する弾性部材としてのスプリング8が備えてある。このスプリング8の弾性力はスプリングアジャスタ9の弁座面3方向への押し込み量によって調整される。
【0022】
コイル11に通電されていない状態では、弁体6と弁座面3とが密着している。この状態では燃料通路が閉じられているため、燃料は燃料噴射弁1内部に留まり、複数個設けられている各々燃料噴射孔23a、23b、23c、23dからの燃料噴射は行われない。
【0023】
一方、コイル11への通電があると、電磁力によって弁体6が対面するコア7の下端面に接触するまで移動する。
【0024】
この開弁状態では弁体6と弁座面3の間に隙間ができるため、燃料通路が開かれて複数個の燃料噴射孔23a、23b、23c、23dから燃料が噴射される。
【0025】
なお、燃料噴射弁1には入口部にフィルター14を有する燃料通路12が設けられており、この燃料通路12はコア7の中央部を貫通する貫通孔部分を含み、図示しない燃料ポンプにより加圧された燃料を燃料噴射弁1の内部を通して燃料噴射孔23a、23b、23c、23dへと導く通路である。また、燃料噴射弁1の外側部分は樹脂モールド15によって被覆され電気絶縁されている。
【0026】
燃料噴射弁1の動作は、上述したように、コイル11への通電(噴射パルス)に伴って、弁体6の位置を開弁状態と閉弁状態に切り替えることで、燃料の供給量を制御している。
【0027】
燃料供給量の制御にあたっては、特に、閉弁状態では燃料漏れがない弁体設計が施されている。
【0028】
この種の燃料噴射弁では、弁体6に真円度が高く鏡面仕上げが施されているボール(JIS規格品の玉軸受用鋼球)を用いておりシート性の向上に有益である。
【0029】
一方、ボールが密着する弁座面3の弁座角は、研磨性が良好で真円度を高精度にできる最適な角度80゜から100゜に設定してあり、上述したボールとのシート性を極めて高く維持できる寸法条件を選択している。
【0030】
なお、弁座面3を有するノズル体2は、焼入れによって硬度が高められており、さらに、脱磁処理により無用な磁気が除去されている。
【0031】
このような弁体6の構成により、燃料漏れのない噴射量制御を可能としている。
【0032】
図2は、本発明に係る燃料噴射弁1におけるノズル体2の近傍を示す縦断面図である。
【0033】
図2に示すように、オリフィスプレート20はその上面20aがノズル体2の下面2aに接触しており、この接触部分の外周をレーザ溶接してノズル体2に固定されている。
【0034】
尚、本明細書及び特許請求の範囲において上下方向は
図1を基準としており、燃料噴射弁1の弁軸心方向において燃料通路12側を上側、燃料噴射孔23a、23b、23c、23d側を下側とする。
【0035】
ノズル体2の下端部には、弁座面3のシート部3aの径φSより小径の燃料導入孔5が設けられている。弁座面3は円錐形状をしており、その下流端中央部に燃料導入孔5が形成されている。弁座面3の中心線と燃料導入孔5の中心線とは弁軸心に一致するように、弁座面3と燃料導入孔5とが形成されている。燃料導入孔5によってノズル体2の下端面2aにオリフィスプレート20の中央穴(中央孔)25に連通する開口が形成される。
【0036】
中央穴25はオリフィスプレート20の上面20aに設けられた凹形状部であり、旋回用通路21a、21bが中央穴25から放射状に延びており、旋回用通路21a、21bはその上流端が中央穴25の内周面に開口して中央穴25に連通している。
【0037】
旋回用通路21aの下流端は旋回室22a、22bに連通するよう接続され、旋回用通路21bの下流端は旋回室22c、22dに連通するよう接続されている。旋回用通路21a、21bは旋回室22a、22b及び22c、22dにそれぞれ燃料を供給する燃料通路であり、この意味において旋回用通路21a、21bを旋回燃料供給通路21a、21bと呼んでもよい。
【0038】
旋回室22a、22b、22c、22dの壁面は、上流側から下流側に向かって曲率が次第に大きくなるように(曲率半径が次第に小さくなるように)形成されている。このとき、曲率は連続的に大きくしてもよいし、所定の範囲で曲率が一定になるようにしながら上流側から下流側に向かって段階的に次第に大きくなるようにしてもよい。上流側から下流側に向かって曲率が連続的に大きくなる曲線の代表例として、インボリュート曲線(形状)又はらせん曲線(形状)がある。本実施例では、らせん曲線について説明しているが、上流側から下流側に向かって曲率が次第に大きくなるとして上記のような曲線を採用しても同様に説明することができる。
【0039】
また、旋回室22a、22b、22c、22dの中心には燃料噴射孔23a、23b、23c、23dがそれぞれ開口している。
【0040】
ノズル体2とオリフィスプレート20とは両者の位置決めが簡単且つ容易に実施されるように構成されており、組み合わせ時の寸法精度が高められている。
【0041】
また、オリフィスプレート20は量産性に有利なプレス成形(塑性加工)により製作される。なお、この方法以外に、放電加工や電鋳法、エッチング加工など比較的応力の加わらない加工精度の高い方法が考えられる。
【0042】
次に、オリフィスプレート20の構成について、
図3乃至
図5を用いて詳細に説明する。
図3は、本発明に係る燃料噴射弁1におけるノズル体の下端部に位置するオリフィスプレート20の平面図である。
【0043】
オリフィスプレート20には燃料導入孔5に連通する中央穴25が形成されており、中央穴25には、その相対する方向に配置され、径方向外周側に向けて延びる2つの旋回用通路21a、21bが接続されている。旋回用通路21aには2つの旋回室22a、22bが背中合わせに接続されている。また一方、旋回用通路21bには2つの旋回室22c、22dが同様に背中合わせに接続されている。なお、中央穴25の外径を旋回用通路21a、21bの厚さ(幅)と同じにしても旋回用通路21a、21bの流れに何ら支障は生じない。
【0044】
次に、
図4、
図5を用いて、旋回用通路21aと旋回室22a、22bの接続方法及び旋回用通路21bと旋回室22c、22dの接続方法について詳細に説明する。また、燃料噴射孔23a、23b、23c、23dとの関係についても合わせて詳細に説明する。
【0045】
図4は、旋回用通路21aと2つの旋回室22a、22bの接続状態と燃料噴射孔23aとの関係を示す拡大平面図である。
図5は同じく拡大平面図であるが、背中合わせに配置する2つの旋回室22a、22bとの間に所望の厚みを有する円形状部29aを設けたもので、その位置関係を説明するための平面図である。
【0046】
1つの旋回用通路21aの下流端Sは、旋回室22aと旋回室22bの入口部に連通開口している。旋回室22aの中心部に燃料噴射孔23aが開口しており、他方の旋回室22bの中心部に燃料噴射孔23bが開口している。本実施例では、旋回室22aの内周壁は弁軸心線に垂直な平面(断面)(
図2のX参照)上でらせん曲線を描くように形成されており、すなわち、らせん形状を成しており、らせん曲線の渦中心と燃料噴射孔23aの中心とが一致するように構成されている。
【0047】
旋回室22aがインボリュート曲線の場合、インボリュート曲線の基礎円の中心と燃料噴射孔23aの中心とが一致するように構成するとよい。なお、燃料噴射孔23aの中心をらせん曲線の渦中心やインボリュート曲線の基礎円の中心からずらして配置してもよい。
【0048】
他方の旋回室22b及び燃料噴射孔23bの設計手法も同じ方法である。
【0049】
図4に基づいて説明すると、旋回室22aの内周壁面はSsを始端(上流端)、Seを終端(下流端)としている。終端(終点)Seaには終点Seaでらせん曲線に接するように形成された円形状部27aが設けられている。円形状部27aは旋回用通路21a及び旋回室22aの高さ方向(旋回の中心軸に沿う方向)全体にわたって形成されているので、周方向において所定の角度範囲で構成される部分的な円柱形状部を構成する。旋回用通路21aの側壁21aeは円形状部27aによって構成される円柱面に接するように形成されている。
【0050】
円形状部27aによって構成される円柱面は旋回用通路21aの側壁21aeの下流端と旋回室22aの内周壁の終端Seaとを接続する接続面(中間の面)を構成している。また、このような接続面27aを設けることにより、旋回室22aと旋回用通路21aとの接続部に厚み形成部26aを設けることができ、旋回室22aと旋回用通路21aとを所定の厚みを有する壁面を隔てて連結することができる。すなわち、旋回室22aと旋回用通路21aとの接続部に、ナイフエッジのように先が尖ったシャープな形状が形成されない。
【0051】
そのため、旋回室22a、22bを周回した燃料と旋回用通路21aより流入した燃料の衝突が緩和され、旋回流の対称性が向上する(
図8A、B矢印参照)。
【0052】
旋回室22aの始端(始点)Ssaは、旋回用通路21aの中心軸X上の点24a(旋回室上流側の合わせ面)に位置している。後述するが、この中心軸X上の点24a(旋回室上流側の合わせ面)に直交する線分Yに燃料噴射孔23aが位置している。
【0053】
他方の旋回室22bは、この旋回用通路21aの中心軸Xを挟んで対称を成すように配置されている。
【0054】
同様に、旋回室22bの終端(終点)Sebには終点Sebでらせん曲線に接するように形成された円形状部27bが設けられている。円形状部27bは旋回用通路21a及び旋回室22bの高さ方向(旋回の中心軸に沿う方向)全体にわたって形成されているので、周方向において所定の角度範囲で構成される部分的な円柱形状部を構成する。旋回用通路21bの側壁21aeは円形状部27bによって構成される円柱面に接するように形成されている。
【0055】
円形状部27bによって構成される円柱面は旋回用通路21aの側壁21aeの下流端と旋回室22bの内周壁の終端Sebとを接続する接続面(中間の面)を構成している。また、このような接続面27bを設けることにより、旋回室22bと旋回用通路21aとの接続部に厚み形成部26bを設けることができ、旋回室22bと旋回用通路21aとを所定の厚みを有する壁面を隔てて連結することができる。すなわち、旋回室22bと旋回用通路21aとの接続部に、ナイフエッジのように先が尖ったシャープな形状が形成されない。
【0056】
先が尖った形状をしていると、旋回室22a、22bを周回した燃料と旋回用通路21aより流入した燃料の衝突が発生し、旋回流の対称性が損なわれる(
図8A′、B′矢印参照)。
【0057】
この厚み形成部26a、26bの大きさは0.01ミリメートルから0.1ミリメートル程度の範囲を許容しており、好ましくは0.02ミリメートルから0.06ミリメートル程度を優先的に採用している。
【0058】
この厚みを形成することによって、旋回室22a、22bを周回した燃料と旋回用通路21aより流入した燃料の衝突が緩和され、それぞれの旋回室22a、22bのらせん壁面に沿うスムースな流れが形成される(
図8A、B矢印参照)。
【0059】
燃料噴射孔23a、23bは、それぞれ旋回室22a、22bの渦中心に位置している。それぞれの燃料噴射孔23a、23bの中心を結ぶ線分Yに、旋回室22aの始端(始点)Ssa及び旋回室22bの始端(始点)Ssbが位置している。
【0060】
旋回用通路21aの流れ方向に垂直な断面形状は矩形(長方形)であり、旋回用通路21aの幅に比べて高さを小さくすることで、プレス成形に有利な寸法となるように設計されている。
【0061】
旋回用通路21aに流入する燃料はこの矩形部が絞り(最小断面積)となっているため、弁座面3のシート部3aから燃料噴射室4、燃料導入孔5、オリフィスプレート20の中央穴25を経てこの旋回用通路21aに至るまでの圧力損失は無視できるように設計されている。
【0062】
特に、燃料導入孔5およびオリフィスプレート20の中央穴25は急激な曲がり圧損が生じないよう、所望大きさの燃料通路となるように設計している。
【0063】
従って、燃料の圧力エネルギーがこの旋回用通路21a部分で効率的に旋回速度エネルギー変換されるようになっている。
【0064】
また、この矩形部で加速された燃料流れは十分な旋回強さ、いわゆる旋回速度エネルギーを維持しつつ、下流の燃料噴射孔23a、23bに導かれる。
【0065】
ここに、旋回室22aの大きさは、燃料流れによる摩擦損失や室内壁での摩擦損失の影響が極力小さくなるように、その直径が決められている。
【0066】
その大きさは水力直径の4倍から6倍程度が最適値とされており、本実施例でもこの方法を適用している。
【0067】
上述したように、本実施例では、それぞれの旋回室22a及び旋回室22bの始端(始点)Ssa、Ssbは旋回用通路21aの中心軸X上で、それぞれの燃料噴射孔23a、23bの中心に一致している。
【0068】
旋回用通路21bと旋回室22cと燃料噴射孔23cとの関係、旋回用通路21bと旋回室22dと燃料噴射孔23dとの関係も、上述した旋回用通路21aと旋回室22aと燃料噴射孔23aとの関係と同一であるので、説明を省略する。
【0069】
なお、本実施例では旋回用通路21と旋回室22及び燃料噴射孔23を組み合わせた燃料通路を左右に設けているが、さらに増加させることにより、噴霧の形状や噴射量のバリエーションの自由度を高めてもよい。
【0070】
旋回用通路21a、旋回室22a、22b及び燃料噴射孔23a、23bを組み合わせた燃料通路と、旋回用通路21b、旋回室22c、22d及び燃料噴射孔23c、23dを組み合わせた燃料通路とは同じ構成であるので、以下の説明においても、図に示すように、片側のみの説明とする。
【0071】
この旋回室22a、22bの旋回室上流側の合わせ面24a(
図4を参照)と厚み形成部28a(
図5を参照)の作用及びその機能について説明する。
【0072】
旋回用通路21aの中心軸X上に位置する旋回室22a、22bの旋回室上流側の合わせ面24aは、先が尖ったエッジ形状部として形成される。このようなエッジ形状部は、現在の加工技術では、厚みを0.01ミリメートル未満にすることが可能である。
【0073】
図5を参照して説明すると、中央穴25より旋回用通路21aに燃料が流入すると、この旋回用通路21aの中程では内周壁21aeに比べて中心付近の速度が速い燃料流れ(速度分布)を形成する。旋回用通路21aの下流側でかつ中心軸X上に配置した旋回室22a、22bの旋回室上流側の合わせ面24aがこの流れを分流する。この旋回室上流側の合わせ面24aによって分流された流れは、旋回室22a、22bの入口部の内周面22as、22bs側で速度が大きい分布を有してなる。従って、それぞれの内周面22as、22bsに沿って旋回室22a、22b内を下流へとスムースに加速されて流れる。速度分布が壁側に傾くことによって、周回した燃料と旋回用通路21aの内周壁21aeに近い流れとの衝突が緩和される。加えて、旋回室を周回した燃料は、旋回室22a、22bの内周壁21aeに沿う速度の速い燃料流れによって誘引されるため、周回する燃料は燃料噴射孔23a、23b側への急峻な流れを生ずることなく、旋回室22a、22b内を加速しながらスムースに流れる。この結果、燃料噴射孔23a、23bの出口部では対称な流れを形成することができる。
【0074】
旋回用通路21aの下流側に位置する厚み形成部28aは、円形状部29aを有している。この円形状部29aの形成法は、旋回用通路21aの側壁21aeの下流端と旋回室22aの内周壁の終端Seaとを接続する接続面の構成方法と同一な方法で形成されている。この厚み形成部28aは旋回室22a、22bの入口部Ssa、Ssbを起点として半円形状に形成されている。この半円形の中心で交差する旋回用通路21aの中心軸Xがこの中心に対して数ミクロン程度の位置ずれが生じたとしても、それぞれの旋回室22a、22bに流入する燃料量は僅かな誤差となるようにそれぞれの旋回室22a、22bに分配される。以って、燃料噴射孔23a、23bの出口部においては噴射される噴霧の対称性を設計目標値に収めることができる。
【0075】
また、この厚み形成部28aは旋回室22a、22bの中心を結ぶ第一の線分(各々燃料噴射孔の中心を結ぶ線分と一致)Yと、旋回室22a、22bの燃料噴射孔を含みこの線分Yに直交する第二の線分X1と第三の線分X2と旋回用通路21a側の旋回室22a、22bの壁面と交わるそれぞれの点を結ぶ第四の線分Y1と、の間に位置するように形成されている。さらに、第一の線分(各々燃料噴射孔の中心を結ぶ線分と一致)Yと旋回用通路21a側の旋回室22a、22bの壁面と交わる点を結ぶ第四の線分Y1との距離をDw、旋回用通路21aの幅をSwとすると、両者の関係がSw>Dwとなるように、この厚み形成部28aの位置が決められている。
【0076】
これによって、旋回用通路21a内の速い燃料流れを的確に分流し、それぞれの旋回室22a、22bに等分配することができる。
【0077】
なお、この厚み形成部28aは加工の際に必要な角Rや角面取り(0.005ミリメートル程度)を含んで形成されるものである。さらに、この厚み形成部28aの大きさは0.01ミリメートルから0.1ミリメートル程度の範囲を許容しており、好ましくは0.02ミリメートルから0.06ミリメートル程度を優先的に採用している。
【実施例2】
【0078】
本実施例に係る燃料噴射弁の第2の実施例について、
図6及び
図7を参照して以下説明する。
【0079】
図6は
図5と同様に、燃料噴射弁における厚み形成部の位置関係を説明するための平面図である。
図7は
図6のX1方向断面図で燃料噴射孔の傾斜状態を示す断面図である。
【0080】
第1の実施例に係る燃料噴射弁と異なる点は、燃料噴射孔が弁軸心に対して所望の方向に傾斜させている点であり、これに伴って、厚み形成部の位置が該傾斜方向にシフトするという点である。
【0081】
図に示すように、厚み形成部32aはY′軸上に位置しており、このY′軸は燃料噴射孔30a、30bの出口中心に一致している。すなわち、入口中心軸Yに対してΔYだけ離れていることになる。換言すると、
図7に示すように、傾斜角θ分傾いていることになる。この傾き角θは30゜以下になるように設計されており、また、ΔYは0.1ミリメートル以下になるように設計されている。
【0082】
この様な設計条件とすることで、燃料噴射孔30a、30bの出口部においては、燃料液膜の均一性が保たれることになり、その結果、第1の実施例と同様な作用効果が得られることになる。
【0083】
上記実施例では、以下のような構成及び作用効果も合わせ持っている。
【0084】
燃料噴射孔23a、23bの直径は十分大きい。直径を大きくすると、内部に形成される空洞を十分大きくすることができる。いわゆる、ここでの旋回速度エネルギーを損失することなく噴射燃料の薄膜化に作用させることができる。
【0085】
また、燃料噴射孔23a、23bの板厚(この場合旋回室の高さと同じ)に対する噴射孔直径の比を小さくしているので、旋回速度エネルギーの損失も極めて小さい。以って、燃料の微粒化特性が極めて優れることになる。
【0086】
さらに、燃料噴射孔23a、23bの板厚に対する噴射孔直径の比が小さいのでプレス加工性が向上している。
【0087】
この様な構成ではコスト低減効果は勿論であるが、加工性の向上によって寸法バラツキが抑えられるので、噴霧形状や噴射量のロバスト性が格段に向上する。
【0088】
以上説明したように、本発明の実施形態にかかる燃料噴射弁は、旋回用通路21と旋回室22a、22bの入口部に両者の接続部を設けることにより、それぞれの旋回室内の流れを等分し、かつ内周面に沿った流れを形成し、下流に向かって次第に加速することができる。
【0089】
これによって、燃料噴射孔23の出口においては、十分な旋回強さによって薄膜化された対称(旋回の中心軸を中心とする周方向において均一)な液膜が形成されて微粒化を促進させることができる。
【0090】
このように均一に薄膜化した燃料噴霧は、周囲空気とのエネルギー交換が活発に行われるので、分裂が促進されて微粒化の良い噴霧となる。
【0091】
また、プレス加工を容易にした設計諸元としたことで、コストパフォーマンスに優れた安価な燃料噴射弁とすることができる。