(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の技術では、入力系回転部材および出力系回転部材に対して係合子が係合している場合には、入力系回転部材への回転入力を停止しても、フリクションが大きいので、センタリングばねの復元力では保持器を中立位置に戻せないことがある。入力系回転部材および出力系回転部材に係合子が係合した状態で出力系回転部材に過大な回転入力をすると、入力系回転部材およびその入力系回転部材に回転を入力する入力装置に、過大な負荷が与えられてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、出力系回転部材から入力系回転部材に過大な負荷が与えられることを防止できる動力伝達装置を提供することを目的としている。
【0006】
この目的を達成するために請求項1記載の動力伝達装置によれば、入力系回転部材および出力系回転部材と係合または離脱可能な係合子が、入力系回転部材と出力系回転部材との間に介在し制御部材に保持される。その係合子は、入力系回転部材に対する相対回転を通じて、制御部材により係合または離脱が制御される。制御部材は摩擦部材との間に摩擦力を生じさせ、摩擦部材を回転させる。その摩擦部材は、静止系部材に対して所定量以下の回転が許容される一方で所定量を超える回転が規制されることで、入力系回転部材の正逆いずれの方向の入力回転に対しても、その入力回転の方向と逆方向の相対回転を制御部材に生じさせる。これにより摩擦部材の回転が規制された状態では、入力系回転部材に対する相対回転により、係合子は入力系回転部材および出力系回転部材と係合する。
【0007】
一方、摩擦部材と制御部材との間に生じた摩擦力による制御部材と入力系回転部材との相対回転により弾性部材が弾性変形し、その復元力により係合子を離脱状態とする中立位置に復帰させるべく制御部材が付勢される。弾性部材に付勢された制御部材が中立位置に復帰されると、係合子は入力系回転部材および出力系回転部材と離脱する。また、制御部材が中立位置に復帰されるときの摩擦力により摩擦部材は回転し、回転が許容される状態になる。
【0008】
以上のように、入力系回転部材および出力系回転部材から係合子が離脱するときは、摩擦部材は回転が許容される状態にあり、入力系回転部材および出力系回転部材に係合子が係合するときは、摩擦部材は回転が規制される状態にある。そのため、摩擦部材の回転状態、即ち回転が許容される状態か又は回転が規制される状態かを回転状態検出手段により検出することによって、入力系回転部材および出力系回転部材と係合子とが離脱状態にあるか又は係合状態にあるかを検出できる。従って、回転状態検出手段により摩擦部材の回転が規制される状態にあると検出された場合に、出力系回転部材に回転入力をすることを抑制することで、出力系回転部材から入力系回転部材に過大な負荷が与えられることを防止できる効果がある。
回転状態検出手段により検出された摩擦部材の回転状態が、回転状態判断手段により回転が規制された状態であるか判断される。判断の結果、摩擦部材は回転が規制された状態である場合に、係合子を離脱状態にするべく回転入力手段により入力系回転部材が回転される。入力系回転部材が回転されることにより入力系回転部材および出力系回転部材から係合子が離脱状態にされ、弾性部材の付勢力により離脱状態が維持される。出力系回転部材に回転入力がされた場合も、出力系回転部材から入力系回転部材への動力の伝達が遮断されるので、出力系回転部材から入力系回転部材に過大な負荷が与えられることを防止できる効果がある。
【0009】
請求項2記載の動力伝達装置によれば、回転状態検出手段により検出された摩擦部材の回転状態が、回転状態判断手段により回転が規制された状態であるか判断される。判断の結果、摩擦部材の回転が規制された状態である場合に、操作者に報知される。操作者の負担を軽減できる効果がある。
請求項
3記載の動力伝達装置によれば、摩擦部材は、静止系部材に形成された回り止め部に所定部が当接することで所定量を超える回転が規制されるものであり、回転状態検出手段は、摩擦部材の所定部と回り止め部との回転方向隙間の大きさ乃至は有無を検出することにより、摩擦部材の回転状態を検出する。静止系部材に形成された回り止め部の回転方向隙間の大きさ乃至は有無は、比較的容易に精度良く検出できるので、請求項1
又は2の効果に加え、装置構成を簡素化できると共に検出精度を確保できる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は第1実施の形態における動力伝達装置10が搭載された車両1のブロック図である。なお、
図1では車両1の前輪2を駆動する駆動源および動力伝達機構の図示を省略している。
図1に示すように、車両1は後輪3を駆動するモータ4を備え、モータ4から後輪3までの動力伝達経路に、減速機5、2方向クラッチ6及びディファレンシャル7が配設されている。モータ4は車両1(車体1a)に搭載されたバッテリ(図示せず)を電源とし、制御装置8により駆動制御される。
【0013】
次に
図2から
図4を参照して動力伝達装置10について説明する。
図2(a)は動力伝達装置10の軸方向断面図であり、
図2(b)は回り止め部20の模式図であり、
図3は
図2(a)のIII−III線における動力伝達装置10(2方向クラッチ6)の断面図である(係合解除状態にあるときを示す)。また
図4(a)は係合状態にある動力伝達装置10(2方向クラッチ6)の断面図であり、
図4(b)は係合状態のときの回り止め部20の模式図である。
【0014】
図2(a)に示すように動力伝達装置10(2方向クラッチ6)は、減速機5からの回転トルクが伝達される入力系回転部材としての入力ギヤ11と、入力ギヤ11の軸心上に配置されディファレンシャル7へ回転トルクを伝達する出力系回転部材としての出力軸12とを備え、入力ギヤ11と出力軸12とは軸受13を介して相対回転自在に構成されている。
【0015】
図3に示すように、入力ギヤ11の内周には、出力軸12の外周に形成された円筒面12aとの間でくさび形空間を形成する複数のカム面14が周方向に間隔をあけて設けられ、各カム面14と円筒面12aとの間にローラからなる係合子15が組み込まれている。係合子15は、入力ギヤ11の内周と出力軸12の円筒面12aとの間に内装される制御部材16に保持される。制御部材16は略円筒状に形成される部材であり、制御部材16に貫通形成されたポケット16aに係合子15が組み込まれている。係合子15は、入力ギヤ11と出力軸12とが相対回転したときにカム面14及び円筒面12aに係合する。カム面14及び円筒面12aに係合子15が係合することで、入力ギヤ11の正逆両方向の回転トルクが出力軸12に伝達される。
【0016】
制御部材16は、ばね支持孔16bが貫通形成され、そのばね支持孔16bにU字形ばねからなる弾性部材17が支持されている。弾性部材17の両端の弾性片17aは、入力ギヤ11の内周に形成された切欠部11aに嵌合され、その切欠部11aの周方向で対向する端面を相反する方向に押圧している。その押圧により、円筒面12a及びカム面14から係合子15が係合解除(離脱)される中立位置に制御部材16を弾性保持する。
【0017】
図2(a)に戻って説明する。制御部材16は、摩擦部材18によって回転抵抗が付与されている。摩擦部材18は、出力軸12及び制御部材16が貫設される円盤状の部材であり、皿ばねからなる弾性部材19により軸方向に付勢され、制御部材16の軸方向端部側に突設されたフランジ16cに端面が圧接されている。摩擦部材18は、外縁の一部が円周方向に突設された凸起部18aを備え、その凸起部18aにより、静止系部材としての車体1aに対して回り止めがされている。
図2(b)に示すように、車体1aには、凸起部18aが遊装される回り止め部20が凹設されている。
【0018】
回り止め部20は、摩擦部材18の所定量以下の回転を許容する一方、所定量を超える回転を規制するための部位であり、凸起部18aの回転方向(
図2(b)矢印方向)長さ、カム面14及び円筒部12aと係合子15とが離脱する中立位置の周方向長さ等により、回転方向長さが決定される。さらに、カム面14及び円筒部12aから係合子15が離脱する中立位置にあるときに、摩擦部材18の回転方向で対向する端面20a,20bと凸起部18aとの間に正逆両方向の回転方向隙間ができるように設定される。その結果、凸起部18aが端面20a,20bの一方に当接することにより、摩擦部材18の正逆両方向の回転を規制できる。これにより、摩擦部材18は、回り止め部20と凸起部18aとの回転方向隙間分だけ回転が許容される一方、その回転方向隙間を超える回転が規制される。
【0019】
隙間検出装置21は、回り止め部20と凸起部18aとの回転方向隙間の大きさ乃至は有無および凸起部18aの位置を検出すると共に、その検出結果を制御装置8に出力するための装置であり、回転方向隙間および凸起部18aの位置に関する情報を検出する検出センサ(図示せず)と、その検出センサの検出結果を処理して制御装置8に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0020】
本実施の形態では、隙間検出装置21は、回り止め部20の回転方向の所定位置に先端が露呈するように車体1aに埋設された1乃至複数の光学式センサ(検出センサ)を備えている。これにより回り止め部20における凸起部18aの位置および回転方向隙間の大きさを検出する。しかし、隙間検出装置21は光学式センサ(検出センサ)に限定するものではなく、他の検出センサを採用することは当然可能である。他の検出センサとしては、例えば、高周波発振形や静電容量形等の近接センサや接触式センサ等が挙げられる。近接センサや接触式センサを採用する場合には、それら検出センサを、回り止め部20の端面20a,20bの一方から他方を臨むように設けることが望ましい。これにより端面20a,20bと凸起部18aとの距離(回転方向隙間の大きさ)、端面20a,20bと凸起部18aとが接触するか否か(回転方向隙間の有無)、凸起部18aの位置を検出できる。
【0021】
以上のように構成される動力伝達装置10が搭載された車両1(
図1参照)は、通常は前輪2を駆動して走行し、発進時や加速時等の負荷が大きいときには、モータ4を駆動して補助駆動輪としての後輪3を回転させる。前輪2を駆動する通常の走行時には後輪3からの回転トルクが出力軸12(
図3参照)に伝達されて出力軸12が回転する。しかし、2方向クラッチ6の係合子15は円筒面12a及びカム面14に対して係合が解除された中立位置に保持されているので、出力軸12の回転は入力ギヤ11に伝達されず、出力軸12は空転する。減速機5及びモータ4にトルクが伝達されることが防止されるので、モータ4のイナーシャが駆動抵抗となることを防止できる。
【0022】
一方、発進時や加速時等の負荷が大きいときに制御装置8から出力される信号によってモータ4を駆動すると、モータ4の動力が減速機5に伝達され、減速機5の出力軸の回転トルクが2方向クラッチ6の入力ギヤ11(
図4(a)参照)に伝達される。入力ギヤ11が回転すると、弾性部材17によって連結された制御部材16が回転する。このとき、制御部材16には摩擦部材18によって摩擦力が付与される。この摩擦部材18による摩擦抵抗は弾性部材17の付勢力(ばね力)より予め大きな値に設定されているので、摩擦部材18の回転が許容される間、摩擦部材18も供回りする。
【0023】
摩擦部材18が回り止め部20に形成された回転方向隙間の分だけ回転して、凸起部18aが端面20a,20bの一方に当接すると(
図4(b)参照)、摩擦部材18による回転抵抗は弾性部材17の付勢力より大きいので、入力ギヤ11と制御部材16とが相対回転する。その相対回転により弾性部材17が弾性変形すると共に、係合子15が円筒面12a及びカム面14に係合する。その結果、入力ギヤ11の回転は係合子15を介して出力軸12に伝達され、その出力軸12の回転トルクが補助駆動輪としての後輪3に伝達される。
【0024】
係合子15が円筒面12a及びカム面14に係合している状態では、車両1の停止によってモータ4を停止しても、フリクションが大きいので、弾性部材17の復元力では制御部材16を中立位置に戻せないことがある。この2方向クラッチ6の係合状態で、坂道での車両1のずり落ちや車両1のトーイング等により後輪3に外力が加わり過大な回転入力があると、出力軸12から係合子15を介して入力ギヤ11に回転トルクが伝達され、減速機5を介してモータ4に過大な負荷が与えられる(モータ4が過回転となる)可能性がある。モータ4が外力によって回され過回転となることを防止するため、動力伝達装置10は、2方向クラッチ6が係合状態にあるか係合解除(離脱)状態にあるかを、隙間検出装置21を用いて検出する。
【0025】
次に
図5を参照して回転入力処理について説明する。
図5は回転入力処理を示すフローチャートである。この処理は、車両1の電源は投入されているもののモータ4が停止されている間、制御装置8によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、2方向クラッチ6が係合状態にあるか係合解除(離脱)状態にあるかを判断して、係合状態にある場合に2方向クラッチ6を係合解除(離脱)状態にするための処理である。
【0026】
制御装置8は回転入力処理に関し、まず、回り止め部20における回転方向隙間の大きさ、凸起部18aの位置をそれぞれ取得する(S1,S2)。次いで、取得した回転方向隙間の大きさと、予め設定された閾値(本実施の形態では、2方向クラッチ6が係合状態にあると判断される値)とを比較して、回転方向隙間の大きさが所定値以下であるか否かを判断する(S3)。その結果、回転方向隙間の大きさは所定値以下であると判断される場合には(S3:Yes)、次に凸起部18aが、回り止め部20においてモータ4の正方向の回転位置にあるか否かを判断する(S4)。
【0027】
その結果、凸起部18aがモータ4の正方向の回転位置にあると判断される場合には(S4:Yes)、係合子15はモータ4の正方向の回転を出力軸12に伝達できるようにカム面14及び円筒面12aに係合しているので、モータ4を駆動してモータ4を逆方向に少し回転させて(S5)、この回転入力処理を終了する。S5の処理により入力ギヤ11が逆方向(
図4(a)反矢印方向)に少し回転されると、カム面14及び円筒面12aに対して係合子15は係合解除され、弾性部材17の付勢力により係合子15は中立位置に保持される。
【0028】
これに対しS4の処理の結果、凸起部18aがモータ4の逆方向の回転位置にあると判断される場合には(S4:No)、係合子15はモータ4の逆方向の回転を出力軸12に伝達できるようにカム面14及び円筒面12aに係合しているので、モータ4を駆動してモータ4を正方向に少し回転させて(S6)、この回転入力処理を終了する。S6の処理により入力ギヤ11が正方向に少し回転されると、カム面14及び円筒面12aに対して係合子15は係合解除され、弾性部材17の付勢力により係合子15は中立位置に保持される。
【0029】
なお、S3の処理の結果、回転方向隙間の大きさは所定値より大きいと判断される場合には(S3:No)、カム面14及び円筒面12aに対して係合子15は係合解除されているので、S4〜S6の処理をスキップして、この回転入力処理を終了する。以上説明した回転入力処理により、モータ4が停止したときに2方向クラッチ6を係合解除状態にできるので、回転トルクが出力軸12から入力ギヤ11に伝達されることが防止され、モータ4が外力によって回されて過回転となることを防止できる。
【0030】
また、S2の処理によって凸起部18aの位置を取得し、S4の処理において、凸起部18aがモータ4の正逆方向のいずれの回転位置にあるか判断されるので、係合子15がモータ4の正方向の回転を伝達可能な状態で係合しているのか、モータ4の逆方向の回転を伝達可能な状態で係合しているのかを判別できる。その結果、係合子15が係合する方向と逆方向にモータ4を回転させることで、入力ギヤ11と出力軸12に対して係合子15を確実に係合解除できる。
【0031】
次に
図6及び
図7を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、係合子15としてローラを用いる場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、係合子33としてスプラグを用いる場合について説明する。なお、第2実施の形態における動力伝達装置30は、動力伝達装置10に代えて、第1実施の形態で説明した車両1に搭載されるものとする。また、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図6(a)は第2実施の形態における動力伝達装置30の軸方向断面図であり、
図6(b)は回り止め部20の模式図であり、
図7は
図6(a)のVII−VII線における動力伝達装置30(2方向クラッチ31)の断面図である。
【0032】
図6(a)に示すように動力伝達装置30(2方向クラッチ31)は、入力系回転部材としての入力ギヤ11と、出力系回転部材としての出力軸12と、入力ギヤ11と出力軸12との間に介在される複数の係合子33(スプラグ)と、係合子33を保持するために入力ギヤ11と出力軸12との間に内装された径の異なる2つの制御部材(大径側制御部材34及び小径側制御部材35)とを備えて構成されている。
【0033】
図6(b)に示すように、入力ギヤ11の内周面32は断面円形状に形成され、その内周面21に大径側制御部材34が圧入されている。大径側制御部材34、小径側制御部材35のそれぞれにポケット34a,35aが貫通形成され、そのポケット34a,35aに係合子33が組み込まれている。係合子33は、小径側制御部材35のポケット35aに組み込まれた一対の弾性片36により正逆両方向に押圧されている。さらに大径側制御部材34及び小径側制御部材35は、ポケット34a,35aが同位相に位置するように弾性部材37(中立ばね)により正逆両方向に付勢されている(
図6(a)参照)。これにより入力ギヤ11及び出力軸12から係合子33が係合解除(離脱)される中立位置に、大径側制御部材34及び小径側制御部材35が弾性保持される。また、小径側制御部材35の軸方向端部側に突設されたフランジ35bに、摩擦部材18の端面が圧接されている。
【0034】
以上のように構成される動力伝達装置30が搭載された車両1(
図1参照)では、モータ4を駆動すると、その回転トルクが2方向クラッチ31の入力ギヤ11に伝達される。入力ギヤ11が回転すると、入力ギヤ11に圧入された大径側制御部材34が入力ギヤ11と共に回転する。大径側制御部材34が回転すると、大径側制御部材34に弾性部材37によって弾性的に連結された小径側制御部材35が回転する。このとき、小径側制御部材35には摩擦部材18によって摩擦力が付与される。この摩擦部材18による摩擦抵抗は弾性部材37の付勢力(ばね力)より予め大きな値に設定されているので、摩擦部材18の回転が許容される間、摩擦部材18も供回りする。
【0035】
摩擦部材18が回り止め部20に形成された回転方向隙間の分だけ回転して、凸起部18aが端面20a,20bの一方に当接すると、摩擦部材18による回転抵抗は弾性部材37の付勢力より大きいので、小径側制御部材35は大径側制御部材34に対して相対回転する。その相対回転により弾性部材37が弾性変形すると共に、係合子33が傾動して内周面32及び円筒面12aに係合する。その結果、入力ギヤ11の回転は係合子33を介して出力軸12に伝達され、その出力軸12の回転トルクが補助駆動輪としての後輪3に伝達される。
【0036】
なお、2方向クラッチ31が係合状態にあるか係合解除(離脱)状態にあるかを検出する機構は、第1実施の形態で説明したものと同様なので、以下の説明を省略する。スプラグを係合子33とする第2実施の形態における動力伝達装置30においても、第1実施の形態で説明した動力伝達装置10と同様に、回転トルク(外力)が出力軸12から入力ギヤ11に伝達されることが防止され、モータ4が外力によって過回転となることを防止できる。
【0037】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法等)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0038】
上記各実施の形態では、動力伝達装置10,30の一部を構成する2方向クラッチ6,31はモータ4から後輪3までの動力伝達経路に配設される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、各種の回転トルク伝達経路に適用することは当然可能である。
【0039】
上記各実施の形態では、駆動源(モータ4)の回転トルクを入力ギヤ11(外輪)から入力し、その入力ギヤ11の円周方向内側に配置された出力軸12(内輪)から出力する2方向クラッチ6,31に適用した場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、内輪(軸)から回転トルクを入力し、内輪(軸)の円周方向外側に配置された外輪から出力する2方向クラッチに適用することは当然可能である。
【0040】
上記各実施の形態では、摩擦部材18を軸方向に押圧する弾性部材19が皿ばねにより構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の弾性部材を採用することは当然可能である。他の弾性部材としては、例えば圧縮コイルばね、ゴム状弾性体等が挙げられる。
【0041】
上記各実施の形態では、動力伝達装置10,30が、摩擦部材18の回転状態を検出する回転状態検出手段により、回転方向隙間の大きさ及び凸起部18aの位置を取得した後、回転状態判断手段により摩擦部材18の回転状態を判断し、摩擦部材18の回転が規制された状態にある場合に、回転入力手段によりモータ4を逆方向に少し回転させる場合(回転入力処理、
図5参照)について説明した。
【0042】
しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、動力伝達装置10,30に回転状態判断手段や回転入力手段は必須ではない。回転状態検出手段により回転方向隙間の大きさ(有無)及び凸起部18aの位置を取得した後、回転状態を判断することなく、回転方向隙間の大きさ(有無)や凸起部18aの位置を、運転者(操作者)に報知する報知手段を備えるようにすることは当然可能である。運転者(操作者)は回転方向隙間の大きさ(有無)や凸起部18aの位置が判れば、2方向クラッチ6,31が係合状態にあるか係合解除状態にあるかが判るので、それに応じた操作を行うことができるからである。例えば、出力軸12に回転入力をする(外力を加える)ことを抑制することで、出力軸12から入力ギヤ11に過大な負荷が与えられることを防止できる。また、モータ4を、係合子15,33が係合する方向と逆方向に少し回転させることで、係合子15,33を係合解除できる。
【0043】
また、回転状態検出手段により回転方向隙間の大きさ及び凸起部18aの位置を取得し、回転状態判断手段により摩擦部材18の回転状態を判断した後、モータ4を回転駆動させることなく、2方向クラッチが係合状態にあるか係合解除状態にあるかを、運転者(操作者)に報知するようにすることは当然可能である。運転者(操作者)は、2方向クラッチが係合状態にあるか係合解除状態にあるかが判れば、それに応じた操作を行うことができるからである。この場合、運転者(操作者)は、回転方向隙間の大きさや凸起部の位置に基づいて2方向クラッチが係合状態にあるか係合解除状態にあるかを判別しなくて良いので、運転者(操作者)の負担を軽減できる。
【0044】
上記各実施の形態では、車体1a(静止系部材)に回り止め部20が凹設される一方、摩擦部材18の外縁の一部に半径方向に凸起部18aが凸設され、回り止め部20の端面20a,20bに凸起部18a当たることで、摩擦部材18の回転が規制される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、凸起部18aを摩擦部材18の半径方向に凸設するのではなく、摩擦部材18の外縁近傍の軸方向に凸設することは当然可能である。また、車体1a(静止系部材)に凸起状の回り止め部20を形成する一方、摩擦部材18の外縁や端面に切欠きや孔部等の凹部を形成することは当然可能である。この場合も各実施の形態と同様に、回り止め部20と凹部との間に回転方向隙間を設けておき、この回転方向隙間の範囲内では摩擦部材18の回転を許容し、凹部が回り止め部に突き当たることで摩擦部材18の回転を規制できるからである。
<その他>
<手段>
技術的思想1の動力伝達装置は、入力系回転部材と出力系回転部材との間に介在し、これら入力系回転部材および出力系回転部材と係合または離脱可能な係合子と、その係合子を保持すると共に、前記入力系回転部材に対する相対回転を通じて前記係合子の係合または離脱を制御する制御部材と、その制御部材との間に生じる摩擦力によって回転され、静止系部材に対して所定量以下の回転が許容される一方で所定量を超える回転が規制されることで、前記入力系回転部材の正逆いずれの方向の入力回転に対しても、その入力回転の方向と逆方向の相対回転を前記制御部材に生じさせる摩擦部材と、その摩擦部材との間に生じた摩擦力による前記制御部材と前記入力系回転部材との相対回転により弾性変形し、その復元力により前記係合子を離脱状態とする中立位置に復帰させるべく前記制御部材を付勢する弾性部材と、前記摩擦部材の回転状態を検出する回転状態検出手段とを備えている。
技術的思想2の動力伝達装置は、技術的思想1記載の動力伝達装置において、静止系部材に形成され、前記摩擦部材の所定部が当接することで前記摩擦部材の所定量を超える回転を規制する回り止め部を備え、前記回転状態検出手段は、前記摩擦部材の所定部と前記回り止め部との回転方向隙間の大きさ乃至は有無を検出する。
技術的思想3の動力伝達装置は、技術的思想1又は2に記載の動力伝達装置において、前記回転状態検出手段により検出された前記摩擦部材の回転状態が、回転が規制された状態であるかを判断する回転状態判断手段と、その回転状態判断手段により前記摩擦部材は回転が規制された状態であると判断される場合に、前記係合子を離脱状態にするべく前記入力系回転部材を回転させる回転入力手段とを備えている。
<効果>
技術的思想1記載の動力伝達装置によれば、入力系回転部材および出力系回転部材と係合または離脱可能な係合子が、入力系回転部材と出力系回転部材との間に介在し制御部材に保持される。その係合子は、入力系回転部材に対する相対回転を通じて、制御部材により係合または離脱が制御される。制御部材は摩擦部材との間に摩擦力を生じさせ、摩擦部材を回転させる。その摩擦部材は、静止系部材に対して所定量以下の回転が許容される一方で所定量を超える回転が規制されることで、入力系回転部材の正逆いずれの方向の入力回転に対しても、その入力回転の方向と逆方向の相対回転を制御部材に生じさせる。これにより摩擦部材の回転が規制された状態では、入力系回転部材に対する相対回転により、係合子は入力系回転部材および出力系回転部材と係合する。
一方、摩擦部材と制御部材との間に生じた摩擦力による制御部材と入力系回転部材との相対回転により弾性部材が弾性変形し、その復元力により係合子を離脱状態とする中立位置に復帰させるべく制御部材が付勢される。弾性部材に付勢された制御部材が中立位置に復帰されると、係合子は入力系回転部材および出力系回転部材と離脱する。また、制御部材が中立位置に復帰されるときの摩擦力により摩擦部材は回転し、回転が許容される状態になる。
以上のように、入力系回転部材および出力系回転部材から係合子が離脱するときは、摩擦部材は回転が許容される状態にあり、入力系回転部材および出力系回転部材に係合子が係合するときは、摩擦部材は回転が規制される状態にある。そのため、摩擦部材の回転状態、即ち回転が許容される状態か又は回転が規制される状態かを回転状態検出手段により検出することによって、入力系回転部材および出力系回転部材と係合子とが離脱状態にあるか又は係合状態にあるかを検出できる。従って、回転状態検出手段により摩擦部材の回転が規制される状態にあると検出された場合に、出力系回転部材に回転入力をすることを抑制することで、出力系回転部材から入力系回転部材に過大な負荷が与えられることを防止できる効果がある。
技術的思想2記載の動力伝達装置によれば、摩擦部材は、静止系部材に形成された回り止め部に所定部が当接することで所定量を超える回転が規制されるものであり、回転状態検出手段は、摩擦部材の所定部と回り止め部との回転方向隙間の大きさ乃至は有無を検出することにより、摩擦部材の回転状態を検出する。静止系部材に形成された回り止め部の回転方向隙間の大きさ乃至は有無は、比較的容易に精度良く検出できるので、技術的思想1の効果に加え、装置構成を簡素化できると共に検出精度を確保できる効果がある。
技術的思想3記載の動力伝達装置によれば、回転状態検出手段により検出された摩擦部材の回転状態が、回転状態判断手段により回転が規制された状態であるか判断される。判断の結果、摩擦部材は回転が規制された状態である場合に、係合子を離脱状態にするべく回転入力手段により入力系回転部材が回転される。入力系回転部材が回転されることにより入力系回転部材および出力系回転部材から係合子が離脱状態にされ、弾性部材の付勢力により離脱状態が維持される。これにより技術的思想1又は2の効果に加え、出力系回転部材に回転入力がされた場合も、出力系回転部材から入力系回転部材への動力の伝達が遮断されるので、出力系回転部材から入力系回転部材に過大な負荷が与えられることを防止できる効果がある。