(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
給水口の直下またはその周囲に水を供給可能な給水ヘッダの当該給水口の下方において鉛直方向に延在し、前記給水ヘッダから供給された水を一時的に含水すると共に蒸散させる蒸散本体部と、
前記蒸散本体部の上面部と前記給水口との間に配置されて、前記給水口から供給された水を前記上面部に一様に拡散させる水拡散部と、
前記水拡散部を包囲する外筒と、
を備えており、
前記水拡散部は、前記蒸散本体部の上面部に対向して前記給水口から供給された水を受ける水拡散部材を備え、
前記水拡散部材と前記外筒との間には隙間が形成されており、
前記外筒には通気孔が形成されていることを特徴とする蒸散体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成においては、多孔質部材の上方から当該多孔質部材に水を供給するヘッダに対し、多孔質部材の太さが過大である場合、当該ヘッダから供給された水はヘッダの直下の部分に偏りがちであり、多孔質部材の全体には行き渡り難い。たとえば、ヘッダが多孔質部材の中心部上方に配置される場合には、水は多孔質部材の中心部に偏って供給されてしまう。また、小孔を介して給水管から給水する場合であっても、給水管に近接した部分に水が偏って供給されてしまう。このように、蒸散本体部たる多孔質部材の全体に水を供給することは困難であった。
【0006】
本発明は、蒸散本体部の全体に水を供給することができる蒸散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した蒸散体は、給水口の直下またはその周囲に水を供給可能な給水ヘッダの当該給水口の下方において鉛直方向に延在し、給水ヘッダから供給された水を一時的に含水すると共に蒸散させる蒸散本体部と、蒸散本体部の上面部と給水口との間に配置されて、給水口から供給された水を上面部に一様に拡散させる水拡散部と、
水拡散部を包囲する外筒と、を備えて
おり、水拡散部は、蒸散本体部の上面部に対向して給水口から供給された水を受ける水拡散部材水拡散部材を備え、水拡散部材と外筒との間には隙間が形成されており、外筒には通気孔が形成されていることを特徴とする。
【0008】
この蒸散体によれば、蒸散本体部の上面部と給水口との間に水拡散部が配置されているため、給水口から供給される水は蒸散本体部に直接落下せずに水拡散部上に落下することとなる。この水拡散部は、給水口から供給された水を蒸散本体部の上面部に一様に拡散させる。そのため、蒸散本体部の上面部では、給水口の直下やその周囲の部分のみならず辺縁においても水を受けることができ、これによって、蒸散本体部の一部にのみ水が偏って供給されることが防止される。よって、蒸散本体部の全体に水を供給することができる。
【0009】
また、上記蒸散体において、水拡散部は、
水拡散部材としてのフィルタ部材を備え、フィルタ部材は、給水口から供給された水を受けつつ毛細管現象により当該水を浸透させる繊維層を有する。この場合、フィルタ部材の繊維層は、水を受けつつ、毛細管現象によってその水を浸透させるため、繊維層全体に水が浸透することとなる。よって、蒸散本体部の上面部の辺縁にまで水が落下し、蒸散本体部の全体に確実かつ容易に水を供給することができる。
【0010】
また、上記蒸散体において、フィルタ部材の中央部は上方に向けて山形状に突出しており、フィルタ部材の外周部は中央部よりも低くなっている。この場合、フィルタ部材の繊維層に浸透した水は、中央部よりも外周部から落下しやすくなる。これによって、蒸散本体部の周縁部により多くの水を供給することができる。蒸散本体部の周縁部は外部に面しており蒸散が活発に行われる部分であるため、効率的な蒸散を行うことができる。
【0012】
また、上記蒸散体において、水拡散部は、
外筒内に設けられてフィルタ部材を包囲する包囲部を備え、包囲部とフィルタ部材との間には隙間が形成されている。この場合、フィルタ部材の周縁部と包囲部との間の隙間から水が漏れ出すこととなり、フィルタ部材の直下のみならず、その周縁部からも積極的に水を漏れ出させることができる。これによって、蒸散本体部の周縁部により多くの水を供給することができ、効率的な蒸散を行うことができる。
【0013】
また、上記蒸散体において、水拡散部は、蒸散本体部の上面部よりも水平方向の幅が小さい
、水拡散部材としての皿体を備え、皿体は、底板部と、底板部の周縁部から立ち上がる周壁部と、を有する。この場合、給水口から供給される水は、いったん皿体に蓄えられ、皿体が満水状態になると、水は皿体の周壁部からオーバーフローして蒸散本体部の上面部に落下することとなる。このようなオーバーフロー効果を利用することで、給水口の直下のみならず上面部の辺縁にまで水を落下させることができ、蒸散本体部の全体に確実かつ容易に水を供給することができる。
【0014】
また、上記蒸散体において、皿体は、底板部に1または複数の開口部を有すると共に、各開口部の周囲に周壁部と同じ高さの開口周壁部を有する。この場合、水をオーバーフローさせる周壁部が、底板部の周縁部のみならず開口部の周囲にも設けられるため、開口部からもオーバーフローにより水を落下させることができる。よって、より多くの周壁部を設けることができ、上面部に対してより均一に水を拡散させることができる。
【0015】
また、上記蒸散体において、皿体の底板部は、溝部を有すると共に、溝部および溝部以外の部分のそれぞれに複数の孔部を有する。この場合、溝部の孔部から水が落下すると共に、溝部に溜まって溝部以外の部分に溢れた水が、溝部以外の部分の孔部からも落下する。よって、底板部の全体から水を落下させることができ、上面部に対してより均一に水を拡散させることができる。
【0016】
また、上記蒸散体において、水拡散部の上方であって、給水口の上方または下方には、植栽可能な土壌層を有すると共に底部に複数の孔を有する鉢体が設けられている。この場合、鉢体内の土壌層および底部の孔に水を通過させることができ、これにより、鉢体の底部から落下する水は、既に拡散することとなる。そして、鉢体によって拡散された水が水拡散部に落下することとなるため、水拡散部における水の拡散がより一層均一になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蒸散本体部の全体に水を供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1に示されるように、蒸散ルーバー1は、たとえば建物の窓や玄関の付近、庭などに設置されて、周囲の空気や建物内に流入する空気を冷却する蒸散装置である。この蒸散ルーバー1は、外構の一部を構成する。蒸散ルーバー1は、コンクリート製の基礎2に立設されて、内部に水を一時的に含水すると共にその水を蒸散させる複数の蒸散体3と、複数の蒸散体3に水を供給する給水ヘッダ4とを備えている。なお、
図1では、5本の蒸散体3が並設された例を示している。説明を容易にするため、図中の左側の4本では正面からの外観を、図中の右端の1本では縦断面を示している。
【0022】
各蒸散体3は、鉛直方向に延びる円柱状の外形をなしており、地面Gから上方に延びている。蒸散体3の下端部は基礎2に埋設されている。蒸散体3は、ステンレス製の円筒状の外筒6と、外筒6内に収容された蒸散本体部7とを有する。外筒6には、全体にわたって複数の横長の通気孔6aが形成されている。このような構成により、外筒6は、蒸散本体部7を収容・保持すると共に、蒸散本体部7に対する通気性を確保している。なお、外筒6の材質はステンレス製に限られず、たとえばアルミ製であってもよい。外筒6は耐食性の高い材質からなることが好ましい。通気孔6aの形状は適宜変更することができる。
【0023】
給水ヘッダ4は、複数の蒸散体3の上方において水平方向に延びるヘッダ管4aと、ヘッダ管4aから分岐されて、蒸散体3内に水を流下(もしくは滴下)させる給水口4bとを有している。ヘッダ管4aの基端には、図示しない送水手段(たとえばポンプ等)が接続されている。給水口4bの先端には、給水ノズルが設けられてもよく、給水ノズルは設けられず配管のみであってもよい。給水口4bの口径は、外筒6の内径よりも小さい。給水口4bは、その直下または直下の周囲にのみ水を供給可能に構成されている。
【0024】
蒸散体3は、外筒6の上端部に懸垂された鉢体8を有している。この鉢体8は、逆円錐台形状の側部8aと、側部8aの下端に連設された底部8bと、側部8aの上端に連設されて外筒6に懸架されたフランジ部8cとを有している。鉢体8内には土壌層9が充填されており、この土壌層9に植物10が植えられている。鉢体8は給水口4bの下方に配置されており、給水口4bから流下した水が土壌層9に浸透するようになっている。鉢体8は、植物10により蒸散ルーバー1の意匠性を向上させると共に、蒸散本体部7に供給される水を拡散させる機能を有する。なお、給水口4bは、給水口4bから鉢体8内に水が落下するようになっていれば、どのような位置に配置されてもよい。すなわち、給水口4bは、鉢体8の中央部の上方に配置されてもよく、鉢体8の辺縁部の上方に配置されてもよい。
【0025】
鉢体8が収容された外筒6の上端部には、鉢体8を包囲するようにして補強用の板が取り付けられている。外筒6において通気性が求められるのは蒸散本体部7が設けられた部分であり、鉢体8の周囲では通気機能を有さなくてもよい。
【0026】
蒸散本体部7は、給水ヘッダ4の給水口4bから供給された水を一時的に含水すると共に蒸散させるためのものである。蒸散本体部7は、多孔質の粒体からなり、これらの粒体が所定の高さまで外筒6内に充填されることにより、給水口4bの下方において鉛直方向に延在している。蒸散本体部7の上面部7aは、外筒6の内径に対応した直径を有しており、よって、上面部7aの直径は給水口4bの口径よりも大きくなっている。
【0027】
蒸散本体部7としては、単位体積あたりの表面積が大きい材料が適しており、たとえば、粒状に粉砕された軽量気泡コンクリート(ALC;Autoclaved Lightweight Concrete)を用いることができる。この場合、蒸散本体部7用に成形された粒状のACLを用いてもよく、建築廃材として廃棄されたALCを粉砕して粒状に成形しリサイクルしてもよい。蒸散本体部7の各粒体の粒径は、たとえば10〜50mm程度である。なお、10mm以下の細かい粒体を用いてもよいし、50mm以上の粗い粒体を用いてもよい。
【0028】
図2(a)は、
図1中の蒸散体3の上部を示す断面図である。本実施形態の蒸散体3にあっては、蒸散本体部7の上面部と給水口4bとの間に配置されて、給水口4bから供給された水を上面部7aに一様に拡散させる水拡散部15を備えている。水拡散部15は、上面部7a上に載置されて上面部7aに対向するフィルタ部材11と、外筒6の上端部内面に取り付けられてフィルタ部材11を包囲する円筒状の包囲部6bとを有する。フィルタ部材11は、鉢体8の底部8bと蒸散本体部7の上面部7aとの間に配置されている。包囲部6bは金属製の板材であり、鉢体8およびフィルタ部材11を包囲している。さらに、フィルタ部材11と包囲部6bとの間には、円環状の隙間14が形成されている。
【0029】
図2(b),(c)に示されるように、フィルタ部材11は、円板状をなしており、2枚のフィルタ、すなわち上フィルタ部材12および下フィルタ部材13を重ねて形成されている。上フィルタ部材12の上面部12dは、鉢体8の底部8bに対し鉛直方向に所定距離離間して対面しており、下フィルタ部材13の下面部13dは、蒸散本体部7の上面部7aに当接している。上下のフィルタ部材12,13は、たとえば、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる三次元立体編物である。
【0030】
フィルタ部材11の構成に関してより具体的に説明すると、上フィルタ部材12は、給水口4bから流下した水を受けつつ、毛細管現象によりその全体に水を浸透させる上浸透層(繊維層)12aと、上浸透層12aの下面に設けられて、上浸透層12aからの水の流下を妨げることなく上浸透層12aを支持する織布からなる支持層12bと、支持層12bの下面に設けられて、上浸透層12aと同じ構成を有する下浸透層12cとを有する。下フィルタ部材13は、上フィルタ部材12と同様にして、上浸透層13a、支持層13b、および下浸透層13cを有する。上フィルタ部材12および下フィルタ部材13としては、たとえば、旭化成せんい株式会社製の「フュージョン(登録商標)」を用いることができる。なお、当該構成においては、フィルタ部材11を2重層の構成としたが、単層であっても、3重層以上の構成であっても採用可能である。
【0031】
また、包囲部6bは、外筒6の上端部を補強する補強板を兼ねている。包囲部としては、本実施形態のように補強板を兼ねていてもよいし、フィルタ部材11のみを包囲する円環状の板材を用いてもよい。さらには、別途板材を設けることなく、外筒6において、フィルタ部材11の周囲には通気孔6aを形成せずにその部分を包囲部としてもよい。
【0032】
さらに、水拡散部15の上方に配置された鉢体8は、その底部8bに複数の孔8dを有している。これらの複数の孔8dは、給水口4bから供給されて土壌層9を通過した水をフィルタ部材11の上面部12dに滴下(もしくは流下)させるためのものである。孔8dは、孔8dからフィルタ部材11上に水が滴下するようになっていればどのような位置に配置されてもよいが、フィルタ部材11上に均一に水が滴下されるようにまんべんなく配置されることが好ましい。
【0033】
以上の構成を有する蒸散ルーバー1の蒸散体3では、給水口4bの下方に鉢体8が配置され、鉢体8の下方に水拡散部15のフィルタ部材11が配置されているため、給水口4bから流下した水は、鉢体8内の土壌層9および底部8bの孔8dを通過しつつ平面的に拡散する。次に、鉢体8によって拡散された水が水拡散部15のフィルタ部材11上に落下し、その水が毛細管現象によってフィルタ部材11内を浸透する。そして、蒸散本体部7の上面部7aの略全面に水が落下し、蒸散本体部7の全体に確実に水が行き渡る。
【0034】
蒸散体3によれば、蒸散本体部7の上面部7aと給水口4bとの間に水拡散部15が配置されているため、給水口4bから供給される水は蒸散本体部7に直接落下せずに水拡散部15のフィルタ部材11上に落下することとなる。この水拡散部15は、給水口4bから供給された水を蒸散本体部7の上面部7aに一様に拡散させるため、上面部7aでは、給水口4bの直下やその周囲の部分のみならず辺縁においても水を受けることができ、これによって、蒸散本体部7の一部にのみ水が偏って供給されることが防止される。よって、蒸散本体部7の全体に水が供給され、良好な蒸散状態を得ることができる。
【0035】
また、フィルタ部材11の上浸透層12aは、水を受けつつ、毛細管現象によってその水を浸透させるため、上浸透層12a全体に水が浸透することとなる。よって、蒸散本体部7の上面部7aの辺縁にまで水が落下し、蒸散本体部7の全体に確実かつ容易に水が供給される。
【0036】
特に、本実施形態ではフィルタ部材11が上フィルタ部材12および下フィルタ部材13の複数の層から構成されており、各フィルタ部材12,13が2層の浸透層(浸透層12a,12cおよび浸透層13a,13c)を備えるため、フィルタ部材11における水の浸透・拡散効果が高められている。当該フィルタ部材11の層構成や各フィルタ部材12,13の繊維密度は、給水口4bから供給される水の勢いや供給時間、蒸散速度などとの関係で定められるものとなり、例えば、フィルタ部材11上に一旦水を貯留し、そこからフィルタ部材11の浸透力を頼りに蒸散本体部7へ水を供給するといった当該フィルタ部材11をある種のヘッダとして利用する場合は、フィルタ部材11の繊維密度を高めると共に、多層構成とすることが望ましい。一方で、フィルタ部材11の水拡散力にのみ期待し、水をフィルタ部材11に長期に滞留させることをせず、水の供給は給水ヘッダ4側で調整するといった場合には、ある程度の浸透性を有する単層のフィルタ部材が採用される。
【0037】
また、フィルタ部材11と包囲部6bとの間には隙間14が形成されているため、この隙間14から水が漏れ出すこととなり、フィルタ部材11の直下のみならず、その周縁部からも積極的に水を漏れ出させることができる。これによって、蒸散本体部7の周縁部により多くの水が供給される。蒸散本体部7の周縁部は外部に面しており蒸散が活発に行われる部分であるため、効率的な蒸散が行われる。
【0038】
また、鉢体8内の土壌層9および底部8bの孔8dに水を通過させることにより、鉢体8の底部8bから落下する水は、既に拡散している。鉢体8によって拡散された水が水拡散部15に落下するため、水拡散部15における水の拡散がより一層均一になる。本実施形態のように給水口4bの下方に鉢体8を設けた場合には、給水口4bからの水を複数の用途で利用することができる。さらに、鉢体8に植えられた植物10により、意匠性も向上する。
【0039】
図3は、第2実施形態に係る蒸散体3Aの上部を示す断面図である。
図3に示す蒸散体3Aが
図2(a)に示した蒸散体3と違う点は、フィルタ部材11に代えて、山形状のフィルタ部材11Aを有する水拡散部15Aを備えた点である。フィルタ部材11Aの材質および層構造は、フィルタ部材11と同様である。フィルタ部材11Aの中央部11aは、上方に向けて山形状に突出しており、フィルタ部材11Aの外周部11bは、中央部11aよりも低くなっている。さらに、フィルタ部材11Aの周縁部11cは、包囲部6bに密着している。
【0040】
上記構成を有する蒸散体3Aによれば、フィルタ部材11Aの繊維層に浸透した水は、中央部11aよりも外周部11bに偏在しやすく、またフィルタ部材11の繊維密度によっては当該フィルタ部材11の外周部11b上方に水が溜まりやすくなり、その結果、周縁部11cから蒸散本体部7の上面部7aに向けて水が落下しやすくなる。これによって、蒸散本体部7の周縁部により多くの水が供給され、効率的な蒸散が行われる。
【0041】
また、フィルタ部材11Aの周縁部11cは包囲部6bに密着しているため、その周縁部11cから水が漏れ出すことが防止される。
【0042】
図4(a)は、第3実施形態に係る蒸散体3Bの上部を示す断面図である。
図4(a)に示す蒸散体3Bが
図2(a)に示した蒸散体3と違う点は、フィルタ部材11に代えて、円形の皿体16を有する水拡散部15Bを備えた点である。この皿体16は、蒸散本体部7の上面部7aよりも水平方向の幅すなわち直径が小さくなっており、皿体16と包囲部6bとの間には円環状の隙間17が形成されている。
図4(a),(b)に示されるように、皿体16は、ドーナツ状の底板部16aと、底板部16aの周縁部から立ち上がる周壁部16bと、底板部16aの中央に形成された円形の開口部16cと、開口部16cの周縁から立ち上がる開口周壁部16dとを有している。開口周壁部16dの高さは、周壁部16bの高さと同じになっている。なお、鉢体8の底部8bの孔8dは、少なくとも底板部16aの直上に設けられることが好ましい。
【0043】
上記構成を有する蒸散体3Bによれば、給水口4bから供給された水は、いったん皿体16に蓄えられ、皿体16が満水状態になると、水は皿体16の周壁部16bからオーバーフローして蒸散本体部7の上面部7aに落下する。このようなオーバーフロー効果を利用することで、給水口4bの直下のみならず上面部7aの辺縁にまで水を落下させることができ、蒸散本体部7の全体に確実かつ容易に水が供給される。
【0044】
また、水をオーバーフローさせる周壁部が、底板部16aの周縁部のみならず開口部16cの周囲にも設けられているため、開口部16cからもオーバーフローにより水を落下させることができる。よって、より多くの周壁部16b,16dを設けることができ、上面部7aに対してより均一に水が拡散する。
【0045】
図5(a)は、第4実施形態に係る蒸散体3Cの上部を示す断面図、
図5(b)は、蒸散体3Cの皿体の平面図である。
図5(a)に示す蒸散体3Cが
図4(a)に示した蒸散体3Bと違う点は、皿体16に代えて、多重円状の樋状部材からなる皿体18を有する水拡散部15Cを備えた点である。この皿体18は、水を溜めることのできる樋状部材が同心状に3重に配置されてなる。皿体18は、3重に配置されたドーナツ状の底板部18aと、最外周の底板部18aの外縁部から立ち上がる周壁部18bと、対面する底板部18a,18a間および皿体18の中央部に形成された開口部18cと、開口部18cの周縁から立ち上がる開口周壁部18dとを有している。開口周壁部18dの高さは、周壁部18bの高さと同じになっている。なお、鉢体8の底部8bの孔8dは、少なくとも底板部18aの直上に設けられることが好ましい。また、3重の樋状部材は、十字状の連結・支持部材19上に固定されている。なお、本実施形態では樋状部材を3重のものとしているが、2重であっても4重以上のものとしても採用可能である。
【0046】
上記構成を有する蒸散体3Cによれば、上述の蒸散体3Bと同様の作用・効果を奏することができると共に、より長い周壁部18b,18dを設けることができる。
【0047】
図6(a)は、第5実施形態に係る蒸散体3Dの上部を示す断面図、
図6(b)は、蒸散体3Dの皿体の平面図である。
図6(a)に示す蒸散体3Dが
図5(a)に示した蒸散体3Cと違う点は、皿体18に代えて、スパイラル状の樋状部材からなる皿体20を有する水拡散部15Dを備えた点である。この皿体20は、水を溜めることのできる1本の樋状部材が蚊取り線香のようなスパイラル状に配置されている。皿体20は、スパイラル状に延びる底板部20aと、底板部20aの幅方向における端縁部から立ち上がる周壁部20bと、対面する周壁部20b,20b間に形成された開口部20cとを有している。周壁部20bの高さは均一になっている。なお、鉢体8の底部8bの孔8dは、少なくとも底板部20aの直上に設けられることが好ましい。
【0048】
上記構成を有する蒸散体3Dによれば、上述の蒸散体3Cと同様の作用・効果を奏することができると共に、たとえば鉢体8の底部8bに形成された孔8dが一つである場合であっても、上面部7aに対して均一に水が拡散する。
【0049】
図7(a)は、第6実施形態に係る蒸散体3Eの上部を示す断面図、
図7(b)は、蒸散体3Eの皿体の平面図である。
図7(a)に示す蒸散体3Eが
図4(a)に示した蒸散体3Bと違う点は、皿体16に代えて、底板部21aにさらに溝部21dが形成された皿体21を有する水拡散部15Eを備えた点である。この皿体21は、円環状の溝部21dおよび溝部21d以外の平坦部21eからなる底板部21aと、底板部21aの周縁部から立ち上がる周壁部21bと、溝部21dに形成された複数の孔部21fと、平坦部21eに形成された複数の孔部21gとを有している。皿体21では、溝部21dに形成された各孔部21fは、平坦部21eに形成された孔部21gよりも小さくなっている。
【0050】
上記構成を有する蒸散体3Eによれば、上述の蒸散体3Cと同様の作用・効果を奏することができる。さらには、溝部21dの孔部21fから水が落下すると共に、溝部21dに溜まって平坦部21eに溢れた水が、平坦部21eの孔部21gからも落下する。よって、底板部21a全体から水を落下させることができ、上面部7aに対してより均一に水が拡散する。
【0051】
図8(a)は、第7実施形態に係る蒸散体3Fの上部を示す断面図、
図8(b)は、蒸散体3Fの鉢体の底部の平面図である。
図8(a)に示す蒸散体3Fが上記各実施形態の蒸散体と違う点は、フィルタ部材や皿体を設けていない点と、鉢体8に代えて、底部28bの構成を工夫した鉢体28を備えた点である。鉢体28は、逆円錐台形状の側部28aと、側部28aの下端に連設された底部28bと、側部28aの上端に連設されて外筒6に懸架されたフランジ部28cとを有している。さらに、底部28bは、中央部および同心状に二重に形成されて上方に突出する突出部28eと、突出部28e同士間および突出部28eと側部28aとの間に形成された溝部28dとを有している。溝部28dには、複数の孔28fが形成されている。
【0052】
上記構成を有する3Fによれば、鉢体28内の土壌層9および底部28bの孔28fに水を通過させることにより、水が拡散した状態で蒸散本体部7に供給されるものとなる。すなわち、蒸散体3Fにおいては、この鉢体28が水拡散部に相当する。このように、植栽に用いられる鉢体28を水の拡散にも利用することができる。さらには、給水口4bからの水を複数の用途で利用することができる。さらに、鉢体28に植えられた植物10により、意匠性も向上する。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では円柱状の外形を有する蒸散体について説明したが、これに限られず、角柱状の外形を有する蒸散体であってもよい。蒸散体は、給水口4bの下方において鉛直方向に延在し、かつ空気が通るような形状であれば、特に限定されない。また、上記実施形態では、給水ヘッダ4のヘッダ管4aが蒸散体3の上方に設けられる場合について説明したが、例えば、鉢体と水拡散部との間に給水ヘッダが設けられてもよい。この場合、鉢体への給水は給水ヘッダ以外の手段により行われる。葉が垂れ下がるタイプの植物10を鉢体に植えることで、給水ヘッダを覆い隠して意匠性を向上させることもできる。
【0054】
また、上記実施形態では、蒸散体が外構の一部を構成するものとして示されているが、建物の外壁や窓前に取り付けられる又はこれらを構成するルーバー装置の各ルーバー体に本発明の蒸散体を採用することももちろん可能である。
【0055】
また、本発明の蒸散体は、上記実施形態においては断面円形のものを採用しているが、当該断面形状はこれに留まらず、楕円形はもちろん、三角形や長方形やひし形等の多角形、半円形状又は星形形状等の形状を採用することも可能である。
【0056】
また、フィルタ部材の構成は、水を毛細管現象により浸透させる繊維層を備えていればフィルタ部材11やフィルタ部材11Aの構成に限られない。フィルタ部材として、あらゆる形状の三次元立体編物などを用いることができる。また、鉢体8,28の底部には、ランダムに孔を形成してもよい。さらに、フィルタ部材や皿体を設ける場合において、鉢体を省略することもできる。この場合、給水口4bは、包囲部6bとの間の隙間や皿体に形成された開口部もしくは孔部以外の領域に水を流下させるよう配置される。