(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献4の情報端末装置は、1軸のヒンジ機構のものであり、ヒンジ部の一部が表示部より突出してしまう構成のものである。また、この情報端末装置は、ヒンジ機構とは別に自動スライド機構が必要なものであり、構造が複雑で信頼性を低下させるおそれがあり、装置の小型化があまり図れないおそれがあるという問題点があった。また、この情報端末装置は、開閉動作の操作性もあまりよくない。特許文献5のモバイル端末機は、1軸のヒンジ機構のものであり、両端に設けられたヒンジが表示部側に突出する構成であり、視認性、作業性、操作性がよくないという問題点があった。このように、従来の開閉式の電子機器は改良改善の余地がまだ残っているものであった。
【0006】
本発明は、前記した問題点を解決するためになされたもので、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、平行二軸ヒンジ装置を備えた開閉式の電子機器において、開閉動作時には一対の筐体同士の干渉を防止できるとともに、筐体同士を略180度開いた状態のときに一対の筐体同士を極力接近させることが可能な電子機器を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、一対の筐体の開閉動作を同期、連動させるとともに開閉動作するときのガタツキを防止することができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明は以下の手段を採用する。
本発明1の電子機器は、
電子部品を内蔵した第1筐体と、
ヒンジ機構により、前記第1筐体の揺動と合わせて、折り畳み中心線を中心として相対的に角度略180度以内で折り畳み可能で、電子部品を内蔵した第2筐体とからなる電子機器において、
前記ヒンジ機構は、
前記第1筐体の両側面に配置され、第1カム面に沿って移動する第1スライド軸(13、53)と、
前記第1筐体の両側面に、前記折り畳み中心線を基準に前記第1スライド軸より遠い位置で、しかも前記第1スライド軸と中心線が互いに平行になるように配置され、前記第1カム面に沿って移動する第2スライド軸(14、55)と、
前記第2筐体の両側面に配置され、第2カム面に沿って移動する第3スライド軸(33、73)と、
前記第2筐体の両側面に、前記折り畳み中心線を基準に前記第3スライド軸より遠い位置で、しかも前記第3スライド軸と中心線が互いに平行になるように配置され、前記第2カム面に沿って移動する第4スライド軸(34、75)と、
略長方形状のプレートであって、カム溝である前記第1カム面と、カム溝である前記第2カム面とが、前記折り畳み中心線に対して、対称な位置に形成されたカムプレート(12、52)と、
前記カムプレートに、所定の間隔を有して一体に固定された固定板(21、65)と、
前記カムプレートと前記固定板との間に設けられ、前記第1筐体の揺動運動と前記第2筐体の揺動運動とが同期して連動するための折り畳み動作連動機構と、
前記折り畳み動作連動機構と前記固定板との間に設けられ、前記折り畳み動作連動機構に対して、常時、所定の方向に荷重を付与するための連動機構荷重付与部材(20、64)と
からなり、
前記折り畳み動作連動機構は、
前記カムプレートと前記固定板との間に、移動可能に設けられ、前記カムプレートの長手方向に延び、前記第1スライド軸が挿通される第1長穴と、
前記長手方向に延び、前記第3スライド軸が挿通される第2長穴とが形成されている同期板(18)と、
前記カムプレートと前記固定板との間に設けられ、前記同期板を、前記カムプレートの長手方向と直交する方向に移動可能に案内するための同期板ガイドとを備え、
前記第1スライド軸または前記第3スライド軸の揺動運動を、前記同期板の直線運動に変換するとともに、前記同期板の直線運動を前記第3スライド軸または前記第1スライド軸の揺動運動に変換させて連動させるものであることを特徴とする。
【0009】
本発明2の電子機器は、本発明1において、
前記連動機構荷重付与部材は、
前記固定板と前記同期板との間に、前記同期板に一体に設けられ、前記固定板に対して所定の荷重を付与するための付勢部材であることを特徴とする。
【0010】
本発明3の電子機器は、
電子部品を内蔵した第1筐体と、
ヒンジ機構により、前記第1筐体の揺動と合わせて、折り畳み中心線を中心として相対的に角度略180度以内で折り畳み可能で、電子部品を内蔵した第2筐体とからなる電子機器において、
前記ヒンジ機構は、
前記第1筐体の両側面に配置され、第1カム面に沿って移動する第1スライド軸(13、53)と、
前記第1筐体の両側面に、前記折り畳み中心線を基準に前記第1スライド軸より遠い位置で、しかも前記第1スライド軸と中心線が互いに平行になるように配置され、前記第1カム面に沿って移動する第2スライド軸(14、55)と、
前記第2筐体の両側面に配置され、第2カム面に沿って移動する第3スライド軸(33、73)と、
前記第2筐体の両側面に、前記折り畳み中心線を基準に前記第3スライド軸より遠い位置で、しかも前記第3スライド軸と中心線が互いに平行になるように配置され、前記第2カム面に沿って移動する第4スライド軸(34、75)と、
略長方形状のプレートであって、カム溝である前記第1カム面と、カム溝である前記第2カム面とが、前記折り畳み中心線に対して、対称な位置に形成されたカムプレート(12、52)と、
前記カムプレートに、所定の間隔を有して一体に固定された固定板(21、65)と、
前記カムプレートと前記固定板との間に設けられ、前記第1筐体の揺動運動と前記第2筐体の揺動運動とが同期して連動するための折り畳み動作連動機構と、
前記折り畳み動作連動機構と前記固定板との間に設けられ、前記折り畳み動作連動機構に対して、常時、所定の方向に荷重を付与するための連動機構荷重付与部材(20、64)と
からなり、
前記折り畳み動作連動機構は、
前記カムプレートの中央部に支持され、前記カムプレートの前記長手方向と直交する方向に案内面(56c)が形成されている中心軸(56)と、
一方の端部側に前記第2スライド軸が揺動可能に連結される一方の第2リンク部材(60)と、
一方の端部側に前記第4スライド軸が揺動可能に連結される他方の第2リンク部材(80)と、
前記中心軸を中心に揺動し、前記一方の第2リンク部材(60)の他方の端部側と、
前記他方の第2リンク部材(80)の他方の端部側とに揺動可能に連結される第1リンク部材(59)と、
前記長手方向に延び、前記第1スライド軸が挿通される第1長穴と、
前記長手方向に延び、前記第3スライド軸が挿通される第2長穴と、
前記案内面に案内される案内溝とが形成されている同期板(54)とを備え、
前記第1スライド軸または前記第3スライド軸の揺動運動を、前記同期板の直線運動に変換するとともに、前記同期板の直線運動を前記第3スライド軸または前記第1スライド軸の揺動運動に変換させて連動させることを特徴とする。
【0011】
本発明4の電子機器は、本発明3において、
前記連動機構荷重付与部材は、
前記折り畳み運動連動機構と前記固定板との間に設けられ、前記一方の第2リンク部材の一方の側に形成されている第1当接面部と当接するための第1傾斜面と、
前記他方の第2リンク部材の一方の側に形成されている第2当接面部と当接するための第2斜面部が形成されたカム部材(63)と、
前記中心軸の軸線方向に、前記カム部材を前記カムプレート側に常時付勢している付勢部材(64)を備え、
前記一方の第2リンク部材(60)及び前記他方の第2リンク部材(80)に対して、所定の回転方向に荷重を付与しているものであることを特徴とする。
【0012】
本発明5の電子機器は、本発明1から4において、
前記第3スライド軸は、前記折り畳み中心線を中心として、前記第1スライド軸と対称位置に配置されたものであり、
前記第4スライド軸は、前記折り畳み中心線を中心として、前記第2スライド軸と対称位置に配置されたものであり、
前記カムプレートは、前記第1カム面と前記第2カム面とが、前記折り畳み中心線を中心として、対称位置に形成されているものであることを特徴とする。
【0013】
本発明6の電子機器は、本発明1から5において、
前記第1カム面及び前記第2カム面の前記カム溝は、
前記第1筐体及び前記第2筐体の前記揺動の中間角度位置において、前記第2スライド軸、及び前記第4スライド軸が、前記折り畳み中心線から最も遠くなる距離に揺動したとき、前記折り畳み中心線上の揺動中心点で、前記第1筐体及び前記第2筐体の角部が、前記折り畳み中心線に重ならない形状であることを特徴とする。
【0014】
本発明7の電子機器は、本発明1から6において、
請求項1から
6のいずれか1項に記載された電子機器において、
前記第1カム面は、前記第1スライド軸を案内する第1カム溝(11a、51a)、及び前記第2スライド軸を案内する第2カム溝(11b、51b)を有し、
前記第2カム面は、前記第3スライド軸を案内する第3カム溝(31a、71a)、及び前記第4スライド軸を案内する第4カム溝(31b、71b)を有するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電子機器は、平行二軸ヒンジ装置を備えた折り畳み式の電子機器において、第1筐体と第2筐体とが閉じた「閉じ状態」から第1筐体と第2筐体とが略180度開いた「開き状態」、または、「開き状態」から「閉じ状態」に開閉動作する過程では、第1筐体及び第2筐体の揺動動作に連動して、第1筐体と第2筐体を互いに離れる方向に移動させ、筐体同士の干渉を防止している。また、「開き状態」において、筐体同士を極力近づけることができ、両方の筐体に表示画面が設けられている電子機器では表示画面が一体に、かつ、面一になって大きな表示画面を形成することが可能となる。
【0017】
また、本発明の電子機器は、折り畳み動作連動機構と連動機構荷重付与部材とを備え、一対の筐体の開閉動作が、同期した連動動作になるとともに、開閉動作するときのガタツキを防止することができる。すなわち、開閉動作がスムーズで、信頼性が高く、ヒンジ機構の小型化も図れる。使用者が、電子機器を開閉操作したときの感触の向上が図れる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態1、2について、図面に基づいて、その実施の形態を詳細に説明する。
なお、この実施の形態1、2の説明では、電子機器の側面と直交する方向において、電子機器の側面に近づく側を他方の側と記載し、この側面から離れていく側(反側面側)を一方の側と記載して説明を行うことにする。
【0020】
〔実施の形態1〕
図1〜4に基づいて、折り畳み式の電子機器の実施の形態1について説明を行う。
図1は、本発明の折り畳み式の電子機器のヒンジ部分を示す正面図である。
図2は、本発明の実施の形態1におけるヒンジ機構の構造を分解して示す分解図である。
図3は、実施の形態1における取付部材(筐体)の開閉動作とカム面との関係を説明するための図であり、(a)は閉じ状態、(b)は中間角度状態、(c)は略180度開き状態を示した
図1における矢印A方向から矢視した説明図である。
図4は、実施の形態1における同期板、板バネ部材と固定板との関係を説明するために示した説明図である。
【0021】
折り畳み式の電子機器100の筐体は、一対の筐体であり、ヒンジ機構1を介して開閉動作する第1筐体101と第2筐体102とから構成されている。第1筐体101と第2筐体102とは、ヒンジ機構1により、折り畳み中心線C−Cを中心として、相対的に、略180度(例えば180±5度)以内の角度範囲で開閉操作でき、折り畳み可能に構成されている。第1筐体101、第2筐体102は、各々、電子部品を内蔵し、第1筐体101と、第2筐体102は、ケーブル105で接続されている。また、第1筐体101、第2筐体102は、各々、表示部103、表示部104を備えている。第1筐体101と第2筐体102とは、電子機器101を折り畳んで携帯するための携帯(収納)状態と、電子機器101を開いて使用するための使用状態に、ヒンジ機構1を介して開閉動作する。ヒンジ機構1は、電子機器101の側面の両端に設けられている。
【0022】
ヒンジ機構1は、第1筐体101の後面(表示部103の後面)に、固定して配置される第1取付部材10と、第2筐体102の後面(表示部104の後面)に、固定して配置される第2取付部材30とを有している。また、カムプレート12と固定板21とが、4本の支持軸16の大径部である第4軸部16d、第4軸部16dより小径の第2軸部16bを挟んで、互いに一体に固定され、ヒンジ機構1のヒンジ本体を構成している。すなわち、カムプレート12と固定板21とは、所定の間隔を有するとともに、互いに平行になるように設けられている。カムプレート12と固定板21との間には、連結部材15、35、同期板18等が設けられている。
【0023】
カムプレート12は、略長方形をしたプレートであり、このプレートを貫通して形成された第1カム面11、第2カム面31が形成されている。カムプレート12の4隅の所定の位置には、各々、貫通した孔である穴部12aが形成されている。この穴部12aには、支持軸16の他方の側に形成され、第4軸部16dより小径の第1軸部16aが差し込まれている。この第1軸部16aの端部を穴部12aにかしめることで、カムプレート12から抜け出ないように構成されている。固定板21は、略長方形をしたプレートである。固定板21の4隅の所定の位置には、各々、貫通した孔である穴部21aが形成されている。
【0024】
また、カムプレート12の穴部12aと、固定板21の穴部21aとは、同一のピッチ寸法で明けられている。この穴部21aには、支持軸16の一方の側に形成され、第2軸部16bより小径の第3軸部16cが差し込まれている。支持軸16は、この第3軸部16cの端部を、穴部21aにかしめることで、固定板21から抜け出ないように構成されている。固定板21の長手方向の両端には、各々、同期板ガイド19、19が配置されている。同期板ガイド19、19は、後述する同期板18が固定板21の長手方向と直交する方向に移動するとき、同期板18のガイドをするためのものである。同期板ガイド19には、2つの貫通する孔である穴19aが形成されており、この穴19aは支持軸16の第2軸部16bに挿通されている。
【0025】
第1取付部材10は、第1筐体101が固定される本体板部10aと、後述する第1スライド軸13、第2スライド軸14が、各々、設けられる軸体取付部10bとから構成されている。第1取付部材10は、本体板部10aと軸体取付部10bとが、90度の角度を成し、即ちL字状に連結部で連結され、一体に形成された部材である。第1取付部材10の本体板部10aには、第1筐体101を固定するためのボルト106の軸部が挿入される二つの貫通孔であるボルト穴10cが形成されている。軸体取付部10bには、貫通孔である第1穴部10dと第2穴部10eが形成されている。第1穴部10dには、第1スライド軸13の第1軸部13aが挿通されており、第2穴部10eには、第2スライド軸14の第1軸部14aが挿通されている。
【0026】
第2取付部材30は、第2筐体102が固定される本体板部30aと、後述する第3スライド軸33と第4スライド軸34が設けられる軸体取付部30bとから構成されている。第2取付部材30は、本体板部30aと軸体取付部30bとが、90度の角度を成し、即ちL字状に連結部で連結され、一体に形成された部材である。第2取付部材30の本体板部30aには、第2筐体102を固定するためのボルト106の軸部が挿入される二つの貫通孔であるボルト穴30cが形成されている。軸体取付部30bには、貫通孔である第1穴部30dと第2穴部30eが形成されている。第1穴部30dには、第3スライド軸33の第1軸部33aが挿通されており、第2穴部30eには、第4スライド軸34の第1軸部34aが挿通されている。
【0027】
第1取付部材10の軸体取付部10b、及び、第2取付部材30の軸体取付部30bに隣接(接触)してカムプレート12が配置されている。カムプレート12には、第1スライド軸13、第2スライド軸14が案内される第1カム面11と、第3スライド軸33、第4スライド軸34が案内される第2カム面31とが形成されている。第1カム面11、及び第2カム面31は、カムプレート12の板厚方向に貫通する孔として形成されている。第1カム面11と第2カム面31とは、折り畳み中心線C−C(
図3参照)に対して対称な形状に形成されている。なお、第1カム面11、第2カム面31と、第1スライド軸13、第2スライド軸14、第3スライド軸33、第4スライド軸34の関係については、本出願人が提出した特願2011−122234号(平成23年5月31日出願)で詳細に説明を行っており、本発明の要旨でもないので詳細な説明は省略するが、以下簡単に説明する。
【0028】
第1カム面11には、第1スライド軸13が案内される円弧形状の第1カム溝11aと、第2スライド軸14が案内される直線状の第2カム溝11bが形成されている(
図3参照)。第1スライド軸13と第2スライド軸14とは、中心線が互いに平行になるように配置されている。また、第2スライド軸14は、折り畳み中心線C−Cを基準に、第1スライド軸13より遠い位置に配置されている。第2カム面31には、第3スライド軸33が案内される円弧形状の第3カム溝31aと、第4スライド軸34が案内される直線状の第4カム溝31bが形成されている(
図3参照)。第3スライド軸33と第4スライド軸34とは、中心線が互いに平行になるように配置されている。また、第4スライド軸34は、折り畳み中心線C−Cを基準に、第3スライド軸33より遠い位置に配置されている。さらに、第3スライド軸33は、折り畳み中心線C−Cを中心として、第1スライド軸13と対称位置に配置されている。第4スライド軸34は、折り畳み中心線C−Cを中心として、第2スライド軸14と対称位置に配置されている。第1カム面11及び第2カム面31は、第1筐体101と第2筐体103とが、折り畳まれた閉じ状態(
図3(a)の状態)から略180度開いた開き状態(
図3(c)の状態)に揺動するとき、折り畳み中心線C−C上の揺動中心点で、第1筐体101及び第2筐体102の角部が、折り畳み中心線C−Cに重ならない形状になっている。
【0029】
即ち、第1筐体101の角部と第2筐体102の角部とが、干渉しないようにするには、両筐体が揺動したとき、第2スライド軸14の中心と折り畳み中心線C−Cとの距離、及び、第4スライド軸34と折り畳み中心線C−Cとの距離を最も大きくする必要がある。カムプレート12に形成された第1カム面11と第2カム面31の溝形状は、この条件を満たすような形状に形成されているとよい。言い換えると、第1カム面11及び第2カム面31は、第1筐体101及び第2筐体102の揺動の中間角度状態(
図3(b)の状態)の位置において、第2スライド軸14、及び第4スライド軸34が、折り畳み中心線C−Cから最も遠くなる距離に揺動したとき、折り畳み中心線C−C上の揺動中心点で、第1筐体101及び第2筐体102の角部が、折り畳み中心線C−Cに重ならない形状になっている。
【0030】
カムプレート12の固定板21側には、連結部材15、35が一対の構成で設けられている。連結部材15は、略楕円形状をしたプレートであって、第1スライド軸13の中心線方向に、かつ貫通孔である穴15aと角穴15bが、所定の間隔を有して並ぶように形成されている。連結部材35は、略楕円形状をしたプレートであって、第3スライド軸33の中心線が平行線方向で、かつ貫通孔である穴35aと角穴35bが、所定の間隔を有して並ぶように形成されている。
【0031】
第2スライド軸14は、他方の側である小径軸部14aと大径軸部14cとからなり、大径軸部14cの一方の端部側に四角柱部14bが形成されている。第2スライド軸14は、この小径軸部14aが軸体取付部10bの第2穴部10eに差し込まれた後、小径軸部14aの端部がかしめられ、軸体取付部10bから第2スライド軸14が抜け出さないように構成されている。第2スライド軸14は、この大径軸部14cの段部が軸体取付部10bに当接しているとともに、小径軸部14aの軸端がかしめられていることで、第1取付部材10の軸体取付部10bに取り付けられている。
【0032】
また、第2スライド軸14の大径軸部14cは、第1カム面11の第2カム溝11b内を略直線方向にスライド移動する。第2スライド軸14の四角柱部14bは角穴15bに嵌り込んでいる。第1スライド軸13は、第1軸部13aが、穴15a、第1カム溝11a、第1穴部10dに挿通された後、第1軸部13aの端部がかしめられている。第1スライド軸13は、第1軸部13aより大径の第2軸部13cの段部が軸体取付部10bに当接しているとともに、第1スライド軸13の第1軸部13aの端部をかしめることで、軸体取付部10bから第1スライド軸13が抜け出さないように構成されている。
【0033】
第4スライド軸34は、他方の側である小径軸部34aと大径軸部34cとからなり、大径軸部34cの一方の端部側に四角柱部34bが形成されている。第4スライド軸34は、小径軸部34aが軸体取付部30bの第2穴部30eに差し込まれた後、小径軸部34aの端部がかしめられ、軸体取付部30bから第4スライド軸34が抜け出さないように構成されている。第4スライド軸34は、大径軸部34cの段部が軸体取付部30bに当接しているとともに、小径軸部34aの軸端がかしめられていることで第2取付部材30の軸体取付部30bに取り付けられている。また、第4スライド軸34の大径軸部34cは、第2カム面31の第4カム溝31b内をスライド移動する。第4スライド軸34の四角柱部34bは角穴35bに嵌り込んでいる。
【0034】
第3スライド軸33は、第1軸部33aが、穴35a、第3カム溝31a、第1穴部30dに挿通された後、第1軸部33aの端部がかしめられている。第3スライド軸33は、第1軸部33aより大径の第2軸部33cの段部を軸体取付部30bに当接させるとともに、第3スライド軸33の第1軸部33aの端部をかしめることで、軸体取付部30bに取り付けられている。連結部材15、35の固定板21側には、連結部材15、35に隣接(接触)するように、同期板18が配置されている。同期板18は、略長方形をしたプレート状のものであって、2枚の同期板ガイド19、19の側面で案内されている。
【0035】
同期板18は、カムプレート12の長手方向と直交する方向(第1スライド軸13、第3スライド軸33の中心軸線と直交する方向)に移動可能になっている。同期板18には、第1長穴18a、第2長穴18bが形成されている。第1長穴18a、第2長穴18bは、第1カム面11の第2カム溝11b、第2カム面の第4カム溝31bと平行な方向、または、ほぼ平行な方向に、長軸が延びるように形成されている。言い換えると、第1長穴18a、第2長穴18bと、第2カム溝11b、第4カム溝31bとは、平行またはほぼ平行に設けられている。第1長穴18aには、第1スライド軸13の第3軸部13bが移動自在に挿入されている。第1スライド軸13bの段部と同期板18との間には、ワッシャ17が介在されている。第2長穴18bには、第3スライド軸33の第3軸部33bが移動自在に挿入されている。第3軸部33bの段部と同期板18との間には、ワッシャ17が介在されている。
【0036】
また、同期板18の長手方向の両側の端面には、凹部である2つの係合凹部18cが形成されている。同期板18と固定板21との間には、板バネ部材20が配置されている。板バネ部材20は、同期板18の係合凹部18cに係合する係合爪部20cを有し、長手方向において、端面側より中央部20aが凸状になる山形形状に形成されている。板バネ部材(連動機構荷重付与部材)20は、係合爪部20cが係合凹部18cに係合することにより、同期板18と一体となる。同期板18と同期板ガイド19等で折り畳み動作連動機構が構成されている。
【0037】
図4に示すように、板バネ部材20の平面状の中央部20aには、塑性加工により凸部20bが形成されている。この凸部20bは、固定板21に形成された第1係止穴21b、第2係止穴21cに係止されることで、第1筐体101、第2筐体102の開き状態、または閉じ状態をその摩擦力で保持するとともに、凸部20bが第1係止穴21b、または、第2係止穴21cを脱するときクリック感を作ることができる。また、凸部20bは、第1係止穴21b、第2係止穴21cに係止されていない状態でも、板バネ部材20の弾性力で凸部20bが固定板21に当接し、凸部20bが固定板21の面20dと接触する摩擦力により、遊び(ガタ)を感じることなくスムーズな開閉動作が行えるようになる。板バネ部材20は、折り畳み動作連動機構側に、適度な荷重を付与することで、使用者が、電子機器を開閉操作したときの感触の向上が図れる。また、折り畳み動作連動機構と、板バネ部材20との相乗効果で、開閉動作を行うときに「がたつく」ことが抑制または防止される。
【0038】
〔実施の形態1の電子機器のヒンジ機構の作動〕
図2、3に従って、このヒンジ機構1の操作手順、作動について説明を行う。
図3(a)は、第1筐体101(
図1参照)が取り付けられた第1取付部材10と、第2筐体102(
図1参照)が取り付けられた第2取付部材30とが閉じた状態を示す説明図であって、
図1のA方向から矢視した図である。
図3(c)は、第1取付部材10と第2取付部材30とが略180度開いた状態を示す説明図である。
図3(b)は、
図3(a)の状態と、
図3(c)の状態との間の中間角度状態(例えば、第1筐体101と第2筐体102が約90度開いた状態)を示す説明図である。
【0039】
第1取付部材10側の第1筐体101、第2取付部材30側の第2筐体102のどちら一方、または、両方を開閉操作してもよいが、この説明では、第1取付部材10(第1筐体101)に対して第2取付部材30(第2筐体102)を開く操作を行う例で説明を行う。第1取付部材10(第1筐体101)、第2取付部材30(第2筐体102)が閉じた閉じ状態から、第2取付部材30を開く操作を行うと、板バネ部材20の凸部20bと固定板21の第1係止穴21bとの係止が解除され、クリック感を感じる。また、第3スライド軸33が第3カム溝31aに、第4スライド軸34が第4カム溝31bに案内され、第2取付部材30(第2筐体102)は、
図3(a)に示すθ1方向(
図3における時計回り方向)に揺動するとともに、第1取付部材10(第1筐体101)から離れる方向(
図3における+X方向)に直線移動する。第3スライド軸33、第4スライド軸34は、第2取付部材30、連結部材35等によって、相対位置関係を維持しながら移動するので
図3(b)に示した状態になる。
【0040】
また、第4スライド軸34が、第4カム溝31bに案内されて+X方向に直線移動するとともに、第3スライド軸33が第3カム溝31aの円弧形状に沿って、
図3における円弧形状の下部から中央部に揺動運動する。このことにより、同期板18は、同期板ガイド19に案内されて一方の方向(
図3における+Y方向)に移動する。すなわち、第3スライド軸33が揺動運動したとき、X方向の移動は第3スライド軸33が同期板18の第2長穴18b内を移動することで吸収される。従って、Y方向へ移動させる力のみが同期板18に伝達され、同期板18は一方の方向(+Y方向)に移動する。同期板18は、この一方の方向(+Y方向)への移動を第1スライド軸13に伝達する。
【0041】
第1スライド軸13は、第1取付部材10、連結部材15等によって、第2スライド軸14との相対関係を維持しながら移動するため、同期板18が一方の方向(+Y方向)に移動したとき、第1スライド軸13は、第1カム溝11aの円弧形状に沿って、円弧形状の下部から中央部に揺動運動する。この第1スライド軸13が揺動運動するとき、第1スライド軸13のX方向の移動は、第1スライド軸13が同期板18の第1長穴18a内を移動することで吸収するため、同期板18の移動を妨げることがない。そのため、第1取付部材10も第2取付部材30の移動に連動して開いていく。即ち、第1取付部材10が、θ2方向(
図3における反時計回り方向)に揺動するとともに、第2取付部材30に対して、離れる方向(−X方向)に直線移動する。言い換えると、第1筐体101がθ2方向に、第2筐体102がθ1方向に揺動するとともに、第1筐体101と第2筐体102とが互いに離れる方向に直線移動する。
【0042】
中間角度状態(
図3(b)の状態)から開き状態(
図3(c)の状態)になるように、第1取付部材10に対して第2取付部材30を開方向に開く操作を行うと、第3スライド軸33、第4スライド軸34は、第3カム溝31a、第4カム溝31bに案内されて、最終的に
図3(c)の状態となる。第1取付部材10に対して、
図3(b)の状態から、第2取付部材30を開く操作を行うと、第3スライド軸33が第3カム溝31aに、第4スライド軸34が第4カム溝31bに案内され、第2取付部材30は、θ1方向に揺動するとともに、第1取付部材10に近づく方向(−X方向)に直線移動する。
【0043】
第3スライド軸33、第4スライド軸34は、第2取付部材30、連結部材35等によって、相対位置関係を維持しながら移動するので
図3(c)に示す状態のようになる。また、第4スライド軸34が第4カム溝31bに案内されて、−X方向に直線移動するとともに、第3スライド軸33が第3カム溝31aの円弧形状に沿って、
図3における円弧形状の中央部から上部に揺動運動することにより、同期板18は、同期板ガイド19に案内されて一方の方向(+Y方向)に移動する。すなわち、第3スライド軸33が揺動運動したとき、X方向の移動は第3スライド軸33が同期板18の第2長穴18b内を移動することで吸収される。従って、Y方向へ移動する力のみが同期板18に伝達され、同期板18は+Y方向に移動する。同期板18は、この+Y方向への移動を第1スライド軸13に伝達する。
【0044】
第1スライド軸13は、第1取付部材10、連結部材15等によって、第2スライド軸14との相対関係を維持しながら移動するため、同期板18が+Y方向に移動したとき、第1スライド軸13は、第1カム溝11aの円弧形状に沿って、円弧形状の中央部から上部に揺動運動する。この第1スライド軸13が揺動運動するとき、第1スライド軸13のX方向の移動は、第1スライド軸13が同期板18の第1長穴18a内を移動することで吸収するため、同期板18の移動を妨げることがない。そのため、第1取付部材10も第2取付部材30の移動に連動して開いていく。即ち、第1取付部材10が、θ2方向に揺動するとともに、第2取付部材30に対して、近づく方向(+X方向)に直線移動する。第1取付部材10(第1筐体101)、第2取付部材30(第2筐体102)が開き状態になると、板バネ部材20の凸部20bが、固定板21の第2係止穴21cに係止され、開き状態を保持する。言い換えると、第1筐体101がθ2方向に、第2筐体102がθ1方向に揺動するとともに、第1筐体101と第2筐体102とが互いに接近する方向に直線移動する。この揺動動作により、第1筐体101と第2筐体102との間に隙間がなくなる。すなわち、第1筐体101の表示部103と第2筐体102の表示部104とを極力接近させることができる。
【0045】
開き状態(
図3(c)の状態)から閉じ状態(
図3(a)の状態)に、第1筐体101と第2筐体102を閉じる操作を行う場合には、前述した操作手順、作動と逆の操作手順、作動を行うだけであり、説明を省略する。
【0046】
〔実施の形態2〕
図1、3、5〜7に基づいて、折り畳み式の電子機器の実施の形態2について説明を行う。
図5は、実施の形態2におけるヒンジ機構5の構造を分解して示す分解図、
図6は、実施の形態2の取付部材(筐体)の開閉動作と同期板の移動動作との関係を説明するための図であり、(a)は閉じ状態、(b)は中間角度状態、(c)は略180度開き状態を示した
図5における矢印B方向から見た側面図、
図7は、カム部材と第2リンク部材との関係を説明するための説明図である。なお、この実施の形態2では、実施の形態1と同一の部位には同一の符号を付与し、詳細な説明を省略している。
【0047】
第1筐体101と第2筐体102とは、ヒンジ機構5により、折り畳み中心線C−Cを中心として、相対的に、略180度(例えば180±5度)以内の角度範囲で開閉操作でき、折り畳み可能に構成されている。ヒンジ機構5は、第1筐体101の後面(表示部103の後面)に設けられる第1取付部材50と、第2筐体102の後面(表示部104の後面)に設けられる第2取付部材70とを有している。また、カムプレート52と固定板65とが、4本の支持軸57の大径部である第3軸部57cを挟んで一体に固定され、ヒンジ機構5のヒンジ本体を構成している。すなわち、カムプレート52と固定板65とは、所定の間隔を有するとともに、互いに平行になるように設けられている。カムプレート52と固定板65との間には、第1リンク部材59、接ぎ板部材58、78、第2リンク部材60、80、カム部材63等が設けられている。
【0048】
カムプレート52は、長方形をしたプレートであり、第1カム面51、第2カム面71が、折り畳み中心線C−C(
図3参照)に対称に形成されている。カムプレート52の4隅の所定の位置には、各々、貫通孔である穴部52bが形成されている。この穴部52bには、支持軸57の他方の側に形成された第3軸部57cより小径の第1軸部57aが差し込まれ、第1軸部57aの端部をかしめることで、カムプレート52から抜けないように固定されている。固定板65は長方形をしたプレートである。固定板65の4隅の所定の位置には、各々、貫通孔である穴部65bが形成されている。また、カムプレート52の穴部52bと、固定板65の穴部65bとは同一のピッチ寸法で明けられている。この穴部65bには、支持軸57の一方の側に形成された第2軸部57bが差し込まれ、第2軸部57bの端部をかしめることで、支持軸57が固定板65から抜け出さないように構成されている。
【0049】
カムプレート52の中央には、貫通孔である中心穴部52aが形成されている。固定板65の中央部には、貫通孔である中心穴部65aが形成されている。中心穴部52aには、中心軸56が他方の側から一方の側に向けて挿通されている。中心軸56は、頭部56b、第1軸部56a、第1軸部56aより小径の第2軸部(図示せず)が形成された軸体であって、第2軸部が固定板65の中心穴部65aに挿通されている。中心軸56の頭部56bには、頭部が2面削ぎ加工された2面幅部56cが形成されている。この2面幅部56cには、後述する同期板54の溝部54cが嵌合され、同期板54の直線移動の案内面となる。中心軸56の第2軸部は、固定板65の中心穴部65aに差し込まれた後、端面をかしめることで、固定板65から抜け出さないように構成されている。
【0050】
第1取付部材50は、第1筐体101が固定される本体板部50aと、後述する第1スライド軸53、第2スライド軸55が、各々、設けられる軸体取付部50bとから構成されている。第1取付部材50は、本体板部50aと軸体取付部50bとが、L字状をした連結部50fで連結され、両者が一体に形成された部材である。第1取付部材50の本体板部50aには、第1筐体101を固定するためのボルト106の軸部が挿入される貫通孔であるボルト穴50cが形成されている。軸体取付部50bには、第1スライド軸53の第1軸部53aが挿通され、貫通孔である第1穴部(図示せず)と、第2スライド軸55の第1軸部(図示せず)が挿通され、貫通孔である第2穴部50eが形成されている。
【0051】
第2取付部材70は、第2筐体102が固定される本体板部70aと、後述する第3スライド軸73と第4スライド軸75が設けられる軸体取付部70bとから構成されている。第2取付部材70は、本体板部70aと軸体取付部70bとが、L字状をした連結部70fで連結され、一体に形成された部材である。第2取付部材70の本体板部70aには、第2筐体102を固定するためのボルト106の軸部が挿入される貫通孔であるボルト穴70cが形成されている。軸体取付部70bには、第3スライド軸73の第1軸部73aが挿通される第1穴部70dと、第4スライド軸75の第1軸部75aが挿通され、貫通孔である第2穴部70eが形成されている。
【0052】
第1取付部材50の軸体取付部50b、及び、第2取付部材70の軸体取付部70bの固定板65側(一方の側)には、軸体取付部50b、軸体取付部70bに隣接してカムプレート52が設けられている。カムプレート52には、第1スライド軸53、第2スライド軸55が案内される第1カム面51と、第3スライド軸73、第4スライド軸75が案内される第2カム面71とが形成されている。第1カム面51と第2カム面71とは、折り畳み中心線C−C(
図3参照)に対して対称な形状に形成されている。第1カム面51には、第1スライド軸53が案内される円弧形状の第1カム溝51aと、第2スライド軸55が案内される直線状の第2カム溝51bが形成されている。第2カム面71には、第3スライド軸73が案内される円弧形状の第3カム溝71aと、第4スライド軸75が案内される直線状の第4カム溝71bが形成されている。
【0053】
第1スライド軸53と第2スライド軸55とは、中心線が互いに平行になるように配置されている。また、第2スライド軸55は、折り畳み中心線C−Cを基準に、第1スライド軸53より遠い位置に配置されている。第3スライド軸73と第4スライド軸75とは、中心線が互いに平行になるように配置されている。また、第4スライド軸75は、折り畳み中心線C−Cを基準に、第3スライド軸73より遠い位置に配置されている。第3スライド軸73は、折り畳み中心線C−Cを中心として、第1スライド軸53と対称位置に配置されている。第4スライド軸75は、折り畳み中心線C−Cを中心として、第2スライド軸55と対称位置に配置されている。第1カム面51及び第2カム面71は、第1筐体101と第2筐体103とが、折り畳まれた閉じ状態(
図3(a)、
図6(a)の状態)から略180度開いた開き状態(
図3(c)、
図6(c)の状態)に揺動するとき、折り畳み中心線C−C上の揺動中心点で、第1筐体101及び第2筐体102の角部が、折り畳み中心線C−Cに重ならない形状になっている。
【0054】
即ち、第1筐体101の角部と第2筐体102の角部とが、干渉しないようにするには、第1筐体101、第2筐体102が中間角度位置に揺動したとき、第2スライド軸55の中心と折り畳み中心線C−Cとの距離、及び、第4スライド軸75と折り畳み中心線C−Cとの距離を最も大きくする必要がある。カムプレート52に形成された第1カム面51と第2カム面71の溝形状は、この条件を満たすような形状に形成されているとよい。言い換えると、第1カム面51及び第2カム面71は、第1筐体101及び第2筐体102の揺動の中間角度状態(
図3(b)、
図6(b)の状態)の位置において、第2スライド軸55、及び第4スライド軸75が、折り畳み中心線C−Cから最も遠くなる距離に揺動したとき、折り畳み中心線C−C上の揺動中心点で、第1筐体101及び第2筐体102の角部が、折り畳み中心線C−Cに重ならない形状になっている。
【0055】
カムプレート52の固定板65側には、接ぎ板部材58、78が一対の構成で設けられている。一方の接ぎ板部材58は、略楕円形状をしたプレートであって、長軸方向に、段付穴部58aと穴部58bが所定の間隔を有するように形成されている。接ぎ板部材58の段付穴部58aと穴部58bは、第1取付部材50の第1穴部と第2穴部50eと同一のピッチ寸法になっている。他方の接ぎ板部材78は、略楕円形状をしたプレートであって、長軸方向に、段付穴部78aと穴部78bが所定の間隔を有するように形成されている。接ぎ板部材78の段付穴部78aと穴部78bは、第2取付部材70の第1穴部70dと第2穴部70eと同一のピッチ寸法になっている。
【0056】
接ぎ板部材58、78の間には、第1リンク部材59が設けられている。第1リンク部材59は、略楕円形状をしたプレートであって、中央に中心穴部59aが、長軸方向の両端に穴部59b、59bが形成されている。接ぎ板部材58、78、第1リンク部材59の固定板65側には、第2リンク部材60、80が一対の構成で設けられている。一方の第2リンク部材60は、略L字状をしたプレートであって、第1穴部60aと第2穴部60bとが形成されている。他方の第2リンク部材80は、略L字状をしたプレートであって、第1穴部80aと第2穴部80bとが形成されている。
【0057】
第1取付部材50の軸体取付部50b、及び、第2取付部材70の軸体取付部70bの他方の側には、同期板54が設けられている。同期板54は、中央が他方の側に突出した段部が形成された長円状の部材である。中央の部位には、中心軸56の2面幅部(案内面)56cが嵌合される溝部(案内溝)54cが形成されている。中心軸56の2面幅部56cと同期板54の溝部54cとが、同期板54の案内を行う案内部を構成する。また、端部側の面には、各々、第1長穴54a、第2長穴54bが形成されている。第1長穴54aは、第1スライド部材53の第1軸部53aが挿通するための穴である。第2長穴54bは、第3スライド部材73の第1軸部73aが挿通するための穴である(
図6参照)。第1長穴54a、第2長穴54bは、第1カム面51の第2カム溝51b、第2カム面71の第2カム溝71bと平行な方向、または、ほぼ平行な方向に、長軸が延びるように形成されている。言い換えると、第1長穴54a、第2長穴54bと、第2カム溝51b、第2カム溝71bとは、平行またはほぼ平行に設けられている。この実施の形態2では、同期板54、中心軸56、接ぎ板部材58、78、第1リンク部材59、第2リンク部材60、80、連結軸61a、61b等が折り畳み動作連動機構を構成する。
【0058】
第1スライド軸53は、頭部53c、第1軸部53a、第1軸部より小径の第2軸部53bが形成されている。第2スライド軸55は、頭部、第1軸部、第1軸部より小径の第2軸部、第2軸部より小径の第3軸部が形成された軸体であって、その形状は後述する第4スライド軸75と同一のものである。第3スライド軸73は、頭部73c、第1軸部73a、第1軸部より小径の第2軸部73bが形成されている。第4スライド軸75は、頭部75d、第1軸部75a、第1軸部75aより小径の第2軸部75b、第2軸部75bより小径の第3軸部75cが形成されている。
【0059】
第1スライド軸53は、第1軸部53aが、同期板54の第1長穴54a、軸体取付部50bの第1穴部、カムプレート52の第1カム面51を挿通し、一方の接ぎ板部材58の段穴部58aに第2軸部53bが差し込まれた状態で第2軸部53bの端部をかしめられている。このようにすることで、第1スライド軸53から接ぎ板部材58が抜け出さないように構成されている。第2スライド軸55は、第1軸部が、軸体取付部50bの第2穴部50e、カムプレート52の第1カム面51、一方の接ぎ板部材58の穴部58bに、第2軸部が一方の第2リンク部材60の第1穴部60aに挿通され、第3軸部がワッシャ62に挿通されている。ワッシャ62に差し込まれた第3軸部の端部をかしめることで、第2スライド軸55から一方の第2リンク部材60、ワッシャ62等が抜け出さないように構成されている。
【0060】
第3スライド軸73は、第1軸部73aが、同期板54の第2長穴54b、軸体取付部70bの第1穴部70d、カムプレート52の第2カム面71を挿通し、他方の接ぎ板部材78の段穴部78aに第2軸部73bが差し込まれた状態で第2軸部73bの端部をかしめられている。このようにすることで、第3スライド軸73から他方の接ぎ板部材78等が抜け出さないように構成されている。第4スライド軸75は、第1軸部75aが、軸体取付部50bの第2穴部70e、カムプレート52の第2カム面71、他方の接ぎ板部材78の穴部78bに、第2軸部75bが他方の第2リンク部材80の第1穴部80aに挿通され、第3軸部75cがワッシャ62に挿通されている。ワッシャ62に差し込まれた第3軸部75cの端部をかしめることで、第4スライド軸75から他方の第2リンク部材80、ワッシャ62等が抜け出さないように構成されている。
【0061】
一方の連結軸61aは、軸部が第1リンク部材59の一方の穴部59b、一方の第2リンク部材60の第2穴部60bに挿通され、一方の連結軸61aは軸部の端部をかしめることにより、一方の連結軸61a、第1リンク部材59、一方の第2リンク部材60が一体になるように構成されている。他方の連結軸61bは、軸部が第1リンク部材59の他方の穴部59b、他方の第2リンク部材80の第2穴部80bに挿通され、他方の連結軸61bの軸部の端部をかしめることにより、他方の連結軸61b、第1リンク部材59、第2リンク部材80が一体になるように構成されている。
【0062】
カム部材63は、4本の取付脚部63b、平面部63d、取付脚部63bと平面部63dとの間に形成される第1斜面部63e、第2斜面部63fから形成されている。第1斜面部63eの下面63cは、一方の第2リンク部材60の肩部(第1当接面部)60c、60cと当接している。第2斜面部63fの下面63cは、他方の第2リンク部材80の肩部80c、80cと当接している。4本の支持軸57の第3軸部57cより小径の第2軸部57b側には、取付脚部63bと固定板65との間に、各々、連動機構荷重付与部材であるバネ部材64が設けられている。バネ部材64の一端には、係合部64aが形成されている。係合部64aは、取付脚部63bに形成された被係合部に係合して、バネ部材64が回転しないように規制している。バネ部材64は、カム部材63を、常時、他方の側(カムプレート側)に付勢している。例えば、一方の第2リンク部材60が、第2スライド軸55を中心に、肩部60cが矢印D方向に揺動したとき、カム部材63は、第1斜面部63eが押圧され、バネ部材64の付勢力に抗して、矢印Z方向に移動する(
図7参照)。言い換えると、カム部材63は、第2リンク部材60の肩部60c、第2リンク部材80の肩部80cの少なくともどちらか一方を常時押圧している。
【0063】
〔実施の形態2の電子機器のヒンジ機構の作動〕
図3、5、6に従って、このヒンジ機構5の操作手順、作動について説明を行う。
第1取付部材50側の第1筐体101、第2取付部材70側の第2筐体102のどちらか一方、または、両方を開閉操作してもよいが、この実施の形態2では、第1筐体101(第1取付部材50)に対して第2筐体102(第2取付部材70)を開く操作を行う手順例で、以下説明を行う。第1取付部材50、第2取付部材70が折り畳まれた閉じ状態(
図3(a)、
図6(a)の状態)から、第2取付部材70を開く操作を行うと、第3スライド軸73が第3カム溝71aに、第4スライド軸75が第4カム溝71bに案内され、第2取付部材70は、
図3(a)に示すようにθ1方向(
図3における時計回り方向)に揺動するとともに、第1取付部材50から離れる方向(
図3における+X方向)に直線移動する。第3スライド軸73、第4スライド軸75は、軸体取付部70b、他方の接ぎ板部材78によって、相対位置関係を維持しながら移動する。
【0064】
第4スライド軸75が第4カム溝71bに案内されて+X方向に直線移動するとともに、第3スライド軸73が第3カム溝71aの円弧形状に沿って、
図3における円弧形状の下部から中央部に揺動運動する。このことにより、他方の接ぎ板部材78、他方の第2リンク部材80が揺動する。他方の第2リンク部材80の揺動が、他方の連結部材61bを介して第1リンク部材59に伝達され、第1リンク部材59が中心軸56を支点に揺動する。この第1リンク部材59の揺動は、一方の連結軸61aを介して、一方の第2リンク部材60に伝達される。一方の第2リンク部材60の揺動は、一方の接ぎ板部材58を介して第1スライド軸53、第2スライド軸55側に伝達され、第1取付部材50もθ2方向(
図3における反時計回り方向)に揺動する。このとき、第1スライド軸53、第2スライド軸55は、軸体取付部50b、一方の接ぎ板部材58によって、相対位置関係を維持しながら移動する。言い換えると、第1筐体101がθ2方向に、第2筐体102がθ1方向に揺動するとともに、第1筐体101と第2筐体102とが互いに離れる方向に直線移動する。また、同期板54においては、第3スライド軸73、第1スライド軸53のX方向の移動は、第2長穴54b、第1長穴54aで吸収され、同期板54が、中心軸56の2面幅部56cに案内され、Y方向にのみ直線移動する。従って、同期板54は、第1筐体101と第2筐体102が閉じた閉じ状態(
図6(a)の状態)に位置から、中間角度状態(
図6(b)の状態)の位置に移動し、第1筐体101と第2筐体102が同期する。第1筐体101、第2筐体102、同期板54等は、
図3(b)、
図6(b)に示した状態になる。
【0065】
中間角度状態(
図3(b)、
図6(b)の状態)から開き状態(
図3(c)、
図6(c)の状態)になるように、第1取付部材50に対して第2取付部材70を開く操作を行うと、第3スライド軸73が第3カム溝71aに案内され、第4スライド軸75が第4カム溝に案内される。即ち、第2取付部材70は、θ1方向に揺動するとともに、第1取付部材50に近づく方向(−X方向)に直線移動する。第3スライド軸73、第4スライド軸75は、軸体取付部70b、他方の接ぎ板部材78によって、相対位置関係を維持しながら移動する。
【0066】
このとき、第4スライド軸75は第4カム溝71bに案内されて−X方向に直線移動し、第3スライド軸73は第3カム溝71aの円弧形状に沿って、
図3における円弧形状の中央部から上部に揺動運動する。このことにより、他方の接ぎ板部材78、他方の第2リンク部材80が揺動する。他方の第2リンク部材80の揺動が、他方の連結部材61bを介して第1リンク部材59に伝達され、第1リンク部材59が中心軸56を支点に揺動する。この第1リンク部材59の揺動は、一方の連結軸61aを介して、一方の第2リンク部材60に伝達される。一方の第2リンク部材60の揺動は、一方の接ぎ板部材58を介して第1スライド軸53、第2スライド軸55側に伝達され、第1取付部材50もθ2方向に揺動する。このとき、第1スライド軸53、第2スライド軸55は、軸体取付部50b、一方の接ぎ板部材58によって、相対位置関係を維持しながら移動する。
【0067】
言い換えると、第1筐体101がθ2方向に、第2筐体102がθ1方向に揺動するとともに、第1筐体101と第2筐体102とが互いに接近する方向に直線移動する。この揺動動作により、第1筐体101と第2筐体102との間に隙間がなくなる。すなわち、第1筐体101の表示部103と第2筐体102の表示部104とを極力接近させることができる。このとき、同期板54は、第3スライド軸73、第1スライド軸53のX方向の移動は、第2長穴54b、第1長穴54aで吸収され、同期板54が、中心軸56の2面幅部56cに案内され、Y方向にのみ直線移動する。従って、同期板54は、中間角度状態(
図6(b)の状態)の位置から、第1筐体101、第2筐体102が略180度開いた開き状態(
図6(c)の状態)の位置に移動し、第1筐体101と第2筐体102が同期する。第1筐体101、第2筐体102、同期板54等は、
図3(c)、
図6(c)に示した状態になる。このことにより、第1取付部材50と第2取付部材70とは、同期関係を維持しながら連動動作する。そのため、第1筐体101、第1取付部材50も、第2筐体102、第2取付部材70の操作に同期、連動して開いていく。
【0068】
また、カム部材63の第1斜面部63e、第2斜面部63fは、一方の第2リンク部材60の肩部60c、他方の第2リンク部材80の肩部80cの少なくともどちらか一方を、バネ部材64の付勢力により、常時、押圧する構成になっている。例えば、一方の第2リンク部材60が揺動し、肩部60cがカム部材の第1斜面部63eの下面63cを押圧すると、カム部材63をバネ部材64の付勢力に抗して移動させる(
図7参照)。また、図示はしていないが、他方の第2リンク部材80が揺動し、肩部80cがカム部材63の第2斜面部63fの下面63cを押圧すると、カム部材63をバネ部材64の付勢力に抗して移動させる。このように、カム部材63が、一方の第2リンク部材60、及び/または、他方の第2リンク部材80を、常時、押圧する構成になっているため、第1筐体101、第2筐体102の開閉操作時に、がたついて開閉するようなことの発生を、抑制、または、防止することができる。使用者が、電子機器の第1筐体101、第2筐体102を開閉操作したときの感触の向上が図れ、開閉操作をスムースに行うことができる。
【0069】
開き状態(
図3(c)、
図6(c)の状態)から閉じ状態(
図3(a)、
図6(a)の状態)に、第1筐体101と第2筐体102とを閉じる場合には、前述した操作手順、作動と逆の操作手順、作動を行うだけであり、説明を省略する。
【0070】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されることはない。本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内で変更可能なことはいうまでもない。