特許第5961403号(P5961403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5961403-電子制御スロットル装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961403
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】電子制御スロットル装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 9/02 20060101AFI20160719BHJP
   F02D 41/22 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   F02D9/02 341A
   F02D9/02 351J
   F02D41/22 310M
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-41820(P2012-41820)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-177848(P2013-177848A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100153349
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 茂
(72)【発明者】
【氏名】神保 宏
(72)【発明者】
【氏名】杉森 滋彦
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−229943(JP,A)
【文献】 特開平03−222848(JP,A)
【文献】 特開昭63−147936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/02
F02D 41/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットルバルブを駆動するアクチュエータと、
前記スロットルバルブを全閉方向に付勢するリターンスプリングと、
前記スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサと、
アクセル操作部材の操作による前記スロットルバルブの指示開度をアクセル指示開度として検出するアクセル開度センサと、
前記アクセル開度センサによって検出されたアクセル指示開度に基づいて前記スロットルバルブの目標開度を算出し、前記スロットル開度センサによって検出される前記スロットルバルブの開度が算出された目標開度に一致するように前記アクチュエータをフィードバック制御する制御装置と、
を備える電子制御スロットル装置において、
前記制御装置は、前記アクチュエータを駆動することによって前記スロットルバルブを開方向に制御し、第1の所定時間経過後に前記スロットルバルブの開度が第1の診断開度を含む第1の開度範囲内に収束しているか否かを判別することによって、前記リターンスプリングの故障を診断する故障診断処理を実行する診断部を備え、
前記第1の所定時間は、前記診断部により、前記故障診断処理において、前記スロットルバルブの開度が前記第1の開度範囲内に収束しているか否かの判別に先行して、前記スロットルバルブの開度が前記第1の開度範囲内に収束するまでの時間に応じた前記電子制御スロットル装置の状態に基づいて設定されることを特徴とする電子制御スロットル装置。
【請求項2】
前記スロットルバルブの開度が前記第1の開度範囲内に収束するまでの前記時間に応じた前記電子制御スロットル装置の前記状態には、前記アクチュエータの駆動電圧が含まれ、前記診断部は、前記駆動電圧に基づいて前記第1の所定時間を算出して設定することを特徴とする請求項1に記載の電子制御スロットル装置。
【請求項3】
前記診断部は、更に、前記アクチュエータの駆動を遮断することによって前記リターンスプリングの付勢力により前記スロットルバルブを全閉方向に駆動し、第2の所定時間経過後に前記スロットルバルブの開度が第2の診断開度を含む第2の開度範囲内に収束しているか否かを判別することによって、前記リターンスプリングの故障を診断し、
前記スロットルバルブの開度が前記第1の開度範囲内に収束するまでの前記時間に応じた前記電子制御スロットル装置の前記状態又は前記スロットルバルブの開度が前記第2の開度範囲内に収束するまでの時間に応じた前記電子制御スロットル装置の状態には、前記電子制御スロットル装置の雰囲気温度が含まれ、前記診断部は、前記雰囲気温度に基づいて前記第1の所定時間又は前記第2の所定時間を算出して設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子制御スロットル装置。
【請求項4】
前記診断部は、エンジンの温度を検出するエンジン温度センサを利用して前記電子制御スロットル装置の前記雰囲気温度を検出することを特徴とする請求項3に記載の電子制御スロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御スロットル装置に関し、特に、リターンスプリングの付勢力に対しアクチュエータの駆動力が抗するようにアクチュエータを駆動制御することによって、スロットルバルブの開度を目標開度にフィードバック制御する電子制御スロットル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スロットルバルブを開閉駆動するアクチュエータと、スロットルバルブを全閉方向に付勢するリターンスプリングとを有し、リターンスプリングの付勢力に対しアクチュエータの駆動力が抗するようにアクチュエータを駆動制御することによって、スロットルバルブの開度を目標開度にフィードバック制御する電子制御スロットル装置が提案されてきた。
【0003】
このような電子制御スロットル装置の異常を診断する構成としては、特許文献1及び特許文献2に開示されたものが挙げられる。
【0004】
特許文献1は、エンジンの絞り弁制御装置及び制御方法に関し、特に、エンジンが停止している状態でスロットルバルブを診断開度まで開いた後、アクチュエータへの通電を遮断し、通電遮断時から所定時間経過した後のスロットルバルブの戻り状態を検出することによって、リターンスプリングの故障を診断する構成を提案している。
【0005】
ところが、特許文献1に記載の異常診断方法によれば、リターンスプリングの付勢力が十分でない場合には、リターンスプリングが正常であってもスロットルバルブが本来の復帰動作をせず、結果として異常診断の精度が低下することが考えられる。
【0006】
このような背景から、特許文献2は、内燃機関のスロットル制御装置に関し、特に、スロットルバルブを開方向に駆動制御し、所定時間経過後にスロットルバルブの開度が所定の診断開度に収束するか否かを判定することによって、リターンスプリングの故障を診断する構成を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−190230号公報
【特許文献2】特開2011−7115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、本発明者の検討によれば、特許文献1の構成においては、リターンスプリングの付勢力が十分でない場合には、リターンスプリングが正常であってもスロットルバルブが本来の復帰動作をせず、結果として異常診断の精度が低下することが考えられるが、特許文献2の構成においては、スロットルバルブを開方向に一旦駆動制御するものであるため、特許文献1の構成で想定されるような異常診断の精度が低下するという技術的課題は克服しているともいえる。
【0009】
しかしながら、特許文献1や特許文献2記載の構成では、診断を行うまでの所定時間は、予め定められた固定値、具体的には、スロットルバルブの開度がアクチュエータの駆動力を遮断した際の開度(初期開度)又は所定の診断開度に収束するのに十分な時間に設定
されている。このため、特許文献1や特許文献2記載の異常診断方法によれば、リターンスプリングの故障診断に必要以上の時間を費やしてしまうことが考えられる。また、特に異常診断をエンジンの始動前に行う場合には、エンジンの始動までに多くの時間を費やすことになるために、エンジンの始動性が低下することが考えられる。
【0010】
更に、本発明者の検討によれば、かかる状況を克服するために、診断を行うまでの所定時間を単純に短くする方法が考えられる。しかしながら、診断を行うまでの所定時間を短くした場合には、スロットルバルブが初期開度や所定の診断開度に向かって動作中であるのにもかかわらず、スロットルバルブの開度が初期開度や所定の診断開度に収束していないと誤判定してしまう可能性が考えられる。
【0011】
本発明は、以上の検討を経てなされたものであり、エンジンの始動性を向上しながら、リターンスプリングの故障の誤診断を抑制可能な電子制御スロットル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の目的を達成するべく、本発明は、第1の局面においては、スロットルバルブを駆動するアクチュエータと、前記スロットルバルブを全閉方向に付勢するリターンスプリングと、前記スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサと、アクセル操作部材の操作による前記スロットルバルブの指示開度をアクセル指示開度として検出するアクセル開度センサと、前記アクセル開度センサによって検出されたアクセル指示開度に基づいてスロットルバルブの目標開度を算出し、前記スロットル開度センサによって検出される前記スロットルバルブの開度が算出された目標開度に一致するように前記アクチュエータをフィードバック制御する制御装置と、を備える電子制御スロットル装置において、
前記制御装置は、前記アクチュエータを駆動することによって前記スロットルバルブを開方向に制御し、第1の所定時間経過後に前記スロットルバルブの開度が第1の診断開度を含む第1の開度範囲内に収束しているか否かを判別することによって、前記リターンスプリングの故障を診断する故障診断処理を実行する診断部を備え、前記第1の所定時間は、前記診断部により、前記故障診断処理において、前記スロットルバルブの開度が前記第1の開度範囲内に収束しているか否かの判別に先行して、前記スロットルバルブの開度が前記第1の開度範囲内に収束するまでの時間に応じた前記電子制御スロットル装置の状態に基づいて設定されることを特徴とする電子制御スロットル装置である。
【0013】
また、本発明は、かかる第1の局面に加えて、前記スロットルバルブの開度が前記第1の開度範囲内に収束するまでの前記時間に応じた前記電子制御スロットル装置の前記状態には、前記アクチュエータの駆動電圧が含まれ、前記診断部は、前記駆動電圧に基づいて前記第1の所定時間を算出して設定することを第2の局面とする。
【0014】
また、本発明は、かかる第1又は第2の局面に加えて、前記診断部は、更に、前記アクチュエータの駆動を遮断することによって前記リターンスプリングの付勢力により前記スロットルバルブを全閉方向に駆動し、第2の所定時間経過後に前記スロットルバルブの開度が第2の診断開度を含む第2の開度範囲内に収束しているか否かを判別することによって、前記リターンスプリングの故障を診断し、前記スロットルバルブの開度が前記第1の開度範囲内に収束するまでの前記時間に応じた前記電子制御スロットル装置の前記状態又は前記スロットルバルブの開度が前記第2の開度範囲内に収束するまでの時間に応じた前記電子制御スロットル装置の状態には、前記電子制御スロットル装置の雰囲気温度が含まれ、前記診断部は、前記雰囲気温度に基づいて前記第1の所定時間又は前記第2の所定時間を算出して設定することを第3の局面とする。
【0015】
また、本発明は、かかる第3の特徴に加えて、エンジンの温度を検出するエンジン温度センサを利用して前記電子制御スロットル装置の前記雰囲気温度を検出することを第4の局面とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の局面における電子制御スロットル装置においては、制御装置が、アクチュエータを駆動することによってスロットルバルブを開方向に制御し、第1の所定時間経過後にスロットルバルブの開度が第1の診断開度を含む第1の開度範囲内に収束しているか否かを判別することによって、リターンスプリングの故障を診断する故障診断処理を実行する診断部を備え、第1の所定時間が、診断部により、故障診断処理において、スロットルバルブの開度が第1の開度範囲内に収束しているか否かの判別に先行して、スロットルバルブの開度が第1の開度範囲内に収束するまでの時間に応じた電子制御スロットル装置の状態に基づいて設定されるものであるため、電子制御スロットル装置の状態に応じてスロットルバルブの開度が第1の診断開度まで収束するまでの時間のばらつきに見合った所定時間を適宜設定でき、エンジンの始動性を向上しながら、リターンスプリングの故障の誤診断を抑制することができる。
【0017】
本発明の第2の局面における電子制御スロットル装置においては、スロットルバルブの開度が第1の開度範囲内に収束するまでの時間に応じた電子制御スロットル装置の状態には、アクチュエータの駆動電圧が含まれ、診断部が、駆動電圧に基づいて第1の所定時間を算出して設定するものであるため、アクチュエータの駆動力の変動に伴う、スロットルバルブの開度が第1の診断開度まで収束するまでの時間のばらつきを考慮して、第1の所定時間を設定することができ、エンジンの始動性を向上しながら、リターンスプリングの故障の誤診断を抑制することができる。
【0018】
本発明の第3の局面における電子制御スロットル装置においては、診断部が、更に、アクチュエータの駆動を遮断することによってリターンスプリングの付勢力によりスロットルバルブを全閉方向に駆動し、第2の所定時間経過後にスロットルバルブの開度が第2の診断開度を含む第2の開度範囲内に収束しているか否かを判別することによって、リターンスプリングの故障を診断し、スロットルバルブの開度が第1の開度範囲内に収束するまでの時間に応じた電子制御スロットル装置の状態又はスロットルバルブの開度が第2の開度範囲内に収束するまでの時間に応じた電子制御スロットル装置の状態には、電子制御スロットル装置の雰囲気温度が含まれ、診断部が、電子制御スロットル装置の雰囲気温度に基づいて第1の所定時間又は第2の所定時間を算出して設定するものであるため、電子制御スロットル装置の雰囲気温度の変動に伴う、スロットルバルブの開度が第1又は第2の診断開度まで収束するまでの時間のばらつきを考慮して、第1又は第2の所定時間を設定することができ、エンジンの始動性を向上しながら、リターンスプリングの故障の誤診断を抑制することができる。
【0019】
本発明の第4の局面における電子制御スロットル装置においては、診断部が、エンジンの温度を検出するエンジン温度センサを利用して電子制御スロットル装置の雰囲気温度を検出するものであるため、ホットリスタート時等における電子制御スロットル装置内部のスロットルバルブ機構の温度をより正確に検出することができ、電子制御スロットル装置の雰囲気温度の変動に伴う、スロットルバルブの開度が第1又は第2の診断開度まで収束するまでの時間のばらつきを考慮して、第1又は第2の所定時間を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態における電子制御スロットル装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態における電子制御スロットル装置の第1診断処理の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、本実施形態における電子制御スロットル装置の第1診断処理及び第2診断処理の流れを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における電子制御スロットル装置につき、詳細に説明する。
【0022】
〔電子制御スロットル装置の構成〕
まず、図1を参照して、本実施形態における電子制御スロットル装置の構成につき、詳細に説明する。
【0023】
図1は、本実施形態における電子制御スロットル装置の構成を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態における電子制御スロットル装置1は、図示を省略する車両、典型的には自動二輪車に搭載され、スロットルバルブ機構2、スロットル開度センサ3、アクセル開度センサ4、吸気温センサ5、水温センサ6、油温センサ7、及びECU(Electronic Control Unit)8を備えている。
【0025】
スロットルバルブ機構2は、車両の図示を省略するエンジンの吸気系に配設されて、エンジン内部への空気の流入量を調整するスロットルバルブ21を駆動するものである。スロットルバルブ機構2は、ギア22を介してスロットルバルブ21を開閉駆動するモータ23と、スロットルバルブ21を全閉方向に付勢するリターンスプリング24と、を備えている。ギア22及びモータ23は、スロットルバルブ21を駆動するアクチュエータとして機能する。
【0026】
スロットル開度センサ3は、スロットルバルブ21の開度を検出し、検出された開度を示す電気信号をECU8に出力するものである。アクセル開度センサ4は、図示を省略するアクセルグリップの操作によるスロットルバルブ21の指示開度をアクセル指示開度として検出し、検出されたアクセル指示開度を示す電気信号をECU8に出力するものである。アクセルグリップは、アクセル操作部材であり、その態様はグリップに限定されるものではなく、例えば車両が四輪自動車である場合には、アクセルグリップは、アクセルペダルの態様となる。
【0027】
吸気温センサ5は、エンジンの吸気温度を検出し、検出された吸気温度を示す電気信号をECU8に出力するものである。水温センサ6は、エンジンの冷却水の温度を検出し、検出された冷却水の温度を示す電気信号をECU8に出力するものである。油温センサ7は、エンジンの作動油の温度を検出し、検出された作動油の温度を示す電気信号をECU8に出力するものである。
【0028】
ECU8は、車両に搭載されたバッテリBから供給される電力を利用して動作し、車両の各種構成要素を制御自在な制御装置であり、図示を省略するメモリー等を備える。また、ECU8は、アクチュエータ駆動回路82と、CPU(Central Processing Unit)83と、を備えている。アクチュエータ駆動回路82はモータ23を駆動するものである。アクチュエータ駆動回路82の動作は、CPU83がバッテリBとアクチュエータ駆動回路82とを接続するリレー81のオン/オフを制御することによって制御される。CPU83は、リレー81とアクチュエータ駆動回路82との間の電圧値(バッテリ電圧)をモータ23の駆動電圧として検出することができる。
【0029】
CPU83は、所定の制御プログラムに従って動作する。詳しくは、CPU83は、アクセル開度センサ4によって検出されたアクセル指示開度に基づいてスロットルバルブ21の目標開度を算出し、スロットル開度センサ3によって検出されるスロットルバルブ21の開度が算出された目標開度に一致するようにアクチュエータ駆動回路82を介してモータ23をフィードバック制御する。CPU83は、診断部83aを機能ブロックとして有する。
【0030】
〔異常診断処理〕
以上のような構成を有する電子制御スロットル装置1では、CPU83が以下に示す異常診断処理を実行することによってリターンスプリング24の故障を診断する。
【0031】
つまり、かかる異常診断処理において、CPU83は、スロットルバルブ21を開方向に制御し、第1の所定時間経過後にスロットルバルブ21の開度が第1の診断開度に収束するか否かを判別することによってリターンスプリング24の故障を診断する第1診断処理、又は、リターンスプリング24の付勢力によりスロットルバルブ21を全閉方向に駆
動し、第2の所定時間経過後にスロットルバルブ21の開度が第2の診断開度に収束するか否かを判別することによってリターンスプリング24の故障を診断する第2診断処理を実行することにより、リターンスプリング24の故障を診断する。この異常診断処理は、アクセル指示開度に基づいたスロットルバルブ21のフィードバック制御処理の開始前に実行される。これにより、リターンスプリング24の確からしさを確認した上でスロットルバルブ21のフィードバック制御処理を開始することができる。
【0032】
以下、図2及び図3を参照して、この異常診断処理を実行する際のCPU83の動作について説明する。なお、図2では、便宜上、第1診断処理を実行する際のCPU83の動作を中心に説明する。
【0033】
図2は、本実施形態における電子制御スロットル装置の第1診断処理の流れを示すフローチャートである。図3は、本実施形態における電子制御スロットル装置の第1診断処理及び第2診断処理の流れを示すタイミングチャートである。図2に示すフローチャートは、所定の制御周期毎に開始となり、第1診断処理はステップS1の処理に進む。
【0034】
ステップS1の処理では、CPU83の診断部83aが、スロットルバルブ21の目標開度(図3に示す信号L1)を第1の診断開度に設定し、スロットル開度センサ3によって検出されるスロットルバルブ21の開度(図3に示す信号L2)が第1の診断開度に一致するようにアクチュエータ駆動回路82を介してモータ23を駆動制御する。これにより、ステップS1の処理は完了し、第1診断処理はステップS2の処理に進む。
【0035】
ステップS2の処理では、CPU83の診断部83aが、第1診断処理を実施中であることを示す第1フラグFLG1の値が1であるか否かを判別することによって、第1診断処理を実施中であるか否かを判別する。判別の結果、第1フラグFLG1の値が0である場合には、CPU83の診断部83aは、第1診断処理を実施中でないと判断し、第1診断処理をステップS3の処理に進める。一方、第1フラグFLG1の値が1である場合には、CPU83の診断部83aは、第1診断処理を実施中であると判断し、第1診断処理をステップS5の処理に進める。
【0036】
ステップS3の処理では、CPU83の診断部83aが、第1フラグFLG1の値を1に設定することによって第1診断処理を実施中であるとの設定を行う。これにより、ステップS3の処理は完了し、第1診断処理はステップS4の処理に進む。
【0037】
ステップS4の処理では、CPU83の診断部83aが、モータ23の駆動電圧を検出し、検出されたモータ23の駆動電圧に基づいて第1の所定時間の長さを決定する。具体的には、モータ23の駆動電圧が低下すると、スロットルバルブ21の開度が第1の診断開度に収束するまでの時間が長くなる。そこで、CPU83の診断部83aは、モータ23の駆動電圧の減少に応じて第1の所定時間が増加するように設定されたテーブルからモータ23の駆動電圧に対応する第1の所定時間のデータを読み出す。そして、CPU83の診断部83aは、タイマーのカウント値を決定した第1の所定時間に設定する。なお、CPU83の診断部83aは、モータ23の駆動電圧と吸気温センサ5、水温センサ6、及び油温センサ7によって検出された温度とに基づいて、又は吸気温センサ5、水温センサ6、及び油温センサ7によって検出された温度のみに基づいて、第1の所定時間の長さを決定してもよい。具体的には、電子制御スロットル装置1の雰囲気温度が低下すると、例えばスロットルバルブ機構2に塗布されているグリース等の油脂類の粘度が増加し、スロットルバルブ21の開度が第1の診断開度に収束するまでの時間が長くなる。そこで、CPU83の診断部83aは、電子制御スロットル装置1の雰囲気温度の減少に応じて第1の所定時間が増加するように設定されたテーブルからモータ23の駆動電圧に対応する第1の所定時間のデータを読み出す。これにより、ステップS4の処理は完了し、第1診
断処理はステップS5の処理に進む。
【0038】
ステップS5の処理では、CPU83の診断部83aが、タイマーのカウント値が0であるか否かを判別することによって、スロットルバルブ21の開度を第1の診断開度に一致するように制御してから(図3に示す時間t=t1)第1の所定時間が経過したか否かを判別する。判別の結果、タイマーのカウント値が0でないと判別した場合には、CPU83の診断部83aは、第1の所定時間が経過していないと判断し、ステップS6の処理としてタイマーのカウント値を1減算した後、一連の第1診断処理を終了する。一方、タイマーのカウント値が0であると判別した場合には、CPU83の診断部83aは、第1の所定時間が経過したと判断し(図3に示す時間t=t2)、第1診断処理をステップS7の処理に進める。
【0039】
ステップS7の処理では、CPU83の診断部83aが、スロットル開度センサ3によって検出されたスロットルバルブ21の開度が第1の診断開度の前後±αの開度を含む所定範囲ΔW1内(図3参照)に収束しているか否かを判別する。判別の結果、スロットルバルブ21の開度が所定範囲ΔW1内に収束していない場合には、CPU83の診断部83aは、第1診断処理をステップS8の処理に進める。一方、スロットルバルブ21の開度が所定範囲ΔW1内に収束している場合には、CPU83の診断部83aは、第1診断処理をステップS9の処理に進める。
【0040】
ステップS8の処理では、CPU83の診断部83aが、スプリングバルブ24が故障していると判断し、その旨の情報を報知する。これにより、ステップS8の処理は完了し、一連の第1診断処理は終了する。
【0041】
ステップS9の処理では、CPU83の診断部83aが、スプリングバルブ24は故障していないと判断する。これにより、ステップS9の処理は完了し、一連の第1診断処理は終了する。
【0042】
なお、上述の説明は第1診断処理に関するものであるが、第1の診断開度を第2の診断開度、第1診断処理を実施中であることを示す第1フラグFLG1を第2診断処理を実施中であることを示す第2フラグFLG2、第1の所定時間を第2の所定時間、第1の診断開度を含む所定範囲ΔW1を第2の診断開度を含む所定範囲ΔW2と読み替えることにより、第2診断処理も第1診断処理と同様に行うことができる。但し、第2の診断処理においては、CPU83は、吸気温センサ5、水温センサ6、及び油温センサ7によって検出された温度のみに基づいて第2の所定時間の長さを決定する。また、第2の診断処理を実施する際には、CPU83は、デューティを0にした状態でリレー81をオンするとよい。これは、リターンスプリング24の付勢力みでスロットルバルブ21を全閉位置に収束させると、スロットルバルブ機構2のギア22に対するストレスが大きいためである。デューティ比を0にした状態でリレー81をオンすることにより、モータ23がリターンスプリング24の付勢力に対する抵抗になるため、スロットルバルブ機構2のギア22に対するストレスを軽減できる。
【0043】
以上の本発明の実施形態における構成においては、CPU83が、アクチュエータ駆動回路82を駆動することによってスロットルバルブ21を開方向に制御し、第1の所定時間経過後にスロットルバルブ21の開度が第1の診断開度に収束しているか否かを判別する、又は、リターンスプリング24の付勢力によってスロットルバルブ21を全閉方向に駆動し、第2の所定時間経過後にスロットルバルブ21の開度が第2の診断開度に収束しているか否かを判別することによって、リターンスプリング21の故障を診断する診断部83aを備え、第1の所定時間が、診断部83aにより、故障診断処理において、スロットルバルブの開度が第1の診断開度に収束しているか否かの判別に先行して、電子制御スロットル装置の状態に基づいて設定され、かつ、第2の所定時間が、診断部により、故障診断処理において、スロットルバルブの開度が第2の診断開度に収束しているか否かの判別に先行して、電子制御スロットル装置1の状態に基づいて設定される。このような構成によれば、第1及び第2の診断開度にスロットルバルブ21の開度が収束するまでの時間のバラツキに見合った第1及び第2の所定時間を適宜設定できるので、エンジンの始動性を向上しながら、リターンスプリング24の故障の誤診断を抑制することができる。
【0044】
また、CPU83が、モータ23の駆動電圧に基づいて第1の所定時間を算出、設定するので、モータ23の駆動電圧の変動によるスロットルバルブ21の第1の診断開度への収束時間のバラツキを考慮して第1の所定時間を設定できる。
【0045】
また、本発明の実施形態における電子制御スロットル装置では、CPU83が、電子制御スロットル装置1の雰囲気温度に基づいて第1又は第2の所定時間を算出、設定するので、電子制御スロットル装置1の雰囲気温度の変動によるスロットルバルブ21の第1又は第2の診断開度への収束時間のバラツキを考慮して第1又は第2の所定時間を設定できる。
【0046】
また、CPU83が、エンジンの温度を検出するエンジン温度センサ(吸気温センサ5、水温センサ6、油温センサ7)を利用して電子制御スロットル装置1の雰囲気温度を検出する。電子制御スロットル装置1の雰囲気温度が低温であっても、スロットルバルブ機構2に塗布されている油脂類の粘度が増加しているとは限らない。すなわち、エンジンがホットスタート状態である場合には、スロットルバルブ機構2が温まっている可能性があり、この場合、スロットルバルブ機構2に塗布されている油脂類の粘度は低下している。このため、エンジンの温度を電子制御スロットル装置1の雰囲気温度として検出することによって、スロットルバルブ機構2の状態をより精度高く検出することができる。
【0047】
また、本発明においては、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明においては、簡便な構成により、エンジンの始動性を向上しながら、リターンスプリングの故障の誤診断を抑制可能な電子制御スロットル装置を提供することができ、その汎用普遍的な性格から自動二輪車等の電子制御スロットル装置に広範に適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0049】
1…電子制御スロットル装置
2…スロットルバルブ機構
3…スロットル開度センサ
4…アクセル開度センサ
5…吸気温センサ
6…水温センサ
7…油温センサ
8…ECU
21…スロットルバルブ
22…ギア
23…モータ
24…リターンスプリング
81…リレー
82…アクチュエータ駆動回路
83…CPU
83a…診断部
図1
図2
図3