(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961412
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】硬質材料粒子を有する基部本体を製造するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B24D 3/00 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
B24D3/00 340
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-61933(P2012-61933)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2012-196755(P2012-196755A)
(43)【公開日】2012年10月18日
【審査請求日】2015年3月6日
(31)【優先権主張番号】00492/11
(32)【優先日】2011年3月22日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】306026913
【氏名又は名称】ライスハウアー アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Reishauer AG
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴンダー,シェルリーネ
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ツィゲルリグ,ベンノ
(72)【発明者】
【氏名】クスター,フリードリッヒ
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−091892(JP,A)
【文献】
特開2000−167774(JP,A)
【文献】
特開平01−274966(JP,A)
【文献】
特表2008−537911(JP,A)
【文献】
特開2009−125864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00
B24D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最初に接着剤(23)を製造ツールの作業面(20’)の全体又は一部分に規定膜厚で塗布し、次いで前記接着剤(23)が提供された前記作業面の領域に硬質材料粒子(22)を施工する、超砥粒である硬質材料粒子を有する基部本体を製造するための方法であって、
前記硬質材料粒子(22)が、装置(15)によって施工され、次に、前記接着剤(23)が提供された前記製造ツール(20)の作業面(20’)に移送されて、そこで前記接着剤(23)の硬化前に前記硬質材料粒子(22)が接着された状態になり、
接触面を形成するプレート形容器(14)は、前記装置である接触面(15)に対してほぼ垂直に生じる振動運動によって短いストロークで上方に移動し、前記接触面(15)上で前記硬質材料粒子が持ち上げられ、前記製造ツール(20)の作業面(20’)まで上方に移動されて前記作業面に接着された状態になる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記接触面(15)を形成する前記プレート形容器(14)は、前記接触面に平行な運動によって前記接触面(15)上で前記硬質材料粒子(22)の分布に影響を与えることができるようにすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基部本体(20)を前記接触面(15)の上又は下に連続的又は段階的に移動させ、前記硬質材料粒子(22)が提供された前記作業面(20’)の部分が、前記接触面(15)から常に同じ距離だけ離れるようにすることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記接触面(15)は、前記製造ツール(20)の被覆される作業面(20’)に対していずれの位置及び向きにも配置することができることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記製造ツール(20)の連続的又は段階的な移動、及び前記硬質材料粒子(22)に対する前記移動のための装置の電気的制御を行い、これにより移動及び時間によって前記ツール(20)の作業面(20’)にわたる前記硬質材料粒子(22)の単位面積当たりの密度を設定することができることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ツールの作業面(20’)にわたって順次的に被覆されるゾーンを形成することができ、その結果、前記硬質材料粒子の密度、サイズ及び他の特性を特定のゾーンに施工することができることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記硬質材料粒子(22)は、係止プロセスによって前記基部本体(20)に接続されることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記硬質材料粒子(22)は、はんだ付けプロセスによって前記基部本体(20)上に確実に係止されて堅固に結合されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記はんだ付けプロセスは、はんだを施工して不活性ガス又は真空の炉中において最終的にはんだ付けする方法から構成されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記はんだに加えて、実質的に小さい硬質材料粒子及び結合剤から構成されるはんだマトリクス補強材を前記ツールの前記硬質材料粒子で被覆された前記作業面に施工することができることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
槽形態の前記容器(14)は、その接触面(15)が水平方向に位置合わせて配置され且つホルダ上に高さ調整可能に位置決めされ、前記硬質粒子材料(22)は、前記容器(14)内に一様に分布されることを特徴とする、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記接触面(15)は、前記製造ツール(20)の被覆作業面(20’)に対するこれらの位置及び向きを任意に変更できるように配置されることを特徴とする、請求項1〜請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記製造ツール(20)の被覆作業面(20’)の位置は、要求に応じて、前記接触面(15)に対して連続的又は段階的に移動させることができることを特徴とする、請求項1〜請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記基部本体(20)を保持し移動させる調整装置(30)は、スタンド(33)と、前記製造ツールを保持するため前記スタンド(33)に締結されたチャック(32)と、モータ(31)とから構成され、前記モータ(31)を前記基部本体に結合して前記基部本体がその回転軸の周りで回転するようにすることができることを特徴とする、請求項1〜請求項13のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最初に接着剤を製造ツールの作業面の全体又は一部分に規定膜厚で塗布し、次に、接着性を持続させるために、接着膜が提供された作業面の領域に硬質材料粒子を施工することを含む、好ましくは超砥粒である硬質材料粒子を有する基部本体を製造するための方法、並びに本方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1による、研磨ツールを製造するための一般的な方法において、最初に液滴の形態の接着剤がキャリアに塗布される。次に、硬質材料粒子が接着剤の液滴が提供されたキャリア上に分散され、これにより接着剤の液滴と接触する硬質材料粒子だけが、キャリアに接着された状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 208 945号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、分離した硬質材料粒子で基部本体を迅速に被覆し、これらの硬質材料粒子がはんだ付けを用いた後続のプロセスによって固定されるまで、基部本体への硬質材料粒子の確実な接着を保証することを可能にする、冒頭に述べたタイプの基部本体を被覆する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この目的は、請求項1を特徴とする方法と、請求項11、12及び13を特徴とする3つの装置を一体化することによって達成される。
【0006】
本発明による方法は、最初に、製造ツールの作業面の全体又は一部分に接着膜を一様に塗布する段階を提供する。
【0007】
分離した硬質材料粒子で接着面を被覆するために、本発明による方法は、最初に接触面又はコンベア・ベルト、或いは分散装置(ふるい)上に硬質材料粒子を一様に分布させ、この上又は下にツールを配置し、これら粒子が互いに所定の距離だけ離れて位置付けるようにする段階を提供する。次に、これらの硬質材料粒子は、接着膜が施工されたツールの作業面上に接触面から移動され、硬質材料粒子は作業面に接着された状態になる。
【0008】
部分的領域のゾーンを形成することによって、異なる被覆密度又はゾーンに依存する硬質材料粒子のタイプ及び/又はサイズも設けられ、このことは、例えば上述の方法を繰り返すことにより達成することができる。
【0009】
本発明による方法は、単位面積当たりに予め設定可能な一定数の分離した硬質材料粒子でツールの作業面を迅速に被覆することを可能にする。
【0010】
本方法及びこれらの装置の例示的な実施形態及び別の利点の詳細は、従属項において定義される。
【0011】
本発明の例示的な実施形態及び別の利点は、図面を用いて以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による方法を実施するための分離した硬質材料粒子で基部本体を被覆する装置である。
【
図2】作業面が硬質材料粒子で被覆されたツールの斜視図である。
【
図3】本発明による方法によって施工された多数の硬質材料粒子が見える、容器及びツールの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本方法において、例えば
図2に示されるような、例えば全てのタイプの研削ツール、ホーニング・ツール、及びドレッシング・ツールのような、いずれかの表面幾何学形状を有するツール20の作業面20’は、研磨用硬質材料粒子で被覆される。これらの硬質材料粒子22として、超砥粒材料又は他の高度な研磨材料のような様々な材料を用いることができる。
【0014】
本方法において、最初に、それ自体が周知の方法で基部本体の作業面の実質的に全体に接着剤を規定膜厚で塗布する。
【0015】
本発明によれば、最初に、接触面15の上に硬質材料粒子22を均等に分布させる。被覆ゾーンにわたって又は作業面全体にわたって接着膜を有する製造ツール20の基部本体をこの接触面15の上に配置し、基部本体が接触面15から所定の距離だけ離れた状態で配置されるようにする。次に、硬質材料粒子22を接触面15から接着膜が塗布された基部本体20の作業面20’まで上方に移動させ、硬質材料粒子22が作業面20’上の接着膜に接着された状態を維持するようにする。
【0016】
図1によれば、本方法を実施するための本発明による装置10は、幾つかのスタンド11’を有するフレーム11上に保持された容器14と、表面に対してほぼ垂直である容器の上下運動をもたらすように該容器に接続された駆動装置17と、製造ツール20を保持し移動させる調整装置30とを含む。
【0017】
この平坦な槽状の容器14は、その接触面15が水平方向に位置合わせされて配置され、長手方向の可撓性要素19を有するホルダ上に高さ調整可能に位置決めされる。このような取り付けにより、容器14を上下に移動させることができ、このために容器14の下側と係合し且つ容器に対してほぼ垂直に配置されて、前端部が容器と接触した状態で駆動装置17により上下運動を実施する駆動装置17のプランジャ18が設けられる。
【0018】
容器14上、すなわち容器14内で緩慢な状態のこれらの硬質材料粒子22上で発生するこの振動運動により、粒子は、容器14の接触面15から持ち上げられ、ツール20の作業面20’まで上方に移動して、該作業面20’に接着された状態になる。その結果、硬質材料粒子22は、容器14内に単一層の形で分布して配置され、必要に応じて、被覆中に補給される。接触面に平行な運動により接触面を形成するプレート形状の容器14を用いて、接触面15上で緩慢な状態の硬質材料粒子22の分布に影響を与えることができる。
【0019】
本発明の更に別のステップにおいて、ツール20を接触面15上に連続的又は段階的に移動させ、硬質材料粒子22が提供される作業面20’の部分が、接触面から常に同じ距離だけ離れるようにする。こうした調整は、この作業面20’が水準面として設計されておらず、例えば
図2に示されるように、円錐台の形態である場合に必要とされる。
【0020】
このため、本発明の対象の範囲内において、スタンド33と、ツールを保持するために該スタンド33に締結されるチャック32と、モータ31とを備え、基部本体20を保持し移動させるこの調整装置30が提供され、当該調整装置30は、モータ31を製造ツールに結合し該ツールが回転軸の周りで回転するようにすることができる。或いは、調整装置は、基部本体の位置決めを自動的に行う、ロボット又はマニピュレータとすることもできる。
【0021】
図2に示される円筒シャフト21を有する研削ディスク、ホーニング・ディスク、及びドレッシング・ディスク20として提供されるこの円錐形ツール20の作業面20’を被覆するために、容器14は、接触面15とこの作業面20’との間に短い距離(例えば約1センチメートル)があるように設計される。
【0022】
この被覆プロセスにおける装置10の全体的な制御のために、有利には、電気制御システム(図示せず)を用いて、ツール20及び容器の上下運動用の駆動装置の連続的又は段階的な移動をコンピュータ等によって制御することができる。従って、ツールの作業面の上の硬質材料粒子の単位面積当たりの所定の密度は、この制御システムにより、例えば接触面の振動数、振幅、振動励起時間、又は制御される基部本体の回転速度によってより簡単に制御することができる。
【0023】
図3において、硬質材料粒子22と共に容器14及びツール20が部分的に見える拡大断面図が示される。
【0024】
作業面20’の被覆後、接着剤の硬化を行った後、例えば、被覆された作業面全体へのはんだ層24の制御された施工を行う。はんだ層に加えて、実質的により小さな硬質材料粒子及び結合剤から構成されるはんだマトリクス補強材を硬質材料粒子で被覆されたツールの作業面に塗布し、次に、はんだ層24を用いて硬質材料粒子22を堅固に結合係止するため、場合によってははんだマトリクス補強材を付加して、はんだ付けにより基部本体に固定係止することができる。
【0025】
図4を参照すると、本発明によるある形態の装置40は、硬質粒子材料22を連続的且つ均一に供給するベルト形コンベア装置41を含む。連続速度で動くベルト形コンベア装置41は、入力側で硬質材料粒子22を装填し、次に、該硬質材料粒子22が特定の長さにわたって運ばれてそこで分離され、接着膜が塗布された基部本体20のこの回転する作業面上に落下して接着状態になる。
【0026】
図5によれば、本発明による装置44は、例えば、有利には前後に機械的に移動される分散装置45(例えば、ふるい)を含み、硬質材料粒子22は、接着膜が提供された回転する基部本体20の上にふるい内の穴を通って均一に落下し、そこに接着された状態になる。
【0027】
本発明の対象の範囲内で、接触面15、コンベア・ベルト41及び分散装置45は、製造ツール20又は同様のものの被覆作業面20’に対してあらゆる位置又は向きに設定することができる。従って、作業面にわたる硬質材料粒子を用いて特定の被覆を可能にすることができる。
【0028】
製造ツール20の被覆作業面20’の位置は、要求に応じて、接触面15又はコンベア・ベルト41、或いは分散装置45に対して連続的又は段階的に移動させることができる。
【0029】
接着剤はまた、粒子が相応的に埋め込まれる液体金属層に対する、例えば練り粉から作ることができる結合剤を意味するように理解することができる。
【符号の説明】
【0030】
10、44:装置
11:フレーム
11’:スタンド
14:容器
15:接触面
17:駆動装置
18:プランジャ
20:ツール
20’:作業面
22:硬質材料粒子
23:接着剤
24:はんだ層
30:調整装置
31:モータ
32:チャック
33:スタンド
41:ベルト形コンベア装置
45:分散装置