【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。
試験体として、JIS G 3112(鉄筋コンクリート用鋼棒)に規定されるD13及びD16の異型鋼棒(SD295A)を用いた。めっきの前処理として、試験体を60℃の12%のNaOH水溶液に10分間浸漬して脱脂を行い、水洗いを行った後、15%のHCl溶液に30分間浸漬して酸洗いを行った。この後、水洗いを行った後、フラックス液(株式会社長井製薬所製のナガフラックスFC)に1分間浸漬し、フラックス液から引き揚げた後、自然乾燥させた。
【0042】
(実施例1)
試験体を、Alが0.005重量%,Niが0.05重量%,残部がZnからなり、浴温が440℃の第1のめっき浴に90秒間浸漬した。試験体を、第1のめっき浴から引き上げた後、Alが10重量%,Niが0.05重量%,残部がZnからなり、浴温が460℃の第2のめっき浴に90秒間浸漬した。
【0043】
(比較例1)
第2のめっき浴を有しないめっき方法により、試験体のめっきを行った。通常の溶融亜鉛めっきに相当する例である。すなわち、試験体を、Alが0.005重量%,Niが0.05重量%,残部がZnからなり、浴温が440℃のめっき浴に90秒間浸漬した。
【0044】
(比較例2)
第1及び第2のめっき浴にNiを有しないめっき方法により、試験体のめっきを行った。すなわち、試験体を、Alが0.005重量%,残部がZnからなり、浴温が440℃の第1のめっき浴に90秒間浸漬した。第1のめっき浴から引き上げた試験体を、Alが10重量%,残部がZnからなり、浴温が460℃の第2のめっき浴に90秒間浸漬した。
【0045】
(比較例3)
第2のめっき浴にNiを有しないめっき方法により、試験体のめっきを行った。すなわち、試験体を、Alが0.005重量%,Niが0.05重量%、残部がZnからなり、浴温が440℃の第1のめっき浴に90秒間浸漬した。第1のめっき浴から引き上げた試験体を、Alが10重量%,残部がZnからなり、浴温が460℃の第2のめっき浴に90秒間浸漬した。
【0046】
(比較例4)
Alの含有割合が大きい第2のめっき浴を用いためっき方法により、試験体のめっきを行った。すなわち、試験体を、Alが0.005重量%,Niが0.05重量%、残部がZnからなり、浴温が440℃の第1のめっき浴に90秒間浸漬した。第1のめっき浴から引き上げた試験体を、Alが21重量%,Niが0.05重量%、残部がZnからなり、浴温が470℃の第2のめっき浴に90秒間浸漬した。
【0047】
上記実施例1及び比較例1乃至4の試験片について、表面状態の目視観察と、めっきの付着量の測定を行った。付着量の測定は、JIS H 0401(溶融亜鉛めっき試験方法)における間接法に準拠した。すなわち、めっき処理をした試験体の重量を測定した後、塩酸でめっき被膜を溶解して除去し、再び重量を測定して、これら測定した重量の差をめっき付着量とした。表面状態の目視観察と、めっき付着量の測定の結果は、表1に示すとおりである。
【0048】
【表1】
【0049】
表1から明らかなように、実施例1のZn−Al合金めっき鉄筋は、D13及びD16のいずれも、比較例1のZnめっき鉄筋と同等のめっき付着量が得られる。
図1は、実施例1のZn−Al合金めっき鉄筋におけるめっきの付着状態を表す写真であり、
図6は、めっきが付着する前の鉄筋の表面の状態を表す写真である。
図1と
図6から分かるように、実施例1によれば、均一かつ滑らかな表面状態のZn−Al合金めっきが得られる。第1及び第2のめっき浴にNiを有しない比較例2と、第2のめっき浴にNiを有しない比較例3は、D13及びD16のいずれも、比較例1のZnめっき鉄筋よりも、めっき付着量が少なかった。また、比較例2のD13及びD16と比較例3のD16は、表面状態に一部ざらつきが生じた。
図2は、比較例1の溶融Znめっき鉄筋の表面状態を表す写真であり、
図3は、比較例2のZn−Al合金めっき鉄筋の表面状態を表す写真であり、
図4は、比較例3のZn−Al合金めっき鉄筋の表面状態を表す写真であり、いずれのZn−Al合金めっき鉄筋も、表面状態の一部にざらつきが観察される。第2のめっき浴のAlの含有割合が大きい比較例4は、D13及びD16のいずれも、めっき付着量について、JIS H 8641のHDZ55により腐食環境で溶融Znめっきに求められる最低量の550g/m
2が得られたが、表面状態に凹凸やざらつきが生じた。
図5は、比較例4のZn−Al合金めっき鉄筋の表面状態を表す写真であり、表面状態の凹凸やざらつきが観察される。これは、第2のめっき浴のAlの含有割合の大きさと、浴温の低さにより、不めっき部分が発生したこと、及び、めっき浴の粘性が増大してたれが生じたことが原因である。
【0050】
めっき鉄筋のZnが、コンクリート中でアルカリ成分から受ける影響を確認するため、アルカリ浸漬試験を行った。アルカリ浸漬試験は、水酸化カルシウムを主成分とし、水酸化ナトリウムでpHを13に調整すると共に温度を40℃に維持したアルカリ溶液に、実施例1及び比較例1乃至4のD13の試験体を28日間浸漬した。この後、アルカリ溶液から引き上げた試験体について、腐食生成物を除去した後に、重量の減少量を測定した。重量の減少量は、表2に示すとおりである。
【0051】
【表2】
【0052】
表2から分かるように、比較例1のZnめっき鉄筋が、重量の減少量が最も多く、アルカリ成分に対する耐久性が最も低いといえる。一方、実施例1のZn−Al合金めっき鉄筋が、重量の減少量が最も少なく、アルカリ成分に対する耐久性が最も高いといえる。
【0053】
めっき鉄筋に曲げ加工を行った場合のめっき被膜の割れや剥離に対する耐久性を確認するため、めっき鉄筋の曲げ試験を行った。曲げ試験は、JIS Z 2248(金属材料曲げ試験方法)に準拠した押曲げ法に従って行った。試験体の曲げ角度は180°とした。曲げ試験に用いる押金具としては、D16の鉄筋については、先端部の直径が、鉄筋の公称直径である15.9mmの6倍の95.4mmの押金具を使用した。D13の鉄筋については、先端部の直径が、鉄筋の公称直径である12.7mmの6倍の76.2mmの押金具を使用した。曲げ試験を行った試験体の評価は、目視による曲げ部の外観観察により行った。評価の結果は表3に示すとおりである。
【0054】
【表3】
【0055】
表3に示すように、比較例1では、曲げ部分の全体に0.1〜0.4mm幅の数本のひび割れが生じると共に、数箇所の剥離が生じた。実施例1では、ひび割れも剥離も生じなかった。
【0056】
めっき鉄筋を用いたコンクリート試験体について、腐食促進試験を行った。腐食促進試験は、社団法人日本コンクリート工学協会発行の「コンクリート構造物の腐食・防食に関する試験方法ならびに規準(案)」に準じた。すなわち、
図7の縦断面図及び
図8の横断面図に示す鉄筋コンクリート試験体1を、異型鋼棒を用いて作製した。この鉄筋コンクリート試験体1を、コンクリート打設の後、一定の養生を行い、湿潤過程と乾燥過程を繰り返す腐食推進環境に置いて腐食促進試験を行った。腐食促進試験の後、鉄筋をコンクリートから取り出し、腐食面積率を算出した。腐食面積率は、日本コンクリート工学協会発行の「コンクリート構造物の腐食・防食に関する試験方法ならびに規準(案)」に記載された方法により算出した。
【0057】
鉄筋コンクリート試験体1は、100mmの直径と200mmの高さの円筒形であり、2つの鉄筋2を20mmのかぶり厚d1でコンクリート3中に埋設した。鉄筋2の端部のかぶり厚d2は25mmである。鉄筋コンクリート試験体1の鉄筋2としては、実施例1のZn−Al合金めっき鉄筋と、比較例1乃至4のめっき鉄筋と、比較例5として、めっきを施さない普通鉄筋を用いた。鉄筋コンクリート試験体1のコンクリート3は、土木学会発行の「コンクリート標準示方書」に定められた普通鉄筋の発錆限界塩分量である1.2(kg/m
3)の塩化物を添加したコンクリートと、普通鉄筋の発錆限界塩分量の10倍の12(kg/m
3)の塩化物を添加したコンクリートを用いた。また、コンクリートが中性化した場合の腐食状態を確認するため、上記鉄筋2及びコンクリート3で作製した鉄筋コンクリート試験体1について、封緘養生を行ったものと、養生後に中性化処理を施したものとについて、腐食促進試験を行った。中性化処理は、促進中性化試験装置を用いて、温度が20±2℃、湿度が60±5%、炭酸ガス濃度が15.0±0.2%の環境に、コンクリート3の表面から約20mmの深さまで中性化が進行するまで鉄筋コンクリート試験体1を静置した。腐食促進試験は、温度が40±2℃及び湿度が95±5%の環境が3日間継続する湿潤過程と、温度が40±2℃及び湿度が25±5%の環境が4日間継続する乾燥過程とを1サイクルとし、この湿潤過程及び乾燥過程を45サイクル繰り返して鉄筋の腐食を促進した。腐食促進試験後の鉄筋の腐食面積率は、表4に示すとおりである。
【0058】
【表4】
【0059】
表4から分かるように、鉄筋コンクリート試験体に中性化処理を行った場合と、中性化処理を行わなかった場合のいずれも、実施例1のZn−Al合金めっき鉄筋の腐食面積率が最も小さい。特に、12kg/m
3の塩化物を含むコンクリート中において、実施例1のZn−Al合金めっき鉄筋の腐食面積率が他のいずれの鉄筋よりも少なく、よって、腐食環境に置かれる鉄筋コンクリートに用いた場合に、鉄筋コンクリートの耐久性を効果的に高めることができる。
【0060】
(実施例2)
D13及びD16の異型鋼棒の試験体を、組成及び浴温が異なる複数の条件の第1のめっき浴と第2のめっき浴に浸漬して得たZn−Al合金めっき鉄筋について、めっき付着量の測定と、表面状態の目視観察を行った。実施例2のめっき浴の組成及び浴温は、第1のめっき浴が、Alが0.001〜0.01重量%、Niが0.01〜0.1重量%、残部がZn及び不可避不純物からなり、浴温が420〜490℃の範囲内に設定した。また、第2のめっき浴が、Alが4〜20重量%、Niが0.01〜0.1重量%、残部がZn及び不可避不純物からなり、浴温が420〜490℃の範囲内に設定した。組成と浴温の全ての条件は、表5に示すとおりである。全ての条件の試験体に関するめっき付着量の測定結果と、表面状態の目視観察結果は、表5に示すとおりである。
【0061】
【表5】
【0062】
表5における評価は、表面状態の目視観察の結果であり、「良」はめっき表面の全面が均一かつ滑らかであり、「可」はめっき表面の一部にざらつきが存在する程度である。表5から明らかなように、本発明の範囲内の組成及び浴温の第1のめっき浴と第2のめっき浴を用いることにより、溶融Znめっきと同等の付着量が得られると共に、不めっきや剥離や割れの無いZn−Al合金めっき鉄筋が得られる。
【0063】
(比較例6)
D13及びD16の異型鋼棒の試験体を、組成と浴温が異なる複数の条件の第1のめっき浴と第2のめっき浴に浸漬して得たZn−Al合金めっき鉄筋について、めっき付着量の測定と、表面状態の目視観察を行った。比較例6のめっき浴の組成及び浴温は、第1又は第2のめっき浴に関して、Alの割合と、Niの割合と、浴温とのいずれかが、実施例2の数値範囲に包含されない値に設定した。組成と浴温の全ての条件は、表6に示すとおりである。全ての条件の試験体に関するめっき付着量の測定結果と、表面状態の目視観察結果は、表6に示すとおりである。
【0064】
【表6】
【0065】
表6から明らかなように、本発明の範囲外の組成及び浴温の第1のめっき浴と第2のめっき浴を用いた場合、めっき付着量の不足や、めっきの表面状態の不良が生じる。