特許第5961433号(P5961433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961433
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】Zn−Al系合金めっき鉄筋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/06 20060101AFI20160719BHJP
   C23C 2/38 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   C23C2/06
   C23C2/38
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-94635(P2012-94635)
(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公開番号】特開2013-221196(P2013-221196A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】592233174
【氏名又は名称】株式会社デンロコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】池尾 陽作
(72)【発明者】
【氏名】松下 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】櫛部 淳道
(72)【発明者】
【氏名】小川 孝寿
(72)【発明者】
【氏名】辻 英朗
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−160143(JP,A)
【文献】 特開平04−280952(JP,A)
【文献】 特開平07−233458(JP,A)
【文献】 特開2004−083950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00−2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋を、Alが0.001〜0.01重量%、Niが0.01〜0.1重量%、残部がZn及び不可避不純物からなり、浴温が420〜490℃の第1のめっき浴に浸漬した後、Alが4〜20重量%、Niが0.01〜0.1重量%、残部がZn及び不可避不純物からなり、浴温が420〜490℃の第2のめっき浴に浸漬することを特徴とするZn−Al系合金めっき鉄筋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食性環境で長期にわたって強度と耐久性を発揮できる鉄筋コンクリートが得られるZn−Al系合金めっき鉄筋と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートは、コンクリートに用いられるセメントが、Ca等のアルカリ土類金属のイオンやNaやK等のアルカリ金属のイオンを含有していることから、強いアルカリ性を呈する。このコンクリート中のアルカリ成分によって鉄筋の表面に不動態皮膜が形成され、鉄筋が防食されることから、鉄筋コンクリートは長期にわたって強度と耐久性を発揮できる。
【0003】
しかしながら、海洋や海岸の周辺のような塩化物イオン濃度が高い環境では、塩化物イオンがコンクリートに浸透し、鉄筋の表面の不動態皮膜が破壊されて鉄筋が腐食し、鉄筋コンクリートが劣化して、コンクリート構造物の寿命が短くなることが問題となっている。
【0004】
また、近年はコンクリート用の骨材の入手事情が悪化し、海砂を洗浄して骨材として使用せざるを得ない場合がある。洗浄した海砂を骨材に用いた鉄筋コンクリートは、塩分を完全に除去することが困難であるので、塩分を含まない骨材を用いた鉄筋コンクリートと比較して、鉄筋の腐食が進みやすく、耐久性が低下しやすい可能性がある。
【0005】
鉄筋コンクリートの耐久性を高める手段として、溶融Znめっきを施した溶融Znめっき鉄筋を用いることが提案されている。溶融Znめっき鉄筋は、予め被覆を設けない鉄筋と比較して優れた耐食性を有するので、鉄筋コンクリートの耐久性の向上に有効であるとされている。
【0006】
しかしながら、溶融ZnめっきのZnは塩化物イオンにより溶解するので、塩化物イオン濃度の高い環境では、鉄筋に施した溶融Znめっきがコンクリート中に浸透した塩化物イオンにより劣化し、防食機能が比較的短時間で失われる。また、溶融ZnめっきのZnは、コンクリート中のアルカリ成分によって溶解する。したがって、溶融Znめっき鉄筋は、塩化物イオン濃度の高い環境では、鉄筋コンクリートの耐久性を十分に向上することができない。
【0007】
そこで、鉄筋コンクリートの耐久性を向上するため、溶融Znめっきよりも耐食性の高いZn−Al合金めっきを鉄筋に施すことが考えられる。しかしながら、Zn−Al合金めっきでは、素地の鋼材とめっき層の間に合金を形成する反応が抑制されるので、めっき付着量が溶融Znめっきよりも少ない。したがって、Zn−Al合金めっきは、表面の劣化が開始して鋼材が露出するまでにかかる時間が溶融Znめっきと大差なく、よって、Zn−Al合金めっきの被膜全体としての耐食性は、溶融Znめっきと比較して必ずしも高いとはいえない。
【0008】
Zn−Al合金めっきの十分な付着量を得るために、実質的にZn単体の溶融Znめっき浴で処理した後、Zn−Al合金めっき浴で処理する2浴法が有効であることが知られている。しかしながら、溶融Znめっき浴とZn−Al合金めっき浴による2浴法は、Fe−Zn合金層の異常成長である所謂やけや、やけに起因するZn−Al合金層の剥離が生じる問題がある。
【0009】
このような問題を解決するため、特開平4−160143号公報(特許文献1)には、2浴法によるZn−Al合金めっき方法として、Niを0.03重量%含む溶融Znめっき浴で処理をした後、Alを3〜10重量%含む溶融Znめっき浴で処理をする方法が開示されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1の方法によるZn−Al合金めっきは、付着量が350〜430g/m程度しか得られないので、塩化物イオン濃度の高い環境における耐食性が不十分である。
【0011】
なお、JIS H 8641のHDZ55では、腐食環境において溶融Znめっきに求められる付着量が550g/m以上であることが規定されており、Zn−Al合金めっきが上記付着量を超えれば、溶融Znめっきよりも高い耐食性を有するといえる。
【0012】
特開平4−280952号公報(特許文献2)には、1浴法によるZn−Al合金めっき方法として、Alを3〜10重量%、Niを0.01〜0.10重量%含み、残部がZnと不可避的不純物からなるZn−Al合金めっき浴を使用し、浴温490〜600℃で処理をする方法が開示されている。このめっき方法は、従来の1浴法よりも付着量を増大させるために浴温を高くすると共に、めっきの過剰付着を抑制するために、Niをめっき浴に添加している。これにより、従来の1浴法では200g/m程度の付着量しか得られなかったところ、2浴法で得られる300g/mよりも多い350〜440g/mの付着量を得ようとしている。
【0013】
しかしながら、特許文献2の方法によるZn−Al合金めっきの付着量は、腐食環境で溶融Znめっきに求められる付着量の550g/mよりも少ないので、腐食環境下における耐食性が十分であるとはいえない。また、このめっき方法は、浴温が比較的高いため、鋼材に熱歪みの影響を与える恐れがある。更に、浴温の高さに起因するめっき作業の環境悪化や、燃料コストの増大や、めっき槽の寿命短縮の問題がある。
【0014】
特開平7−233458号公報(特許文献3)には、1浴法によるZn−Al合金めっき方法として、Alを2〜20重量%、Ni及びCoの内から選ばれた1種又は2種の成分を合計で0.005〜2.0重量%含み、残部がZnと不可避的不純物からなるZn−Al合金めっき浴を使用し、浴温430〜500℃で処理をする方法が開示されている。このめっき方法は、500℃以下の比較的低い浴温により、鋼材に対する熱歪みの影響を抑制しながら、比較的多い付着量を得ようとしている。
【0015】
しかしながら、特許文献3のZn−Al合金めっき方法は、1浴法であるため、めっき浴に比較的高濃度で存在するAlによってFeとZnの合金反応が抑制され、鋼材の表面にFe−Al−Zn合金層が十分に形成されず、不めっき部分が生じやすいという問題がある。また、めっきの冷却速度が5℃/sec以上とされており、この冷却速度は連続式のめっき処理工程では実現できるが、バッチ式のめっき処理工程では実現は困難である。
【0016】
特開2004−83950号公報(特許文献4)には、鋼材にZnめっきを施して凝固させた後、このZnめっき層が溶融状態になり得る温度まで加熱し、次いで、Znめっきが施された鋼材の表面に420〜650℃のZn−Al合金溶湯を注ぎかけることにより、Zn−Al合金めっきを施す方法が記載されている。このめっき方法は、めっき槽の大きさにより、めっきを施す鋼材の大きさに制限が生じることが無く、また、Zn−Al合金浴のための槽が不要となる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平4−160143号公報
【特許文献2】特開平4−280952号公報
【特許文献3】特開平7−233458号公報
【特許文献4】特開2004−83950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献4のZn−Al合金めっき方法は、溶融状態のZnめっき層の表面にZn−Al合金溶湯を注ぎかけるので、Zn−Al合金めっき層の厚みが不均一になりやすいという問題がある。
【0019】
ところで、鉄筋は、鉄筋コンクリート構造物の構築過程で、配筋のために曲げ加工を受けることが多い。めっきが施された鉄筋が曲げ加工を受ける場合、素地の鋼材とめっき層の間の合金層の厚みが不均一であると、めっき層の割れや剥離が生じる恐れがある。例えば、Zn−Al合金めっきが施された鉄筋は、Fe−Zn合金層の部分的な異常成長である所謂やけが存在すると、やけ部分の表面にZn−Al層が形成されにくいだけでなく、合金層の厚みが不均一になる。したがって、鉄筋が曲げ加工を受けた場合に、やけ部分のZn−Al層に割れや剥離が生じる恐れがある。めっき層の割れや剥離は、鉄筋の早期の腐食を招き、鉄筋コンクリートの耐久性を大きく損なうこととなる。
【0020】
そこで、本発明の課題は、めっきの付着量を十分に得ることができ、素地の鋼材が熱歪みの影響を受けることが無く、不めっきを防止でき、めっき層の不均一を防止でき、更に、めっき層の剥離や割れを防止できて、耐久性の高いZn−Al系合金めっき鉄筋と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、本発明は以下の内容を要旨とする。
(1)Alが0.001〜0.01重量%、Niが0.01〜0.1重量%、残部がZn及び不可避不純物からなり、浴温が420〜490℃の第1のめっき浴に浸漬した後、Alが4〜20重量%、Niが0.01〜0.1重量%、残部がZn及び不可避不純物からなり、浴温が420〜490℃の第2のめっき浴に浸漬して製造され、550g/m以上のめっき付着量を有することを特徴とするZn−Al系合金めっき鉄筋。
【0022】
(2)鉄筋を、Alが0.001〜0.01重量%、Niが0.01〜0.1重量%、残部がZn及び不可避不純物からなり、浴温が420〜490℃の第1のめっき浴に浸漬した後、Alが4〜20重量%、Niが0.01〜0.1重量%、残部がZn及び不可避不純物からなり、浴温が420〜490℃の第2のめっき浴に浸漬することを特徴とするZn−Al系合金めっき鉄筋の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、溶融Znめっきと同等の付着量を得ることができ、素地の熱歪みの影響が少なく、不めっきを防止でき、均一な厚みのめっき層を得ることができ、更に、めっき層の剥離や割れを防止できて、耐久性の高いZn−Al系合金めっき鉄筋を製造できる。その結果、このZn−Al系合金めっき鉄筋を用いることにより、洗浄した海砂等を骨材として用いた場合に塩分が残留していても、耐久性の高い鉄筋コンクリートを得ることができ、また、腐食性環境においても長寿命の鉄筋コンクリート構造物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1のめっきの付着状態を表す写真である。
図2】比較例1のめっきの付着状態を表す写真である。
図3】比較例2のめっきの付着状態を表す写真である。
図4】比較例3のめっきの付着状態を表す写真である。
図5】比較例4のめっきの付着状態を表す写真である。
図6】めっきが付着する前の鉄筋の表面の状態を表す写真である。
図7】コンクリート試験体の縦断面図である。
図8】コンクリート試験体の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明のZn−Al系合金めっき鉄筋の製造方法では、まず、鉄筋を、Alが0.001〜0.01重量%、Niが0.01〜0.1重量%、残部がZn及び不可避不純物からなり、浴温が420〜490℃の第1のめっき浴に浸漬する。この第1のめっき浴に浸漬した後、Alが4〜20重量%、Niが0.01〜0.1重量%、残部がZn及び不可避不純物からなり、浴温が420〜490℃の第2のめっき浴に浸漬する。
【0027】
上記第1のめっき浴により、鉄筋の表面に均一な厚みのFe−Zn合金層と単体Zn層が形成され、均一な厚みの溶融Znめっき被膜が形成される。この第1のめっき浴により、通常の溶融Znめっき被膜と同様の550g/mの付着量が得られる。次いで、第2のめっき浴により、鉄筋の素地側から表面に向かって順に、Fe−Al−Zn合金層とZn−Al層が形成されて、均一な厚みのZn−Al系合金めっき被膜が形成される。上記第1のめっき浴と第2のめっき浴により形成されるZn−Al系合金めっき被膜は、一般的な溶融Znめっき被膜と同様の550g/mの付着量が得られるので、高耐久性のZn−Al系合金めっき鉄筋が得られる。その結果、このZn−Al系合金めっき鉄筋を用いることにより、洗浄した海砂を骨材に用いた場合に塩分が残留しても、耐久性の高い鉄筋コンクリートを得ることができ、また、腐食性環境においても長寿命の鉄筋コンクリート構造物を得ることができる。
【0028】
第1のめっき浴は、0.01〜0.1重量%のNiにより、Fe−Zn合金層の異常成長である所謂やけを抑制することができ、Fe−Zn合金層の厚みを均一にすることができる。その結果、やけによる第2のめっき浴におけるめっきの成長不良を防止できて、めっき層の剥離や、めっき表面のくすみを防止することができる。ここで、第1のめっき浴のNiの含有量が0.01重量%未満であると、Fe−Zn合金層の異常成長の抑制効果が不十分となる。一方、第1のめっき浴のNiの含有量が0.1重量%よりも大きいと、Fe−Zn合金層の異常成長の抑制効果が頭打ちとなると共に、Niがめっき浴中のFe等と反応して金属間化合物が形成され、この金属間化合物の凝集物が、鉄筋をめっき浴から引き上げる際に付着し、めっきの外観不良の原因となる。
【0029】
また、第1のめっき浴の0.001〜0.01重量%のAlにより、Fe−Zn合金層の異常成長、所謂やけを抑制することができ、Fe−Zn合金層の厚みを均一にすることができる。その結果、やけによる第2のめっき浴におけるめっきの成長不良を防止できて、めっき層の剥離や、めっき表面のくすみを防止することができる。ここで、第1のめっき浴のAlの含有量が0.001重量%未満であると、Fe−Zn合金層の異常成長の抑制効果が不十分となる。一方、第1のめっき浴のAlの含有量が0.01重量%よりも大きいと、FeとZnの合金反応が阻害され、不めっき部が生じる可能性がある。
【0030】
また、第1のめっき浴の浴温が420〜490℃であるので、鉄筋に熱歪みが生じる不都合を防止できて、鉄筋の熱歪みに起因するめっき層の割れを防止できる。更に、めっき作業の環境を良好にでき、めっき浴の燃料コストを低廉にでき、めっき槽の高温による傷みを防止できる。ここで、第1のめっき浴の浴温が490℃よりも高いと、熱歪みの影響が大きくなり、めっき鉄筋に歪みが生じる不都合や、めっき層の割れの不都合が生じる可能性がある。更に、めっき作業の環境の悪化や、めっき浴の燃料コストの増大や、めっき槽の寿命の短縮等の問題が生じる可能性がある。一方、第1のめっき浴の浴温が420℃よりも低いと、めっき浴の粘性が増大してたれが生じ、めっき層の厚みの不均一や外観不良等の問題が生じる可能性がある。
【0031】
第2のめっき浴は、4〜20重量%のAlにより、Znよりも耐食性の高いZn−Alめっき層を形成する。ここで、第2のめっき浴のAlの含有量が、4重量%未満であると、耐食性の向上が不十分となる。一方、第2のめっき浴のAlの含有量が、20重量%よりも大きいと、耐食性の向上の効果が頭打ちとなり、耐食性を更に向上させることが困難となる。また、Alの含有量が、20重量%よりも大きいと、めっき浴の融点が高くなるので浴温を上昇させる必要があり、熱歪みの影響が大きくなり、めっき鉄筋に歪みが生じる不都合や、めっき層の割れの不都合が生じる可能性がある。更に、めっき作業の環境の悪化や、めっき浴の燃料コストの増大や、めっき槽の寿命の短縮等の問題が生じる可能性がある。更に、めっき浴の熱により鉄筋が焼きなまされ、鉄筋の機械的性質が劣化するおそれがある。
【0032】
第2のめっき浴は、0.01〜0.1重量%のNiにより、第1のめっき浴で鉄筋の素地の表面に形成されたFe−Zn合金層にAlの拡散を助長し、Fe−Al−Zn合金層の形成を促すことができ、その結果、めっき付着量を効果的に増大することができる。ここで、第2のめっき浴のNiの含有量が0.01重量%未満であると、Fe−Zn合金層へのAlの拡散効果が不十分となる。一方、第2のめっき浴のNiの含有量が0.1重量%よりも大きいと、Fe−Zn合金層へのAlの拡散効果が頭打ちとなると共に、Niがめっき浴中のFe等と反応して金属間化合物が形成され、この金属間化合物の凝集物が、鉄筋をめっき浴から引き上げる際に付着し、めっきの外観不良の原因となる。
【0033】
また、第2のめっき浴がNiを含むことにより、めっき浴の粘性を効果的に下げることができるので、めっきの過大な付着を防止することができると共に、たれを防止できて、たれの除去等の仕上げの手間を削減でき、また、めっきの良好な外観を得ることができる。
【0034】
また、第2のめっき浴の浴温が420〜490℃であるので、鉄筋に熱歪みが生じる不都合を防止できて、鉄筋の熱歪みに起因するめっき層の割れを防止できる。更に、めっき作業の環境を良好にでき、めっき浴の燃料コストを低廉にでき、めっき槽の高温による傷みを防止できる。ここで、第2のめっき浴の浴温が490℃よりも高いと、熱歪みの影響が大きくなり、めっき鉄筋に歪みが生じる不都合や、めっき層の割れの不都合が生じる可能性がある。更に、めっき作業の環境の悪化や、めっき浴の燃料コストの増大や、めっき槽の寿命の短縮等の問題が生じる可能性がある。一方、第2のめっき浴の浴温が420℃よりも低いと、めっき浴の粘性が増大してたれが生じ、めっき層の厚みの不均一や外観不良等の問題が生じる可能性がある。
【0035】
本発明のZn−Al系合金めっき鉄筋は、上記製造方法で製造されたものであり、めっき付着量が550g/m以上である。
【0036】
本発明のZn−Al系合金めっき鉄筋によれば、JIS H 8641のHDZ55により腐食環境で溶融Znめっきに求められる付着量である550g/m以上のめっき付着量を、Zn−Al系合金めっきにより実現できる。したがって、腐食環境においても高い耐久性を発揮できる。その結果、例えば海砂等を洗浄して骨材として用いた場合に塩分が残留していても、耐久性の高い鉄筋コンクリートを得ることができ、また、腐食性環境においても長寿命の鉄筋コンクリート構造物を得ることができる。
【0037】
なお、めっき付着量は、鉄筋に形成された凹凸によるコンクリートとの噛み合い効果が低下する不都合を防止するために、800g/m以下であるのが好ましい。
【0038】
本発明のZn−Al系合金めっき鉄筋の製造方法によりめっきが形成される鉄筋は、異型鉄筋であるのが好ましい。
【0039】
異型鉄筋は、鉄筋の表面に形成された凹凸がコンクリートと噛み合うことにより、コンクリートに対する付着強度を発揮する。異型鉄筋に溶融めっきを施すと、めっき液の表面張力により、鉄筋の凹凸の表面に、軸方向断面において丸みを帯びた凹凸のめっき層が形成される。めっき層の丸みを帯びた凹凸は、鉄筋の凹凸と比較してコンクリートとの噛み合い強度が低いので、めっき鉄筋のコンクリートに対する付着強度が低下する不都合が生じる。ここで、本発明のZn−Al系合金めっき鉄筋の製造方法は、第2のめっき浴にNiを含むことにより、めっき浴の粘性を効果的に抑制できるので、異型鉄筋の表面に形成するZn−Al系合金めっきの表面を、丸みの少ない凹凸にできる。その結果、コンクリートに対して十分な付着強度を発揮できるZn−Al系合金めっき鉄筋が得られる。
【0040】
なお、本発明において、被めっき材である鉄筋は異型鉄筋に限定されず、丸鋼や、他の鋼材でもよい。本発明のZn−Al系合金めっき鉄筋は、鉄筋の種類は限定されない。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。
試験体として、JIS G 3112(鉄筋コンクリート用鋼棒)に規定されるD13及びD16の異型鋼棒(SD295A)を用いた。めっきの前処理として、試験体を60℃の12%のNaOH水溶液に10分間浸漬して脱脂を行い、水洗いを行った後、15%のHCl溶液に30分間浸漬して酸洗いを行った。この後、水洗いを行った後、フラックス液(株式会社長井製薬所製のナガフラックスFC)に1分間浸漬し、フラックス液から引き揚げた後、自然乾燥させた。
【0042】
(実施例1)
試験体を、Alが0.005重量%,Niが0.05重量%,残部がZnからなり、浴温が440℃の第1のめっき浴に90秒間浸漬した。試験体を、第1のめっき浴から引き上げた後、Alが10重量%,Niが0.05重量%,残部がZnからなり、浴温が460℃の第2のめっき浴に90秒間浸漬した。
【0043】
(比較例1)
第2のめっき浴を有しないめっき方法により、試験体のめっきを行った。通常の溶融亜鉛めっきに相当する例である。すなわち、試験体を、Alが0.005重量%,Niが0.05重量%,残部がZnからなり、浴温が440℃のめっき浴に90秒間浸漬した。
【0044】
(比較例2)
第1及び第2のめっき浴にNiを有しないめっき方法により、試験体のめっきを行った。すなわち、試験体を、Alが0.005重量%,残部がZnからなり、浴温が440℃の第1のめっき浴に90秒間浸漬した。第1のめっき浴から引き上げた試験体を、Alが10重量%,残部がZnからなり、浴温が460℃の第2のめっき浴に90秒間浸漬した。
【0045】
(比較例3)
第2のめっき浴にNiを有しないめっき方法により、試験体のめっきを行った。すなわち、試験体を、Alが0.005重量%,Niが0.05重量%、残部がZnからなり、浴温が440℃の第1のめっき浴に90秒間浸漬した。第1のめっき浴から引き上げた試験体を、Alが10重量%,残部がZnからなり、浴温が460℃の第2のめっき浴に90秒間浸漬した。
【0046】
(比較例4)
Alの含有割合が大きい第2のめっき浴を用いためっき方法により、試験体のめっきを行った。すなわち、試験体を、Alが0.005重量%,Niが0.05重量%、残部がZnからなり、浴温が440℃の第1のめっき浴に90秒間浸漬した。第1のめっき浴から引き上げた試験体を、Alが21重量%,Niが0.05重量%、残部がZnからなり、浴温が470℃の第2のめっき浴に90秒間浸漬した。
【0047】
上記実施例1及び比較例1乃至4の試験片について、表面状態の目視観察と、めっきの付着量の測定を行った。付着量の測定は、JIS H 0401(溶融亜鉛めっき試験方法)における間接法に準拠した。すなわち、めっき処理をした試験体の重量を測定した後、塩酸でめっき被膜を溶解して除去し、再び重量を測定して、これら測定した重量の差をめっき付着量とした。表面状態の目視観察と、めっき付着量の測定の結果は、表1に示すとおりである。
【0048】
【表1】
【0049】
表1から明らかなように、実施例1のZn−Al合金めっき鉄筋は、D13及びD16のいずれも、比較例1のZnめっき鉄筋と同等のめっき付着量が得られる。図1は、実施例1のZn−Al合金めっき鉄筋におけるめっきの付着状態を表す写真であり、図6は、めっきが付着する前の鉄筋の表面の状態を表す写真である。図1図6から分かるように、実施例1によれば、均一かつ滑らかな表面状態のZn−Al合金めっきが得られる。第1及び第2のめっき浴にNiを有しない比較例2と、第2のめっき浴にNiを有しない比較例3は、D13及びD16のいずれも、比較例1のZnめっき鉄筋よりも、めっき付着量が少なかった。また、比較例2のD13及びD16と比較例3のD16は、表面状態に一部ざらつきが生じた。図2は、比較例1の溶融Znめっき鉄筋の表面状態を表す写真であり、図3は、比較例2のZn−Al合金めっき鉄筋の表面状態を表す写真であり、図4は、比較例3のZn−Al合金めっき鉄筋の表面状態を表す写真であり、いずれのZn−Al合金めっき鉄筋も、表面状態の一部にざらつきが観察される。第2のめっき浴のAlの含有割合が大きい比較例4は、D13及びD16のいずれも、めっき付着量について、JIS H 8641のHDZ55により腐食環境で溶融Znめっきに求められる最低量の550g/mが得られたが、表面状態に凹凸やざらつきが生じた。図5は、比較例4のZn−Al合金めっき鉄筋の表面状態を表す写真であり、表面状態の凹凸やざらつきが観察される。これは、第2のめっき浴のAlの含有割合の大きさと、浴温の低さにより、不めっき部分が発生したこと、及び、めっき浴の粘性が増大してたれが生じたことが原因である。
【0050】
めっき鉄筋のZnが、コンクリート中でアルカリ成分から受ける影響を確認するため、アルカリ浸漬試験を行った。アルカリ浸漬試験は、水酸化カルシウムを主成分とし、水酸化ナトリウムでpHを13に調整すると共に温度を40℃に維持したアルカリ溶液に、実施例1及び比較例1乃至4のD13の試験体を28日間浸漬した。この後、アルカリ溶液から引き上げた試験体について、腐食生成物を除去した後に、重量の減少量を測定した。重量の減少量は、表2に示すとおりである。
【0051】
【表2】
【0052】
表2から分かるように、比較例1のZnめっき鉄筋が、重量の減少量が最も多く、アルカリ成分に対する耐久性が最も低いといえる。一方、実施例1のZn−Al合金めっき鉄筋が、重量の減少量が最も少なく、アルカリ成分に対する耐久性が最も高いといえる。
【0053】
めっき鉄筋に曲げ加工を行った場合のめっき被膜の割れや剥離に対する耐久性を確認するため、めっき鉄筋の曲げ試験を行った。曲げ試験は、JIS Z 2248(金属材料曲げ試験方法)に準拠した押曲げ法に従って行った。試験体の曲げ角度は180°とした。曲げ試験に用いる押金具としては、D16の鉄筋については、先端部の直径が、鉄筋の公称直径である15.9mmの6倍の95.4mmの押金具を使用した。D13の鉄筋については、先端部の直径が、鉄筋の公称直径である12.7mmの6倍の76.2mmの押金具を使用した。曲げ試験を行った試験体の評価は、目視による曲げ部の外観観察により行った。評価の結果は表3に示すとおりである。
【0054】
【表3】
【0055】
表3に示すように、比較例1では、曲げ部分の全体に0.1〜0.4mm幅の数本のひび割れが生じると共に、数箇所の剥離が生じた。実施例1では、ひび割れも剥離も生じなかった。
【0056】
めっき鉄筋を用いたコンクリート試験体について、腐食促進試験を行った。腐食促進試験は、社団法人日本コンクリート工学協会発行の「コンクリート構造物の腐食・防食に関する試験方法ならびに規準(案)」に準じた。すなわち、図7の縦断面図及び図8の横断面図に示す鉄筋コンクリート試験体1を、異型鋼棒を用いて作製した。この鉄筋コンクリート試験体1を、コンクリート打設の後、一定の養生を行い、湿潤過程と乾燥過程を繰り返す腐食推進環境に置いて腐食促進試験を行った。腐食促進試験の後、鉄筋をコンクリートから取り出し、腐食面積率を算出した。腐食面積率は、日本コンクリート工学協会発行の「コンクリート構造物の腐食・防食に関する試験方法ならびに規準(案)」に記載された方法により算出した。
【0057】
鉄筋コンクリート試験体1は、100mmの直径と200mmの高さの円筒形であり、2つの鉄筋2を20mmのかぶり厚d1でコンクリート3中に埋設した。鉄筋2の端部のかぶり厚d2は25mmである。鉄筋コンクリート試験体1の鉄筋2としては、実施例1のZn−Al合金めっき鉄筋と、比較例1乃至4のめっき鉄筋と、比較例5として、めっきを施さない普通鉄筋を用いた。鉄筋コンクリート試験体1のコンクリート3は、土木学会発行の「コンクリート標準示方書」に定められた普通鉄筋の発錆限界塩分量である1.2(kg/m)の塩化物を添加したコンクリートと、普通鉄筋の発錆限界塩分量の10倍の12(kg/m)の塩化物を添加したコンクリートを用いた。また、コンクリートが中性化した場合の腐食状態を確認するため、上記鉄筋2及びコンクリート3で作製した鉄筋コンクリート試験体1について、封緘養生を行ったものと、養生後に中性化処理を施したものとについて、腐食促進試験を行った。中性化処理は、促進中性化試験装置を用いて、温度が20±2℃、湿度が60±5%、炭酸ガス濃度が15.0±0.2%の環境に、コンクリート3の表面から約20mmの深さまで中性化が進行するまで鉄筋コンクリート試験体1を静置した。腐食促進試験は、温度が40±2℃及び湿度が95±5%の環境が3日間継続する湿潤過程と、温度が40±2℃及び湿度が25±5%の環境が4日間継続する乾燥過程とを1サイクルとし、この湿潤過程及び乾燥過程を45サイクル繰り返して鉄筋の腐食を促進した。腐食促進試験後の鉄筋の腐食面積率は、表4に示すとおりである。
【0058】
【表4】
【0059】
表4から分かるように、鉄筋コンクリート試験体に中性化処理を行った場合と、中性化処理を行わなかった場合のいずれも、実施例1のZn−Al合金めっき鉄筋の腐食面積率が最も小さい。特に、12kg/mの塩化物を含むコンクリート中において、実施例1のZn−Al合金めっき鉄筋の腐食面積率が他のいずれの鉄筋よりも少なく、よって、腐食環境に置かれる鉄筋コンクリートに用いた場合に、鉄筋コンクリートの耐久性を効果的に高めることができる。
【0060】
(実施例2)
D13及びD16の異型鋼棒の試験体を、組成及び浴温が異なる複数の条件の第1のめっき浴と第2のめっき浴に浸漬して得たZn−Al合金めっき鉄筋について、めっき付着量の測定と、表面状態の目視観察を行った。実施例2のめっき浴の組成及び浴温は、第1のめっき浴が、Alが0.001〜0.01重量%、Niが0.01〜0.1重量%、残部がZn及び不可避不純物からなり、浴温が420〜490℃の範囲内に設定した。また、第2のめっき浴が、Alが4〜20重量%、Niが0.01〜0.1重量%、残部がZn及び不可避不純物からなり、浴温が420〜490℃の範囲内に設定した。組成と浴温の全ての条件は、表5に示すとおりである。全ての条件の試験体に関するめっき付着量の測定結果と、表面状態の目視観察結果は、表5に示すとおりである。
【0061】
【表5】
【0062】
表5における評価は、表面状態の目視観察の結果であり、「良」はめっき表面の全面が均一かつ滑らかであり、「可」はめっき表面の一部にざらつきが存在する程度である。表5から明らかなように、本発明の範囲内の組成及び浴温の第1のめっき浴と第2のめっき浴を用いることにより、溶融Znめっきと同等の付着量が得られると共に、不めっきや剥離や割れの無いZn−Al合金めっき鉄筋が得られる。
【0063】
(比較例6)
D13及びD16の異型鋼棒の試験体を、組成と浴温が異なる複数の条件の第1のめっき浴と第2のめっき浴に浸漬して得たZn−Al合金めっき鉄筋について、めっき付着量の測定と、表面状態の目視観察を行った。比較例6のめっき浴の組成及び浴温は、第1又は第2のめっき浴に関して、Alの割合と、Niの割合と、浴温とのいずれかが、実施例2の数値範囲に包含されない値に設定した。組成と浴温の全ての条件は、表6に示すとおりである。全ての条件の試験体に関するめっき付着量の測定結果と、表面状態の目視観察結果は、表6に示すとおりである。
【0064】
【表6】
【0065】
表6から明らかなように、本発明の範囲外の組成及び浴温の第1のめっき浴と第2のめっき浴を用いた場合、めっき付着量の不足や、めっきの表面状態の不良が生じる。
【符号の説明】
【0066】
1 鉄筋コンクリート試験体
2 鉄筋
3 コンクリート
図7
図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6