(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961443
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】自走用アダプタ、及び杭施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 7/20 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
E02D7/20
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-111335(P2012-111335)
(22)【出願日】2012年5月15日
(65)【公開番号】特開2013-238030(P2013-238030A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】大野 正明
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−154484(JP,A)
【文献】
実開昭64−010541(JP,U)
【文献】
実開昭63−198632(JP,U)
【文献】
特開2000−319880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00〜 13/10
E02D 5/22〜 5/80
E21B 1/00〜 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭の圧入施工時に杭頭部に載置して用いられる自走用アダプタであって、
杭圧入機の連接する少なくとも2個のクランプにそれぞれ接続する、一体に形成された複数の係止部と、
前記複数の係止部の下部に一体に設けられ、杭頭部に接続する1個の掴持体と、を備えることを特徴とする自走用アダプタ。
【請求項2】
前記係止部の側面に隣接して設けられ、互いの自走用アダプタ同士を連結する連結部を備えることを特徴とする請求項1に記載の自走用アダプタ。
【請求項3】
地中に間隔を空けて連続的に埋設された複数の杭頭部に、請求項1に記載の自走用アダプタを前記掴持体でそれぞれ接続して載置し、前記自走用アダプタの少なくとも後方の前記係止部に前記クランプをそれぞれ接続して、前記自走用アダプタに前記杭圧入機を載置し、前記杭圧入機のチャック部に挿通した新たな杭を地中に圧入し、次いで前記チャック部に打ち下げ装置を挿通して前記新たな杭の頭部に接続し、前記杭圧入機により前記打ち下げ装置を介して前記新たな杭を所定の位置まで圧入するステップと、
前記打ち下げ装置を撤去して、新たな前記自走用アダプタを前記掴持体で前記新たな杭の頭部に接続して載置し、前記チャック部に前記打ち下げ装置を挿通して前記新たな自走用アダプタの後方の前記係止部に接続した後、前記クランプを開放して、前記杭圧入機を前記クランプのピッチ分前進させてから、前記チャック部に前記打ち下げ装置を再度挿通して前記自走用アダプタの前方の前記係止部に接続した後、前記クランプを開放して、前記杭圧入機を前記クランプのピッチ分前進させてから、前記自走用アダプタの前方の前記係止部から前記打ち下げ装置を撤去するステップと、を含み、
これらのステップを繰り返すことにより間隔を空けて杭を連続的に埋設することを特徴とする杭施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に間隔を空けて杭を連続的に埋設する際に用いる
自走用アダプタと、その
自走用アダプタを用いて行う杭施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭を連続して施工する場合、埋設した杭の頭部を掴み、それを反力として新たな杭を静荷重で埋設する杭圧入引抜機による方法が知られている。
しかしながら、抑止杭や基礎杭、連続壁の補強杭等のような杭を少なくとも杭径以上の間隔を空けて連続的に埋設する場合では、杭間にダミーの短尺杭を圧入して杭圧入機の通過後に引き抜くことで対処する必要があり、施工手間と材料費が嵩むといった問題があった。
これに対し、特許文献1において、杭の掴持体(クランプ部)を前後に二分割に配置し、その両者間を伸縮し既設杭の杭頭部を避けて他半部を進退させる進退手段を設け、この進退手段の短縮動作によって互いに隣接する1組の杭掴持体が1本の既設杭を同時に掴持可能に構成するようにした杭圧入機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−319880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の杭圧入機では、杭掴持体を前後二分割して、その両者間に進退手段を設けることから、機構が複雑で、機械の操作が煩雑であり、機械の軽量化も困難となって、既往の杭圧入機が使えない。
【0005】
本発明の課題は、抑止杭や基礎杭、連続壁の補強杭等のような杭を少なくとも杭径以上の間隔を空けて連続的に埋設する場合において、既往の杭圧入機が使え、ダミーの短尺杭を用いることなく、工期短縮、工費節減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
杭の圧入施工時に杭頭部に載置して用いられる自走用アダプタであって、
杭圧入機の連接する少なくとも2個のクランプにそれぞれ接続する
、一体に形成された複数の係止部と、
前記
複数の係止部の下部に
一体に設けられ、杭頭部に接続する
1個の掴持体と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、
請求項1に記載の自走用アダプタであって、
前記係止部の側面に隣接して設けられ、互いの
自走用アダプタ同士を連結する連結部を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、
地中に間隔を空けて連続的に埋設された複数の杭頭部に、請求項1に記載の
自走用アダプタを前記掴持体でそれぞれ接続して載置し、前記
自走用アダプタの少なくとも後方の前記係止部に前記クランプをそれぞれ接続して、前記
自走用アダプタに前記杭圧入機を載置し、前記杭圧入機のチャック部に挿通した新たな杭を地中に圧入し、次いで前記チャック部に打ち下げ装置を挿通して前記新たな杭の頭部に接続し、前記杭圧入機により前記打ち下げ装置を介して前記新たな杭を所定の位置まで圧入するステップと、
前記打ち下げ装置を撤去して、新たな前記
自走用アダプタを前記掴持体で前記新たな杭の頭部に接続して載置し、前記チャック部に前記打ち下げ装置を挿通して前記新たな
自走用アダプタの後方の前記係止部に接続した後、前記クランプを開放して、前記杭圧入機を前記クランプのピッチ分前進させてから、前記チャック部に前記打ち下げ装置を再度挿通して前記
自走用アダプタの前方の前記係止部に接続した後、前記クランプを開放して、前記杭圧入機を前記クランプのピッチ分前進させてから、前記
自走用アダプタの前方の前記係止部から前記打ち下げ装置を撤去するステップと、を含み、
これらのステップを繰り返すことにより間隔を空けて杭を連続的に埋設する杭施工方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、抑止杭や基礎杭、連続壁の補強杭等のような杭を少なくとも杭径以上の間隔を空けて連続的に埋設する場合、既往の杭圧入機が使えて、ダミーの短尺杭を圧入する必要がないので、工期短縮、工費節減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明を適用した
自走用アダプタの一実施形態の構成を示す側面図である。
【
図2】鋼管杭を所定の深さまで圧入するステップを示す図である。
【
図3】打ち下げ装置を鋼管杭に建て込むステップを示す図である。
【
図4】鋼管杭を計画高さまで圧入するステップを示す図である。
【
図5】打ち下げ装置を撤去して、
自走用アダプタを鋼管杭に建て込むステップを示す図である。
【
図6】
自走用アダプタの後方の係止部に打ち下げ装置を建て込むステップを示す図である。
【
図7】杭圧入機のクランプを開放して、杭圧入機を上昇させるステップを示す図である。
【
図8】杭圧入機をクランプ1ピッチ分前進させて、クランプを
自走用アダプタ係止部に接続するステップを示す図である。
【
図9】打ち下げ装置を前方の係止部に建て込み、杭圧入機を上昇させるステップを示す図である。
【
図10】クランプ1ピッチ前進させるステップを示す図である。
【
図11】杭圧入機を下降させ、クランプを前方の係止部に接続するステップを示す図である。
【
図12】打ち下げ装置を撤去して鋼管杭を建て込むステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態)
図1は本発明を適用した
自走用アダプタ1の一実施形態の構成を示すもので、2は前方の係止部、3は後方の係止部、4は前方の連結部、5は後方の連結部、6は掴持体である。
【0012】
自走用アダプタ1は、図示のように、円筒状の前方の係止部2及び後方の係止部3が一体で、前方の係止部2の側面に板状の前方の連結部4を備えて、後方の係止部3の側面にも板状の後方の連結部5を備え、後方の係止部3の下部に掴持体6を一体に備えている。
ここで、掴持体6は後方の係止部3の下部に設けられるとしたが、前方の係止部2の下部であってもよく、両者の中間であってもよい。
【0013】
図2から
図12は以上の
自走用アダプタ1を用いて行う杭施工手順を示すもので、Pは鋼管杭、10は杭圧入機である。
【0014】
図示のように、杭圧入機10は、既に地中に圧入された鋼管杭Pの上端部に接続された
自走用アダプタ1の前方の係止部2及び後方の係止部3を内側から拡径して把持するクランプ11をサドル12に3個連接して備える。サドル12に対して前後動自在なスライドベース13上に左右に旋回自在なリーダマスト14の前面にチャック15がシリンダユニット16により昇降自在に備えられている。
【0015】
自走用アダプタ1は、下部の掴持体6を、既に圧入された鋼管杭Pの上端部に嵌入して、その鋼管杭Pの内面に当接して押圧することで、鋼管杭Pに接続される。
【0016】
また、上部の前方の連結部4及び後方の連結部5には、
図1に示したように、上下方向に各々複数の貫通孔4a・5aがそれぞれ形成されている。なお、前方の連結部4は、隣接する
自走用アダプタ1の後方の連結部5を挟み込んで、互いの貫通孔4a・5aの少なくとも1組に図示しないピンを挿入して、強固に連結することが可能である。
【0017】
以上において、鋼管杭Pの頭部に載置した
自走用アダプタ1は、前方の連結部4及び後方の連結部5により連結しておくことで、杭圧入機10の反力基盤として安定する。
また、前方の係止部2及び後方の係止部3は、杭圧入機10のクランプ11が掴持可能な径で、杭圧入機10のクランプ11と同ピッチである。
なお、杭圧入機10のクランプ11の間隔は、鋼管杭Pの間隔に応じて予め調整しておく。
また、クランプ11を移動可能としておき、ボルトやピンで固定したり、油圧シリンダによる可変ピッチ式としてもよい。本実施例では、杭間隔を2等分する間隔としている。
【0019】
図2はステップ1を示すもので、図示のように、間隔を空けて既に地中に圧入された鋼管杭Pの上端部に掴持体6を嵌入して接続した隣接する2個の
自走用アダプタ1を前方の連結部4及び後方の連結部5で連結して、後方の
自走用アダプタ1の前方の係止部2及び後方の係止部3と前方の
自走用アダプタ1の後方の係止部3にクランプ11をそれぞれ接続して、2連の
自走用アダプタ1に杭圧入機10を載置する。
続いて、杭圧入機10のチャック15に新たな鋼管杭Pを挿通して所定の深さまで地中に圧入する。
【0020】
図3はステップ2を示すもので、図示のように、円筒状の打ち下げ装置20を鋼管杭Pに建て込む。
続いて、杭圧入機10により鋼管杭Pを圧入する。
【0021】
図4はステップ3を示すもので、図示のように、チャック15に打ち下げ装置20を挿通して、杭圧入機10により打ち下げ装置20を介して鋼管杭Pを所定の位置(計画高さ)まで圧入する。
【0022】
図5はステップ4を示すもので、打ち下げ装置20を撤去して、図示のように、新たな
自走用アダプタ1を鋼管杭Pに掴持体6で建て込む。
【0023】
図6はステップ5を示すもので、図示のように、鋼管杭Pに建て込まれた新たな
自走用アダプタ1の後方の係止部3に打ち下げ装置20を建て込む。この場合、新たな
自走用アダプタ1の後方の連結部5は後方の
自走用アダプタ1の前方の連結部4に連結されている。
【0024】
図7はステップ6を示すもので、杭圧入機10のクランプ11を開放して、シリンダユニット16の駆動により、図示のように、鋼管杭Pに建て込んだ新たな
自走用アダプタ1の後方の係止部3に建て込まれた打ち下げ装置20に固定したチャック15に対し杭圧入機10を上昇させる。
【0025】
図8はステップ7を示すもので、図示のように、サドル12をスライドベース13に対し前進させて、杭圧入機10をクランプ11の1ピッチ分前進させる。
続いて、杭圧入機10を下降して、クランプ11を後方の
自走用アダプタ1の前方の係止部2と中間の
自走用アダプタ1の前方の係止部2及び後方の係止部3にそれぞれ接続し、前方の
自走用アダプタ1の後方の係止部3から打ち下げ装置20を撤去する。
【0026】
図9はステップ8を示すもので、図示のように、前方の
自走用アダプタ1の前方の係止部2に打ち下げ装置20を建て込み、クランプ11を開放して、杭圧入機10を上昇させる。
【0027】
図10はステップ9を示すもので、図示のように、杭圧入機10をクランプ11の1ピッチ前進させる。
【0028】
図11はステップ10を示すもので、図示のように、杭圧入機10を下降させる。
続いて、クランプ11を中間の
自走用アダプタ1の前方の係止部2及び後方の係止部3と前方の
自走用アダプタ1の後方の係止部3とにそれぞれ接続する。
【0029】
図12はステップ11を示すもので、図示のように、打ち下げ装置20を撤去する。
このように、クランプ11の1ピッチ分の前進を繰り返し、杭間隔距離分の移動を行う
。
続いて、新たな鋼管杭Pをチャック15に挿通して建て込み、前述したステップ1に戻る。
【0030】
なお、以上において、杭圧入機10に干渉しない
自走用アダプタ1は撤去して随時転用する。
【0031】
以上、実施形態の
自走用アダプタ1によれば、杭圧入機10の連接する3個のクランプ11にそれぞれ接続する前方の係止部2及び後方の係止部3と、その両係止部2・3の側面に隣接して設けられ、互いのアダプタ同士を連結する連結部4・5と、後方の係止部3の下部に設けられ、杭頭部に接続する掴持体6と、を備えているので、前述したとおり、間隔を空けて鋼管杭Pを圧入する場合(飛び杭の場合)でも、ダミーの短尺杭を圧入することなく、杭圧入機10の自走が容易に行える。
【0032】
従って、抑止杭や基礎杭、連続壁の補強杭等のような杭を少なくとも杭径以上の間隔を空けて連続的に埋設する場合において、工期短縮、工費節減を達成できる。
【0033】
(変形例)
以上の実施形態においては、3個のクランプと2個の係止部としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも2個のクランプと複数の係止部であればよい。
また、クランプや係止部、連結部及び掴持体の構成等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
P 鋼管杭
1
自走用アダプタ
2 前方の係止部
3 後方の係止部
4 前方の連結部
5 後方の連結部
6 掴持体
10 杭圧入機
11 クランプ
12 サドル
13 スライドベース
14 リーダマスト
15 チャック
16 シリンダユニット
20 打ち下げ装置