【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステアリング装置において、テレスコ機構とチルト機構とを個別に働かせるには、特許文献1見られるように、それぞれの操作手段であるテレスコ軸とチルト軸とを別体で構成することになる。ここで、従来のように、テレスコ軸とチルト軸とを兼用の操作軸にしていた場合、前記操作軸をステアリングコラム又は周辺部材にしっかりと支持させれば済んでいたところ、テレスコ軸とチルト軸とを別体にすると、両者が離れてステアリングコラム又は周辺部材(例えばチルト軸を支持するブラケット)に支持されることから、例えばテレスコ軸に外力が加わると、チルト軸を中心とした曲げ負荷が前記チルト軸や周辺部材に加わり、変形させる問題が発生する。
【0007】
この点、特許文献1が開示するステアリング装置は、テレスコ軸とチルト軸とが非常に接近しているものの、やはり上下二段に分かれて位置していることから、上述のようなテレスコ軸又はチルト軸や周辺部材の変形と言った問題を解決できてないと考えられる。また、単純にテレスコ軸とチルト軸とを分けた構成であると、テレスコ軸は調整範囲より長い長孔を設ける観点から、またチルト軸は揺動軸からできるだけ離れた位置に設ける観点からそれぞれ位置決定されるため、どうしても両者が位置ズレしやすくなり、テレスコ軸又はチルト軸や周辺部材の変形を招く虞が高くなる。
【0008】
このほか、特許文献1が開示するステアリング装置に限ると、ステアリングコラムの保持側操舵軸の軸方向に略直交させて上下方向に移動可能かつ前記保持側操舵軸を押圧可能な押圧片を保持筒に貫設させた専用のステアリングコラムが必要になることから、製造コストが高くなりやすく、また仕様変更に対応しにくい問題がある、と考えられる。これらから、ステアリングコラムのテレスコ機構とチルト機構とを備えたステアリング装置において、各機構を個別に操作できるようにテレスコ軸とチルト軸とを分けるに際して、汎用のステアリングコラムを用い、テレスコ軸又はチルト軸の一方に加わる外力により、他方のテレスコ軸又はチルト軸や周辺部材が変形しないステアリング装置を開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
検討の結果開発したものが、ステアリングコラムの
保持側操舵軸は、固定側操舵軸に進退自在に嵌合させ、前記固定側操舵軸は、揺動ブラケットに自転自在に支持させ、前記揺動ブラケットは、車体に固定される支持ブラケットに前後方向の垂直面内で揺動自在に軸着し、揺動軸を中心とする円弧状長孔を支持ブラケットから後方に延びる車体側摩擦板に設け、前記固定側操舵軸と平行に左右のコラム側揺動摩擦板を突出させ、前記左右のコラム側揺動摩擦板は、左右方向の同軸線から覗く雌ネジが刻設された基準ブロックを挟み、左右のコラム側進退摩擦板は、前記固定側操舵軸と平行に延びる直線状長孔を有し、ステアリングコラムの保持側操舵軸に外嵌した保持筒に固着され、雄ネジであるテレスコ軸は、右のコラム側進退摩擦板の直線状長孔に通して右のコラム側揺動摩擦板から覗く基準ブロックの雌ネジに螺合し、前記テレスコ軸に設けたテレスコ用押圧部と基準ブロックとは、前記右のコラム側揺動摩擦板及び右のコラム側進退摩擦板を一体に挟み、雄ネジであるチルト軸は、車体側摩擦板の円弧状長孔に通し、前記車体側摩擦板と左のコラム側進退摩擦板との間に介装して左のコラム側進退摩擦板の直線状長孔に通したチルト用中間ブロックに貫通させて左のコラム側揺動摩擦板から覗く基準ブロックの雌ネジに螺合し、前記チルト軸に設けたチルト用押圧部とチルト用中間ブロックとは、車体側摩擦板を挟み、前記チルト用中間ブロックと基準ブロックとにより左のコラム側揺動摩擦板を挟み、前記テレスコ軸及びチルト軸は、軸芯を一致させたステアリング装置である。
【0010】
本発明に言う前後左右は、説明の便宜上のもので、自動車の前後左右に合わせた方向を意味する。これから、上記ステアリング装置は、右方にテレスコ軸が突出し、左方にチルト軸が突出した構成となる。ここで、本発明のステアリング装置は、テレスコ軸が左方に突出し、チルト軸が右方に突出した構成、すなわち上記ステアリング装置が運転席側から見て左右反転した構成も含む。揺動ブラケットが「前後方向の垂直面内で揺動自在に」支持ブラケットに軸着されるとは、揺動ブラケットの揺動する軌道が前後方向を向いた垂直面に含まれることを意味する。また、車体側摩擦板が支持ブラケットから「後方」に延びるとは、平面視において車体側摩擦板の延びる方向が後方であれば足り、揺動するステアリングコラムの特定の角度に一致して、垂直方向に若干傾斜しても構わない。
【0011】
揺動ブラケット
が固定側操舵軸に対して進退自在に保持側操舵軸を嵌合させたステアリングコラムの前記固定側操舵軸を自転自在に支持す
るとは、固定側操舵軸が揺動ブラケットに対して自転自在であり、かつ揺動ブラケットに従った固定側操舵軸の揺動する軌道が前後方向を向いた垂直面に含まれることを意味する。固定側操舵軸は、例えば揺動ブラケットを自転自在に貫通して支持されるが、固定側操舵軸に外嵌した固定筒を前記揺動ブラケットに支持させてもよい。この場合、保持側操舵軸に外嵌した保持筒は、前記固定筒に外嵌する又は前記固定筒に外嵌され、外嵌される側(例えば固定筒)を内筒、外嵌する側(例えば保持筒)を外筒と呼ぶ。
【0012】
本発明のステアリング装置は、左右のコラム側揺動摩擦板に挟まれた基準ブロックに対して右側からテレスコ軸を螺着し、左側からチルト軸を螺着することにより、テレスコ軸及びチルト軸の軸芯を一致させ、テレスコ軸又はチルト軸の一方に加わる外力により、他方のテレスコ軸又はチルト軸や周辺部材を変形させる虞をなくしている。テレスコ軸及びチルト軸は、それぞれ基準ブロックに片持ち支持された格好になる。ここで、基準ブロックは、揺動ブラケットから延びる左右のコラム側揺動摩擦板に挟ま
れることにより、揺動ブラケットに対して強固に位置固定されるため、テレスコ軸又はチルト軸に外力が加わっても位置ズレする虞がない。
【0013】
テレスコ機構は、左右のコラム側揺動摩擦板をテレスコ軸で締付及び解放する構成である。ステアリングコラムの保持側操舵軸は、テレスコ軸を基準ブロックに締め込んでいくと、揺動ブラケットを介してステアリングコラムの固定側操舵軸に連動する右のコラム側揺動摩擦板と保持側操舵軸に固着した右のコラム側進退摩擦板とを、前記基準ブロックとテレスコ用押圧部とにより挟持し、右のコラム側揺動摩擦板に右のコラム側進退摩擦板を押し付けて変位不能にして、固定側操舵軸に対して伸縮できないようにする。
【0014】
固定側操舵軸に対して伸縮できなくしたステアリングコラムの保持側操舵軸は、テレスコ軸を基準ブロックから緩めると、前記右のコラム側揺動摩擦板に対して右のコラム側進退摩擦板を摺動自在にし、固定側操舵軸に対して伸縮できるようになる。保持側操舵軸の伸縮範囲は、テレスコ軸を通した右のコラム側進退摩擦板の直線状長孔の範囲である。基準ブロックは、内部に雌ネジを刻設した筒体である。テレスコ用押圧部は、テレスコ軸を自転操作するレバーやハンドル又はノブのほか、テレスコ軸に設けられた押圧ブロック等を例示できる。
【0015】
チルト機構は、車体側摩擦板、チルト用中間ブロック及び左のコラム側揺動摩擦板を一体にチルト軸で締付及び解放する構成である。ステアリングコラムの保持側操舵軸は、チルト軸を基準ブロックに締め込んでいくと、揺動ブラケットを介してステアリングコラムの固定側操舵軸に連動する左のコラム側揺動摩擦板、チルト用中間ブロック、そして車体側摩擦板を、前記基準ブロックとチルト用押圧部とにより一体に挟持し、車体側摩擦板に対して左のコラム側揺動摩擦板及び揺動ブラケットを変位不能にして、揺動できないようにする。揺動できなくしたステアリングコラムの保持側操舵軸は、チルト軸を基準ブロックから緩めると、車体側摩擦板に対して揺動ブラケットを摺動自在にして、姿勢を調整できるようにする。
【0016】
ステアリングコラムの揺動範囲は、チルト軸を通した車体側摩擦板の円弧状長孔の範囲である。チルト用中間ブロックは、チルト軸を貫通させる筒体で、左のコラム側移動摩擦板の直線状長孔に通すことにより、チルト軸の締付力を車体側摩擦板から左のコラム側揺動摩擦板に伝達させる。チルト用押圧部は、上記テレスコ軸と同様で、チルト軸を自転操作するレバーやハンドル又はノブのほか、テレスコ軸に設けられた押圧ブロック等を例示できる。
【0017】
左右のコラム側揺動摩擦板やコラム側進退摩擦板は、それぞれ独立した板材で構成してもよいが、各板の強度又は剛性を確保する観点から、一体のチャンネル材を利用して構成するとよい。すなわち、左右のコラム側揺動摩擦板は、ステアリングコラムの固定側操舵軸と平行に延びるチャンネル構造の基準ブラケットが有する左右一対のフランジであり、前記基準ブラケット
は、左右のコラム側進退摩擦板により挟む。また、左右のコラム側進退摩擦板は、ステアリングコラムの固定側操舵軸と平行に延びるチャンネル構造の移動ブラケットが有する左右一対のフランジであり、前記移動ブラケット
は、左右のコラム側揺動摩擦板に被せる。
【0018】
テレスコ軸は、テレスコ用外ブロックに貫通させてから右のコラム側進退摩擦板の直線状長孔に通して右のコラム側揺動摩擦板から覗く基準ブロックの雌ネジに螺合
され、テレスコ用押圧部に押されるテレスコ用外ブロックと基準ブロックと
は、前記右のコラム側揺動摩擦板及び右のコラム側進退摩擦板を一体に挟む構成により、テレスコ用外ブロックの長さにより右方の突出量を大きくできる。同様に、チルト軸は、チルト用外ブロックに貫通させてから車体側摩擦板の円弧状長孔に通し
て前記車体側摩擦板と左のコラム側進退摩擦板との間に介装され、直線状長孔に通したチルト用中間ブロックに貫通させて左のコラム側揺動摩擦板から覗く基準ブロックの雌ネジに螺
合し、チルト用押圧部に押されるチルト用外ブロックとテレスコ用中間ブロックと
は、車体側摩擦板を挟み、前記テレスコ用中間ブロックと基準ブロックとにより左のコラム側揺動摩擦板を挟む構成により、チルト用外ブロックの長さにより左方の突出量を大きくできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のステアリング装置は、テレスコ機構とチルト機構とを個別に働かせるため、テレスコ軸及びチルト軸を独立させながら、左右のコラム側揺動摩擦板に挟ま
れた基準ブロックの点対称な位置関係にある雌ネジにテレスコ軸及びチルト軸を螺着させる構成にしたことにより前記テレスコ軸及びチルト軸の軸芯を一致させて、テレスコ軸又はチルト軸の一方に加わる外力により、他方のテレスコ軸又はチルト軸や周辺部材を変形させる虞をなくす。これにより、テレスコ軸又はチルト軸や周辺部材(例えば左右のコラム側揺動摩擦板やコラム側進退摩擦板等)の変形を招く虞がなくなる効果を得る。また、本発明のステアリング装置は、固定側操舵軸に対して進退自在に保持側操舵軸を嵌合させた汎用のステアリングコラムにより構成できる利点を有する。
【0020】
左右のコラム側揺動摩擦板をチャンネル構造の基準ブラケットのフランジで構成すると、前記コラム側揺動摩擦板の強度又は剛性が向上させて変形を抑制又は防止できるほか、前記コラム側揺動摩擦板が挟む基準ブロックを安定して保持し、テレスコ軸又はチルト軸の一方に加わる外力により対抗できるようにして、他方のテレスコ軸又はチルト軸や周辺部材を変形させる虞をより低減できる。同様に、左右のコラム側進退摩擦板をチャンネル構造の移動ブラケットのフランジで構成すると、前記コラム側進退摩擦板の強度又は剛性が向上させて変形を抑制又は防止できるほか、前記基準ブラケットを補して、基準ブラケットがテレスコ軸又はチルト軸の一方に加わる外力により対抗しやすくして、他方のテレスコ軸又はチルト軸や周辺部材を変形させる虞をより低減できる。