特許第5961450号(P5961450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961450
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】フィルタ及びフィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/02 20060101AFI20160719BHJP
   B01D 46/52 20060101ALI20160719BHJP
   G21C 13/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G21F9/02 551E
   B01D46/52 A
   G21C13/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-122420(P2012-122420)
(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-246157(P2013-246157A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232760
【氏名又は名称】日本無機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096806
【弁理士】
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正昭
(72)【発明者】
【氏名】今野 幸浩
【審査官】 後藤 孝平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−070642(JP,A)
【文献】 米国特許第04372853(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/02
B01D 46/52
G21C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグザグ状に折り畳んだろ材の折畳空間を間隔保持してパック状にしたフィルタパックの一方の端面部と他方の端面部をシール材によりシールした成形物と、前記成形物を固定し取付対象物に対して取り付けられる木製の多角形の外枠を有するフィルタであって、
前記取付対象物に対面される前記外枠の端面部には、ガスケットが配置され、
前記成形物の前記ガスケット側の外縁部から前記外枠の内面に渡って前記成形物を前記外枠に対して固定するエアリーク防止用のシール材が配置され、少なくとも前記多角形の外枠の角部では、前記成形物の前記ガスケット側の前記外縁部から、前記外枠の前記内面を経て前記ガスケットにまで渡って、前記エアリーク防止用のシール材が延長して配置されていることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記外枠が四角形であり、前記エアリーク防止用のシール材は、前記外枠の前記四つの角部を含む前記外枠の四方の全部に沿って前記成形物の前記ガスケット側の前記四方の外縁部から、前記外枠の前記四方の内面を経て前記ガスケットにまで渡って、前記シール材が延長して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記成形物の前記ガスケット側とは反対面を、前記外枠に対して固定して補強する補強シール材が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記成形物の四方の側面部と、前記外枠の内面の間には、前記エアリーク防止用のシール材が前記四方の側面部と前記外枠の内面との間に侵入するのを阻止するシール材流入阻止部材が配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項5】
ジグザグ状に折り畳んだろ材の折畳空間を間隔保持してパック状にしたフィルタパックの一方の端面部と他方の端面部をシール材によりシールした成形物と、前記成形物を固定し取付対象物に対して取り付けられる木製の多角形の外枠を有するフィルタの製造方法であって、
前記取付対象物に対面される前記外枠の端面部にガスケットを配置し、
前記成形物の前記ガスケット側の外縁部から前記外枠の内面に渡って前記成形物を前記外枠に対して固定するエアリーク防止用のシール材を配置し、少なくとも前記多角形の外枠の角部では、前記成形物の前記ガスケット側の外縁部から、前記外枠の前記内面を経て前記ガスケットにまで渡って、前記エアリーク防止用のシール材を延長して配置することを特徴とするフィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建屋及びプラント・装置等の排気系や換気空調系統等に使用されるフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子力施設の給排気系や換気空調系統等には、HEPAフィルタが、放射性エアロゾルを除去する目的で使用されている。放射性エアロゾルとは、空気中に浮揚する固体または液体の微粒子であって、放射性核種を含むものである。使用済のフィルタは、放射性エアロゾルにより汚染されているので、使用済のフィルタは使用後に、装置側から取り外して保管する必要がある。
しかし、年々新たな保管場所の確保がさらに必要になっている状況から、保管場所を効率的に使用するために、使用後のフィルタの全体を焼却処理して焼却物を減容するか、フィルタを分解して部分的に焼却処理してできるだけ焼却物を減容した後に、焼却物は例えばドラム缶に入れて保管している。
原子力施設以外で使用されたフィルタはそのまま埋め立て処分されるケースが多く同様に分解できれば分別処理も可能となる。
【0003】
このように、焼却物を可能な限り減容するためには、フィルタ全体を焼却処理することが望ましいが、フィルタ全体を焼却処理できる現行使用されているHEPAフィルタは、HEPAグレードの性能を有しており、原子力施設の排気系や換気空調系統等には使用されているが、JIS(日本工業規格)規格に準拠したものではない。
そこで、JIS規格(新JIS規格)に準拠した木製の外枠を備えたフィルタ(外枠とフィルタパックの端面部全面をシール材で固着している)を使用すれば、使用後はフィルタを木製の外枠とフィルタパックとシール材に分けて、木製の外枠は焼却処理をすることができる。しかし、分解後に木製の外枠にシール材が残る可能性があり、このまま焼却すると有害なガスが出る恐れがある。このため、木製の外枠からシール材を手作業で剥がした後に、木製の外枠を焼却した灰と、フィルタパック材及びシール材は、そのままで別々に保管している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−232129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
使用後に分解し易い構造として、シール材を減らすことで剥がしやすくする構造が考えられる。
しかし、通常上下枠と側枠が分解できる枠構造のものを使用するが、シール材の量が少ないために接合部からエアリークが生じる可能性が高い。
一方の特許文献1に開示されているフィルタは、一体枠構造であるためエアリークは少ないが、分解しにくい構造である。
一方分解しやすいフィルタとして、通常上下枠と側枠が分解できる枠構造を使用するが、接合部からのエアリークが生じる。
そこで、本発明は、上記課題を解消するために、JIS規格を保持しながら、使用後に分解が容易であり、完全にエアリークを防止することができるフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフィルタは、ジグザグ状に折り畳んだろ材の折畳空間を間隔保持してパック状にしたフィルタパックの一方の端面部と他方の端面部をシール材によりシールした成形物と、前記成形物を固定し取付対象物に対して取り付けられる木製の多角形の外枠を有するフィルタであって、前記取付対象物に対面される前記外枠の端面部には、ガスケットが配置され、前記成形物の前記ガスケット側の外縁部から前記外枠の内面に渡って前記成形物を前記外枠に対して固定するエアリーク防止用のシール材が配置され、少なくとも前記多角形の外枠の角部では、前記成形物の前記ガスケット側の前記外縁部から、前記外枠の前記内面を経て前記ガスケットにまで渡って、前記エアリーク防止用のシール材が延長して配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、エアリーク防止用のシール材は、成形物を外枠に固定でき、少なくとも外枠の角部では、成形物のガスケット配置側の外縁部から、外枠の内面を経てガスケットにまで渡って、固定するエアリーク防止用のシール材が延長して配置されている。このため、エアリーク防止用のシール材は、外枠の内面と成形物との間の隙間を、必要最小限のエアリーク防止用のシール材の量で塞いで完全にシールすることができる。たとえ外枠の角部に継ぎ目が有っても、エアリーク防止用のシール材が外枠の内面を経てガスケットにまで渡って形成されているで、空気をフィルタの成形物に取り入れても空気が隙間を通ることが無く、フィルタにおけるエアリークを完全に防止できる。このように、JIS規格を保持しながら、使用後に分解が容易であり、完全にエアリークを防止することができる。
【0007】
好ましくは、前記外枠が四角形であり、前記エアリーク防止用のシール材は、前記外枠の前記四つの角部を含む前記外枠の四方の全部に沿って前記成形物の前記ガスケット側の前記四方の外縁部から、前記外枠の前記四方の内面を経て前記ガスケットにまで渡って、前記シール材が延長して配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、エアリーク防止用のシール材は、外枠の四つの角部を含む外枠の四方の全部に沿って成形物の四方の外縁部から、外枠の四方の内面を経てガスケットにまで渡って、エアリーク防止用のシール材が延長して配置されているので、成形物は外枠に対してより強固に固定し、シールすることができ、たとえ外枠の四つの角部に継ぎ目が有っても、エアリーク防止用のシール材が外枠の四方の内面を経てガスケットにまで渡って形成されているので、角部の継ぎ目を塞ぐことができる。
【0008】
好ましくは、前記成形物の前記ガスケット側とは反対面を、前記外枠に対して固定して補強する補強シール材が配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、成形物は外枠に対して、補強シール材を用いてさらに強固に固定できる。
【0009】
好ましくは、前記成形物の四方の側面部と、前記外枠の内面の間には、前記エアリーク防止用のシール材が前記四方の側面部と前記外枠の内面との間に侵入するのを阻止するシール材流入阻止部材が配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、シール材流入阻止部材は、エアリーク防止用のシール材が成形物の四方の側面部と外枠の内面部の隙間に奥深く流入してしまうことを防ぐことができる。このため、外枠と成形物とを固定する強度を確保しつつ、必要量を超えたエアリーク防止用のシール材が付着してしまうことを防いで、エアリーク防止用のシール材の注入量を減らすことができる。従って、エアリーク防止用のシール材は適切な量を配置でき、使用済みのフィルタを外枠と成形物に分解する際に、外枠と成形物との分解作業が容易になる。
【0010】
本発明のフィルタの製造方法は、ジグザグ状に折り畳んだろ材の折畳空間を間隔保持してパック状にしたフィルタパックの一方の端面部と他方の端面部をシール材によりシールした成形物と、前記成形物を固定し取付対象物に対して取り付けられる木製の多角形の外枠を有するフィルタの製造方法であって、前記取付対象物に対面される前記外枠の端面部にガスケットを配置し、前記成形物の前記ガスケット側の外縁部から前記外枠の内面に渡って前記成形物を前記外枠に対して固定するエアリーク防止用のシール材を配置し、少なくとも前記多角形の外枠の角部では、前記成形物の前記ガスケット側の外縁部から、前記外枠の前記内面を経て前記ガスケットにまで渡って、前記固定用のシール材を延長して配置することを特徴とする。
上記構成によれば、エアリーク防止用のシール材は、成形物を外枠に固定でき、少なくとも外枠の四つの角部では、成形物のガスケット配置側の四方の外縁部から、外枠の四方の内面を経てガスケットにまで渡って、エアリーク防止用のシール材が延長して配置されている。このため、固定用のシール材は、外枠の内面と成形物との間の隙間を、必要最小限のエアリーク防止用のシール材の量で塞いで完全にシールすることができる。空気をフィルタの成形物に取り入れても空気が隙間を通ることが無く、フィルタにおけるエアリークを完全に防止できる。このように、JIS規格を保持しながら、使用後に分解が容易であり、完全にエアリークを防止することができるフィルタを提供できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、JIS規格を保持しながら、使用後に分解が容易であり、完全にエアリークを防止することができるフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(A)は、本発明のフィルタの好ましい第1実施形態を示す斜視図であり、図1(B)は、図1に示すフィルタを、例えば原子力施設の排気系に取り付けた状態を示す側面図である。
図2図2(A)は、フィルタパックの一方の端面部と他方の端面部をシール材によりシールして固定した状態を示し、図2(B)は、フィルタパックとシール材からなる成形物を外枠の枠板により囲もうとする状態を示す図である。
図3図3(A)は、外枠の枠板をネジにより固定しようとする状態を示し、図3(B)は、外枠の枠板の端面部に、ガスケットが配置された状態を示す図である。
図4】外枠と成形物の隙間を全周囲に渡って塞ぐためのエアリーク防止用のシール材が配置された状態を示す図である。
図5図5(A)は、図4に示すフィルタのC−C線における断面図である。図5(B)は、図4に示すフィルタのD−D線における断面図である。
図6】本発明の第1実施形態のフィルタの裏側を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態のフィルタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
(第1実施形態)
図1(A)は、本発明のフィルタの好ましい第1実施形態を示す斜視図であり、図1(B)は、図1に示すフィルタを、例えば原子力施設の排気系、換気空調系統等の取付対象物に取り付けた状態を示す側面図である。
図1(A)と図1(B)に示すフィルタ1は、例えば排気中の放射性エアロゾルを除去する目的で、原子力施設等の排気系、換気空調系統等に使用される高性能エアフィルタであり、このフィルタ1の構造は、火災防護上難燃性を要求されているJIS規格のZ4812の「放射性エアロゾル用高性能エアフィルタ」に準拠している。
【0014】
図1(A)と図1(B)に示すフィルタ1は、外枠2と、この外枠2内に固定された成形物を有している。外枠2は、長方形の枠板2A,2B,2C,2Dを有している矩形型の枠体である。上側の枠板2Aの両端部は、側方の枠板2C,2Dの一方の端面に対して、ネジ4によりそれぞれ固定され、下側の枠板2Bの両端部は、側方の枠板2C,2Dの他方の端面に対して、ネジ4によりそれぞれ固定されている。外枠2は、例えば断面正方形あるいは断面長方形の空間を形成している。この外枠2内には、成形物が収容された状態で固定されている。図2(A)には、多角形のフィルタパック3の一方の端面部6と他方の端面部7をシール材5によりシールして固定した状態を示している。図2(A)に示すように、この成形物とは、フィルタパック3の一方の端面部6と他方の端面部7をシール材5によりシールして固定して成るものである。
【0015】
図1(A)と図1(B)に示すように、外枠2の枠板2A,2B,2C,2Dは、難燃性の木質板、好ましくは難燃性の合板であり、火災によっては著しい燃焼をせず、加熱源を除去した場合にはその燃焼部が拡がらない性質を有している。外枠2の枠板2A,2B,2C,2Dの端面部(前側端面部)10には、それぞれガスケット11が配置されている。このガスケット11としては、例えばクロロプレンゴム等の発泡樹脂材料を用いることができる。ガスケット11はパッキンともいう。枠板2A,2B,2C,2Dの端面部10は、図1(B)に示す取付対象物である排気系、換気空調系統50に対面する部分である。図1(B)に示すように、外枠2の枠板2A,2B,2C,2Dの端面部10は、このガスケット11を介して、取付対象部である排気系、換気空調系統50に対して着脱可能に取り付けられている。排気系、換気空調系統50の開口部51は、成形物の空気取入側AIに対応している。
【0016】
図1(B)に示すように、排気系、換気空調系統50を流れる放射性エアロゾルを含む排気が、フィルタ1に取り入れられる方向を矢印Hで示している。フィルタ1の一方側は、成形物の空気取入側AIであり、フィルタ1の反対面側は、フィルタパック3の空気の出口側AOである。図1(A)に示すように、放射性エアロゾルを含む排気は、矢印Hで示すように、成形物の空気取入側AIから入って、成形物のろ材3Aにより放射性エアロゾルを除去した後に、排気は成形物の空気の出口側AOから排出されるようになっている。
図1(A)に示すように、エアリーク防止用のシール材20が、外枠2の枠板2Aと成形物の隙間と、枠板2Bと成形物の隙間と、枠板2Cと成形物の隙間と、そして枠板2Dと成形物の隙間を完全に塞ぐために、外枠2の四方に沿ってその四方の全部に渡って設けられている。このエアリーク防止用のシール材20は、例えば難燃性のポリウレタン樹脂である。
【0017】
図1(A)に示す成形物は、ジグザグ状に折り畳んだろ材の折畳空間を間隔保持してパック状にしたものである。この成形物のフィルタパック3は、例えばHEPAフィルタと呼ばれる高性能フィルタであり、例えばエンボスタイプのフィルタ、ノンセパレータタイプのフィルタ、あるいはセパレータタイプのフィルタを採用することができる。
エンボスタイプのフィルタは、セパレータを用いるのに代えてシート状のろ材に対してエンボスを形成することで、折り曲げたろ材の間を開けている。ノンセパレータタイプのフィルタは、ろ材を折り曲げた状態でリボン状のホットメルト接着材を用いて固定している。
【0018】
本発明の実施形態では、図1(A)に示す成形物のフィルタパック3としては、一例としてセパレータタイプのフィルタを採用している。セパレータタイプのフィルタでは、ろ材3Aが深いひだ状に折り畳まれており、例えば波付け加工したアルミニウム製のセパレータ3Bがそのろ材3Aの中間位置に組み込まれている。ろ材3Aは、放射性エアロゾルを除去するが、このろ材3Aとしては、例えば合成繊維材や、ガラス繊維材、あるいはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフィルムを不織布で挟んだものを使用することができる。
【0019】
次に、図2から図6を参照して、上述した本発明の第1実施形態のフィルタ1を製造する製造方法を説明する。
図2(A)は、多角形のフィルタパック3の一方の端面部と他方の端面部をシール材5によりシールして固定した状態を示し、図2(B)は、成形物を外枠2の枠板2A,2B,2C,2Dにより囲もうとする状態を示す図である。
成形物の外形は多角形であり、六角形や八角形、四角形であれば長方形や正方形が採用できるが、本実施形態における成形物の外形は、四角形であり、特に扱いが容易で形成し易い正方形を採用している。このため、フィルタ枠も正方形であり、外枠はフィルタ枠を囲む正方形でなる構造である。
図3(A)は、正方形の外枠2の枠板2A,2B,2C,2Dをネジ4により固定しようとする状態を示し、図3(B)は、外枠2の枠板2A,2B,2C,2Dの端面部に、ガスケットが配置された状態を示す図である。
【0020】
図2(A)に示すように、フィルタパック3の一方の端面部6と他方の端面部7には、それぞれに液状のシール材5を付着される。このシール材5は常温下で固化される。例えば、液状のシール材5が収容されたトレーを用意して、このトレー内に、フィルタパック3の一方の端面部6を浸漬する。これにより、フィルタパック3の一方の端面部6にはシール材5が付着され、その後常温下で固化される。同様にして、フィルタパック3の他方の端面部7にもシール材5が付着され、その後常温下で固化される。これにより、上下のシール材5,5はフィルタパック3の一方の端面部6と他方の端面部7の形状を保持しており、フィルタパック3はジグザグ状に折り畳んだろ材3Aの折畳空間を間隔保持した状態で保持でき、かつ、フィルタパック3の端面部6,7を通過する空気の流れを防ぐことができる。このシール材5としては、例えば常温硬化型の2液混合型の難燃ポリウレタン樹脂を用いている。
このようにしてフィルタパック3の一方の端面部6と他方の端面部7には、それぞれにシール材5が固化されて、フィルタパック3の形状が保持された後、図2(B)に示すように、フィルタパック3の一方の端面部6のシール材5と他方の端面部7のシール材5には、外枠2の上側の枠板2Aと下側の枠板2Bをそれぞれ配置し、成形物の左側の側面部8と右側の側面部9には、外枠2の左側の枠板2Cと右側の枠板2Dをそれぞれ配置する。
【0021】
次に、図3(A)に示すように、外枠2の枠板2Aの両端部は、枠板2C,2Dの一方の端面に対して、ネジ4により固定され、枠板2Bの両端部は、枠板2C,2Dの他方の端面に対して、ネジ4により固定される。これにより、外枠2の枠板2A,2B,2C,2Dの形状は複数本の捩子により保持され、断面正方形の空間あるいは断面長方形の空間を形成でき、この外枠2の空間には、成形物が収容して保持されている。
その後、図3(B)に示すように、外枠2の枠板2A,2B,2C,2Dの各端面部10には、ガスケット11が配置される。
【0022】
図4は、外枠2と成形物の隙間を塞いで固定するためのエアリーク防止用のシール材20が、フィルタ1の外枠2の四方の全部に渡って配置された状態を示す図である。図5(A)は、図4に示すフィルタ1のC−C線における断面図である。図5(B)は、図4に示すフィルタ1のD−D線における断面図である。
図4では、フィルタ1と、このフィルタ1の四つの角部(隅部とう言う)P1、P2、P3、P4のシール構造を拡大斜視図で示している。角部P1は左下の角部であり、角部P2は左上の角部であり、角部P3は右上の角部であり、そして角部P4は右下の角部である。すでに外枠2の枠板2A,2B,2C,2Dの各端面部10には、ガスケット11が形成されている。
図4に示すように、エアリーク防止用のシール材20は、成形物の空気の取入AI側において、外枠2と成形物の間の隙間をシールしている。しかも、エアリーク防止用のシール材20は、外枠2内において成形物を動かないように成形物を外枠2に対して固定するために、四方に盛り付けるようにして配置されている。このエアリーク防止用のシール材20は、例えば難燃性のポリウレタン樹脂である。
【0023】
以下に、エアリーク防止用のシール材20の配置例を、図4図5を参照して詳細に説明する。
まず、図4に示す角部P1では、エアリーク防止用のシール材20は、空気の取入側AIのフィルタパック3の外縁部30から、外枠2の枠板2B、2Cの内面31を経て、ガスケット11の内側の縁部32にまでに渡って、延長して配置されている。
しかし、図5(B)に示すように、角部P1の領域を除く外枠2の領域、すなわち図4に示す外枠2の枠板2A,2B,2C,2Dの直線部分Lの領域では、エアリーク防止用のシール材20は、空気の取入側AIのフィルタパック3の外縁部30から、外枠2の枠板2B、2Cの内面31まで配置されているが、エアリーク防止用のシール材20はガスケット11の内側の縁部32にまでは達していない。
同様にして、残り三つの角部P2、P3、P4において、角部P1と同様にして、エアリーク防止用のシール材20が配置されている。図5(A)では、角部P3、P4におけるエアリーク防止用のシール材20の配置例を示しており、エアリーク防止用のシール材20は、空気の取入側AIの成形物の外縁部30から、外枠2の枠板2B、2Cの内面31を経て、ガスケット11の内側の縁部32にまでに渡って、延長して配置されている。
【0024】
以上説明したように、エアリーク防止用のシール材20は、空気取入側AIの成形物の四方の外縁部30と、外枠2の四方の内面31に渡って、成形物を外枠2に対して固定するために配置されている。しかも、図4に示すように、このエアリーク防止用のシール材20は、少なくとも外枠2の四つの角部P1からP4の領域では、空気の取入AI側の成形物の四方の外縁部30から、外枠2の四方の内面31を経てガスケット11にまで渡って延長して配置されている。
これにより、図5(A)に示すように、エアリーク防止用のシール材20は、外枠2の枠板2A,2B,2C,2Dの内面31と、成形物の端面部6との間の隙間22を、必要最小限のシール材の量で塞いで完全にシールすることができる。しかも、外枠2の四つの角部P1からP4において、外枠2の枠体2A,2B,2C,2Dには継ぎ目が有るが、エアリーク防止用のシール材20が外枠2の四方の内面を経てガスケット11にまで渡って形成されているで、外枠2の四つの角部P1からP4における枠体2A,2B,2C,2Dの継ぎ目は、エアリーク防止用のシール材20により塞ぐことができる。
したがって、空気をフィルタのフィルタパックに取り入れても空気が隙間を通ることが無く、フィルタにおけるエアリークを完全に防止できる。このように、JIS規格で規定されている捕集効率を保持しながら、使用後に分解が容易であり、完全にエアリークを防止することができるこのため、排気を矢印H方向にフィルタ1のフィルタパック3に取り入れても、この排気が隙間22を通ることが無く、完全にエアリークを防止できる。
【0025】
しかも、図5(A)と図5(B)に示す外枠2の四方の端面部10にあるガスケット11と成形物の空気を取り入れる側AIの四方の外縁部30は、最低必要な量のエアリーク防止用のシール材20を用いて固定ししかもシールすることができる。フィルタ1の使用後に、フィルタ1を外枠2と成形物に分ける作業を行う際には、四方に配置されているシール部材20をカッター等で切ることで、エアリーク防止用のシール材20は途切れることなく簡単に取り除くことができる。このため、フィルタ1を外枠2とフィルタパック3に簡単に分解できる。
【0026】
上述した本発明の第1実施形態のフィルタ1は、JIS規格に準拠した上述した構造を有しながら、分解作業が容易であり、完全にエアリークを防止することができる。
なお、図5では、フィルタ1は、原子力施設の排気系や換気空調系統50における開口部51に対面して配置され、外枠2の枠板2A,2B,2C,2Dは、ガスケット11を介して、原子力施設の排気系や換気空調系統50に対して、気密状態で固定されている例を示している。この場合には、図示しない取付器具により、フィルタ1の外枠2は、ガスケット11を介して排気系や換気空調系統50に対して押し付けて固定されているので、外枠2と排気系や換気空調系統50の間からエアリークをするのを防止している。
【0027】
また、図5(A)と図5(B)に示すように、帯状のシール材流入阻止部材40と帯状の追加部材41が、外枠2の枠板2A,2B,2C,2Dの内面31と、フィルタパック3の上側の端面部6と下側の端面部7と左側の側面部8と右側の側面部9との間に設けられている。このシール材流入阻止部材40は、エアリーク防止用のシール材20を盛り付けて形成する際に、エアリーク防止用のシール材20が隙間22の奥に流入してしまうことを防ぐために、成形物の4つの端面部6,7,8,9に渡って、矢印Hとは交差する方向に沿って配置されている。
【0028】
同様にして、シール材流入阻止部材41は、フィルタパック3の4つの端面部6,7,8,9に渡って、シール材流入阻止部材40と平行に配置されている。この追加部材41は、エアリーク防止用のシール材20を盛り付けて形成する際に、エアリーク防止用のシール材20が隙間22の奥に流入してしまうことを防ぐために配置されている。シール材流入阻止部材40は、成形物の前面部3F側寄りの位置に配置されているのに対して、追加部材41は、成形物の後面部3G側寄りの位置に配置されている。
これにより、シール材流入阻止部材40、41は、エアリーク防止用のシール材20を形成する際に、隙間22の奥深く流入してしまうことを防ぐことができる。このため、外枠2と成形物とを固定する強度を確保ししつつ、必要量を超えたシール材20が付着してしまうことを防いで、エアリーク防止用のシール材20の注入量を減らすことができる。従って、エアリーク防止用のシール材20は適切な量を外枠2の四辺の全長に渡って配置するにもかかわらず、使用済みのフィルタ1を外枠2と成形物に分解する際に、取り外すエアリーク防止用のシール材20の量をできるだけ小さくできるので、エアリーク防止用のシール材20は取り外し易く、外枠2と成形物との分解作業が容易になる。
【0029】
ところで、図6は、フィルタ1の裏側を示している。補強シール材43は、図5に示すフィルタパックの空気取入側AIとは反対面の成形物の空気の出口側AOを、外枠2に対して、シールをするとともに固定して、強度的に補強している。具体的には、外枠2の上側の枠板2Aと成形物の端面部6との間には、補強シール材43が配置され、しかも外枠2の下側の枠板2Bと成形物の端面部7との間にも、補強シール材43が配置されている。
これにより、フィルタパック3は外枠2に対して、2か所の補強シール材43を用いてさらに強固に固定できる。従って、図1図5に示すように、排気を矢印Hに沿って取り入れても、排気の圧力により成形物が、外枠2内から外れてしまわないようにさらに念のために補強できる。
【0030】
(第2実施形態)
次に、本発明のフィルタの第2実施形態を、図7を参照して説明する。
図7は、本発明のフィルタの第2実施形態のフィルタを示す図である。図7(A)は、図5(A)の場合と同様の位置におけるフィルタ1の断面図であり、図7(B)は、図5(B)の場合と同様の位置におけるフィルタ1の断面図である。
図7に示す本発明の第2実施形態のフィルタ1Aでは、上述した本発明の第1実施形態のフィルタ1と同様の箇所には、同じ符号を付けてその説明を省略する。
図7に示すフィルタ1Aが、図4図5に示すフィルタ1と異なるのは、次の点である。すなわち、図4図5に示すフィルタ1では、図4に示す四つの角部P1からP4では、エアリーク防止用のシール材20は、空気の取入AI側の成形物の外縁部30から、外枠2の枠板2B、2Cの内面31を経て、ガスケット11の内側の縁部32にまでに渡って、延長して配置されている。しかし、図5(B)に示すように、四つの角部P1からP4の領域を除く外枠2の領域、すなわち図4に示す外枠2の直線部分Lの領域では、エアリーク防止用のシール材20は、空気の取り入れ側AIの成形物の外縁部30から、外枠2の枠板2A,2B,2C,2Dの内面31まで配置されているが、エアリーク防止用のシール材20はガスケット11の内側の縁部32にまでは達していない。
【0031】
これに対して、図7(A)と図7(B)に示すフィルタ1Aでは、四つの角部P1からP4だけではなく、外枠2の直線部分Lの領域であっても、エアリーク防止用のシール材20は、空気の取入側AIの成形物の外縁部30から、外枠2の枠板2A,2B,2C,2Dの内面31を経て、ガスケット11の内側の縁部32までに渡って、延長して配置されている。エアリーク防止用のシール材20は、外枠2の四つの角部を含む外枠2の四方の全辺部分に沿って空気取り入れ側AIの成形物の四方の外縁部30から、外枠2の四方の内面31を経てガスケット11にまで渡って、エアリーク防止用のシール材20が延長して配置されている
これにより、成形物は、外枠2に対して、エアリーク防止用のシール材20を用いて、より強固に固定し、しかもシールすることができる。すなわち、図7に示すエアリーク防止用のシール材20は、フィルタパック3を外枠2に対してさらに強く固定することができるとともに、外枠2の内面31と、成形物の端面部6,7,8,9との間の隙間22を塞いで完全にシールすることができる。しかも、外枠2の四つの角部P1からP4において、外枠2の枠体2A,2B,2C,2Dには継ぎ目が有るが、エアリーク防止用のシール材20が外枠2の全部に渡ってガスケット11にまで渡って形成されているで、外枠2の四つの角部P1からP4における枠体2A,2B,2C,2Dの継ぎ目は、エアリーク防止用のシール材20により塞ぐことができる。このため、排気を矢印H方向にフィルタ1のフィルタパック3に取り入れても、この排気が隙間22を通ることが無く、完全にエアリークを防止できる。
【0032】
フィルタ1の使用後に、フィルタ1を外枠2とフィルタパック3に分ける作業を行う際には、四方に配置されているエアリーク防止用のシール部材20を引っ張ることで、シール材20は途切れることなく簡単に取り除くことができる。このため、フィルタ1は外枠2と成形物に簡単に分解できる。
【0033】
本発明は、実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、図示の本発明の実施形態のフィルタは、取り付け対象部の例としての原子力施設の排気系や換気空調系統に配置されているが、本発明の実施形態のフィルタは、他の分野の施設に配置することもできる。外枠とフィルタパックの形状は、図示例に限定されず、施工現場に応じて任意の形状を選択することができる。
また、本発明のさらに別の実施形態では、フィルタは、空気の取入側ではなく、空気の排出側であっても良い。
実施形態の各構成は、その一部を省略してもよく、あるいは異なる実施形態の一部の構成同士を組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1,1A・・・フィルタ、2・・・外枠、2A,2B,2C,2D・・・外枠の枠板、3・・・フィルタパック、5・・・フィルタパックの一方の端面部と他方の端面部をシールして固定するためのシール材、6から9・・・フィルタパックの側面部、10・・・枠板の端面部、11・・・ガスケット、20・・・エアリーク防止用のシール材、30・・・フィルタパックの四方の外縁部、31・・・外枠の内面、32・・・ガスケットの内側の縁部、40、41・・・シール材流入阻止部材、43・・・補強シール材、50・・・原子力施設の排気系や換気空調系統(取付対象物の例)、P1からP4・・・外枠の四つの角部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7