(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1方向から見て、中央部から両側に向かって前記第1方向に直交する第2方向に対し3°以上5°以下の傾斜角で延びて、略V字状に交わる第1傾斜面と第2傾斜面を先端部に備え、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面は、前記第2方向から見て円弧形状を有し、
被切削材に対する化学反応性を有し切削性を有しない軟質砥粒と、前記被切削材に対して切削性を有する硬質砥粒とからなる複合砥粒を含むビトリファイドボンド砥石である超仕上げ砥石を用いて玉軸受外輪の外輪軌道溝の超仕上げを行う超仕上げ方法であって、
前記超仕上げ砥石が前記被切削材の切削面と強く接触する部分では砥石接触面積を大きくし、弱く当たる部分では砥石接触面積を小さくして、前記超仕上げ砥石の馴染ませ作業を行うことを特徴とする超仕上げ方法。
第1方向から見て、中央部から両側に向かって前記第1方向に直交する第2方向に対し3°以上5°以下の傾斜角で延びて、略V字状に交わる第1傾斜面と第2傾斜面を先端部に備え、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面は、前記第2方向から見て円弧形状を有し、
被切削材に対する化学反応性を有し切削性を有しない軟質砥粒と、前記被切削材に対して切削性を有する硬質砥粒とからなる複合砥粒を含むビトリファイドボンド砥石である超仕上げ砥石を用いて玉軸受外輪の外輪軌道溝の超仕上げを行う超仕上げ方法であって、
前記第1方向を前記玉軸受外輪の回転軸線方向に、前記第2方向を前記玉軸受外輪の周方向になるように前記超仕上げ砥石を配置し、
超仕上げ作業を行う前に、前記超仕上げ砥石の臨界圧力の90±5%の圧力で前記超仕上げ砥石の馴染ませ作業を行うことを特徴とする超仕上げ方法。
【背景技術】
【0002】
一般に、玉軸受の軌道面超仕上げには、専用の超仕上げ盤が使用される。この超仕上げ盤で玉軸受の内輪又は外輪の軌道溝を超仕上げするときには、内輪又は外輪を回転させて、砥石ホルダに保持された砥石を軌道溝に押圧し揺動させることで、ある角度範囲を軌道溝に沿って往復移動させ超仕上げを行っている。この時、超仕上げ砥石は、研削と違って加工初めのツルーイングあるいはドレッシングなどの砥石成形工程が無いので、あらかじめ砥石作用面の形状を、加工する軌道溝の円弧曲面に対応させ整形しておく必要がある。
【0003】
また、玉軸受の軌道溝は、超仕上げ前の研削によって断面円弧状に前加工されている。超仕上げでは、この研削による前加工精度を維持しながら軌道溝を短時間で能率的に、例えば0.01μmRa以下に鏡面仕上げしている。
【0004】
そして加工中、軌道溝と接触する砥石は、摩耗のたびに加工を中断することなく、砥石が摩耗した分だけ砥石ホルダから押し出すことで、常にその位置が補正される。玉軸受の超仕上げ加工では、加工物が内輪の場合は外周面を、外輪の場合は内周面をそれぞれの加工様式を採用して超仕上げ加工を施している。
【0005】
従来の外輪軌道溝の超仕上げ加工は、例えば
図7に示す、先端部に軌道溝の円弧曲面に相当する径寸法の凸状円弧面101を有する砥石100を用いて、
図9に示すように、凸状円弧面101を外輪2の外輪軌道溝3に沿うように配置して、外輪2を回転させるとともに砥石100を外輪2の回転軸方向に揺動しながら外輪軌道溝3の超仕上げを行っていた。
【0006】
また、特許文献1には、
図8に示すように、砥石200の先端部を外輪の軌道溝の曲率半径よりも若干大きい曲率半径の円筒面部分201と、この円筒面部分201の軸方向両側に続く先細り部分202とからなる形状にすることが記載されている。そして、砥石200の形状を上記のようにしておくことにより、外輪軌道溝と砥石の接触面積が小さくなって面圧が上がり、砥粒の脱落が進行しやすくなる。これにより、砥石の形状が短時間で外輪軌道溝の形状にならい、いわゆるあたりが連続するようになる。その結果、研削の目残りが発生せず、精度不良による加工不良品として廃棄や再加工がなくなり、砥石交換直後の1つめの軸受から良品とすることができることが記載されている。
【0007】
また、特許文献1の他にも、砥石について複数の先行技術文献が知られている(特許文献2〜6)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記したいずれの先行技術文献に記載の砥石においても、砥石の馴染ませ易さ(以下、馴染み性とも呼ぶ。)について満足できるものはなく改善の余地があった。超仕上げ加工における、砥石使用始めの加工物による馴染ませ作業では、量産工程での生産性低下、あるいは不十分な砥石作用面の形成による不良率の発生など多くの課題がある。
【0010】
一方で砥石の馴染み性を向上させるために、破砕性に富む砥粒あるいは軟位超仕上げ砥石を適用することも考えられるが、この場合、砥石摩耗量が多くなり、砥石形状崩れ又は短い砥石寿命となり、所望の面精度は得られず、僅かの加工出来高で砥石交換となる。
【0011】
超仕上げ砥石は、従来の酸化アルミニユウム(WA)砥粒あるいは緑色炭化ケイ素(GC)砥粒砥石に代って、超硬質の立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒あるいはダイヤモンド(SD)砥粒を使用したビトリファイドボンド砥石の実用化が進んでいる。
【0012】
特に軸受鋼に対しては、超硬質砥粒を含むビトリファイド砥石が広く選択される。しかし超硬質砥粒は、WAあるいはGC砥粒に比較して高価であり、従って耐摩耗性あるいは砥石寿命の大きい砥石品質が要求される結果、砥石摩耗量は極端に僅少なものとなる。例えば、加工物1個当たりの砥石摩耗量で1μm以下と僅少で、WAあるいはGC砥石の場合、それは20〜30倍である。
【0013】
従って、特に超硬質砥粒を使用した超仕上げでは、加工初めの馴染み性は、重要な課題となる。砥石作用面を、完全な3次元形状に整形した場合でも、軌道溝の前加工研削による円弧中心は、超仕上げ盤に取り付けた状態で必ずしも砥石中心線に対して一致せず、微小であっても芯ずれを生ずる場合、砥石の形状崩れ、欠損等を生じ、超仕上げ精度、能率低下を招くおそれがあった。
【0014】
砥石交換において加工物と砥石の位置関係で芯ずれがあると、超硬質砥粒を含むビトリファイド砥石では、砥石サイズ(砥石作用面の大きさ)にもよるが、例えば砥石作用面積10〜15mm
2で、馴染ませ個数10〜20を必要とする場合があった。
【0015】
本発明は、上述の様な事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被切削物に馴染ませやすい超仕上げ砥石
を用いた超仕上げ方法
を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、馴染み性を向上させる砥石品質と砥石仕上げ性能という相反する砥石要求を満たす超仕上げ砥石
を用いた超仕上げ方法を見出し、本発明に至った。
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成される。
(1) 第1方向から見て、中央部から両側に向かって前記第1方向に直交する第2方向に対し3°以上5°以下の傾斜角で延びて、略V字状に交わる第1傾斜面と第2傾斜面を先端部に備え、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面は、前記第2方向から見て円弧形状を有し、
被切削材に対する化学反応性を有し切削性を有しない軟質砥粒と、前記被切削材に対して切削性を有する硬質砥粒とからなる複合砥粒を
含むビトリファイドボンド砥石である超仕上げ砥石を用いて玉軸受外輪の外輪軌道溝の超仕上げを行う超仕上げ方法であって、
前記超仕上げ砥石が前記被切削材の切削面と強く接触する部分では砥石接触面積を大きくし、弱く当たる部分では砥石接触面積を小さくして、前記超仕上げ砥石の馴染ませ作業を行うことを特徴とする超仕上げ方法。
(2) 第1方向から見て、中央部から両側に向かって前記第1方向に直交する第2方向に対し3°以上5°以下の傾斜角で延びて、略V字状に交わる第1傾斜面と第2傾斜面を先端部に備え、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面は、前記第2方向から見て円弧形状を有し、
被切削材に対する化学反応性を有し切削性を有しない軟質砥粒と、前記被切削材に対して切削性を有する硬質砥粒とからなる複合砥粒を
含むビトリファイドボンド砥石である超仕上げ砥石を用いて玉軸受外輪の外輪軌道溝の超仕上げを行う超仕上げ方法であって、
前記第1方向を前記玉軸受外輪の回転軸線方向に、前記第2方向を前記玉軸受外輪の周方向になるように前記超仕上げ砥石を配置し、
超仕上げ作業を行う前に、前記超仕上げ砥石の臨界圧力の90±5%の圧力で前記超仕上げ砥石の馴染ませ作業を行うことを特徴とする超仕上げ方法。
(
3) 前記超仕上げ作業における砥石面圧力は、前記馴染ませ作業時における圧力より低いことを特徴とする
(2)に記載の超仕上げ方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、先端部における砥石作用面の形状を略V字状に交わる第1傾斜面と第2傾斜面とで構成することで、切削面と強く当たる部分の接触面積が大きくなり、反対に弱く当たる部分の接触面積が小さくなることによって、最小限の馴染み個数で砥石作用面が全面当たりするようになり馴染み性が向上する。また、軟質砥粒を分散配位することで、非切削性で軟弱ながら、脱落しにくい潤滑物質層を形成し、馴染み性が一層向上し、且つ、砥石摩耗量が減少する。これにより、馴染み性を向上させる砥石品質と砥石仕上げ性能という相反する砥石要求を同時に満たすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者らは、加工物の切削面と砥石作用面との接触状態において、砥石が切削面と強く接触する部分と弱く接触する部分に着目した。強く接触する部分では、砥石が硬く作用する場合、目づまりを生じ易く、反対に軟らかく作用する場合、砥石摩耗量は多くなる。従って、本発明者らは、砥石の馴染み性が、砥石が強く接触する部分で砥石作用面積を大きくして、砥石が弱く接触する部分では、砥石作用面積を小さくすることによって、砥石作用面積全体としての馴染み性が向上することを見出した。本発明では、砥石作用面が切削面と強く接触する部分において、砥石馴染み性を強調することによって、砥石作用面全体の馴染み性を向上させた。
【0020】
外輪軌道溝の超仕上げ加工用砥石の砥石作用面は、
図10の斜線部で示すように、砥石中央部において連続的に強く接触して、砥石中央部以外の周縁部では断続的に弱く接触する。従って、砥石中央部において、砥石接触面積を大きくすることによって、砥石馴染み性が向上する。
【0021】
以下、上記した技術的思想に基づいて製作された本発明の一実施形態に係る超仕上げ砥石について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の超仕上げ砥石の先端部を示す斜視図であり、
図2(a)は超仕上げ砥石の先端部をまたぎ方向(
図1のIIA)から見た図であり、
図2(b)は超仕上げ砥石の先端部を厚さ方向(
図1のIIB)から見た図である。
【0022】
本実施形態の超仕上げ砥石10(以下、単に砥石10と呼ぶ。)は、先端部11に、直交する2方向のうちの一方向を厚さ方向(
図1のIIB方向)、他方向をまたぎ方向(
図1のIIA方向)とすると、厚さ方向から見て、中央部から両側に向かってまたぎ方向に対し傾斜角αで延びる第1傾斜面12aと第2傾斜面12bを備える(
図2(b)参照)。第1傾斜面12aと第2傾斜面12bは、またぎ方向中央部で交差して頂部13を形成する。頂部13は先端に向かうに従ってまたぎ幅が減少するように、鋭利な略V字形状を有している。なお、厚さ方向は、玉軸受外輪2の外輪軌道溝3を超仕上げ作業(馴染ませ作業を含む。以下、同様。)をするときの外輪2の回転軸線方向に対応し、またぎ方向は、玉軸受外輪2の外輪軌道溝3を超仕上げ作業をするときの周方向に対応する(
図5参照)。
【0023】
また、第1傾斜面12aと第2傾斜面12bは、
図2(a)に示すように、またぎ方向から見て円弧形状を有している。より詳しく説明すると、第1傾斜面12aはまたぎ方向一方側から見て先端部が円弧形状を有しており、第2傾斜面12bはまたぎ方向他方側から見て先端部が円弧形状を有している。円弧形状の曲率は、被切削物に応じて設定され、玉軸受外輪の外輪軌道溝を超仕上げするときには、外輪軌道溝の円弧と略等しい曲率に設定される。
【0024】
ここで、傾斜角αは、3°以上5°以下に設定される。傾斜角αを、3°以上5°以下に設定することで、先端部11が外輪軌道溝形状に近似した形状となり、砥石接触面積が大きくなることで馴染み性が向上する。傾斜角αが3°未満であると傾斜面を形成する効果が小さく、傾斜角5°を超えると、以下で説明する最大馴染み量が大きくなり、外輪の外輪軌道溝に沿った円弧形状になるまでに時間がかかる。傾斜角αは、3.5°以上4.5°以下が好ましく、約4°がさらに好ましい。
【0025】
先端部11のまたぎ方向の幅であるまたぎ幅をBとすると、先端部11における傾斜量、即ち、砥石中央部で最大馴染み量d(mm)は、以下の(I)式で表される。
d=(B/2)×tanα (I)
【0026】
従って、先端部11のまたぎ方向幅Bが一定で傾斜角αが大きくなると、最大馴染み量dは比例して大きくなる。最大馴染み量dに好適値があるとして、またぎ方向幅をBが大きくなると、傾斜角αは小さくする必要があり、反対にまたぎ方向幅をBが小さくなると、傾斜角αを大きくする必要がある。一般的に、砥石作用面積が10mm
2未満の場合、馴染ませ作業が容易であり、10mm
2以上の場合、馴染ませ作業が容易ではなくなる。最大馴染み量dは、0.13mm〜0.22mmであることが好ましく、約0.175mmがさらに好ましい。
【0027】
この結果、砥石作用面において、絶えず加工面と接触する砥石中央部での摩耗は促進され、砥石作用面積の増大と共に、急速に全体の砥石馴染みに至る。従来では、砥石作用面を完全な三次元形状に整形した場合でも、外輪軌道溝の前加工研削による円弧中心は、超仕上げ機に取付けた状態で、必ずしも砥石中心線に対して一致しない場合があった。微小であっても芯ずれが生ずる場合、砥石の形状崩れ、欠損等を生じ、超仕上げ精度、能率低下などの不具合を引き起こすおそれがあった。
【0028】
本発明では、切削面と砥石作用面が強く接触する部分での砥石作用面積を大きくして、砥石摩耗を促進することによって、精度よく安定した砥石馴染み面の形成が容易となり、芯ずれが生じた場合であっても、加工物と砥石の正しいセッティング状態が可能となる。
【0029】
この砥石10の先端部11は、ロータリードレッサーによって成形することができる。
図4は、砥石10の先端部11をロータリードレッサーで成形する成形方法の一例である。
【0030】
先ず、ロータリードレッサー50の中心軸線Oに直交する直交線Xに対して砥石10の中心線Yをオフセットさせた状態で配置する。具体的には、砥石10の中心線Yが直交線Xと平行になるように維持し、砥石10のまたぎ幅(T)の例えば半分の長さ(T/2)の位置だけまたぎ方向上方にずらした状態に配置する。このずらし量は、形成される第1傾斜面12aの傾斜角が3°以上5°以下となるように設定される。この状態で、砥石10を直交線Xと平行にロータリードレッサー50側に移動させてロータリードレッサー50のドレス溝51に押し付けて成形する1回目のプランジ加工を行う。これにより、砥石10の先端部11の一方側の面16が円弧状に成形され、先端部11の一方側に第1傾斜面12aが形成される。
【0031】
続いて、砥石10をまたぎ方向に上下反転させて、ロータリードレッサー50に対して同じ位置に砥石10を配置する。即ち、ロータリードレッサー50の中心軸線Oに直交する直交線Xに対して砥石10のまたぎ幅(T)の半分の長さ(T/2)の位置だけまたぎ方向上方にずらした位置に、砥石10の中心線Yが一致するように配置する。このとき、砥石10を反転させることで、第1傾斜面12aがまたぎ方向上方を向くことなり、成形されていない他方側の面18が下方を向いてロータリードレッサー50の近くに配置される。このずらし量についても、形成される第2傾斜面12bの傾斜角が3°以上5°以下となるように、且つ、第1傾斜面12aと同等の傾斜角になるように設定される。この状態で、砥石10を直交線Xと平行にロータリードレッサー50側に移動させてロータリードレッサー50のドレス溝51に押し付けて成形する2回目のプランジ加工を行う。これにより、砥石10の先端部11の他方側の面18も円弧状に成形され、先端部11の他方側にも第2傾斜面12bが形成されて砥石10が製造される。
【0032】
このようにロータリードレッサーを用いて製造した砥石10は、
図3に示すように、第1傾斜面12aと第2傾斜面12bがロータリードレッサーの曲率により僅かに窪むように湾曲するが、この場合の傾斜角αは、
図3に示すように、厚さ方向見て、頂部13の先端と一方側の面16の端部とを結んだ線がまたぎ方向に対しなす角度、及び、頂部13の先端と他方側の面18の端部とを結んだ線がまたぎ方向に対しなす角度である。
【0033】
続いて、砥石10の組成について説明する。
(1)組成及び製法
砥石10は、切削性をもたない軟質砥粒と、切削性を有する硬質砥粒との複合超砥粒をビトリファイドボンドで結合した複合超砥粒ビトリファイドボンド砥石である。
【0034】
硬質砥粒は、立方晶窒化ホウ素(CBN)、ダイヤモンド(SD)(いずれも新モース硬度14、15)等であり、軟質砥粒は、酸化セリウム(CeO
2、硬度4〜5)、硫酸バリウム(BaSO
4、硬度3〜4)、酸化ジルコニウム(ZrO
2、硬度8〜9)、そして酸化ケイ素(SiO
2、硬度7〜8)等である。混合体積比は、硬質砥粒60〜90%、軟質砥粒10〜40%である。より好適な混合体積比は、硬質砥粒70〜80%、軟質砥粒20〜30%である。
【0035】
本発明の砥石10に用いる結合剤は、化学反応性を有する軟質砥粒を化学的にまたは熱的に変性しないように、所定の軟化温度以下に調整したものであり、80〜95重量%の低融性無機質ガラスおよび5〜20重量%の高融性無機質鉱物からなる物であることが好ましい。
【0036】
砥石10は、上記砥粒、結合剤に加えて、気孔剤、その他助剤を、均質混合の後、粉体調整を経て成形、乾燥し焼成することで製造される。砥石焼成温度は750°である。
【0037】
(2)軟質砥粒による仕上げ特性
a) メカノケミカル作用
軟質砥粒のCeO
2およびBaSO
4をそれぞれ単体で、ビトリファイドボンドにより固定した砥石による、軸受鋼(SUJ−2,HRC60)の超仕上げでは、鋼表面に固相反応により、酸化膜(Fe
2O
3、Fe
3O
4)を形成することが知られている。その超仕上げ機構は、仕上げ摩擦による熱エネルギーで、活性化されたCeO
2またはBaSO
4砥粒が、鋼表面突部を酸化し、これを軟質砥粒を含むボンドマトリックスによって除去する。
【0038】
b) 馴染み性
(b1)試験砥石の種類
軟質砥粒単体での馴染み性をみるため、ビトリファイドボンド砥石を製作した。軟質砥粒は、(A)BaSO
4(平均粒子径6.0μm)、(B)CeO
2(平均粒子径1.4μm)、(C)ZrO
2(平均粒子径1.0μm)及び(D)SiO
2(平均粒子径5.0μm)であり、比較砥粒としての、超(硬)砥粒は、(E)CBN(平均粒子径3.0μm)である。
【0039】
砥石内容は、同じビトリファイドボンドで、結合剤量は、単位砥粒量に対し、0.35重量部で一定とする。その他、成形条件、焼成条件も同一である。表1に各種砥石のRH硬度を示す。RH硬度は、ロックウェル試験法Hスケール、JISR6240による。マイナス(−)硬度は、砥石が軟位の場合、長針が30のセット点をすぎ、更に0を通過して停止する場合、マイナス(負)の値となる。
【0040】
超仕上げは、玉軸受の軌道溝で、条件はすべて一定とする。加工油は、硫化脂肪油系不水溶性油である。また使用時には、凹溝内面の断面円弧形状に相当する半径で、砥石作用面に凸状円弧面に整形し使用する。各砥石は、気孔を高融性ワックスで充填処理してある。
【0041】
(b2)馴染み個数
結果を表1に示す。
【表1】
【0042】
軟質砥粒砥石の馴染み個数は、CBN(硬質砥粒)砥石のそれに比較して、少ないものの大差はない。むしろ、軟質砥粒砥石のRH硬度は、CBN砥石のそれに比較すると、マイナス(−)硬度で、極めて軟位であるにもかかわらず、馴染み個数は、大差とはならない。そして、平均砥石摩耗量は、CBN砥石の約1/2と少ない。すなわち、軟質砥粒から成る砥石層は、軟弱な砥石摩擦面ながら、脱落摩耗しにくい物質層、つまりクリーンな層を形成して、砥石摩耗減少をもたらす。
【0043】
(b3)クリーン砥石作用面
図6は、各試験砥石の作用面である。
CBN砥石(E)では、切り屑の溶着による白い輝面がみられるが、軟質砥粒砥石(A)〜(D)ではみられない。ただし砥粒子径の差による砥石組織差、あるいはメカノケミカル作用差などによって、砥石作用面に濃淡がみられる。複合超砥粒ビトリファイドボンド砥石で、軟質砥粒の分散配位によって、砥石作用面は軟弱となり、加工物との馴染み性は向上する。しかし馴染み性は、砥石摩耗によるのではなく、切削作用をもたない軟質砥粒は、切り屑によるボンドエロージョンの影響を直接うけることなく、砥石目詰まり、目つぶれを改善し、潤滑性表面層として砥石摩耗減少をもたらす。
【0044】
(3) 砥石臨界圧力
超仕上げ加工で、ある圧力以上で砥石摩耗量が急増し、切削作用が活発となり、仕上げ面粗さも大きくなる。このときの圧力を、砥石臨界圧力(以下Pc)という。この発明に選択される複合砥粒ビトリファイド砥石は、軟質砥粒を含まない従来砥石のPcに比べPcが大きい。これは軟質砥粒が、砥石面圧力の増加に対して、容易に脱落摩耗することなく、潤滑性表面層として、砥石摩耗の減少に貢献しているためである。すなわち、軟弱な砥石摩擦面ながら、脱落摩耗しにくい物質の層、すなわち潤滑物質層を形成していることが分かる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の特徴である、上記形状及び組成を有する砥石の馴染み性等について実施例及び比較例を挙げて説明する。
なお、本実施例の内容は本発明の前提となる参考例である。
【0046】
<砥石の製作>
(a)砥石種類
表2に実施例及び比較例における、砥石の組織について示した。区分1〜9における硬質砥粒は、立方晶窒化ホウ素(CBN)であり、区分1〜3、6、7における軟質砥粒は、酸化セリウム(CeO
2)である。
砥粒径(μm)に関して、区分1〜5ではCBNが4〜8μm(2500メッシュ)、区分6〜9ではCBNが2〜4μm(4000メッシュ)である。区分1と区分3は同品質である。
結合剤は、いずれもR
2O−RO−Al
2O
3−SiO
2−B
2O
3系のビトリファイドボンドである。
砥粒、結合剤、気孔材、その他助剤の配合成分は、均質混合の後、粉体調整を経て成形、乾燥し焼成した。砥石焼成温度は、区分1〜3、6、7が最高温度750℃で、区分4、5、8、9が最高温度800℃で、3時間保持し、冷却の後取り出した。試験砥石は、所定の寸法精度に仕上げ加工された後、砥石気孔を有機質処理剤で充填した。
【0047】
(b)砥石硬度・組織・砥石臨界圧力
表2には、組成に加えて砥石硬度及び砥石臨界圧力Pcについて示した。砥石硬度は、ロックウェル式試験方法Hスケール(JISR6240、研削砥石の試験方法)による(以下、RH硬度とも呼ぶ。)。
実施例及び比較例ともに、RH硬度で軟位あるいは硬位に偏在しないように配慮し、できるだけ多様なRH硬度で、馴染み個数の変化を試験することを目的とした。
他方、馴染み個数に関係ある砥石摩耗特性、及び仕上げ性能に影響するであろう砥石構成要素(硬質砥粒率Vg1、軟質砥粒率Vg2、気孔率Vp、結合剤率Vb)の体積比(%)、及び砥石臨界圧力Pc(MPa)についても測定した。
【0048】
【表2】
【0049】
(c)砥石形状寸法
試験砥石の寸法は、砥石またぎ幅5.5mm、厚さ5.5mmのスティック状角形である。また砥石作用面には、外輪軌道溝の凹断面の円弧に相当する半径3.5mmで凸状円弧形状の第1及び第2傾斜面を形成し、被切削物である外輪の回転軸線方向から見て、その中央部から砥石両側面に向かって、設定の角度範囲でV字形の傾斜をもたせた。即ち、
図1で示す、上記実施形態と同等の形状とした(以下、この形状を2方向R曲面形状と呼ぶことがある。)。
【0050】
<馴染ませ試験1>
区分1〜9に分類された実施例と比較例の砥石を用いて、第1及び第2傾斜面の傾斜角を変えながら、砥石が外輪の外輪軌道溝形状になじむまでの馴染ませ個数を計測した。
【0051】
(i)馴染ませ条件
外輪軌道溝の溝底直径は、35.75mmである。
馴染ませ条件は、実施例、比較例ともに同じで、前加工面粗さは研削0.25〜0.30μmRa(中心線平均粗さ)、溝底表面速度5m/s、砥石揺動数13.3Hz、馴染ませ時間4秒、加工油は、硫化脂肪油系不水溶性油とした。
また砥石作用面の馴染み完了の確認は、砥石作用面に油性ペイントで着色し、これが消滅した時を目安とする。また馴染ませ圧力は、表2の砥石臨界圧力を上回らない3.0MPaとした。砥石試料数は、各3〜4である。
【0052】
(ii)結果
表3に示すように、区分1に分類された実施例で傾斜角を3°〜5°の範囲で変化させた。この結果は、馴染ませ個数は1〜3個の少数となった。一方、区分1に分類された実施例と同品質の、区分3に分類された比較例では、傾斜角をより小さく2°、及びより大きく6°と8°とし、その効果をみた。その結果、傾斜角2°と小さい場合は、砥石と被切削物との接触面状態が、通常砥石と変らず、砥石作用面が切削面と強く接触する部分において馴染み性を強調した、実施例の砥石作用面形状の効果がでなかった。傾斜角5°を超えて大きくなると、最大馴染み量は大きくなり、外輪の軌道溝に沿った円弧形状とするために、多くの馴染ませ個数が必要となった。
【0053】
このように、傾斜角3〜5°とすることで、馴染ませ個数を少なくできることが実証された。また、傾斜角は4°が好ましい。
また、区分2、6、7に分類された実施例、及び、区分4、5、8、9に分類された比較例は、いずれも傾斜角4°での馴染ませ個数である。表3から、区分2、6、7に分類された実施例は、区分4、5、8、9に分類された比較例と比べて、明らかに馴染ませ個数が少ない結果となった。これは、軟質砥粒と、硬質砥粒との複合超砥粒による、馴染み性によるものである。
【0054】
【表3】
【0055】
<馴染ませ試験2>
本試験は、砥石作用面形状での、馴染ませ個数に関するものである。
【0056】
(i)砥石の製作(砥石形状寸法)
区分1、4、7、9に分類されたスティック状角形の砥石の砥石作用面を、外輪の外輪軌道溝の円弧に相当する半径3.5mmの凸状円弧面に形成した。即ち、
図7で示す、従来と同等の形状とした(以下、この形状を1方向R曲面形状と呼ぶことがある。)。
なお、馴染ませ条件は、上記<馴染ませ試験1>と同じである。
【0057】
(ii)結果
表4の馴染ませ個数の結果から分かるように、従来の1方向R曲面形状に対し、本発明による2方向R曲面形状とした場合、馴染ませ個数は、約1/5以下となり、最小限、馴染ませ個数1個を可能としたことが分かる。
また、軟質砥粒と硬質砥粒からなる複合超砥粒砥石の区分1、7は、硬質砥粒のみからなる区分4、9に比較して、馴染ませ個数が、確実に少なくなることが分かった。
【0058】
【表4】
【0059】
<馴染ませ試験3>
この実施例は、本発明における馴染ませ作業での砥石圧力の設定に関するものである。即ち、砥石圧力を砥石臨界圧力よりも小さくする、または大きくする場合の、馴染ませ個数の変化を計測した。さらに馴染ませ作業で得られた、砥石作用面を使用した仕上げ性能について確認した。
【0060】
(i)砥石種類
<馴染ませ試験1>において、安定して馴染ませ個数の少ない、区分7に分類された実施例、及び、区分9に分類された比較例を試料とした。砥石形状は、いずれも傾斜角4°の2方向R曲面形状とした。
【0061】
(ii)馴染ませ条件
馴染ませ圧力は、表2に示す砥石臨界圧力Pc(MPa)の0.8倍、0.9倍および1.05倍の3種類とし、その他の条件は、<馴染ませ試験1>と同じとした。
【0062】
(iii)超仕上げ条件
玉軸受外輪の外輪軌道溝を、超仕上げした。被切削物の表面速度は、粗、仕上げ共に5m/秒である。砥石揺動数は粗13.3Hz、仕上げ2.0Hzである。加工時間は粗8秒、仕上げ2秒とする。加工数は、各10個の平均値である。砥石面圧力は、粗、仕上げともに馴染ませ圧力より低圧、すなわち0.8Pc未満の2.5MPaとする。
【0063】
(iv)結果
(a)馴染ませ個数
表5に示すように、馴染ませ圧力0.8〜1.05Pcの範囲で、実施例は、比較例に対し1〜2個と安定して少なかった。また比較例では、馴染ませ圧力の上昇と共に、馴染ませ個数は減少する傾向にあった。
【0064】
(b)仕上げ性能
馴染ませ作業によって、得られた砥石作用面を使用した仕上げ性能で、実施例は比較例に対して、高切削性で、砥石摩耗量も少なく、面粗度もより細かい。従って、仕上げ比も大きな値となり、確実に高性能であった。
馴染ませ個数の差も含めて、砥石仕上げ性能差は、本発明における複合超砥粒ビトリファイド砥石の特徴によることは明白である。
【0065】
(c)まとめ
砥石臨界圧力(Pc)を超える場合、馴染ませ個数(N)は減少するものの、砥石摩耗量(W)を増し、仕上げ面(Ra)は悪化、あるいは仕上げ比(T/W)は低下する。反対に砥石臨界圧力(Pc)以下では、馴染ませ個数(N)を増し、砥石摩耗量(W)の減少で面粗度はよくなるものの、切削量(T)は少なくなる。
【0066】
したがって、好ましい馴染ませ圧力は、0.8Pc〜1.0Pcにある。しかし1.0Pc付近では、仕上げ性能の変動が大きいため、より好ましくは、0.85Pc〜0.95Pc(90±5%)である。
【0067】
【表5】
【0068】
以上説明したように、本発明の超仕上げ砥石によれば、先端部における砥石作用面の形状を略V字状に交わる第1傾斜面と第2傾斜面とで構成することで、切削面と強く当たる部分の接触面積が大きくなり、反対に弱く当たる部分の接触面積が小さくなることによって、最小限の馴染み個数で砥石作用面が全面当たりするようになり馴染み性が向上する。また、軟質砥粒を分散配位することで、非切削性で軟弱ながら、脱落しにくい潤滑物質層を形成し、馴染み性が一層向上し、且つ、砥石摩耗量が減少する。これにより、馴染み性を向上させる砥石品質と砥石仕上げ性能という相反する砥石要求を同時に満たすことができる。
【0069】
また、本発明の超仕上げ砥石によれば、砥石摩耗量が少なく、砥石の形状崩れによる短寿命化を回避することができ、所望の面精度を得ることができる。従って、外輪の軌道溝の超仕上げ加工では、砥石長さ(砥石使用量)の制約があり、そのため、砥石寿命は短いものとなり、砥石交換頻度も高くなるが、超硬質の立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒あるいはダイヤモンド(SD)砥粒を使用したビトリファイドボンド砥石を使用することで砥石寿命を長くすることができる。さらに、超硬質の立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒あるいはダイヤモンド(SD)砥粒を使用したビトリファイドボンド砥石を用いた場合でも、馴染み性を向上させることができ、且つ、砥石摩耗量を減らすことができ更なる長寿命化が可能となる。
【0070】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、適宜、変更、改良、等が可能である。
上記実施形態では、内輪と、外輪と、内外輪との間に転動自在に配置される複数の玉と、を備えた玉軸受における、外輪軌道溝に好適な超仕上げ砥石として、超仕上げ砥石の詳細及びそれを用いた超仕上げ方法について説明したが、外輪軌道溝に限らず、内輪軌道溝、その他の被切削物について適用することができる。
【0071】
また、硬質砥粒は、立方晶窒化ホウ素(CBN)、ダイヤモンド(SD)に限らず、酸化アルミニウム(WA)、炭化ケイ素(GC)砥粒等の他の硬質砥粒を用いてもよい。特に、砥石長さ(砥石使用量)の制約がない、内輪の軌道溝の超仕上げ加工では、酸化アルミニウム(WA)および炭化ケイ素(GC)砥粒を用いてもよい。