(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転電機の固定子コイルに印加した電圧を連続的に昇圧又は降圧或いは昇圧と降圧を組み合わせて得られた印加電圧に対する部分放電電荷量の関係を取得し、この取得した部分放電電荷量と印加電圧の自然対数で表示した部分放電電荷量の印加電圧に対する部分放電電荷量微分値と予め定めた設定値とを比較する演算処理を行い、この演算処理した結果に基づき前記固定子コイルの絶縁劣化を診断する際に、
前記取得した印加電圧に対する部分放電電荷量の自然対数で表示した部分放電電荷量の印加電圧に対する部分放電電荷量微分値のうち、バックグラウンドレベルから部分放電電荷量微分値が増加する印加電圧の部分放電電荷量微分値が最大となる印加電圧(第1のピーク)と、前記部分放電電荷量微分値の上昇線と下降線で囲まれた電圧領域の前記第1のピーク値の半分の領域の幅(半値幅)に基づき、前記固定子コイルの絶縁劣化レベルを診断することを特徴とする回転電機の絶縁診断方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の回転電機の絶縁診断方
法を説明する。尚、符号は、各図において同一構成部品には同符号を使用する。
【0012】
先ず、本発明の実施例を説明する前に、回転電機の構造について、
図1及び図を用いて簡単に説明する。
【0013】
図1には、本発明が適用される回転電機の例を示す。該図に示す如く、回転電機1は、回転子2と固定子3とから概略構成されている。この固定子3は、
図2に示すように、固定子鉄心4と鉄心スロット5と固定子コイル6からなり、固定子コイル6は上コイル6a、底コイル6bから構成されており、固定子コイル6を鉄心スロット5に固定するために楔7、上底コイルの間のスペースを確保するために、絶縁部材スペーサ8が配置されている。尚、固定子コイル6は、固定子鉄心4の外部で電気的に接続される。
【0014】
前記固定子コイル6は、
図2に示す如く、素線絶縁10を施した数本の素線9aが整列され、この素線9aを束ね絶縁詰め物11を施し一体化した素線固めコイル9により構成されており、素線固めコイル9の周囲には、ガラスクロスなどを裏打ち材としたマイカテープを所定回数巻回し主絶縁層12が形成されている。
【0015】
また、記固定子コイル6は、例えば、含浸槽にてエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を主絶縁層12に加圧含浸し、その後、熱硬化性樹脂を加熱硬化させたものや、予めエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含んだ半硬化状態のプリプレグマイカテープを熱プレスして形成したものがある。
【0016】
上述の代表される処理工程により、ボイドに代表される欠陥の少ない絶縁特性の良好な主絶縁層12を備えた固定子コイル6を得ることができる。
【実施例1】
【0017】
上述した主絶縁層12は、マイカテープ層と熱硬化性樹脂が完全に充填されていることが望まれるが、発電機用のコイルには、ボイドや剥離といった欠陥がある程度存在する。内部にボイドや剥離が存在する絶縁層に、部分放電開始電圧以上の電圧が加わるとボイドや剥離といった微小欠陥部で部分放電が発生する。
【0018】
絶縁層内に初期から存在していた微小欠陥に加え、主に熱的及び機械的ストレスにより新たに微小欠陥が形成される。長期間の運転により熱的、機械的、電気的、その他のストレスが加わると、これらが進展していくので、絶縁破壊電圧や機械強度が低下していくことが知られている。
【0019】
図3に、本発明の回転電機の絶縁診断装置の実施例1を、
図4に、その絶縁診断装置による印加電圧に対する部分放電電荷量特性の演算結果を基にした診断フローを示す。
【0020】
図3に示す本実施例の絶縁診断装置26は、固定子コイル6に印加した電圧を測定する電圧測定システム22と、固定子コイル6への電圧印加に伴い主絶縁層12から発生する部分放電の部分放電電荷量を取得する部分放電電荷量検出器23と、印加電圧と部分放電電荷量特性を取得するコンピュータ24と、コンピュータ24で得られた特性に対して演算処理を行う演算部30と、演算結果を基に絶縁劣化の評価を行う評価部31と、上記評価部31の評価結果を表示する表示部25とを備えて構成されている。尚、コンピュータ24、演算部30、評価部31、表示部25の機能が一体となっていても良い。
【0021】
上述した本実施例の絶縁診断装置26による絶縁診断方法の具体例を、
図3及び
図4を用いて説明する。
【0022】
診断対象である回転電機1の固定子コイル6(尚、診断対象は、回転電機1から抜き取った固定子コイル6を一本の状態とすることも可能である。)に対して高電圧電源21から接続端子29を介して交流電圧を印加(ステップS1)し、交流電圧を昇圧または降圧する(ステップS2)。その時、固定子コイル6に印加した電圧と部分放電電荷量を、絶縁診断装置26内の電圧測定システム22及び部分放電電荷量検出器23で測定する(ステップS3)。その後、測定終了条件か否かを判断(ステップS4)し、測定終了条件でなければステップS2に戻り電圧を昇圧または降圧し、その時の部分放電電荷量を測定する(ステップS3)。
【0023】
これを繰り返し、所定の電圧まで印加電圧と部分放電電荷量を取得し、測定終了条件であれば(ステップS4)、コンピュータ24にて取得した印加電圧と部分放電電荷量の関連付け(ある印加電圧のときの部分放電電荷量を取得)を行い、印加電圧に対する部分放電電荷量特性を取得する(ステップS5)。尚、部分放電電荷量の取得は、例えば、電流や電磁波の検出を用いたものが知られている(一例としては、特開平3−99286号公報の第4図に記載されている構成が挙げられる)。
【0024】
上記方法で得られた印加電圧に対する部分放電電荷量特性に対して、絶縁診断装置26内の演算部30にて、取得した特性に対して演算処理を行う(ステップS6)。その後、得られた演算結果に基づき評価部31にて絶縁劣化の診断を行う(ステップS7)。上記方法で得られた診断結果を絶縁診断装置26内の表示部25に表示する。
【0025】
尚、本実施例では昇圧または降圧時のデータを基に説明しているが、昇圧と降圧を組み合わせた場合のデータを基に診断しても良い。
【0026】
図5(a)、(b)には、一例として演算方法に自然対数表示にした部分放電電荷量の印加電圧に対する微分値を用いた場合の結果を示す。
【0027】
図5(a)では、印加電圧を0Vから所定の電圧まで上昇させた際に、バックグラウンドレベルから有意な差を持って微分値(部分放電電荷量)が急増し、最大値となった後に、急減する電圧領域(以下、第1のピーク27という)と、微分値がバックグラウンドレベルでほぼ一定となる電圧領域からなっている。
【0028】
この第1のピーク27の微分値が最大となる印加電圧V1と、部分放電電荷量微分値の上昇線と下降線で囲まれた電圧領域の第1のピーク27の半分の領域の幅(以下、半値幅という)H1を、予め設定した印加電圧に対する設定値Vと半値幅に対する設定値Hを比較すると、印加電圧V1は設定値Vよりも低く、半値幅H1は設定値Hよりも小さくなっている。
【0029】
このように演算処理を加えることで、測定者に依らず定量的な評価が可能となる。前記測定方法と演算処理によって得られた傾向(
図5(a))は、
図6(a)に示す熱劣化を与えた場合の実測結果の一例と同様の傾向を示す。
【0030】
これは
図7(a)に示すように、マイカテープ13の沿層方向(矢印P)の剥離或いはボイド14が発生、進展しているためであり、熱劣化が進む程、剥離或いはボイド14の発生、進展の程度が大きくなる傾向を示すため、熱劣化により機械的強度が低下し、振動や電磁力、遠心力などにより絶縁層に亀裂が生じやすくなる。
【0031】
図6(a)の例は、絶縁層の貫層方向(矢印R)に亀裂などの欠陥が形成されやすい状態になっていることを意味しており、診断期間の短縮などの対策を行う必要が有ると考えられるため、例えば警戒レベルと評価できる。
【0032】
図5(b)では、印加電圧を0Vから所定の電圧まで上昇させた際に、部分放電電荷量微分値の第1のピーク27よりも高い電圧領域で、部分放電電荷量微分値の第2のピーク28が現れており、印加電圧に対して部分放電電荷量微分値は、2つのピーク(第1のピーク27と第2のピーク28)が存在している。
【0033】
このように2つの部分放電電荷量微分値のピークが検出された場合は、機械的劣化が加わっていると推定できる。これによれば、測定者に依らずに定量的な評価が可能となる。
【0034】
上述した測定方法と演算処理によって得られた傾向(
図5(b))は、
図6(b)に示す機械的劣化を与えた場合の実測結果の一例と同様である。この傾向は、
図7(b)のように、絶縁層の貫層方向に進展する微小な亀裂15や亀裂15を介して剥離或いはボイド14といった欠陥が結合し進展していることによるためである。
【0035】
この絶縁層の貫層方向に進展する欠陥は、絶縁層にとっては致命的な欠陥であり、絶縁破壊電圧に代表される絶縁性能の大幅な低下を引き起こす可能性が高く、例えば、危険レベルと評価できる。
【0036】
これらをまとめた絶縁劣化診断フローを
図8に示す。
【0037】
該図に示す如く、本実施例の絶縁劣化診断フローは、演算部30での演算結果(ステップS1)からステップS2で第1のピーク27と第2のピーク28が検出されたかを判断し、第1のピーク27と第2のピーク28が検出された場合には、ステップS3で危険レベル(詳細な診断要)と評価し、ステップS2で第1のピーク27と第2のピーク28が検出されない場合には、ステップS4で第1のピーク27の印加電圧V1及び半値幅H1が設定値以下の場合には、ステップS
5で警戒レベル(診断期間短縮などの対策要)と評価し、ステップS4で第1のピーク27の印加電圧V1及び半値幅H1が設定値以上の場合には、ステップS6で監視レベル(現状問題なし、定期的な監視継続)と評価するものである。
【0038】
このように、本実施例の絶縁劣化診断は、第1のピーク27の部分放電電荷量微分値が最大となる印加電圧V1と半値幅H1が予め設定した設定値(VとH)よりも大きく、第2のピークが存在しない場合は、絶縁層に加わっている熱や機械力による劣化は小さく現時点では問題ないことを示している。このため、定期的な診断を継続して実施すれば良いと考えられるため、上述の如く、例えば、監視レベルと評価する。
【0039】
以上のように、従来の最大部分放電電荷量に代表される特性の絶対値には現れにくかった微小な欠陥の形成や進展による劣化現象を、本実施例によれば自然対数表示にした部分放電電荷量の印加電圧に対する微分値を基に評価可能となるため、測定者に依らず、微小な欠陥の連結に伴って生じる急速に絶縁破壊電圧に代表される絶縁性能が低下する劣化現象を捉えることが可能となり、絶縁余寿命を診断可能な絶縁診断技術を提供することができ、固定子コイルの絶縁劣化状態を精度よく評価できる効果が得られる。
【実施例2】
【0040】
本実施例は、実施例1の
図3に示した絶縁診断装置26で、より詳細な絶縁診断を可能とする絶縁診断方法である。
【0041】
図9に、本発明の回転電機の絶縁診断方法における診断フローの一例を示す。
【0042】
該図に示す如く、ステップ1で測定終了電圧V、1秒間当りの昇圧または降圧速度v、電圧及び部分放電電荷量のデータ測定間隔Δtをコンピュータ24に設定し、コンピュータ24で、電圧測定システム22と部分放電電荷量検出器23に同期した指令を出すことにより、印加電圧に対する部分放電電荷量特性を自動的にコンピュータ24で収録することができる。
【0043】
尚、測定する部分放電電荷量の発生頻度を任意で設定しても良い。一例としては、商用周波数が50Hzの場合には、発生頻度レベルを50パルス/秒、商用周波数が60Hzの場合には、60パルス/秒、即ち、印加電圧1サイクルに1回以上の発生頻度の信号を部分放電電荷量として取得するとノイズが効果的に除去できる。また、電圧及び部分放電電荷量を測定する時間間隔Δtは0.5秒程度、1秒間当りの昇圧または降圧速度vは0.1kV/秒程度とすると、データ数と評価精度のバランスが適切に保てることを確認している。
【0044】
ステップS1で上記設定をした後、測定対象に交流電圧を印加し(ステップS2)、ステップS3で交流電圧をΔVの条件で昇圧または降圧する。その際、印加電圧と部分放電電荷量のそれぞれの情報は、GPIB(General Purpose Interface Bus)などによって、三機器(電圧測定システム22、部分放電測定システム23、コンピュータ24)間で同期が取れている。コンピュータ24と電圧測定システム22及び部分放電測定システム23を用いて、コンピュータ24から電圧測定システム22と部分放電測定システム23に対して指令を出し、電圧及び部分放電電荷量の測定データを前記設定したΔtの測定間隔でそれぞれの情報を収録(ステップS4)し、コンピュータ24内に逐次記憶される(ステップS5)。
【0045】
次に、ステップS6で測定終了電圧か否かを判断し、測定終了電圧でない場合にはステップS3に戻りステップS6までのフローを繰り返す。ステップS6で測定が終了すると、コンピュータ24内に記憶した測定した結果を基に印加電圧に対する部分放電電荷量特性を取得(ステップS7)し、印加電圧と部分放電電荷量の関係を基に演算部30で演算処理を行う。なお、印加電圧に対する部分放電電荷量特性を表示しても良い。また、取得したデータは随時表示しても良い。
【0046】
演算部30では、自然対数表示にした部分放電電荷量の印加電圧に対する微分値を取得する(ステップS8)。尚、微分値は、任意の点数の印加電圧と自然対数表示にした部分放電電荷量から導出しても良い。一例としては、印加電圧と対数表示した部分放電電荷量をそれぞれ10点程度とすると、精度良く評価可能となる。
【0047】
その後、得られた演算結果に基づき、評価部31にて診断を行い、結果を表示部25に表示する(ステップS9)。尚、コンピュータ24、演算部30、評価部31、表示部25の機能が一体となっていても良い。
【0048】
このような本実施例によれば、実施例1と同様な効果が得られることは勿論、実施例1より詳細に、印加電圧と部分放電電荷量のデータを収録することが可能となり、より信頼性の高い絶縁診断方法を提供することができる。
【実施例3】
【0049】
本実施例は、実施例1及び2で説明した絶縁診断装置及び絶縁診断方法において、ノイズを除去し、絶縁診断に有意な信号を抽出する機能を兼ね備えた回転電機の絶縁診断装置及び絶縁診断方法である。
【0050】
図10に、本実施例の絶縁診断装置の構成の一例を、
図11に、本実施例の絶縁診断方法における診断フローを示す。なお、本実施例中では、昇圧または降圧時のデータを基に説明しているが、昇圧と降圧を組み合わせたデータを基にしても良い。
【0051】
図10に示す本実施例の絶縁診断装置26は、実施例1及び2の
図3の構成の演算部30と評価部31の間に、ノイズ除去・信号抽出部32を付加した構成となっている。即ち、実施例1及び2で説明した方法で得られた自然対数表示にした部分放電電荷量の印加電圧に対する微分値に対して、本実施例で付加したノイズ除去・信号抽出部32にて、診断に有意な信号の抽出を行うものである。
【0052】
ノイズ除去・信号の抽出の方法の一例としては、印加電圧位相によるノイズの分離、微分値に対して予め信号とするレベルの閾値を設定しておき、微分値が複数の点で事前に設定したレベルを超えない場合は、ノイズとして処理するといった方法などにより行う。
【0053】
ノイズ除去・信号の抽出は、1つだけではなく複数を組み合わせることで、より効果的にノイズ除去・信号抽出が可能である。ノイズ除去・信号抽出が行われた結果を基に評価部31にて診断を行い、その結果を表示部25に表示する。尚、コンピュータ24、演算部30、ノイズ除去・信号抽出部32、評価部31、表示部25の機能が一体となっていても良い。
【0054】
図11に、本実施例の絶縁診断装置26を用いた絶縁診断方法における診断のフローを示す。
【0055】
該図に示す本実施例の診断フローは、実施例2の
図9で説明した診断フローのステップS8の後に、ステップ10のノイズ除去・信号抽出の処理を加えた構成となっている。他のフローは、
図9と同様である。
【0056】
このような本実施例によれば、実施例2と同様な効果が得られることは勿論、ノイズを除去し、診断に対して有意な信号を抽出することが可能となり、信頼性の高い診断結果を提供できる。
【実施例4】
【0057】
本実施例は、実施例1、2及び3で説明した絶縁診断装置及び絶縁診断方法において、危険レベルと判定された固定子コイル6に対して、
図5(b)に示す第2のピーク28の微分値が最大となる印加電圧V2と、部分放電電荷量微分値の上昇線と下降線で囲まれた電圧領域の第2のピーク28の半値幅H2を用いて、機械的劣化レベルを評価する絶縁診断方法及び絶縁診断装置である。
【0058】
図12に、本実施例の絶縁診断装置26の構成の一例を示す。
【0059】
該図に示す本実施例の絶縁診断装置26は、実施例3の
図10の構成の評価部31と表示部25の間に、レベル判定部33を加えた構成となっている。即ち、評価部31で得られた第1のピーク27及び第2のピーク28に関して、レベル判定部33では診断に対して予め設定した指標を抽出し、その指標を基に診断を行い、その結果を表示部25に表示するようになっている。尚、コンピュータ24、演算部30、ノイズ除去・信号抽出部32、評価部31、レベル判定部33、表示部25の機能が一体となっていても良い。
【0060】
図13に、本実施例の絶縁診断装置26を用いた絶縁診断方法における診断フローを示す。
【0061】
通常、機械的劣化では、第2のピーク28の微分値が最大となる印加電圧V2が機械力の増加に伴い低下する傾向を確認している。これは、絶縁層の貫層方向に進展する微小な亀裂や亀裂を介した剥離やボイドといった欠陥が結合し進展していることによるためである。
【0062】
そのため、本実施例では、評価部31で危険レベルと評価された場合は、レベル判定部33にて、指標として第2のピーク28の微分値が最大となる印加電圧V2と、第2のピーク28の半値幅H2を抽出し、劣化レベルの判定を行うものである。
【0063】
即ち、
図13に示す如く、本実施例の絶縁劣化診断フローは、演算部30での演算結果(ステップS1)からステップS2で第1のピーク27の微分値が最大となる印加電圧V1が設定値以下か否かを判断し、V1が設定値以下であれば第2のピーク28の微分値が最大となる印加電圧V2と第2のピーク28の半値幅H2を観測し(ステップ3)、V2とH2が観測されなければステップ4で警戒レベル(診断期間短縮などの対策要)と評価し、ステップS3でV2とH2が観測されるとステップS5で危険レベル(抜取り検査を含む詳細な診断要)と評価する。
【0064】
次に、ステップS2で第1のピーク27の微分値が最大となる印加電圧V1が設定値以下でなければステップS6で第1のピーク27の半値幅H1が設定値以下か否かを判断し、H1が設定値以下であればステップS7でV2とH2を観測し、V2とH2が観測されなければステップ8で警戒レベル(診断期間短縮などの対策要)と評価し、ステップS7でV2とH2が観測されるとステップS9で危険レベル(抜取り検査を含む詳細な診断要)と評価する。
【0065】
更に、ステップS6で第1のピーク27の微分値が最大となる印加電圧V1が設定値以下でなければステップS10で第2のピーク28の微分値が最大となる印加電圧V2と第2のピーク28の半値幅H2を観測し、V2とH2が観測されるとステップS11で危険レベル(抜取り検査を含む詳細な診断要)と評価し、ステップS10でV2とH2が観測されなければステップS12で監視レベル(現状問題なし。定期的な監視継続)と評価する。
【0066】
尚、本実施例では、1種類の指標による診断、複数の指標を組み合わせた診断の何れを行っても良い。
【0067】
これらの指標を1種類または複数を組み合わせて診断することで、機械力に伴う絶縁層の貫層方向に進展する亀裂の形成・進展を評価することが可能となる。また、測定結果をコンピュータ24に保存しておけば、経年的な変化を把握することができ、寿命限界の時期を推定することも可能となる。また、運転状況などに起因する劣化速度の異なる機器毎に応じた余寿命推定も可能となる。
【0068】
このような本実施例によれば、実施例3と同様な効果が得られることは勿論、機械的劣化レベルを評価することが可能となるため、危険レベルを更に細分化した絶縁診断技術を提供することができる。
【実施例5】
【0069】
本実施例は、実施例1で説明した
図3の絶縁診断装置26において、演算方法として所定の電圧増加または減少に対する部分放電電荷量の増加量或いは減少量を用い、その結果を基に絶縁劣化を診断する方法である。
【0070】
図14に、本実施例の回転電機の絶縁診断方法における診断フローの一例を示す。
【0071】
診断対象である回転電機1の固定子コイル6に対して高電圧電源21から接続端子29を介して交流電圧を印加(ステップS1)し、交流電圧を昇圧または降圧する(ステップS2)。その時、固定子コイル6に印加した電圧と部分放電電荷量を、絶縁診断装置26内の電圧測定システム22及び部分放電電荷量検出器23で測定する(ステップS3)。その後、測定終了条件か否かを判断(ステップS4)し、測定終了条件でなければステップS2に戻り交流電圧を昇圧または降圧し、その時の部分放電電荷量を測定する(ステップS3)。
【0072】
これを繰り返し、所定の電圧まで印加電圧と部分放電電荷量を取得し、測定終了条件であれば(ステップS4)、コンピュータ24にて取得した印加電圧と部分放電電荷量の関連付け(ある印加電圧のときの部分放電電荷量を取得)を行い、印加電圧に対する部分放電電荷量特性を取得する(ステップS5)。
【0073】
上記方法で得られた印加電圧に対する部分放電電荷量特性に対して、予め演算処理に用いる電圧増加幅を設定し、実施例1記載の方法で得られた印加電圧と部分放電電荷量の関係を基に、設定した電圧増加幅に対する部分放電電荷量の増加量を導出(ステップS6)し、その後、得られた演算結果に基づき評価部31にて絶縁劣化の診断を行う(ステップS7)。上記方法で得られた診断結果を絶縁診断装置26内の表示部25に表示する。
【0074】
尚、本実施例の印加電圧及び部分放電電荷量に、昇圧と降圧を組み合わせた場合を基に診断しても良い。
【0075】
このような本実施例によれば、実施例1と同様な効果が得られることは勿論、測定者に依存せず定量的に絶縁劣化の診断を行うことが可能な絶縁診断方法を提供することができる。
【0076】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成を置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。