(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中心管の内部で一端から他端にかけて連続的に延びる仕切り部を有し、前記中心管の内部は、前記仕切り部によって前記流入領域および前記流出領域に区画されている、請求項1〜5のいずれかに1項に記載のスパイラル型正浸透膜エレメント。
連結された複数の前記スパイラル型正浸透膜エレメントが前記圧力容器内に装填され、前記スパイラル型正浸透膜エレメントの前記流入領域に液体を流入させるための流入口を両端に備える、請求項10に記載の正浸透膜モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0013】
(第1の実施形態)
図1に本発明の第1の実施形態に係るスパイラル型正浸透膜エレメント2を内蔵する正浸透膜モジュール1を示す。この正浸透膜モジュール1はベッセルと呼ばれる筒状の圧力容器9Aと、圧力容器9A内に装填された複数のスパイラル型正浸透膜エレメント2とを備えている。圧力容器9Aの両端には、円盤状のキャップ9Bが取り付けられている。
【0014】
一方(
図1では左側)のキャップ9Bの中心には中心貫通孔9Cが形成され、中心貫通孔9Cの圧力容器9A側に、中心供給部材7Aが取り付けられている。中心供給部材7Aには流入口7Bが形成されている。また、周辺供給部材8Aが、一方のキャップ9Bの中心からずれた位置に取り付けられている。
【0015】
他方(
図1では右側)のキャップ9Bの中心にも中心貫通孔9Cが形成され、中心貫通孔9Cの圧力容器9A側に中心排出部材7Cが取り付けられている。中心排出部材7Cには流出口7Dが形成されている。また、周辺排出部材8Bが他方のキャップ9Bの中心からずれた位置に取り付けられている。
【0016】
圧力容器9A内に装填された複数のスパイラル型正浸透膜エレメント2は、隣り合うスパイラル型正浸透膜エレメント2の後述する供給管32同士および回収管33同士がそれぞれ連結器6B、6Eによって連結されている。一端(
図1では左側)に位置するスパイラル型正浸透膜エレメント2は、供給連結部材6Aおよびプラグ6Dによって中心供給部材7Aと連結されている。また、他端(
図1では右側)に位置するスパイラル型正浸透膜エレメント2は、排出連結部材6Fおよびプラグ6Cによって中心排出部材7Cと連結されている。
【0017】
本実施形態の正浸透モジュール1には、第1液体と、第1液体よりも溶質濃度が高く、第1液体よりも浸透圧が高い第2液体がそれぞれ供給される。本実施形態では、第1液体は、流入口7Bから中心供給部材7Aおよび供給連結部材6Aを介して、スパイラル型正浸透膜エレメント2の内部に供給され、連結された複数のスパイラル型正浸透膜エレメント2の内部を流れる。その後、第1液体は、排出連結部材6Fおよび中心排出部材7Cを介して、流出口7Dから正浸透膜モジュール1の外部へ排出される。第1液体は、連結された複数のスパイラル型正浸透膜エレメント2内の第1の内部を通ることで濃縮される。
【0018】
一方、第2液体は、周辺供給部材8Aから圧力容器9Aの内部に供給される。圧力容器9Aの内部に供給された第2液体は、スパイラル型正浸透膜エレメント2の内部を流れる第1液体の流れと並行に流れるように、連結された複数のスパイラル型正浸透膜エレメント2の内部を流れる。その後、第2の液体は、スパイラル型正浸透膜エレメント2の内部を出て周辺排出管8Bから圧力容器9Aの外部に排出される。第2液体は、連結された複数のスパイラル型正浸透膜エレメント2の内部を通ることで希釈される。本実施形態においては、第1液体は濃縮されるべき液体であり、第2液体は希釈されるべき液体ということもできる。
【0019】
第1液体の流れと第2液体の流れとは、スパイラル型正浸透膜エレメント2の後述する正浸透膜21の両面を並行して流れる。第2液体の浸透圧は、第1液体の浸透圧よりも高いので、第1液体から第2液体に向かって、浸透現象によって正浸透膜21を介して液体移動が生じる。これに伴い、周辺供給部材8Aへ供給された流量よりも周辺排出部材8Bから流出する流量が増加する。
【0020】
正浸透膜21の両面に第1液体と第2液体を並行に流すのは、正浸透膜21の近傍で濃度分極層が成長し、第1液体から第2液体への浸透現象による液体移動が著しく低下することを防ぐためである。
【0021】
例えば、第1液体としては淡水が用いられ、第2液体としては海水が用いられるが、第1液体および第2液体は、これに限定されない。第1液体として通常の海水を用い、第2液体として通常濃度より高い濃度の濃縮された海水を用いてもよい。つまり、第1液体と第2液体との間で浸透圧が異なっていればよい。濃縮されるべき液体である第1液体は、淡水のように溶質成分をほとんど含まず、実質的に濃縮されない液体であってもよい。
【0022】
本実施形態においては、第2液体は所定圧力だけ加圧されて供給されている。このように、希釈されるべき液体を加圧して行う方法はPRO(Pressure Retarded Osmosis)と呼ばれている。第1液体と希釈されるべき第2液体の双方を加圧しないで供給する方法であってもよく、本発明ではこれらの方法を包含して「正浸透」と呼び、これらの用途で用いられる膜を「正浸透膜」という。
【0023】
次に、
図1〜
図3を参照してスパイラル型正浸透膜エレメント2の構成について詳細に説明する。なお、図面に付した座標軸のx方向、y方向、z方向は、いずれの図面においてもスパイラル型正浸透膜エレメント2および正浸透膜モジュール1に関して同一の方向を示すものとする。
【0024】
各スパイラル型正浸透膜エレメント2は、中心管31と、中心管31の周りに巻き回された積層体20と、積層体20を取り囲む外装材40とを有している。また、端部材5が、積層体20を挟むように配置されて中心管31の両端に取り付けられている。外装材40は、両側の端部材5によって保持されている。端部材5は中心管31に巻き回された積層体20がテレスコピック状に伸長することを防止する役割を果たす。
【0025】
端部材5には中心管31に嵌合する筒状の内周部51と、内周部51を離間しながら取り囲む、内周部51と同心に配置された筒状の外周部52とを備える。内周部51と外周部52とは連結部(不図示)で連結されている。内周部51の外周面と外周部52の内周面との間に液体が流通可能な連通路55が形成されている。本実施形態では、隣り合うスパイラル型正浸透膜エレメント2において、下流側の端部材5と上流側の端部材5が接しており、隣り合う端部材5の連通路55同士が連なっている。
【0026】
図2(a)および
図2(b)に示すように、中心管31の内部には、供給管32および回収管33が、それらの外周面が互いに接するように、並んで配置されている。また、供給管32および回収管33が並ぶ方向において、供給管32の外周面および回収管33の外周面が中心管31の内周面と接するように、供給管32および回収管33が中心管31内部に配置されている。
【0027】
中心管31、供給管32および回収管33がそれぞれ接する箇所以外において、中心管31の内周面と供給管32の外周面および回収管33の外周面との間には隙間が存在する。この隙間に樹脂が充填されて、中心管31の内部に供給管32および回収管33が保持されている。充填された樹脂は封止部34を形成する。この隙間に樹脂が充填されることで、流入領域3Aおよび流出領域3B中の液体が、貫通孔32Aまたは貫通孔33Aから中心管31の内周面と供給管32の外周面および回収管33の外周面との間の隙間に漏れることを防止できる。
【0028】
充填される樹脂としては二液性熱硬化樹脂、一液性熱硬化樹脂および溶融した熱可塑性樹脂などを用いることができる。封止部34を形成する工程の作業効率を考慮すると、充填される樹脂として二液性熱硬化樹脂を用いるのが好ましい。本実施形態によれば、供給管32および回収管33の外周面のほとんどが封止部34で囲まれるので、中心管31の内部でこれらが強固に保持される。
【0029】
図2(a)、
図2(b)および
図3に示すように、複数の供給孔31Aおよび複数の回収孔31Bが、それぞれが中心管31の軸方向(x軸方向)に延びる列をなすように、中心管31の管壁に形成されている。また、複数の供給孔31Aと複数の回収孔31Bは、x軸方向において互いにずれた位置に形成されている。
【0030】
図2(b)に示すように、供給管32の内周面は流入領域3Aを区画し、回収管33の内周面は流出領域3Bを区画している。
図3に示すように、流入領域3Aおよび流出領域3Bは、中心管31の一端から他端にかけて中心管31の軸方向(x軸方向)に連続的に延びている。流入領域3Aおよび流出領域3Bは、詳細は後述するが、第1液体が流れる流路を形成している。供給管32は、中心管31の供給孔31Aと連通する貫通孔32Aを有し、回収管33は、中心管31の回収孔31Bと連通する貫通孔33Aを有する。
【0031】
図2(a)および
図2(b)に示すように、積層体20は、内側流路部材22の両面に正浸透膜21が重ね合せられた封筒状の膜リーフ23と外側流路部材24とが交互に積層された構成を有している。内側流路部材22は、例えば樹脂などからなる網であり、正浸透膜21同士の間に第1液体を流すための内側流路20Aを形成する。外側流路部材24は、例えば樹脂からなる網であり、膜リーフ23同士の間に第1液体よりも浸透圧の高い第2液体を流すための外側流路20Bを形成する。本実施形態の正浸透膜エレメント2では、第2液体は加圧されて供給されるので、正浸透膜21同士が密着してしまうことを防止するために内側流路部材22としては比較的緻密な構造の網を用いることが好ましい。一方、外側流路部材24は内側流路部材22よりも目の粗い疎な構造の網である。
【0032】
例えば、1枚の連続したシート25が外側流路部材24を挟んで二つ折りにされることにより、2枚の正浸透膜21が形成される。膜リーフ23はそのように形成された正浸透膜21同士が内側流路部材22を挟んで三辺で接合されることにより得られる。この接合には接着剤が用いられる。また、例えば、内側流路部材22の1枚を延長させた延長部が中心管31に直接巻き付けられ、その両端部が接着剤で封止されることにより、中心管31の外周面に面する筒状流路20Cが形成される。
【0033】
積層体20の構成は
図2(a)および
図2(b)に示した構成に限られない。例えば連続したシートが蛇腹状に折り畳まれることにより、すべての正浸透膜21がつながっていてもよい。
【0034】
正浸透膜21としては、例えば多孔性支持体上にスキン層を形成した複合膜を用いることができる。多孔性支持体としてはエポキシ樹脂多孔質膜を用いることができる。また、多孔性支持体上に形成するスキン層としては、多官能アミン成分と多官能酸ハロゲン成分とを重合してなるポリアミド系樹脂を含むスキン層を用いることができる。
【0035】
ポリアミド系樹脂を含むスキン層をエポキシ樹脂多孔質膜の表面に形成する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、界面縮合法、相分離法、薄膜塗布法を用いることができる。一例としては、多官能アミン成分を有するアミン水溶液と、多官能酸ハライド成分を含有する有機溶液とを接触させることによりスキン層を形成し、前記スキン層をエポキシ樹脂多孔質膜上に載置することとすればよい。前記多官能アミン成分としては、芳香族、脂肪族、または脂環式の多官能アミンが挙げられる。またこれらの多官能アミン成分は単独で用いてもよく、混合物としてもよい。前記多官能ハライド成分としては、芳香族、脂肪族、または脂環式の多官能酸ハロゲン化物を用いることができる。これらの多官能酸ハライド成分において単独で用いてもよいが、混合物として用いてもよい。
【0036】
多孔性支持体の構成材料としては、上記以外のものを採用することができる。例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリアリールエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン等が例示できる。
【0037】
また、スキン層の構成材料としては、上記以外のものを採用することができる。例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルアルコール(PVA)、PMMA、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが例示できる。
【0038】
図3を参照して、中心管31の内部と膜リーフ23の内部について詳しく説明する。
図3は、中心管31内部および膜リーフ23内部での液体の流れを模式的に示す断面図である。簡略化のために、1つの膜リーフ23のみを図示している。
【0039】
膜リーフ23において、2枚の正浸透膜21同士の三辺を接合する上述した接着剤からなる接合部29によって空間が区画されている。この空間は、接合部29が形成されない辺からこれと対向する辺まで、2枚の正浸透膜21同士を接合する例えば接着剤からなる接合部28によって区切られている。これにより、中心管31の軸方向に並んだ3つの内部流路26が形成されている。それぞれの内部流路26には、接合部29が形成されない辺からこれと対向する辺に向かって延び、かつ、接合部29との間に隙間が形成されるように、2枚の正浸透膜21同士を接合する例えば接着剤からなる接合部27によって区切られている。
【0040】
この接合部27〜29によって、内部流路26は、膜リーフ23の一端(接合部29が形成されていない端)に第1開口26Aおよび第2開口26Aが形成され、第1開口26Aから第2開口26Bに向かうU字状の流路として構成されている。また、1つの膜リーフ23において全ての内部流路26が中心管31の軸方向(x軸方向)に並列に並んでおり、それらの第1開口26Aおよび第2開口26Bは中心管31の軸方向(x軸方向)に交互に並んでいる。
【0041】
接合部27〜29は中心管31の外周面に向かって延長されており、筒状流路20Cを形成する内側流路部材22を挟んで、正浸透膜21は中心管31の外周面に接合される。これによって、筒状流路20Cは中心管31の軸方向に分断されており、一の内部流路26における第1開口26Aと第2開口26Bとの間、あるいは、中心管31の軸方向(x軸方向)において隣り合う内部流路26同士が隔離されている。
【0042】
流入領域3Aは、貫通孔32A、供給孔31Aおよび筒状流路20Cを介して、第1開口26Aと連通している。また、流出領域3Bは、貫通孔33A、回収孔31Bおよび筒状流路20Cを介して、第2開口26Bと連通している。実際には、第1開口26Aには、複数の貫通孔32Aおよび複数の供給孔31Aが連通し、第2開口26Bには、複数の貫通孔33Aおよび複数の回収孔31Bが連通しているが、
図3では簡略化のためそれぞれ1つずつ図示している。
【0043】
次に、
図3を参照して、中心管31内部および膜リーフ23の内部流路26における第1液体の流れを説明する。
【0044】
図3の矢印は、スパイラル型正浸透膜エレメント2を流れる第1液体の流れを模式的に示している。正浸透膜モジュール1に供給された第1液体は、流入口7Bを介して、場合によっては上流側のスパイラル型正浸透膜エレメント2を介して、供給管32に流入し、流入領域3Aを第1液体が流れる。
【0045】
流入領域3Aを流れる第1液体は、貫通孔32A、供給孔31Aおよび筒状流路20Cを介して、第1開口26Aから内部流路26へ入り、内部流路26を流れる。膜リーフ23の外部には周辺供給部材8Aから供給される第2液体(第1液体よりも高浸透圧の液体)が流れており、第1液体および第2液体が膜リーフ23の正浸透膜21の両面を流れている。従って、内部流路26を流れる第1液体の一部は、浸透現象により正浸透膜21を介して膜リーフ23の外部へと移動する。そして、膜リーフ23の上流側の内部流路26から膜リーフ23の外部へ移動しなかった第1液体は、内部流路26の第2開口26Bを出て、筒状流路20C、回収孔31Bおよび貫通孔33Aを介して、流出領域3Bへ入る。第1液体が溶質成分を含むものである場合には、流出領域3Bに入った第1液体は流入領域3Aに流入した第1液体よりも濃縮されている。
【0046】
この流出領域3Bに入った第1の液体は、場合によっては下流側のスパイラル型正浸透膜エレメント2の流出領域3Bを流れ、流出口7Dを介して正浸透膜モジュール1の外部に排出される。
【0047】
図1に示す通り、正浸透モジュール1において、最下流に位置するスパイラル型正浸透膜エレメント2の供給管32の他端はプラグ6Cによって封止されている。従って、正浸透膜モジュール1に供給された第1液体はスパイラル型正浸透膜エレメント2のいずれかの内部流路26を流れて正浸透膜モジュール1から排出されることとなる。流入領域3A内の第1液体が、流入領域3Aを出て内部流路26を流れ、一旦流出領域3Bに入ると、流出領域3B内の第1液体は、再び内部流路26を流れることなく、外部に排出される。
【0048】
すなわち、流入領域3Aに供給された第1液体は内部流路26を複数回流れることなく、外部に排出される。従って、従来技術のように、スパイラル型正浸透膜エレメントに供給された液体が2つの内部流路を順に通過して内部流路を2回流れるのに比べて、本実施形態は、スパイラル型正浸透膜エレメントの中心管内部および膜リーフ内部の液体流れの圧力損失を低減することができる。
【0049】
本実施形態において、中心管31の一端から他端にかけて、流入領域3Aが形成する流路の断面積は一定であり、流出領域3Bが形成する流路の断面積も一定である。これにより、流入領域3Aが形成する流路の断面積または流出領域3Bが形成する流路の断面積が、中心管31の軸方向において変化することに伴い生じる圧力損失の増加を抑制できる。
【0050】
本実施形態においては、流入領域3Aが形成する流路の断面積が、流出領域3Bが形成する流路の断面積よりも大きい。内部流路26において、第1液体の一部は正浸透膜21を介して膜リーフ23の外部へ移動するので、流出領域3Bによって形成される流路を流れる第1液体の流量は、流入領域3Aによって形成される流路を流れる第1液体の流量よりも少なくなる。流入領域3Aによって形成される流路および流出領域3Bによって形成される流路が上記のように構成されていれば、流入領域3Aによって形成される流路により多くの第1液体を供給できるとともに、流出領域3Bによって形成される流路の利用効率を高めることができる。
【0051】
流入領域3Aが形成する流路の断面積Saと流出領域3Bが形成する流路の断面積Sbとの比Sa/Sbは、スパイラル型正浸透膜エレメントにおいて、第1液体の供給量と第1液体の排出量との間の良好なバランスを実現でき、効率の良い正浸透操作を実現できるように調整することが好ましい。
【0052】
(変形例)
図4〜
図6を参照して、変形例について説明する。
図4〜
図6は変形例に係るスパイラル型正浸透膜エレメント2の中心管31のzy平面の断面図を示したものである。変形例に係るスパイラル型正浸透膜エレメント2は、中心管31の構造が異なる点を除き、第1の実施形態のスパイラル型正浸透膜エレメント2と同様に構成されている。
【0053】
<第1変形例>
図4(a)および
図4(b)は、第1変形例に係る中心管31の内部構造を示す断面図である。第1変形例において、管径の等しい2つの供給管32が、それらの外周面が中心管31の内周面と接するように並んで、中心管31内に配置されている。また、管径の等しい2つの回収管33が、それらの外周面が、中心管31の内周面および2つの供給管32の外周面と接するように配置されている。中心管31の内周面と2つの供給管32の外周面および2つの回収管33の外周面との間には、供給管32の外周面と回収管33の外周面とが接する位置よりも中心管31の内周面側に4つの隙間が存在する。そして、この4つ隙間に樹脂が充填され、封止部34が形成されている。供給管32の径は、回収管33の径よりも大きく、流入領域3Aが形成する流路の断面積が、流出領域3Bが形成する流路の断面積よりも大きい。
【0054】
2つの供給管32および2つの回収管33は周方向に交互に配置されている。これに伴い、供給孔31Aおよび貫通孔32A、ならびに、回収孔31Bおよび貫通孔33Aが、中心管31周方向の2箇所に設けられている。従って、中心管31の周方向の複数箇所において、流入領域3Aから内部流路26への第1液体の供給あるいは内部流路26から流出領域3Bへの第1液体の回収が可能となる。これにより、中心管31の周りに巻き回された複数の膜リーフ23に対してより均等に第1液体を供給することができる。
【0055】
また、第1変形例においては、第1の実施形態と比較して、中心管31の内周面と供給管32の外周面および回収管33の外周面との隙間を減らすことができる。従って、流入領域3Aおよび流出領域3Bについてより多くの容積を確保でき、スパイラル型正浸透膜エレメントの処理能力の向上を図ることができる。また、第1の実施形態と比べて、中心管31の内周面と供給管32の外周面および回収管33の外周面との隙間に充填される樹脂の量を減らすことができる。
【0056】
<第2変形例>
図5(a)および
図5(b)は、第2変形例に係る中心管31の内部構造を示す断面図である。この中心管31は、内部に中心管31の一端から他端にかけて連続的に延びる仕切り部36を有し、中心管31の内周面と仕切り部36とによって流入領域3Aと流出領域3Bとが区画されている。仕切り部36のy軸方向の長さは、中心管31の内径よりも短い。従って、流入領域3Aによって形成される流路の断面積が、流出領域3Bによって形成される流路の断面積よりも大きい。流入領域3Aおよび流出領域3Bを中心管31の外部と連通させるように中心管31の管壁に貫通孔を設けられ、供給孔31Aおよび回収孔31Bが形成されている。
【0057】
仕切り部36を有する中心管31は、押出成形や射出成形などにより作製できる。また、中心管36の内周面に仕切り部36となる板状材を熱溶着、超音波溶着、溶接、接着等によって接合することによって作製することもできる。あるいは、断面が半円である2つの管を互いに接合して作製することもできる。
【0058】
第2変形例によれば、中心管31の内部に樹脂を充填して封止部34を形成する必要がないので、中心管31の内部の容積の多くを流入領域3Aあるいは流出領域3Bとして利用することができ、スパイラル型正浸透膜エレメントの処理能力の向上を図ることができる。
【0059】
<第3変形例>
図6(a)および
図6(b)は、第3変形例に係る中心管31の内部構造を示す断面図である。第3変形例においては、中心管31の内部に断面が楕円形状の内管38が固定されている。内管38の長手方向の外径は中心管31の内径とほぼ一致しており、内管38は長手方向において中心管31の内周面と接するように配置されている。中心管31の内周面と内管38の外周面とによって流入領域3Aが区画され、内管38の内周面によって流出領域3Bが区画されている。中心管31の管壁には、内管38断面の長軸と交わる位置で互いに対向する複数の回収孔31Bが形成されている。内管38の管壁には、複数の回収孔31Bに連通するように、複数の貫通孔38Aが形成されている。流出領域3Bは、貫通孔38Aおよび回収孔31Bを介して中心管31の外部と連通している。
【0060】
中心管31の管壁には、内管38と接する位置(内管38断面の長軸方向と交わる位置)以外の位置に供給孔31Aが形成されている。流入領域3Aは、供給孔31Aを介して中心管31の外部と連通している。
【0061】
内部に内管38を有する中心管31は、押出成形や射出成形などにより作製できる。また、中心管31の内周面と内管38の外周面とを熱溶着、超音波溶着、溶接、接着等によって接合することによって作製することもできる。
【0062】
第3変形例によれば、中心管31の内周面と内管38の内周面との隙間を流入領域3Aとして利用することができるので、第1の実施形態と比べてスパイラル型正浸透膜エレメントの処理能力の向上を図ることができる。
【0063】
また、中心管31の管壁において、内管38と接する位置(内管38断面の長軸方向と交わる位置)以外の位置に供給孔31Aを形成することができるので、中心管3の周方向に巻き回された複数の膜リーフ23の内部流路26へより均等に液体を供給することを促進できる。
【0064】
(その他の実施形態)
本発明のスパイラル型正浸透膜エレメントおよび正浸透モジュールは上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、様々な実施形態とすることが可能である。
【0065】
第1の実施形態において、正浸透膜モジュール1の一端(
図1の左側)に流入口7Bが設けられているが、
図7に示すように、流入口7Bを有する流路部材7Eを両端のキャップ9Bの中心貫通孔9Cの圧力容器9A側に取り付けて、正浸透膜モジュール1の両端に流入口7Bを設けてもよい。この場合に、さらにプラグ6Cに代えて供給連結部材6Aを設ければ、正浸透膜モジュール1の両端からスパイラル型正浸透膜エレメント2の中心管31内の流入領域3Aに、第1液体を供給することができる。第1液体を正浸透膜モジュール1の両端からスパイラル型正浸透膜エレメント2の流入領域3Aに供給すれば、正浸透膜モジュール1の一端から流入した第1液体の流れは、流入領域3Aにおいて、正浸透膜モジュールの他端から流入した第1液体の流れとぶつかり、連結された複数のスパイラル型正浸透膜エレメントの流入領域3Aが形成する流路の他端まで流れない。従って、中心管31内の第1液体の流れの実質的な流路長が短くなり、中心管31内を流れる第1液体の圧力損失をより低減できる。
【0066】
第1の実施形態に係る正浸透膜モジュール1においては、複数のスパイラル型正浸透膜エレメント2が連結されて、圧力容器9A内に装填されているが、圧力容器9A内に、1つのスパイラル型正浸透膜エレメント2のみが装填されることとしてもよい。この場合においても、正浸透膜モジュール1の両端に流入口が設けられてもよい。
【0067】
第1実施形態および変形例に記載の通り、流入領域3Aによって形成される流路の断面積は流出領域3Bによって形成される流路の断面積よりも大きいことが好ましい。しかし、流入領域3Aによって形成される流路の断面積と流出領域3Bによって形成される流路の断面積との大小関係はこれに限られない。両者が同じ大きさであってもよいし、場合によっては、両者の大小関係が逆転していてもよい。
【0068】
第1の実施形態に記載の通り、第2液体の浸透圧は、第1液体の浸透圧よりも高いことが好ましいが、第1液体の浸透圧よりも低くてもよい。この場合には、膜リーフ23の外部から正浸透膜21を介して膜リーフ23の内部流路26へ第2の液体の一部が移動する。つまり、流入領域3Aによって形成される流路を流れる流量よりも流出領域3Bによって形成される流路を流れる流量が多い。従って、流出領域3Bによって形成される流路の断面積は、流入領域3Aによって形成される流路の断面積よりも大きいことが好ましい。
【0069】
第1の実施形態および変形例においては、中心管および内管(供給管、回収管)として、円管あるいは楕円管を用いている。しかし、中心管および内管の形状はこれに限られない。方形管を用いてもよいし、断面形状としては任意の形状である管を用いることができる。ところで、スパイラル型正浸透膜エレメント2の中心管3の端部と中心供給部材7Aまたは中心排出部材7C、あるいは、隣り合うスパイラル型正浸透膜エレメント2の中心管3の端部との間の封止のためにO−リング等のパッキンを用いることがある。この点を考慮すると、中心管または内管として、円管あるいは楕円管を用いるのが好ましい。
【0070】
第1実施形態においては、中心管31の内周面と供給管32の外周面および回収管33の外周面との隙間に樹脂が充填されて、中心管31内部に供給管32および回収管33を保持されていたが、回収管32および回収管33が内部で連結された中心管31を押出成形などによって作製することとしてもよい。これによれば、中心管31の内周面と供給管32の外周面および回収管33の外周面との隙間に樹脂を充填して封止部34を形成する必要がなくなる。
【0071】
第1の実施形態において、第1開口26Aを形成する開口端の幅は、第2開口26Bを形成する開口端の幅よりも長くてもよい。このようにすることで、第2開口26Bの開口面積が第1開口26Aの開口面積よりも大きくなりやすい。膜リーフ23の内部流路26を流れる第1液体の一部は浸透現象により正浸透膜21を介して膜リーフ23の外部へ移動するので、第2開口26Bを通る第1液体の流量は、第1開口26Aを通る第1液体の流量よりも低下する。第1開口26Aおよび第2開口26Bについて上記の構成とすることで、第1開口26Aおよび第2開口26Bのそれぞれを通過する第1液体の流量に合せた開口面積を確保することが容易となる。
【0072】
第1の実施形態において、1つの膜リーフ23の内部流路26の数は3つであるが、これに限られない。1つの膜リーフにおいて内部流路の数は1つであってもよいし、2つであってもよいし、3つ以上であってもよい。内部流路が3つ以上であれば、内部流路の中心管軸方向の巾が小さくなって、内部流路の隅々まで液体を行き渡らせることができる。その結果、正浸透膜21の利用効率を高めることができる。ただし、内部流路の数が多すぎると、内部流路26内の流路抵抗が増し、また、接合部27、28として必要な部分の面積が増えてしまう。正浸透膜21の利用効率を高める観点からは、1つの膜リーフ23の内部流路26の数は2〜5が適当である。
【0073】
第1変形例においては、2つの供給管32および2つの回収管33が中心管31の内部に固定されていたが、固定される供給管32の数および回収管33の数は2つ以上であってもよい。また、両者が等しい数である必要はなく、供給管32または供給管31の少なくとも一方が1つであってもよい。中心管31の内部に固定される、供給管の数または回収管の数が増えるほど、中心管31の内周面と供給管32の外周面および回収管33の外周面との隙間が減って、流入領域3Aまたは流出領域3Bの容積をより多く確保できる。さらに、供給管32の内径と回収管33の内径は両者が同一であってもよいし、場合によっては回収管33の内径が供給管32の内径よりも大きくてもよい。