特許第5961474号(P5961474)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5961474-表面保護フィルム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961474
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20160719BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   C09J175/04
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-169346(P2012-169346)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-28877(P2014-28877A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】徐 創矢
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】伊関 亮
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雅彦
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−210978(JP,A)
【文献】 特開2006−307197(JP,A)
【文献】 特開平02−003477(JP,A)
【文献】 特開平04−298582(JP,A)
【文献】 特開2001−064610(JP,A)
【文献】 特開2011−074333(JP,A)
【文献】 特開2007−277484(JP,A)
【文献】 特表2007−514858(JP,A)
【文献】 特表2003−524041(JP,A)
【文献】 特開平07−310066(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0286571(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と粘着剤層を有し、
該粘着剤層がポリウレタン系樹脂を含み、
該ポリウレタン系樹脂が、OH基を2個以上有するポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させて得られるポリウレタン系樹脂であり、
該ポリオール(A)が、少なくとも1種類のOH基を2個有するポリオールと、少なくとも1種類のOH基を3個以上有するポリオールとを含む、2種類以上のポリオールであり、
該ポリオール(A)が、OH基を2個有する数平均分子量Mnが3000〜6000のポリオールを50重量%以上含有し、
該多官能イソシアネート化合物(B)が、多官能芳香族系イソシアネート化合物である、
表面保護フィルム。
【請求項2】
請求項に記載の表面保護フィルムが貼着された光学部材。
【請求項3】
請求項に記載の表面保護フィルムが貼着された電子部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルムに関する。本発明の表面保護フィルムは、基材層と粘着剤層を有し、光学部材や電子部材の表面に貼着して該表面を保護する用途に好ましく用いられる。
【背景技術】
【0002】
LCD、有機EL、これらを用いたタッチパネル、カメラのレンズ部、電子機器などの光学部材や電子部材は、加工、組立、検査、輸送などの際の表面の傷付き防止のために、一般に、露出面側に表面保護フィルムが貼着される。このような表面保護フィルムは、表面保護の必要がなくなった時点で、光学部材や電子部材から剥離される。
【0003】
このような表面保護フィルムは、光学部材や電子部材の製造工程から、組立工程、検査工程、輸送工程などを経て、最終出荷されるまで、同じ表面保護フィルムを使用し続けるケースが多くなってきている。この場合、このような表面保護フィルムは、各工程において、手作業によって貼着、剥離、再貼着される場合が多い。
【0004】
手作業によって表面保護フィルムを貼着する場合、被着体と表面保護フィルムとの間に気泡を巻き込むことがある。このため、貼着の際に気泡を巻き込まないように、表面保護フィルムの濡れ性を向上させる技術がいくつか報告されている。例えば、濡れ速度の速いシリコーン樹脂を粘着剤層に用いた表面保護フィルムが知られている。しかし、シリコーン樹脂を粘着剤層に用いた場合、その粘着剤成分が被着体を汚染しやすく、光学部材や電子部材などの特に低汚染が要求される部材の表面を保護するための表面保護フィルムとして用いるには問題がある。
【0005】
粘着剤成分に由来する汚染の少ない表面保護フィルムとして、アクリル系樹脂を粘着剤層に用いた表面保護フィルムが知られている。しかし、アクリル系樹脂を粘着剤層に用いた表面保護フィルムは、濡れ性に劣るため、手作業によって表面保護フィルムを貼着する場合、被着体と表面保護フィルムとの間に気泡を巻き込むことがある。また、アクリル系樹脂を粘着剤層に用いた場合、剥離時に糊カスが発生しやすいという問題があり、光学部材や電子部材などの特に異物混入を嫌う部材の表面を保護するための表面保護フィルムとして用いるには問題がある。
【0006】
優れた濡れ性、低汚染性、糊カス低減を両立し得る表面保護フィルムとして、最近、ポリウレタン系樹脂を粘着剤層に用いた表面保護フィルムが報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
ここで、表面保護フィルムを被着体に手作業で貼着する場合には、優れた濡れ性とともに軽剥離性が要求される。被着体に貼着された表面保護フィルムは、剥離された後に、被着体に再貼着され、再び表面保護フィルムとして使用されるためである。濡れ性が良くても剥離が重いと、表面保護フィルムを剥離した際に該表面保護フィルムが変形してしまい、再度表面保護フィルムとして使用できなくなる。このような問題を避けるため、光学部材や電子部材に用いられる表面保護フィルムには、気泡の巻き込みなく何度も貼着ができ、変形することなく軽く剥離することができる、いわゆるリワーク性が強く求められる。しかし、これまでに報告されているポリウレタン系樹脂を粘着剤層に用いた表面保護フィルムにおいては、粘着剤層の粘着力の経時上昇性が高く、被着体に貼着された状態が長く続くと重剥離化してしまい、リワーク性に劣るという問題がある。
【0008】
また、これまでに報告されているポリウレタン系樹脂を粘着剤層に用いた表面保護フィルムにおいては、十分な濡れ性を発現できないことがあり、被着体との密着性に劣る場合がある。
【0009】
さらに、光学部材や電子部材の表面保護に用いられる表面保護フィルムについては、検査工程などにおいて、該表面保護フィルムを通して光学特性をチェックする必要がある。このため、光学部材や電子部材の表面保護に用いられる表面保護フィルムについては、高い透明性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−182795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、ポリウレタン系樹脂を粘着剤層に用いた表面保護フィルムであって、低汚染性、糊カス低減を両立できるとともに、リワーク性、濡れ性、透明性にも優れた表面保護フィルムを提供することにある。また、本発明の課題は、そのような表面保護フィルムが貼着された光学部材や電子部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の表面保護フィルムは、
基材層と粘着剤層を有し、
該粘着剤層がポリウレタン系樹脂を含み、
該ポリウレタン系樹脂が、OH基を2個以上有するポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させて得られるポリウレタン系樹脂であり、
該ポリオール(A)が、OH基を2個有する数平均分子量Mnが3000〜6000のポリオールを50重量%以上含有する。
【0013】
本発明の表面保護フィルムは、
基材層と粘着剤層を有し、
該粘着剤層がポリウレタン系樹脂を含み、
該ポリウレタン系樹脂が、OH基を2個以上有するポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させて得られるポリウレタン系樹脂であり、
該ポリオール(A)が、OH基を2個有するポリオールを50重量%以上含有し、
該多官能イソシアネート化合物(B)が、多官能芳香族系イソシアネート化合物である。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記ポリオール(A)が、2種類以上のポリオールである。
【0015】
好ましい実施形態においては、上記2種類以上のポリオールは、その少なくとも1種類がOH基を2個有するポリオールであり、その少なくとも1種類がOH基を3個以上有するポリオールである。
【0016】
本発明の光学部材は、本発明の表面保護フィルムが貼着されたものである。
【0017】
本発明の電子部材は、本発明の表面保護フィルムが貼着されたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ポリウレタン系樹脂を粘着剤層に用いた表面保護フィルムであって、低汚染性、糊カス低減を両立できるとともに、リワーク性、濡れ性、透明性にも優れた表面保護フィルムを提供することができる。また、そのような表面保護フィルムが貼着された光学部材や電子部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の好ましい実施形態による表面保護フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
≪A.表面保護フィルム≫
本発明の表面保護フィルムは、光学部材や電子部材の表面保護に好ましく用いられる表面保護フィルムである。本発明の表面保護フィルムは、基材層と粘着剤層とを有する。
【0021】
図1は、本発明の好ましい実施形態による表面保護フィルムの概略断面図である。表面保護フィルム10は、基材層1と粘着剤層2を備える。本発明の表面保護フィルムは、必要に応じて、任意の適切な他の層をさらに有していてもよい(図示せず)。
【0022】
基材層1の粘着剤層2を付設しない面に対しては、巻戻しが容易な巻回体の形成などを目的として、例えば、基材層に、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミン、長鎖アルキル系添加剤等を添加して離型処理を行ったり、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系などの任意の適切な剥離剤からなるコート層を設けたりすることができる。
【0023】
本発明の表面保護フィルムは、離型性を有する剥離ライナーが貼り合わせられていても構わない。
【0024】
本発明の表面保護フィルムの厚みは、用途に応じて、任意の適切な厚みに設定し得る。本発明の効果を十分に発現するための観点から、好ましくは10μm〜300μmであり、より好ましくは15μm〜250μmであり、さらに好ましくは20μm〜200μmであり、特に好ましくは25μm〜150μmである。
【0025】
本発明の表面保護フィルムは、粘着剤層の被着体と接する面における、ガラス板に対する粘着力が、ガラス板への貼着直後の初期粘着力として、好ましくは0.5N/25mm以下であり、より好ましくは0.005N/25mm〜0.5N/25mmであり、さらに好ましくは0.005N/25mm〜0.4N/25mmであり、特に好ましくは0.005N/25mm〜0.3N/25mmであり、最も好ましくは0.01N/25mm〜0.2N/25mmである。上記初期粘着力が上記範囲内にあることにより、本発明の表面保護フィルムは、適度な初期粘着性を有し、一層優れたリワーク性を発現することが可能となる。なお、上記初期粘着力の測定については、後述する。
【0026】
本発明の表面保護フィルムは、粘着剤層の被着体と接する面における、ガラス板に対する粘着力が、該ガラス板へ貼着して60℃×92%RH×1日後において、好ましくは0.5N/25mm以下であり、より好ましくは0.005N/25mm〜0.5N/25mmであり、さらに好ましくは0.005N/25mm〜0.45N/25mmであり、さらに好ましくは0.01N/25mm〜0.4N/25mmであり、特に好ましくは0.01N/25mm〜0.3N/25mmであり、最も好ましくは0.01N/25mm〜0.2N/25mmである。上記粘着力が上記範囲内にあることにより、本発明の表面保護フィルムは、一層優れたリワーク性を発現することが可能となる。なお、上記粘着力の測定については、後述する。
【0027】
本発明の表面保護フィルムは、粘着剤層の粘着力の経時上昇性が低く、被着体に貼着された状態が長く続いても軽剥離が可能であり、リワーク性に優れる。このため、本発明の表面保護フィルムは、上記初期粘着力をAとし、上記60℃×92%RH×1日後の粘着力をBとした場合に、B/Aが、好ましくは4未満であり、より好ましくは0.8〜3.5であり、さらに好ましくは0.9〜3.0であり、特に好ましくは1.0〜2.5であり、最も好ましくは1.0〜2.0である。
【0028】
本発明の表面保護フィルムは、透明性が高いことが好ましい。本発明の表面保護フィルムの透明性が高いことにより、光学部材や電子部材の表面に貼着した状態で正確に検査などを行うことが可能となる。本発明の表面保護フィルムは、ヘイズが、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下であり、最も好ましくは1%以下である。
【0029】
<A−1.基材層>
基材層の厚みとしては、用途に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。基材層の厚みは、好ましくは5μm〜300μmであり、より好ましくは10μm〜250μmであり、さらに好ましくは15μm〜200μmであり、特に好ましくは20μm〜150μmである。
【0030】
基材層は、単層でも良いし、2層以上の積層体であっても良い。基材層は、延伸されたものであっても良い。
【0031】
基材層の材料としては、用途に応じて、任意の適切な材料を採用し得る。例えば、プラスチック、紙、金属フィルム、不織布などが挙げられる。好ましくは、プラスチックである。基材層は、1種の材料から構成されていても良いし、2種以上の材料から構成されていても良い。例えば、2種以上のプラスチックから構成されていても良い。
【0032】
上記プラスチックとしては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、オレフィンモノマーの単独重合体、オレフィンモノマーの共重合体などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、例えば、ホモポリプロピレン;エチレン成分を共重合成分とするブロック系、ランダム系、グラフト系等のプロピレン系共重合体;リアクターTPO;低密度、高密度、リニア低密度、超低密度等のエチレン系重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合体;などが挙げられる。
【0033】
基材層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含有し得る。基材層に含有され得る添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、充填剤、顔料などが挙げられる。基材層に含有され得る添加剤の種類、数、量は、目的に応じて適切に設定され得る。特に、基材層の材料がプラスチックの場合は、劣化防止等を目的として、上記の添加剤のいくつかを含有することが好ましい。耐候性向上等の観点から、添加剤として特に好ましくは、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤が挙げられる。
【0034】
酸化防止剤としては、任意の適切な酸化防止剤を採用し得る。このような酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、フェノール・リン系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤の含有割合は、基材層のベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは1重量部以下であり、より好ましくは0.5重量部以下であり、さらに好ましくは0.01重量部〜0.2重量部である。
【0035】
紫外線吸収剤としては、任意の適切な紫外線吸収剤を採用し得る。このような紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。紫外線吸収剤の含有割合は、基材層を形成するベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下であり、さらに好ましくは0.01重量部〜0.5重量部である。
【0036】
光安定剤としては、任意の適切な光安定剤を採用し得る。このような光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤などが挙げられる。光安定剤の含有割合は、基材層を形成するベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下であり、さらに好ましくは0.01重量部〜0.5重量部である。
【0037】
充填剤としては、任意の適切な充填剤を採用し得る。このような充填剤としては、例えば、無機系充填剤などが挙げられる。無機系充填剤としては、具体的には、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。充填剤の含有割合は、基材層を形成するベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下であり、さらに好ましくは0.01重量部〜10重量部である。
【0038】
さらに、添加剤としては、帯電防止性付与を目的として、界面活性剤、無機塩、多価アルコール、金属化合物、カーボン等の無機系、低分子量系および高分子量系帯電防止剤も好ましく挙げられる。特に、汚染、粘着性維持の観点から、高分子量系帯電防止剤やカーボンが好ましい。
【0039】
<A−2.粘着剤層>
粘着剤層の厚みとしては、用途に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm〜100μmであり、より好ましくは3μm〜50μmであり、さらに好ましくは5μm〜30μmである。
【0040】
粘着剤層はポリウレタン系樹脂を主成分として含む。粘着剤層中のポリウレタン系樹脂の含有割合は、好ましくは90重量%〜100重量%であり、より好ましくは95重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは98重量%〜100重量%である。粘着剤は1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0041】
ポリウレタン系樹脂は、好ましくは、OH基を2個以上有するポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させて得られる。このようなポリウレタン系樹脂を採用することにより、低汚染性、糊カス低減を両立できるとともに、リワーク性、濡れ性、透明性にも優れた表面保護フィルムを提供できる。
【0042】
ポリオール(A)は、OH基を2個有する数平均分子量Mnが3000〜6000のポリオールを、好ましくは50重量%以上含有し、より好ましくは55重量%以上含有し、さらに好ましくは60重量%以上含有し、特に好ましくは65重量%以上含有する。ポリオール(A)中の、OH基を2個有する数平均分子量Mnが3000〜6000のポリオールの含有割合の上限値は、好ましくは90重量%以下である。ポリオール(A)中の、OH基を2個有する数平均分子量Mnが3000〜6000のポリオールの含有割合を上記範囲内に調整することにより、低汚染性、糊カス低減を一層両立できるとともに、リワーク性、濡れ性、透明性にも一層優れた表面保護フィルムを提供できる。ポリオール(A)中に含み得るOH基を2個有するポリオールの数平均分子量(Mn)が小さすぎると、得られる表面保護フィルムの濡れ性が低下するおそれがある。ポリオール(A)中に含み得るOH基を2個有するポリオールの数平均分子量(Mn)が大きすぎると、得られる表面保護フィルムが白化しやすくなって透明性が低下するおそれがある。
【0043】
ポリオール(A)は、1種類のみであっても良いし、2種類以上であっても良い。好ましくは、ポリオール(A)が、2種類以上のポリオールである。ポリオール(A)が、2種類以上のポリオールであることにより、低汚染性、糊カス低減を一層両立できるとともに、リワーク性、濡れ性、透明性にも一層優れた表面保護フィルムを提供できる。
【0044】
ポリオール(A)としては、2種類以上のポリオールであることが好ましく、この場合、2種類以上のポリオールは、好ましくは、その少なくとも1種類がOH基を2個有するポリオールであり、その少なくとも1種類がOH基を3個以上有するポリオールであり、より好ましくは、その少なくとも1種類がOH基を2個有するポリオールであり、その少なくとも1種類がOH基を4個以上有するポリオールである。このようなポリオール(A)を採用することにより、低汚染性、糊カス低減を一層両立できるとともに、リワーク性、濡れ性、透明性にも一層優れた表面保護フィルムを提供できる。
【0045】
ポリオール(A)は、OH基を2個有するポリオールを、好ましくは50重量%以上含有し、より好ましくは55重量%以上含有し、さらに好ましくは60重量%以上含有し、さらに好ましくは62重量%以上含有し、特に好ましくは65重量%以上含有し、最も好ましくは67重量%以上含有する。このようなポリオール(A)を採用することにより、低汚染性、糊カス低減を一層両立できるとともに、リワーク性、濡れ性、透明性にも一層優れた表面保護フィルムを提供できる。
【0046】
ポリオール(A)中に含み得るOH基を2個有するポリオールは、その数平均分子量(Mn)が、好ましくは2000〜12000であり、より好ましくは2500〜10000であり、さらに好ましくは3000〜8000であり、特に好ましくは3500〜6000である。ポリオール(A)中に含み得るOH基を2個有するポリオールの数平均分子量(Mn)を上記範囲内に調整することにより、低汚染性、糊カス低減を一層両立できるとともに、リワーク性、濡れ性、透明性にも一層優れた表面保護フィルムを提供できる。ポリオール(A)中に含み得るOH基を2個有するポリオールの数平均分子量(Mn)が小さすぎると、得られる表面保護フィルムの濡れ性が低下するおそれがある。ポリオール(A)中に含み得るOH基を2個有するポリオールの数平均分子量(Mn)が大きすぎると、得られる表面保護フィルムが白化しやすくなって透明性が低下するおそれがある。
【0047】
ポリオール(A)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオールなどが挙げられる。
【0048】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリオール成分と酸成分とのエステル化反応によって得ることができる。
【0049】
ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,8−デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0050】
酸成分としては、例えば、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、ダイマー酸、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェエルジカルボン酸、これらの酸無水物などが挙げられる。
【0051】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、低分子ポリオール(プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、ジヒドロキシベンゼン(カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンなど)などを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0052】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ε−カプロラクトン、σ−バレーロラクトンなどの環状エステルモノマーの開環重合により得られるカプロラクトン系ポリエステルジオールなどが挙げられる。
【0053】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記ポリオール成分とホスゲンとを重縮合反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分と、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロビル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジブチル、エチルブチル炭酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジフェニル、炭酸ジベンジル等の炭酸ジエステル類とをエステル交換縮合させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分を2種以上併用して得られる共重合ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとカルボキシル基含有化合物とをエステル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエーテル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとエステル化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとジカルボン酸化合物とを重縮合反応させて得られるポリエステル系ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとアルキレンオキサイドとを共重合させて得られる共重合ポリエーテル系ポリカーボネートポリオール;などが挙げられる。
【0054】
ひまし油系ポリオールとしては、例えば、ひまし油脂肪酸と上記ポリオール成分とを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ひまし油脂肪酸とポリプロピレングリコールとを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。
【0055】
多官能イソシアネート化合物(B)は、1種類のみであっても良いし、2種類以上であっても良い。
【0056】
多官能イソシアネート化合物(B)としては、ウレタン化反応に用い得る任意の適切な多官能イソシアネート化合物を採用し得る。このような多官能イソシアネート化合物(B)としては、例えば、多官能脂肪族系イソシアネート化合物、多官能脂環族系イソシアネート、多官能芳香族系イソシアネート化合物などが挙げられる。
【0057】
多官能脂肪族系イソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート,1,2−プロピレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0058】
多官能脂環族系イソシアネート化合物としては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート,1,3−シクロへキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート,水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0059】
多官能芳香族系イソシアネート化合物としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソソアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,2’一ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0060】
多官能イソシアネート化合物(B)としては、上記のような各種多官能イソシアネート化合物のトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体なども挙げられる。また、これらを併用しても良い。
【0061】
多官能イソシアネート化合物(B)としては、多官能芳香族系ジイソシアネート化合物が好ましい。多官能イソシアネート化合物(B)として多官能芳香族系ジイソシアネート化合物を採用することにより、得られる表面保護フィルムの白化を抑制でき、高い透明性を付与できる。本発明の表面保護フィルムの透明性が高いことにより、光学部材の表面に貼着した状態で正確に検査などを行うことが可能となる。
【0062】
ポリウレタン系樹脂は、好ましくは、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させて得られる。このような組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリオール(A)および多官能イソシアネート化合物(B)以外の任意の適切なその他の成分を含み得る。このようなその他の成分としては、例えば、触媒、ポリウレタン系樹脂以外の他の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤などが挙げられる。
【0063】
ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)の重量割合は、ポリオール(A)100重量部に対して、多官能イソシアネート化合物(B)が、好ましくは10重量部以上であり、より好ましくは12重量部以上であり、さらに好ましくは15重量部以上であり、特に好ましくは20重量部以上である。多官能イソシアネート化合物(B)の重量割合の上限値は、ポリオール(A)100重量部に対して、多官能イソシアネート化合物(B)が、好ましくは60重量部以下であり、より好ましくは50重量部以下である。ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)の重量割合を上記範囲内に調整することにより、低汚染性、糊カス低減を一層両立できるとともに、リワーク性、濡れ性、透明性にも一層優れた表面保護フィルムを提供できる。
【0064】
ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)における、NCO基とOH基の当量比は、NCO基/OH基として、好ましくは2.0〜5.0であり、より好ましくは2.0〜4.0であり、さらに好ましくは2.0〜3.0であり、特に好ましくは2.0〜2.5である。NCO基/OH基の当量比を上記範囲内に調整することにより、低汚染性、糊カス低減を一層両立できるとともに、リワーク性、濡れ性、透明性にも一層優れた表面保護フィルムを提供できる。
【0065】
ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させてポリウレタン系樹脂を得る方法としては、塊状重合や溶液重合などを用いたウレタン化反応方法など、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法を採用し得る。
【0066】
ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させるために、好ましくは触媒を用いる。このような触媒としては、例えば、有機金属系化合物、3級アミン化合物などが挙げられる。
【0067】
有機金属系化合物としては、例えば、鉄系化合物、錫系化合物、チタン系化合物、ジルコニウム系化合物、鉛系化合物、コバルト系化合物、亜鉛系化合物などを挙げることができる。これらの中でも、反応速度と粘着剤層のポットライフの点で、鉄系化合物が好ましい。
【0068】
鉄系化合物としては、例えば、鉄アセチルアセトネート、2−エチルヘキサン酸鉄などが挙げられる。
【0069】
錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルフィド,トリブチル錫メトキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキシド、トリブチル錫エトキシド、ジオクチル錫オキシド、ジオクチル錫ジラウレート、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2−エチルヘキサン酸錫などが挙げられる。
【0070】
チタン系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0071】
ジルコニウム系化合物としては、例えば、ナフテン酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネートなどが挙げられる。
【0072】
鉛系化合物としては、例えば、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などが挙げられる。
【0073】
コバルト系化合物としては、例えば、2−エチルヘキサン酸コバルト、安息香酸コバルトなどが挙げられる。
【0074】
亜鉛系化合物としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などが挙げられる。
【0075】
3級アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビシク口−(5,4,0)−ウンデセン−7などが挙げられる。
【0076】
触媒は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。また、触媒と架橋遅延剤などを併用しても良い。触媒の量は、ポリオール(A)100重量部に対して、好ましくは0.02重量部〜0.10重量部であり、より好ましくは0.02重量部〜0.05重量部であり、さらに好ましくは0.02重量部〜0.03重量部であり、特に好ましくは0.02重量部〜0.025重量部である。触媒の量を上記範囲内に調整することにより、低汚染性、糊カス低減を一層両立できるとともに、リワーク性、濡れ性、透明性にも一層優れた表面保護フィルムを提供できる。
【0077】
粘着剤層は、上記のようなポリウレタン系樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含み得る。このようなその他の成分としては、例えば、ポリウレタン系樹脂以外の他の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤などが挙げられる。
【0078】
粘着剤層は、任意の適切な製造方法によって製造し得る。このような製造方法としては、例えば、粘着剤層の形成材料である組成物を基材層上に塗布し、基材層上において粘着剤層を形成する方法が挙げられる。このような塗布の方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法、ダイコーターなどによる押出しコートなどが挙げられる。
【0079】
<A−3.用途>
本発明の表面保護フィルムは、任意の適切な用途に用い得る。好ましくは、本発明の表面保護フィルムは、低汚染性、糊カス低減を両立できるとともに、リワーク性、濡れ性、透明性にも優れているので、光学部材や電子部材の表面保護に用いられる。
【0080】
本発明の表面保護フィルムが貼着された光学部材や電子部材は、手作業で何度も貼り合わせ・剥離を行うことが可能である。
【0081】
≪B.表面保護フィルムの製造方法≫
本発明の表面保護フィルムは、任意の適切な方法により製造することができる。このような製造方法としては、例えば、
(1)粘着剤層の形成材料(例えば、ポリウレタン系樹脂を含む組成物)の溶液や熱溶融液を基材層上に塗布する方法、
(2)それに準じ、セパレーター状に塗布、形成した粘着剤層を基材層上に移着する方法、
(3)粘着剤層の形成材料を基材層上に押出して形成塗布する方法、
(4)基材層と粘着剤層を二層または多層にて押出しする方法、
(5)基材層上に粘着剤層を単層ラミネートする方法またはラミネート層とともに粘着剤層を二層ラミネートする方法、
(6)粘着剤層とフィルムやラミネート層等の基材層形成材料とを二層または多層ラミネートする方法、
などの、任意の適切な製造方法に準じて行うことができる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。なお、「部」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量部」を意味し、「%」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量%」を意味する。
【0083】
<濡れ性の評価>
表面保護フィルムを、2.5cm×10.0cmに切断し、試験片とした。手作業にて、10m/minの速度で試験片をガラス板(松浪硝子工業株式会社製、商品名:マイクロスライドガラスS)に貼り合わせ、試験片とアクリル板の間の気泡の有無を確認した。評価は下記の基準にて行った。
○:気泡無し。
×:気泡を多数巻き込み、気泡を簡単に除去できない。
【0084】
<糊カス発生の程度の評価>
粘着剤層の表面をペン先で擦り、粘着剤層が破壊されるかどうかを目視にて判断した。目視は蛍光灯下にて行った。粘着剤層が破壊されなければ糊カスが発生せず、粘着剤層が破壊されれば糊カスが発生する。評価は下記の基準にて行った。
○:糊カスの発生が全く見られず。
×:糊カスの発生が見られた。
【0085】
<被着体の汚染性の程度の評価>
粘着力測定後のガラス板表面を3波長蛍光灯下にて目視で確認して判断した。評価は下記の基準にて行った。
○:被着体の汚染が全く見られず。
×:被着体の汚染が見られた。
【0086】
<ガラス板に対する初期粘着力の測定>
表面保護フィルムを、幅25mm、長さ150mmに切断し、評価用サンプルとした。
温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で、評価用サンプルの粘着剤層面をガラス板(松浪硝子工業株式会社製、商品名:マイクロスライドガラスS)に、2.0kgローラー1往復により貼り付けた。温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で30分間養生した後、万能引張試験機(ミネベア株式会社製、製品名:TCM−1kNB)を用い、剥離角度180°、引っ張り速度300mm/minで剥離し、粘着力を測定した。
【0087】
<ガラス板に対する60℃×92%RH×1日後の粘着力の測定>
ガラス板に対する初期粘着力と同様の方法で評価用サンプルを作製し、60℃×92%RH×1日保存後の粘着力を、初期粘着力と同様の方法で測定した。
【0088】
<リワーク性の評価>
下記の基準に従って、リワーク性の評価を行った。
○:ガラス板に対する60℃×92%RH×1日後の粘着力が0.5N/25mm以下。
×:ガラス板に対する60℃×92%RH×1日後の粘着力が0.5N/25mmを超える。
【0089】
<透明性の評価>
ヘイズメーターHM−150(株式会社村上色彩技術研究所製)を使用し、JIS−K−7136に準拠し、ヘイズ(%)=(Td/Tt)×100(Td:拡散透過率、Tt:全光線透過率)により算出した。下記の基準に従って、透明性の評価を行った。
○:ヘイズが4%以下。
×:ヘイズが4%を超える。
【0090】
<表面保護フィルムの変形の評価>
ガラス板に対する60℃×92%RH×1日後の粘着力を測定した後、剥離した表面保護フィルムを平らな台の上に静置し、該表面保護フィルムの端部の変形度合いを観察した。下記の基準に従って、表面保護フィルムの変形の評価を行った。
○:フィルムにカールが発生せず。
△:フィルムにカールが軽く発生。
×:フィルムにカールが顕著に発生。
【0091】
〔実施例1〕
ポリオール(A)として、OH基を2個有するポリオールであるプレミノールS4006(旭硝子株式会社製、Mn=5500):70重量部、OH基を3個有するポリオールであるサンニックスGP−1500(三洋化成株式会社製、Mn=1500):18重量部、OH基を4個有するポリオールであるEDP−1100(株式会社ADEKA製、Mn=1100):12重量部、多官能イソシアネート化合物(B)としてトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:コロネートL):26重量部、触媒(日本化学産業株式会社製、商品名:ナーセム第2鉄):0.05重量部、希釈溶剤として酢酸エチル:266重量部を配合し、ディスパーで撹拌し、ウレタン系粘着剤組成物を得た。得られたウレタン系粘着剤組成物を、ポリエステル樹脂からなる基材「ルミラーS10」(厚み38μm、東レ社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが12μmとなるよう塗布し、乾燥温度130℃、乾燥時間2分の条件でキュアーして乾燥した。
次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にシリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せて、表面保護フィルム(1)を得た。
評価結果を表1に示した。
【0092】
〔実施例2〕
ポリオール(A)として、OH基を2個有するポリオールであるプレミノールS4006(旭硝子株式会社製、Mn=5500):70重量部、OH基を4個有するポリオールであるEDP−1100(株式会社ADEKA製、Mn=1100):30重量部を用い、多官能イソシアネート化合物(B)の使用量を30重量部とし、触媒の使用量を0.10重量部とした以外は、実施例1と同様に行い、表面保護フィルム(2)を得た。
評価結果を表1に示した。
【0093】
〔実施例3〕
ポリオール(A)として、OH基を2個有するポリオールであるプレミノールS4006(旭硝子株式会社製、Mn=5500):70重量部、OH基を3個有するポリオールであるサンニックスGP−1500(三洋化成株式会社製、Mn=1500):18重量部、OH基を4個有するポリオールであるEDP−1100(株式会社ADEKA製、Mn=1100):12重量部を用い、多官能イソシアネート化合物(B)の使用量を42重量部とした以外は、実施例1と同様に行い、表面保護フィルム(3)を得た。
評価結果を表1に示した。
【0094】
〔実施例4〕
ポリオール(A)として、OH基を2個有するポリオールであるサンニックスPP−4000(三洋化成株式会社製、Mn=4000):76重量部、OH基を3個有するポリオールであるサンニックスGP−1500(三洋化成株式会社製、Mn=1500):14重量部、OH基を4個有するポリオールであるEDP−1100(株式会社ADEKA製、Mn=1100):10重量部を用い、多官能イソシアネート化合物(B)の使用量を35重量部とし、触媒の使用量を0.04重量部とした以外は、実施例1と同様に行い、表面保護フィルム(4)を得た。
評価結果を表1に示した。
【0095】
〔実施例5〕
ポリオール(A)として、OH基を2個有するポリオールであるサンニックスPP−4000(三洋化成株式会社製、Mn=4000):64重量部、OH基を3個有するポリオールであるサンニックスGP−1500(三洋化成株式会社製、Mn=1500):36重量部を用い、多官能イソシアネート化合物(B)の使用量を44重量部とし、触媒の使用量を0.04重量部とした以外は、実施例1と同様に行い、表面保護フィルム(5)を得た。
評価結果を表1に示した。
【0096】
〔比較例1〕
ポリオール(A)として、OH基を2個有するポリオールであるプレミノールS4011(旭硝子株式会社製、Mn=10000):70重量部、OH基を3個有するポリオールであるサンニックスGP−1500(三洋化成株式会社製、Mn=1500):25重量部、OH基を6個有するポリオールであるサンニックスSP−750(三洋化成株式会社製、Mn=700):5重量部を用い、多官能イソシアネート化合物(B)の使用量を30重量部とし、触媒の使用量を0.10重量部とした以外は、実施例1と同様に行い、表面保護フィルム(C1)を得た。
評価結果を表1に示した。
【0097】
〔比較例2〕
ポリオール(A)として、OH基を2個有するポリオールであるプレミノールS4011(旭硝子株式会社製、Mn=10000):70重量部、OH基を3個有するポリオールであるサンニックスGP−1500(三洋化成株式会社製、Mn=1500):20重量部、OH基を6個有するポリオールであるサンニックスSP−750(三洋化成株式会社製、Mn=700):10重量部を用い、多官能イソシアネート化合物(B)として、多官能脂環族系イソシアネート化合物であるコロネートHX(日本ポリウレタン工業株式会社):25重量部を用い、触媒の使用量を0.20重量部とした以外は、実施例1と同様に行い、表面保護フィルム(C2)を得た。
評価結果を表1に示した。
【0098】
〔比較例3〕
ポリオール(A)として、OH基を2個有するポリオールであるサンニックスPP−4000(三洋化成株式会社製、Mn=4000):40重量部、OH基を3個有するポリオールであるサンニックスGP−1500(三洋化成株式会社製、Mn=1500):60重量部を用い、多官能イソシアネート化合物(B)の使用量を50重量部とし、触媒の使用量を0.10重量部とした以外は、実施例1と同様に行い、表面保護フィルム(C3)を得た。
評価結果を表1に示した。
【0099】
〔比較例4〕
ポリオール(A)として、OH基を2個有するポリオールであるプレミノールS4006(旭硝子株式会社製、Mn=5500):40重量部、OH基を3個有するポリオールであるサンニックスGP−1500(三洋化成株式会社製、Mn=1500):40重量部、OH基を4個有するポリオールであるEDP−1100(株式会社ADEKA製、Mn=1100):20重量部を用い、多官能イソシアネート化合物(B)の使用量を50重量部とし、触媒の使用量を0.10重量部とした以外は、実施例1と同様に行い、表面保護フィルム(C4)を得た。
評価結果を表1に示した。
【0100】
【表1】
【0101】
〔実施例6〕
実施例1で得られた表面保護フィルム(1)を、光学部材である偏光板(日東電工株式会社製、商品名「TEG1465DUHC」)に貼着し、表面保護フィルムが貼着された光学部材を得た。
【0102】
〔実施例7〕
実施例1で得られた表面保護フィルム(1)を、電子部材である導電性フィルム(日東電工株式会社製、商品名「エレクリスタV270L−TFMP」)に貼着し、表面保護フィルムが貼着された電子部材を得た。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の表面保護フィルムは、光学部材の表面に貼着して該表面を保護する用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0104】
1 基材層
2 粘着剤層
10 表面保護フィルム

図1