特許第5961478号(P5961478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961478
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】車両用ドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/12 20140101AFI20160719BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   E05B85/12 A
   B60J5/04 H
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-176330(P2012-176330)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-34801(P2014-34801A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095751
【弁理士】
【氏名又は名称】菅原 正倫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 淳士
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佳憲
(72)【発明者】
【氏名】山口 誠
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−235917(JP,A)
【文献】 特開平11−336379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに固定されるベース部材と、前記ベース部材に上下方向の軸線周りに回転可能に支持される、ドア開操作のためのハンドルとを備えた車両用ドアハンドル装置であって、
前記ハンドルには、下向きに延び出し、前記ベース部材の壁部に形成された貫通孔に挿入可能なハンドル回転軸が一体的に形成され、
前記ハンドル回転軸は、その平面視にて前記軸線を第1基準中心とする、第1曲率半径で規定される円形部に対応した部位を含む軸本体と、前記軸線から所定の距離だけ離れた部位を第2基準中心とする、前記第1曲率半径よりも大きい第2曲率半径で規定される円形部に対応した部位を含む本体補強部とを備えることを特徴とする車両用ドアハンドル装置。
【請求項2】
前記軸本体と前記本体補強部とは、前記ハンドル回転軸の平面視にて前記第1基準中心と前記第2基準中心とを通る中心線に対して対称配置された、円弧状に窪んだ形態の第1凹面及び第2凹面を有する接続部により一体に接続され、前記ハンドル回転軸の周方向に沿って前記軸本体の円弧面の一端が前記接続部の第1凹面を介して前記本体補強部の円弧面の一端に接続され、更に前記本体補強部の円弧面の他端が前記接続部の第2凹面を介して前記軸本体の円弧面の他端に接続されている請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項3】
前記壁部の貫通孔は、前記軸本体に対応する本体用孔部と、前記本体補強部に対応する補強部用孔部とを備え、前記補強部用孔部には、前記本体補強部が前記軸線周りに回転する際に該本体補強部の円弧面と摺接可能な円弧状の案内面が形成されている請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項4】
前記壁部の貫通孔は、前記軸本体に対応する本体用孔部と、前記本体補強部に対応する補強部用孔部と、前記接続部の第1凹面に対応する第1凸面と、前記接続部の第2凹面に対応する第2凸面とを備え、前記本体用孔部は、前記軸本体の半周以上の部位を前記軸線周りに摺動可能に支持する支持面を有し、該支持面の一端に前記第1凸面が接続され、該支持面の他端に前記第2凸面が接続されており、前記ハンドル回転軸が初期位置にある状態では前記接続部の第1凹面が前記貫通孔の第1凸面と当接し、前記ハンドル回転軸が操作位置にある状態では前記接続部の第2凹面が前記貫通孔の第2凸面と当接するように設定されている請求項2に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項5】
前記ハンドル回転軸が前記初期位置にある状態では前記軸本体の円弧面が前記貫通孔の第2凸面と当接することで、該軸本体が前記第2基準中心周りに該初期位置を超えて更に操作が戻される方向へ回転することが阻止され、前記ハンドル回転軸が前記操作位置にある状態では前記軸本体の円弧面が前記貫通孔の第1凸面と当接することで、該軸本体が前記第2基準中心周りに該操作位置を超えて更に操作が進められる方向へ回転することが阻止される請求項4に記載の車両用ドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドア開操作のためのハンドルを備えた車両用ドアハンドル装置では、通常、車両のドアにベース部材が固定され、ハンドルがベース部材に上下方向の軸線周りに回転可能に支持される構成とされている。この場合、例えば下記特許文献1に記載されているように、ハンドル回転軸をハンドルとは別部品(例えば、金属製ピン)で構成することがある。しかし、ハンドル回転軸として金属製ピンを使用する場合は抜け止めのために加締工程を加えることが多く、作業コストの上昇を招くおそれがある。これを解消するために、例えば下記特許文献2に記載されているように、ハンドル回転軸をハンドルと一体的に形成し、ハンドル回転軸がハンドル自身の形状の一部となるように構成したものがある。これによれば、金属製ピンを使用する場合と異なり、抜け止めのために加締工程を加える必要がないので、作業コストを低減化することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−179233号公報
【特許文献2】特開2008−038378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハンドル回転軸をハンドル自身の形状の一部として構成する場合、上記特許文献2に記載されているように、ハンドル回転軸がハンドルから上向きに延び出すように構成する場合の他、ハンドルから下向きに延び出すように構成することが考えられる。しかし、この構成では、例えば図15(A)に示されるように、ハンドル回転軸101を挿入するための貫通孔102aをベース部材102に形成した場合でもベース部材102のコーナ部の肉厚が少なくとも所定の厚みt分だけは確保されるようにするために、ハンドル回転軸101を小径に設定せざるを得ず、図中二点鎖線で示されるようにハンドル回転軸101を大径に設定することはできなかった。このため、ハンドル回転軸101の強度が不足するという問題があった。これを解消するために、例えば図15(B)の二点鎖線で示されるように、ベース部材102のコーナ部の肉厚を確保しつつハンドル回転軸101を大径に設定することが考えられる。しかし、ハンドル回転軸101の軸線が変化すると、操作に際してハンドルが他部材と干渉するおそれがあり、ハンドル回転軸101の軸線位置を変えつつハンドル回転軸101を大径に設定することはできなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に対処するためになされたものであり、その目的は、ハンドル回転軸が貫通孔に挿入されるタイプであっても、ベース部材の強度を確保しつつハンドル回転軸の強度も確保し得る車両用ドアハンドル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、車両のドアに固定されるベース部材と、ベース部材に上下方向の軸線周りに回転可能に支持される、ドア開操作のためのハンドルとを備えた車両用ドアハンドル装置であって、
ハンドルには、下向きに延び出し、ベース部材の壁部に形成された貫通孔に挿入されるハンドル回転軸が一体的に形成され、
ハンドル回転軸は、その平面視にて軸線を第1基準中心とする、第1曲率半径で規定される円形部に対応した部位を含む軸本体と、軸線から所定の距離だけ離れた部位を第2基準中心とする、第1曲率半径よりも大きい第2曲率半径で規定される円形部に対応した部位を含む本体補強部とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の車両用ドアハンドル装置では、ハンドル回転軸が、第1曲率半径で規定される円形部に対応した部位を含む軸本体と、第1曲率半径よりも大きい第2曲率半径で規定される円形部に対応した部位を含む本体補強部とを備えている。
【0008】
これにより、ハンドル回転軸の断面積が少なくとも本体補強部の断面積分は増加するため、ハンドル回転軸の強度を向上させることができる。この場合、本体補強部が軸本体に対してベース部材のコーナ部と反体側に位置するように構成することで、ベース部材の壁部に断面積の増加したハンドル回転軸に対応した大きさの貫通孔を形成するようにしても、ベース部材のコーナ部の肉厚は従来のままとすることができるので、ベース部材の強度も確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A)は実施例1に係る車両用ドアハンドル装置を斜め下から見た外観図。(B)は(A)を斜め上から見た外観図。
図2図1の車両用ドアハンドル装置の正面図。
図3】(A)は図1の車両用ドアハンドル装置を構成するベース部材を斜め下から見た外観図。(B)は(A)の正面図。
図4】(A)は図1の車両用ドアハンドル装置を構成するインサイドハンドルを斜め下から見た外観図。(B)は(A)の底面図。(C)は(A)の正面図。
図5図2のV矢視図。
図6図5の二点鎖線で囲まれた要部拡大図。
図7図6のVII-VII断面図。
図8図6のVIII-VIII要部断面図。
図9図2のIX-IX断面図。
図10】(A)は図1の車両用ドアハンドル装置を構成するノブピンがベース部材及びロックノブに差し込まれた、組付け前位置にある状態を示す平面図。(B)は(A)のノブピンが軸線周りの回転によって組付け後位置に移動した状態を示す平面図。(C)は(B)の状態にあるときのノブピンとベース部材との係合状態を示す要部断面図。
図11図1の車両用ドアハンドル装置において、インサイドハンドルの初期位置(実線)と操作位置(二点鎖線)を示す底面図。
図12図11の各位置に対応したハンドル回転軸の回転位置を示す底面図。
図13図11の初期位置におけるハンドル回転軸のガタつきを示す説明図。
図14】実施例2に係る車両用ドアハンドル装置を構成するハンドル回転軸の要部拡大図。
図15】(A)は従来のハンドル回転軸において、その軸線位置を変えずに軸径を大きくする場合の説明図。(B)は従来のハンドル回転軸において、その軸線位置を変えつつ軸径を大きくする場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1及び図2に示される車両用ドアハンドル装置1は、車体に開閉可能に支持されるドア(図示省略)に設けられる、アンロック状態にあるドアラッチ装置(図示省略)をドア開状態とし、そのドアラッチ装置をアンロック状態からロック状態へ切り替え、あるいはロック状態からアンロック状態へ切り替えるための操作部として機能する。
【0012】
具体的に、車両用ドアハンドル装置1は、ドアの内部パネル(図示省略)に固定されるベース部材10と、ベース部材10に上下方向の軸線L1(第1軸線)周りに回転可能に支持される、ドア開操作のためのインサイドハンドル20と、ベース部材10に円形断面を有する軸状のノブピン50を介して上下方向の軸線L2(第2軸線)周りに回転可能に支持される、ドアロック又はドアアンロック操作のためのロックノブ30とを備えている。
【0013】
ベース部材10は、図2及び図3に示されるように、板面が車両の上下方向に沿って配置される矩形板状のベース本体11と、ベース本体11の後端縁から後方へ向けて水平に延び出し、互いに平行に配設された下壁12、中壁13及び上壁14と、車両の上下に延び出し各壁12〜14の後端縁を一体に連結する連結壁18とを備えている。
【0014】
下壁12(第1壁部)には、ハンドル回転軸25(図4参照)を挿入可能な貫通孔12aが形成されている。貫通孔12aについては後述する。中壁13(第2壁部)には、ボス13aが上壁14に向けて立設されている。ボス13aの軸線は軸線L1に一致している。また、中壁13には、ノブピン50の小径部53(図9参照)を挿入可能な円形状の貫通孔13bが形成されている。貫通孔13bの軸線は軸線L2に一致している。
【0015】
なお、軸線L1,L2は、車両の左右方向(ベース部材10の奥行き方向)でずれた位置に設定されているが(図3(A))、車両の前後方向では例えばベース部材10の前端から同じ距離に位置するように設定されており、ベース部材10の正面視において一致して見える(図3(B))。
【0016】
上壁14(第3壁部)は、上下に互いに平行に配設された上部15及び下部16と、上部15、下部16の後端縁を一体に連結する連結部17とを備えている。下部16には、中壁13の貫通孔13bと同軸の円形状の貫通孔16aが形成されている。
【0017】
上部15には、レバー部51が回転を進めるのに従ってその基端側(軸線L2側)を支点として先端のリブ51aを下方へ撓ませる撓み量を連続的に大きくするような断面三角形状の傾斜部15aが形成されるとともに、その傾斜部15aの頂点を越えた辺りでリブ51aと係合する断面三角形状の溝部15b(係合溝)が形成されている。傾斜部15aと溝部15bについては後述する。
【0018】
連結壁18には、ドア開操作によるインサイドハンドル20への操作力を伝達するプッシュ・プルケーブルのスリーブ(図示省略)を取り付けるための切欠き18aが形成されるとともに、ドアロック又はドアアンロック操作によるロックノブ30への操作力を伝達するプッシュ・プルケーブルのスリーブ(図示省略)を取り付けるための切欠き18bが形成されている。また、連結壁18には、インサイドハンドル20に当接してそのインサイドハンドル20を初期位置に保持する、例えばゴム等の弾性部材19(図11参照)を取り付けるための取付孔18cが形成されている。
【0019】
インサイドハンドル20(ハンドル)は、図4(B)の底面図に示されるように、略楕円形状をなす軸支部21と、軸支部21の前端に一体に連結されて車両の前方に向けて延び出す操作部26とを備えている。
【0020】
操作部26は、図4(C)の正面図に示されるように、車両の前後に延び出す矩形状をなし、図4(A)の斜視図に示されるように、緩やかに湾曲した凹部26a側がベース部材10と対向配置される。軸支部21は、図7及び図8に示されるように、操作部26と一体に連結されてベース部材10の下壁12に支持されるように配置された下部22と、ベース部材10の中壁13の一部位を覆い、その覆った中壁13の部位で支持されるように配置された上部23とを一体に備えている。
【0021】
上部23(ハンドル支持壁部)には、中壁13のボス13aを挿入可能な円形状の貫通孔23aが形成されるとともに、ノブピン50の小径部53(図9参照)を挿入可能な貫通孔23bが形成されている。具体的には、貫通孔23bは、長円形の2つの線分をボス13aの軸線L2を回転中心とする円弧とした長孔であり、上部23が軸線L2周りに回転した場合でも、中壁13の貫通孔13bと常時連通した状態にある(図9参照)。
【0022】
図4に戻って、下部22には、軸支部21の後端から車両の斜め後方に向けて突出する形態の作用部24が形成されている。作用部24には、ドア開操作時に動作するプッシュ・プルケーブルの一端に連結された連結部材(図示省略)を取り付けるための取付孔24aが形成され、インサイドハンドル20を初期位置に保持する弾性部材19に当接する当接部24bが形成され、更にねじりコイルばね40(図9参照)の一端が係止される係止部24cが形成されている。
【0023】
なお、ねじりコイルばね40は、軸支部21の下部22とベース部材10の中壁13との間に介装され、その他端が中壁13に形成された係止部13c(図3(B)参照)で係止されるようになっている。
【0024】
また、下部22には、下向きに延び出し、ベース部材10の下壁13の貫通孔12aに挿入されるハンドル回転軸25が一体に形成されている。ハンドル回転軸25は、図13に示されるように、上部23の貫通孔23aと同軸の軸線L1を中心として曲率半径ρ1で規定される円形部に対応した部位を含む軸本体25aと、軸線L1から所定の距離Dだけ離れた軸線L1’を中心として、曲率半径ρ1よりも大きい曲率半径ρ2で規定される円形部に対応した部位を含む本体補強部25bとを一体に備えている。
【0025】
具体的に、軸本体25aと本体補強部25bとは、軸線L1,L1’を通る中心線L3に対して対称配置された、円弧状に窪んだ形態の凹面25c1,25c2を有する接続部25cにより一体に接続され、略瓢箪形あるいは達磨形状に形成されている。本体補強部25bは軸本体25aに対して下壁12のコーナ部12fと反体側に位置するように配置されている(図5参照)。
【0026】
すなわち、ハンドル回転軸25の周方向に沿って軸本体25aの円弧面25a1の一端が接続部25cの凹面25c1を介して本体補強部25bの円弧面25b1の一端に接続され、更に本体補強部25bの円弧面25b1の他端が接続部25cの凹面25c2を介して軸本体25aの円弧面25a1の他端に接続されている。軸線L1が本発明の第1基準中心に相当し、曲率半径ρ1が本発明の第1曲率半径に相当する。また、軸線L1’が本発明の第2基準中心に相当し、曲率半径ρ2が本発明の第2曲率半径に相当する。また、凹面25c1が第1凹面に相当し、凹面25c2が第2凹面に相当する。
【0027】
上記した下壁12の貫通孔12aは、ハンドル回転軸25の軸本体25aに対応する本体用孔部12bと、本体補強部25bに対応する補強部用孔部12cと、接続部25cの凹面25c1に対応する凸面12dと、接続部25cの凹面25c2に対応する凸面12eとを一体に備えている。補強部用孔部12cは、本体用孔部12bに対して下壁12のコーナ部12fと反体側に位置するように配置されている。
【0028】
補強部用孔部12cには、本体補強部25bが軸線L1周りに回転する際に本体補強部25bの円弧面25b1と摺接可能な円弧状の案内面12c1が形成されている。この案内面12c1により、本体補強部25bが軸線L1周りに回転するに際して滑らかな回転動作が確保される。
【0029】
一方、本体用孔部12bは、軸本体25aの半周以上の部位を軸線L1周りに摺動可能に支持する支持面12b1を有し、支持面12b1の一端に凸面12dが接続され、支持面12b1の他端に凸面12eが接続されている。すなわち、軸本体25aが、貫通孔12aの支持面12b1、凸面12d(第1凸面)及び凸面12e(第2凸面)により三方を囲まれた状態となって、本体用孔部12b内における可動範囲が制限されている。これにより、軸本体25aの軸線L1の位置ずれが抑制される。
【0030】
そして、ハンドル回転軸25が初期位置にある状態では接続部25cの凹面25c1が貫通孔12aの凸面12dと当接し、ハンドル回転軸25が操作位置にある状態では接続部25cの凹面25c2が貫通孔12aの凸面12eと当接するように設定されている。貫通孔12aの凸面12dが本発明の第1凸面に相当し、凸面12eが本発明の第2凸面に相当する。
【0031】
ロックノブ30は、軸支部31と(図7〜9参照)、軸支部31の側端に一体に連結されて軸支部31の側方を覆う操作部34(図1(B)参照)とを備えている。操作部34は、略円錐台あるいは角錐台状の側面を有し、その側面が車室側となるように配置される。
【0032】
軸支部31(ノブ支持部)は、インサイドハンドル20の軸支部21の上部23とベース部材10の上壁14の下部16との間に配置され、操作部34と一体に連結されて軸支部21の上部23の上面に接触するように配置された下部32と、上壁14の下部16の下面に接触するように配置された上部33とを一体に備えている。
【0033】
下部32及び上部33には、ノブピン50の大径部52を挿入可能な円形状の貫通孔32a,33aがそれぞれ同軸に形成されている。また、下部32には、ドアロック又はドアアンロック操作時に動作するプッシュ・プルケーブルの一端に連結された連結部材(図示省略)を取り付けるための取付孔32bが形成されている(図10参照)。
【0034】
ノブピン50は、図1(B)及び図9に示されるように、円形状断面を有する軸状に形成され(金属製又は樹脂製)、その基端には径方向に延び出すレバー部51が一体に形成されている。レバー部51の上部先端には、図9及び図10に示されるように、上壁14の上部15における傾斜部15aの傾斜面に沿って移動し、溝15bと係合可能な三角錐状のリブ51a(係合部)が形成されている。
【0035】
ノブピン50は、より具体的には、基端側が大径部52で先端側が小径部53とされた段付き軸(円柱)状に形成されている。ノブピン50は、大径部52が上壁14の下部16の貫通孔16aに挿入され、小径部53がインサイドハンドル20の軸支部21における上部23の貫通孔23bを通して、中壁13の貫通孔13bに挿入されることで、ベース部材10に軸線L2周りに回転可能に支持される。なお、大径部52には、レバー部51を軸線L2周りに回転操作するための工具係合穴51bが形成されている。
【0036】
レバー部51を上壁14の上部15と下部16間に収容するために、図10(A)に示す組付け前位置から図10(B)に示す組付け後位置に向けて軸線L2周りに回転操作すると、リブ51aが上部15の傾斜部15aと係合し始める。傾斜部15aとの係合が進むに従って、基端側を支点とするレバー部51の撓み量が次第に大きくなり、傾斜部15aから受ける反力も大きくなる。レバー部51が組付け後位置に達すると、リブ51aが傾斜部15aの頂点を乗り越えて溝部15bと係合する。この場合、溝部15bの深さ、大きさ等は、リブ51aとの係合状態において、レバー部51に所定大きさの反力が作用するようレバー部51を所定量だけ撓ませるように設定(干渉設定)されている。
【0037】
このため、レバー部51が組付け後位置にある状態では、レバー部51の撓みに応じた反力によりリブ51a(係合部)と溝部15b(係合溝)との噛合いが強められるので、ノブピン50の軸方向へのガタつきが防止されるとともに、軸線L2周りの回り止めが図られる。特に、レバー部51を組付け後位置から組付け前位置に移動させるためには、リブ51aが傾斜部15aを乗り越えるように所定大きさ以上のトルクでノブピン50のみを回転操作する必要があり、ロックノブ30の通常操作でノブピン50が回転することはない。
【0038】
次に、上記のように構成されたインサイドハンドル20、ロックノブ30及びノブピン50をベース部材10に組み付ける工程について説明する。
【0039】
最初に、ねじりコイルばね40の一端がインサイドハンドル20の作用部24における係止部24cに係止されるようにしつつ軸支部21内に組み込み、軸支部21の上部23がベース部材10の中壁13の少なくとも一部を覆った状態となるように中壁13のボス13aを上部23の貫通孔23aに挿入する(図7図9参照)。これと同時にインサイドハンドル20のハンドル回転軸25を下壁12の貫通孔12aに挿入し、更にねじりコイルばね40の他端が中壁13の係止部13cに係止されるようにする。
【0040】
これにより、インサイドハンドル20がベース部材10に軸線L1周りに回転可能に支持される。インサイドハンドル20は、ねじりコイルばね40のばね力を受けて図11中の図示反時計方向に常時付勢され、作用部24の当接部24bが弾性部材19と当接することで初期位置に保持されている。なお、インサイドハンドル20がベース部材10に組み付けられた状態では、中壁13の貫通孔13bが上部23の貫通孔23bを通して上方に開口した状態にある。
【0041】
次に、ロックノブ30の軸支部31をインサイドハンドル20の軸支部21の上部23とベース部材10の上壁14の下部16との間に、軸支部31の貫通孔32a,33aの軸線が、下部16の貫通孔16aの軸線L2と一致するように組み付ける(図9参照)。
【0042】
次に、ベース部材10の上壁14の下部16、ロックノブ30の軸支部31、インサイドハンドル20の軸支部21の上部23、及びベース部材10の中壁13の順に、ノブピン50を各貫通孔16a,33a,32a,23b,13bに挿入する(図9図10(A)参照)。
【0043】
ノブピン50の組付け前位置からレバー部51を軸線L2周りに回転操作し、レバー部51のリブ15aを上壁14の溝部15bと係合させる。このノブピン50の組付け後位置では、上述したとおり、レバー部51がその撓みに応じた反力を溝部15bから受け、この反力によりノブピン50が下向きに付勢されるため、ノブピン50の大径部52の肩面が軸支部21の上部23における貫通孔23bの周縁部を押圧した状態にある。
【0044】
これにより、ノブピン50の軸線L2周りの回り防止と軸方向のガタつき防止に加えて、インサイドハンドル20の軸線L2方向のガタつきが良好に防止される。
【0045】
次に、上記のように構成された車両用ドアハンドル装置1の作動について説明する。
【0046】
図11及び図12の実線で示されるように、インサイドハンドル20が初期位置にあるときは、ねじりコイルばね40の付勢力により軸本体25aの円弧面25a1が本体用孔部12bの支持面12b1と当接し、本体補強部25bの円弧面25b1が補強部用孔部12cの案内面12c1と当接し、さらに接続部25cの凹面25c1が凸面12dと当接した状態にある。
【0047】
インサイドハンドル20が初期位置から図11の二点鎖線で示される操作位置に向けて回転操作されると、軸本体25aが本体用孔部12b内にて軸線L1周りに回転するとともに、円弧面25b1が案内面12c1に沿って誘導されつつ本体補強部25bがほぼ軸線L1周りに回転する。
【0048】
図11及び図12の二点鎖線で示されるように、インサイドハンドル20が操作位置に達すると、ハンドル回転軸25の軸本体25aにおける円弧面25a1が本体用孔部12bの支持面12b1と当接し、本体補強部25bの円弧面25b1が補強部用孔部12cの案内面12c1と当接し、更に接続部25cの凹面25c2が凸面12eと当接した状態となる。
【0049】
この場合、ハンドル回転軸25が軸本体25a及び本体補強部25bを含む略瓢箪形あるいは達磨形状に形成され、本体補強部25bの軸線L1周りの回転が許容されるよう、貫通穴12aがハンドル回転軸25の全体面積に比べて大きく形成されることから、ハンドル回転軸と貫通孔をほぼ同じ大きさの円形に形成した場合とは異なり、両者間の寸法設定等に起因して、ハンドル回転軸25の回転操作時に軸本体25aの軸線L1が位置ずれする可能性がある。
【0050】
この位置ずれ量が大きくなり過ぎると、インサイドハンドル20の操作に際してユーザに違和感を与えるおそれがあるが、この実施例1では、例えば図13に示されるように、ハンドル回転軸25が初期位置にある状態での軸本体25aの軸線L1の最大変位量(軸線L1’周りの軸本体25aの軸線L1の変位量)が極めて小さな角度θ1となるように設定されている。
【0051】
換言すれば、ハンドル回転軸25が二点鎖線で示す初期位置にある状態では、軸本体25aの円弧面25a1が実線で示すように貫通孔12aの凸面12eと当接することで、軸本体25aが軸線L1’周りに初期位置を超えて更に操作が戻される方向へ回転することが阻止される。同様に、ハンドル回転軸25が操作位置にある状態では、軸本体25aの円弧面25a1が貫通孔12aの凸面12dと当接することで、軸本体25aが軸線L1’周りに操作位置を超えて更に操作が進められる方向へ回転することが阻止されるように設定されている。
【0052】
これにより、ハンドル回転軸25が初期位置又は操作位置にある状態において、貫通孔12aに対するハンドル回転軸25のガタつきが良好に防止される。
【0053】
以上の説明からも明らかなように、本実施例1では、ハンドル回転軸25が、曲率半径ρ1で規定される円形部に対応した部位を含む軸本体25aと、曲率半径ρ1よりも大きい曲率半径ρ2で規定される円形部に対応した部位を含む本体補強部25bとを一体に備えている。
【0054】
これにより、ハンドル回転軸25の断面積が少なくとも本体補強部25bの断面積分は増加するため、ハンドル回転軸25の強度を向上させることができる。この場合、本体補強部25bが軸本体25aに対して下壁12のコーナ部12fと反体側に位置するように構成されているので、下壁12に断面積の増加したハンドル回転軸25に対応した大きさの貫通孔12aを形成するようにしても、下壁12のコーナ部12fの肉厚は従来のままとすることができるので、下壁12の強度も確保することができる。
【実施例2】
【0055】
上記実施例1では、ハンドル回転軸25を構成する軸本体25aと本体補強部25bが、円弧状に窪んだ形態の凹面25c1,25c2を有する接続部25cにより一体に接続されるように構成したが、これに代えて例えば図14のハンドル回転軸125に示されるように、軸本体25aと本体補強部25bが、それらの共通接線に相当する平面状の側面125c1,125c2を有する接続部125cにより一体に接続されるように構成してもよい。
【0056】
ベース部材10の下壁12の貫通孔112aは、ハンドル回転軸125の軸本体25aに対応する本体用孔部12bと、本体補強部25bに対応する補強部用孔部12cと、接続部125cの側面125c1に対応する平面状の側面112dと、接続部125cの側面125c2に対応する平面状の側面112eとを一体に備えている。その他の構成は上記実施例1と同じであり、上記実施例1と同じ機能を果たす部材、部位には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
この実施例2においても、ハンドル回転軸125が二点鎖線で示す初期位置にある状態では、軸本体25aの円弧面25a1が実線で示すように貫通孔112aの側面112eと当接することで、軸本体25aが軸線L1’周りに初期位置を超えて更に操作が戻される方向へ回転することが阻止される。同様に、ハンドル回転軸25が操作位置にある状態では、軸本体25aの円弧面25a1が貫通孔112aの側面112dと当接することで、軸本体25aが軸線L1’周りに操作位置を超えて更に操作が進められる方向へ回転することが阻止されるように設定されている。
【0058】
ただし、ハンドル回転軸125が初期位置にある状態での軸本体25aの軸線L1の最大変位量(軸線L1’周りの軸本体25aの軸線L1の変位量)は、上記実施例1の角度θ1よりも大きな角度θ2となっている。このため、ハンドル回転軸125が初期位置又は操作位置にある状態での、貫通孔112aに対するハンドル回転軸125のガタつき量は上記実施例1よりも大きくなるが、ハンドル回転軸125の断面積が少なくとも本体補強部25bの断面積分は増加するため、ハンドル回転軸125の強度を向上させることは可能である。
【0059】
なお、上記実施例1,2では、ハンドル回転軸25,125における軸本体25a及び本体補強部25bがいずれも交わらない真円状の円形部を含むように両者の中心間距離を設定したが、これに限らず、例えば互いの真円が交わるように両者の中心間距離を設定してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 車両用ドアハンドル装置
10 ベース部材
12 下壁
12a,112a 貫通孔
12b 本体用孔部
12c 補強部用孔部
12d,112d 凸面(第1凸面)
12e,112e 凸面(第2凸面)
13 中壁
13a ボス
13b 貫通孔
14 上壁
15 上部
15a 傾斜部
15b 溝部
16 下部
16a 貫通孔
L1,L2 軸線
20 インサイドハンドル(ハンドル)
21 軸支部
22 下部
23 上部
23a 貫通孔
25,125 ハンドル回転軸
25a 軸本体
25b 本体補強部
25c,125c 接続部
25c1,125c1 凹面(第1凹面)
25c2,125c2 凹面(第2凹面)
26 操作部
30 ロックノブ
31 軸支部
32 下部
32a 貫通孔
33 上部
33a 貫通孔
34 操作部
40 ねじりコイルばね
50 ノブピン
51 レバー部
51a リブ
52 大径部
53 小径部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15