【実施例1】
【0014】
図1及び
図2に示される車両用ドアハンドル装置1は、車体に開閉可能に支持されるドア(図示省略)に設けられる、アンロック状態にあるドアラッチ装置(図示省略)をドア開状態とし、そのドアラッチ装置をアンロック状態からロック状態へ切り替え、あるいはロック状態からアンロック状態へ切り替えるための操作部として機能する。
【0015】
具体的に、車両用ドアハンドル装置1は、ドアの内部パネル(図示省略)に固定されるベース部材10と、ベース部材10に上下方向の軸線L1(第1軸線)周りに回転可能に支持される、ドア開操作のためのインサイドハンドル20と、ベース部材10に円形状断面を有する軸状のノブピン50を介して上下方向の軸線L2(第2軸線)周りに回転可能に支持される、ドアロック又はドアアンロック操作のためのロックノブ30とを備えている。
【0016】
ベース部材10は、
図2及び
図3に示されるように、板面が車両の上下方向に沿って配置される矩形板状のベース本体11と、ベース本体11の後端縁から後方へ向けて水平に延び出し、互いに平行に配設された下壁12、中壁13及び上壁14と、車両の上下に延び出し各壁12〜14の後端縁を一体に連結する連結壁18とを備えている。
【0017】
下壁12(第1壁部)には、ハンドル回転軸25(
図4参照)を挿入可能な貫通孔12aが形成されている。貫通孔12aについては後述する。中壁13(第2壁部)には、ボス13aが上壁14に向けて立設されている。ボス13aの軸線は軸線L1に一致している。また、中壁13には、ノブピン50の小径部53(
図9参照)を挿入可能な円形状の貫通孔13bが形成されている。貫通孔13bの軸線は軸線L2に一致している。
【0018】
なお、軸線L1,L2は、車両の左右方向(ベース部材10の奥行き方向)でずれた位置に設定されているが(
図3(A))、車両の前後方向では例えばベース部材10の前端から同じ距離に位置するように設定されており、ベース部材10の正面視において一致して見える(
図3(B))。
【0019】
上壁14(第3壁部)は、上下に互いに平行に配設された上部15及び下部16と、上部15、下部16の後端縁を一体に連結する連結部17とを備えている。下部16には、中壁13の貫通孔13bと同軸の円形状の貫通孔16aが形成されている。
【0020】
上部15には、レバー部51が回転を進めるのに従ってその基端側(軸線L2側)を支点として先端のリブ51aを下方へ撓ませる撓み量を連続的に大きくするような断面三角形状の傾斜部15aが形成されるとともに、その傾斜部15aの頂点を越えた辺りでリブ51aと係合する断面三角形状の溝部15b(係合溝)が形成されている。傾斜部15aと溝部15bについては後述する。
【0021】
連結壁18には、ドア開操作によるインサイドハンドル20への操作力を伝達するプッシュ・プルケーブルのスリーブ(図示省略)を取り付けるための切欠き18aが形成されるとともに、ドアロック又はドアアンロック操作によるロックノブ30への操作力を伝達するプッシュ・プルケーブルのスリーブ(図示省略)を取り付けるための切欠き18bが形成されている。また、連結壁18には、インサイドハンドル20に当接してそのインサイドハンドル20を初期位置に保持する、例えばゴム等の弾性部材19(
図11参照)を取り付けるための取付孔18cが形成されている。
【0022】
インサイドハンドル20(ハンドル)は、
図4(B)の底面図に示されるように、略楕円形状をなす軸支部21と、軸支部21の前端に一体に連結されて車両の前方に向けて延び出す操作部26とを備えている。
【0023】
操作部26は、
図4(C)の正面図に示されるように、車両の前後に延び出す矩形状をなし、
図4(A)の斜視図に示されるように、緩やかに湾曲した凹部26a側がベース部材10と対向配置される。軸支部21は、
図7及び
図8に示されるように、操作部26と一体に連結されてベース部材10の下壁12に支持されるように配置された下部22と、ベース部材10の中壁13の一部位を覆い、その覆った中壁13の部位で支持されるように配置された上部23とを一体に備えている。
【0024】
上部23には、中壁13のボス13aを挿入可能な円形状の貫通孔23aが形成されるとともに、ノブピン50の小径部53(
図9参照)を挿入可能な貫通孔23bが形成されている。具体的には、貫通孔23bは、長円形の2つの線分をボス13aの軸線L2を回転中心とする円弧とした長孔であり、上部23が軸線L2周りに回転した場合でも、中壁13の貫通孔13bと常時連通した状態にある(
図9参照)。上部23が本発明のハンドル支持壁部に相当する。
【0025】
図4に戻って、下部22には、軸支部21の後端から車両の斜め後方に向けて突出する形態の作用部24が形成されている。作用部24には、ドア開操作時に動作するプッシュ・プルケーブルの一端に連結された連結部材(図示省略)を取り付けるための取付孔24aが形成され、インサイドハンドル20を初期位置に保持する弾性部材19に当接する当接部24bが形成され、更にねじりコイルばね40(
図9参照)の一端が係止される係止部24cが形成されている。
【0026】
なお、ねじりコイルばね40は、軸支部21の下部22とベース部材10の中壁13との間に介装され、その他端が中壁13に形成された係止部13c(
図3(B)参照)で係止されるようになっている。
【0027】
また、下部22には、下向きに延び出し、ベース部材10の下壁13の貫通孔12aに挿入されるハンドル回転軸25が一体に形成されている。ハンドル回転軸25は、
図13に示されるように、上部23の貫通孔23aと同軸の軸線L1(第1基準中心)を中心として曲率半径ρ1で規定される円形部に対応した部位を含む軸本体25aと、軸線L1から所定の距離Dだけ離れた軸線L1’(第2基準中心)を中心として、曲率半径ρ1(第1曲率半径)よりも大きい曲率半径ρ2(第2曲率半径)で規定される円形部に対応した部位を含む本体補強部25bとを一体に備えている。
【0028】
具体的に、軸本体25aと本体補強部25bとは、軸線L1,L1’を通る中心線L3に対して対称配置された、円弧状に窪んだ形態の凹面25c1,25c2を有する接続部25cにより一体に接続され、略瓢箪形あるいは達磨形状に形成されている。本体補強部25bは軸本体25aに対して下壁12のコーナ部12fと反体側に位置するように配置されている(
図5参照)。
【0029】
すなわち、ハンドル回転軸25の周方向に沿って軸本体25aの円弧面25a1の一端が接続部25cの凹面25c1(第1凹面)を介して本体補強部25bの円弧面25b1の一端に接続され、更に本体補強部25bの円弧面25b1の他端が接続部25cの凹面25c2(第2凹面)を介して軸本体25aの円弧面25a1の他端に接続されている。
【0030】
上記した下壁12の貫通孔12aは、ハンドル回転軸25の軸本体25aに対応する本体用孔部12bと、本体補強部25bに対応する補強部用孔部12cと、接続部25cの凹面25c1に対応する凸面12dと、接続部25cの凹面25c2に対応する凸面12eとを一体に備えている。補強部用孔部12cは、本体用孔部12bに対して下壁12のコーナ部12fと反体側に位置するように配置されている。
【0031】
補強部用孔部12cには、本体補強部25bが軸線L1周りに回転する際に本体補強部25bの円弧面25b1と摺接可能な円弧状の案内面12c1が形成されている。この案内面12c1により、本体補強部25bが軸線L1周りに回転するに際して滑らかな回転動作が確保される。
【0032】
一方、本体用孔部12bは、軸本体25aの半周以上の部位を軸線L1周りに摺動可能に支持する支持面12b1を有し、支持面12b1の一端に凸面12dが接続され、支持面12b1の他端に凸面12eが接続されている。すなわち、軸本体25aが、貫通孔12aの支持面12b1、凸面12d(第1凸面)及び凸面12e(第2凸面)により三方を囲まれた状態となって、本体用孔部12b内における可動範囲が制限されている。これにより、軸本体25aの軸線L1の位置ずれが抑制される。
【0033】
そして、ハンドル回転軸25が初期位置にある状態では接続部25cの凹面25c1が貫通孔12aの凸面12dと当接し、ハンドル回転軸25が操作位置にある状態では接続部25cの凹面25c2が貫通孔12aの凸面12eと当接するように設定されている。
【0034】
ロックノブ30は、軸支部31と(
図7〜9参照)、軸支部31の側端に一体に連結されて軸支部31の側方を覆う操作部34(
図1(B)参照)とを備えている。操作部34は、略円錐台あるいは角錐台状の側面を有し、その側面が車室側となるように配置される。
【0035】
軸支部31は、インサイドハンドル20の軸支部21の上部23とベース部材10の上壁14の下部16との間に配置され、操作部34と一体に連結されて軸支部21の上部23の上面に接触するように配置された下部32と、上壁14の下部16の下面に接触するように配置された上部33とを一体に備えている。
【0036】
下部32及び上部33には、ノブピン50の大径部52を挿入可能な円形状の貫通孔32a,33aがそれぞれ同軸に形成されている。また、下部32には、ドアロック又はドアアンロック操作時に動作するプッシュ・プルケーブルの一端に連結された連結部材(図示省略)を取り付けるための取付孔32bが形成されている(
図10参照)。軸支部31が本発明のノブ支持部に相当する。
【0037】
ノブピン50は、
図1(B)及び
図9に示されるように、円形状断面を有する軸状に形成され(金属製又は樹脂製)、その基端には径方向に延び出すレバー部51が一体に形成されている。レバー部51の上部先端には、
図9及び
図10に示されるように、上壁14の上部15における傾斜部15aの傾斜面に沿って移動し、溝15bと係合可能な三角錐状のリブ51a(係合部)が形成されている。
【0038】
ノブピン50は、より具体的には、基端側が大径部52で先端側が小径部53とされた段付き軸(円柱)状に形成されている。ノブピン50は、大径部52が上壁14の下部16の貫通孔16aに挿入され、小径部53がインサイドハンドル20の軸支部21における上部23の貫通孔23bを通して、中壁13の貫通孔13bに挿入されることで、ベース部材10に軸線L2周りに回転可能に支持される。なお、大径部52には、レバー部51を軸線L2周りに回転操作するための工具係合穴51bが形成されている。
【0039】
レバー部51を上壁14の上部15と下部16間に収容するために、
図10(A)に示す組付け前位置から
図10(B)に示す組付け後位置に向けて軸線L2周りに回転操作すると、リブ51aが上部15の傾斜部15aと係合し始める。傾斜部15aとの係合が進むに従って、基端側を支点とするレバー部51の撓み量が次第に大きくなり、傾斜部15aから受ける反力も大きくなる。レバー部51が組付け後位置に達すると、リブ51aが傾斜部15aの頂点を乗り越えて溝部15bと係合する。この場合、溝部15bの深さ、大きさ等は、リブ51aとの係合状態において、レバー部51に所定大きさの反力が作用するようレバー部51を所定量だけ撓ませるように設定(干渉設定)されている。
【0040】
このため、レバー部51が組付け後位置にある状態では、レバー部51の撓みに応じた反力によりリブ51a(係合部)と溝部15b(係合溝)との噛み合いが強められるので、ノブピン50の軸方向へのガタつきが防止されるとともに、軸線L2周りの回り止めが図られる。特に、レバー部51を組付け後位置から組付け前位置に移動させるためには、リブ51aが傾斜部15aを乗り越えるように所定大きさ以上のトルクでノブピン50のみを回転操作する必要があり、ロックノブ30の通常操作でノブピン50が回転することはない。ベース部材10の上壁14における上部15の傾斜部15a及び溝部15bが本発明の規制部として機能する。
【0041】
次に、上記のように構成されたインサイドハンドル20、ロックノブ30及びノブピン50をベース部材10に組み付ける工程について説明する。
【0042】
最初に、ねじりコイルばね40の一端がインサイドハンドル20の作用部24における係止部24cに係止されるようにしつつ軸支部21内に組み込み、軸支部21の上部23がベース部材10の中壁13の少なくとも一部を覆った状態となるように中壁13のボス13aを上部23の貫通孔23aに挿入する(
図7、
図9参照)。これと同時にインサイドハンドル20のハンドル回転軸25を下壁12の貫通孔12aに挿入し、更にねじりコイルばね40の他端が中壁13の係止部13cに係止されるようにする。
【0043】
これにより、インサイドハンドル20がベース部材10に軸線L1周りに回転可能に支持される。インサイドハンドル20は、ねじりコイルばね40のばね力を受けて
図11中の図示反時計方向に常時付勢され、作用部24の当接部24bが弾性部材19と当接することで初期位置に保持されている。なお、インサイドハンドル20がベース部材10に組み付けられた状態では、中壁13の貫通孔13bが上部23の貫通孔23bを通して上方に開口した状態にある。
【0044】
次に、ロックノブ30の軸支部31をインサイドハンドル20の軸支部21の上部23とベース部材10の上壁14の下部16との間に、軸支部31の貫通孔32a,33aの軸線が、下部16の貫通孔16aの軸線L2と一致するように組み付ける(
図9参照)。
【0045】
次に、ベース部材10の上壁14の下部16、ロックノブ30の軸支部31、インサイドハンドル20の軸支部21の上部23、及びベース部材10の中壁13の順に、ノブピン50を各貫通孔16a,33a,32a,23b,13bに挿入する(
図9、
図10(A)参照)。
【0046】
ノブピン50の組付け前位置からレバー部51を軸線L2周りに回転操作し、レバー部51のリブ15aを上壁14の溝部15bと係合させる。このノブピン50の組付け後位置では、上述したとおり、レバー部51がその撓みに応じた反力を溝部15bから受け、この反力によりノブピン50が下向きに付勢されるため、ノブピン50の大径部52の肩面が軸支部21の上部23における貫通孔23bの周縁部を押圧した状態にある。
【0047】
これにより、ノブピン50の軸線L2周りの回り防止と軸方向のガタつき防止に加えて、インサイドハンドル20の軸線L2方向のガタつきが良好に防止される。
【0048】
次に、上記のように構成された車両用ドアハンドル装置1の作動について説明する。
【0049】
図11及び
図12の実線で示されるように、インサイドハンドル20が初期位置にあるときは、ねじりコイルばね40の付勢力により軸本体25aの円弧面25a1が本体用孔部12bの支持面12b1と当接し、本体補強部25bの円弧面25b1が補強部用孔部12cの案内面12c1と当接し、さらに接続部25cの凹面25c1が凸面12dと当接した状態にある。
【0050】
インサイドハンドル20が初期位置から
図11の二点鎖線で示される操作位置に向けて回転操作されると、軸本体25aが本体用孔部12b内にて軸線L1周りに回転するとともに、円弧面25b1が案内面12c1に沿って誘導されつつ本体補強部25bがほぼ軸線L1周りに回転する。
【0051】
図11及び
図12の二点鎖線で示されるように、インサイドハンドル20が操作位置に達すると、ハンドル回転軸25の軸本体25aにおける円弧面25a1が本体用孔部12bの支持面12b1と当接し、本体補強部25bの円弧面25b1が補強部用孔部12cの案内面12c1と当接し、更に接続部25cの凹面25c2が凸面12eと当接した状態となる。
【0052】
以上の説明からも明らかなように、本実施例1では、ノブピン50の基端に径方向に延び出すレバー部51が形成され、上壁14の上部15にはレバー部51の軸線L2周りの所定位置でレバー部51の移動を規制、すなわちリブ51aの移動を抑制する傾斜部15aと、傾斜部15aを越えた辺りでリブ51aと噛み合う溝部15bが形成されている。
【0053】
すなわち、ノブピン50をベース部材10の上壁14(上部15、下部16)、ロックノブ30(上部33、下部32)、インサイドハンドル20の軸支部21の上部23、及びベース部材10の中壁13の順に各貫通孔16a,33a,32a,23b,13aに挿入した後、レバー部51を軸線L2周りに回転操作することで、リブ51aと傾斜部15aとの係合、更にはリブ51aと溝部15bとの噛み合いによりレバー部51の移動が規制された状態となる。
【0054】
これにより、本実施例1の車両用ドアハンドル装置1では、加締めのための専用設備が不要となり、作業時間も短縮化されて作業コストを削減することができる。また、係合爪を形成する場合のような支持部位での肉抜きが不要となり、強度を確保することができる。また、レバー部51の軸線L2周りの所定位置に対応して上壁14の上部15の下面に傾斜部15a及び溝部15bを設ければよく、上部15の上方のスペースを使用しなくて済み、装置1の全体として小スペースで実施することができる。