(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961503
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】ドライブレコーダ
(51)【国際特許分類】
G07C 5/00 20060101AFI20160719BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
G08G1/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-211003(P2012-211003)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-67156(P2014-67156A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】松宮 昌彦
【審査官】
小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−033847(JP,A)
【文献】
特開2009−098738(JP,A)
【文献】
米国特許第5430432(US,A)
【文献】
米国特許第6298290(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のタイヤの回転周期に応じた間隔でパルス信号を出力する速度センサから、前記パルス信号を受け付ける速度信号受信部と、
加速度センサから出力された加速度情報を含む信号を受け付ける加速度信号受信部と、
を備え、
記録トリガが発生した場合、画像データを記録するドライブレコーダであって、
前記車両が発進した後、前記速度信号受信部が前記速度センサから所定数のパルス信号を受け付けるまでは、前記加速度信号受信部が前記加速度センサから受け付けた信号に基づいて、前記記録トリガが発生したか否かを判定し、
前記速度信号受信部が前記速度センサから前記所定数のパルス信号を受け付けた後は、前記速度センサから受け付けたパルス信号に基づいて、前記記録トリガが発生したか否かを判定する、
ことを特徴とするドライブレコーダ。
【請求項2】
前記所定数は、発車時、前記速度センサによって検出されるパルス信号の数から得られる速度が正確なものになると判断される値である、
ことを特徴とする請求項1記載のドライブレコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録トリガが発生した場合、画像データを記録するドライブレコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライブレコーダの中には、記録トリガ発生の有無を判定する基準として、速度センサからのパルス信号に基づいて算出した速度情報を用いるものがある。速度センサは、タイヤに動力を伝達する車軸等に取り付けられ、タイヤの回転周期に対応する周期のパルス信号を出力する。
【0003】
この速度センサを用いて速度情報を算出する際、ドライブレコーダは、所定数のパルスが入力された後、このパルスに基づいて速度を算出する。
【0004】
この種の先行技術文献として、特許文献1には、ドライブレコーダにおける記録トリガ発生の有無を判定する際、加速度センサによって検出された加速度情報を用いてもよいし、速度センサから取得した速度情報を用いてもよいことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−128694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のドライブレコーダでは、車両が停止状態から急発進した際には、所定数のパルスが入力されない状態で速度が算出されるので、この算出された速度が適正な値でないおそれがある。
【0007】
即ち、速度センサを用いて、急発進等の発車時に加速度を算出する場合、短時間のうちに検出されるパルス数は少なく、また、停止していたタイヤを駆動する車軸の位置によっては計測されるパルス数の値が変わってくる。従って、発車直後の所定時間内のパルス数から得られる速度の値は正確なものとは言い難かった。
【0008】
このように、発車時における記録トリガ発生の判定に、速度センサからのパルス信号を用いることは、記録トリガ発生の判定の精度を低下させていた。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、発車時における記録トリガ発生の判定の精度を向上させることができるドライブレコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係るドライブレコーダは、下記(1)、(2)を特徴としている。
(1) 車両のタイヤの回転周期に応じた間隔でパルス信号を出力する速度センサから、前記パルス信号を受け付ける速度信号受信部と、
加速度センサから出力された加速度情報を含む信号を受け付ける加速度信号受信部と、
を備え、
記録トリガが発生した場合、画像データを記録するドライブレコーダであって、
前記車両が発進した後、前記速度信号受信部が前記速度センサから所定数のパルス信号を受け付けるまでは、前記加速度信号受信部が前記加速度センサから受け付けた信号に基づいて、前記記録トリガが発生したか否かを判定し、
前記速度信号受信部が前記速度センサから前記所定数のパルス信号を受け付けた後は、前記速度センサから受け付けたパルス信号に基づいて、前記記録トリガが発生したか否かを判定する、
こと。
(2) 上記(1)の構成のドライブレコーダであって、
前記所定数は、発車時、前記速度センサによって検出されるパルス信号の数から得られる速度が正確なものになると判断される値である、
こと。
【0011】
上記(1)または(2)の構成のドライブレコーダによれば、車両が発進した後、ドライブレコーダは、速度センサから所定数のパルス信号を受け付けるまでは、加速度センサから受け付けた信号に基づいて、記録トリガが発生したか否かを判定する。一方、速度センサから所定数のパルス信号を受け付けた後は、ドライブレコーダは、速度センサから受け付けたパルス信号に基づいて、記録トリガが発生したか否かを判定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両が発進した後、ドライブレコーダは、速度センサから所定数のパルス信号を受け付けるまでは、加速度センサから受け付けた信号に基づいて、記録トリガが発生したか否かを判定する。一方、速度センサから所定数のパルス信号を受け付けた後は、ドライブレコーダは、速度センサから受け付けたパルス信号に基づいて、記録トリガが発生したか否かを判定する。これにより、発車時における記録トリガ発生の判定の精度を向上させることができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施の形態におけるドライブレコーダ1の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2(A)〜
図2(C)は、速度センサ15による車速の検出動作を説明する図である。
【
図3】
図3は、ドライブレコーダ1の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態におけるドライブレコーダについて図面を用いて説明する。
図1は実施の形態におけるドライブレコーダ1の構成を示すブロック図である。ドライブレコーダ1は、周知のCPU、ROM、RAM、入出力インターフェース(I/F)等を筐体に内蔵するドライブレコーダ本体10を有する。
【0016】
また、ドライブレコーダ本体10には、ドアの開閉を検知するドアセンサ11、警報等の音声を発するスピーカ12、及び車両(図示せず)のフロントガラス上部に設置され、車両の前方の画像を撮影するカメラ14が接続される。
【0017】
また、ドライブレコーダ本体10には、車両の加速度を検出し、車両に加わる衝撃を感知するGセンサ(加速度センサ)13、及び車軸等に設置され、タイヤの回転周期に応じた間隔でパルス信号を出力し、車両の速度を検出する速度センサ15が接続される。なお、ここでは、Gセンサ13は、ドライブレコーダ本体10の筐体に内蔵されている。
【0018】
また、ドライブレコーダ本体10には、GPS衛星からのGPS信号を受信し、車両の現在位置(緯度、経度)や時刻を検出するGPS受信器16、及び記録トリガ発生時にカメラ14で撮影された画像等のデータを記録するメモリカード17が接続される。メモリカード17は、ドライブレコーダ本体10に挿抜自在に装着される。
【0019】
また、ドライブレコーダ本体10に内蔵された入出力I/Fには、速度センサ15からパルス信号を受け付ける速度信号受信部、及び加速度センサ13から出力された加速度情報を含む信号を受け付ける加速度信号受信部が含まれる。
【0020】
図2(A)から
図2(C)は速度センサ15による車速の検出動作を説明する図である。
図2(A)に示すように、車両のタイヤ30に動力を伝達する車軸25の外周には、磁石28が取り付けられている。速度センサ(車速センサ)15は、車軸25と対向する位置に取り付けられており、磁気の強弱に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗素子を有する。
【0021】
タイヤ30が回転し、車軸25に取り付けられた磁石28が速度センサ15の前を1回通過する度に、速度センサ15は磁石の数(例えば1個または数個)に相当する数のパルス信号を出力する。
【0022】
なお、速度センサ15が設けられる箇所は、車軸25に限られない。タイヤ30にトルクを伝達する軸に磁石が取り付けられ、この軸と対向するように速度センサが設けられるようにしてもよい。また、速度センサとしては、磁気抵抗素子を用いたものに限らず、透過型あるいは反射型の光学センサ等、回転を検出可能なものである限り、特に限定されない。
【0023】
また、本実施形態では、
図2(B)に示すように、速度センサ15から出力されるパルス信号の数が所定数(例えば、値20)に達した後、所定時間(0.1秒、1秒など)当たりに速度センサ15から出力されるパルス信号の数から、速度信号を得るようにしている。この所定数は、発車時、速度センサによって検出されるパルス信号の数から得られる速度が正確なものになると判断される値に設定される。
【0024】
そして、現在時刻に得られた速度と所定時間前に得られた速度との速度差、つまり加速度から、記録トリガ発生の判定を行うようにしている。
【0025】
ここで、所定数のパルス信号が出力されてから速度を計測するのは、つぎのような理由による。すなわち、タイヤの停止状態から発進する場合、特に急発進の場合、
図2(C)に示すように、パルス数は、始め少なく、途中から急に増加することになる。従って、所定時間に亘って平均化されたパルス数を計測しても、正確な速度は得られない。また、タイヤの停車状態における速度センサと磁石の位置関係から、最初のパルス信号を出力するタイミングも違ってくる。さらに、記録トリガ発生の判定は、現在時刻の速度と所定秒前の速度との速度差、つまり加速度から行われるので、発進時に速度センサを用いて判定を行うことは時間的にも難しい。
【0026】
そこで、本実施形態では、速度センサが所定数(例えば、値20)のパルスを出力した後でなければ、つまり、少し発進させた後でなければ、速度センサを用いた記録トリガ発生の判定を行わないようにした。
【0027】
上記構成を有するドライブレコーダ1の動作を示す。
図3はドライブレコーダ1の動作手順を示すフローチャートである。この動作プログラムは、ドライブレコーダ本体10内のROMに格納されており、ドライブレコーダ本体10内のCPUによって実行される。
【0028】
まず、ドライブレコーダ1は、速度センサ15からパルス信号が出力されておらず、車両が停止しているか否かを判別する(ステップS1)。車両が停止している場合、ドライブレコーダ1は、ステップS1の処理を繰り返す。
【0029】
一方、発車し、車両が停止していない場合、ドライブレコーダ1は、速度センサ15から出力されるパルス数を任意の時間計測し、この計測により得られた速度があらかじめ設定された設定値未満であるか否かを判別する(ステップS2)。設定値未満である場合、発進後のパルス数が所定数に達していないとして、記録トリガ発生の判定に際し、速度センサ15によって計測される速度を用いず、Gセンサ13によって検出される加速度を用いるようにする。
【0030】
即ち、ステップS2で計測により得られた速度が設定値未満である場合、ドライブレコーダ1は、Gセンサ13によって検出される加速度(G値)が第1閾値未満であるか否かを判別する(ステップS3)。この第1閾値は、記録トリガを発生させるか否かを判定するための値である。第1閾値未満である場合、ドライブレコーダ1は、ステップS1の処理に戻る。
【0031】
一方、ステップS3で加速度が第1閾値以上である場合、ドライブレコーダ1は、記録トリガを発生させ、メモリカード17に「急発進注意アナウンス」のデータを記録する(ステップS5)。この「急発進注意アナウンス」のデータは、急発進による記録トリガが発生したことを表している。
【0032】
また、ステップS5の処理では、急発進注意アナウンスデータの記録とともに、記録トリガ発生により、カメラ14で撮影された画像データもメモリカード17に記録される。なお、この時、スピーカ12で急発進であることを発音してもよい。この後、ドライブレコーダ1は、ステップS1の処理に戻る。
【0033】
また一方、ステップS2で計測により得られた速度が設定値以上である場合、ドライブレコーダ1は、今回の速度と所定秒前に計測された前回の速度との速度差が第2閾値未満であるか否かを判別する(ステップS4)。この所定秒は、1秒、5秒等、任意に設定可能である。この第2閾値は、記録トリガを発生させるか否かを判定するための値である。
【0034】
速度差が第2閾値未満である場合、ドライブレコーダ1は、ステップS1の処理に戻る。一方、ステップS4で速度差が第2閾値以上である場合、ドライブレコーダ1は、ステップS5の処理に進む。即ち、ドライブレコーダ1は、前述したように、メモリカード17に「急発進注意アナウンス」のデータを記録する。
【0035】
このように、ドライブレコーダは、発車時、速度センサによって検出されるパルス信号の数が所定数未満、つまり任意の時間内に計測されるパルス数を表す速度が設定値未満の場合、Gセンサによって検出される加速度を用いて記録トリガの発生の有無を判定する。この任意の時間は、発車時に所定数以上のパルス信号が得られるような、比較的長い時間に設定される。速度センサによって検出されるパルス信号の数が所定数以上になると、ドライブレコーダは、速度センサによって検出される速度で、記録トリガの発生の有無を判定する。
【0036】
従って、急発進時、速度センサでは、所定数(例えば、値20)のパルス信号が検出されるまでは、速度差が得られず、記録トリガ発生が判定が難しいような場合であっても、加速度センサで加速度を計測することで記録トリガ発生の判定を正確に行える。これにより、発進時における記録トリガ発生の判定の精度を向上させることができる。また、利用者への注意喚起がより正確に行える。さらに、この注意喚起により、利用者が運転に際して注意するようになり、事故防止に役立てることができる。
【0037】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、本実施形態の構成が持つ機能を達成できる構成であればどのようなものであっても適用可能である。
【0038】
例えば、上記実施形態では、ステップS2において、任意の時間内に計測されるパルス数から得られる速度が設定値未満である場合、発進後のパルス数が所定数に達していないとしたが、つぎのようにしてもよい。つまり、ステップS2の処理を、時間を考慮することなく、単に「計測されたパルス数が所定数に達したか否か」を判別する処理としてもよく、所定数未満の場合、ステップS3の処理に進み、所定数以上の場合、ステップS4の処理に進むようにしてもよい。
【0039】
また、加速度センサとしては、ピエゾ抵抗素子型、静電容量型等の半導体式のもの他、光学式、機械式のものでもよく、特に限定されない。
【0040】
本発明は、記録トリガが発生した場合、画像データを記録する際、発車時における記録トリガ発生の判定の精度を向上させることができ、有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 ドライブレコーダ
10 ドライブレコーダ本体
11 ドアセンサ
12 スピーカ
13 Gセンサ(加速度センサ)
14 カメラ
15 速度センサ(車速センサ)
16 GPS受信器
17 メモリカード