特許第5961507号(P5961507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5961507地震発生時の自動運用切り替えシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961507
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】地震発生時の自動運用切り替えシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/22 20060101AFI20160719BHJP
   G06F 11/20 20060101ALI20160719BHJP
   G08B 31/00 20060101ALI20160719BHJP
   G08B 27/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G01V1/22
   G06F11/20
   G08B31/00 B
   G08B27/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-213626(P2012-213626)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-66664(P2014-66664A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】特許業務法人藤央特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 有紗
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−140106(JP,A)
【文献】 特開2011−145861(JP,A)
【文献】 特開2009−223860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00−13/00
G06F 11/20
G08B 27/00
G08B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
震源位置、震源地の震度および地震発生時刻を含む緊急地震情報を受信する受信手段と、
受信した緊急地震情報に基づき、震源位置からジョブ運用を管理しているマシンの設置位置までの距離と震源地の震度、地震発生時刻とに基づき、前記マシンの設置位置までの地震動到達予想時刻と到達する地震動の震度とを算出する計算手段と、
この計算手段の計算結果より、前記マシンの設置位置に到達する地震動の震度がユーザにより予め設定された危険レベルを超えている場合、前記地震動到達予想時刻に達する前に前記マシンを自動停止させると共に、停止した際にジョブの状態を確認し、正常終了または未実行(先行終了待ち)状態以外のジョブの状態を一覧データに書き出し、運用切り替え先へ転送する転送制御手段とを備え
前記転送制御手段は、算出した地震動到達時刻までに未転送のデータを転送する余裕があるか否かを判断し、余裕がある場合は、ジョブ状態一覧データと共に非同期方式による未転送データの転送を行い、余裕が無い場合は、ジョブ状態一覧データの転送のみ行う制御を実行することを特徴とする地震発生時の自動運用切り替えシステム。
【請求項2】
前記転送制御手段が実施する非同期方式による未転送データの転送は、ユーザの指示により転送するか否かを選択可能に構成されていること特徴とする請求項1に記載の地震発生時の自動運用切り替えシステム。
【請求項3】
地震等の災害発生時に運用中のジョブ運用管理システムのデータを遠隔地のリモートサイトに転送し、リモートサイトで運用を継続させる自動運用切り替えシステムにおける自動運用切り替え方法であって、
前記自動運用切り替えシステムが、震源位置、震源地の震度および地震発生時刻を含む緊急地震情報を受信する受信ステップと、
前記自動運用切り替えシステムが、受信した緊急地震情報に基づき、震源位置からジョブ運用を管理しているマシンの設置位置までの距離と震源地の震度、地震発生時刻とに基づき、前記マシンの設置位置までの地震動到達予想時刻と到達する地震動の震度とを算出する計算ステップと、
前記自動運用切り替えシステムが、計算結果より、前記マシンの設置位置に到達する地震動の震度がユーザにより予め設定された危険レベルを超えている場合、前記地震動到達予想時刻に達する前に前記マシンを自動停止させると共に、停止した際にジョブの状態を確認し、正常終了または未実行(先行終了待ち)状態以外のジョブの状態を一覧データに書き出し、運用切り替え先へ転送する転送制御ステップとを備え、
前記転送制御ステップでは、算出した地震動到達時刻までに未転送のデータを転送する余裕があるか否かを判断し、余裕がある場合は、ジョブ状態一覧データと共に非同期方式による未転送データの転送を行い、余裕が無い場合は、ジョブ状態一覧データの転送のみ行う制御を実行することを特徴とする地震発生時の自動運用切り替え方法。
【請求項4】
前記転送制御ステップにおける非同期方式による未転送データの転送は、ユーザの指示により転送するか否かを選択可能に構成されていること特徴とする請求項3に記載の地震発生時の自動運用切り替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等の災害発生時に、特定のマシンで運用中しているジョブ運用管理システムが予期せず停止をした場合、ディザスタリカバリシステムにより、災害の影響が及ばない遠隔地に設置された別のマシンにバックアップしておいた運用データを元に、運用を継続(再開)する運用切り替えシステムに関し、特に、地震発生時の緊急地震速報による地震情報が流れる状況において、地震の到来前に、運用中のジョブ運用管理システムを安全かつ迅速に自動停止し、別マシンで運用を継続(再開)することができる自動運用切り替えシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディザスタリカバリシステムは、レプリケーションやミラーリングシステムなどを利用し、運用中のジョブ運用管理システムのデータを災害の影響が及ばない遠隔地(リモートサイト)に転送(コピー)することで保護し、災害発生時または、何らかの障害により、運用中のジョブ運用管理システムが予期せず停止した場合、転送(コピー)しておいたデータを元に、災害の影響が及ばない遠隔地(リモートサイト)でユーザが運用切り替え操作を行うことで、一度停止した運用を継続(再開)することを可能としている。
一方、ディザスタリカバリシステムは、災害時のシステム運用継続システムとして優れたシステムであるが、運用切り替え元(メインサイト)から運用切り替え先(リモートサイト)へのデータの転送(コピー)方法において、「非同期方式」を選択している場合、災害時にシステムが停止するタイミングにより、データの損失が発生する可能性がある。災害が発生した際、特に、地震が発生した際、地振動の発生を検地し、ジョブ運用管理システムが予期せず停止をする前に地震対策を講じることは非常に有効である。
このような背景から、緊急地震情報と運用システムを組み合わせ、地震発生時、地震到達前に既存システムを安全に停止する地震対策技術が、特許文献1に開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−113937号公開
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ジョブ運用管理システムでは、複数のジョブを同時に処理することを可能としており、システム停止のタイミングにより、実行中のジョブと、処理を完了しているジョブとが混在する状態となる。そのため、システムが予期せず停止した場合、実行中だったジョブは、その種類により終了状態不明となったり、実行中のままとなることがある。しかし、これらのジョブは、運用切り替え元(メインサイト)のシステムが停止しているため、運用切り替え先(リモートサイト)に状態が引き継がれない。
このような事態が発生した場合、ユーザは運用切り替え後に、ジョブの実行を抑止した状態で運用を再開し、運用切り替え元(メインサイト)でのシステム停止時のジョブの状態を確認し、運用切り替え先(リモートサイト)に反映されていないジョブの状態を変更したり、再実行する必要がある。そのため、ジョブ実行中にシステムが停止し、運用切り替え先(リモートサイト)に状態が引き継がれていないジョブが多ければ多いほど、運用切り替え後のユーザの負担が大きくなるという問題がある。
【0005】
特許文献1に記載された地震対策技術は、震源地からの距離と震源地の震度を元に、地震到達前にエレベーターを最寄階に安全に停止させることを目的とした技術である。
【0006】
本発明の目的は、震源地からの距離と震源地の震度、そして地震到達までの時間を元に、実行中のジョブを運用再開時のユーザの負担を出来るだけ軽減できる状態で停止させ、運用切り替え先(リモートサイト)への未転送のデータがあればこれを速やかに運用切り替え先へ転送(コピー)することができる自動運用切り替えシステムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る自動運用切り替えシステムは、震源位置、震源地の震度および地震発生時刻を含む緊急地震情報を受信する受信手段と、受信した緊急地震情報に基づき、震源位置からジョブ運用を管理しているマシンの設置位置までの距離と震源地の震度、地震発生時刻とに基づき、前記マシンの設置位置までの地震動到達予想時刻と到達する地震動の震度とを算出する計算手段と、この計算手段の計算結果より、前記マシンの設置位置に到達する地震動の震度がユーザにより予め設定された危険レベルを超えている場合、前記地震動到達予想時刻に達する前に前記マシンを自動停止させると共に、停止した際にジョブの状態を確認し、正常終了または未実行(先行終了待ち)状態以外のジョブの状態を一覧データに書き出し、運用切り替え先へ転送する転送制御手段とを備え、前記転送制御手段は、算出した地震動到達時刻までに未転送のデータを転送する余裕があるか否かを判断し、余裕がある場合は、ジョブ状態一覧データと共に非同期方式による未転送データの転送を行い、余裕が無い場合は、ジョブ状態一覧データの転送のみ行う制御を実行することを特徴とする。
【0009】
また、前記転送制御手段が実施する非同期方式による未転送データの転送は、ユーザの指示により転送するか否かを選択可能に構成されていること特徴とする。
【0010】
本発明に係る自動運用切り替え方法は、地震等の災害発生時に運用中のジョブ運用管理システムのデータを遠隔地のリモートサイトに転送し、リモートサイトで運用を継続させる自動運用切り替えシステムにおける自動運用切り替え方法であって、
前記自動運用切り替えシステムが、
震源位置、震源地の震度および地震発生時刻を含む緊急地震情報を受信する受信ステップと、受信した緊急地震情報に基づき、震源位置からジョブ運用を管理しているマシンの設置位置までの距離と震源地の震度、地震発生時刻とに基づき、前記マシンの設置位置までの地震動到達予想時刻と到達する地震動の震度とを算出する計算ステップと、計算結果より、前記マシンの設置位置に到達する地震動の震度がユーザにより予め設定された危険レベルを超えている場合、前記地震動到達予想時刻に達する前に前記マシンを自動停止させると共に、停止した際にジョブの状態を確認し、正常終了または未実行(先行終了待ち)状態以外のジョブの状態を一覧データに書き出し、運用切り替え先へ転送する転送制御ステップとを備え
前記転送制御ステップでは、算出した地震動到達時刻までに未転送のデータを転送する余裕があるか否かを判断し、余裕がある場合は、ジョブ状態一覧データと共に非同期方式による未転送データの転送を行い、余裕が無い場合は、ジョブ状態一覧データの転送のみ行う制御を実行することを特徴とする地震発生時の自動運用切り替え方法。
【0012】
また、前記転送制御ステップにおける非同期方式による未転送データの転送は、ユーザの指示により転送するか否かを選択可能に構成されていること特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動運用切り替えシステムによれば、地震発生時、地震到達前にジョブ運用管理システムを安全停止することが可能となる。
また、ディザスタリカバリシステムにより「非同期方式」で運用切り替え先へデータの転送していた場合でも、地震到達までに時間に余裕がある場合は、データの損失を避けることが可能となる。
また、運用切り替え先に状態が引き継がれていないジョブの情報を運用切り替え先に転送したジョブ状態一覧情報から確認することが可能となり、ユーザがわざわざ運用切り替え元のマシンにアクセスしてジョブの状態を確認しながら操作する必要なく、運用切り替え先にある情報だけで従来の操作をすることが可能となるうえ、運用切り替え元のジョブの状態を確認することが不可能な場合にも対応可能になる。この結果、運用切り替え後のユーザの負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態例を示すシステム構成図である。
図2】危 険レベル設定値管理データベースに格納されているデータの構成図である。
図3】ホストシステムのジョブ運用管理システム停止処理の概要を示すフローチャートである。
図4】ジョブ運用管理システム停止時に書き出すジョブ状態一覧情報の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した自動運用切り替えシステムの一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の一例を示すシステム構成図であり、本自動運用切り替えシステムは、緊急地震情報を受信する地震情報受信端末1と、この地震情報受信端末1が地震情報を受信したか否かを監視するホストシステム2とから構成され、緊急地震情報を発信する基地局4と地震情報受信端末1とホストシステム2は、優先の公衆回線網によるネットワーク5と接続されている。
ホストシステム2には、危険レベル設定値管理データベース3の他に、ユーザが危険レベルの設定を変更する度に新しい設定内容を危険レベル設定値管理データベース3に格納するデータベース更新部6と、地震情報受信端末1が地震情報を受信したか監視する受信監視部7、受信した地震情報を元に震源地からの距離と、到達時間を計算する計算処理部8、そして前記計算結果が危険レベル設定値管理データベース3に格納された設定値を超えていた場合に、ジョブ運用管理システムを停止させる停止処理部9が設けられている。
【0016】
ホストシステム2の危険レベル設定値管理データベース3には、ジョブ運用管理システムでユーザが設定した危険レベルの情報が登録されている。
危険レベル設定値管理データベース3に格納されている危険レベル設定情報は、図2に示すように、運用しているマシンを設置している地名21、運用を停止させる危険レベルの震度22、距離23、地震到達までに時間に余裕が無かった場合、かつ、非同期方式でデータ転送(コピー)を行っていた場合に、未転送データを転送(コピー)するか否かのデータ24から構成される。
【0017】
ここで例えば、危険レベル設定値をユーザが設定した場合、図2に示すように、地名21として「神奈川県横浜市****」、震度22として「6弱以上」、距離23として「**Km以内」、データ転送24として「有」が登録される。
なお、本データはユーザが本システムで設定を変更する度に更新され、登録される。
【0018】
図3は、ホストシステム2のジョブ運用管理システム停止処理の概要を示すフローチャートである。
ホストシステム2は、まず、地震情報受信端末1が緊急地震情報を受信したか否かを判定し(ステップ301)、受信していなければ、受信待ち状態で待機する。
緊急地震情報を受信した場合は、受信した情報(震源地の位置、震度、地震発生時刻)を元に、震源地から運用切り替え元(メインサイト)までの距離と、地震到達までの予想時間と到達する地震の予測震度とを計算する(ステップ302)。
【0019】
次に、計算した予測震度と、危険レベル設定値管理データベース3から読みだした値とを比較し(ステップ303)、危険レベルを超えていない場合、次の地震情報の受信待ち状態で待機する。
危険レベルを超えていた場合、ジョブ運用管理システムを停止させる(ステップ304)。
次に、停止したジョブ運用管理システムのジョブの状態を確認し、正常終了または未実行(先行終了待ち)状態以外のものについて、状態一覧を書き出し(ステップ305)、書き出したデータを運用切り替え先(リモートサイト)に送信する(ステップ306)。
【0020】
次に、ディザスタリカバリシステムで使用しているデータ転送方式が同期方式か非同期方式かを判定し(ステップ307)、非同期方式であった場合は、地震到達時刻までに余裕があるか判定する(ステップ308)。
判定の結果、余裕が無い場合は、危険レベル設定値管理データベース3からジョブ運用管理システムの未転送データを転送(コピー)するか否かの設定値を読み出し、転送(コピー)するか否かを判定する(ステップ309)。
データを転送(コピー)しない場合は、本システムの処理を終了する。
データを転送する場合は、未転送データの転送(コピー)を行う(ステップ310)。
【0021】
また、時間に余裕がある場合は、データの転送をするか否かの判定(ステップ309)はせずに、未転送データの転送(コピー)を行う(ステップ310)。
この場合、ジョブ運用管理システムを停止させる直前にデータをリモートサイトに既に転送済みであり、未転送のデータが少ない場合には転送処理を行わないようにしてもよい。
また、未転送のデータ量が多く、地震到達予想時刻までに転送しきれないことが予測できた場合、転送を中止するように制御するなどの制御形態に構成することができる。すなわち、未転送のデータ量に応じて転送するか否かを制御するようにしてもよい。
【0022】
図4は、ジョブ運用管理システム停止時に書き出すジョブ状態一覧情報の構成図であり、ジョブ名41、ジョブを実行しているマシン(ホスト名)42、ジョブの状態43とで構成される。
【符号の説明】
【0023】
1…地震情報受信端末、2…ホストシステム、3…危険レベル設定値管理データベース、4…基地局、5…ネットワーク、6…データベース更新部、7…受信監視部、8…計算処理部、9…停止処理部。
図1
図2
図3
図4