(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の制御回路と前記第2の制御回路とは、互いに前記検出手段の異常有無の判断結果を前記信号線により通信し、異常判定後の処理をそれぞれ独立して行う構成としてなる請求項1に記載の車両制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態による車両制御装置およびブレーキ制御装置を、四輪自動車に搭載されるブレーキ制御装置を例に挙げて、添付図面に従って詳細に説明する。
【0012】
ここで、
図1ないし
図3は本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ制御装置を示している。
図1において、左,右の前輪1L,1Rと左,右の後輪2L,2Rとは、車両のボディを構成する車体(図示せず)の下側に設けられている。左,右の前輪1L,1Rには、それぞれ前輪側ホイールシリンダ3L,3Rが設けられ、左,右の後輪2L,2Rには、それぞれ後輪側ホイールシリンダ4L,4Rが設けられている。これらのホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rは、液圧式のディスクブレーキまたはドラムブレーキのシリンダを構成し、夫々の車輪(前輪1L,1Rおよび後輪2L,2R)毎に制動力を付与するものである。
【0013】
ブレーキペダル5は車体のフロントボード(図示せず)側に設けられ、該ブレーキペダル5は、車両のブレーキ操作時に運転者によって
図1中の矢示A方向に踏込み操作される。ブレーキペダル5には、ブレーキスイッチ6と操作量検出センサ7が設けられている。ブレーキスイッチ6は、車両のブレーキ操作の有無を検出して、例えばブレーキランプ(図示せず)を点灯,消灯させるものである。また、操作量検出センサ7は、ブレーキペダル5の踏込み操作量をストローク量として検出し、その検出信号を後述のECU26,32および車両データバス28等に出力する。ブレーキペダル5の踏込み操作は、後述の電動倍力装置であるブースタ16を介してマスタシリンダ8に伝えられる。なお、本実施形態においては、操作量検出センサ7をブレーキペダル5のストローク量で検出するものとしたが、これに限らず、ブレーキペダル5の踏込み操作量を踏力で検出するものとしてもよい。
【0014】
ここで、マスタシリンダ8は、一側が開口端となり他側が底部となって閉塞された有底筒状のシリンダ本体9を有している。このシリンダ本体9は、その開口端側が後述するブースタ16のブースタハウジング17に複数の取付ボルト(図示せず)等を用いて着脱可能に固着されている。マスタシリンダ8は、シリンダ本体9と、第1のピストン(後述のブースタピストン18と入力ピストン19)および第2のピストン10と、第1の液圧室11Aと、第2の液圧室11Bと、第1の戻しばね12と、第2の戻しばね13とを含んで構成されている。
【0015】
この場合、マスタシリンダ8は、前記第1のピストンが後述のブースタピストン18と入力ピストン19とにより構成され、シリンダ本体9内に形成される第1の液圧室11Aは、第2のピストン10とブースタピストン18(および入力ピストン19)との間に画成されている。第2の液圧室11Bは、シリンダ本体9の底部と第2のピストン10との間でシリンダ本体9内に画成されている。
【0016】
第1の戻しばね12は、第1の液圧室11A内に位置してブースタピストン18と第2のピストン10との間に配設され、ブースタピストン18をシリンダ本体9の開口端側に向けて付勢している。第2の戻しばね13は、第2の液圧室11B内に位置してシリンダ本体9の底部と第2のピストン10との間に配設され、第2のピストン10を第1の液圧室11A側に向けて付勢している。
【0017】
マスタシリンダ8のシリンダ本体9は、ブレーキペダル5の踏込み操作に応じてブースタピストン18(入力ピストン19)と第2のピストン10とがシリンダ本体9の底部に向かって変位するときに、第1,第2の液圧室11A,11B内のブレーキ液によりマスタシリンダ圧としての液圧を発生させる。一方、ブレーキペダル5の操作を解除した場合には、ブースタピストン18(および入力ピストン19)と第2のピストン10とが第1、第2の戻しばね12、13によりシリンダ本体9の開口部に向かって矢示B方向に変位していくときに、リザーバ14からブレーキ液の補給を受けながら第1,第2の液圧室11A,11B内の液圧を解除していく。
【0018】
マスタシリンダ8のシリンダ本体9には、内部にブレーキ液が収容されている作動液タンクとしてのリザーバ14が設けられ、該リザーバ14は、シリンダ本体9内の液圧室11A,11Bにブレーキ液を給排する。また、マスタシリンダ8の第1,第2の液圧室11A,11B内に発生したマスタシリンダ圧としての液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管15A,15Bを介して後述の液圧供給装置であるESC30に送られる。
【0019】
車両のブレーキペダル5とマスタシリンダ8との間には、ブレーキペダル5の操作力を増大させる電動倍力装置としてブースタ16が設けられている。なお、このブースタ16とECU26とにより電動倍力装置が構成される。このブースタ16は、操作量検出センサ7の出力に基づいてECU26が後述の電動アクチュエータ20を駆動制御することにより、マスタシリンダ8と共にマスタシリンダ8で発生する液圧(即ち、マスタシリンダ圧)を制御するマスタシリンダ圧制御機構(即ち、第1の機構または第1の制動機構)を構成している。
【0020】
第1の制動機構としてのブースタ16は、車体のフロントボードである車室前壁(図示せず)に固定して設けられるブースタハウジング17と、該ブースタハウジング17に移動可能(即ち、マスタシリンダ8の軸方向に進退移動可能)に設けられた駆動ピストンとしてのブースタピストン18と、該ブースタピストン18にブースタ推力を付与する後述の電動アクチュエータ20とを含んで構成されている。
【0021】
ブースタピストン18は、マスタシリンダ8のシリンダ本体9内に開口端側から軸方向に摺動可能に挿嵌された筒状部材により構成されている。ブースタピストン18の内周側には、ブレーキペダル5の操作に従って直接的に押動され、マスタシリンダ8の軸方向(即ち、矢示A,B方向)に進退移動する軸部材からなる入力ピストン19が摺動可能に挿嵌されている。入力ピストン19は、ブースタピストン18と一緒にマスタシリンダ8の第1のピストンを構成し、シリンダ本体9内は、第2のピストン10とブースタピストン18および入力ピストン19との間に第1の液圧室11Aが画成されている。
【0022】
ブースタハウジング17は、後述の減速機構23等を内部に収容する筒状の減速機ケース17Aと、該減速機ケース17Aとマスタシリンダ8のシリンダ本体9との間に設けられブースタピストン18を軸方向に摺動変位可能に支持した筒状の支持ケース17Bと、減速機ケース17Aを挟んで支持ケース17Bとは軸方向の反対側(軸方向一側)に配置され減速機ケース17Aの軸方向一側の開口を閉塞する段付筒状の蓋体17Cとにより構成されている。減速機ケース17Aの外周側には、後述の電動モータ21を固定的に支持するための支持板17Dが設けられている。
【0023】
入力ピストン19は、蓋体17C側からブースタハウジング17内に挿入され、ブースタピストン18内を第1の液圧室11Aに向けて軸方向に延びている。入力ピストン19の先端側(軸方向他側)端面は、ブレーキ操作時に第1の液圧室11A内に発生する液圧をブレーキ反力として受圧し、入力ピストン19はこれをブレーキペダル5に伝達する。これにより、車両の運転者にはブレーキペダル5を介して適正な踏み応えが与えられ、良好なペダルフィーリング(ブレーキの効き)を得ることができる。この結果、ブレーキペダル5の操作感を向上することができ、ペダルフィーリング(踏み応え)を良好に保つことができる。
【0024】
ブースタ16の電動アクチュエータ20は、ブースタハウジング17の減速機ケース17Aに支持板17Dを介して設けられた電動モータ21と、該電動モータ21の回転を減速して減速機ケース17A内の筒状回転体22に伝えるベルト等の減速機構23と、筒状回転体22の回転をブースタピストン18の軸方向変位(進退移動)に変換するボールネジ等の直動機構24とにより構成されている。ブースタピストン18と入力ピストン19は、それぞれの前端部(軸方向他側の端部)をマスタシリンダ8の第1の液圧室11Aに臨ませ、ブレーキペダル5から入力ピストン19に伝わる踏力(推力)と電動アクチュエータ20からブースタピストン18に伝わるブースタ推力とにより、マスタシリンダ8内にブレーキ液圧を発生させる。
【0025】
即ち、ブースタ16のブースタピストン18は、操作量検出センサ7の出力(即ち、制動指令)に基づいて電動アクチュエータ20により駆動され、マスタシリンダ8内にブレーキ液圧(マスタシリンダ圧)を発生させるポンプ機構を構成している。また、ブースタハウジング17の支持ケース17B内には、ブースタピストン18を制動解除方向(
図1中の矢示B方向)に常時付勢する戻しばね25が設けられている。ブースタピストン18は、ブレーキ操作の解除時に電動モータ21が逆向きに回転されると共に、戻しばね25の付勢力により
図1に示す初期位置まで矢示B方向に戻されるものである。
【0026】
電動モータ21は、例えばDCブラシレスモータを用いて構成され、電動モータ21には、レゾルバと呼ばれる回転センサ21Aが設けられている。この回転センサ21Aは、電動モータ21(モータ軸)の回転位置(回転角)を検出し、その検出信号を第1の制御回路であるコントロールユニット(以下、第1のECU26という)に出力する。第1のECU26は、この回転位置信号により、フィードバック制御を行う。また、回転センサ21Aは、検出した電動モータ21の回転位置に基づいて、車体に対するブースタピストン18の絶対変位を検出する回転検出手段としての機能を備えている。
【0027】
さらに、回転センサ21Aは操作量検出センサ7と共に、ブースタピストン18と入力ピストン19との相対変位量を検出する変位検出手段を構成し、これらの検出信号は、第1のECU26に送出される。なお、前記回転検出手段としては、レゾルバ等の回転センサ21Aに限らず、絶対変位(回転角)を検出できる回転型のポテンショメータ等により構成してもよい。減速機構23は、ベルト等に限らず、例えば歯車減速機構等を用いて構成してもよい。また、減速機構23は、必ずしも設ける必要はなく、例えば、筒状回転体22にモータ軸を一体に設け、電動モータのステータを筒状回転体22の周囲に配置して、電動モータにより直接、筒状回転体22を回転させるようにしてもよい。
【0028】
第1のECU26は、例えばマイクロコンピュータ等からなり、第1の制動機構であるブースタ16の電動アクチュエータ20を電気的に駆動制御する第1の制御回路を構成している。第1のECU26の入力側は、ブレーキペダル5の操作量または踏力を検出する操作量検出センサ7と、電動モータ21の回転センサ21Aと、例えばL−CANと呼ばれる通信が可能な車載の信号線27と、給電および他の車両機器のECUからの信号の授受を行う車両データバス28等とに接続されている。車両データバス28は、車両に搭載されたV−CANと呼ばれるシリアル通信部であり、車載向けの多重通信を行うものである。なお、図中、二本の斜線が付された線は信号線や電源線等の電気系の線を表している。
【0029】
検出手段としての液圧センサ29は、例えばシリンダ側液圧配管15A内の液圧を検出するもので、マスタシリンダ8からシリンダ側液圧配管15Aを介して後述のESC30に供給されるブレーキ液圧を検出する。液圧センサ29は、後述の第2のECU32に電気的に接続されると共に、液圧センサ29による検出信号は、第2のECU32から信号線27を介して第1のECU26にも通信により送られる。
【0030】
第1のECU26の出力側は、電動モータ21、車載の信号線27および車両データバス28等に接続されている。そして、第1のECU26は、操作量検出センサ7、液圧センサ29からの検出信号に従ってブースタ16によりマスタシリンダ8内に発生させるブレーキ液圧を可変に制御すると共に、第1の制動機構であるブースタ16が正常に動作しているか否か等を判別するものである。
【0031】
即ち、ブースタ16においては、ブレーキペダル5が操作されると、マスタシリンダ8のシリンダ本体9内に向けて入力ピストン19が前進し、このときの動きが操作量検出センサ7によって検出される。第1のECU26は、操作量検出センサ7からの検出信号により電動モータ21に起動指令を出力して電動モータ21を回転駆動し、その回転が減速機構23を介して筒状回転体22に伝えられると共に、筒状回転体22の回転は、直動機構24によりブースタピストン18の軸方向変位に変換される。
【0032】
このとき、ブースタピストン18は、マスタシリンダ8のシリンダ本体9内に向けて入力ピストン19と一体的に前進し、ブレーキペダル5から入力ピストン19に付与される踏力(推力)と電動アクチュエータ20からブースタピストン18に付与されるブースタ推力とに応じたブレーキ液圧がマスタシリンダ8の第1,第2の液圧室11A,11B内に発生する。また、第1のECU26は、液圧センサ29からの検出信号を信号線27から受取ることによりマスタシリンダ8に発生した液圧を監視することができ、ブースタ16が正常に動作しているか否かを判別することができる。
【0033】
次に、車両の各車輪(前輪1L,1Rおよび後輪2L,2R)側に配設されたホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rとマスタシリンダ8との間に設けられた第2の制動機構としての液圧供給装置30(以下、ESC30という)について説明する。
【0034】
第2の制動機構としてのESC30は、ブースタ16によりマスタシリンダ8(第1,第2の液圧室11A,11B)内に発生したマスタシリンダ圧としての液圧を、車輪毎のホイールシリンダ圧として可変に制御して各車輪のホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに個別に供給するホイールシリンダ圧制御装置を構成している。
【0035】
即ち、ESC30は、マスタシリンダ8からシリンダ側液圧配管15A,15B等を介してホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに向けて供給するブレーキ液圧が不足する場合、または各種のブレーキ制御(例えば、前輪1L,1R、後輪2L,2R毎に制動力を配分する制動力配分制御、アンチロックブレーキ制御、車両安定化制御等)をそれぞれ行う場合に、必要で十分なブレーキ液圧を補償してホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに供給するブレーキアシスト装置を構成するものである。
【0036】
ここで、ESC30は、マスタシリンダ8(第1,第2の液圧室11A,11B)からシリンダ側液圧配管15A,15Bを介して出力される液圧を、ブレーキ側配管部31A,31B,31C,31Dを介してホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに分配、供給する。これにより、前述の如く車輪(前輪1L,1R、後輪2L,2R)毎にそれぞれ独立した制動力が個別に付与される。ESC30は、後述の各制御弁37,37′,38,38′,39,39′,42,42′,43,43′,50,50′と、液圧ポンプ44,44′を駆動する電動モータ45等とを含んで構成されている。
【0037】
第2のECU32は、ESC30(第2の制動機構)を電気的に駆動制御する第2の制御回路としての液圧供給装置用コントローラ(ESC ECU)である。該第2のECU32は、その入力側が、液圧センサ29、信号線27および車両データバス28等に接続されている。第2のECU32の出力側は、後述の各制御弁37,37′,38,38′,39,39′,42,42′,43,43′,50,50′、電動モータ45、信号線27および車両データバス28等に接続されている。
【0038】
ここで、第2のECU32は、ESC30の各制御弁37,37′,38,38′,39,39′,42,42′,43,43′,50,50′および電動モータ45等を後述の如く個別に駆動制御する。これによって、第2のECU32は、ブレーキ側配管部31A〜31Dからホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに供給するブレーキ液圧を減圧、保持、増圧または加圧する制御を、ホイールシリンダ3L,3R、4L,4R毎に個別に行うものである。
【0039】
即ち、第2のECU32は、ESC30を作動制御することにより、例えば車両の制動時に接地荷重等に応じて各車輪に適切に制動力を配分する制動力配分制御、制動時に各車輪の制動力を自動的に調整して車輪のロックを防止するアンチロックブレーキ制御、走行中の車輪の横滑りを検知してブレーキペダル5の操作量に拘わらず各車輪に付与する制動力を適宜自動的に制御しつつ、アンダーステア及びオーバーステアを抑制して車両の挙動を安定させる車両安定化制御、坂道(特に上り坂)において制動状態を保持して発進を補助する坂道発進補助制御、発進時等において車輪の空転を防止するトラクション制御、先行車両に対して一定の車間を保持する車両追従制御、走行車線を保持する車線逸脱回避制御、車両前方または後方の障害物との衡突を回避する障害物回避制御等を実行することができる。
【0040】
第2の制動機構(ホイールシリンダ圧制御装置)であるESC30は、マスタシリンダ8の一方の出力ポート(即ち、シリンダ側液圧配管15A)に接続されて左前輪(FL)側のホイールシリンダ3Lと右後輪(RR)側のホイールシリンダ4Rとに液圧を供給する第1液圧系統33と、他方の出力ポート(即ち、シリンダ側液圧配管15B)に接続されて右前輪(FR)側のホイールシリンダ3Rと左後輪(RL)側のホイールシリンダ4Lとに液圧を供給する第2液圧系統33′との2系統の液圧回路を備えている。ここで、第1液圧系統33と第2液圧系統33′とは、同様な構成を有しているため、以下の説明は第1液圧系統33についてのみ行い、第2液圧系統33′については各構成要素に符号に「′」を付し、それぞれの説明を省略する。
【0041】
ESC30の第1液圧系統33は、シリンダ側液圧配管15Aの先端側に接続されたブレーキ管路34を有し、ブレーキ管路34は、第1管路部35および第2管路部36の2つに分岐して、ホイールシリンダ3L,4Rにそれぞれ接続されている。ブレーキ管路34および第1管路部35は、ブレーキ側配管部31Aと共にホイールシリンダ3Lに液圧を供給する管路を構成し、ブレーキ管路34および第2管路部36は、ブレーキ側配管部31Dと共にホイールシリンダ4Rに液圧を供給する管路を構成している。
【0042】
ブレーキ管路34には、ブレーキ液圧の供給制御弁37が設けられ、該供給制御弁37は、ブレーキ管路34を開,閉する常開の電磁切換弁により構成されている。第1管路部35には増圧制御弁38が設けられ、該増圧制御弁38は、第1管路部35を開,閉する常開の電磁切換弁により構成されている。第2管路部36には増圧制御弁39が設けられ、該増圧制御弁39は、第2管路部36を開,閉する常開の電磁切換弁により構成されている。
【0043】
一方、ESC30の第1液圧系統33は、ホイールシリンダ3L,4R側と液圧制御用リザーバ49とをそれぞれ接続する第1,第2の減圧管路40,41を有し、これらの減圧管路40,41には、それぞれ第1,第2の減圧制御弁42,43が設けられている。第1,第2の減圧制御弁42,43は、減圧管路40,41をそれぞれ開,閉する常閉の電磁切換弁により構成されている。
【0044】
また、ESC30は、液圧源である液圧発生手段としての液圧ポンプ44を備え、該液圧ポンプ44は電動モータ45により回転駆動される。ここで、電動モータ45は、第2のECU32からの給電により駆動され、給電停止には液圧ポンプ44と一緒に回転停止される。液圧ポンプ44の吐出側は、逆止弁46を介してブレーキ管路34のうち供給制御弁37よりも下流側となる位置(即ち、第1管路部35と第2管路部36とが分岐する位置)に接続されている。液圧ポンプ44の吸込み側は、逆止弁47,48を介して液圧制御用リザーバ49に接続されている。
【0045】
液圧制御用リザーバ49は、余剰のブレーキ液を一時的に貯留するために設けられ、ブレーキシステム(ESC30)のABS制御時に限らず、これ以外のブレーキ制御時にもホイールシリンダ3L,4Rのシリンダ室(図示せず)から流出してくる余剰のブレーキ液を一時的に貯留するものである。また、液圧ポンプ44の吸込み側は、逆止弁47および常閉の電磁切換弁である加圧制御弁50を介してマスタシリンダ8のシリンダ側液圧配管15A(即ち、ブレーキ管路34のうち供給制御弁37よりも上流側となる位置)に接続されている。
【0046】
ESC30を構成する各制御弁37,37′,38,38′,39,39′,42,42′,43,43′,50,50′、および液圧ポンプ44,44′を駆動する電動モータ45は、第2のECU32から出力される制御信号に従ってそれぞれの動作制御が予め決められた手順で行われる。
【0047】
即ち、ESC30の第1液圧系統33は、運転者のブレーキ操作による通常の動作時に、ブースタ16によってマスタシリンダ8で発生した液圧を、ブレーキ管路34および第1,第2管路部35,36を介してホイールシリンダ3L,4Rに直接供給する。例えば、アンチスキッド制御等を実行する場合は、増圧制御弁38,39を閉じてホイールシリンダ3L,4Rの液圧を保持し、ホイールシリンダ3L,4Rの液圧を減圧するときには、減圧制御弁42,43を開いてホイールシリンダ3L,4Rの液圧を液圧制御用リザーバ49に逃がすように排出する。
【0048】
また、車両走行時の安定化制御(横滑り防止制御)等を行うため、ホイールシリンダ3L,4Rに供給する液圧を増圧するときには、供給制御弁37を閉弁した状態で電動モータ45により液圧ポンプ44を作動させ、該液圧ポンプ44から吐出したブレーキ液を第1,第2管路部35,36を介してホイールシリンダ3L,4Rに供給する。このとき、加圧制御弁50が開弁されていることにより、マスタシリンダ8側から液圧ポンプ44の吸込み側へとリザーバ14内のブレーキ液が供給される。
【0049】
このように、第2のECU32は、車両運転情報等に基づいて供給制御弁37、増圧制御弁38,39、減圧制御弁42,43、加圧制御弁50および電動モータ45(即ち、液圧ポンプ44)の作動を制御し、ホイールシリンダ3L,4Rに供給する液圧を適宜に保持したり、減圧または増圧したりする。これによって、前述した制動力分配制御、車両安定化制御、ブレーキアシスト制御、アンチスキッド制御、トラクション制御、坂道発進補助制御等のブレーキ制御が実行される。
【0050】
一方、電動モータ45(即ち、液圧ポンプ44)を停止した状態で行う通常の制動モードでは、供給制御弁37および増圧制御弁38,39を開弁させ、減圧制御弁42,43および加圧制御弁50を閉弁させる。この状態で、ブレーキペダル5の踏込み操作に応じてマスタシリンダ8の第1のピストン(即ち、ブースタピストン18、入力ピストン19)と第2のピストン10とがシリンダ本体9内を軸方向に変位するときに、第1,第2の液圧室11A内に発生したブレーキ液圧が、シリンダ側液圧配管15A側からESC30の第1液圧系統33、ブレーキ側配管部31A,31Dを介してホイールシリンダ3L,4Rに供給される。第2の液圧室11B内に発生したブレーキ液圧は、シリンダ側液圧配管15B側から第2液圧系統33′、ブレーキ側配管部31B,31Cを介してホイールシリンダ3R,4Lに供給される。
【0051】
また、第1,第2の液圧室11A,11B内に発生したブレーキ液圧(即ち、液圧センサ29により検出したシリンダ側液圧配管15A内の液圧)が不十分なときに行うブレーキアシストモードでは、加圧制御弁50と増圧制御弁38,39とを開弁させ、供給制御弁37および減圧制御弁42,43を適宜開,閉弁させる。この状態で、電動モータ45により液圧ポンプ44を作動させ、該液圧ポンプ44から吐出するブレーキ液を第1,第2管路部35,36を介してホイールシリンダ3L,4Rに供給する。これにより、マスタシリンダ8側で発生するブレーキ液圧と共に、液圧ポンプ44から吐出するブレーキ液によってホイールシリンダ3L,4Rによる制動力を発生することができる。
【0052】
なお、液圧ポンプ44としては、例えばプランジャポンプ、トロコイドポンプ、ギヤポンプ等の公知の液圧ポンプを用いることができるが、車載性、静粛性、ポンプ効率等を考慮するとギヤポンプとすることが望ましい。電動モータ45としては、例えばDCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ等の公知のモータを用いることができるが、本実施の形態においては、車載性等の観点からDCモータとしている。
【0053】
また、ESC30の各制御弁37,38,39,42,43,50は、その特性を夫々の使用態様に応じて適宜設定することができるが、このうち供給制御弁37および増圧制御弁38,39を常開弁とし、減圧制御弁42,43および加圧制御弁50を常閉弁とすることにより、第2のECU32からの制御信号がない場合にも、マスタシリンダ8からホイールシリンダ3L〜4Rに液圧を供給することができる。従って、ブレーキ装置のフェイルセーフおよび制御効率の観点から、このような構成とすることが望ましいものである。
【0054】
車両に搭載された車両データバス28には、電力充電用の回生協調制御装置51が接続されている。回生協調制御装置51は、車両の減速時および制動時等に各車輪の回転による慣性力を利用して、発電機(図示せず)を駆動制御することにより運動エネルギーを電力として回収するものである。回生協調制御装置51は、車両データバス28を介して第1のECU26と第2のECU32とに接続されている。
【0055】
次に、
図2を参照して第1,第2のECU26,32と液圧センサ29との結線関係について説明する。ここで、液圧センサ29は、ブースタ16側、詳細にはマスタシリンダ8に固定して設けられ、第2のECU32から電源ライン52を通じて給電が行われる。そして、液圧センサ29の検出信号は、信号ライン53を通じて、アナログ値でマスタシリンダ圧の計測値が第2のECU32に出力される。そして、第2のECU32は、液圧センサ29からの検出信号を一定の制御周期でデジタル変換する。一方、第1のECU26は、第2のECU32でデジタル変換された検出信号を、通信回線である信号線27から通信信号として受取ることにより、マスタシリンダ8の液圧室11A、シリンダ側液圧配管15A内に発生したマスタシリンダ圧としての液圧を検出(監視)することができる。
【0056】
図3は、液圧センサ29の異常判定を示す特性線図であり、これらの判定は、ブレーキペダル5が操作されておらず、ブースタ16が液圧発生作動をしていないとき、即ちマスタシリンダ圧が発生していない状態で行われるようになっている。
図3に示す特性線54は、液圧センサ29から出力される検出信号を液圧値Pとして表したもので、液圧値Pが予め定められた異常閾値αより小さいときには、液圧センサ29の検出値は正常であり、異常閾値αを越えると異常発生として判断する。特性線54では、時間0〜t1の範囲、時間t3〜t5の範囲で液圧センサ29の液圧値Pは正常であり、時間t1〜t3の範囲、時間t5以降では、液圧センサ29の液圧値Pが異常となっている。上記異常閾値αは、マスタシリンダ圧が発生していないにもかかわらず、検出信号が出力されていないかを判断するために設定されており、液圧センサ29の個体差や温度ドリフト等を考慮して、液圧センサ29の最大出力値の半分ぐらいの値として設定される。
【0057】
ここで、第2のECU32は、液圧センサ29の検出値に基づき所定の第1の周期T1で液圧センサ29の異常の有無を判断する。そして、第2のECU32は、
図3中の特性線55で示すように、液圧値Pが第1の周期T1の間、異常閾値αを越えて出力され続けている場合、時間t7でセンサ異常の判断をし、信号線27により第1のECU26に対して異常確定の信号を出力する。ここで、第1の周期T1は、液圧値Pが安定して出力されているかを判断するための時間として設定されており、例えば、500msぐらいに設定される。また、第1の周期T1は、ECU26,32の制御周期やECU26とECU32との通信周期よりもはるかに大きい時間として設定されている。
【0058】
一方、第1のECU26は、第2のECU32から信号線27を介して液圧センサ29の検出値を通信により受け取り、該通信により受け取った検出信号に基づいて前記第1の周期よりも短い第2の周期T2で液圧センサ29の異常有無を判断する。そして、第1のECU26は、
図3中の特性線56に示すように、液圧値Pが第2の周期T2の間、異常閾値αを越えて出力され続けている場合、時間t2で液圧センサ29が異常と先行判断する。このときに、異常先行判断による後述の補完処理を行う。なお、上記先行判断の結果は、信号線27を介して第1のECU26から第2のECU32へ送信するようにしてもよい。
【0059】
上記補完処理は、異常となった液圧センサ29の検出値を用いることなく、操作量検出センサ7からの検出信号(制動指令)に基づいて第1のECU26が電動アクチュエータ20の駆動制御を行うものとなっている。なお、第2の周期T2は、第1の周期T1と同様、ECU26,32の制御周期やECU26とECU32との通信周期よりもはるかに大きい時間として設定されている。また、第2の周期T2を第1の周期T1よりも短い周期としたのは、上述したように、第1の周期T1は液圧値Pが安定して出力されているかを判断するための時間として設定されているのに対して、第2の周期T2は、第1のECU26の制御に使用する液圧値Pが少しでも異常である場合には、電動アクチュエータ20の駆動制御を精度よく行えなくなる都合上、このため、少しでも早く液圧センサ29の異常を認識しておくために短い周期で設定されている。
【0060】
このように、本実施形態においては、第2のECU32における液圧センサ29の異常の有無を判断する所定の判断基準として上記第1の周期T1が設定されており、また、第1のECU26における液圧センサ29の異常の有無を判断する他の判断基準として上記第1の周期T1よりも短い第2の周期T2が設定されている。言い換えれば、第1のECU26は、第2のECU32の判断時期よりも早い時期に液圧センサ29の異常の有無を判断するようになっている。
【0061】
その後、時間t3にて特性線54で示す液圧値Pが異常閾値α以下まで小さくなると、時間t4にて異常閾値α以下の継続時間が第2の周期T2を越えた段階で、第1のECU26による液圧センサ29の異常先行判断は中止され、第1のECU26は液圧センサ29の検出値を正常と先行判断する。このため、時間t4以降(後述の時間t6まで)は前記補完処理が中止され、第1のECU26は、操作量検出センサ7と液圧センサ29との両方の検出信号に基づいて電動アクチュエータ20の駆動制御を行う。
【0062】
その後、時間t5にて特性線54が再び異常閾値αを越え、その継続時間が第2の周期T2を越えた時間t6の段階で、第1のECU26は、異常の先行判断をする。このとき、第1のECU26は、特性線56に示すように、時間t6から異常先行判断による補完処理を前述の如く行う。そして、時間t6から時間t7までの第1の周期T1と第2の周期T2との差分間隔T3が経過すると、上述したように第2のECU32は、時間t7でセンサ異常を確定し、信号線27により第1のECU26に対して異常確定の信号を出力する。そして、
図3中の特性線57に示すように、第1のECU26は、異常確定から通信や通信信号解析にかかる定時間T4が経過した時間t8にて、液圧センサ29の異常を確定し、第1のECU26でもセンサの故障コードを記憶させると共に、センサ異常を他の報知ランプ(図示せず)等を用いて報知する。
【0063】
第1の実施の形態によるブレーキ制御装置は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0064】
まず、車両の運転者がブレーキペダル5を踏込み操作すると、これにより入力ピストン19が矢示A方向に押込まれると共に、ブースタ16の電動アクチュエータ20が第1のECU26により作動制御される。即ち、第1のECU26は、操作量検出センサ7からの検出信号により電動モータ21に起動指令を出力して電動モータ21を回転駆動し、その回転が減速機構23を介して筒状回転体22に伝えられると共に、筒状回転体22の回転は、直動機構24によりブースタピストン18の軸方向変位に変換される。
【0065】
これにより、ブースタ16のブースタピストン18は、マスタシリンダ8のシリンダ本体9内に向けて入力ピストン19と一体的に前進し、ブレーキペダル5から入力ピストン19に付与される踏力(推力)と電動アクチュエータ20からブースタピストン18に付与されるブースタ推力とに応じたブレーキ液圧がマスタシリンダ8の第1,第2の液圧室11A,11B内に発生する。
【0066】
また、第1のECU26は、液圧センサ29からの検出値を通信信号として信号線27から受取ることによりマスタシリンダ8に発生した液圧を監視し、ブースタ16の電動アクチュエータ20(電動モータ21の回転)をフィードバック制御する。これにより、マスタシリンダ8の第1,第2の液圧室11A,11B内に発生するブレーキ液圧を、ブレーキペダル5の踏込み操作量に対応して可変に制御することができる。また、第1のECU26は、操作量検出センサ7と液圧センサ29との検出値に従ってブースタ16(電動倍力装置)が正常に動作しているか否かを判別することができる。
【0067】
一方、ブレーキペダル5に連結された入力ピストン19は、第1の液圧室11A内の圧力を受圧し、これをブレーキ反力としてブレーキペダル5へと伝える。この結果、車両の運転者には入力ピストン19を介して踏応えが与えられるようになり、これによって、ブレーキペダル5の操作感を向上でき、ペダルフィーリングを良好に保つことができる。
【0068】
次に、各車輪(前輪1L,1Rおよび後輪2L,2R)側のホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rとマスタシリンダ8との間に設けられた第2の制動機構としてのESC30は、ブースタ16によりマスタシリンダ8(第1,第2の液圧室11A,11B)内に発生したマスタシリンダ圧としての液圧を、シリンダ側液圧配管15A,15BからESC30内の液圧系統33,33′およびブレーキ側配管部31A,31B,31C,31Dを介してホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rへと可変に制御しつつ、車輪毎のホイールシリンダ圧として分配して供給する。これにより、車両の車輪(各前輪1L,1R、各後輪2L,2R)毎にホイールシリンダ3L,3R,4L,4Rを介して適正な制動力が付与される。
【0069】
ここで、ESC30を制御する第2のECU32は、操作量検出センサ7からの検出信号を信号線27から受取ることができ、この場合には、ブレーキペダル5の踏込み操作量を監視することができる。そして、ブレーキ操作時には、操作量検出センサ7からの検出信号を通信で受取ることにより、第2のECU32から電動モータ45に制御信号を出力して液圧ポンプ44,44′を作動できると共に、各制御弁37,37′,38,38′,39,39′,42,42′,43,43′,50,50′を選択的に開,閉弁することでホイールシリンダ3L,3R,4L,4Rの液圧を制御することができる。
【0070】
このため、車両の制動時等には、ブレーキペダル5の踏込み操作に従ってマスタシリンダ8(及び/又は液圧ポンプ44,44′)からホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rにそれぞれ供給するブレーキ液圧を個別に増圧、保持または減圧でき、ブレーキペダル5の踏込み操作、車両の運転状態等に対応したブレーキ液圧をホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに供給できると共に、車両の制動力制御を高精度に行うことができる。
【0071】
かくして、第1の実施の形態によれば、マスタシリンダ8の液圧室11A(シリンダ側液圧配管15A)内に発生した液圧を検出する液圧センサ29を、ブースタ16側に固定して設け、該液圧センサ29には電源ライン52を通じて第2のECU32から給電を行うと共に、液圧センサ29からの検出信号を信号ライン53を通じて第2のECU32に出力する構成としている。そして、第2のECU32は、液圧センサ29の検出値に基づき所定の第1の周期T1で液圧センサ29の異常の有無を判断し、例えば
図3中に示す特性線55のように、時間t7でセンサ異常の判断をしたときには信号線27により第1のECU26に対して異常確定の信号を出力する。
【0072】
一方、第1のECU26は、第2のECU32から信号線27を介して液圧センサ29の検出値を通信により受け取り、該通信により受け取った検出信号に基づいて前記第2の周期T2で液圧センサ29の異常有無を判断する。そして、第1のECU26は、液圧センサ29の検出値が正常と判断する間は操作量検出センサ7と液圧センサ29との両方の検出信号に基づいて電動アクチュエータ20の駆動制御を行うことができる。
【0073】
また、第1のECU26は、
図3中に示す特性線56のように、液圧センサ29が異常と判断をしたときに、異常先行判断による補完処理を行うことにより、異常となった液圧センサ29の検出値を用いることなく、操作量検出センサ7からの検出信号(制動指令)に基づいて電動アクチュエータ20の駆動制御を行うことができる。そして、第2のECU32でも、液圧センサ29の異常状態が第1の周期T1を越えたとして、例えば時間t7でセンサ異常を確定すると、第1のECU26は、例えば時間t8で液圧センサ29の異常を確定する。
【0074】
従って、第1の実施の形態によれば、第1のECU26と第2のECU32とで液圧センサ29の異常の有無を個別に判断することができ、制御回路(即ち、第1,第2のECU26,32)毎に行う制御の信頼性を確保することができる。
【0075】
なお、第1の実施の形態においては、第2のECU32における液圧センサ29の異常の有無を判断する所定の判断基準として上記第1の周期T1が設定されており、また、第1のECU26における液圧センサ29の異常の有無を判断する他の判断基準として上記第1の周期T1よりも短い第2の周期T2を設定している。しかしながら、第1のECU26は、第2のECU32が異常判断するよりも早く液圧センサ29の異常の有無を判断するようになっていれば、第1のECU26における液圧センサ29の異常の有無を判断する他の判断基準として異常閾値αよりも小さい異常閾値α1によって液圧値Pの異常を判断するようにしてもよい。
【0076】
次に、
図4は本発明の第2の実施の形態を示し、第2の実施の形態の特徴は、第2の制御回路でセンサ信号値の異常の有無判定を行い、第1の制御回路は、第2の制御回路から通信により受信した信号を元に制御を行う構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0077】
ここで、
図4は第2の実施の形態で採用した第1,第2の制御回路(即ち、第1,第2のECU26,32)による液圧センサ29の異常判定処理を示している。
図4に示す特性線61は、液圧センサ29から出力される検出信号を液圧値Pとして表したもので、液圧値Pが異常閾値αより小さいときには、液圧センサ29の検出値は正常であり、異常閾値αを越えると異常発生として判断する。特性線61では、時間0〜t1の範囲、時間t3〜t5の範囲で液圧センサ29の検出値は正常であり、時間t1〜t3の範囲、時間t5以降では、液圧センサ29の検出値が異常となっている。
【0078】
ここで、第2のECU32は、
図4中の特性線62のように、液圧センサ29の検出値に基づき所定の第1の周期T1で液圧センサ29の異常の有無を判断する。また、第2のECU32は、
図4中の特性線63のように、前記第1の周期よりも短い第2の周期T2で液圧センサ29の異常の有無を先行判断する。時間t1にて液圧値Pが異常閾値αを越え、異常発生から第2の周期T2の経過後の時間t2において、第2のECU32側の先行判断がセンサ異常として成立すると、第2のECU32は、この先行判断結果を異常信号として信号線27により第1のECU26に送信する。また、第2のECU32は、上記の液圧センサ29の異常の有無の先行判断と共に、第2の周期T2で液圧センサ29以外の回路中の異常の有無を先行判断し、第2のECU32側の先行判断が回路異常として成立すると、第2のECU32は、この先行判断結果を異常信号として信号線27により第1のECU26に送信する。
【0079】
ここで、液圧センサ29以外の回路中の異常の有無の先行判断を行うのは、液圧センサ29以外の回路中に異常があった場合、液圧センサ29に異常がなくとも、第1のECU26に送信される通信信号の液圧値Pが実際の液圧値と異なってくることがある。この場合には、電動アクチュエータ20の駆動制御を精度よく行えなくなる都合上、回路異常を異常信号として第1のECU26に送信するようにしている。
【0080】
第1のECU26は、特性線64に示す如く第2のECU32から先行判断結果を受信したときに、第1の実施の形態で述べた補完処理と同様な補完処理を行う。この補完処理により第1のECU26は、異常となった液圧センサ29の検出値を用いることなく、操作量検出センサ7からの検出信号(制動指令)に基づいて電動アクチュエータ20の駆動制御を行う。
【0081】
その後、時間t3にて液圧値Pが異常閾値α以下となり、時間t4にて異常閾値α以下の継続時間が前記第2の周期T2を越えると、特性線63のように第2のECU32での先行判断が非成立となり、第1のECU26は、先行判断非成立を受信することによって、特性線64の如く液圧センサ29の検出値が正常であるとの判断に復帰する。このため、時間t4以降(後述の時間t6まで)は前記補完処理が中止され、第1のECU26は、操作量検出センサ7と液圧センサ29との両方の検出信号に基づいて電動アクチュエータ20の駆動制御を行う。
【0082】
しかし、その後の時間t5にて再びセンサ異常が発生し、前述した場合と同様に時間t6でセンサ異常との先行判断が成立すると、第1のECU26は、この先行判断結果を第2のECU32から受信して補完処理を実施する。そして、時間t7で異常発生状態が第1の周期T1を経過したときに、第2のECU32は、特性線62のように液圧センサ29の検出値が異常であるとして異常確定し、故障コードを記憶させると共に、センサ異常を報知ランプ(図示せず)等により報知する。
【0083】
このように、第2のECU32は、時間t7でセンサ異常を確定すると、信号線27により第1のECU26に対して異常確定の信号を出力する。そして、第1のECU26は、異常確定から定時間T4が経過した時間t8にて、特性線65に示すように液圧センサ29の異常を確定し、第1のECU26でもセンサの故障コードを記憶させると共に、センサ異常を他の報知ランプ(図示せず)等を用いて報知する。
【0084】
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、第1のECU26と第2のECU32とで液圧センサ29の異常の有無を判断することができ、前述した第1の実施の形態と同様に制御回路(即ち、ECU26,32)毎の制御の信頼性を確保することができる。
【0085】
なお、前記各実施の形態では、車両制御装置を、四輪自動車に搭載されるブレーキ制御装置に適用する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば液圧供給装置(ESC30)とエンジン制御装置とが車輪速センサの検出値を共有する場合のように、ブレーキ制御装置以外の車両制御装置にも適用することができるものである。
【0086】
以上の実施の形態で述べたように、本発明の車両制御装置によれば、第1の制御回路と第2の制御回路とは、異常判定後の処理をそれぞれ独立して行う構成としている。本発明の車両制御装置によれば、前記第1または第2の制御回路により前記検出手段の異常を判断したときに、前記第1の制御回路は、前記検出手段の検出信号に基づく制御を停止することを特徴としている。また、前記第1の制御回路により前記検出手段の異常を判断したときに、異常の警報を行わず、前記第2の制御回路により前記検出手段の異常を判断したときに、異常の警報を行う構成としている。
【0087】
一方、本発明のブレーキ制御装置によれば、前記第1の制御回路は、前記液圧センサの異常がないことを検出したときに、前記第1の制動機構への制動指令と前記液圧センサの検出値とに基づいて前記第1の制動機構を制御し、前記液圧センサの異常を検出したときに、前記制動指令に基づいて第1の制動機構を制御する構成としている。本発明のブレーキ制御装置は、前記第2の制御回路でも前記液圧センサの異常検出を行い、異常の場合に前記液圧センサの故障確定する構成としている。
【0088】
さらに、本発明によるブレーキ制御装置は、車両の制動力を発生させるための第1の制動機構を制御する第1の制御回路と、前記第1の制動機構とは別に車両の制動力を発生させるための第2の制動機構を制御する第2の制御回路と、該第2の制御回路に電気的に接続され、発生する制動力を算出するための液圧を検出する液圧センサと、前記第1の制御回路と第2の制御回路とを電気的に接続し、前記液圧センサの検出値を通信させるための信号線と、を有し、前記第2の制御回路は、前記液圧センサの検出値に基づいて所定の第1の周期で前記液圧センサの異常の有無を判断すると共に、前記所定の第1の周期よりも短い第2の周期で前記液圧センサ以外の回路中の異常の有無を判断して、異常の判断をしたときに前記信号線により前記第1の制御回路へ異常信号を出力し、前記第1の制御回路は、前記第2の制御回路から前記信号線を介して前記液圧センサの検出値を通信により受け取り、該通信により受け取った検出信号に基づいて前記第2の周期で前記液圧センサの異常有無を判断し、前記液圧センサの異常を検出したときに、前記第1の制動機構への制動指令に基づいて前記第1の制動機構を制御すると共に、前記第2の制御回路から前記信号線を介して前記異常信号を受けたときに、前記液圧センサまたは前記第2の制御回路が故障していると判定する構成としている。
【0089】
上記実施形態においては、駆動対象物を駆動する駆動源を制御する第1の制御機構(マスタシリンダ圧制御機構)および第2の制御機構(ホイールシリンダ圧制御機構)と、前記駆動源の物理量を検出する物理量検出器(液圧センサ)と、この物理量検出器からの信号を入力して前記第1の制御機構を制御する第1の制御手段(第1のECU)と、前記物理量検出器からの信号を入力して前記第2の制御機構を制御する第2の制御手段(第2のECU)と、前記第1の制御手段に設けられた前記物理量検出器の診断を行う第1の診断機能(先行判断)と、前記第2の制御手段に設けられた前記物理量検出器の診断を行う第2の診断機能(異常判断)とを備え、前記第1の診断機能と前記第2の診断機能とは異なる診断基準(第1の周期T1、第2の周期T2、異常閾値α、異常閾値α1)により診断を行う駆動対象物(ブレーキ)の制御機構、という概念を含んでいる。