【実施例】
【0068】
つぎに、本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
実施例1
図1に示す本発明による飛灰循環型排ガス処理方法を実施する装置により、本発明の方法を実施した。
【0070】
焼却炉のボイラ出口から排出される流量2500m
3N/h、および温度約190℃の排ガス中に含まれる塩化水素(HCl)、硫黄酸化物(SOx)等の酸性ガスを除去して、大気中に放出される排ガスを無害化するために、排ガスに含まれる酸性ガスの除去用薬剤として重曹(NaHCO
3)(ナトリウム系薬剤)を用い、バグフィルタ(BF)入口側の排ガス煙道(1)に重曹を投入し、排ガス中の酸性ガスと重曹との反応により塩を形成させ、該塩を含む飛灰をバグフィルタ(BF)(2)により捕集した。
【0071】
ここで、酸性ガスの除去用薬剤としては、平均粒径17μmの重曹(NaHCO
3)(商品名:Briskarb Premium 20、Brunner Mond社製)を使用した。
【0072】
また、バグフィルタ(BF)入口側の排ガス煙道(1)に、ナトリウム系薬剤と共にろ過助剤を投入した。ここで、ろ過助剤としては、珪藻土等(商品名バグエースS、日立造船社製)、あるいは珪藻土+活性炭系の薬剤(商品名バグエースE、日立造船社製)を使用した。
【0073】
排ガス煙道(1)内に、重曹(NaHCO
3)よりなるナトリウム系薬剤および上記のろ過助剤を吹き込むと、主にバグフィルタ内のろ布上で、重曹の熱分解(1)と排ガス中の酸性ガス(HCl、SOx)との反応(2)、(3)が同時におこる。分解と反応式はつぎの通りである。
【0074】
2NaHCO
3 → Na
2CO
3+H
2O+CO
2…(1)
Na
2CO
3 +2HCl → 2NaCl+H
2O+CO
2…(2)
Na
2CO
3+SO
2 + 1/2O
2 → Na
2SO
4+CO
2…(3)
バグフィルタ(2)で捕集された飛灰は定期的に払い落とされ、該飛灰にはガス中の煤塵、重曹と酸性ガスの反応生成物、未反応薬剤、およびろ過助剤が含まれていた。
【0075】
ついで、バグフィルタ(BF)飛灰を、バグフィルタ(2)の底部より排出コンベア(11)によって取り出し、さらに振り分けコンベア(12)によってバグフィルタ飛灰を振り分けて、その一部を流送管(13)から飛灰貯槽(14)に導入し、残部は排出管(15)から系外に排出した。
【0076】
バグフィルタ(2)上部の排気口には脱塩・脱硫処理済み排ガス排出ダクト(8)が接続され、該脱塩・脱硫処理済み排ガス排出ダクト(8)の中間部とバグフィルタ(2)の排ガス導入側の排ガス煙道(1)との間に、脱塩・脱硫処理済み排ガス循環ダクト(9)が設けられ、循環ダクト(9)の途上には飛灰循環ファン(10)が介在させられている。
【0077】
そして、バグフィルタ飛灰貯槽(14)の底部には循環飛灰供給コンベア(16)が具備されており、この循環飛灰供給コンベア(16)の作動によって飛灰貯槽(14)から所要量のバグフィルタ飛灰を、脱塩・脱硫処理済み排ガス循環ダクト(9)の飛灰循環ファン(10)より下流側において循環ダクト(9)内に供給した。これにより、バグフィルタ(2)排気口から排出される脱塩・脱硫処理済み排ガスの一部をキャリアガスとして、バグフィルタ(BF)飛灰がバグフィルタ(2)入口側の排ガス煙道(1)に戻した。
【0078】
そして、
図2に、バグフィルタ(2)入口側の排ガス煙道(1)に戻すバグフィルタ飛灰の循環量を、下記式で示される飛灰循環倍率で表わして、
1倍(飛灰循環無し)、3倍、7倍、14倍と変えた時の脱塩性能と当量比の関係を示すグラフを記載し、
図3に、同じく脱硫性能と当量比の関係を示すグラフを記載した。なお、飛灰循環倍率が、1倍(飛灰循環無し)である場合は、比較例ということになる。
【0079】
飛灰循環倍率=(循環飛灰切り出し量+飛灰系外排出量)/飛灰系外排出量
ここで、当量比は、塩化水素(HCl)と硫黄酸化物(SOx)がそれぞれ反応する量論のナトリウム系薬剤の合計量に対して、実際に供給された薬剤量の比率である。
【0080】
なお、バグフィルタ(2)から排出された飛灰について、飛灰貯槽(14)側と系外排出管(15)側との切替えを、バグフィルタ(2)のパルス回数の比によって切替えるとともに、飛灰貯槽(14)内のバグフィルタ飛灰のレベルが一定になるように、バグフィルタ飛灰の切出しを調節することによって、飛灰循環量を調節した。具体的には、バグフィルタ(2)のパルス間隔は20分として、パルス回数で飛灰貯槽(14)側と系外排出管(15)側(外部排出側)とに振分けた。また循環飛灰供給コンベア(16)は、飛灰貯槽(14)の重量が一定になるように、インバータによる回転数制御を行った。
【0081】
図2と
図3の結果から分かるように、飛灰循環倍率が3倍のとき、循環なしの条件に比べ、多少、脱塩・脱硫率の向上がみられた。さらに、飛灰循環倍率が7倍以上になると特に脱硫性能で大きな改善効果がみられた。しかし、飛灰循環倍率が14倍のときは7倍のときに比べて脱塩・脱硫率がそれほど大きく向上しておらず、これ以上飛灰循環倍率を大きくしても効果は少ないので、飛灰循環倍率としては3〜14倍が好ましい。
【0082】
実施例2
ナトリウム系薬剤として、平均粒径13μmの重曹を用い、また飛灰循環倍率は7倍とし、その他の条件は、実施例1の場合と同様にして、本発明による飛灰循環型排ガス処理方法の脱塩・脱硫性能を計測した。
【0083】
図4に、飛灰循環倍率7倍における、バグフィルタ(2)の入口・出口における塩化水素(HCl)濃度と硫黄酸化物(SOx)濃度の経時変化を示すグラフを記載した。
【0084】
同図の結果から分かるように、当量比が1.05では、バグフィルタ(2)の出口のHCl濃度とSOx濃度は、2ppm以下に安定し、除去率は、それぞれ99%、95%と極めて高い除去性能が得られた。先述の非特許文献1において、当量比が1.2の時に、HCl,SOxの除去率がそれぞれ98%、90%であり、当量比が1.3の時に、HCl、SOxの出口濃度がともに10ppm以下であったものと比べると、飛躍的に性能が向上していることが確認できた。
【0085】
本発明の方法によりバグフィルタ飛灰の循環を行った場合、バグフィルタ(2)の入口においては、新たに供給されるナトリウム系薬剤(重曹)に加えて、バグフィルタ飛灰と共に戻される未分解の重曹が存在し、それらがバグフィルタ内のろ布上で熱分解して多孔質で反応性の高い炭酸ソーダに転換されること、また、酸性ガスと反応しきれなかった炭酸ソーダも循環されて存在することから、入口濃度が短期的に大きく変動する中でも低い当量比にて、HCLとSOxの出口の濃度がともに2ppm以下に安定したものと考えられる。
【0086】
本発明者らは、煙道内に導入した重曹よりなるナトリウム系薬剤を多孔質かつ反応性が極めて高い炭酸ソーダにほぼ完全に転換させ、しかも、酸性ガスと反応しきれなかったナトリウム系薬剤の未反応分をより効率的に利用するために、バグフィルタで捕集された飛灰(排ガス中の煤塵+ナトリウム系薬剤と酸性ガスの反応生成物+未反応薬剤(未分解重曹を含む)+ろ過助剤)を、バグフィルタの底部より取り出し、このバグフィルタ飛灰の一部を、バグフィルタ入口側の排ガス煙道に戻して、未反応薬剤を循環させることにより、極めて少ない重曹薬剤の使用量にて、バグフィルタ出口の塩化水素および硫黄酸化物等の酸性ガスの濃度を、飛躍的に、かつ安定的に低減することが可能であることを見出した。
【0087】
上記
図2〜
図4に酸性ガスの除去性能の一例を示したが、飛灰を循環しないケースに比べ、循環させた場合は飛躍的に除去性能が向上している。特に、重曹の吹き込み当量比が低い1当量前後においても、極めて高い除去性能が確認されているが、これは、飛灰の循環により、未分解の重曹の殆どが反応性の高い多孔質の炭酸ソーダに変換された効果が大きく、新しい知見・発明によるものである。
【0088】
すなわち、重曹を用いた排ガス処理では、バグフィルタが使用されるが、導入された重曹はバグフィルタのろ布上に堆積し、熱分解と酸性ガスとの反応が進行し、数分から数十分毎に定期的にダストの払落しが行なわれるシステムとなっている。しかしながら、先述したように、重曹が、ほぼ完全に熱分解して反応性の高い炭酸ソーダに転換するには、温度条件や薬剤の粒子径により異なるが、数十秒〜数分を要するため、一部の重曹は熱分解せずにバグフィルタで払い落とされる可能性が高いと言える。特に、重曹は、連続的に吹き込まれるので、バグフィルタの払い落とし直前に吹き込まれた重曹は、熱分解時間が不足するのは明らかと言える。従って、飛灰の循環がこの問題を解決するものである。
【0089】
この循環効果を踏まえた諸試験にて、バグフィルタ飛灰の循環倍率を3倍以上、好ましくは3〜14倍で制御することにより、極めて低い当量比にて酸性ガスの除去効率を飛躍的に向上し得ることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0090】
なお、本発明によれば、従来の重曹を使った乾式排ガス処理に比べて、重曹の使用量および薬品費を、共に20%程度低減することができ、しかも飛灰処分量は、例えば消石灰を使った乾式排ガス処理に比べて、30%程度以上の削減効果があり、逼迫する最終処分場の延命化にも貢献することができるものである。
【0091】
さらに、本発明によれば、湿式洗煙装置並みの有害ガスの酸性ガス除去性能が、例えばHCl、およびSOxともに5ppm以下、が達成できるので、発電効率の向上とCO
2削減効果から、地球温暖化防止に貢献すると共に、経済的かつコンパクトな高性能乾式排ガス処理装置が提供できることになり、本発明の効果は多大である。
【0092】
実施例3
本発明による飛灰循環型排ガス処理において、ナトリウム系薬剤である重曹を用いると共に、ダイオキシン類および水銀の除去のため、ろ過助剤に活性炭を混合してバグフィルタに供給して、これらの除去効果を確認した。また飛灰循環倍率は7倍とし、その他の試験条件は実施例1と同様である。下記の表1に、ダイオキシン類の除去性能を示した。
【表1】
【0093】
上記表1の結果から分かるように、活性炭を投入しないケースで、飛灰の循環無し(実験No.1)と、循環有り(実験No.2)では、ダイオキシン(DXN)除去率は81〜83%で大きな差は無く、バグフィルタ入口ダイオキシン類濃度が高い場合は、例えば、入口DXN1.58(ng−TEQ/m
3N)の場合は、出口濃度は0.26(ng−TEQ/m
3N)となり、国の厳しい基準の0.1(ng−TEQ/m
3N)を超えている。
【0094】
これに対し、活性炭を30(mg/m
3N)吹き込んで、飛灰を循環させると(実験No.3)、DXN出口濃度は、0.0028(ng−TEQ/m
3N)まで低減し、除去率は99.6%の高効率除去が達成されている。DXNは、バグフィルタ等の運転温度が高いと再合成の懸念があるが、試験条件の190℃ではこの影響は少なく、活性炭が循環使用されることで、DXN未吸着の活性炭が有効利用されて、少ない活性炭投入量においても高い除去性能を維持している。
【0095】
つぎに、下記の表2に、水銀の除去性能を示した。
【表2】
【0096】
上記表2の結果から分かるように、活性炭を投入しないケースで、飛灰の循環無し(実験No.1)と、循環有り(実験No.2)では、それぞれ、水銀の除去率は52.5%、65.9〜68.2%で、循環する方が性能が15%程度向上した。飛灰中には未燃炭素などの活性炭成分に近い吸着物質が存在しており、循環による効果が確認された。
【0097】
一方、活性炭を30(mg/m
3N)投入して循環させると(実験No.3)、水銀の除去率は94.5%まで向上した。最近は、ごみ焼却炉で水銀が問題視されており、この除去が求められているが、少ない活性炭の投入量においても、高温度下ながら、高い除去性能が得られたのは、飛灰の循環効果と判断できる。
【0098】
上記の表1、および表2の結果から分かるように、重曹の供給に加えて、活性炭粉末を吹き込むと、飛灰の循環効果により、ダイオキシン類および水銀の除去が同時に進行し、少ない活性炭投入量にて、極めて低い濃度まで除去されるので、特別な除去装置を付加することなく、厳しい排ガス処理基準に容易に対応が可能となる。
【0099】
実施例4
本発明による飛灰循環型排ガス処理方法において、ナトリウム系薬剤である重曹(NaHCO
3)を用い、かつ飛灰を循環させた場合のバグフィルタでの圧力損失の影響を確認するために、つぎの試験を実施した。
【0100】
上記実施例1の場合と同様に、バグフィルタ(BF)入口側の排ガス煙道(1)に重曹を投入し、排ガス中の酸性ガスと重曹との反応により塩を形成させ、該塩を含む飛灰をバグフィルタ(BF)(2)により捕集した。また、バグフィルタ(BF)入口側の排ガス煙道(1)に、重曹と共に珪藻土等よりなるろ過助剤を投入した。バグフィルタ(2)で捕集された飛灰は定期的に払い落とした。そして、バグフィルタ(2)入口側の排ガス煙道(1)に戻すバグフィルタ飛灰の循環量を、上記式で示される飛灰循環倍率で表わして、1倍(飛灰循環無し)、3倍、7倍、14倍と変えて、試験を実施した。
【0101】
下記の表3に、飛灰循環倍率、排ガス量(湿り)[m
3N/h]、バグフィルタ温度[℃]、バグフィルタ入口HCl濃度(酸素12%換算)[ppm]、バグフィルタ入口SOx濃度(酸素12%換算)[ppm]、飛灰の払落し間隔 [min]、およびバグフィルタでの圧力損失(ΔP
BF(t))(平均値)[Pa]をまとめて示した。
【表3】
【0102】
上記表3の結果から分かるように、飛灰循環倍率が大きくなるにしたがって圧力損失が大きくなるが、循環倍率と正比例の関係ではない。バグフィルタ入口・出口間の圧力損失は、ろ布の抵抗係数(ζ)と、ケーキ層(粉体堆積層)の抵抗係数(α)でほぼ表され、下記の式(1)により計算される〔古林、長井;活性炭によるダイオキシン類除去性能の推定、化学工学論文集、30、54−64(2004)より〕。
【数1】
【0103】
ここで、ΔP
BF(t)は、通ガス時間tにおけるBFの圧力損失[kPa]、ζは、ろ布の抵抗係数[(min/m)
1.32/s]、αは、ケーキ層(粉体堆積層)の抵抗係数[(m
2/kg)・(min/m)
1.32/s]、m
D(t,i)は、通ガス時間tにおけるi番目のろ布列の粉体堆積量[kg/m
2]、μ
Gは、ガス粘度[Pa・s]、u
F(t,i)は、通ガス時間tにおけるi番目のろ布列のろ過速度[m/min]、Nは、ろ布列数[−]をそれぞれ表す。
【0104】
なお、通ガス時間tにおけるu
F値,m
D値およびΔP
BF値は、上記の論文に示されるように、次のようにして計算される。すなわち、上記の式(1)および下記の式(2)、式(3)、式(4)をi=1〜Nまで繰り返し計算することにより算出した。
【0105】
ここで、上記の式(1)は、それぞれのろ布列のΔP
BF値はすべて等しいという関係に基づいている。下記の式(2)は平均ろ過速度と各ろ布列でのu
F値の関係を示している。これらの式を用いて、まず通ガス時間tにおけるu
F値を算出した。
【0106】
つぎに、下記の式(3)から、通ガス時間t〜t+Δt間ではu
F値は一定であるとみなして、この間における各ろ布列の粉体堆積増加量を算出し、さらに下記の式(4)からm
D値を算出した。
【0107】
このようにして求めたu
F値とm
D値を用い、実証試験結果の圧力損失特性に合うようにろ布の抵抗係数ζとケーキ層(粉体堆積層)の抵抗係数αを求めた。
【数2】
【数3】
【数4】
【0108】
ここで、u
F(平均)は、平均ろ過速度[m/min]、A
BFはバグフィルタ内に設置されたろ布の全ろ過面積[m
2]を表す。
【0109】
下記の表4に、飛灰循環倍率と、上記の式を用いて計算したろ布の抵抗係数(ζ)と、ケーキ層(粉体堆積層)の抵抗係数(α)を示した。
【表4】
【0110】
上記表4の結果から分かるように、ろ布の抵抗係数(ζ)は固有値であり、循環倍率に係らず、1.6×10
7で一定であったが、ケーキ層(粉体堆積層)の抵抗係数(α)は、飛灰循環倍率が1倍(実験No.1)〜14倍(実験No.4)と大きくなるほど、低くなった。
【0111】
このことから、飛灰循環を繰り返すことによって飛灰の2次凝集が起こり、見かけ上、粒子径が大きくなった状態で、ろ布上に堆積していることが考えられる。