特許第5961520号(P5961520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961520
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】偏心揺動型の減速装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20160719BHJP
   F16H 57/022 20120101ALI20160719BHJP
   F16H 57/023 20120101ALI20160719BHJP
【FI】
   F16H1/32 A
   F16H57/022
   F16H57/023
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-225540(P2012-225540)
(22)【出願日】2012年10月10日
(65)【公開番号】特開2014-77496(P2014-77496A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲三
(72)【発明者】
【氏名】西谷 祐一
(72)【発明者】
【氏名】西部 慎一
(72)【発明者】
【氏名】光藤 栄
(72)【発明者】
【氏名】志津 慶剛
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−208633(JP,A)
【文献】 特開2007−285396(JP,A)
【文献】 特開2007−247711(JP,A)
【文献】 特開2000−065162(JP,A)
【文献】 特開平05−223142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16H 57/022
F16H 57/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏心体軸と、該偏心体軸上に設けられた偏心体によって揺動される外歯歯車と、該外歯歯車が揺動しながら内接噛合する内歯歯車と、前記偏心体軸を支持する偏心体軸軸受と、前記偏心体と前記外歯歯車との間に配置される偏心体軸受と、を備え、テーパ形状の外周部を有するモータ軸と連結して使用される偏心揺動型の減速装置であって、
前記外歯歯車は、前記偏心体軸受が配置される軸受孔を有し、
前記偏心体軸受は、転動体としてころを有し、当該ころは、前記軸受孔の内周面および前記偏心体の外周面に当接し、
前記偏心体軸は、内周に前記モータ軸のテーパ形状の外周部と摩擦連結可能なテーパ形状の中空部が形成され、
前記偏心体軸軸受が、該偏心体軸を軸方向に移動可能な態様で組み込まれ、
偏心体軸軸受の外輪の外周または内輪の内周の少なくとも一方に、Oリングが配置され
前記偏心体軸が軸方向に最大に移動しても、前記外歯歯車の軸受孔のエッジが、前記偏心体軸受のころの転動面に当たらない構成とされている
ことを特徴とする偏心揺動型の減速装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記偏心体軸軸受の外輪が隙間嵌めで組み込まれ、該外輪の外周に前記Oリングが配置されている
ことを特徴とする偏心揺動型の減速装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記偏心体軸軸受の内輪が隙間嵌めで組み込まれ、該内輪の内周に前記Oリングが配置されている
ことを特徴とする偏心揺動型の減速装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記モータ軸のテーパ形状の外周部と、前記偏心体軸のテーパ形状の中空部との間にキーが介在されている
ことを特徴とする偏心揺動型の減速装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記モータ軸の先端部に雄ねじ部が形成され、かつ
この雄ねじ部と螺合する雌ねじ部を有すると共に前記偏心体軸の内周に形成された当接面に当接する先端面を有するナット部材を備えた
ことを特徴とする偏心揺動型の減速装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記偏心体軸は、前記テーパ形状の中空部に隣接して凹部を有し、当該凹部が前記当接面を有する
ことを特徴とする偏心揺動型の減速装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかにおいて、
前記偏心体軸の反モータ側の端部の外周に、平行な2面が形成されている
ことを特徴とする偏心揺動型の減速装置。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかにおいて、
記ころは、前記偏心体軸が軸方向に最大に移動しても、前記軸受孔のエッジが、当該ころの転動面に当たらないような軸方向長とされるか、またはクラウニング処理がなされている
ことを特徴とする偏心揺動型の減速装置。
【請求項9】
請求項5において、
前記当接面は、径方向から見て、前記偏心体軸軸受と重ならない位置に形成されている
ことを特徴とする偏心揺動型の減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏心揺動型の減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、偏心揺動型の減速装置が開示されている。この減速装置は、偏心体軸上に設けられた偏心体によって揺動される外歯歯車と、該外歯歯車が揺動しながら内接噛合する内歯歯車と、を備えている。外歯歯車および内歯歯車のいずれか側の自転を拘束することによって、この相対回転を出力として取り出すことができる。
【0003】
この減速装置では、入力軸が偏心体軸を兼ねている。入力軸は、外歯歯車の軸方向両側に設けられた一対のキャリヤによってそれぞれ軸受を介して支持されている。この特許文献1では、減速装置の入力軸に、平行な外周部を有する(外径が一定の円柱形状の)モータ軸が、キーを介して連結される構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−263878号公報(図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータのモータ軸には、特許文献1において採用しているような、平行な外周部を有するモータ軸のほかに、軸に対して傾斜したテーパ形状の外周部を有するモータ軸がある。
【0006】
テーパ形状の外周部を有するモータ軸を減速装置の偏心体軸と連結して使用する場合、通常、当該モータ軸のテーパ形状に対応するテーパ形状の中空部を有する偏心体軸が用意される。この場合、モータ軸と偏心体軸は、該テーパ形状の外周部とテーパ形状の中空部とを摩擦締結することによって連結される。
【0007】
しかしながら、テーパ形状のモータ軸とテーパ形状の中空部を有する偏心体軸とを摩擦締結する場合、偏心体軸には該摩擦締結時に発生するスラスト力が掛かるため、偏心体軸を支持している軸受等の部材に無理な力が掛かって、当該軸受等が損傷し易くなる等の不具合が発生する。
【0008】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであって、テーパ形状のモータ軸を連結するときに発生する不具合をより抑えることのできる偏心揺動型の減速装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、偏心体軸と、該偏心体軸上に設けられた偏心体によって揺動される外歯歯車と、該外歯歯車が揺動しながら内接噛合する内歯歯車と、前記偏心体軸を支持する偏心体軸軸受と、前記偏心体と前記外歯歯車との間に配置される偏心体軸受と、を備え、テーパ形状の外周部を有するモータ軸と連結して使用される偏心揺動型の減速装置であって、前記外歯歯車は、前記偏心体軸受が配置される軸受孔を有し、前記偏心体軸受は、転動体としてころを有し、当該ころは、前記軸受孔の内周面および前記偏心体の外周面に当接し、前記偏心体軸は、内周に前記モータ軸のテーパ形状の外周部と摩擦連結可能なテーパ形状の中空部が形成され、前記偏心体軸軸受が、該偏心体軸を軸方向に移動可能な態様で組み込まれ、該偏心体軸軸受の外輪の外周または内輪の内周の少なくとも一方に、Oリングが配置され、前記偏心体軸が軸方向に最大に移動しても、前記外歯歯車の軸受孔のエッジが、前記偏心体軸受のころの転動面に当たらない構成とされている構成とすることにより、上記課題を解決したものである。
【0010】
本発明においては、偏心体軸を支持している軸受が、該偏心体軸を軸方向に移動可能とする態様で組み込まれる。これにより、テーパ形状のモータ軸を偏心体軸に連結する際に、偏心体軸を介して該偏心体軸を支持する軸受等にスラスト力が掛かる不具合をより緩和することができる。
【0011】
ただし、この場合、当該軸受の外輪の外周(あるいは内輪の内周)にフレッティングが発生する虞が新たに生じる。そのため、本発明では、外輪の外周または内輪の内周(場合によっては両方でも可)にOリングを配置するようにしている。これにより、軸受をより安定して組み込むことができ、フレッティングの発生も防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、テーパ形状の外周部を有するモータ軸を連結するときに発生する不具合をより抑えることのできる偏心揺動型の減速装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る偏心揺動型の減速装置の実施形態の一例を示す断面図
図2図1の要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る偏心揺動型の減速装置の実施形態の一例を示す断面図、図2は、図1の要部拡大断面図である。
【0016】
始めに、減速装置G1の動力伝達系の概略構成から説明する。
【0017】
図1を参照して、この減速装置G1は、偏心揺動型と称される減速装置である。減速装置G1は、モータM1のモータ軸10と連結されて、該モータ軸10からの動力を受ける入力軸12を備える。入力軸12は、後述する内歯歯車26の軸心位置に配置されている。入力軸12の近傍の構成については、後に詳述する。
【0018】
入力軸12には第1〜第3偏心体14〜16が一体的に形成されている。すなわち、この実施形態では、入力軸12が、「偏心体軸」として機能している。第1〜第3偏心体14〜16は、それぞれの外周が、互いに120度の偏心位相差を持って入力軸12の軸心O1に対して所定量だけ偏心している。
【0019】
第1〜第3偏心体14〜16の外周には第1〜第3ころ軸受18〜20が配置されている。第1〜第3ころ軸受18〜20の外周には第1〜第3外歯歯車22〜24が揺動可能に組み込まれている。第1〜第3外歯歯車22〜24は、それぞれ内歯歯車26に内接噛合している。
【0020】
内歯歯車26は、ケーシング31と一体化された内歯歯車本体26A、および該内歯歯車26の「内歯」を構成する円柱状の外ピン26Bとで主に構成されている。外ピン26Bは、内歯歯車本体26Aの外ピン溝26Cに回転自在に支持されている。内歯歯車26の内歯の数(外ピン26Bの本数)は、第1〜第3外歯歯車22〜24の外歯の数よりも僅かだけ(この例では1だけ)多い。
【0021】
第1〜第3外歯歯車22〜24には、それぞれの軸心O1からオフセットされた位置に複数の貫通孔22A〜24Aが形成され、各貫通孔22A〜24Aをピン状の内ピン28が貫通している。また、第1〜第3外歯歯車22〜24の軸方向両側には、第1、第2キャリヤ32、34が配置されている。
【0022】
内ピン28は、第2キャリヤ34と一体化されている。内ピン28の先端は、第1キャリヤ32の軸方向の途中まで嵌入し、ボルト29によって第1キャリヤ32と連結されている。内ピン28は、第1〜第3外歯歯車22〜24の自転成分と同期して入力軸12の軸心O1の周りを公転し、第1、第2キャリヤ32、34を入力軸12の軸心周りで回転させる。
【0023】
なお、内ピン28の外周には、摺動促進体44が配置されている。内ピン28は、摺動促進体44を介して貫通孔22A〜24Aの一部と常に当接している。一方、摺動促進体44と貫通孔22A〜24Aの当接していない部分には、最大で第1〜第3偏心体14〜16の偏心量の2倍に相当する隙間が存在している。尤も、摺動促進体44はなくてもよい。
【0024】
第1、第2キャリヤ32、34は、背面合わせで組み込まれた第1、第2アンギュラ玉軸受36、38を介してケーシング31に支持されている。第2キャリヤ34には、タップ穴34Aが形成されおり、図示せぬ被駆動部材が連結される。ケーシング31には、ケーシングカバー33が連結されており、該ケーシングカバー33の突起部33Aにボルト35を介してモータケーシング11が連結されている。
【0025】
符号46、48は、オイルシールである。
【0026】
ここで、偏心体軸の機能を兼ねている入力軸12の近傍の構成を詳細に説明する。
【0027】
主に図2を参照して、この減速装置G1は、テーパ状外周部10A(テーパ形状の外周部)を有するモータ軸10と連結して使用される。
【0028】
モータ軸10は、該テーパ状外周部10Aに隣接して雄ねじ部10Cを有している。また、テーパ状外周部10Aの一部には、半月キー51(woodruff key)を入れ込むための半月状のキー溝10A1が形成されている。
【0029】
一方、入力軸12(偏心体軸)は、内周にモータ軸10のテーパ状外周部10Aと摩擦締結可能なテーパ状中空部12A(内径が奥(反モータ側)に行くに従って小さくなるテーパ形状の中空部)が形成されている。テーパ状中空部12Aには、前記半月キー51が装着されるキー溝12A1が形成されている。また、テーパ状中空部12Aの端部には、軸と直角の当接面12B(段部)が形成されている。テーパ状中空部12Aには、隣接して工具の逃げ部として機能する凹部12Cが形成されており、さらに、連続して軸と平行の(内径が一定の)ストレート中空部12Dが、該入力軸12の反モータ側の端部12Eにまで貫通形成されている。この実施形態では、工具の逃げ部である前記凹部12Cの一部を当接面12Bとして利用している。この当接面12Bは、径方向から見て、後述する第1、第2玉軸受61、62(偏心体軸を支持している軸受)と重ならない位置に形成されている。
【0030】
図の符号52は、六角ナット(ナット部材)である。六角ナット52は、入力軸12のストレート中空部12D内に、反モータ側から組み込まれる。六角ナット52は、モータ軸10の雄ねじ部10Cに螺合する雌ねじ部52Aと、図示せぬ六角レンチが差し込まれる六角穴部52Bとを有する。六角ナット52は、軸と直角の先端面52Cを有している。先端面52Cは、六角ナット52の雌ねじ部52Aをモータ軸10の雄ねじ部10Cにねじ込んだときに、入力軸12の前記当接面12Bと当接可能である。
【0031】
入力軸12は、一対の第1、第2玉軸受61、62を介して、第1、第2キャリヤ32、34にそれぞれ回転自在に支持されている。第1、第2玉軸受61、62は、内輪61A、62A、および外輪61B、62Bを備えると共に、転動体としてボール61C、62Cを備えている。前述したように、第1、第2玉軸受61、62が入力軸12を支持している位置は、径方向から見て入力軸12の当接面12Bと重なっていない。
【0032】
入力軸12の外周には、軸と平行の第1、第2ストレート外周面12G、12Hが、前述した第1〜第3偏心体14〜16の軸方向両側にそれぞれ形成されており、該第1、第2ストレート外周面12G、12Hに、前記第1、第2玉軸受61、62が配置されている。また、入力軸12の反モータ側の端部外周には、平行な2面12P、12Q(図1図2では、X印でこのうちの1面12Pのみ描写)が形成されている。この2面12P、12Qは、六角ナット52をねじ込むときに入力軸12が連れ廻らないように図示せぬレンチ等で挟んでおくために使用される。
【0033】
第1、第2ストレート外周面12G、12Hの外径d1は、第1、第2玉軸受61、62の内輪61A、62Aの内径D1よりも僅かだけ大きい。すなわち第1、第2玉軸受61、62の内輪61A、62Aは、圧入によってそれぞれ入力軸12の第1、第2ストレート外周面12G、12Hに固定されている。
【0034】
より具体的には、第1玉軸受61は、第1偏心体14のモータ側の側面14Aとの間にリング状の第1押さえ体74を挟みこんだ状態で入力軸12に圧入されている。また、第2玉軸受62は、第3偏心体16の反モータ側の側面16Aとの間にリング状の第2押さえ体76を挟みこんだ状態で入力軸12に圧入されている。第1玉軸受61の内輪61A、第1押さえ体74、第1〜第3ころ軸受18〜20のリテーナ18A〜20A、第2押さえ体76、第2玉軸受62の内輪62Aの間には、基本的には隙間は存在しておらず、各部材は円滑な摺動ができる程度に互いに接触している。
【0035】
これに対し、第1、第2玉軸受61、62の外輪61B、62Bの外径d2は、第1、第2キャリヤ32、34の第1、第2軸受孔32C、34Cの内径D2よりも僅かだけ小さい。すなわち第1、第2玉軸受61、62の外輪61B、62Bは、隙間嵌めによって第1、第2キャリヤ32、34の第1、第2軸受孔32C、34Cに組み込まれている。入力軸12の第1、第2玉軸受61、62の内輪61A、62Aは、入力軸12に圧入によって組み込まれているため、結果として、入力軸12は、第1、第2玉軸受61、62と共に第1、第2キャリヤ32、34に対して軸方向に移動可能である。
【0036】
この実施形態では、第1玉軸受61の外輪61Bとその止め輪80との間には隙間δ1が、第2玉軸受62の外輪62Bと第2キャリヤ34の係止突起34Pとの間には隙間δ2がそれぞれ設けられている。したがって、該入力軸12は、最大でδ1+δ2の範囲で軸方向に移動可能である。
【0037】
第1玉軸受61の外輪61Bの外周にはリング状の溝61B1、61B2が、第2玉軸受62の外輪62Bの外周にはリング状の溝62B1、62B2が、それぞれ円周方向に沿って形成されており、この2本の溝61B1、61B2および溝62B1、62B2に、それぞれOリング82、84、86、88が嵌め込まれている。
【0038】
また、第1〜第3ころ軸受18〜20は、一般的なころ軸受と比較してころ18B〜20Bの軸方向長L1が短めに設定されている。すなわち、たとえ入力軸12が最大限(δ1+δ2)軸方向のいずれか側に移動したとしても、第1〜第3外歯歯車22〜24の偏心体軸孔(軸受孔)22C〜24Cの軸方向のエッジ22C1、22C2、23C1、23C2、24C1、24C2が、第1〜第3ころ軸受18〜20のころ18B〜20Bの転動面18B1〜20B1に当たらないように構成している。なお、ころ18B〜20Bの軸方向長L1を短くする代わりに、あるいは短くする構成に加えて、ころ18B〜20B、あるいは第1〜第3外歯歯車22〜24の偏心体軸孔22C〜24Cにクラウニング処理を施すようにしても良い。
【0039】
以下、この偏心揺動形の減速装置G1の作用を説明する。
【0040】
まず、動力伝達系の概略的な作用から説明する。モータM1のモータ軸10が回転して入力軸12が回転すると、該入力軸12と一体化されている第1〜第3偏心体14〜16が回転し、第1〜第3ころ軸受18〜20を介して第1〜第3外歯歯車22〜24が揺動する。この結果、固定状態にある内歯歯車26に対する第1〜第3外歯歯車22〜24の噛合位置が順次ずれていく現象が発生する。第1〜第3外歯歯車22〜24の歯数は内歯歯車26の歯数よりも1だけ少ないため、第1〜第3外歯歯車22〜24は入力軸12が1回回転する毎に、一歯分だけ内歯歯車26に対して位相がずれる(自転する)。この自転成分が、内ピン28を介して第1、第2キャリヤ32、34に伝達され、該第2キャリヤ34とタップ穴34Aを介して連結されている被駆動部材が駆動される。
【0041】
ここで、本実施形態において、モータ軸10と入力軸12の連結は以下のようにして行われる。まず、半月キー51をモータ軸10および入力軸12のキー溝10A1、12A1に装着させた態様でモータ軸10を入力軸12に挿入する。その後、モータケーシング11を減速装置G1のケーシングカバー33の突起部33Aにボルト35を介して連結する。
【0042】
そして、六角ナット52を反モータ側から入れ込み、図示せぬ六角レンジを六角ナット52の六角穴部52Bに差し込んで該六角ナット52の雌ねじ部52Aをモータ軸10の雄ねじ部10Cに螺合させる。その際、入力軸12の端部に形成された平行な2面12P、12Qを活用して入力軸12の廻り止めがなされる。
【0043】
やがて六角ナット52の先端面52Cは、入力軸12の当接面12Bに当接し、六角ナット52の更なるねじ込みにより、モータ軸10と入力軸12は、そのテーパ状外周部10Aとテーパ状中空部12Aが互いに強く押し付けられ、摩擦締結される。
【0044】
このとき、入力軸12は、通常の場合、モータM1側へ引き寄せられるスラスト力が掛り、モータM1側に若干移動する(まれに、例えばケーシングカバー33の製造誤差等によっては反モータ側に移動するときもある)。しかしながら、この実施形態では、入力軸12は、第1、第2玉軸受61、62の外輪61B、62Bが第1キャリヤ32上の止め輪80と第2キャリヤ34の係止突起34Pとの間で、最大で隙間δ1+δ2に相当する分、軸方向に移動可能とされている。そのため、第1、第2玉軸受61、62にはこの入力軸12のスラスト力の影響が及ばない。特に、この実施形態では、六角ナット52の当接面12Bが、径方向から見て、第1、第2玉軸受61、62と重ならない位置に形成されているため、第1、第2玉軸受61、62には、摩擦締結の際の入力軸12の径方向の変形の影響も殆ど及ばない。入力軸12は、モータM1のモータ軸10が連結された後は、隙間δ1+δ2の範囲内のいずれかの軸方向位置で、Oリング82、84、86、88および第1、第2玉軸受61、62を介して第1、第2キャリヤ32、34に対して位置決めされる。
【0045】
入力軸12が偏心体軸を兼ねている場合、当該入力軸12を支持する第1、第2玉軸受61、62に無理なスラスト力が掛かったままとされると、入力軸12の円滑な回転が阻害され、第1〜第3外歯歯車22〜24の安定した偏心揺動ができなくなる。また、第1、第2玉軸受61、62の耐久性も低下する。
【0046】
本実施形態では、入力軸12は、モータ連結時に発生するスラスト力に逆らうことなく動くことができるため、連結後に該スラスト力が残存することに依る不具合が発生する虞は殆どない。なお、入力軸12のスラスト力が軽減された分、モータ軸10に発生する反作用も軽減されるため、モータ軸10を支持している図示せぬ軸受の負担も軽減される。
【0047】
また、第1、第2玉軸受61、62の外輪61B、62Bと第1、第2キャリヤ32、34との間にはOリング82、84、86、88がそれぞれ2個ずつ配置されている。そのため、第1、第2玉軸受61、62は、第1、第2キャリヤ32、34に対して隙間嵌めで組み込まれているにも拘わらず、微振動等を起こすことなく安定した状態で第1、第2キャリヤ32、34に組み付けられる。したがって、第1、第2玉軸受61、62の外輪61B、62Bと第1、第2キャリヤ32、34との間にフレッティングが発生するのを極力抑えることができる。
【0048】
また、第1〜第3ころ軸受18〜20は、ころ18B〜20Bの軸方向長L1が短めに設定されており、たとえ入力軸12が最大限軸方向のいずれか側に移動したとしても、第1〜第3外歯歯車22〜24の偏心体軸孔22C〜24Cの軸方向のエッジ22C1、22C2、23C1、23C2、24C1、24C2が、第1〜第3ころ軸受18〜20のころ18B〜20Bの転動面18B1〜20B1に当たることがない。そのため、第1〜第3ころ軸受18〜20のころ18B〜20Bの転動面18B1〜20B1が損傷するのを効果的に防止することができる。
【0049】
なお、上記実施形態においては、入力軸(偏心体軸)を軸方向に移動可能とするために偏心体軸を支持する軸受を、その外輪を隙間嵌めにて第1、第2キャリヤに組み込むようにしていたが、本発明では、要は、偏心体軸を支持する軸受が、該偏心体軸を軸方向に移動可能な態様で組み込まれていればよく、例えば、内輪側が隙間嵌めにて偏心体軸を支持するような構成とされていてもよい。また、可能性として、偏心体軸を支持する軸受の内外輪をややきつい隙間嵌めとする構成としてもよい。但し、いずれの場合も、隙間嵌めとした外輪の外周、あるいは内輪の内周にはOリングを配置すべきである。
【0050】
また、上記実施形態においては、モータ軸のテーパ形状の外周部と入力軸(偏心体軸)のテーパ形状の中空部との間に、補助的に半月キーが介在されていたが、このキーは、必ずしも必要ではない。
【0051】
また、上記実施形態においては、ナット部材を介してモータ軸のテーパ形状の外周部と入力軸(偏心体軸)のテーパ形状の中空部とを摩擦締結するようにしていたが、該摩擦締結の仕方も、必ずしもこの手法に限定されない。例えば、ストレート形状の中空部を有する偏心体軸とモータ軸のテーパ形状の外周部との間に、くさび形状の摩擦締結部材を押し込むような構成であってもよい。この場合でも、摩擦締結の際にスラスト力が発生するため、本発明を適用することができる。
【0052】
また、上記実施形態においては、入力軸(偏心体軸)の廻り止め用として、入力軸の端部の外周に平行な2面を形成するようにしていたが、これとは別の手法で廻り止めを行うようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、入力軸(偏心体軸)が軸方向に動いても偏心体と外歯歯車との間に配置されるころ軸受に不具合が発生しないように、ころの軸方向長を短くしたり、クラウニング処理を施したりしていたが、これらの構成も、必ずしも必要ではない。
【0054】
また、上記実施形態においては、径方向中央に配置した入力軸が偏心体軸を兼ねていたが、偏心揺動型の減速装置には、径方向中央からオフセットされた位置に複数の偏心体軸があるものも知られている。このようなタイプにおいて、偏心体軸に直接テーパ形状のモータ軸を連結して入力する場合にも本発明は適用できる(モータ自体が公転するか、枠回転タイプとなる)。他の偏心体軸にはその後動力を伝達してもよいし、従動のままとしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態においては、Oリングを配置するための溝を軸受に形成するようにしていたが、軸受の外輪や内輪にではなく、該軸受を支持している部材(先の実施形態では第1、第2キャリヤ)や、軸受によって支持されている部材(偏心体軸)の側に形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
G1…減速装置
M1…モータ
10…モータ軸
10A…テーパ状外周部
12…入力軸(偏心体軸)
12A…テーパ状中空部
14〜16…第1〜第3偏心体
18〜20…第1〜第3ころ軸受
22〜24…第1〜第3外歯歯車
26…内歯歯車
32、34…第1、第2キャリヤ
61、62…第1、第2玉軸受
82、84、86、88…Oリング
図1
図2