(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961521
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】ボルト接合用の接合部材
(51)【国際特許分類】
C23C 10/32 20060101AFI20160719BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20160719BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20160719BHJP
F16B 43/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
C23C10/32
E04B1/58 501
E04B1/58 Z
F16B5/02 E
F16B43/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-227276(P2012-227276)
(22)【出願日】2012年10月12日
(65)【公開番号】特開2014-80736(P2014-80736A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2013年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】591023767
【氏名又は名称】滲透工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(72)【発明者】
【氏名】草 野 薫
(72)【発明者】
【氏名】安 倍 博 之
【審査官】
河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−162868(JP,A)
【文献】
特開2008−019923(JP,A)
【文献】
特開平08−177832(JP,A)
【文献】
特開2002−021837(JP,A)
【文献】
特表2008−544171(JP,A)
【文献】
特開2010−071383(JP,A)
【文献】
特開昭59−013063(JP,A)
【文献】
特開2004−339562(JP,A)
【文献】
特開2002−122123(JP,A)
【文献】
特開昭60−177176(JP,A)
【文献】
特開平11−350108(JP,A)
【文献】
特開昭57−057912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 10/28−10/58
E04B 1/38− 1/61
F16B 5/02
F16B 23/00−43/02
F16G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料の表面に形成されたクロム拡散層を有しており、このクロム拡散層は、その表面に、前記金属材料中の炭素と前記金属材料中に拡散したクロムとの反応生成物である炭化クロムを含む、厚さ0.5〜10μmの多孔質層を有するものであって、この多孔質層の表面を少なくとも接合面に有することを特徴とする、複数の部材をボルト接合する際に前記部材とボルト又はナットとの間に配置される、建築構造物の外装、又は柱梁、橋梁のボルト接合部に使用されるボルト接合用の接合部材。
【請求項2】
前記金属材料が、炭素鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、鋳鉄及び鋳鋼からなる群から選ばれた少なくとも一種である、請求項1に記載のボルト接合用の接合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト接合用の接合部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄骨構造の建物や柱梁、橋梁において、接合部をボルト接合構造にする場合、高張力ボルト(以下、高力ボルトと呼称する)を用いて摩擦接合にする場合が多い。これらの構造物は耐震性や耐風圧性を高める為、接合面の摩擦係数を増大させて剛接合に近づけるべく、接合箇所を故意に腐食させたり、例えば特許文献1のように母材と添板の間に介装する接合部材の表面に多数の突起を形成させるなどの手段を講じることや、特許文献2のようにボルト接合部に環状体の部材を介装しボルトの締め付け力によって環状体を構造部材に埋め込ませるようにするなどの手段を講じることが提案されて来た。
【0003】
しかし、近年はこうした鉄骨構造体の耐力確保を目的とした強固な接合が向上した一方で、建造物の外壁取付け部、建物間や橋梁のユニバーサルジョイントや地震による揺れを分散させて地震力を吸収し構造体そのものの損傷を防止する制振構造など、可動接合部を有する部材取付け例が増えている。
【0004】
例えば、特許文献3のように接合部に滑り板と摩擦板を組み合わせる方法や、特許文献4のように例えばテフロン(登録商標)加工やテフロンシートを張り付けたスライドワッシャーを装入した制振アイソレータ―や、特許文献5のように可動支障部に二硫化モリブデン処理を施した部材を使用する方法なども提案されている。
【0005】
また、建築構造物の外壁については、カーテンウォールのパネルや方立など、建造物本体とは熱膨張率の異なる材質が使用されることが多く、その接合部は気温や太陽熱の影響により部材間の変位が日常的に生じるため可動接合とされている例が多いが、部材間変位により接合部の静止摩擦力を超える剪断力が働いた際に突然音を発する現象が有り、問題となっている。
【0006】
この発音を防止する為には、部材間に滑りが良い板材を接合部材として挟み込んでボルトで部材同士を緊締する方法が一般的で、接合部材としては、例えば材料コストが安い普通鋼鋼鈑に防錆の為クロメート処理を施し、更にその表面に特許文献6のように固体潤滑材であるテフロンシートを貼りつけたり、特許文献7や特許文献8に記述されているようにテフロンや二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑材を主成分とする樹脂系非粘着性コーティング剤を塗布しているものが汎用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−248010号公報
【特許文献2】特開平4−221143号公報
【特許文献3】特開2012−67805号公報
【特許文献4】特開2006−242249号公報
【特許文献5】特許2936294号
【特許文献6】特開平7−207786号公報
【特許文献7】特開昭57−57912号公報
【特許文献8】特開平10−120980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように建築構造物に用いられる可動接合部には過度の揺れや剪断力を吸収する色々な提案がなされているが、いずれも構造が複雑で費用が掛かることや、或いは、テフロンや二硫化モリブデン等の固体潤滑材を接着或いは塗布する接合部材は、固体潤滑材に掛かる原材料費が非常に高価であるとともに、建築施工業者により1枚1枚手間を掛けて施工される為作業性が悪く、また揺れや熱膨張・収縮による変位を繰り返すことによって生ずる摩耗や、基材そのものの腐食や発錆等によって剥離したり消失することによって数年で効果を失うことから、メンテナンスの際はこれら効力を喪失した接合部材を交換する必要があって、手間と費用がかかると云った経済的観点及び耐久性に改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
こうした建築構造物や柱梁、橋梁の可動接合部は、高力ボルトで締め付けられることを前提とする接合も多く、地震や風圧による過度の揺れや日常的に起こる熱膨張収縮による部材間の変位により接合部が摺動することが必要であり、且つ接合部に用いられるボルトは緩むことがあってはならず、過度の揺れや剪断力を吸収する為に適度の滑り摩擦を有し、尚且つ繰り返される摺動でも壊れたり表面が削がれることの無い接合部材が必要とされる。また、先に説明した外壁部材の可動接合部の場合には滑りが発生した時の発音は、時として建築物の内部にまで伝わり、異音として人々の耳に届き不快感と不安を与えるので甚だ都合が悪い。そしてこのような可動接合部は建造物や橋梁には数多く存在するので、なるべく施工性やメンテナンス性の良いことが求められる。
【0010】
本発明は、こうした従来の欠点をことごとく解消した接合部の補助部材であって、高力ボルトで締め付けられる圧力にも耐える表面硬度を持ち、且つ度重なる膨張・収縮にも耐えて摩耗や剥離も起こらない、更に接合部の剪断力が所定の値を超えた時に摺動する適度の滑り性を有するだけでなく、滑り時の発音を防止、軽減し、尚且つ高耐食性や耐久性が高いと云った性能を有し、建築物施工の際に接続部にそのまま介装するだけで良く、現場で潤滑剤の塗布など新たな手間を必要とせず、且つメンテナンスフリーを特徴とするものである。
【0011】
従って、本発明によるボルト接合用の接合部材は、金属材料の表面に形成されたクロム拡散層を少なくとも接合面に有すること、を特徴とする。
【0012】
このような本発明によるボルト接合用の接合部材は、好ましい様態として、前記金属材料が、炭素鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、鋳鉄及び鋳鋼からなるから成る群から選ばれた少なくとも一種であるもの、を包含する。
【0013】
このような本発明によるボルト接合用の接合部材は、更に好ましい様態として、前記クロム拡散層が、炭化クロムを含むものであるもの、を包含する。
【0014】
このような本発明によるボルト接合用の接合部材は、より好ましい様態として、前記炭化クロムが、前記金属材料中の炭素と前記金属材料中に拡散したクロムとの反応生成物であるもの、を包含する。
【0015】
このような本発明によるボルト接合用の接合部材は、特に好ましい様態として、前記クロム拡散層が、その表面に多孔質層を有するもの、を包含する。
【0016】
このような本発明によるボルト接合用の接合部材は、例えば、建築構造物の外装、または柱梁、橋梁のボルト接合部に使用されるもの、を含有する。
【0017】
このような本発明によるボルト接合用の接合部材は、例えば、複数の部材をボルト接合する際に前記部材と部材との間に配置されるもの、を含有する。
【0018】
このような本発明によるボルト接合用の接合部材は、例えば、複数の部材をボルト接合する際に前記部材とボルト又はナットとの間に配置されるもの、を含有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来の鉄骨構造の建物や柱梁、橋梁の接合部の接合力(ボルトなどに依る緊締力)を低下せしめることなく接合部の摺動が可能であり、摺動時の突発音も防止する事が出来る。
【0020】
又、本発明の接合部材は、予めクロム拡散処理(クロマイジング処理)を実施する事によって必要とされる滑り性能と発音防止、軽減機能及び防錆機能を付与出来るので、建築現場での接合作業の際に何ら新しく手間を加える必要が無く、ただ部材間に挟み込むだけで良いので、作業の簡素化が可能である。
【0021】
又、表面に形成されたクロム硬化層は容易に剥離する事が無く、極めて高い硬度を有しているので繰り返し表面に摺動圧力がかかっても摩耗し難く、従って各種効果が継続して半永久的に接合部材としての性能を維持する事が出来るので、経済的効果は甚だ顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1の接合部材に於けるクロム拡散層の金属組織を示す走査型電子顕微鏡写真であって、
図1Aは、接合部の断面図であり、
図1Bは、クロム拡散層表面の多孔質層を示す図である。
【
図2】本発明による接合部材を使用した接合方法の一例を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明によるボルト接合用の接合部材は、金属材料の表面に形成されたクロム拡散層を少なくとも接合面に有すること、を特徴とする。ここで、「ボルト接合用の接合部材」には、例えば座金、ワッシャー、滑り板、又はこれらに類似したものが包含される。
【0024】
ボルト接合用の接合部材を形成する金属材料としては、ボルト接合用の接合部材として十分な特性、例えば強度、耐候性、耐摩耗性等を有し、且つクロム拡散処理が可能なものの中から適宜選択して用いる事が出来る。好ましい金属材料としては、例えば、炭素鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、鋳鉄及び鋳鋼を挙げる事が出来る。この中でも炭素鋼が費用対効果の点で好ましい。
【0025】
炭素鋼は、一般的に、建築物の骨格や橋梁などの建造物に適用される一般構造用炭素鋼(SS)と、機械構造用炭素鋼(SC)に分類されることがあるが、本発明では何れの炭素鋼をも用いることができる。コスト的に一般構造用炭素鋼(SS)が有利であるので、本発明による接合部材に於ける金属材料としては、特に必要性がある場合を除いては、一般構造用炭素鋼(SS)を用いるのが普通である。一般構造用炭素鋼(SS)のうち、炭素を0.1〜0.3重量%含有するものは、以下に述べる通り、クロム拡散処理によって、拡散したクロムと金属材料に含まれる炭素とが反応して、炭化クロムが生成し、炭化クロムを含有する良好なクロム拡散層を容易に形成させ易いので特に望ましい。
【0026】
本発明による接合部材は、上記金属材料にクロム拡散層が形成されて成るものである。このクロム拡散層には、金属材料の内部に滲透したクロムと金属材料を構成する少なくとも一つの成分との反応生成物が含有されることがある。金属材料の表面及び表面から内部に向かって一定の領域内にこのクロム拡散層が存在する事によって、金属材料の表面硬度が向上し、クロム拡散処理をする前の金属表面硬度に比べて約5倍から10倍高い800〜2000mHvという極めて硬い表面硬度が容易に得られる。尚且つ表面層は強固に密着して剥がれ難く、良好な摺動性、耐摩耗性を併せ持つものである。
【0027】
特に、本発明に於けるクロム拡散層は、金属材料に含まれる炭素と拡散したクロムとが化合して表面に炭化クロムを含有する硬化層を形成する場合には、その硬化層は多孔質化する為に吸音効果が有り、相手金属部材の平滑な表面と強く圧着された状態で滑りが発生しても、発音の防止や軽減にも特に有効である。
【0028】
本発明において、炭化クロムを含有する硬化層を形成させる際は、予め浸炭処理を行う、或いはクロム拡散処理中に炭化クロムを形成させるよう雰囲気に調整する等を行うことができる。
【0029】
本発明による接合部材では、このクロム拡散層によって金属材料の耐食性が著しく向上し、気候によって容易には発錆しない。この為に部材交換を必要としない。
【0030】
しかも、当然の事ながら、この表面処理は予め加工工場で処理しておくことが出来る。このことから、建築現場等に於いて鋼構造体の組み立て作業に用いる際は、そのままの状態で容易に使用することが出来る。従って、接合部材その物の品質が安定し、且つ、鋼構造体の組み立て作業の高能率化、作業品質の安定化等を図る事が出来る。
【0031】
本発明による接合部材に於いて、そのクロム拡散層の表面硬度は300〜2000mHv、好ましくは800〜2000mHv、特に好ましくは1000〜1800mHvの範囲内である。表面硬度が300mHv未満である場合は十分な耐摩耗性と滑り性が発揮出来ず、一方、2000mHv超過では最早性能に有意差を生ずる事が無いだけでなく、コスト的にも無駄となる。ここで、クロム拡散層の表面硬度は、マイクロビッカース硬度計による測定によって求められたものである。
【0032】
そして、クロム拡散層の厚さは、5〜150μm、好ましくは5〜100μm、更に好ましくは10〜30μmである。5μm未満では耐用年数が数十年に及ぶ建物や柱梁、橋梁の部材としては耐用年数が不足となり、150μmを超えると性能過多になるだけでなく拡散被覆処理のコストも高くなって不適切であり、10〜30μmであれば性能・効果・コストのいずれの点でも満足できる性能がバランス良く得る事が出来る。ここで、クロム拡散層の厚さは、光学顕微鏡による金属組織断面観察によって求められたものである。
【0033】
クロム拡散層の表面
の多孔質層の厚さは、0.5〜10μm、好ましくは1〜3μm、である。多孔質層の有無、その程度、多孔質層の厚さは光学顕微鏡による金属組織断面観察によって確認する事が出来る。
【0034】
本発明による接合部材は、金属表面に形成されたクロム拡散層を少なくとも接合面に有する。接合面以外の部分(即ち、他の部材等と接合に際して接触する事が無い部分)にクロム拡散層が形成されている必要は無いが、そのような接合面以外の部分にもクロム拡散層が形成されていてもよい。また、クロム拡散層は、本発明による接合部材の接合面の全領域に形成されている事が好ましいが、接合面には一部クロム拡散層が存在していない部分があってもよい。
【0035】
本発明の接合部材に施工するクロム拡散被覆処理としては、粉末パック法、溶融塩法、熱CVD法、又は母材表面にクロムを含む合金粉末を混合した塗料を塗布或いはクロムメッキ処理後に不活性ガス雰囲気又は真空中でクロム成分を加熱拡散させる方法を採用出来る。
【0036】
中でも粉末パック法は大量生産に向いており、最も低コストでクロム硬化層を形成出来るので、本発明に適用するクロム拡散層の形成方法として最適である。粉末パック法とは、金属クロム粉若しくは鉄クロム合金粉と、焼結防止剤としてアルミナ粉に代表されるセラミック粉末、及び塩化アンモニウムに代表されるハロゲン化物粉を混合してクロム滲透剤とし、この滲透剤の中に被処理物である接合部材を埋置し、アルゴンなどの不活性ガスや水素等の還元ガスを流しながら加熱する方法で、クロマイジング処理として知られている。
【0037】
下記は、本発明に於いて採用されるクロム拡散処理の好ましい具体例を示すものである。
クロマイジング処理は、通常、被処理物を、金属クロム粉10〜90重量%、アルミナ粉10〜90重量%、塩化アンモニウム粉0.1〜2重量%を混合して成るクロム滲透剤と共に、半密閉容器内に充填し、アルゴンなどの不活性ガスや水素等の還元ガスを流しながら、800℃以上で加熱する。本発明に於いては、前述した多孔質化されたクロム拡散層を安定して得るためには、900〜1100℃で、5〜30時間加熱して行う事が好ましい。加熱温度が900℃未満、又は加熱時間が5時間未満では、多孔質化されたクロム拡散層が安定した厚みとはならない為に十分な吸音効果は得られず、また加熱温度が1100℃を超えるか、又は加熱時間30時間を超えると、一旦形成された多孔質層が破壊される場合があり、また被処理物である金属の結晶粒増大による強度低下等の弊害が発生し易くなり、またエネルギーコストが高くなって不適切である。
【0038】
本発明による接合部材は、好ましくは、例えば、建築構造物の外装、又は柱梁、橋梁のボルト接合部に使用する事が出来る。特に、複数の部材をボルト接合する際に前記複数の部材の間に配置されて各部材間の摺動を助ける滑り板、並びに、複数の部材をボルト接合する際に前記部材とボルト又はナットとの間に配置されるワッシャー、座金等に用いる事が出来る。
【0039】
本発明による接合部材の形状、大きさ、厚さは、その具体的な適用対象、目的、要求特性などを考慮して定める事が出来る。例えば、滑り板として特に適した接合部材としては、厚さ0.2〜12mmの板状のもので、辺の長さが10〜300mmの四角形状のものを上げる事が出来る。本発明による接合部材では、従来の滑り板と同様に1個又は複数個のボルト孔を有する事が出来る。ワッシャー、座金に特に適した接合部材としては、厚さ0.2〜12mm、外径が3〜125mmのものを挙げる事が出来る。
【0040】
また、接合に際し、ワッシャー及び座金の使用が省略されてボルトやナットの面が直接摺動面となる事が予定される場合には、ボルトやナットの表面にクロム拡散層を形成する事も可能である。
【0041】
尚、1箇所の接合箇所には、本発明による接合部材を1個又は2個以上用いる事が出来、1個又は2個以上の本発明による接合部材と本発明以外の他の接合部材等を1箇所の接合箇所に同時に用いる事が出来る。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。尚、下記は、本発明の実施の形態のうち好ましい例についての例示であり、従って、本発明の範囲は下記の具体的例示の範囲内のみに限定されることはない。
【0043】
<実施例1>
本発明の効果を確認する為に、カーテンウォールで使用される、もっともコストが安く汎用されている普通鋼鋼板(通称SS400)の接合部材(比較材1)と、これにクロマイジング処理を行った本発明の接合部材(本発明品1)と比較した。
【0044】
滑り板として使用するこの補助部材は、厚さ1mm、幅100mm、長さ100mmで中央部に径22mmのボルト穴が開いた普通鋼鋼鈑(SS400)と、ボルトワッシャーとして使用する、厚さ6mm、外径60mmで中央部に径22mmのボルト穴が開いた普通鋼鋼鈑(SS400)を組み合わせたものであり(比較材1)、これらにクロマイジング処理を実施したもの(本発明品1)と比較した。
【0045】
クロマイジング処理は、クロム粉50%、アルミナ粉49.5%、塩化アンモニウム粉0.5%を混合して成るクロム滲透剤中に前述の鋼鈑を埋め込んで、水素を流しながら950℃で10時間加熱して行った。
【0046】
その結果、鋼鈑の全表面にクロム硬化層の厚みが15μm、硬度は1400mHvが得られ、また、走査型顕微鏡で観察したところ、
図1に示すように多孔質化されたクロム硬化層が得られた。
【0047】
次に、
図2Aおよび
図2Bに示すように、本発明の滑り板2を普通鋼製の厚さ5mm×幅100mmの電気亜鉛メッキ鋼板4とアルミニウム合金(A6063S)製のチャンネル3(厚さ5mm×50mm×100mm)の背面部の間に挟み込み、M20の高張力ボルト5(引っ張り強さ1000〜1200MPa)およびナット6にて、チャンネル3と滑り板4の接触面圧が25N/mm
2になるように緊締した。このとき、前記の電気亜鉛メッキ鋼板4と前記ボルト6との間には、本発明のボルトワッシャー1を挿入した。尚、
図2Aおよび
図2Bに示すように、チャンネル鋼3の中央には径22mmのボルト穴を有し、亜鉛メッキ鋼板4のボルト穴は幅22mm×長さ40mmの長穴とし亜鉛メッキ鋼板が可動出来る様にした。
【0048】
一方、比較の為、上記の比較材1を本発明品1の代わりに用いた以外は上記と同様にして緊締した。
【0049】
そして、アムスラー試験機でこれら緊締したチャンネルに剪断力を掛けて、亜鉛メッキ鋼板がずれる時の力と発生する突発音の大きさを計測し、夫々の滑り板とワッシャーの性能を評価した。結果は表1に示される通りで、汎用されている部材(比較材1)の発音時の剪断力が4.2Ton、突発音が115dbであるのに対し、本発明品1の場合それぞれ2.2Ton、63dbとなり、本発明の滑り性改善効果と発音軽減効果が確認された。
【0050】
<実施例2>
実施例1同様に、汎用されている接合部材(SS400)にクロマイジング処理を実施した(本発明品2)。クロマイジング処理は、クロム粉50%、アルミナ粉49.5%、塩化アンモニウム粉0.5%を混合して成るクロム滲透剤中に前述の鋼鈑を埋め込んで、水素を流しながら1000℃で15時間加熱して行った。その結果、鋼鈑の全表面にクロム硬化層の厚みが27μm、硬度は1470mHvが得られ、また、走査型顕微鏡で観察したところ、実施例1と同様に多孔質化されたクロム硬化層が見られた。
【0051】
次に、実施例1と同様に亜鉛メッキ鋼板とアルミニウム合金チャンネルの間に挟み込み、同条件になるように緊締した後、剪断力を掛けて亜鉛メッキ鋼板がずれる時の力と発生する突発音の大きさを計測した。
結果は、表1に示される通りで、本発明品1と同様の効果が確認された。
【0052】
<実施例3>
SUS304で作った実施例1と同様の形状の接合部材にクロマイジング処理を実施した(本発明品3)。クロマイジング処理は、クロム粉50%、アルミナ粉49.5%、塩化アンモニウム粉0.5%を混合して成るクロム滲透剤中に前述の鋼鈑を埋め込んで、水素を流しながら1000℃で15時間加熱して行った。その結果、鋼鈑の全表面にクロム硬化層の厚みが45μm、表面硬度が1050mHvのクロム硬化層が得られた。
【0053】
次に、実施例1と同様に亜鉛メッキ鋼板とアルミニウム合金チャンネルの間に挟み込み、同条件になるように緊締した後、剪断力を掛けてチャンネルがずれる時の力と発生する突発音の大きさを計測した。結果は表1に示すが、本発明品1、2と同様の効果が確認された。
【0054】
<比較材2>
SUS304で作った実施例1と同様の形状の接合部材を、そのまま実施例1と同様に鋼板とチャンネルに挟み込み緊締した後、剪断力を掛けて亜鉛メッキ鋼板がずれる時の力と発生する突発音の大きさを測定した。結果は、表1に示される通りである。
【0055】
<比較材3>
実施例1と同様の形状の部材(SS400)にクロメート処理をした後にテフロンシートを張り付けて接合部材として、実施例1と同様に亜鉛メッキ鋼板とアルミニウム合金チャンネルに挟み込み緊締した後、剪断力を掛けて亜鉛メッキ鋼板がずれる時の力と発生する突発音の大きさを測定した。結果は、表1に示される通りである。
【0056】
<比較材4>
実施例1と同様の形状の部材(SS400)にクロメート処理をした後に二硫化モリブデンを塗布して接合部材として、実施例1と同様に亜鉛メッキ鋼板とアルミニウム合金チャンネルに挟み込み緊締した後、剪断力を掛けて亜鉛メッキ鋼板がずれる時の力と発生する突発音の大きさを測定した。結果は、表1に示される通りである。
【表1】
(表1の説明)
1)※1(摩擦性能):JIS K 7125準拠、電気亜鉛鍍金鋼鈑に対しての摩擦係数
2)※2(滑り性能):10トンアムスラー試験機による引張荷重の測定
3)※3(耐食性):JIS K 2371SST試験、塩水噴霧試験
【符号の説明】
【0057】
1 本発明品(ワッシャー)
2 本発明品(滑り板)
3 アルミニウム合金(A6063S)チャンネル
4 電気亜鉛メッキ鋼板
5 M20高張力ボルト
6 M20ナット
7 JISワッシャー