特許第5961522号(P5961522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本触媒の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961522
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】廃ガスの処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/72 20060101AFI20160719BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20160719BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20160719BHJP
   C07C 51/50 20060101ALI20160719BHJP
   C07C 57/075 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B01D53/72 200
   B01D53/14 210
   B01D53/62ZAB
   C07C51/50
   C07C57/075
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-228182(P2012-228182)
(22)【出願日】2012年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-79677(P2014-79677A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】山本 章
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−095217(JP,A)
【文献】 特開2002−173464(JP,A)
【文献】 特開昭60−006636(JP,A)
【文献】 特開2003−222322(JP,A)
【文献】 特開昭54−044609(JP,A)
【文献】 特開2005−232007(JP,A)
【文献】 特開2001−179238(JP,A)
【文献】 特開2001−019655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14− 53/18
B01D 53/34− 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
C07B 31/00− 61/00
C07B 63/00− 63/04
C07C 1/00−409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスの処理方法であって、
廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和が1.0容量%以上の場合は、廃ガスを水と接触させた後に燃焼することにより廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去し、
廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和が1.0容量%未満の場合は、廃ガスをアルカリ溶液と接触させることにより廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去することを特徴とする廃ガスの処理方法。
【請求項2】
(メタ)アクリル酸の製造方法であって、
請求項1に記載の廃ガスの処理方法で廃ガスを水と接触させることにより得られた(メタ)アクリル酸水溶液を、(メタ)アクリル酸の製造で用いられる重合防止剤溶液の溶媒に用いることを特徴とする(メタ)アクリル酸の製造方法。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸の製造方法が、(メタ)アクリル酸製造原料から(メタ)アクリル酸含有ガスを得る(メタ)アクリル酸生成工程と、前記(メタ)アクリル酸含有ガスを捕集塔に導入して粗(メタ)アクリル酸を得る捕集工程とを有し、
前記重合防止剤溶液を前記捕集塔に供給する請求項に記載の(メタ)アクリル酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸の製造プロセスでは、原料から高純度の目的物を得るために、反応、分離、精製等の操作が行なわれ、各段階において分離・除去された不純物が廃ガス等として排出されている。このとき、排出された廃ガスには(メタ)アクリル酸が含まれる場合がある。また、(メタ)アクリル酸を原料として様々な化学品や工業品を製造するプロセスにおいても、(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスが排出され得る。これら(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスは、環境汚染防止の観点から高度に浄化処理することが要求されるとともに、製造コストを抑制する観点から処理コストの低減が要求される。
【0003】
(メタ)アクリル酸製造プロセスから排出される廃ガスの処理方法として、例えば特許文献1,2には、(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスを燃焼装置で燃焼したり、水酸化ナトリウム溶液で捕集する方法が開示されている。しかし、特許文献1,2には、廃ガス性状に応じてどのような廃ガス処理を行えばよいかという点については、具体的に示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−222322号公報
【特許文献2】特開2004−108692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、廃ガス性状に応じて効率的に廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去することができる廃ガスの処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、種々検討の結果、(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスの処理では、廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和に応じて廃ガスの処理方法を適切に選択することで、廃ガス中の(メタ)アクリル酸を効率的に除去できることを見出した。すなわち、本発明の廃ガスの処理方法は、(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスの処理方法であって、廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和が1.0容量%以上の場合は、廃ガスを水と接触させることにより廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去し、廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和が1.0容量%未満の場合は、廃ガスをアルカリ溶液と接触させることにより廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去するところに特徴を有する。
【0007】
本発明の廃ガスの処理方法によれば、廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和に応じて廃ガスの処理方法を変えることにより、効率的に廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去することができる。すなわち、廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和(酸分濃度)が1.0容量%以上の場合は、廃ガスを水と接触させることにより、廃ガス中の(メタ)アクリル酸を効率的に水に捕集させることができる。廃ガス中の酸分濃度が高ければ、捕集液として水を用いて、効率的に廃ガス中の酸分を捕集することができる。水で捕集して回収した(メタ)アクリル酸は、(メタ)アクリル酸水溶液として(メタ)アクリル酸製造プロセス等で再利用することが可能となる。廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和が1.0容量%未満の場合は、廃ガスをアルカリ溶液と接触させ、廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去する。捕集液としてアルカリ溶液を用いることにより、高い効率で廃ガスから(メタ)アクリル酸を除去することができる。また、廃ガス中の酸分濃度が低いため、捕集液としてアルカリ溶液を用いても、炭酸塩が形成することにより発生する固形廃棄物も少量に抑えられる。
【0008】
廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和が1.0容量%以上の場合は、廃ガスを水と接触させた後に燃焼することが好ましい。廃ガスの酸分濃度が高い場合は、このように処理することで効率的に(メタ)アクリル酸を除去することができる。
【0009】
本発明は、本発明の廃ガスの処理方法で廃ガスを水と接触させることにより得られた(メタ)アクリル酸水溶液を、(メタ)アクリル酸の製造で用いられる重合防止剤溶液の溶媒に用いる(メタ)アクリル酸の製造方法も提供する。また、(メタ)アクリル酸の製造方法が、(メタ)アクリル酸製造原料から(メタ)アクリル酸含有ガスを得る(メタ)アクリル酸生成工程と、(メタ)アクリル酸含有ガスを捕集塔に導入して粗(メタ)アクリル酸を得る捕集工程とを有し、前記(メタ)アクリル酸水溶液を溶媒に用いた重合防止剤溶液を捕集塔に供給することが好ましい。廃ガス処理により得られた(メタ)アクリル酸水溶液は、このように再利用することで、(メタ)アクリル酸製造プロセスにおいて効率的に(メタ)アクリル酸を回収することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の廃ガスの処理方法によれば、廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和に応じて廃ガスの処理方法を変えることにより、効率的に廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスの処理方法に関するものである。(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスは、(メタ)アクリル酸の製造プロセスや(メタ)アクリル酸の利用設備等から排出され、(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスはその濃度を低減させて大気放出することが求められる。(メタ)アクリル酸製造プロセスから排出される廃ガスとしては、例えば、捕集塔や蒸留塔から排出される残ガス等が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸の製造プロセスや(メタ)アクリル酸の利用設備ではタンク等の貯留設備が備えられ、そのような貯留設備からも(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスが排出され得る。さらに、例えば(メタ)アクリル酸を原料として重合体を製造するプロセスでは、重合反応器、反応液の濃縮設備、重合体の乾燥設備等からも、(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスが排出され得る。
【0012】
(メタ)アクリル酸は水との混和性が高いため、(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスは、水を含む捕集液と接触させることにより、(メタ)アクリル酸を捕集液に捕集させて、廃ガス中から(メタ)アクリル酸を除去することができる。また、(メタ)アクリル酸は酸であるため、水を含む捕集液がアルカリ性であれば、廃ガス中から(メタ)アクリル酸をより効率的に除去することができ、また捕集液の供給量を減らすことが可能となる。
【0013】
廃ガスには(メタ)アクリル酸以外の酸として二酸化炭素が含まれる場合がある。例えば、(メタ)アクリル酸製造プロセスから排出される廃ガスには、有機物の燃焼により発生した二酸化炭素が混入する場合がある。またそれ以外にも、廃ガスに空気が混入することにより二酸化炭素が含まれるようになる場合もある。廃ガスに含まれる二酸化炭素は基本的に除去が求められるものではないが、捕集液としてアルカリ溶液を用い、このアルカリ溶液に二酸化炭素を含有する廃ガスを接触させて捕集する場合は、捕集液中のアルカリ成分が二酸化炭素によって消費され、(メタ)アクリル酸の除去効率が低下する。また、二酸化炭素がアルカリ成分と反応して塩を形成し、固形廃棄物が新たに発生し、その処分が問題となる場合がある。
【0014】
つまり、(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスを捕集液と接触させて、廃ガスに含まれる(メタ)アクリル酸を除去させる場合、捕集液としてアルカリ溶液を用いれば(メタ)アクリル酸の除去効率を高めることができるが、廃ガスに二酸化炭素が含まれていると、二酸化炭素が捕集液のアルカリ成分と反応して炭酸塩を形成し固形廃棄物の発生に繋がる。特に廃ガス中の二酸化炭素濃度が高い場合は、捕集液としてアルカリ溶液を用いることは、あまり好ましくない。さらに、捕集液として水を用いた場合は、水で捕集した(メタ)アクリル酸は(メタ)アクリル酸製造プロセスで再利用することが容易であるのに対し、捕集液としてアルカリ溶液を用いた場合は、アルカリ溶液で捕集した(メタ)アクリル酸は、アルカリ性であるが故にそのままでは(メタ)アクリル酸製造プロセスで再利用することが難しい。
【0015】
以上のように、(メタ)アクリル酸製造プロセスから排出される廃ガスは、捕集液と接触させることによって廃ガスに含まれる(メタ)アクリル酸を除去することができるが、より効率的に低コストで廃ガスを処理するためには、廃ガス性状に合わせて捕集液の種類を適切に選択することが好ましい。そこで本発明の廃ガスの処理方法では、廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和に応じて廃ガスの処理方法を変え、それにより効率的に廃ガス中の(メタ)アクリル酸の除去を行うようにしている。すなわち本発明の廃ガスの処理方法は、(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスの処理方法であって、廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和が1.0容量%以上の場合は、水と接触させることにより廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去し、廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和が1.0容量%未満の場合は、アルカリ溶液と接触させることにより廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去するものである。
【0016】
処理対象となる廃ガスには、少なくとも(メタ)アクリル酸が含まれ、二酸化炭素は含まれなくてもよい。廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度の上限および下限は特に限定されないが、例えば、廃ガスの爆発や燃焼が起こりにくくなり、廃ガスの取り扱い性が高まる点から、廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度は3容量%以下であることが好ましく、2容量%以下であることがより好ましい。
【0017】
廃ガスには、(メタ)アクリル酸と二酸化炭素以外の化合物が含まれていてもよい。廃ガスには、例えば、空気が混入することにより窒素や酸素が含まれ得る。また、(メタ)アクリル酸製造プロセスから排出される廃ガスには、プロピオン酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸等の有機酸が含まれる場合もある。しかし、(メタ)アクリル酸製造プロセスから排出される廃ガスにこれらの有機酸が含まれる場合でも、その量は一般に(メタ)アクリル酸や二酸化炭素の量よりも少ない。従って、廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度は、廃ガス中に含まれる(メタ)アクリル酸以外の有機酸(例えば、プロピオン酸、酢酸、ギ酸およびマレイン酸)の各濃度より高いことが好ましく、各有機酸の総和濃度よりも高くなることがより好ましい。
【0018】
廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和が1.0容量%以上の場合は、捕集液として水を使用し、廃ガスを水と接触させ、廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去する。廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和が1.0容量%以上であれば、廃ガスを水と接触させることにより、廃ガス中の(メタ)アクリル酸を効率的に水に捕集させることができる。しかも、廃ガス中の酸分濃度が高いため、捕集液が水であっても、効率的に廃ガス中の酸分を捕集することができる。水で捕集して回収した(メタ)アクリル酸は、(メタ)アクリル酸水溶液として(メタ)アクリル酸製造プロセス等で再利用することが可能となる。なお、本発明において、「酸分」とは、(メタ)アクリル酸と二酸化炭素の総称として用いる。
【0019】
また、廃ガス中の二酸化炭素濃度が高い場合は、捕集液としてアルカリ溶液を用いると、廃ガス中の二酸化炭素が捕集液のアルカリ成分と反応して炭酸塩を形成し、多量の固形廃棄物が発生しやすくなる。さらに、捕集液としてアルカリ溶液を用いる場合は、使用済みのアルカリ溶液の処理に多大な労力や処理コストを要することとなる。従ってこれらの点からも、廃ガス中の酸分濃度が高い場合は捕集液として水を用いることが好ましい。
【0020】
捕集液として用いられる水は、例えば、水道水や工業用水を用いればよく、地下水や、(メタ)アクリル酸製造プロセスからの廃水の処理水(再生水)を用いてもよい。従って、捕集液として供給される水のpHは、例えば水道水質基準に規定される範囲であればよく、pHが5.8以上8.6以下であればよい。
【0021】
廃ガスを捕集液と接触させる方法としては、例えば、接触槽内に貯められた捕集液中に廃ガスを導入して、捕集液に廃ガス中の酸分を捕集させてもよく、洗浄塔に廃ガスを下部から導入するとともに、捕集液を洗浄塔の上部から導入することにより、洗浄塔内を上昇する廃ガスに捕集液を接触させて、捕集液に廃ガス中の酸分を捕集させてもよい。洗浄塔を用いて廃ガス中の酸分を捕集する場合は、洗浄塔で捕集液を循環利用してもよい。すなわち、洗浄塔の上部から供給した捕集液を洗浄塔内で廃ガスと接触させた後、捕集液を洗浄塔の下部から抜き出し、これを再び洗浄塔の上部から供給してもよい。
【0022】
捕集液に廃ガス中の酸分を捕集させると、捕集液のpHが低下して、特に接触槽を用いる場合や洗浄塔を用いて捕集液を循環利用する場合などは、捕集液による酸分の捕集効率が徐々に低下する。従って、捕集液として水を用いる場合、廃ガスはpH5.8以上の捕集液と接触させることが好ましく、pH6.0以上がより好ましく、pH6.2以上がさらに好ましい。つまり、接触槽や洗浄塔内の捕集液(すなわち接触槽や洗浄塔から抜き出される捕集液)は、このようなpHに維持されることが好ましい。廃ガスと接触させる捕集液のpHの上限は、接触槽や洗浄塔に新たに供給される捕集液(すなわち水)のpHの上限値以下であればよく、pH8.6以下であればよい。
【0023】
捕集液である水の接触槽や洗浄塔への供給量は、廃ガスからの酸分除去効率や、接触槽や洗浄塔から得られる酸分を捕集した捕集液、すなわち(メタ)アクリル酸水溶液の(メタ)アクリル酸濃度に応じて、適宜設定すればよい。例えば、廃ガスからの酸分除去率を高めるためには、捕集液の供給量を高めればよいが、接触槽や洗浄塔から排出される捕集液の量が増えると、その処理が問題となる場合がある。また、捕集液の供給量を高めると、接触槽や洗浄塔から排出される捕集液の(メタ)アクリル酸濃度が低下して、(メタ)アクリル酸水溶液の再利用による(メタ)アクリル酸の回収が困難となる場合がある。つまり、(メタ)アクリル酸水溶液を(メタ)アクリル酸製造プロセスで再利用する場合、(メタ)アクリル酸水溶液中の(メタ)アクリル酸を製造プロセスに戻すことにより回収することが可能となるが、(メタ)アクリル酸水溶液の(メタ)アクリル酸濃度が低くなると(メタ)アクリル酸の回収率が低下する。従って、捕集液は、(メタ)アクリル酸の高い捕集効率を実現できる範囲で、その供給量をできるだけ減らすことが好ましい。
【0024】
(メタ)アクリル酸を捕集することにより得られた(メタ)アクリル酸水溶液は、(メタ)アクリル酸濃度が1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸水溶液の(メタ)アクリル酸濃度が1質量%以上であれば、(メタ)アクリル酸水溶液を(メタ)アクリル酸製造プロセス等で有効利用しやすくなる。(メタ)アクリル酸水溶液の(メタ)アクリル酸濃度の上限は特に限定されない。
【0025】
水と接触させた後の廃ガスは、十分に(メタ)アクリル酸が除去されていればそのまま大気放出すればよいが、例えば大気放出基準を超える(メタ)アクリル酸が含まれる場合等は、さらに処理を施すことが必要となる。特に、廃ガスを捕集液である水と接触させる際、捕集液の供給量を減らして、得られる(メタ)アクリル酸水溶液の(メタ)アクリル酸濃度を高めるようにする場合は、水と接触させた後の廃ガスにはいくらかの(メタ)アクリル酸が残存しやすくなる。
【0026】
従って、このような場合は、廃ガスを水と接触させた後に燃焼することが好ましい。詳細には、廃ガスを水と接触させた後に、水と接触させた廃ガスを燃焼することにより、廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去することが好ましい。また、廃ガスを水と接触させた後に、続いてアルカリ溶液と接触させることにより、廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去してもよい。捕集液としてアルカリ溶液を用いれば、より効率的に廃ガスから(メタ)アクリル酸を除去することができるためである。
【0027】
なお、(メタ)アクリル酸と二酸化炭素を含有する廃ガスを水と接触させた場合、(メタ)アクリル酸は水に比較的溶解(混和)しやすいのに対し、廃ガスに含まれる二酸化炭素は少量しか水に溶けない。従って、水と接触させた後の廃ガス中には、(メタ)アクリル酸が少量しか含まれず、二酸化炭素が比較的多量に含まれる傾向となる。そのような廃ガスを処理する場合、アルカリ溶液と接触させると、アルカリ溶液は、(メタ)アクリル酸の捕集よりも二酸化炭素との反応に消費されやすくなり、廃ガス処理として非効率なものとなる。従って、水と接触させた後の廃ガスは、燃焼により廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去することが効率的となる。つまり、水と接触させた後の廃ガスは、燃焼することにより廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去することが好ましい。
【0028】
廃ガスの燃焼は公知の燃焼装置を用いて行えばよく、廃ガスを触媒燃焼させてもよい。水と接触させた後の廃ガスはそれ単独で燃焼させてもよいが、廃ガス中に(メタ)アクリル酸等の有機物が少量しか含まれず、自燃させることが困難な場合は、例えば、(メタ)アクリル酸製造プロセスから排出される廃油とともに燃焼させることが好ましい。(メタ)アクリル酸製造プロセスから排出される廃油としては、(メタ)アクリル酸を蒸留精製する際に出てくる高沸残渣や低沸留出物等が挙げられる。高沸残渣や低沸留出物とはそれぞれ、(メタ)アクリル酸よりも沸点が高い物質、沸点が低い物質を意味する。
【0029】
次に、廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和が1.0容量%未満の場合の廃ガスの処理方法について説明する。廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度の総和が1.0容量%未満の場合は、捕集液としてアルカリ溶液を使用し、廃ガスをアルカリ溶液と接触させ、廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去する。廃ガス中の酸分濃度が低い場合は、捕集液として水を用いると廃ガスから(メタ)アクリル酸を効率的に除去することが難しくなるため、より効率的に廃ガスから(メタ)アクリル酸を除去するために、廃ガスをアルカリ溶液と接触させることにより、廃ガス中の(メタ)アクリル酸を除去する。また、廃ガス中の酸分濃度が低いため、捕集液としてアルカリ溶液を用いても、炭酸塩が形成することにより発生する固形廃棄物も少量に抑えられる。
【0030】
捕集液として用いられるアルカリ溶液としては、アルカリ性を示す水溶液であればよく、水への溶解性や入手容易性から、アルカリ金属水酸化物の水溶液を用いることが好ましく、水酸化ナトリウム水溶液を用いることがより好ましい。
【0031】
捕集液として供給されるアルカリ溶液のpHは、(メタ)アクリル酸の捕集効率を高める点から、8.0以上が好ましく、9.0以上がより好ましく、10.0以上がさらに好ましい。捕集液として供給されるアルカリ溶液のpHの上限は特に定められず、例えばアルカリ溶液として水酸化ナトリウムを用いる場合は、市販されている溶液状の水酸化ナトリウムを原液のまま用いてもよく、希釈して用いてもよい。なお、市販されている水酸化ナトリウム溶液は、最大で48質量%の水酸化ナトリウム濃度を有する。また、捕集液の量を増やして廃ガスと捕集液との接触効率を高める点から、水酸化ナトリウムは水で希釈または溶解して供給することが好ましい。
【0032】
廃ガスをアルカリ溶液と接触させる方法は、捕集液として水を用いる場合と同様の方法を採用できる。すなわち、接触槽や洗浄塔を用いて、廃ガスをアルカリ溶液と接触させればよい。このとき、廃ガスはpH8.0以上の捕集液(アルカリ溶液)と接触させることが好ましく、pH9.0以上がより好ましく、pH10.0以上がさらに好ましい。接触槽や洗浄塔内の捕集液(すなわち接触槽や洗浄塔から抜き出される捕集液)は、このようなpHに維持されることが好ましく、その結果、廃ガス中の(メタ)アクリル酸を高い捕集率で捕集できるようになる。廃ガスと接触させる捕集液のpHの上限は特に限定されないが、接触槽や洗浄塔およびその周辺設備の材料仕様を下げて設備費を安く抑える点から、前記pHは14.0以下が好ましく、pH13.0以下がより好ましく、pH12.5以下がさらに好ましい。
【0033】
捕集液としてアルカリ溶液を用いる場合、アルカリ溶液の接触槽や洗浄塔への供給量は、廃ガス中の酸分が十分除去され、処理後の廃ガスを大気放出できるように、適宜設定することが好ましい。具体的には、アルカリ成分の供給量としては、廃ガス中の酸分の中和に必要な量を供給することが好ましい。また、アルカリ溶液の供給量としては、廃ガスとの接触効率が十分確保されるように供給量を調整することが好ましい。
【0034】
アルカリ溶液と接触させた廃ガスは、そのまま大気放出することが好ましい。捕集液としてアルカリ溶液を用いれば、廃ガス中の酸分を高度に除去することが可能となるため、廃ガスは、アルカリ溶液と接触させることにより、大気放出可能な程度に(メタ)アクリル酸が除去されることが好ましい。このようにすることで、(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスの処理を簡便に行うことができる。
【0035】
なお本発明において、廃ガス中の(メタ)アクリル酸濃度と二酸化炭素濃度はガスクロマトグラフィーにより分析した値を用いる。(メタ)アクリル酸濃度は水素炎イオン化検出器(FID)を用いて測定し、二酸化炭素濃度は熱伝導度検出器(TCD)を用いて測定する。
【0036】
以上のように、本発明の廃ガスの処理方法によれば、廃ガス中の酸分濃度に応じて捕集液の種類を適切に選択することにより、低コストで効率的に廃ガスから(メタ)アクリル酸を除去することができる。そして、捕集液として水を用いた場合は、(メタ)アクリル酸を捕集した捕集液、すなわち(メタ)アクリル酸水溶液を、(メタ)アクリル酸製造プロセスで有効利用することができる。以下に、(メタ)アクリル酸水溶液を(メタ)アクリル酸製造プロセスで利用する場合の利用例について説明する。
【0037】
(メタ)アクリル酸製造プロセスとしては、(メタ)アクリル酸製造原料から(メタ)アクリル酸含有ガスを得る(メタ)アクリル酸生成工程と、前記(メタ)アクリル酸含有ガスを捕集塔に導入して粗(メタ)アクリル酸を得る捕集工程とを有していることが好ましい。さらに、捕集工程で得られた粗(メタ)アクリル酸は、精製(メタ)アクリル酸を得る精製工程に供されることが好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル酸生成工程で用いられる(メタ)アクリル酸製造原料としては、反応により(メタ)アクリル酸を生成するものであれば特に限定されず、例えば、プロパン、プロピレン、(メタ)アクロレイン、イソブチレン等が挙げられる。アクリル酸は、例えば、プロパン、プロピレンまたはアクロレインを1段で酸化させたり、プロパンやプロピレンをアクロレインを経由して2段で酸化させることにより得ることができる。アクロレインは、プロパンやプロピレンを原料として、これを酸化させることにより得られるものに限定されず、例えば、グリセリンを原料として、これを脱水させることにより得られるものであってもよい。メタクリル酸は、例えば、イソブチレンやメタクロレインを1段で酸化させたり、イソブチレンをメタクロレインを経由して2段で酸化させることにより得ることができる。これらの酸化反応や脱水反応は、触媒の存在下で行うことが好ましく、(メタ)アクリル酸製造用の酸化触媒や脱水触媒は公知の触媒を使用すればよい。
【0039】
捕集工程では、(メタ)アクリル酸生成工程で得られた(メタ)アクリル酸含有ガスを捕集塔に導入して、捕集溶剤と接触させることにより粗(メタ)アクリル酸を得る。捕集塔に導入された(メタ)アクリル酸含有ガスは、捕集溶剤と接触させることにより捕集溶剤に捕集される。(メタ)アクリル酸含有ガスを捕集する捕集溶剤としては、水、(メタ)アクリル酸含有水、または高沸点溶剤(ジフェニルエーテルやビフェニル等)等を用いることができる。捕集塔の上部(好ましくは頂部)からは、(メタ)アクリル酸含有ガスが捕集溶剤と接触して(メタ)アクリル酸濃度が低減された残ガスが排出される。粗(メタ)アクリル酸は捕集塔の下部(好ましくは底部)から抜き出され、一部を捕集塔に戻して循環させてもよい。本発明の廃ガスの処理方法で得られる(メタ)アクリル酸水溶液は、捕集塔に、例えば捕集溶剤として導入することができる。
【0040】
捕集塔には、(メタ)アクリル酸の重合反応が起こるのを防止するための重合防止剤が供給されることが好ましい。重合防止剤としては、従来公知の重合防止剤を用いることができ、例えば、ハイドロキノン、メトキノン(p−メトキシフェノール)等のキノン類;フェノチアジン、ビス−(α−メチルベンジル)フェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、ビス−(α−ジメチルベンジル)フェノチアジン等のフェノチアジン類;2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル、4,4’,4”−トリス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル)フォスファイト等のN−オキシル化合物;ジアルキルジチオカルバミン酸銅、酢酸銅、ナフテン酸銅、アクリル酸銅、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅等の銅塩化合物;ジアルキルジチオカルバミン酸マンガン、ジフェニルジチオカルバミン酸マンガン、ギ酸マンガン、酢酸マンガン、オクタン酸マンガン、ナフテン酸マンガン等のマンガン塩化合物;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンやその塩、p−ニトロソフェノール、N−ニトロソジフェニルアミンやその塩等のニトロソ化合物等が挙げられる。これらの重合防止剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合防止剤は溶液として捕集塔に供給されることが好ましい。
【0041】
本発明の廃ガスの処理方法で得られる(メタ)アクリル酸水溶液は重合防止剤溶液の溶媒に用いることが好ましい。廃ガスを水と接触させることにより得られる(メタ)アクリル酸水溶液は、廃ガス性状によって(メタ)アクリル酸濃度が変動する場合があるため、(メタ)アクリル酸水溶液を(メタ)アクリル酸製造プロセスで利用する場合は、(メタ)アクリル酸水溶液の性状の変動が(メタ)アクリル酸製造プロセスにできるだけ影響を及ぼさないような箇所で利用することが好ましい。従って、(メタ)アクリル酸水溶液を重合防止剤溶液の溶媒として用いれば、(メタ)アクリル酸水溶液の変動が重合防止剤溶液の調製タンクで緩和されるようになるとともに、(メタ)アクリル酸製造プロセスに加えられる(メタ)アクリル酸水溶液の量も少なく済む。その結果、(メタ)アクリル酸製造プロセスに及ぼす影響を最小限に抑えつつ、(メタ)アクリル酸水溶液中の(メタ)アクリル酸を(メタ)アクリル酸製造プロセスで回収することが可能となる。なお、性状変動が抑えられ、不純物の混入が少ない(メタ)アクリル酸水溶液が容易に得られる点から、本発明の廃ガスの処理方法で用いられる廃ガスは、(メタ)アクリル酸の貯留設備から排出される廃ガスであることが好ましい。
【0042】
精製工程では、晶析、蒸留、放散、抽出等の公知の精製手段を用いて、粗(メタ)アクリル酸を精製すればよい。本発明の廃ガスの処理方法で得られる(メタ)アクリル酸水溶液は、精製工程で用いてもよく、また精製工程で用いられる重合防止剤溶液の溶媒として用いてもよい。ただし、(メタ)アクリル酸水溶液の(メタ)アクリル酸濃度は一般にそれほど高くないため、(メタ)アクリル酸製造プロセスの前の方の工程で用いることが好ましく、そのような理由から、(メタ)アクリル酸水溶液は捕集工程で用いることが好ましい。また捕集工程で(メタ)アクリル酸水溶液を用いれば、捕集溶剤として用いる水の供給量を低減することができる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0044】
分析方法
廃ガスに含まれるアクリル酸と二酸化炭素は、ガスクロマトグラフィーにより濃度を測定した。アクリル酸濃度の分析は、SUSカラムにキャリアガスとしてヘリウムを35mL/分で流し、カラム温度75℃とし、水素炎イオン化検出器(FID)を用いて行った。二酸化炭素濃度の分析は、DB−WAXカラム(アジレント・テクノロジー社製)にキャリアガスとしてヘリウムを13mL/分で流し、カラム温度を50℃から230℃に昇温し、熱伝導度検出器(TCD)を用いて行った。
【0045】
処理例1
アクリル酸およびアクリル酸エステル製造プロセスから発生し、アクリル酸0.6容量%と二酸化炭素5.1容量%を含有する廃ガスを132Nm3/時で洗浄塔に導入した。洗浄塔には、捕集液として塔頂より水を1.2ton/日で供給し、塔底からアクリル酸含有溶液を得た。洗浄塔の塔頂から排出された廃ガスはアクリル酸を含有していたため、燃焼装置に導入し、燃焼処理を行った。11ヶ月連続稼動後に洗浄塔を点検した結果、洗浄塔内に析出物は見られなかった。
【0046】
処理例2
処理例1と同じ条件で廃ガスを洗浄塔に導入したが、洗浄塔に供給した捕集液を8質量%水酸化ナトリウム水溶液に変更した。この際、廃ガスは洗浄塔の塔頂から大気放出できる程度までアクリル酸を除去し、その結果、水酸化ナトリウム水溶液の供給量は7.68ton/日となり、大量の捕集液が必要となった。11ヶ月連続稼動後に洗浄塔を点検した結果、洗浄塔内に炭酸水素ナトリウムの析出が確認された。
【0047】
処理例3
アクリル酸およびアクリル酸エステル製造プロセスから発生し、アクリル酸0.6容量%と二酸化炭素1.2容量%を含有する廃ガスを128Nm3/時で洗浄塔に導入した。洗浄塔には、捕集液として塔頂より水を1.2ton/日で供給し、塔底からアクリル酸含有溶液を得た。洗浄塔の塔頂から排出された廃ガスはアクリル酸を含有していたため、燃焼装置に導入し、燃焼処理を行った。11ヶ月連続稼動後に洗浄塔を点検した結果、洗浄塔内に析出物は見られなかった。
【0048】
処理例4
処理例3と同じ条件で廃ガスを洗浄塔に導入したが、洗浄塔に供給した捕集液を8質量%水酸化ナトリウム水溶液に変更した。この際、廃ガスは洗浄塔の塔頂から大気放出できる程度までアクリル酸を除去し、その結果、水酸化ナトリウム水溶液の供給量は2.07ton/日となった。捕集液の供給量は処理例4の方が処理例3よりも多くなった。11ヶ月連続稼動後に洗浄塔を点検した結果、洗浄塔内に炭酸水素ナトリウムの析出が確認された。
【0049】
処理例5
アクリル酸およびアクリル酸エステル製造プロセスから発生し、アクリル酸0.6容量%と二酸化炭素0.2容量%を含有する廃ガスを126Nm3/時で洗浄塔に導入した。洗浄塔には、捕集液として塔頂より水を1.2ton/日で供給し、塔底からアクリル酸含有溶液を得た。洗浄塔の塔頂から排出された廃ガスはアクリル酸を含有していたため、燃焼装置に導入し、燃焼処理を行った。11ヶ月連続稼動後に洗浄塔を点検した結果、洗浄塔内に析出物は見られなかった。
【0050】
処理例6
処理例5と同じ条件で廃ガスを洗浄塔に導入したが、洗浄塔に供給した捕集液を8質量%水酸化ナトリウム水溶液に変更した。この際、廃ガスは洗浄塔の塔頂から大気放出できる程度までアクリル酸を除去し、その結果、水酸化ナトリウム水溶液の供給量は0.69ton/日となった。処理例6では処理例5よりも捕集液の供給量が少なくなった。11ヶ月連続稼動後に洗浄塔を点検しても、洗浄塔内に析出物は見られなかった。
【0051】
処理例7
アクリル酸およびアクリル酸エステル製造プロセスから発生し、アクリル酸0.6容量%を含有し二酸化炭素を含有しない廃ガスを126Nm3/時で洗浄塔に導入した。洗浄塔には、捕集液として塔頂より水を1.2ton/日で供給し、塔底からアクリル酸含有溶液を得た。洗浄塔の塔頂から排出された廃ガスはアクリル酸を含有していたため、燃焼装置に導入し、燃焼処理を行った。11ヶ月連続稼動後に洗浄塔を点検した結果、洗浄塔内に析出物は見られなかった。
【0052】
処理例8
処理例7と同じ条件で廃ガスを洗浄塔に導入したが、洗浄塔に供給した捕集液を8質量%水酸化ナトリウム水溶液に変更した。この際、廃ガスは洗浄塔の塔頂から大気放出できる程度までアクリル酸を除去し、その結果、水酸化ナトリウム水溶液の供給量は0.39ton/日となった。処理例8では処理例7よりも捕集液の供給量が少なくなった。11ヶ月連続稼動後に洗浄塔を点検しても、洗浄塔内に析出物は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、(メタ)アクリル酸製造プロセスや(メタ)アクリル酸の貯留設備や利用設備から排出され、(メタ)アクリル酸を含有する廃ガスの処理に用いることができる。