(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961526
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
F16B 19/00 20060101AFI20160719BHJP
F16B 5/04 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
F16B19/00 E
F16B5/04 B
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-235648(P2012-235648)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-84978(P2014-84978A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 睦
(72)【発明者】
【氏名】寺田 幸太
(72)【発明者】
【氏名】奥平 耕三
【審査官】
鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−106167(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0087656(US,A1)
【文献】
特開平07−147490(JP,A)
【文献】
特開2012−112533(JP,A)
【文献】
特開平04−337104(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第2314364(GB,A)
【文献】
特開2011−089538(JP,A)
【文献】
特開2009−144765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 19/00−19/14
F16B 5/00− 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材を装着可能な基部と、基部から支柱を介して形成された係止脚とから成るアンカー部とを備え、板状の取付部材に形成されている取付孔に係止脚を差し込んでいき、差し込んだ係止脚と基部との間で取付部材を係合させることで、基部に装着される被取付部材を取付部材に取り付け可能となっており、基部の内面側には、係合させた取付部材との間に生じるガタを防止するリブが線状に形成されているクリップであって、
リブは、基部の内面側の外側の縁に沿って斜め外方に張り出すように形成されており、
基部の内面側には、リブの内方を沿う格好を成す凹溝が形成されていることを特徴とするクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップに関し、詳しくは、基部に装着される被取付部材を取付部材に取り付け可能なクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の被取付部材(例えば、ワイヤーハーネスのコネクタ)を取付部材(例えば、車体パネル)に取り付け可能なクリップが既に知られている。ここで、下記特許文献1には、例えば、
図8〜9に示すように、スタビライザー310aを有する基部310と、基部310から支柱322を介して形成された一対の係止脚324、324とから成るアンカー部320とを備え、基部310に装着されるワイヤーハーネス302のコネクタ303を車体パネルPに取り付け可能なクリップ301が開示されている。このようにスタビライザー310aを備えていると、バリや塗装によって規定外の厚みを有する車体パネルP2にも対応させるためにアンカー部320に隙間を形成していても、規定の厚みを有する車体パネルP1に組み付けるときには、この隙間をスタビライザー310aが詰めることができる。したがって、いずれの車体パネルP1、P2(規定の厚みを有する車体パネルP1、バリや塗装によって規定外の厚みを有する車体パネルP2)であっても、組み付けたクリップ301のガタつきや異音を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−330016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、周辺部品との関係でクリップ301の組み付け箇所に高さ制限などがある場合(例えば、クリップ301の組み付け箇所が小スペースの場合)、
図10〜11に示すように、クリップ401の基部310にスタビライザー310aを備えることができなかった。その場合、
図11の一部拡大図に示すように、規定の厚みを有する車体パネルP1にクリップ401を組み付けるとき、アンカー部320に形成してある隙間Sを詰めることができないため、組み付けたクリップ401にガタつきや異音が生じるという問題が発生していた。この問題を解決するために、
図12に示すように、基部310の内面に線状のリブ318、318を形成したクリップ501が考えられた。しかしながら、この考えでは、バリや塗装によって規定外の厚みを有する車体パネルP2にクリップ501を組み付けるとき(
図13(A)、
図13(B)参照)、リブ318、318が車体パネルP2に干渉しても、基部310は底付いたままとなっている。したがって、車体パネルP2によってリブ318、318が押し潰される必要があるため(
図13(C)参照)、クリップ501を組み付けるための挿入荷重が大きくなっていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、規定の厚みだけでなくバリや塗装によって規定外の厚みを有する取付部材にクリップを組み付けるとき、組み付け箇所が小スペースであっても、大きな挿入荷重を必要とすることなく、取付部材に組み付けたクリップのガタつきや異音を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、被取付部材を装着可能な基部と、基部から支柱を介して形成された係止脚とから成るアンカー部とを備え、板状の取付部材に形成されている取付孔に係止脚を差し込んでいき、差し込んだ係止脚と基部との間で取付部材を係合させることで、基部に装着される被取付部材を取付部材に取り付け可能となっており、基部の内面側には、係合させた取付部材との間に生じるガタを防止するリブが線状に形成されているクリップであって、リブは、基部の内面側の外側の縁に沿って斜め外方に張り出すように形成されており、基部の内面側には、リブの内方を沿う格好を成す凹溝が形成されている。
この構成によれば、規定の厚みを有する取付部材にクリップを組み付けるとき、取付部材によってリブが押し潰されることがないため、クリップを組み付けるための挿入荷重が大きくなることがない。また、アンカー部に形成の隙間をリブが詰めるため、組み付けたクリップのガタつきや異音を防止できる。一方、バリや塗装によって規定外の厚みを有する取付部材にクリップを組み付けるとき、リブが取付部材に干渉しても、基部は底付くことなく両側が取付部材に対して反り返るように撓んでいく。このとき、リブは外方に張り出す格好となっているため、取付部材によってリブは外側に向けて押し倒される。したがって、取付部材によって基部の両側およびリブは押し潰されることがないため、クリップを組み付けるための挿入荷重が大きくなることがない。また、アンカー部に形成の隙間を復元力が作用した基部の両側およびリブが詰めるため、組み付けたクリップのガタつきや異音を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】
図1のクリップを規定外の厚みを有する車体パネルに対する組み付けを示す縦断面図であり、(A)は、組み付け前の状態を示しており、(B)は、組み付け途中の状態を示しており、(C)は、組み付け完了の状態を示している。
【
図8】第1の従来技術に係るクリップの正面図である。
【
図9】
図8のクリップを規定の厚みを有する車体パネルまたは規定外の厚みを有する車体パネルに対する組み付けた状態を示す図である。
【
図10】第2の従来技術に係るクリップの正面図である。
【
図11】
図10のクリップを規定の厚みを有する薄板に対する組み付けた状態を示す図である。
【
図12】第3の従来技術に係るクリップの正面図である。
【
図13】
図12のクリップを規定外の厚みを有する車体パネルに対する組み付けを示す縦断面図であり、(A)は、組み付け前の状態を示しており、(B)は、組み付け途中の状態を示しており、(C)は、組み付け完了の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜5を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、従来技術と同様に、「被取付部材」が「ワイヤーハーネス2のコネクタ3」であり、「取付部材」が「車体パネルP」である例を説明することとする。
【0009】
図1〜4に示すように、クリップ1は、主として、ワイヤーハーネス2のコネクタ3を差し込んで装着可能にプレート状に形成された基部10と、基部10から支柱22を介して形成された一対の係止脚24、24とから成るアンカー部20とから構成されている。この一対の係止脚24、24が、特許請求の範囲に記載の「係止脚」に相当する。なお、アンカー部20は、公知のものでよいため、以下に、基部10の詳細を説明していく。
【0010】
基部10の内面(基部10の表面のうち、アンカー部20に対して向かい合う面)には、3本の突起14(内側から順に、第1の突起14a、第2の突起14b、第3の突起14c)、14(内側から順に、第1の突起14a、第2の突起14b、第3の突起14c)が左右に対を成すように前後方向に沿って適宜の間隔を隔てて形成されている。この第3の突起14cには、その外側の縁に沿って斜め外方に張り出すリブ18が形成されている。
【0011】
このように3本の突起14(内側から順に、第1の突起14a、第2の突起14b、第3の突起14c)が適宜の間隔を隔てて形成されているため、第1の突起14aと第2の突起14bとの間および第2の突起14bと第3の突起14cとの間には、2本の凹溝16(内側から順に、第1の凹溝16a、第2の凹溝16b)が形成されることとなる。なお、この第2の凹溝16bが、特許請求の範囲に記載の「凹溝」に相当する。基部10は、このように構成されている。
【0012】
次に、
図5を参照して、車体パネルP2に対するクリップ1の組み付け作業を説明していく。
図5(A)に示す状態から、作業者は、クリップ1の一対の係止脚24、24を車体パネルP2の取付孔32に組み付けていく(挿し込んでいく)作業を行う。すると、一対の係止脚24、24は、互いが近づくように撓んでいく。さらに、この挿し込んでいく作業を行うと、一対の係止脚24、24の各係合突起24a、24aが車体パネルP2の取付孔32を乗り越えるため、第3の突起14c、14cのリブ18、18が車体パネルP2に干渉していく。
【0013】
すると、基部10の両側(リブ18、18が形成されている両側)には第2の溝16b、16bが形成されているため、基部10は底付くことなく両側が車体パネルP2に対して反り返るように撓んでいく(
図5(B)参照)。この
図5(B)の一部拡大図において、基部10が想像線で示す状態から実線で示す状態へと撓んでいく。このとき、リブ18は外方に張り出す格好となっているため、車体パネルP2によってリブ18は外側に向けて押し倒される。
【0014】
やがて、一対の係止脚24、24の各係合クビレ24b、24bが車体パネルP2の取付孔32の縁に引っ掛かる。すると、作業者は、この引っ掛かりの節度感(引っ掛かり感)を得ることができるため、クリップ1の組み付けが完了したと判断できる。したがって、作業者は、この組み付け作業(一対の係止脚24、24を車体パネルP2の取付孔32に挿し込んでいく作業)を終えることができる。
【0015】
なお、この組み付け作業を終えると、
図5(C)に示すように、基部10の両側は撓み前の状態に戻るように、車体パネルP2に対して復元力を作用させている。これと同様に、リブ18は押し倒される前の状態に戻るように、車体パネルP2に対して復元力を作用させている。これら復元力が作用した基部10の両側およびリブ18、18により、アンカー部20に形成してある隙間を詰めることができるため、従来技術と同様に、バリや塗装によって規定外の厚みを有する車体パネルP2であっても、組み付けたクリップ1のガタつきや異音を防止できる。
【0016】
もちろん、バリや塗装によって規定外の厚みを有する車体パネルP2にクリップ1を組み付けるのでなく、規定の厚みを有する車体パネルP1にクリップ1を組み付けるときでも、アンカー部20に形成の隙間をリブ18、18が詰めるため、組み付けたクリップ1のガタつきや異音を防止できる。
【0017】
本発明の実施例に係るクリップ1は、上述したように構成されている。この構成によれば、左右の第3の突起14c、14cには、その外側の縁に沿って斜め外方に張り出すリブ18がそれぞれ形成されている。また、左右の第2の突起14bと第3の突起14cとの間には、第2の凹溝16bがそれぞれ形成されている。そのため、規定の厚みを有する車体パネルP1にクリップ1を組み付けるとき、車体パネルP1によってリブ18、18が押し潰されることがないため、クリップ1を組み付けるための挿入荷重が大きくなることがない。また、アンカー部20に形成の隙間をリブ18、18が詰めるため、組み付けたクリップ1のガタつきや異音を防止できる。一方、バリや塗装によって規定外の厚みを有する車体パネルP2にクリップ1を組み付けるとき、第3の突起14c、14cのリブ18、18が車体パネルP2に干渉しても、基部10は底付くことなく両側が車体パネルP2に対して反り返るように撓んでいく(
図5(B)参照)。このとき、リブ18は外方に張り出す格好となっているため、車体パネルP2によってリブ18は外側に向けて押し倒される。したがって、車体パネルP2によって基部10の両側およびリブ18、18は押し潰されることがないため、クリップ1を組み付けるための挿入荷重が大きくなることがない。また、アンカー部20に形成の隙間を復元力が作用した基部10の両側およびリブ18、18が詰めるため、組み付けたクリップ1のガタつきや異音を防止できる。
【0018】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、基部10の内面に3本の突起14(第1の突起14a、第2の突起14b、第3の突起14c)が形成され、これら3本の突起14のうち、第2の突起14bと第3の突起14cとによって第2の凹溝16bが形成される形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、基部10の内面そのものに第2の凹溝16bが形成される形態でも構わない。その場合、3本の突起14は不要となる。
【0019】
また、実施例では、「被取付部材」が「ワイヤーハーネス2のコネクタ3」であり、「取付部材」が「車体パネルP」である形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、これらは様々な形態が考えられる。
【0020】
また、実施例では、「係止脚」が「一対」である形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、「一本」であっても構わない。その場合、単に「係止脚が、一本」であっても構わないし、「係止脚が支柱22の先端に傘状」に形成されていても構わない。
【0021】
また、実施例では、第2の凹溝16bは、基部10の内面に形成される形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、第2の凹溝16bは、基部10の外面に形成されていても構わない(変形例1、
図6参照)。このとき、第3の突起14cを無くしても構わない(変形例2、
図7参照)。
【符号の説明】
【0022】
1 クリップ
2 ワイヤーハーネス
3 被取付部材(コネクタ)
10 基部
16 第2の凹溝
18 リブ
20 アンカー部
22 支柱
24 係止脚
P 取付部材(車体パネル)