【実施例】
【0024】
本実施例において説明する製造方法の製造対象となる金属微粒子担持触媒体は、シェル部が貴金属であり且つコア部が卑金属であるコアシェル構造の金属微粒子が、導電性材料である担体に担持された金属微粒子担持触媒体である。換言すれば、卑金属から構成される内核の外周側に貴金属から構成される外殻が一体的に形成された複数の金属微粒子が、導電性材料である担体に担持された金属微粒子担持触媒体である。
【0025】
前記シェル部は、触媒として作用する貴金属から構成されるものである。この貴金属としては、白金(Pt)が最適に用いられるが、白金族元素であるルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)も好適に用いられる。金(Au)、銀(Ag)等も好適に用いられる。更に、前記複数種類の金属の化合物或いは合金等が用いられてもよい。
【0026】
本実施例の金属微粒子担持触媒体の製造方法に用いられる前記シェル部の材料(原料)としては、前記複数種類の金属元素のうち少なくとも1種類の金属元素を含む化合物が好適に用いられる。この化合物としては、その還元により前記貴金属が単離されるものが用いられる。例えば、前記貴金属の塩又は錯体が好適に用いられる。すなわち、前記貴金属の塩として、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物や、水酸化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、カリウム複合酸化物、アンモニウム複合酸化物、ナトリウム複合酸化物等の複合酸化物等が好適に用いられる。前記貴金属の錯体として、アンミン錯体、シアノ錯体、ハロゲノ錯体、ヒドロキシ錯体等が好適に用いられる。例えば、前記貴金属として白金を用いる態様においては、前記シェル部の材料として、塩化白金六水和物(H
2[PtCl
6]・6H
2O)が好適に用いられるが、白金(IV)塩化物、白金(II)臭化物、白金(II)硫化物、テトラクロロ白金(II)酸カリウム、テトラクロロ白金(II)酸アンモニウム、テトラクロロ白金(IV)酸ナトリウム六水和物、白金(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナト錯体、白金(II)アセチルアセトナト錯体等も好適に用いられる。
【0027】
前記コア部は、前記シェル部を構成する金属とは異なる卑金属すなわち貴金属ではない金属から構成されるものである。この卑金属としては、少なくとも前記貴金属よりもイオン化傾向が高い金属が用いられ、鉄族元素である鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)が好適に用いられるが、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、タングステン(W)等も好適に用いられる。更に、前記複数種類の金属の化合物或いは合金等が用いられてもよい。前記コア部に用いられる前記卑金属は、必ずしも触媒として作用するものでなくともよい。
【0028】
本実施例の金属微粒子担持触媒体の製造方法に用いられる前記コア部の材料(原料)としては、前記複数種類の金属元素のうち少なくとも1種類の金属元素を含む化合物が好適に用いられる。この化合物としては、その還元により前記卑金属が単離されるものが用いられる。例えば、前記卑金属としてニッケルを用いる態様においては、前記コア部の材料として、塩化ニッケル六水和物(NiCl
2・6H
2O)が好適に用いられるが、硝酸ニッケル六水和物(Ni[NO
3]
2・6H
2O)、2−エチルヘキサン酸ニッケル(Ni(C
8H
15O
2))、硫酸ニッケル六水和物(NiSO
4・6H
2O)、過塩素酸ニッケル六水和物(Ni[ClO
4]
2・6H
2O)、酢酸ニッケル四水和物(Ni[CH
3COO]
2・4H
2O)等も好適に用いられる。
【0029】
前記担体は、導電性材料から構成されるものであり、導電性カーボンが最適に用いられるが、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(IV)(SnO
2)、酸化チタン(IV)(TiO
2)等やペロブスカイト系の導電性セラミックス等も好適に用いられる。例えば、前記担体として導電性カーボンを用いる態様においては、カーボンブラックが好適に用いられるが、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバ、グラフェン等の微小構造体も好適に用いられる。前記担体の材料として用いられる前記導電性材料の平均粒子径は、例えば10nm以上100nm以下の範囲内、好適には20nm以上70nm以下の範囲内、更に好適には30nm以上50nm以下の範囲内である。本実施例において、平均粒子径とは、例えば、電子顕微鏡観察に基づいて計測された平均粒子径を言う。すなわち、電子顕微鏡により撮影される写真内において、無作為に抽出される複数の粒子の粒子径の相加平均として求められる値である。或いは、電子顕微鏡により撮影される写真において、所定面積の範囲が複数抽出され、それらの範囲に含まれる複数の粒子の粒子径の相加平均として求められる値であってもよい。以下の説明において同じである。
【0030】
本実施例の金属微粒子担持触媒体の製造方法に用いられる反応液は、前記各材料(原料)を溶媒に溶かした溶液であってもよいし、各材料を分散媒に分散させた分散液(コロイド)であってもよい。この分散液は、ゾル、ゲルの何れの分散系であってもよい。前記反応液の溶媒(分散媒)は、水系溶媒(水系分散媒)であってもよいし、有機系溶媒(有機系分散媒)であってもよい。水系溶媒(水系分散媒)としては、水、或いは水を含む混合液(例えば、水とエタノールの混合液等)が好適に用いられる。有機系溶媒(有機系分散媒)としては、メタノールやエタノール等のアルコール類、アセトンやメチルケトン等のケトン類、或いは酢酸エチル等のエステル類等、比較的極性の高いものが好適に用いられる。
【0031】
本実施例の金属微粒子担持触媒体の製造方法に用いられる還元剤としては、ヒドラジン(N
2H
4)が好適に用いられるが、クエン酸三ナトリウム二水和物(Na
3C
6H
5O
7・2H
2O)、シュウ酸(C
2H
2O
4)、酢酸ナトリウム(NaCH
3COOH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)、チオ硫酸ナトリウム(Na
2S
2O
3)等も好適に用いられる。還元処理の際には、反応液(卑金属元素、貴金属元素を含む溶液乃至分散液)100質量部に対して前記還元剤を0.02質量部以上0.2質量部以下の範囲内、好適には0.05質量部以上0.1質量部以下の範囲内の割合で添加することが望ましい。更に好適には、前記還元処理の際に、前記反応液にpH調整剤を添加してpHを11以上13以下の範囲内、好適には12程度に調整することが望ましい。前記pH調整剤としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、アンモニア水、或いはその他の塩基性物質(アルカリ溶液)等が好適に用いられる。
【0032】
図1は、本発明の一実施例である金属微粒子担持触媒体の製造方法について説明する概略図であり、
図2は、本発明の金属微粒子担持触媒体の製造方法の一例の要部を説明する工程図である。
図2に示すように、本実施例の金属微粒子担持触媒体の製造方法は、第1混合工程P1、第2混合工程P2、第1熟成工程P3、第3混合工程P4、第2熟成工程P5を含んでいる。本実施例においては、
図2に示す第1混合工程P1、第2混合工程P2、及び第1熟成工程P3が、前記担体が存在する反応液中において前記卑金属元素を含む化合物を還元させることで、その卑金属の微粒子を生成するコア部生成工程に対応する。
図2に示す第3混合工程P4及び第2熟成工程P5が、前記担体及び前記コア部生成工程により生成された前記卑金属の微粒子が存在する反応液中において前記貴金属元素を含む化合物を還元させることで、前記卑金属の微粒子を前記コア部としてその表面に前記貴金属の前記シェル部を形成するシェル部形成工程に対応する。以下、
図2の工程図に示す各工程の具体的な実施例について、
図1を参照しつつ詳細に説明する。
【0033】
図1に示すように、前記コア部生成工程及びシェル部形成工程それぞれにおける少なくとも一部の工程は、合流混合器としてのマイクロリアクタ(microreactor)10a、10b、10c(以下、特に区別しない場合には単にマイクロリアクタ10という)を用いて行われる。このマイクロリアクタ10は、反応に係る液体を例えば幅1mm以下とされた狭隘な流路(マイクロチャネル)に流通させつつ、その流路内におけるマイクロスケールの空間(例えば、1辺あたり1mm以下の大きさの空間)において混合(化学反応)させる装置である。本実施例においては、前記マイクロリアクタ10aが前記第1混合工程P1に、前記マイクロリアクタ10bが前記第2混合工程P2に、前記マイクロリアクタ10cが前記第3混合工程P4にそれぞれ用いられる。これらのマイクロリアクタ10a、10b、10cは、各工程に対応してそれぞれ仕様の異なるものが用いられてもよいが、同一の仕様のものが用いられてもよい。
【0034】
図1に示すように、前記マイクロリアクタ10は、好適には、1対の上流側開口12a、12bから合流部16までを連通させる1対の上流側流路14a、14bと、それら1対の上流側流路14a、14bが連結され、各上流側流路14a、14bを流通する液体が合流させられる合流部16と、その合流部16から下流側開口20までを連通させる下流側流路18とを、備えたものであり、好適には、前記合流部16において前記1対の上流側流路14a、14bが例えば90°程度の角度で交わる所謂Y字マイクロリアクタであるが、前記1対の上流側流路14a、14bが180°で交わる所謂T字マイクロリアクタであってもよい。前記上流側流路14a、14b、及び下流側流路18の幅は、好適には、0.5mm以上2.0mm以下の範囲内であり、最適には1.0mm程度である。この流路の幅とは、例えば、流路の断面形状における最大幅であり、流路の断面が円形である場合にはその径寸法である。すなわち、換言すれば、前記上流側流路14a、14b、及び下流側流路18は、その断面積が0.25mm
2以上4.0mm
2以下の範囲内である。この流路の幅は、好適には、前記合流部16において若干狭くなっている。前記担体として粒径100nm程度の導電性カーボンを用いる場合、前記マイクロリアクタ10の流路内において10μm程度の凝集体を形成しているものと考えられ、その凝集体の大きさの50倍以上の流路幅がないと速やかに流れていかない。すなわち、前記マイクロリアクタ10の流路幅や接続されるチューブの内径が0.5mmよりも小さい場合、前記担体等が流路内で閉塞するおそれがある。一方、前記マイクロリアクタ10の流路幅や接続されるチューブの内径が2.0mmよりも大きい場合、より多くの流量を流さないと短時間で混合されないため、マイクロリアクタとしての効果が十分に得られない。
【0035】
前記マイクロリアクタ10の伝熱係数は、少なくとも1MW・m
-3・K
-1以上、好適には500MW・m
-3・K
-1程度とされたものであり、一般的なバッチ反応槽等と比べて高い熱伝導率を有している。前記マイクロリアクタ10は、好適には、ウォーターバス(water bath)中に設けられており、そのウォーターバスを介して装置の温度(特に、流路14a、14b、18内を流通する液体の温度)を略一定に制御できるように構成されている。前記マイクロリアクタ10を用いると、斯かるマイクロリアクタ10のみウォーターバスの中に入れることも可能であるため、溶液同士が混合される前記合流部16を余の部分に比べて高温として、核発生をより短時間で行うことも可能である。この合流部16における温度は適宜設定できる。
【0036】
前記第1混合工程P1では、前記担体及び前記卑金属元素を含む液体すなわちその卑金属の化合物の溶液(分散液)と、還元剤としての液体とが、前記マイクロリアクタ10aを介して混合される。すなわち、前記担体及び前記卑金属元素を含む液体を攪拌しつつ貯留する第1貯留槽22と、前記マイクロリアクタ10aの上流側開口12aとが、例えば内径0.8mmφ程度(以下の説明において同じ)のポリテトラフルオロエチレン製チューブ等により連結されており、前記第1貯留槽22に貯留された前記卑金属元素を含む液体が定量ポンプ24により前記マイクロリアクタ10aの上流側開口12aに規定の流速で流入させられる。前記還元剤としての液体を貯留する第2貯留槽26と、前記マイクロリアクタ10aの上流側開口12bとが、例えばポリテトラフルオロエチレン製チューブ等により連結されており、前記第2貯留槽26に貯留された前記還元剤としての液体が定量ポンプ28により前記マイクロリアクタ10aの上流側開口12bに規定の流速で流入させられる。
【0037】
前記第1貯留槽22においては、前記卑金属元素を含む液体と、前記担体とが、攪拌により溶媒乃至分散媒に混合されることで反応液が調整される。この反応液において、各材料の含有量は、前記触媒体の設計及び材料の種類等に応じて適宜定められるが、前記卑金属がニッケルであり、前記溶媒が水その他の水系溶媒(例えば、水とエタノールの混合溶媒)である場合には、前記ニッケルのモル濃度M(=mol/l、以下の説明において同じ)が、好適には、0.5M以上4M以下の範囲内、更に好適には、0.75M以上2M以下の範囲内、最適には、1M程度とされる。前記担体が導電性カーボンである場合には、前記反応液100質量部に対して導電性カーボンが、好適には、2質量部以上20質量部以下の範囲内、更に好適には、5質量部以上10質量部以下の範囲内の割合で混合される。前記反応液には、好適には、安定化剤としてクエン酸三ナトリウムニ水和物(Na
3C
6H
5O
7・2H
2O)等が添加される。
【0038】
前記マイクロリアクタ10aの前記上流側開口12aから前記上流側流路14aへ流入させられた前記担体及び前記卑金属元素を含む液体と、前記上流側開口12bから前記上流側流路14bへ流入させられた前記還元剤としての液体とは、前記合流部16において合流させられ、混合されて前記下流側流路18へ流入させられる。ここで、前記定量ポンプ24により制御される、前記上流側開口12aから前記上流側流路14aへ流通させられる前記担体及び前記卑金属元素を含む液体の流速は、好適には、5ml/min以上50ml/min以下の範囲内、最適には、10ml/min程度である。前記マイクロリアクタ10における、前記担体が存在する反応液の流速が5ml/minより小さい場合、前記担体が流路内で沈降してしまい閉塞するおそれがある一方、50ml/minより大きい場合、送流するための定量ポンプ24等も大きくする必要があり、或いは内圧が大きくなるため閉塞するおそれがある(以下の説明において同じ)。前記定量ポンプ28により制御される、前記上流側開口12bから前記上流側流路14bへ流通させられる前記還元剤としての液体の流速は、好適には、4ml/min程度である。すなわち、前記第1混合工程P1において、好適には、前記マイクロリアクタ10aにおける前記担体及び前記卑金属元素を含む液体の流速は、前記還元剤としての液体の流速よりも速いものである。好適には、前記第1混合工程P1において、前記マイクロリアクタ10aの温度はウォーターバスにより例えば70℃程度の温度に制御される。この第1混合工程P1は、好適には、前記担体としてのカーボンブラック及び前記卑金属元素を含む液体としての塩化ニッケル六水和物(NiCl
2・6H
2O)溶液と、還元剤としてのヒドラジン(N
2H
4)溶液とを、前記マイクロリアクタ10aを用いて混合させてヒドラジン錯体を得るものである。
【0039】
前記第2混合工程P2では、前記第1混合工程P1により混合された液体と、pH調整剤としてのアルカリ溶液とが、前記マイクロリアクタ10bを介して混合される。すなわち、前記マイクロリアクタ10aの下流側開口20と、前記マイクロリアクタ10bの上流側開口12aとが、例えばポリテトラフルオロエチレン製チューブ等により連結されており、前記マイクロリアクタ10aの下流側開口20から流出させられた反応液(担体及び卑金属元素を含む液体と還元剤としての液体とが混合された液体)が前記マイクロリアクタ10bの上流側開口12aに流入させられる。前記pH調整剤としてのアルカリ溶液を貯留する第3貯留槽30と、前記マイクロリアクタ10bの上流側開口12bとが、例えばポリテトラフルオロエチレン製チューブ等により連結されており、前記第3貯留槽30に貯留された前記pH調整剤としての液体が定量ポンプ32により前記マイクロリアクタ10bの上流側開口12bに規定の流速で流入させられる。
【0040】
前記マイクロリアクタ10bの前記上流側開口12aから前記上流側流路14aへ流入させられた前記反応液と、前記上流側開口12bから前記上流側流路14bへ流入させられた前記pH調整剤としての液体とは、前記合流部16において合流させられ、混合されて前記下流側流路18へ流入させられる。ここで、前記定量ポンプ32により制御される、前記上流側開口12bから前記上流側流路14bへ流通させられる前記pH調整剤としての液体の流速は、好適には、2ml/min程度である。好適には、前記第2混合工程P2において、前記マイクロリアクタ10bの温度はウォーターバスにより例えば70℃程度の温度に制御される。この第2混合工程P2において、前記下流側開口20から流出させられる反応液のpHが10程度に調整される。前記第2混合工程P2は、好適には、前記第1混合工程P1の結果得られたヒドラジン錯体と、アルカリ溶液としての水酸化ナトリウム(NaOH)溶液とを、前記マイクロリアクタ10bを用いて混合させてヒドラジン錯体のpHを調整するものである。
【0041】
前記第1熟成工程P3では、前記第2混合工程P2により混合された液体が、予め定められた温度にて規定時間熟成させられる。すなわち、前記マイクロリアクタ10bの下流側開口20と、第4貯留槽34とが、例えばポリテトラフルオロエチレン製チューブ等により連結されており、前記マイクロリアクタ10bの下流側開口20から流出させられた反応液(担体及び卑金属元素を含む液体、還元剤としての液体、及びpH調整剤としての液体が混合された液体)が前記第4貯留槽34へ流入させられ、その第4貯留槽34内に貯留される。前記第1熟成工程P3においては、前記第4貯留槽34内に貯留された反応液が攪拌させられつつ、予め定められた例えば40℃程度の温度にて、例えば2時間程度の規定時間熟成させられる。以上の第1混合工程P1、第2混合工程P2、及び第1熟成工程P3を経ることで、前記第4貯留槽34内に貯留された反応液中に、前記コア部としての前記卑金属の微粒子が生成される。
【0042】
前記第3混合工程P4では、前記第1熟成工程P3により熟成された、前記卑金属の微粒子が存在する反応液と、前記貴金属元素を含む液体とが、前記マイクロリアクタ10cを介して混合される。すなわち、前記第4貯留槽34と、前記マイクロリアクタ10cの上流側開口12aとが、例えばポリテトラフルオロエチレン製チューブ等により連結されており、前記第4貯留槽34に貯留された前記卑金属の微粒子が存在する反応液が定量ポンプ36により前記マイクロリアクタ10cの上流側開口12aに規定の流速で流入させられる。前記貴金属元素を含む液体を貯留する第5貯留槽38と、前記マイクロリアクタ10cの上流側開口12bとが、例えばポリテトラフルオロエチレン製チューブ等により連結されており、前記第5貯留槽38に貯留された前記貴金属元素を含むが定量ポンプ40により前記マイクロリアクタ10cの上流側開口12bに規定の流速で流入させられる。
【0043】
前記第5貯留槽38においては、前記貴金属元素を含む液体が調整される。この液体において、前記貴金属の含有量は、前記触媒体の設計及び材料の種類等に応じて適宜定められるが、前記貴金属が白金である場合には、その白金のモル濃度が、好適には、0.2M以上2M以下の範囲内、更に好適には、0.3M以上1M以下の範囲内、最適には、0.5M程度とされる。前記第3混合工程P4においては、前記第5貯留槽38に貯留された前記貴金属元素を含む液体と、前記第1熟成工程P3により熟成された、前記卑金属の微粒子が存在する反応液とが混合され、この反応液に含まれる還元剤により前記貴金属の還元が行われる。すなわち、本実施例においては、前記貴金属の還元処理に、前記第1混合工程P1等において添加された還元剤を利用するものであり、前記貴金属元素をその反応液に添加した後に、反応系を保持することによりその還元処理を実現するものであるが、この還元処理の際に、還元剤を新たに添加しても構わない。
【0044】
前記マイクロリアクタ10cの前記上流側開口12aから前記上流側流路14aへ流入させられた前記卑金属の微粒子が存在する反応液と、前記上流側開口12bから前記上流側流路14bへ流入させられた前記貴金属元素を含む液体とは、前記合流部16において合流させられ、混合されて前記下流側流路18へ流入させられる。ここで、前記定量ポンプ36により制御される、前記上流側開口12aから前記上流側流路14aへ流通させられる前記卑金属の微粒子が存在する反応液の流速は、好適には、5ml/min以上50ml/min以下の範囲内、最適には、10ml/min程度である。前記定量ポンプ40により制御される、前記上流側開口12bから前記上流側流路14bへ流通させられる前記貴金属元素を含む液体の流速は、好適には、5ml/min以上50ml/min以下の範囲内、最適には、10ml/min程度である。好適には、前記第3混合工程P4において、前記マイクロリアクタ10cの温度はウォーターバスにより例えば70℃程度の温度に制御される。この第3混合工程P4は、好適には、前記第1熟成工程P3の結果得られた卑金属としてのニッケルの微粒子が存在する反応液と、前記貴金属元素を含む液体としての塩化白金六水和物(H
2[PtCl
6]・6H
2O)溶液とを、前記マイクロリアクタ10cを用いて混合させるものである。
【0045】
前記第2熟成工程P5では、前記第3混合工程P4により混合された液体が、予め定められた温度にて規定時間熟成させられる。すなわち、前記マイクロリアクタ10cの下流側開口20と、第6貯留槽42とが、例えばポリテトラフルオロエチレン製チューブ等により連結されており、前記マイクロリアクタ10cの下流側開口20から流出させられた反応液(卑金属の微粒子が存在する反応液と貴金属元素を含む液体とが混合された液体)が前記第6貯留槽42へ流入させられ、その第6貯留槽42内に貯留される。前記第2熟成工程P5においては、前記第6貯留槽42内に貯留された反応液が攪拌させられつつ、予め定められた例えば40℃程度の温度にて、例えば1時間程度の規定時間熟成させられる。以上の第3混合工程P4及び第2熟成工程P5を経ることで、前記第6貯留槽42内に貯留された反応液中における卑金属の微粒子の周囲に貴金属であるシェル部すなわち典型的には2〜10原子層程度の貴金属層が形成される。このように、前記卑金属の微粒子の表面に前記貴金属であるシェル部が形成されると、そのシェル部が前記反応液中に存在する前記担体に付着する。すなわち、前記第6貯留槽42内に貯留された反応液中に、シェル部が貴金属であり且つコア部が卑金属であるコアシェル構造の金属微粒子が、導電性材料である担体に担持された金属微粒子担持触媒体が生成される。
【0046】
以上の本実施例の製造方法により製造される金属微粒子担持触媒体においては、前記担体に担持された前記金属微粒子の平均粒子径が、例えば、1nm以上20nm以下の範囲内、好適には、3nm以上15nm以下の範囲内、更に好適には、3nm以上10nm以下の範囲内とされる。前記コア部の平均粒子径が、好適には、2nm以上10nm以下の範囲内、最適には、4nm程度とされる。前記シェル部の厚みが、例えば、1原子層以上10原子層以下の範囲内、好適には、2原子層以上10原子層以下の範囲内、更に好適には、2原子層以上5原子層以下の範囲内とされる。
【0047】
続いて、本発明の金属微粒子担持触媒体の製造方法の効果を検証するため、本発明者等が行った評価試験について説明する。すなわち、以下に示す本実施例の方法で実施例試料としての金属微粒子担持触媒体を作成すると共に、その実施例試料と同一の材料(原料)から、共通の条件(温度条件及び時間条件等)で、マイクロリアクタを使用せず、よく知られたバッチ反応槽(ビーカ)内で比較例試料としての金属微粒子担持触媒体を作成した。実施例試料の製造方法、及び実施例試料及び比較例試料の触媒性能評価方法は以下の通りである。
【0048】
[実施例試料の製造方法]
1.8gの塩化ニッケル六水和物(NiCl
2・6H
2O)を35mlの純水に溶解させ、0.2Mの塩化ニッケル水溶液を調整した。その塩化ニッケル水溶液を、ホットスターラを用いて温度40℃、攪拌速度400rpmの環境で撹拌しながら、前記担体として、炭素質担体であるカーボンブラック(キャボット社製 Vulcan XC72R)を2.25g添加した。安定化剤としてクエン酸三ナトリウムニ水和物(Na
3C
6H
5O
7・2H
2O)を0.0024g添加して前記担体及び前記卑金属元素を含む液体(ニッケル原料溶液)とした。前記還元剤として、ヒドラジン一水和物30mlを用意した。前記pH調整剤として、9Mの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)20mlを用意した。
【0049】
試料の製造においては、流路幅1.0mmの前記マイクロリアクタ10aに内径0.8mmφのポリテトラフルオロエチレン製チューブを接続し、そのマイクロリアクタ10aに前記ニッケル原料溶液を流速10ml/minで、前記ヒドラジン一水和物を流速4ml/minで流入させて混合させた後、直ちに2台目の流路幅1.0mmの前記マイクロリアクタ10bを用いて前記混合液と前記水酸化ナトリウム水溶液を混合させた。すなわち、そのマイクロリアクタ10bに前記混合液を流入させると共に、前記水酸化ナトリウム水溶液を流速2ml/minで流入させて混合させ、pHが10になるように調整した。混合された溶液は、温度40℃、撹拌速度400rpmの環境下で撹拌しながら2時間、ニッケル微粒子が成長するよう熟成させた。熟成した後の反応液を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、後述する
図3に示すような平均粒子径約5nmのニッケル微粒子が生成していた。
【0050】
続いて、流路幅1.0mmの前記マイクロリアクタ10cに内径0.8mmφのポリテトラフルオロエチレン製チューブを接続し、前記熟成させたニッケル微粒子を含む混合溶液と、前記貴金属元素を含む液体として濃度10質量%の塩化白金六水和物(H
2[PtCl
6]・6H
2O)6.15gに0.5Mの水酸化ナトリウム50mlを添加した液体とを、それぞれ流速10ml/minで流入させて混合させた後、温度40℃に保ちながら1時間攪拌させることで塩化白金酸の還元処理を行った。熟成した後の反応液を透過型電子顕微鏡で観察したところ、後述する
図4〜
図6に示すように、前記ニッケル微粒子の周囲に白金の外殻が形成されていた。すなわち、シェル部が白金であり且つコア部がニッケルであるコアシェル構造の金属微粒子が、担体である導電性カーボンに担持された本実施例の金属微粒子担持触媒体が生成された。
【0051】
[触媒性能評価方法]
(A)触媒評価用電極の調整
触媒の電気化学的の特性評価に関して、以下の手順に従って前記実施例試料及び比較例試料それぞれに対応する試験電極を作製した。すなわち、触媒試料18.5mgを秤量し、2プロパノール6mlと超純水19mlの混合溶液を調整したものとを混合し、更に5%Nafion(登録商標)分散溶液100μl加えて混合した。続いて、前記混合液を氷水中で30分間超音波分散させ、得られた分散液を0.05μmのアルミナスラリにて平滑に研磨した0.196cm
2のグラッシ電極上に10μl滴下し、10℃で比較的長時間かけて乾燥させた後、60℃のクリーンオーブンで完全に乾燥させた。
【0052】
(B)電気化学測定法
電解セルには、ビーカ型三極式を使用し、対極には白金電極、参照極には埋め込み可逆水素電極(RHE)、作用極には前記触媒を塗布した回転電極を使用した。前記電解セルを用いた電気化学測定は、ポテンショスタット(北斗電工社製電気化学測定システム HZ5000)によって行った。測定は、電解液である0.1M過塩素酸溶液で満たした前記電解セルを25℃になるようにし、純度99.999%以上の窒素を吹き込んで前記電解液中の溶存酸素を除去した状態で行った。電位走査範囲は、0〜1.2V、走査速度は、0.05V/secで、前記試験電極表面の不純物を取り除くため、波形の変化がほぼ認められなくなる5サイクル前処理を行った後測定した。このときの前記試験電極の回転数は、400rpmである。
【0053】
(C)電気化学表面積評価
前記電気化学測定法により得られたサイクリックボルタンメトリ曲線のうち、電気二重層領域から水素発生電流の立ち上がりまでの範囲を水素吸着波とみなし、計測電流から電気二重層放電電流を差し引いた上で積分し、水素吸着電気量を求めた。そのようにして求められた水素吸着電気量Q
H(C)を次の(1)式によって比表面積A
S(m
2/g)に換算した。ここで、L
Pt(g)は、前記試験電極に用いられた触媒中の白金量である。
【0054】
A
S=Q
H/2.1・L
Pt ・・・(1)
【0055】
(D)酸素還元活性評価(カソード触媒評価)
次に、酸素還元活性評価について述べる。この酸素還元活性評価には、前記電気化学表面積評価をおこなった同じ電解セルを用いた。窒素ガスを止めて、開始電位0.2V、最終電位1.2V、走査速度0.01V/secで、電極の回転数を400、900、1600、2500、3600rpmと変化させてバックグランドを測定した。その後、純度99.999%の酸素を30分吹き込んで酸素飽和させた状態で、開始電位0.2V、最終電位1.2V、走査速度0.01V/secで、電極の回転数を400、900、1600、2500、3600rpmと変化させて分極曲線を測定した。電極表面で起こる電子移動が遅い酸素還元反応の場合、実験により得られた電流値の逆数は、活性化支配電流の逆数と拡散限界電流の逆数の和で表される。この物質移動(酸素拡散)補正には、よく知られたKoutecky-Levichプロットを用い、次の(2)式に示すように、直線の傾きから反応電子数nを、y切片から活性支配電流I
kを求め、0.9V時の白金質量あたりの活性及び白金表面積あたりの活性を算出した。(2)式及びその(2)式における各記号で表される値を以下に示す。
【0056】
1/I=1/I
k+1/I
L
=1/I
k+1/0.62nFAD
2/3C
∞ν
-1/6ω
1/2 ・・・(2)
I
k:活性支配電流
I
L:拡散限界電流
n:反応電子数
F:ファラデー定数(96,485C/mol)
A:電気化学表面積(前述で求めた値)
D:酸素の拡散係数(1.50×10
-5cm
2/s)
ν:0.1M過塩素酸の動粘度(9.84×10
-3cm
2/s)
C
∞:酸素溶解度(1.30×10
-6mol/cm
3)
ω:回転電極の角速度(rad/s)
【0057】
(E)白金耐溶解性評価(触媒耐久性評価)
前記試験電極の回転数を0rpmとし、純度99.999%以上の窒素を吹き込んで電解液中の溶存酸素を除去した状態で、0.6Vで3sec、1.0Vで3secの6secサイクルを100、200、500、1000、2000、5000、10000サイクル後の前記電気化学表面積及び酸素還元活性(白金質量活性)の経時変化を観測し、0サイクル時の値を100%とする維持率を算出した。
【0058】
[評価結果]
図8は、前記実施例試料(マイクロリアクタ合成試料)及び比較例試料(反応槽バッチ合成試料)それぞれに係る前記(D)の酸素還元活性評価(カソード触媒評価)及び前記(C)の電気化学表面積評価の評価結果を示す図であり、
図9は、前記(E)の白金耐溶解性評価(触媒耐久性評価)の評価結果を示す図である。
図8の評価結果に示すように、前記実施例試料は、前記比較例試料よりも酸素還元活性及び電気化学表面積共に優れていることがわかる。特に、電気化学表面積に関しては、前記比較例試料に比べて1.7倍程度も優れた特性を示していることがわかる。
図9の評価結果に示すように、前記実施例試料は、前記比較例試料に比べて白金耐溶解性に優れていることがわかり、その比較例試料に比べて2.5倍程度も優れた特性を示していることがわかる。この実施例試料の白金耐溶解性は、
図9に示すように、非コアシェル構造の白金微粒子を用いた触媒体と略同等である。
【0059】
図3〜
図6は、前記製造方法により製造された実施例試料の製造工程において撮影された透過型電子顕微鏡写真を例示する図であり、
図3は、反応液中に生成されたコア部としてのニッケル微粒子の性状を、
図4〜
図6は、反応液中に生成されたコア部としてのニッケル微粒子の周囲に白金のシェル部が形成された金属微粒子の性状をそれぞれ示す写真である。
図3に示すように、前記実施例試料の製造工程において反応液中に生成される複数のニッケル微粒子では、平均粒子径5nm程度の微粒子が凝集することなく、略均等に分散している。すなわち、単分散で平均粒子径3〜15nmといったニッケル微粒子が生成されている。更に、ニッケル微粒子が結晶質の性状を示していることが観察できる。これは、コア部生成工程における前記第1混合工程P1及び第2混合工程P2において、合流混合器としての前記マイクロリアクタ10を用いることで、前記卑金属元素を含む液体と還元剤としての液体とを瞬時に且つ均一に混合させた後、直ちにその混合液とpH調整剤としてのアルカリ溶液とを瞬時に且つ均一に混合させることができ、延いては還元反応時間を可及的に短縮できているためであると考えられる。
【0060】
図7は、本発明との比較のために、前記比較例試料の製造工程において前記ニッケル微粒子の表面に白金のシェル部が形成された金属微粒子の透過型電子顕微鏡写真を示すものである。この
図7に示す金属微粒子では、複数のニッケル微粒子が凝集した表面に白金のシェル部が形成されていることに加え、ニッケル微粒子の表面の一部がシェル部に覆われていないことが観察される。この
図7に示す電子顕微鏡写真に比べ、
図4及び
図6の電子顕微鏡写真に示すように、前記実施例試料の製造工程において前記ニッケル微粒子の表面に白金のシェル部が形成された金属微粒子では、ニッケル微粒子が凝集することなく、且つ比較的均一に(表面が露出することなく)シェル部により覆われていることがわかる。更に、
図5に示す透過型電子顕微鏡写真から、前記コアシェル構造の金属微粒子(
図5においては黒い点として観察される)がきれいに分散した状態で担体としてのカーボンに担持されていることがわかる。すなわち、単分散で平均粒子径3〜15nmといったコアシェル構造の金属微粒子が生成されている。これは、シェル部形成工程における前記第3混合工程P4において、合流混合器としての前記マイクロリアクタ10を用いることで、卑金属微粒子が存在する反応液と、シェル部分を構成するための前記貴金属元素を含む液体とが定常的に同じ確率で混合されることで、数原子層からなるシェル部が均一に前記卑金属微粒子を覆ったコアシェル構造の金属微粒子を生成することができるためと考えられる。このようにして得られた前記実施例試料におけるコアシェル構造の金属微粒子では、前述した
図8及び
図9の評価結果に示すように、前記比較例試料に比べて凝集が少なく、優れた単分散性及びシェル層の均一性を得ることができ、触媒活性に影響を与える電気化学的表面積の増加及び触媒活性の維持率を保持することができる。
【0061】
このように、本実施例によれば、前記担体が存在する反応液中において前記卑金属元素を含む化合物を還元させることで、その卑金属の微粒子を生成するコア部生成工程P1〜P3と、前記担体及びそのコア部生成工程P1〜P3により生成された前記卑金属の微粒子が存在する反応液中において前記貴金属元素を含む化合物を還元させることで、前記卑金属の微粒子を前記コア部としてその表面に前記貴金属の前記シェル部を形成するシェル部形成工程P4及びP5とを、含み、前記コア部生成工程P1〜P3及びシェル部形成工程P4及びP5それぞれにおける少なくとも一部の工程は、1対の上流側開口12a、12bから合流部16までを連通させる1対の上流側流路14a、14bと、それら1対の上流側流路14a、14bが連結される合流部16と、その合流部16から下流側開口20までを連通させる下流側流路18とを、備えた合流混合器としてのマイクロリアクタ10を用いて行われることから、触媒粒子の平均粒子径が大きくなり過ぎたり、金属微粒子が凝集するといった弊害を好適に抑制でき、貴金属微粒子による触媒体と同等の触媒性能を備えた金属微粒子担持触媒体を作成することができる。すなわち、触媒性能を低下させることなく製造コストの低減を実現する金属微粒子担持触媒体の製造方法を提供することができる。
【0062】
前記コア部生成工程は、前記担体及び前記卑金属元素を含む液体と、還元剤としての液体とを、前記マイクロリアクタ10aを用いて混合させる第1混合工程P1を含むものであるため、前記卑金属元素を含む液体と、還元剤としての液体とを、速やかに且つ均一に混合させることができる。
【0063】
前記第1混合工程P1において、前記マイクロリアクタ10aにおける前記担体及び前記卑金属元素を含む液体の流速は、前記還元剤としての液体の流速よりも速いものであるため、前記マイクロリアクタ10aにおける前記担体及び前記卑金属元素を含む液体の流路の詰まりを抑制しつつ、その卑金属元素を含む液体と、還元剤としての液体とを、速やかに且つ均一に混合させることができる。
【0064】
前記コア部生成工程は、前記第1混合工程P1により混合された液体と、pH調整剤としての液体とを、前記マイクロリアクタ10bを用いて混合させる第2混合工程P2を含むものであるため、前記第1混合工程P1により混合された液体と、pH調整剤としての液体とを、速やかに且つ均一に混合させることができる。
【0065】
前記第1混合工程P1は、前記担体及び前記卑金属元素を含む液体と、還元剤としてのヒドラジン溶液とを、前記マイクロリアクタ10aを用いて混合させてヒドラジン錯体を得るものであるため、前記担体及び前記卑金属元素を含む液体と、実用的な還元剤であるヒドラジン溶液とを、速やかに且つ均一に混合させることができる。
【0066】
前記第2混合工程P2は、前記第1混合工程P1により混合されたヒドラジン錯体と、前記pH調整剤としてのアルカリ溶液とを、前記マイクロリアクタ10bを用いて混合させるものであるため、前記第1混合工程P1により混合されたヒドラジン錯体と、アルカリ溶液とを、速やかに且つ均一に混合させることができる。
【0067】
前記シェル部形成工程は、前記第2混合工程P2により混合された液体と、前記貴金属元素を含む液体とを、前記マイクロリアクタ10cを用いて混合させる第3混合工程P4を含むものであるため、前記第2混合工程P2により混合された液体と、前記貴金属元素を含む液体とを、速やかに且つ均一に混合させることができる。
【0068】
前記コア部生成工程は、前記第2混合工程P2により混合された液体を、予め定められた温度にて規定時間熟成させる第1熟成工程P3を含むものであるため、均一に混合された反応液中に、好適な平均粒子径のコア部を実用的な態様で生成することができる。
【0069】
前記シェル部形成工程は、前記第3混合工程P4により混合された液体を、予め定められた温度にて規定時間熟成させる第2熟成工程P5を含むものであるため、均一に混合された反応液中におけるコア部の表面に、前記シェル部を好適且つ実用的な態様で生成することができる。
【0070】
前記マイクロリアクタ10における流路14a、14b、18の幅は、0.5mm以上2.0mm以下の範囲内であるため、実用的な態様のマイクロリアクタ10を用いて、貴金属微粒子による触媒体と同等の触媒性能を備えた金属微粒子担持触媒体を作成することができる。
【0071】
前記マイクロリアクタ10における、前記担体が存在する反応液の流速は、5ml/min以上50ml/min以下の範囲内であるため、実用的な態様のマイクロリアクタ10を用いて、貴金属微粒子による触媒体と同等の触媒性能を備えた金属微粒子担持触媒体を作成することができる。
【0072】
前記貴金属元素を含む化合物は、白金族元素の塩又は錯体であり、前記卑金属元素を含む化合物は、鉄族元素の塩又は錯体であるため、実用的な材料を用いて、貴金属微粒子による触媒体と同等の触媒性能を備えた金属微粒子担持触媒体を作成することができる。
【0073】
前記卑金属元素を含む化合物は、ニッケルの塩であるため、実用的な材料を用いて、貴金属微粒子による触媒体と同等の触媒性能を備えた金属微粒子担持触媒体を作成することができる。
【0074】
前記担体は、導電性カーボンであるため、実用的な材料を用いて、貴金属微粒子による触媒体と同等の触媒性能を備えた金属微粒子担持触媒体を作成することができる。
【0075】
本実施例の製造方法により製造された金属微粒子担持触媒体によれば、触媒粒子の平均粒子径が大きくなり過ぎたり、金属微粒子が凝集するといった弊害を好適に抑制でき、貴金属微粒子による触媒体と同等の触媒性能を備えた金属微粒子担持触媒体を得ることができる。すなわち、触媒性能を低下させることなく製造コストの低減を実現する金属微粒子担持触媒体を提供することができる。
【0076】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0077】
例えば、前述の実施例においては、
図1に示すような装置を用いて、
図2に示すような工程で前記金属微粒子担持触媒体の製造を行う製造方法について説明したが、これはあくまで本発明の最適な実施形態を例示するものに過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、前記反応液に対するpH調整剤の添加を行う必要がない製造方法においては、前記第2混合工程P2における処理は必ずしも行われなくともよい。更に、前記卑金属元素を含む液体には、必ずしも安定化剤としてのクエン酸三ナトリウムニ水和物は添加しなくともよいといったように、本発明の金属微粒子担持触媒体の製造方法に用いられる材料(原料)、溶媒(分散媒)、各材料の量、及び濃度等は、前述の実施例において説明したものに限定されないことは言うまでもない。
【0078】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。