【実施例】
【0021】
以下、図面を用いて実施例1及び2により本発明を具体的に説明する。
【0022】
<実施例1>
(1)自動車用タフテッドカーペットの原反の構成
本実施例に係る自動車用タフテッドカーペットの原反1(以下、単に「カーペット原反1」とも称する。)は、
図1〜
図3に示すように、後述するタフティングマシンによりポリエステル等からなる基布3にパイル糸5を植え込んで形成されている。このカーペット原反1は、1台分の自動車用タフテッドカーペット2(以下、単に「カーペット2」とも称する。)となるカーペット形成部6を長手方向(すなわち、パイル糸5のステッチ方向P)に沿って複数備えている。
【0023】
なお、上記パイル糸5の材質としては、例えば、ナイロン(ポリアミド)、ポリエステル、ポリプロピレン等を挙げることができる。また、上記パイル糸5の太さとしては、例えば、900〜1500dtexを挙げることができる。
【0024】
上記カーペット形成部6は、パイル糸5が高目付量で植え込まれた高目付部7と、パイル糸5が高目付量より小さな低目付量で植え込まれた低目付部8と、を備えている。これら高目付部7及び低目付部8は、カーペット原反1の長手方向に沿って並設されている。具体的には、
図1に示すように、高目付部7は、カーペット形成部6の長手方向の中央側(すなわち、カーペット2の車両幅方向の中央側)に設けられている。また、低目付部8は、カーペット形成部6の高目付部7の両横側に設けられている。よって、隣り合うカーペット成形部6において低目付部8同士が隣接している。なお、
図1中において成形後のカーペットを2点鎖線で示す。
【0025】
上記高目付部7は、
図2に示すように、パイル糸5が所定のステッチ数(例えば、約12.5本/inch)で植え込まれてなり、多数のステッチST1を有している。この高目付部7は、その目付量が約360g/m
2とされ、そのパイル高さL1が約6.0mmとされている。また、上記低目付部8は、パイル糸5が所定のステッチ数(例えば、約9.4本/inch)で植え込まれてなり、多数のステッチST2を有している。この低目付部8は、その目付量が約285g/m
2とされ、そのパイル高さL2が約6.0mmとされている。
【0026】
上記隣り合うカーペット形成部6の間には、パイル糸5が低目付部8の低目付量より小さな極低目付量(例えば、約150g/m
2)で植え込まれた極低目付部9が形成されている。この極低目付部9は、低目付部8のステッチ数より小さなステッチ数(例えば、約6.0本/inch)を有しており、2個以上で且つ6個以下(
図1中で3個)のステッチST3を有している。また、極低目付部9は、カーペット形成部6(すなわち、高目付部7及び低目付部8)のパイル高さL1、L2より小さなパイル高さL3(例えば、約4.0mm)を有している。よって、極低目付部9を上面からみた場合に基布3がみえるとともに、極低目付部9を側面からみた場合にカーペット形成部6と高さが異なり、極低目付部9とカーペット形成部6とを明確に識別できるようになっている。
【0027】
ここで、上記各目付部7、8、9の目付量は、ステッチ数、パイル糸の高さ、ゲージ数、及びパイル糸の繊度(太さ)により決定される。このステッチ数は、基布3のステッチ方向Pにおける1インチ(2.54cm)当たりのパイル糸5の打ち込み本数を示す。また、パイル糸5の高さL1、L2、L3は、基布3の表面から突出するパイル糸の長さを示し、カーペット原反1の用途や目的に応じて適宜設定される。また、上記ゲージ数は、基布3のゲージ方向Qにおけるパイル糸5の密度を示し、タフティングマシンの機台により固定であり、通常は変更しない。なお、上記カーペット原反1の裏面側には、図示しない第2基布、フェルト、フィルムなどが必要に応じて接合される。
【0028】
(2)自動車用タフテッドカーペットの原反の製造方法
次に、上記構成のカーペット原反1の製造方法について説明する。タフティングマシン10は、
図3に示すように、基布3にパイル糸5を植え込むタフト部11と、このタフト部11に基布3を供給するように駆動される供給ローラ12a、12bと、を備えている。このタフト部11は、長尺状のニードルバー13と、このニードルバー13の下面側に設けられた複数のニードル14と、ルーパ15及びナイフ16(
図4参照)と、を備えている。
【0029】
上記タフト部11では、基布3が送り方向Rに所定の供給スピードで供給される状態において、
図4(a)に示すように、パイル糸5を通したニードル14を基布3に刺し、次に、
図4(b)に示すように、ルーパ15でパイル糸5を保持してニードル14を抜き、次いで、
図4(c)に示すように、ナイフ16を上昇させてパイルの先端をカットするといった一連の動作が繰り返される。その結果、基布3に対してパイル糸5がステッチ方向P及びゲージ方向Qに打ち込まれてカーペット原反1が形成される。
【0030】
ここで、上記タフティングマシン10では、各目付部7、8、9を形成する際に、ニードル14によるパイル糸5の打ち込み速度が一定とされ、基布3の供給スピードが変更されるとともに、パイル糸5の送り量が変更される。すなわち、基布3の供給スピードは、高目付部7の形成時より低目付部8の形成時が早く、低目付部8の形成時より極低目付部9の形成時が早くされる。パイル糸5の送り量は、高目付部7及び低目付部8の形成時は略同じとされ、高目付部7及び低目付部8の形成時より極低目付部9の形成時に小さくされる。これにより、パイル糸5の打ち込み量が変更されて各目付部7、8、9が形成されることとなる。また、基布3の供給スピードを一定とし、ニードル14によるパイル糸5の打ち込み速度を変更してもよい。すなわち、パイル糸5の打ち込み速度(言い替えると、パイル糸5の打ち込み回転数)は、高目付部7の形成時より低目付部8の形成時が遅く(打ち込み回転数が小さく)、低目付部8の形成時より極低目付部9の形成時が遅く(打ち込み回転数が小さく)される。ただし、タフティングの生産性の観点から、ニードル14によるパイル糸5の打ち込み速度をタフティングマシン10の能力最大値で一定とし、基布3の供給スピードを変更させる方が好ましい。
【0031】
(3)自動車用タフテッドカーペットの製造方法及び作用
次に、上記構成のカーペット原反1を用いた自動車用タフテッドカーペット2の製造方法について説明する。カーペット原反1の極低目付部9を目視やセンサ、カメラ等で検出して目印とすることで、カーペット原反をカーペット形成部の材料範囲毎に裁断してカーペット2が得られる(
図1参照)。このように得られたカーペット2では、高目付部7及び低目付部8が正確な狙い位置に位置決めされている。そして、車両幅方向の中央側を高目付部7として優れた風合いや良好な外観を実現して意匠性が高められるとともに、フロアマットで覆われる車両幅方向の両横側を低目付部8として軽量化が図られる。
【0032】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例の自動車用タフテッドカーペットの原反1によると、カーペット形成部6は、パイル糸5が高目付量で植え込まれた高目付部7と、パイル糸5が高目付量より小さな低目付量で植え込まれた低目付部8と、を備える。そして、隣り合うカーペット形成部6の間には、パイル糸5が低目付部8の低目付量より小さな極低目付量で植え込まれた極低目付部9が形成され、極低目付部9は、低目付部8のステッチ数より小さなステッチ数を有する。これにより、極低目付部9を目視やセンサ、カメラ等で検出して目印とすることで、カーペット原反1が伸縮してもカーペット形成部6の材料範囲毎に正確に裁断してバラツキを吸収できる。よって、高目付部7及び低目付部8が所定の狙い位置に正確に位置決めされたカーペット2を歩留り良く得ることができる。
【0033】
また、本実施例では、極低目付部9は、カーペット形成部6のパイル高さL1、L2より小さなパイル高さL3を有するので、カーペット形成部6に対する極低目付部9の識別性が更に高められるとともに、材料歩留りが更に高められる。
【0034】
さらに、本実施例では、極低目付部9は、隣り合うカーペット形成部6のそれぞれの低目付部8同士に接続しているので、極低目付部9により低目付部8同士の境界線を明確に識別できる。
【0035】
<実施例2>
次に、本実施例2に係る自動車用タフテッドカーペットの原反について説明する。なお、本実施例2の自動車用タフテッドカーペットの原反において、上記実施例1に係る自動車用タフテッドカーペットの原反1と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略する。
【0036】
<実施例2>
(1)自動車用タフテッドカーペットの原反の構成
本実施例に係る自動車用タフテッドカーペットの原反21は、
図6に示すように、高目付部7及び低目付部8を有するカーペット形成部6を長手方向(すなわち、パイル糸5のステッチ方向P)に沿って複数備えている。
【0037】
上記隣り合うカーペット形成部6の間には、低目付部8の低目付量より小さな極低目付量(例えば、約150g/m
2)で植え込まれた極低目付部23が形成されている。この極低目付部23は、低目付部8のステッチ数より小さなステッチ数(例えば、約6.0本/inch)を有しており、2個以上で且つ6個以下(
図6中で3個)のステッチST3’を有している。また、極低目付部23のパイル高さL3’(例えば、約4.0mm)は、カーペット形成部6のパイル高さL1、L2と略同じとされている。さらに、極低目付部23の表面側には、カーペット形成部6と異なる色を有する着色部24が形成されている。よって、極低目付部23を上面からみると基布3及び着色部24がみえ、極低目付部23とカーペット形成部6とを明確に識別できるようになっている。
【0038】
(2)自動車用タフテッドカーペットの原反の製造方法
次に、上記構成のカーペット原反21の製造方法について説明する。タフティングマシン10では、各目付部7、8、23を形成する際に、ニードル14によるパイル糸5の打ち込み速度及びパイル糸5の送り量が一定とされ、基布3の供給スピードが変更される。すなわち、基布3の供給スピードは、高目付部7の形成時より低目付部8の形成時が早く、低目付部8の形成時より極低目付部23の形成時が早くされる。これにより、パイル糸5の打ち込み量が変更されて各目付部7、8、23が形成されることとなる。また、極低目付部23を形成する際に、タフティングマシン10から出力されるパイル糸5の打ち込み信号に基づいてインクジェット等で極低目付部23の表面側に着色部24が付着される。
【0039】
(3)自動車用タフテッドカーペットの製造方法
次に、上記構成のカーペット原反21を用いた自動車用タフテッドカーペット22の製造方法について説明する。極低目付部23及び着色部24を目視やセンサ、カメラ等で検出して目印とすることで、カーペット原反21をカーペット形成部6の材料範囲毎に裁断して自動車用タフテッドカーペット22が得られる(
図1参照)。
【0040】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例の自動車用タフテッドカーペットの原反21によると、実施例1の自動車用タフテッドカーペットの原反1と略同様の作用効果を奏するとともに、極低目付部23の表面側に、カーペット形成部6と異なる色を有する着色部24が形成されているので、カーペット形成部6に対する極低目付部24の識別性が更に高められる。特に、極低目付部24をセンサ、カメラ等で検出する際に効果的に検出できる。
【0041】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例1における極低目付部9の表面側に、上記実施例2における着色部24を形成するようにしてもよい。また、
参考例として、上記実施例2における極低目付部23の表面側に着色部24を形成しない
形態が挙げられる。
【0042】
また、上記実施例1及び2では、単一のカーペット形成部6において単一の高目付部7を備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、単一のカーペット形成部6において2以上の高目付部を備えるようにしてもよい。例えば、
図1に示すカーペット形成部6において両低目付部8の車両幅方向の外側部を高目付部としてもよい。
【0043】
また、上記実施例1及び2では、隣り合うカーペット形成部6において低目付部8同士が隣接する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、隣り合うカーペット形成部6において高目付部同士が隣接したり、隣り合うカーペット形成部6において高目付部と低目付部とが隣接したりするようにしてもよい。これらは、各目付部7、8の狙い位置に応じて適宜選択される。
【0044】
また、上記実施例1及び2では、高目付部7及び低目付部8が車両幅方向(すなわち、ステッチ方向P)に沿って並設される形態を例示したが、これに限定されず、例えば、高目付部7及び低目付部8が車両前後方向に沿って並設されるようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施例1及び2における高目付部7、低目付部8及び極低目付部9、23の目付量やステッチ数は、パイル糸の太さや長さに応じて適宜設定することができる。
【0046】
また、上記実施例1及び2では、先端がカットされたカットパイルを例示したが、これに限定されず、例えば、先端がカットされていないループパイルとしてもよい。
【0047】
さらに、上記実施例1及び2におけるカーペット原反1、21の裁断は、例えば、シャー装置、ブランキング型等により自動的な裁断であってもよいし、鋏、カッター等を用いた人手による裁断であってもよい。
【0048】
なお、参考例として、例えば、パイル糸5を低目付部8と同じステッチ数で植え込み且つカーペット形成部6のパイル高さL1、L2より小さなパイル高さを有する極低目付部とすることが考えられる。ただし、材料歩留りといった観点から参考例より実施例1及び2の方が好ましい。
【0049】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0050】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。