【実施例】
【0017】
以下、図面を用いて実施例1及び2により本発明を具体的に説明する。
【0018】
<実施例1>
(1)自動車用タフテッドカーペットの構成
本実施例に係る自動車用タフテッドカーペット1は、
図1及び
図2に示すように、後述するタフティングマシンによりポリエステル等からなる基布3にパイル糸5を植え込んで形成されている。なお、上記パイル糸5の材質としては、例えば、ナイロン(ポリアミド)、ポリエステル、ポリプロピレン等を挙げることができる。また、上記パイル糸5の太さとしては、例えば、900〜1500dtexを挙げることができる。
【0019】
上記タフテッドカーペット1は、パイル糸5が高目付量で植え込まれた高目付部7と、パイル糸が高目付量より小さな低目付量で植え込まれた低目付部8と、高目付部7と低目付部8との間に設けられ、パイル糸5が高目付部7の目付量と低目付部8の目付量との間の目付量で植え込まれた中間目付部9と、を備えている。
【0020】
上記高目付部7及び低目付部8は、
図2及び
図5(a)に示すように、車両幅方向(即ち、ステッチ方向P)に沿って並設されている。この高目付部7は、車両幅方向の中央側に配設され、低目付部8は、車両幅方向の両横側に配設されている。なお、
図5中において成形後の自動車用タフテッドカーペットを2点鎖線で示す。
【0021】
上記高目付部7は、
図1に示すように、パイル糸5が所定のステッチ数(例えば、約12.5本/inch)で植え込まれてなり、多数のステッチST1を有している。この高目付部7の目付量は約360g/m
2とされている。また、上記低目付部8は、パイル糸5が所定のステッチ数(例えば、約9.4本/inch)で植え込まれてなり、多数のステッチST2を有している。この低目付部8の目付量は約285g/m
2とされている。
【0022】
上記中間目付部9の目付量は、高目付部7に隣接する側から低目付部8に隣接する側に向かって段階的に小さくなっている。具体体には、中間目付部9は、高目付部7に隣接して設けられる第1中間目付部9aと、低目付部8に隣接して設けられる第2中間目付部9bと、を有している。この第1中間目付部9aは、パイル糸5が所定の第1ステッチ数(例えば、約11.5本/inch)で植え込まれてなり、2個以上(
図1中で4個)のステッチS1を有している。また、第2中間目付部9bは、パイル糸5が第1ステッチ数より小さい所定の第2ステッチ数(例えば、約10.4本/inch)で植え込まれてなり、2個以上(
図1中で3個)のステッチS2を有している。
【0023】
なお、上記第1中間目付部9aの目付量は約335g/m
2とされ、第2中間目付部9bの目付量は約310g/m
2とされている。さらに、上記中間目付部9を構成するステッチS1、S2の各ステッチ数は、高目付部7を構成するステッチST1のステッチ数より小さく且つ低目付部8を構成するステッチST2のステッチ数より大きい。
【0024】
ここで、上記各目付部7、8,9の目付量は、ステッチ数、パイル糸5の長さ、ゲージ数、及びパイル糸の繊度(太さ)により決定される。このステッチ数は、基布3のステッチ方向Pにおける1インチ(2.54cm)当たりのパイル糸5の打ち込み本数を示す。また、パイル糸5の長さは、基布3の表面から突出するパイル糸5の長さを示し、タフテッドカーペット1の用途や目的に応じて適宜設定される。また、上記ゲージ数は、基布3のゲージ方向Qにおけるパイル糸5の密度を示し、タフティングマシンの機台により固定であり、通常は変更しない。なお、上記タフテッドカーペット1の裏面側には、図示しない第2基布、フェルト、フィルムなどが必要に応じて接合される。
【0025】
(2)自動車用タフテッドカーペットの製造方法
次に、上記構成の自動車用タフテッドカーペット1の製造方法について説明する。タフティングマシン10は、
図3に示すように、基布3にパイル糸5を植え込むタフト部11と、このタフト部11に基布3を供給するように駆動される供給ローラ12a、12bと、を備えている。このタフト部11は、長尺状のニードルバー13と、このニードルバー13の下面側に設けられた複数のニードル14と、ルーパ15及びナイフ16(
図4参照)と、を備えている。
【0026】
上記タフト部11では、基布3が送り方向Rに所定の供給スピードで供給される状態において、
図4(a)に示すように、パイル糸5を通したニードル14を基布3に刺し、次に、
図4(b)に示すように、ルーパ15でパイル糸5を保持してニードル14を抜き、次いで、
図4(c)に示すように、ナイフ16を上昇させてパイルの先端をカットするといった一連の動作が繰り返される。その結果、基布3に対してパイル糸5がステッチ方向P及びゲージ方向Qに打ち込まれてタフテッドカーペット1の原反1a(
図5(a)参照)が形成される。この原反1aは、車両1台分毎に切断されてタフテッドカーペット1が形成されることとなる。
【0027】
ここで、上記タフティングマシン10では、各目付部7、8、9を形成する際に、ニードル14によるパイル糸5の打ち込み速度が一定とされ、基布3の供給スピードが変更される。すなわち、基布3の供給スピードは、高目付部7の形成時より第1中間目付部9aの形成時が早く、第1中間目付部9aの形成時より第2中間目付部9bの形成時が早く、第2中間目付部9bの形成時より低目付部8の形成時が早くされる。これにより、パイル糸5の打ち込み量が変更されて各目付部7、8、9が形成されることとなる。また、基布3の供給スピードを一定とし、ニードル14によるパイル糸5の打ち込み速度を変更してもよい。すなわち、パイル糸5の打ち込み速度(言い替えると、パイル糸5の打ち込み回転数)は、高目付部7の形成時より第1中間目付部9aの形成時が遅く(打ち込み回転数が小さく)、第1中間目付部9aの形成時より第2中間目付部9bの形成時が遅く(打ち込み回転数が小さく)、第2中間目付部9bの形成時より低目付部8の形成時が遅く(打ち込み回転数が小さく)される。ただし、タフティングの生産性の観点から、ニードル14によるパイル糸5の打ち込み速度をタフティングマシン10の能力最大値で一定とし、基布3の供給スピードを変更させる方が好ましい。
【0028】
(3)自動車用タフテッドカーペットの作用
次に、上記構成の自動車用タフテッドカーペット1の作用について説明する。このタフテッドカーペット1では、
図5(a)に示すように、車両幅方向の中央側を高目付部7として意匠性が高められるとともに、フロアマットで覆われる車両幅方向の両横側を低目付部8として軽量化が図られる。また、
図1及び
図2に示すように、高目付部7と低目付部8との間に目付量が段階的に変化する中間目付部9を備えるので、乗員は高目付部7と低目付部8との境界線を視認し難い。
【0029】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例の自動車用タフテッドカーペット1によると、パイル糸5が高目付量で植え込まれた高目付部7と、パイル糸5が高目付量より小さな低目付量で植え込まれた低目付部8と、高目付部7と低目付部8との間に設けられ、パイル糸5が高目付部7と低目付部8との間の目付量で植え込まれた中間目付部9と、を備える。そして、中間目付部9の目付量は、高目付部7に隣接する側から低目付部8に隣接する側に向かって段階的に小さくなる。このように、高目付部7と低目付部8とを備えることで、カーペット使用状態で見え易い部分を高目付部7として優れた風合いや良好な外観を実現して意匠性を高め得るとともに、見え難い部分を低目付部8として軽量化を図ることができる。また、高目付部7と低目付部8との間に目付量が段階的に変化する中間目付部9を備えることで、高目付部7と低目付部8との境界線を視認し難くすることができる。
【0030】
また、本実施例では、中間目付部9は、高目付部7に隣接して設けられ且つパイル糸5が所定の第1ステッチ数で植え込まれた第1中間目付部9aと、低目付部8に隣接して設けられ且つパイル糸5が所定の第1ステッチ数より小さい所定の第2ステッチ数で植え込まれた第2中間目付部9bと、を有するので、タフティングマシン10によるパイル糸5の植え込み制御を簡素化しつつ中間目付部9を好適に形成できる。
【0031】
さらに、本実施例では、中間目付部9は、4個以上で且つ40個以下(
図1中で7個)のステッチS1、S2を有しているので、4個以上のステッチS1、S2を有することで中間目付部9により境界線を十分に視認し難くできる一方、40個以下のステッチS1、S2を有することで中間目付部9の領域を比較的狭くして高目付部7と低目付部8との間の移行を早めて十分な軽量化を図ることができる。
【0032】
<
参考例>
次に、本
参考例に係る自動車用タフテッドカーペットについて説明する。なお、本
参考例の自動車用タフテッドカーペットにおいて、上記実施例1に係る自動車用タフテッドカーペット1と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略する。
【0033】
(1)自動車用タフテッドカーペットの構成
本
参考例に係る自動車用タフテッドカーペット21は、
図6に示すように、パイル糸5が高目付量で植え込まれた高目付部7と、パイル糸5が高目付量より小さな低目付量で植え込まれた低目付部8と、高目付部7と低目付部8との間に設けられパイル糸5が高目付部7と低目付部8との間の目付量で植え込まれた中間目付部22と、を備えている。
【0034】
上記中間目付部22の目付量は、高目付部7に隣接する側から低目付部8に隣接する側に向かって段階的に小さくなっている。具体体には、中間目付部22は、高目付部7に隣接する側から低目付部8に隣接する側に向かってステッチ毎のステッチ数が段階的に小さくなっている。この中間目付部22は、パイル糸5がステッチ毎に異なるステッチ数で植え込まれてなり、4個以上(
図6中で7個)のステッチSa〜Sgを有している。そして、中間目付部22の平均ステッチ数は約11.0本/inchとされている。
【0035】
(2)自動車用タフテッドカーペットの製造方法
次に、上記構成の自動車用タフテッドカーペット21の製造方法について説明する。上記タフティングマシン10では、各目付部7、8、22を形成する際に、ニードル14によるパイル糸5の打ち込み速度が一定とされ、基布3の供給スピードが変更される。すなわち、基布3の供給スピードは、高目付部7の形成時より低目付部8の形成時が早くされるとともに、中間目付部22の形成時にはステッチS毎に徐々に早く又は遅くされる。これにより、パイル糸5の打ち込み量が変更されて各目付部7、8、22が形成される。
【0036】
(3)
参考例の効果
以上より、本
参考例の自動車用タフテッドカーペット21によると、実施例1の自動車用タフテッドカーペット1と略同様の作用効果を奏するとともに、中間目付部22は、高目付部7に隣接する側から低目付部8に隣接する側に向かってステッチ毎のステッチ数が段階的に小さくなるので、高目付部7と低目付部8との境界線をより確実に視認し難くできる。
【0037】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例1及び
参考例では、1枚のタフテッドカーペット1、21において単一の高目付部7を備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、1枚のタフテッドカーペットにおいて2以上の高目付部を備えるようにしてもよい。例えば、
図5(a)に示すタフテッドカーペット1において両低目付部8の車両幅方向の外側部を高目付部としてもよい。
【0038】
また、上記実施例1及び
参考例では、高目付部7及び低目付部8が車両幅方向(すなわち、ステッチ方向P)に沿って並設され、高目付部7が車両幅方向の中央側に配設され、低目付部8が車両幅方向の両横側に配設されたタフテッドカーペット1、21を例示したが、これに限定されず、例えば、
図5(b)に示すように、高目付部7及び低目付部8が車両前後方向(すなわち、ステッチ方向P)に沿って並設され、高目付部7が車両前側に配設され、低目付部8が車両後側に配設されたタフテッドカーペットとしてもよい。この場合、車両前側を高目付部7として意匠性が高められるとともに、乗車頻度及び成形伸度が低い車両後側を低目付部8として軽量化が図られる。さらに、高目付部が車両後側に配設され、低目付部が車両前側に配設されたタフテッドカーペットとしてもよい。
【0039】
また、上記実施例1及び
参考例における高目付部7、低目付部8及び中間目付部9、22の目付量やステッチ数は、パイル糸の太さや長さに応じて適宜設定することができる。
【0040】
また、上記実施例1では、第1及び第2中間目付部9a、9bからなる中間目付部9を例示したが、これに限定されず、例えば、第1及び第2中間目付部9a、9bの間に両部9a、9bの間の目付量となる1又は2以上の更なる中間目付部を設けてもよい。
【0041】
さらに、上記実施例1及び
参考例では、先端がカットされたカットパイルを例示したが、これに限定されず、例えば、先端がカットされていないループパイルとしてもよい。
【0042】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0043】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。