特許第5961540号(P5961540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961540
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】自動車用タフテッドカーペット
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/04 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   B60N3/04 A
   B60N3/04 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-268507(P2012-268507)
(22)【出願日】2012年12月7日
(65)【公開番号】特開2014-113880(P2014-113880A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390008394
【氏名又は名称】長谷虎紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】田口 和典
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 兼吾
(72)【発明者】
【氏名】服部 充博
(72)【発明者】
【氏名】長谷 和治
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−210883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布にパイル糸を植え込んで形成される自動車用タフテッドカーペットであって、
前記パイル糸が高目付量で植え込まれた高目付部と、
前記パイル糸が前記高目付量より小さな低目付量で植え込まれた低目付部と、
前記高目付部と前記低目付部との間に設けられ、前記パイル糸が該高目付部と該低目付部との間の目付量で植え込まれた中間目付部と、を備え、
前記中間目付部の目付量は、前記高目付部に隣接する側から前記低目付部に隣接する側に向かって段階的に小さくなり、
前記中間目付部は、前記高目付部に隣接して設けられ且つ前記パイル糸が所定の第1ステッチ数で植え込まれて2個以上のステッチを有する第1中間目付部と、前記低目付部に隣接して設けられ且つ前記パイル糸が前記所定の第1ステッチ数より小さい所定の第2ステッチ数で植え込まれて2個以上のステッチを有する第2中間目付部と、を有することを特徴とする自動車用タフテッドカーペット。
【請求項2】
前記中間目付部は、4個以上で且つ40個以下のステッチを有している請求項1記載の自動車用タフテッドカーペット。
【請求項3】
前記高目付部が車両前側に配設され且つ前記低目付部が車両後側に配設されるように、前記高目付部及び前記低目付部がステッチ方向に沿って並設されている請求項1又は2に記載の自動車用タフテッドカーペット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用タフテッドカーペットに関し、さらに詳しくは、高目付部と低目付部との境界線を視認し難くできるとともに、意匠性を高めつつ軽量化を図ることができる自動車用タフテッドカーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車用タフテッドカーペットとして、基布にパイル糸を植え込んで形成されるものが一般に知られている(例えば、特許文献1等参照)。この特許文献1には、例えば、図7に示すように、パイル糸105が高目付量(例えば、280〜700g/m)で植え込まれた高目付部107と、パイル糸105が高目付量より小さな低目付量(例えば、200〜500g/m)で植え込まれた低目付部108と、を隣接して備えるタフテッドカーペット101が開示されている。これにより、カーペット101の使用状態で見え易い部分を高目付部107として意匠性を高め得るとともに、見え難い部分を低目付部108として軽量化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−24457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の自動車用タフテッドカーペット101では、高目付部107と低目付部108とが隣接して配設されているので、カーペット101の使用状態で高目付部107と低目付部108との境界線がスジのように視認できてしまい、意匠性が低下してしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、高目付部と低目付部との境界線を視認し難くできるとともに、意匠性を高めつつ軽量化を図ることができる自動車用タフテッドカーペットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、基布にパイル糸を植え込んで形成される自動車用タフテッドカーペットであって、前記パイル糸が高目付量で植え込まれた高目付部と、前記パイル糸が高目付量より小さな低目付量で植え込まれた低目付部と、前記高目付部と前記低目付部との間に設けられ、前記パイル糸が該高目付部と該低目付部との間の目付量で植え込まれた中間目付部と、を備え、前記中間目付部の目付量は、前記高目付部に隣接する側から前記低目付部に隣接する側に向かって段階的に小さくなり、前記中間目付部は、前記高目付部に隣接して設けられ且つ前記パイル糸が所定の第1ステッチ数で植え込まれて2個以上のステッチを有する第1中間目付部と、前記低目付部に隣接して設けられ且つ前記パイル糸が前記所定の第1ステッチ数より小さい所定の第2ステッチ数で植え込まれて2個以上のステッチを有する第2中間目付部と、を有することを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項1載において、前記中間目付部は、4個以上で且つ40個以下のステッチを有していることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載において、前記高目付部が車両前側に配設され且つ前記低目付部が車両後側に配設されるように、前記高目付部及び前記低目付部がステッチ方向に沿って並設されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自動車用タフテッドカーペットによると、パイル糸が高目付量で植え込まれた高目付部と、パイル糸が高目付量より小さな低目付量で植え込まれた低目付部と、高目付部と低目付部との間に設けられ、パイル糸が高目付部と低目付部との間の目付量で植え込まれた中間目付部と、を備える。そして、中間目付部の目付量は、高目付部に隣接する側から低目付部に隣接する側に向かって段階的に小さくなる。このように、高目付部と低目付部とを備えることで、カーペット使用状態で見え易い部分を高目付部として優れた風合いや良好な外観を実現して意匠性を高め得るとともに、見え難い部分を低目付部として軽量化を図ることができる。また、高目付部と低目付部との間に目付量が段階的に変化する中間目付部を備えることで、高目付部と低目付部との境界線を視認し難くすることができる。
また、前記中間目付部が、前記高目付部に隣接して設けられ且つ前記パイル糸が所定の第1ステッチ数で植え込まれた第1中間目付部と、前記低目付部に隣接して設けられ且つ前記パイル糸が前記所定の第1ステッチ数より小さい所定の第2ステッチ数で植え込まれた第2中間目付部と、を有するので、タフティングマシンによるパイル糸の植え込み制御を簡素化しつつ中間目付部を好適に形成できる。
さらに、前記中間目付部が、4個以上で且つ40個以下のステッチを有している場合は、4個以上のステッチを有することで中間目付部により境界線を十分に視認し難くできる一方、40個以下のステッチを有することで中間目付部の領域を比較的狭くして高目付部と低目付部との間の移行を早めて十分な軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
図1】実施例に係る自動車用タフテッドカーペットを模式的に示す側面図である。
図2】上記タフテッドカーペットを模式的に示す斜視図である。
図3】上記タフテッドカーペットの製造方法を説明するための説明図である。
図4】上記タフテッドカーペットの製造方法を説明するための説明図である。
図5】上記タフテッドカーペットの使用形態を説明するための説明図であり、(a)は上記タフテッドカーペットの車両幅方向に目付変化を持たせる形態を示し、(b)は上記タフテッドカーペットの車両前後方向に目付変化を持たせる形態を示す。
図6参考例に係る自動車用タフテッドカーペットを模式的に示す側面図である。
図7】従来の自動車用タフテッドカーペットを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
1.自動車用タフテッドカーペット
本実施形態1.に係る自動車用タフテッドカーペットは、基布(3)にパイル糸(5)を植え込んで形成される自動車用タフテッドカーペット(1、21)であって、パイル糸が高目付量で植え込まれた高目付部(7)と、パイル糸が高目付量より小さな低目付量で植え込まれた低目付部(8)と、高目付部と低目付部との間に設けられ、パイル糸が高目付部と低目付部との間の目付量で植え込まれた中間目付部(9、22)と、を備える。そして、中間目付部の目付量は、高目付部に隣接する側から低目付部に隣接する側に向かって段階的に小さくなる(例えば、図1及び図6等参照)。なお、上記「目付量」とは、基布の単位面積当たりのパイル糸の重量を意図する。
【0011】
なお、上記高目付部(7)の目付量としては、例えば、280〜700g/mを挙げることができる。また、上記低目付部(8)の目付量としては、例えば、200〜500g/mを挙げることができる。この低目付部の目付量は、高目付部の目付量より小さい値である。さらに、上記中間目付部(9、22)の平均目付量としては、例えば、240〜600g/mを挙げることができる。この中間目付部の平均目付量は、高目付部の目付量より小さく且つ低目付部の目付量より大きな値である。
【0012】
本実施形態1.に係る自動車用タフテッドカーペットとしては、例えば、上記中間目付部(9)は、高目付部(7)に隣接して設けられ且つパイル糸が所定の第1ステッチ数で植え込まれた第1中間目付部(9a)と、低目付部(8)に隣接して設けられ且つパイル糸が所定の第1ステッチ数より小さい所定の第2ステッチ数で植え込まれた第2中間目付部(9b)と、を有する形態(例えば、図1等参照)を挙げることができる。なお、上記「ステッチ数」とは、基布のステッチ方向における1インチ(2.54cm)当たりのパイル糸の打ち込み本数を意図する。
【0013】
本実施形態1.に係る自動車用タフテッドカーペットとしては、例えば、上記中間目付部(22)は、高目付部(7)に隣接する側から低目付部(8)に隣接する側に向かってステッチ毎のステッチ数が段階的に小さくなる形態(例えば、図6等参照)を挙げることができる。
【0014】
なお、上記高目付部(7)のステッチ数としては、例えば、8.0〜17.0本/inchを挙げることができる。また、上記低目付部(8)のステッチ数としては、例えば、6.0〜12.0本/inchを挙げることができる。この低目付部のステッチ数は、高目付部のステッチ数より小さい値である。さらに、上記中間目付部(9、22)の平均ステッチ数としては、例えば、7.0〜14.5本/inchを挙げることができる。この中間目付部の平均ステッチ数は、高目付部のステッチ数より小さく且つ低目付部のステッチ数より大きい値である。
【0015】
本実施形態1.に係る自動車用タフテッドカーペットとしては、例えば、上記中間目付部(9、22)は、4個以上で且つ40個以下のステッチ(S1、S2、Sa〜Sg)を有している形態(例えば、図1及び図6等参照)を挙げることができる。
【0016】
なお、上記実施形態で記載した各構成の括弧内の符号は、後述する実施例に記載の具体的構成との対応関係を示すものである。
【実施例】
【0017】
以下、図面を用いて実施例1及び2により本発明を具体的に説明する。
【0018】
<実施例1>
(1)自動車用タフテッドカーペットの構成
本実施例に係る自動車用タフテッドカーペット1は、図1及び図2に示すように、後述するタフティングマシンによりポリエステル等からなる基布3にパイル糸5を植え込んで形成されている。なお、上記パイル糸5の材質としては、例えば、ナイロン(ポリアミド)、ポリエステル、ポリプロピレン等を挙げることができる。また、上記パイル糸5の太さとしては、例えば、900〜1500dtexを挙げることができる。
【0019】
上記タフテッドカーペット1は、パイル糸5が高目付量で植え込まれた高目付部7と、パイル糸が高目付量より小さな低目付量で植え込まれた低目付部8と、高目付部7と低目付部8との間に設けられ、パイル糸5が高目付部7の目付量と低目付部8の目付量との間の目付量で植え込まれた中間目付部9と、を備えている。
【0020】
上記高目付部7及び低目付部8は、図2及び図5(a)に示すように、車両幅方向(即ち、ステッチ方向P)に沿って並設されている。この高目付部7は、車両幅方向の中央側に配設され、低目付部8は、車両幅方向の両横側に配設されている。なお、図5中において成形後の自動車用タフテッドカーペットを2点鎖線で示す。
【0021】
上記高目付部7は、図1に示すように、パイル糸5が所定のステッチ数(例えば、約12.5本/inch)で植え込まれてなり、多数のステッチST1を有している。この高目付部7の目付量は約360g/mとされている。また、上記低目付部8は、パイル糸5が所定のステッチ数(例えば、約9.4本/inch)で植え込まれてなり、多数のステッチST2を有している。この低目付部8の目付量は約285g/mとされている。
【0022】
上記中間目付部9の目付量は、高目付部7に隣接する側から低目付部8に隣接する側に向かって段階的に小さくなっている。具体体には、中間目付部9は、高目付部7に隣接して設けられる第1中間目付部9aと、低目付部8に隣接して設けられる第2中間目付部9bと、を有している。この第1中間目付部9aは、パイル糸5が所定の第1ステッチ数(例えば、約11.5本/inch)で植え込まれてなり、2個以上(図1中で4個)のステッチS1を有している。また、第2中間目付部9bは、パイル糸5が第1ステッチ数より小さい所定の第2ステッチ数(例えば、約10.4本/inch)で植え込まれてなり、2個以上(図1中で3個)のステッチS2を有している。
【0023】
なお、上記第1中間目付部9aの目付量は約335g/mとされ、第2中間目付部9bの目付量は約310g/mとされている。さらに、上記中間目付部9を構成するステッチS1、S2の各ステッチ数は、高目付部7を構成するステッチST1のステッチ数より小さく且つ低目付部8を構成するステッチST2のステッチ数より大きい。
【0024】
ここで、上記各目付部7、8,9の目付量は、ステッチ数、パイル糸5の長さ、ゲージ数、及びパイル糸の繊度(太さ)により決定される。このステッチ数は、基布3のステッチ方向Pにおける1インチ(2.54cm)当たりのパイル糸5の打ち込み本数を示す。また、パイル糸5の長さは、基布3の表面から突出するパイル糸5の長さを示し、タフテッドカーペット1の用途や目的に応じて適宜設定される。また、上記ゲージ数は、基布3のゲージ方向Qにおけるパイル糸5の密度を示し、タフティングマシンの機台により固定であり、通常は変更しない。なお、上記タフテッドカーペット1の裏面側には、図示しない第2基布、フェルト、フィルムなどが必要に応じて接合される。
【0025】
(2)自動車用タフテッドカーペットの製造方法
次に、上記構成の自動車用タフテッドカーペット1の製造方法について説明する。タフティングマシン10は、図3に示すように、基布3にパイル糸5を植え込むタフト部11と、このタフト部11に基布3を供給するように駆動される供給ローラ12a、12bと、を備えている。このタフト部11は、長尺状のニードルバー13と、このニードルバー13の下面側に設けられた複数のニードル14と、ルーパ15及びナイフ16(図4参照)と、を備えている。
【0026】
上記タフト部11では、基布3が送り方向Rに所定の供給スピードで供給される状態において、図4(a)に示すように、パイル糸5を通したニードル14を基布3に刺し、次に、図4(b)に示すように、ルーパ15でパイル糸5を保持してニードル14を抜き、次いで、図4(c)に示すように、ナイフ16を上昇させてパイルの先端をカットするといった一連の動作が繰り返される。その結果、基布3に対してパイル糸5がステッチ方向P及びゲージ方向Qに打ち込まれてタフテッドカーペット1の原反1a(図5(a)参照)が形成される。この原反1aは、車両1台分毎に切断されてタフテッドカーペット1が形成されることとなる。
【0027】
ここで、上記タフティングマシン10では、各目付部7、8、9を形成する際に、ニードル14によるパイル糸5の打ち込み速度が一定とされ、基布3の供給スピードが変更される。すなわち、基布3の供給スピードは、高目付部7の形成時より第1中間目付部9aの形成時が早く、第1中間目付部9aの形成時より第2中間目付部9bの形成時が早く、第2中間目付部9bの形成時より低目付部8の形成時が早くされる。これにより、パイル糸5の打ち込み量が変更されて各目付部7、8、9が形成されることとなる。また、基布3の供給スピードを一定とし、ニードル14によるパイル糸5の打ち込み速度を変更してもよい。すなわち、パイル糸5の打ち込み速度(言い替えると、パイル糸5の打ち込み回転数)は、高目付部7の形成時より第1中間目付部9aの形成時が遅く(打ち込み回転数が小さく)、第1中間目付部9aの形成時より第2中間目付部9bの形成時が遅く(打ち込み回転数が小さく)、第2中間目付部9bの形成時より低目付部8の形成時が遅く(打ち込み回転数が小さく)される。ただし、タフティングの生産性の観点から、ニードル14によるパイル糸5の打ち込み速度をタフティングマシン10の能力最大値で一定とし、基布3の供給スピードを変更させる方が好ましい。
【0028】
(3)自動車用タフテッドカーペットの作用
次に、上記構成の自動車用タフテッドカーペット1の作用について説明する。このタフテッドカーペット1では、図5(a)に示すように、車両幅方向の中央側を高目付部7として意匠性が高められるとともに、フロアマットで覆われる車両幅方向の両横側を低目付部8として軽量化が図られる。また、図1及び図2に示すように、高目付部7と低目付部8との間に目付量が段階的に変化する中間目付部9を備えるので、乗員は高目付部7と低目付部8との境界線を視認し難い。
【0029】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例の自動車用タフテッドカーペット1によると、パイル糸5が高目付量で植え込まれた高目付部7と、パイル糸5が高目付量より小さな低目付量で植え込まれた低目付部8と、高目付部7と低目付部8との間に設けられ、パイル糸5が高目付部7と低目付部8との間の目付量で植え込まれた中間目付部9と、を備える。そして、中間目付部9の目付量は、高目付部7に隣接する側から低目付部8に隣接する側に向かって段階的に小さくなる。このように、高目付部7と低目付部8とを備えることで、カーペット使用状態で見え易い部分を高目付部7として優れた風合いや良好な外観を実現して意匠性を高め得るとともに、見え難い部分を低目付部8として軽量化を図ることができる。また、高目付部7と低目付部8との間に目付量が段階的に変化する中間目付部9を備えることで、高目付部7と低目付部8との境界線を視認し難くすることができる。
【0030】
また、本実施例では、中間目付部9は、高目付部7に隣接して設けられ且つパイル糸5が所定の第1ステッチ数で植え込まれた第1中間目付部9aと、低目付部8に隣接して設けられ且つパイル糸5が所定の第1ステッチ数より小さい所定の第2ステッチ数で植え込まれた第2中間目付部9bと、を有するので、タフティングマシン10によるパイル糸5の植え込み制御を簡素化しつつ中間目付部9を好適に形成できる。
【0031】
さらに、本実施例では、中間目付部9は、4個以上で且つ40個以下(図1中で7個)のステッチS1、S2を有しているので、4個以上のステッチS1、S2を有することで中間目付部9により境界線を十分に視認し難くできる一方、40個以下のステッチS1、S2を有することで中間目付部9の領域を比較的狭くして高目付部7と低目付部8との間の移行を早めて十分な軽量化を図ることができる。
【0032】
参考例
次に、本参考例に係る自動車用タフテッドカーペットについて説明する。なお、本参考例の自動車用タフテッドカーペットにおいて、上記実施例1に係る自動車用タフテッドカーペット1と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略する。
【0033】
(1)自動車用タフテッドカーペットの構成
参考例に係る自動車用タフテッドカーペット21は、図6に示すように、パイル糸5が高目付量で植え込まれた高目付部7と、パイル糸5が高目付量より小さな低目付量で植え込まれた低目付部8と、高目付部7と低目付部8との間に設けられパイル糸5が高目付部7と低目付部8との間の目付量で植え込まれた中間目付部22と、を備えている。
【0034】
上記中間目付部22の目付量は、高目付部7に隣接する側から低目付部8に隣接する側に向かって段階的に小さくなっている。具体体には、中間目付部22は、高目付部7に隣接する側から低目付部8に隣接する側に向かってステッチ毎のステッチ数が段階的に小さくなっている。この中間目付部22は、パイル糸5がステッチ毎に異なるステッチ数で植え込まれてなり、4個以上(図6中で7個)のステッチSa〜Sgを有している。そして、中間目付部22の平均ステッチ数は約11.0本/inchとされている。
【0035】
(2)自動車用タフテッドカーペットの製造方法
次に、上記構成の自動車用タフテッドカーペット21の製造方法について説明する。上記タフティングマシン10では、各目付部7、8、22を形成する際に、ニードル14によるパイル糸5の打ち込み速度が一定とされ、基布3の供給スピードが変更される。すなわち、基布3の供給スピードは、高目付部7の形成時より低目付部8の形成時が早くされるとともに、中間目付部22の形成時にはステッチS毎に徐々に早く又は遅くされる。これにより、パイル糸5の打ち込み量が変更されて各目付部7、8、22が形成される。
【0036】
(3)参考例の効果
以上より、本参考例の自動車用タフテッドカーペット21によると、実施例1の自動車用タフテッドカーペット1と略同様の作用効果を奏するとともに、中間目付部22は、高目付部7に隣接する側から低目付部8に隣接する側に向かってステッチ毎のステッチ数が段階的に小さくなるので、高目付部7と低目付部8との境界線をより確実に視認し難くできる。
【0037】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例1及び参考例では、1枚のタフテッドカーペット1、21において単一の高目付部7を備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、1枚のタフテッドカーペットにおいて2以上の高目付部を備えるようにしてもよい。例えば、図5(a)に示すタフテッドカーペット1において両低目付部8の車両幅方向の外側部を高目付部としてもよい。
【0038】
また、上記実施例1及び参考例では、高目付部7及び低目付部8が車両幅方向(すなわち、ステッチ方向P)に沿って並設され、高目付部7が車両幅方向の中央側に配設され、低目付部8が車両幅方向の両横側に配設されたタフテッドカーペット1、21を例示したが、これに限定されず、例えば、図5(b)に示すように、高目付部7及び低目付部8が車両前後方向(すなわち、ステッチ方向P)に沿って並設され、高目付部7が車両前側に配設され、低目付部8が車両後側に配設されたタフテッドカーペットとしてもよい。この場合、車両前側を高目付部7として意匠性が高められるとともに、乗車頻度及び成形伸度が低い車両後側を低目付部8として軽量化が図られる。さらに、高目付部が車両後側に配設され、低目付部が車両前側に配設されたタフテッドカーペットとしてもよい。
【0039】
また、上記実施例1及び参考例における高目付部7、低目付部8及び中間目付部9、22の目付量やステッチ数は、パイル糸の太さや長さに応じて適宜設定することができる。
【0040】
また、上記実施例1では、第1及び第2中間目付部9a、9bからなる中間目付部9を例示したが、これに限定されず、例えば、第1及び第2中間目付部9a、9bの間に両部9a、9bの間の目付量となる1又は2以上の更なる中間目付部を設けてもよい。
【0041】
さらに、上記実施例1及び参考例では、先端がカットされたカットパイルを例示したが、これに限定されず、例えば、先端がカットされていないループパイルとしてもよい。
【0042】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0043】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
自動車の床面を構成するフロアカーペットに関する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0045】
1,21;自動車用タフテッドカーペット、3;基布、5;パイル糸、7;高目付部、8;低目付部、9,22;中間目付部、9a;第1中間目付部、9b;第2中間目付部、S1,S2,Sa〜Sg;ステッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7