(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に開示されたシートベルト装置用タングは固定エレメントを備えている。この固定エレメントのフィンガとクランプ部材のフィンガとが対向すると、上記開口の内周部に接近する方向へのクランプ部材の移動が規制される。すなわち、上記特許文献1に開示されたシートベルト装置用タングでは、このような構成を設けることで不用意にウェビングがクランプされることを防止又は抑制している。
【0005】
しかしながら、このような構成を設けることによってシートベルト装置用タングの体格が大きくなる。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、体格を大きくすることなく、ウェビングをクランプするための方向への不用意な移動を防止又は抑制でき、しかも、クランプ部材が移動開始した後には比較的小さな荷重でクランプ部材が移動できるシートベルト装置用タング及びシートベルト装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明に係るシートベルト装置用タングは、バックルに挿し込み可能な挿込部を有すると共に、内側をウェビングが通過して前記ウェビングの長手方向に移動可能に前記ウェビングに設けられたタング本体と、前記タング本体に設けられて前記ウェビングが掛け回されると共に前記ウェビングによって引っ張られることにより前記タング本体に対して所定方向へ動いて前記タング本体と共に前記ウェビングをクランプするクランプ部材と、前記クランプ部材及び前記タング本体のうちの何れかの一方に設けられ、前記何れかの他方に付勢力を付与して前記クランプを前記所定方向とは反対方向へ付勢する付勢手段と、前記何れかの他方に設けられて、前記クランプ部材が前記所定方向へ移動する前の状態で前記付勢手段に係合し、前記付勢手段を介して間接的に前記クランプ部材が前記所定方向へ移動することを規制し、
前記ウェビングからの一定の大きさ以上の引っ張り力が前記クランプ部材を介して前記付勢手段に付与されることによって前記付勢手段を弾性変形させることにより前記クランプ部材の移動規制を解除し、更に、前記移動規制が解除された状態で前記付勢手段が前記何れかの他方に付与する付勢力を前記一定の大きさ未満とする規制手段と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の本発明に係るシートベルト装置用タングでは、タング本体の挿込部がバックルに挿し込まれる。この状態でウェビングがシートに着座した乗員の身体に掛け回されていれば、乗員の身体に対するウェビングの装着状態になり、乗員の身体がウェビングによって拘束される。
【0009】
ウェビングはタング本体に設けられたクランプ部材に掛け回されているため、例えば、乗員がウェビングを身体に装着するにあたり、ウェビングを引っ張ると、クランプ部材がウェビングに引っ張られる。しかしながら、クランプ部材及びタング本体のうちの何れかの一方には付勢手段が設けられており、この付勢力がクランプ部材を所定方向とは反対方向へ付勢している。
【0010】
しかも、クランプ部材及びタング本体のうちの何れかの他方には規制手段が設けられており、この規制手段が付勢手段に係合した状態では規制手段が付勢手段を介して間接的にクランプ部材の所定方向(すなわち、クランプ部材がタング本体とでウェビングをクランプする方向)への移動を規制している。これにより、クランプ部材が所定方向へ不用意に動くことがない。このため、この状態では、タング本体がウェビングに沿って自由に移動でき、タング本体の挿込部をバックルに容易に装着できる。
【0011】
一方、例えば、車両が急減速することで乗員の身体が車両前方へ慣性移動しようとするとウェビングが乗員の身体に引っ張られる。ウェビングはタング本体に設けられたクランプ部材に掛け回されているため、ウェビングが乗員の身体に引っ張られると、クランプ部材がウェビングに引っ張られる。上記のようにクランプ部材は付勢手段を介して間接的に規制手段に所定方向への移動が規制されている。このため、クランプ部材に付与された引っ張り力(荷重)は付勢手段を弾性変形させようとする。
【0012】
この引っ張り力(荷重)が一定の大きさを越え、これによる弾性変形が付勢手段に生じると、規制手段による付勢手段を介した間接的なクランプ部材の移動規制が解除され、クランプ部材は所定方向、すなわち、タング本体とでウェビングをクランプする方向へ動く。
【0013】
さらに、クランプ部材が動くと、付勢手段が前記何れか他方に付与する付勢力は上記の一定の大きさよりも小さくなる。このため、クランプ部材が所定方向へ動き始めるにはクランプ部材に上記の一定の大きさ以上の引っ張り力(荷重)が必要であるのに対し、クランプ部材が所定方向へ動き始めた後には、動き始めよりも小さな引っ張り力で所定方向へ動くことができる。このようにしてクランプ部材が所定方向へ動くと、クランプ部材とタング本体とによってウェビングがクランプされる。
【0014】
これによって、例えば、ウェビングにおいて乗員の肩部や胸部を拘束する部分、所謂「ショルダウェビング」がタング本体のタング本体を通過して乗員の腰部を拘束する部分、所謂「ラップウェビング」の側へ移動し、これによりラップウェビングがそれまでよりも長くなることを抑制できる。
【0015】
ここで、上記のように本発明に係るシートベルト装置用タングにおいて規制部材は付勢部材を介してクランプ部材の移動を規制でき、一定の大きさ以上の引っ張り力で付勢部材が弾性変形した場合にクランプ部材の移動規制を解除できればよい。このため、規制部材の構成を簡素化でき、本発明に係るシートベルト装置用タングの体格の大型化を防止又は抑制できる。
【0016】
請求項2に記載の本発明に係るシートベルト装置用タングは、請求項1に記載の本発明において、
前記規制手段は、前記クランプ部材が動く前の状態で前記付勢手段に対向し、前記付勢手段に当接することによって前記クランプ部材が前記所定方向への動きを直接又は間接的に規制すると共に、前記一定の大きさ以上の荷重を受けた前記付勢手段が弾性変形しつつ滑る規制面と、前記付勢手段が弾性変形しつつ前記
規制面上を滑った滑り方向側で前記
規制面に連続して形成されると共に、前記規制面上を滑った前記付勢手段が載り上がり、載り上がった状態で前記クランプ部材が前記所定方向へ動くことによって前記付勢手段が滑る滑り面と、を含めて構成された規制部を
備えている。
【0017】
請求項2に記載の本発明に係るシートベルト装置用タングによれば、規制手段を構成する規制部は、クランプ部材が所定方向へ動く前の状態で付勢手段に対向する規制面を備えている。クランプ部材が所定方向へ動こうとすると規制部の規制面に付勢手段が当接する。このように
規制面に付勢手段が当接することによって、クランプ部材の所定方向への動き、又は、このクランプ部材の所定方向への動きに応じた付勢手段の動きが規制される。
【0018】
このように、
規制面に付勢手段が当接した状態で、ウェビングからクランプ部材に付与される引っ張り力が一定の大きさ以上になると、付勢手段は
規制面上を滑りながら弾性変形する。このようにして
規制面上を滑った付勢手段は
規制面に対して傾いた滑り面上に載り上がる。付勢手段が滑り面上に載り上がった状態でクランプ部材が更に所定方向へ動くと、付勢手段は滑り面上を動く。
【0019】
請求項3に記載の本発明に係るシートベルト装置用タングは、請求項2に記載の本発明において、
前記付勢手段が前記
規制面から離間するよう
に前記滑り面上を滑ること
によって前記付勢手段が前記付勢手段の付勢力に抗し
て弾性変形さ
れるように前記滑り面
が構成されている。
【0020】
請求項3に記載の本発明に係るシートベルト装置用タングによれば、規制手段を構成する規制部の滑り面上を
規制面から離間するように付勢手段が滑ると、付勢手段はその付勢力に抗して弾性変形
される。このため、クランプ部材を所定方向へ引っ張られなくなると、付勢手段はその復元力(弾性力)で滑り面上を
規制面側へ滑る。これによって、クランプ部材が所定方向とは反対方向へ動く。このように、本発明に係るシートベルト装置用タングは、所定方向へ動いたクランプ部材を元の位置へ戻すための特別な作業が不要である。
【0021】
請求項4に記載の本発明に係るシートベルト装置用タングは、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の本発明において、
前記付勢手段は、基端側が前記クランプ部材及び前記タング本体のうちの何れかの一方に係止されて、規制手段から先端側にて受ける荷重によって基端側に対して先端側が幅方向を軸方向とする軸周りに湾曲するように弾性変形する板ばね
とされている。
【0022】
請求項4に記載の本発明に係るシートベルト装置用タングによれば、付勢手段が板ばねとされ、その基端側がクランプ部材及びタング本体のうちの何れかの一方に係止される。板ばねの先端側は、クランプ部材及びタング本体のうちの何れかの他方に設けられた規制手段からの荷重を受けることによって基端側に対して先端側が幅方向を軸方向とする軸周りに湾曲するように弾性変形する。
【0023】
このように、付勢手段を板ばねにすると、その弾性変形が板ばねの幅方向を軸方向とする軸周りの湾曲に限定されやすい。すなわち、付勢手段が不用意に他の方向に弾性変形することがない。
【0024】
請求項5に記載の本発明に係るシートベルト装置用は、先端側が車両用のシートにおける乗員の着座位置の側方で前記シート又は車両の車体に直接又は間接的に係止されたウェビングと、前記着座位置を介して前記ウェビングの先端側の係止位置とは反対側に設けられたバックルと、前記請求項1から請求項4の何れか1項に記載のシートベルト装置用タングと、を備えている。
【0025】
請求項5に記載のシートベルト装置では、車両用のシートにおける乗員の着座位置の側方でウェビングの先端側がシート又は車両の車体に直接又は間接的に係止される。このシートに着座した乗員の身体に対してウェビングが掛け回された状態でシートにおける乗員の着座位置を介してウェビングの先端側の係止位置とは反対側に設けられたバックルにシートベルト装置用タングが装着されると、シートベルト装置用タングがバックルに保持されて、乗員の身体に対するウェビングの装着状態になる。
【0026】
ここで、本発明に係るシートベルト装置を構成するシートベルト装置用タングは、上述している。請求項1から請求項4の何れか1項に記載されたシートベルト装置用タングである。このため、上述している。請求項1から請求項4の何れか1項に記載の本発明と同じ作用を奏し、その結果、上述している。請求項1から請求項4の何れか1項に記載の本発明と同じ効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上、説明したように、本発明では、特別な操作が不要で、しかも、クランプ部材がウェビングをクランプするための方向へ移動を開始する際に比較的大きな荷重を要し、クランプ部材が移動開始した後には比較的小さな荷重でクランプ部材が移動できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に本発明の各実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態の説明において説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
【0030】
<第1の実施の形態の構成>
図1には第1の実施の形態に係るシートベルト装置用タング10(以下、単に「タング10」と称する)を用いたシートベルト装置12の全体構成の概略が正面図により示されている。
【0031】
この図に示されるように、シートベルト装置12は、ウェビング格納手段としてのウェビング巻取装置14を備えている。ウェビング巻取装置14は、例えば、車両のセンターピラーの下端側で、車両を構成する車体に固定されている。このウェビング巻取装置14には図示しないスプールが、例えば、車両の前後方向を軸方向とする軸周りに回転可能に設けられており、このスプールに可撓性を有する長尺帯状に形成されたウェビング16の長手方向基端側が係止されている。
【0032】
ウェビング16の長手方向基端側は上記のスプールの外周部に巻取られた状態で格納されている。ウェビング16におけるスプールよりも先端側は、センターピラーに沿って車両の上方へ引出され、センターピラーの上端部近傍に設けられたショルダアンカ18を通過して、車両の下方へ折り返されている。車両下方へ折り返されたウェビング16の先端は、車両用のシート20の側方で車体に固定されたアンカ22に係止されている。
【0033】
なお、本実施の形態は、車体側にウェビング巻取装置14やアンカ22が固定された構成である。しかしながら、例えば、ウェビング巻取装置14はシート20を構成するシートバック24に内蔵される構成であってもよいし、シートバック24の後方にウェビング巻取装置14が設けられる構成であってもよい。また、アンカ22も車体ではなく、シート20の骨格等を構成する部材に取り付けられる構成であってもよい。
【0034】
本実施の形態に係るタング10は、ウェビング16の先端(アンカ22に係止される部分)とショルダアンカ18との間に設けられている。このタング10に対応してシート20を介してウェビング巻取装置14やアンカ22の配置位置とは反対側にはバックル26が車体又はシート20の骨格等を構成する部材に固定されている。
【0035】
詳細に関しては後述するが、タング10はバックル26に装着できるようになっており、シート20のシートクッション28に着座した乗員30が、ウェビング巻取装置14のスプールからウェビング16を引出して、ウェビング16を前方から身体に掛け回した状態でタング10をバックル26に装着すると、乗員30の身体に対するウェビング16の装着状態になる。この状態では、ウェビング16におけるタング10とアンカ22との間がラップウェビング32とされて、乗員30の腰部を前方から拘束し、ウェビング16におけるショルダアンカ18とタング10との間がショルダウェビング34とされて、乗員30の肩部や胸部等を前方から拘束する。
【0036】
なお、本実施の形態のシートベルト装置12は、例えば、車両の運転席や助手席等の一人掛のシート20に対応した構成であるが、例えば、車両の後部座席等に用いられる複数人掛のベンチシートに本発明を適用することができる。このようなベンチシートに本発明を適用する場合、ベンチシートにおける乗員30の着座位置に対してシート幅方向一方の側にウェビング巻取装置14やシートバック24が設けられ、他方の側にバックル26が設けられる。
【0037】
<タング10の構成>
図2にはタング10の構成の概略が分解斜視図により示されており、
図3にはタング10の構成が側面断面図により示されている。
【0038】
この図に示されるように、タング10はタング本体40を構成する芯金42を備えている。芯金42は金属平板を打ち抜き、更に、曲げ成形することにより形成されている。この芯金42は挿込部44を備えており、タング10をバックル26に装着する際には、挿込部44がバックル26に形成された開口からバックル26に挿入される。挿込部44には透孔46が形成されている。挿込部44がバックル26に挿入されると、バックル26に設けられたラッチが透孔46に入り込む。挿込部44がバックル26から抜け出ようとすると、ラッチが透孔46の内周部に干渉してバックル26から抜け出る方向への挿込部44の移動が規制される。これにより、バックル26へのタング10の装着状態となる。
【0039】
また、芯金42における挿込部44よりも基端側(タング10をバックル26に挿し込む際の挿込方向とは反対側)は基部48とされている。
図3に示されるように、基部48は挿込部44の厚さ方向一方の側(
図3、
図4の各図における左側)へ向けて開口した凹形状とされている。この基部48を構成する底板50には貫通孔52が底板50をその厚さ方向に貫通するように形成されている。また、凹形状の基部48において底板50の挿込部44とは反対側から底板50の厚さ方向一方の側(
図3、
図4の各図における左側)へ延びる側壁54には貫通孔56が側壁54をその厚さ方向(
図3、
図4の各図における上下方向)に貫通するように形成されている。
【0040】
このような構成の基部48は合成樹脂材によって形成された被覆部62により被覆されている。この被覆部62において上述した基部48の側壁54と挿込部44との間に対応する空間はクランパ収容部64とされている。また、被覆部62にはウェビング通過部66が形成されている。ウェビング通過部66は上述した貫通孔52の内周部が被覆部62を構成する合成樹脂材により被覆されることで形成されており、被覆部62の内側であるクランパ収容部64と被覆部62の外側とを連通している。
【0041】
また、被覆部62にはウェビング通過部68が形成されている。ウェビング通過部68は上述した貫通孔56の内周部が被覆部62を構成する合成樹脂材により被覆されることで形成されている。上述したウェビング16はショルダウェビング34が被覆部62の外側からウェビング通過部68を通過してクランパ収容部64の内側に入り込み、更に、ウェビング通過部66を通過して被覆部62の外側に延びた部分がラップウェビング32となっている。
【0042】
このクランパ収容部64の内側にはクランプ部材としてのクランパ72が設けられている。本実施の形態においてクランパ72は全体的に合成樹脂材を成形することによって形成されている。クランパ72はクランパ本体74を備えている。クランパ本体74は厚さ方向が上述した底板50の厚さ方向に沿った板状に形成されている。このクランパ本体74はクランパ収容部64の底面、すなわち、被覆部62において底板50を被覆した部分と摺接しており、クランパ収容部64の底面に沿って上述したウェビング通過部68に接離する向きに移動可能とされている。なお、以下、クランパ72の移動方向においてクランパ収容部64の底面に沿ってウェビング通過部68に接近する向き(
図3及び
図4の各図における上方)を便宜上『クランプ方向』と称する。
【0043】
このクランパ本体74におけるウェビング通過部68とは反対側の端部からは顎部76がウェビング通過部66の内側へ向けて連続して形成されている。ウェビング通過部68とウェビング通過部66との間でウェビング16はクランパ72のクランパ本体74及び顎部76に掛け回されている。
【0044】
顎部76がウェビング通過部66における側壁54側の内端(
図3及び
図4の各図におけるウェビング通過部66の上端)に接するまでクランパ72がクランプ方向へスライドすると、クランパ本体74における顎部76とは反対側の端部と、被覆部62における側壁54を被覆した部分とがウェビング16をクランプし、ウェビング16がその長手方向に移動すること(換言すると、ウェビング16の長手方向に沿ってタング10がウェビング16に対して相対的に移動すること)を規制又は抑制する。
【0045】
一方、クランパ収容部64の内側には付勢手段としての板ばね82が設けられている。
図2に示されるように、板ばね82は、その基部がクランパ収容部64の底面におけるウェビング通過部68側で固定されている。板ばね82は、クランパ収容部64の底面に固定された部分から概ねクランプ方向とは反対向きで且つクランパ収容部64の底面から離間する向きに延びている。
【0046】
板ばね82の先端部に対応してクランパ72におけるクランパ本体74の幅方向側方(
図3及び
図4における紙面手前側及び奥行き側)には規制手段としての係合部92が形成されている。係合部92のウェビング通過部68側の面は規制面94とされ、板ばね82の先端が当接する。
【0047】
一方、係合部92のクランパ収容部64の底面とは反対側の面は滑り面としての復帰斜面96とされている。板ばね82は、その先端が規制面94に当接した状態から、その弾性力に抗して弾性変形することによって復帰斜面96に載り上がることができる。さらに、復帰斜面96はクランプ方向とは反対方向へ向けて漸次クランパ収容部64の底面から離間するような傾斜面とされている。このため、板ばね82の先端が復帰斜面96に載り上がった状態でクランパ72がクランプ方向へスライドすると、板ばね82はその先端がクランパ収容部64の底面から離間するように漸次弾性変形する。
【0048】
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0049】
本タング10を適用したシートベルト装置12では、シート20のシートクッション28に着座した乗員30が身体にウェビング16を装着する際には、先ず、タング10を把持した状態でタング10と共にウェビング16を引っ張る。このウェビング16の引っ張りによりウェビング巻取装置14のスプールからウェビング16が引出される。このようにして引出されたウェビング16を乗員30が身体の前方でウェビング16を身体に掛け回し、この状態でタング10の挿込部44をバックル26に挿し込むと、バックル26によるタング10の保持状態となり、乗員30の身体に対するウェビング16の装着状態になる。
【0050】
この乗員30の身体に対するウェビング16の装着状態では、ウェビング16におけるタング10とアンカ22との間の部分がラップウェビング32とされ、乗員30の腰部がシート20の前方や上方からラップウェビング32によって拘束される。これに対して、ウェビング16におけるタング10とショルダアンカ18との間の部分はショルダウェビング34とされ、乗員30の肩部や胸部がシート20の前方からショルダウェビング34によって拘束される。
【0051】
ところで、乗員30がウェビング16を装着するにあたって、タング10を把持してタング10と共にウェビング16を引っ張るとウェビング16がクランパ72をクランプ方向に引っ張る。ここで、本実施の形態では、クランパ72における係合部92の規制面94に板ばね82の先端が当接している。このため、上記のように、ウェビング16にクランパ72が引っ張られても、クランパ72のクランプ方向への移動が規制される。これにより、クランパ72と被覆部62における側壁54を被覆する部分とでウェビング16がクランプされることがない。したがって、この状態では、ウェビング16がその長手方向にウェビング通過部68を通過でき、乗員30は容易にウェビング16を装着できる。
【0052】
一方、このウェビング16の装着状態で、例えば、車両が急減速すると乗員30の身体によってウェビング16におけるラップウェビング32及びショルダウェビング34の双方がシート20の前方へ引っ張られる。このようにラップウェビング32及びショルダウェビング34がクランパ72を引っ張ると、ラップウェビング32及びショルダウェビング34がクランパ72をクランプ方向へ引っ張る。
【0053】
このラップウェビング32及びショルダウェビング34からの引っ張り力が所定の大きさを越えると、板ばね82は先端が規制面94に当接したまま弾性変形し、その復元力によって係合部92の復帰斜面96に載り上がる。この状態で更にラップウェビング32及びショルダウェビング34がクランパ72を引っ張ると、クランパ72がクランプ方向へスライドしてクランパ72と被覆部62における側壁54を被覆する部分とでウェビング16をクランプする。これによってウェビング16におけるショルダウェビング34側の部分がクランパ収容部64を通過してラップウェビング32側へ移動することを防止又は抑制できる。
【0054】
また、上記のように、板ばね82の先端が復帰斜面96に載り上がった状態でクランパ72がクランプ方向へスライドすると、板ばね82は先端がクランパ収容部64の底面から離間するように弾性変形する。この状態からの板ばね82の弾性変形は板ばね82の先端が係合部92の規制面94に当接した状態から復帰斜面96に載り上がるまでに要する弾性変形よりも小さな変形である。このため、ラップウェビング32及びショルダウェビング34がクランパ72を引っ張る引っ張り力がそれまでよりも小さくても、クランパ72をクランプ方向へ移動させることができる。
【0055】
さらに、板ばね82の先端が復帰斜面96に載り上がってからクランパ72がクランプ方向へスライドすると、板ばね82が漸次弾性変形して板ばね82の弾性力が増加する。この弾性力は、復帰斜面96を押圧してクランパ72をクランプ方向とは反対方向へスライドさせようとする。このため、クランパ72に対するラップウェビング32及びショルダウェビング34からの引っ張り力の付与が解消されると、クランパ72は板ばね82からの押圧力でクランプ方向とは反対方向にスライドする。これにより、元の状態、すなわち、係合部92の規制面94に板ばね82の先端が当接する状態に復帰できる。
【0056】
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0057】
<第2の実施の形態>
図5には本実施の形態に係るシートベルト装置用タング110(以下、単に「タング110」と称する)の構成の概略が分解斜視図により示されており、
図6及び
図7にはタング110の構成が側面断面図により示されている。
【0058】
これらの図に示されるように、タング110はクランパ72に代わりクランプ部材としてのクランパ112を備えている。このクランパ112はウェビング16においてクランパ収容部64の内側を通過する部分の幅方向に沿って貫通した筒形状に形成されている。このクランパ112も前記第1の実施の形態におけるクランパ72と同様にクランパ収容部64の底面に沿ってウェビング通過部68に対して接離する向きにスライドでき、
図7に示されるように、クランパ112がウェビング通過部68に接近する向き、すなわち、クランプ方向にスライドすると、クランパ112のウェビング通過部68側の部分と被覆部62における側壁54を被覆した部分とでウェビング16をクランプし、ウェビング16がその長手方向に移動すること(換言すると、ウェビング16の長手方向に沿ってタング10がウェビング16に対して相対的に移動すること)を規制又は抑制できる。
【0059】
このクランパ112には付勢部材としての板ばね114を備えている。板ばね114の基部には挿込部116が形成されている。この挿込部116はクランパ112の開口端からクランパ112に嵌挿されており、これによって、板ばね114がクランパ112に取り付けられている。板ばね114は先端側がウェビング通過部68側へ向かって延びている。
【0060】
板ばね114の先端部に対応してクランパ収容部64の内側におけるウェビング通過部68側には規制手段としての係合部122が形成されている。係合部122のウェビング通過部68とは反対側の面は規制面124とされ、板ばね114の先端が当接する。
【0061】
一方、係合部122のクランパ収容部64の底面とは反対側の面は滑り面としての復帰斜面126とされている。板ばね114は、その先端が規制面124に当接した状態から、その弾性力に抗して弾性変形することによって復帰斜面126に載り上がることができる。さらに、復帰斜面126はクランプ方向とは反対方向へ向けて漸次クランパ収容部64の底面から離間するような傾斜面とされている。このため、板ばね114の先端が復帰斜面126に載り上がった状態でクランパ112がクランプ方向へスライドすると、板ばね114はその先端がクランパ収容部64の底面から離間するように漸次弾性変形する。
【0062】
すなわち、前記第1の実施の形態は、付勢手段としての板ばね82がクランパ収容部64の底面、すなわち、タング本体40に設けられ、規制手段としての係合部92がクランプ部材としてのクランパ72に設けられた構成であった。これに対して、本実施の形態は、付勢手段としての板ばね114がクランプ部材としてのクランパ112に設けられ、規制部としての係合部122がクランパ収容部64の底面、すなわち、タング本体40に設けられた構成である。
【0063】
このように、付勢手段と規制部との設定位置が前記第1の実施の形態とは反対になるが、本実施の形態の構成であっても、前記第1の実施の形態と同様の作用を奏し、前記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0065】
<第3の実施の形態>
図8には本実施の形態に係るシートベルト装置用タング140(以下、単に「タング140」と称する)の構成の概略が分解斜視図により示されており、
図9及び
図10にはタング140の要部を拡大した拡大断面図が示されている。
【0066】
これらの図に示されるように、タング140にはウェビング通過部68が形成されておらず、ショルダウェビング34はウェビング通過部66からクランパ収容部64の内側へ入り込み、クランパ収容部64の開口端から抜け出てラップウェビング32となる。
【0067】
このタング140のクランパ収容部64にはクランパ72に代わるクランプ部材としてのクランパ142が設けられている。このクランパ142は長手方向がウェビング16においてクランパ収容部64の内側を通過する部分の幅方向に沿った棒状に形成されている。このクランパ142の軸方向両端部からは軸部146が同軸的に突出形成されており、クランパ収容部64の内壁に形成された軸受孔148に回転自在に支持されている。
【0068】
クランパ142にはクランパ収容部64の開口端から入り込むウェビング16が掛け回されており、ウェビング16がウェビング通過部66側へ移動すると、ウェビング16とクランパ142の外周部との間の摩擦によりクランパがクランプ方向(
図9及び
図10の右回り方向で
図11の左回り方向)にクランパ142の外周部は軸部146の中心軸線からの距離が部位によって異なり、初期状態においてはクランパ142の外周部とクランパ収容部64の底面との間隔はウェビング16の厚さ寸法よりも大きい。
【0069】
このため、クランパ142に掛け回されてクランパ収容部64の内側に入り込んだウェビング16はクランパ142とクランパ収容部64の底面との
間を容易に通過して、クランパ収容部64の開口端側へ移動できる。
【0070】
ここで、クランパ142にはクランプ部144が形成されている。このクランプ部144は軸部146の中心軸線からの距離が長く、このクランプ部144がクランパ収容部64の底面とでウェビング16をクランプする位置までクランパ142が回転した状態ではクランプ部144との間隔がウェビング16の厚さ寸法以下となり、クランパ142のクランプ部144とクランパ収容部64の底面とがウェビング16をクランプして、クランパ収容部64の開口端側へのウェビング16の移動を規制する。
【0071】
また、本タング140におけるクランパ収容部64の内側には付勢手段としての板ばね152が装着されている。この板ばね152に対応してクランパ142における軸部146側には規制手段としての係合カム154が一体的に設けられている。
図11に示されるように、係合カム154の外周一部には係合カム154
の外周部の他の部分よりも軸部146の中心軸線からの距離が短い規制面としての凹部156が形成されており、この凹部156の内側に板ばね152の先端が入り込んでいる。
【0072】
このため、クランパ142がクランプ方向へ回転するには、凹部156から板ばね152の先端が抜け出るまで板ばね152が弾性変形しなくてはならない。また、凹部156から板ばね152が抜け出た状態では板ばね152の先端が係合カム154の外周部に圧接するが、それ以降のクランパ142のクランプ方向への回転には、板ばね152に凹部156から抜け出るときのような弾性変形を要しない。このため、板ばね152の先端が凹部156から抜け出た後にはクランパ142は比較的容易にクランプ方向へ回転できる。
【0073】
このように、本実施の形態も前記第1の実施の形態と同様の作用を奏し、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。