特許第5961549号(P5961549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961549
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】ケーブル施工管理支援システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20160719BHJP
   H02G 1/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G06Q50/08
   H02G1/00
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-287976(P2012-287976)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-130483(P2014-130483A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】袴田 靖文
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大樹
(72)【発明者】
【氏名】蔵野 国司
【審査官】 小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−112853(JP,A)
【文献】 特開2008−299859(JP,A)
【文献】 特開平09−274094(JP,A)
【文献】 特開2012−088905(JP,A)
【文献】 特開平04−223851(JP,A)
【文献】 特開平09−212392(JP,A)
【文献】 特開2001−202119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
H02G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル施工管理支援システムは、
ケーブル番号、ケーブルの物理量、ケーブル線種、ケーブル長、ケーブルルート情報、及びケーブル布設時期を格納した設計データベースと、
芯数と導体サイズを格納したケーブル線種データベースと、
最大巻き取り長が記憶されたドラムデータベースと、
布設限界誤差、工事期間、ケーブル布設期間、及び単位工事期間あたりの作業日数を格納した管理データベースと、
表示装置を有する処理装置と
を有し、
前記処理装置は、
トータルケーブル長、単位工事期間当たりの作業日数、及び工事期間の値によって決まる、作業を始めてx日目における総布設ケーブル長の推定値を、成長曲線で表わしたy(x)と、前記ケーブル布設時期と前記ケーブル線種を反映したケーブル長と、パラメータの記憶領域、及び
前記ケーブル布設時期を昇順に並べた布設優先順位から、前記布設優先順位の高いケーブルと同一の布設ルート情報を持つ前記布設優先順位の低いケーブルの布設時期を、同一の布設ルート情報を持つケーブルの前記布設優先順位と同一に設定する手段とを有し、
前記ケーブルの布設時期の設定の際に、
前記の各値により計算可能な各布設時期の総布設ケーブル長を、総布設ケーブル長の推定値y(x)と比較して、
推定値y(x)≦各布設時期の総布設ケーブル長のとき、前記布設優先順位の低いケーブルの中で、ケーブル布設優先順位を高くしたケーブルの布設優先順位を当初の布設優先順位に戻すことで、推定値y(x)=各布設時期の総布設ケーブル長とし、
推定値y(x)>各布設時期の総布設ケーブル長のとき、前記工事期間を短くし工事の進捗を前倒しすることで、各布設時期の総布設ケーブル長=推定値y(x)とする、
ことを特徴とするケーブル施工管理支援システム。
【請求項2】
前記処理装置は、
前記推定値y(x)に一致した各布設時期の総布設ケーブル長の中で、前記ケーブル線種データベース毎にケーブル長を集計し、布設期間毎にケーブルドラムにケーブルを巻くことで、各ケーブルドラムに線種情報に加えて布設期間を決定する手段を有することを特徴とする請求項1記載のケーブル施工管理支援システム。
【請求項3】
ケーブル番号、ケーブルの物理量、ケーブル線種、ケーブル長、ケーブルルート情報、及びケーブル布設時期を格納した設計データベースと、
芯数と導体サイズを格納したケーブル線種データベースと、
最大巻き取り長が記憶されたドラムデータベースと、
布設限界誤差、工事期間、ケーブル布設期間、及び単位工事期間あたりの作業日数を格納した管理データベースと、
表示装置を有する処理装置におけるケーブル施工管理支援方法であって、
前記処理装置は、
トータルケーブル長、単位工事期間当たりの作業日数、及び工事期間の値によって決まる、作業を始めてx日目における総布設ケーブル長の推定値を、成長曲線で表わしたy(x)と、前記ケーブル布設時期と前記ケーブル線種を反映したケーブル長と、パラメータを記憶領域に記憶し、
前記ケーブル布設時期を昇順に並べた布設優先順位から、前記布設優先順位の高いケーブルと同一の布設ルート情報を持つ前記布設優先順位の低いケーブルの布設時期を、同一の布設ルート情報を持つケーブルの前記布設優先順位と同一に設定し、
前記ケーブルの布設時期の設定の際に、
前記の各値により計算可能な各布設時期の総布設ケーブル長を、総布設ケーブル長の推定値y(x)と比較して、
推定値y(x)≦各布設時期の総布設ケーブル長のとき、前記布設優先順位の低いケーブルの中で、ケーブル布設優先順位を高くしたケーブルの布設優先順位を当初の布設優先順位に戻すことで、推定値y(x)=各布設時期の総布設ケーブル長とし、
推定値y(x)>各布設時期の総布設ケーブル長のとき、前記工事期間を短くし工事の進捗を前倒しすることで、各布設時期の総布設ケーブル長=推定値y(x)とする、
ことを特徴とするケーブル施工管理支援方法。
【請求項4】
前記処理装置は、
前記推定値y(x)に一致した各布設時期の総布設ケーブル長の中で、前記ケーブル線種データベース毎にケーブル長を集計し、布設期間毎にケーブルドラムにケーブルを巻くことで、各ケーブルドラムに線種情報に加えて布設期間を決定することを特徴とする請求項3記載のケーブル施工管理支援方法。
【請求項5】
前記成長曲線はゴンペルツ曲線(Gompertz curve)であることを特徴とする請求項1記載のケーブル施工管理支援システム。
【請求項6】
前記成長曲線はゴンペルツ曲線(Gompertz curve)であることを特徴とする請求項3記載のケーブル施工管理支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル布設工事全てに係り、特に、ケーブル物量が膨大となる大型プラントにおいて、建設設計に好適なケーブル施工管理支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブル布設工事において、ケーブルの布設優先順位と、各々のケーブルの布設ルートから最終的なケーブル布設時期を決定する必要がある。前記ケーブルの布設優先順位と前記ケーブルの布設ルートの両者は、設計者によって設計される。しかしながら最終的なケーブル布設時期の決定は、工事の進捗状況が分かる工事現場の監督により行われる。これは、監督の技量に、ケーブル布設工事の成否が左右されることを意味する。また設計者と工事監督者と、二度にわたってケーブル布設時期が決定されることは、時間の浪費である。
【0003】
ケーブル布設工事において、工事の進捗は一般にS字カーブを描く。特許文献1では、全ての単位期間毎におけるケーブルの布設長さが一定であれば、山積み線(工事の進捗)は直線となり、工事の開始時や終了時に作業効率が落ちることを考慮すれば、工事の進捗は中心付近がほぼ一定の傾きを有するなだらかなS字カーブになることが好ましい、と報告している。
【0004】
ケーブル布設工事において、ケーブル布設時期を考慮してケーブルドラムに巻かれるケーブルを決定する必要がある。特許文献2は、製造されるケーブルの一割が、施工不備によって捨てられることに着目し、切断する順番と工事の順番とを操作してケーブルドラムに巻かれたケーブルを出来るだけ余らせないように有効に切り分ける手段を報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−112853号公報
【特許文献2】特開2002−191106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された従来の技術では、工事の進捗は中心付近がほぼ一定の傾きを有するなだらかなSカーブになることが好ましいと報告されているが、最適なSカーブとなるよう、予め工事の進捗管理を計画する、定量的な見解にまでは至っていない。
【0007】
ケーブル布設工事に限らず、様々な工事の進捗はSカーブとなるため、本発明によって解決する技術は、ケーブル布設工事に限ったものではない。
【0008】
また特許文献2に記載された従来の技術は、次の事項について配慮されていない。
【0009】
ケーブルがそれぞれ布設時期を持つことは言及されていなく、布設優先順位と布設ルートの二つから、前記ケーブル布設時期を決定する配慮がなされていない。また、前記ケーブル布設時期が、最適な進捗計画のもと決定される配慮がなされていない。
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、最適な進捗計画が実行可能なケーブル施工管理支援システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のケーブル施工管理支援システムは、ケーブル番号、ケーブルの物理量、ケーブル線種、ケーブル長、ケーブルルート情報、及びケーブル布設時期を格納した設計データベースと、芯数と導体サイズを格納したケーブル線種データベースと、最大巻き取り長が記憶されたドラムデータベースと、布設限界誤差、工事期間、布設期間、及び単位工事期間あたりの作業日数を格納した管理データベースと、aをトータルケーブル長、dを単位工事期間当たりの作業日数、wを工事期間とし、これらの値によって決まる、作業を始めてx日目における総布設ケーブル長の推定値を、成長曲線の一つであるゴンペルツ曲線(Gompertz curve)で表わしたy(x)と、前記ケーブル布設時期と前記ケーブル線種を反映したケーブル長と、パラメータの記憶領域を含んだ、表示装置を有するデータ処理と、前記ケーブル布設時期を昇順に並べた布設優先順位から、前記布設優先順位の高いケーブルと同一の布設ルート情報を持つ前記布設優先順位の低いケーブルの布設時期を、同一の布設ルート情報を持つケーブルの前記布設優先順位と同一にする機能とを有する。
【0011】
前記の各値により計算可能な各布設時期の総布設ケーブル長を、総布設ケーブル長の推定値y(x)と比較して、それぞれの比較結果に応じて以下の処理を行う。
【0012】
推定値y(x)≦各布設時期の総布設ケーブル長のとき、即ち、予定していた布設期間で布設可能なケーブル長が、実際に予定していたケーブル長よりも短いと推定される場合は、実際に予定していたケーブル長の布設時期が当初予定した布設時期よりも遅くなると推定されるので、前記布設優先順位の低いケーブルの中で、ケーブル布設優先順位を高くしたケーブルの布設優先順位を当初の布設優先順位に戻すことで、推定値y(x)=各布設時期の総布設ケーブル長とする。
【0013】
推定値y(x)>各布設時期の総布設ケーブル長のとき、即ち、予定していた布設期間で布設可能なケーブル長が、実際に予定していたケーブル長よりも長いと推定される場合は、実際に予定していたケーブル長の布設時期が当初予定した布設時期よりも早くなると推定されるので、前記工事期間を短くし工事の進捗を前倒しすることで、各布設時期の総布設ケーブル長=推定値y(x)とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業を始めてx日目における総布設ケーブル長を事前に推定することにより、最適な進捗計画が実行可能なケーブル施工管理支援システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ケーブル施工管理支援システムの構成と処理概要を示す。
図2A】ケーブル施工管理支援システムを使用する場合の概念を示すブロック図である。
図2B】ケーブル施工管理支援システムを使用する場合の概念を示すブロック図である。
図3A】従来のケーブル施工管理支援システムを使用する場合の、ケーブル布設時期を考慮したドラム決定手法の概念を示すブロック図である。
図3B】本発明のケーブル施工管理支援システムを使用する場合の、ケーブル布設時期を考慮したドラム決定手法の概念を示すブロック図である。
図4A】ケーブル施工管理支援システムを使用する場合の、布設優先順位と布設ルート情報からケーブル布設時期を決定するフロー図である。
図4B】ケーブル施工管理支援システムを使用する場合の、布設優先順位と布設ルート情報からケーブル布設時期を決定するフロー図である。
図5A】ケーブル施工管理支援システムを使用する場合の、各布設時期の総布設ケーブル長と数1から、最適な布設進捗計画を決定するフロー図である。
図5B】ケーブル施工管理支援システムを使用する場合の、各布設時期の総布設ケーブル長と数1から、最適な布設進捗計画を決定するフロー図である。
図6A】ケーブル施工管理支援システムを使用する場合の、布設期間毎にケーブルドラムにケーブルを巻くことで、各ケーブルドラムに線種情報に加えて布設期間を考慮させるフロー図である。
図6B】ケーブル施工管理支援システムを使用する場合の、布設期間毎にケーブルドラムにケーブルを巻くことで、各ケーブルドラムに線種情報に加えて布設期間を考慮させるフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係わるケーブル施工管理支援システムの構成と処理概要である。本発明のケーブル施工管理支援システムは、CPU、メモリ、記憶装置及び表示装置を有する計算機を用いて実現される。図1に示す通り、前記ケーブル施工管理支援システム101は、設計データベース102と、ケーブル線種データベース103と、ドラムデータベース104と、管理データベース105と、表示装置を有するデータ処理106とを有する。
【0018】
データ処理106は、aをトータルケーブル長、dを単位工事期間当たりの作業日数、wを工事期間とし、これらの値によって決まる、作業を始めてx日目における総布設ケーブル長の推定値を、成長曲線の一つであるゴンペルツ曲線(Gompertz curve)で表わしたy(x)に基づいてケーブルの布設時期を決定する。総布設ケーブル長の推定値y(x)は数1で表わされる。ゴンペルツ曲線は、座標の原点を通り、始まりと終わりのそれぞれにおける曲線の変化を別々に設定できる自由度を有する。
〔数1〕 y(x)=C(d・wf(x))/2 (数1)
但し、f(x)=exp(−kx)、k=(1/w)ln{ln(p)/ln(1−p)}、p=dw/(2a)、「ln」は自然対数ln=logである。2p=wd/aは、単位長さのケーブルを敷設するのに要する作業日数である。また、0<w<1とすると(数1のwは、この条件を満たすように予め補正されているものとする)、y(x)は、y(−∞)=0、y(0)=(d・w)/2、y(+∞)=d/2となるS字カーブの曲線であり、変曲点(x=(w/k)ln{ln(1/w)})を中心に左右非対称になる曲線である。また、Cは、作業日数をケーブル長に換算するための比例定数である。
【0019】
ケーブル施工管理支援システムは、後述の四つの出力機能107が可能なシステムである。図1の出力機能107に記載の内容を実現するために、後述の1.〜5.の処理を行う。
【0020】
図1は、前記設計データベース102の一例を示す。布設されるケーブルの番号108、導体抵抗等の物理量109、線種情報110、長さ111、ルート112、布設時期情報113が一目で分かるようになっている。
【0021】
図1は、前記ケーブル線種データベース103と前記ドラムデータベース104の一例を示す。ケーブル線種データベース103では布設されるケーブルの芯数114、導体サイズ115が一目で分かるようになっており、ドラムデータベース104と前記設計データベース内線種情報110がリンクしている。また、ドラムデータベース104では、ケーブル線種毎にケーブルドラム最大巻き取り長116が異なることが分かる。
【0022】
図1は、前記管理データベース105の一例を示す。布設限界誤差117、工事期間118、布設期間119、単位工事期間当たりの作業日数120が入力可能なフォーマットとなっている。
【0023】
表示装置を有するデータ処理装置106には、二つのパラメータA121、B122と、数1(123)と、布設時期と線種を反映したケーブル長124が含まれる。Aには最終的な布設時期を決定するパラメータが入力され、前記Bには初期の計画段階で割り振った布設計画時期を入力する。
【0024】
ここで、ケーブル施工管理支援システムによるケーブルの布設時期の設定における、四つの出力機能107について説明する。
【0025】
1.ケーブル布設時期を昇順に並べた布設優先順位から、布設優先順位の高いケーブルと同一の布設ルート情報を持つ布設優先順位の低いケーブルの布設時期を、同一の布設ルート情報を持つケーブルの布設優先順位と同一にする機能。
【0026】
2.同一の布設ルート情報を持つケーブルがない場合、布設ルートの一致する度合が高いケーブルの布設優先順位を、優先的に高くする機能。
【0027】
3.前記の各値により計算可能な各布設時期の総布設ケーブル長を数1の総布設ケーブル長の推定値y(x)と比較して、推定値y(x)≦各布設時期の総布設ケーブル長のとき、即ち、予定していた布設期間で布設可能なケーブル長が、実際に予定していたケーブル長よりも短いと推定される場合は、実際に予定していたケーブル長の布設時期が当初予定した布設時期よりも遅くなると推定されるので、前記布設優先順位の低いケーブルの中で、ケーブル布設優先順位を高くしたケーブルの布設優先順位を当初の布設優先順位に戻すことで推定値y(x)=各布設時期の総布設ケーブル長とする機能。
【0028】
4.推定値y(x)>各布設時期の総布設ケーブル長のとき、即ち、予定していた布設期間で布設可能なケーブル長が、実際に予定していたケーブル長よりも長いと推定される場合は、実際に予定していたケーブル長の布設時期が当初予定した布設時期よりも早くなると推定されるので、前記工事期間を短くし工事の進捗を前倒しすることで、各布設時期の総布設ケーブル長=推定値y(x)とする機能。
【0029】
5.数1に一致した各布設時期の総布設ケーブル長の中で、前記ケーブル線種データベース103毎にケーブル長を集計し、布設期間毎にケーブルドラムにケーブルを巻くことで、各ケーブルドラムに線種情報に加えて布設期間を考慮させる機能。
【0030】
図2A、Bには、前記最適なケーブル布設時期を決定した後、数1と比較する際の概念図を示す。
【0031】
従来の設計方法201では、全工事期間で、全てのケーブルを布設するという計画が立てられる。一方、前記ケーブル施工管理支援システムにおいては、始めに布設区間と布設期間の設定202を行う。次に、布設期間の遅いケーブルの中で、布設期間の早いケーブルと同一の布設ルート情報を持つケーブルの布設期間を前倒しするという操作203を行う。ステップ203において、A−Bは、ステップ202でBという布設期間に設定されたが、布設期間がAのケーブルと同じルートを持つため、前記布設期間がAに前倒しされた例を示す。そして、布設物理量を数1と比較204し、数1から逸脱した物量に関して山崩し205を行う。ステップ205では、布設期間Aのケーブル布設物量が数1を上回ったため、A−Cのケーブルの一部をステップ202で決めた布設期間に戻す例を示す。最後に、期間の最適化206を行い、即ち、当該物理量の布設が終了する期間が数1の推定値と同じくなるように期間の再設定を行い、それを元にケーブルの布設を行う。ステップ206では、布設期間Bのケーブル布設物量が数1を下回ったため、Bの布設期間を短くした例を示す。
【0032】
図3には、本発明により決定された前記ケーブル布設時期を考慮した、ドラム決定手法の概念図を示す。図3では、三種類のケーブル線種について考える。
【0033】
図3Aに示す従来の設計方法301では、全工事期間で、全てのケーブルを布設するという計画が立てられる。図3では各ドラムに1,000mケーブルが巻けるときの例を示す。ステップ301の例では、全工事期間で線種Iのケーブル長が2,500mなので、ケーブル1,000mが巻かれたドラムが二つと500m巻かれたドラム一つの、計三つのドラムができあがる。線種II及びIIIについても同様に考え、合計11のドラムが必要となる。一方、図2Bのステップ206にケーブル線種を当てはめた図3Bのステップ302では、同線種でも工事期間によってケーブルの巻かれるドラムが異なる。ドラムのケーブルの最大巻き取り長はステップ301と同様に1,000mだが、各ケーブルの長さを考慮してドラムに巻き取るため、各ドラムにより巻き取り長が異なる様子が見て取れる。ステップ302では、線種Iのケーブル2,500mが、布設期間Aのドラム一つ(900m)と、布設期間B及びCのドラム二つ(800m)に巻かれることが分かる。
【0034】
次に、図4図6を参照して、前記ケーブル施工管理支援システム101において、本発明を実施するための処理手順を説明する。前記ケーブル施工管理支援システムには前記四つの機能が備わり、特許文献1及び2に備わっていなかった機能を実現するもので、それぞれ図4図6を用いて説明する。
【0035】
始めに、図4A、Bのケーブル布設時期を昇順に並べた布設優先順位から、布設優先順位の高いケーブルと同一の布設ルート情報を持つ布設優先順位の低いケーブルの布設時期を、同一の布設ルート情報を持つケーブルの布設優先順位と同一にするフローを説明する。
【0036】
まず、全てのケーブルに1〜Nまで番号を振る(ステップ401)。この際、ケーブルに番号を振る順序は問わない。また、各ケーブルは、各々ルート情報を持つ。加えて、各々のケーブルには、AとBの二つのパラメータが用意されている。前記Aには最終的な布設時期を決定するパラメータが入力され、前記Bには初期の計画段階で割り振った布設計画時期を入力する。
【0037】
前記Bに1〜Mの計画時期(Mは計画時期の総数)を入力した後(ステップ402)、ケーブルのカウンタkを用いて(ステップ403)、ケーブル番号1〜Nの順に前記Bが1かどうか(工期が1番目かどうか)判断をする(ステップ404)。このとき、B=1であれば、A=1を入力し(最終的な施設時期も工期1とする)(ステップ405)、B≠1であればAには何も入力せず、これをk=Nとなるまで繰り返す(ステップ406、408)。
【0038】
次に、布設時期のカウンタjを準備する(ステップ407)。このときケーブルのカウンタkはk=1とする(ステップ409)。ステップ406で「Y」の場合は、k=Nとなっているので、ステップ409では、ケーブルのカウンタkに改めて初期値の「1」を設定する。前記Aが空欄のケーブルに対して(ステップ410)、そのケーブルの前記Bがjのケーブルと同じルートを通るかどうか判断する(ステップ411)。B=jのときには、A=jを入力し(ステップ412)、これをk=Nとなるまで繰り返す(ステップ413、415)。
【0039】
最後に、B=Mとなるまでカウンタjを使って、全てのケーブルの布設時期を決定する(ステップ414、417)。
【0040】
次に、図5A、Bを用いて、各布設時期の総布設ケーブル長と数1とを比較して、推定値y(x)≦各布設時期の総布設ケーブル長のとき、布設優先順位の低いケーブルの中で、ケーブル布設優先順位を高くしたケーブルの布設優先順位を当初の布設優先順位に戻すことで推定値y(x)=各布設時期の総布設ケーブル長とするフロー(ステップ514、516、521、522)と、推定値y(x)>各布設時期の総布設ケーブル長のとき、前記工事期間を短くし工事の進捗を前倒しすることで推定値y(x)=各布設時期の総布設ケーブル長とするフロー(ステップ515、517)を説明する。
【0041】
図5Aにおいて、前記設計データベース内の全ケーブル長の和(トータル物量a)と、前記管理データベース内布設限界誤差αと、単位工事期間当りの作業日数dを定義する(ステップ501)。データ処理並びに表示装置を用い、工事期間wを定義し(ステップ502)、数1を定義する(ステップ503)。図4で求めたケーブル布設時期を示すカウンタiを定義する(ステップ504)。上記定義に続き、ケーブル布設時期が1のケーブル物量Qを求める。Qの初期条件は、Q=0とする(ステップ505)。ケーブル番号を示すカウンタkを1として(ステップ506)、ケーブル番号kのケーブルのAが1か判断する(ステップ507)。前記ケーブルkのAが1のとき、Qに各々のケーブル長を足し(ステップ508)、ケーブルkのAが1でないときには、カウンタkを用いて上記操作をk=Nとなるまで繰り返す(ステップ509,511)。
【0042】
続いて、前記ケーブル布設時期1で布設可能なケーブル物量を、数1から算出する。まず、カウンタjを、ケーブル布設時期が1と振り分けられたケーブルの中で、パラメータBの値がM(最大)の状態とする(ステップ510)。ケーブル布設時期2の最初の週をx、ケーブル布設時期0の最後の週をxとする(ステップ512)。図5の512のS(L)は、その布設期間であり、ΣS(L)は、その時点での布設期間の総和である。前記xとxをそれぞれ数1に代入して、ケーブル布設時期1に布設可能なケーブル長yを算出する(ステップ513)。ステップ508で求めたケーブル物量Qとステップ513で求めたyを比較する(ステップ514)。両者を比較して、前記Qが前記yより少ない(Q<y)場合、前記Qに前記布設限界誤差αを加算する。その後、前記Qに前記布設限界誤差αを加えた値と、前記yを比較し(ステップ515)、Q+αが前記yを上回った場合には、前記ケーブル布設時期1の布設物量がQで確定する。その後、iカウンタを1上げ、布設時期がMまでの計画を順に検討する(ステップ518,520)。反対に、前記Qに前記布設限界誤差αを加えた値が、前記yを下回った場合には、布設期間を短くする(ステップ517)。布設期間を短くし、再度、前記Qと前記yを比較する。
【0043】
一方、前記Qが前記yよりも多い(Q>y)場合、ケーブル布設時期1のケーブル群に、前記パラメータBの中身がMのケーブルが存在するか確認する(ステップ516)。前記パラメータBがMのケーブルが無いときには、カウンタjを一つ下げる(ステップ521)。前記パラメータBがMのケーブルがあったとき、そのケーブル群の中で最小長さのケーブルの布設時期をBに変更する(ステップ522)。
上記により、数1と一致する、布設進捗計画を実施する。
【0044】
最後に、図6A、Bを用いて、数1に一致した各布設時期の総布設ケーブル長の中で、前記ケーブル線種データベース103毎にケーブル長を集計し、布設期間毎にケーブルドラムにケーブルを巻くことで、各ケーブルドラムに線種情報に加えて布設期間を設定するフローを説明する。
【0045】
まず、前記布設時期毎にケーブル線種毎の物量qを算出する。ドラム番号を示すカウンタLCと、ケーブル布設時期を示すカウンタiをそれぞれ1とする(ステップ601,602)。本実施例では、ケーブルの布設が完了するまで、ケーブルドラムの在庫は品切れにならないと仮定しているので、カウンタLCの最大値は存在しない。
【0046】
続いて前記ケーブル線種毎の物量qを0とし(ステップ603)、ケーブル番号を示すカウンタkも1とする(ステップ604)。ケーブル番号kのケーブルの前記ケーブル布設時期が1のとき、線種の種類を示すrカウンタを1とし、更に、ケーブル線種C(k)が1であればQ(k)(ケーブル番号がkの物量)をqに加算する(ステップ605、606、607、608)。線種が1でないときには、前記カウンタrを1加算し、前記ケーブル布設時期が1のときの線種毎の前記qを算出する(ステップ609)。上記操作を、全てのケーブル番号kについて行う(ステップ610、612)。
【0047】
前記qと、ケーブルドラム最大巻取り長を比較し、ドラム巻きを実施する。前記qの番号を示すカウンタjを1とする(ステップ611)。前記qと、その線種の最大ドラム巻取り長を示すMAXの大小を比較する(ステップ613)。前記qが前記MAXより小さいとき、前記ケーブル布設時期が1で線種がjのケーブルのドラム番号が確定する(ステップ614)。一方、前記qが前記MAXより大きいとき、ケーブル番号を示すカウンタsを用いて、ドラム巻きを実施する。ケーブル番号1のケーブルより順に線種がjのケーブルを探し、Qに加算していく(ステップ615、616、617、618)。一回加算を行うごとに線種jの最大ドラム巻取り長MAXと比較を行う(ステップ619)。前記QがMAXを超えたとき、その直前までのQを一つのドラムに巻取るとし、次回以降のケーブルは次のドラムに巻き取られるよう操作する(ステップ620、621、622、623)。これら操作を全てのケーブルに対して行う(ステップ624、626)。ケーブル布設時期1の上記操作が終了した後、カウンタiを用いて全ての前記ケーブル布設時期についてドラム巻きを実施する(ステップ631)。
【0048】
上記により、各ケーブルドラムに線種情報に加えて布設期間を設定させることが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
101:ケーブル施工管理支援システム、102:設計データベース、103:ケーブル線種データベース、104:ドラムデータベース、105:管理データベース、106:演算部並びに表示部、107:出力機能、108:ケーブル番号(入力部)、109:ケーブル物理量、110:ケーブル線種番号、111:ケーブル長(入力部)、112:ケーブルルート情報(入力部)、113:ケーブル布設時期情報(入力部)、114:芯数、115:導体サイズ、116:ケーブルドラム最大巻き取り長、117:布設限界誤差、118:工事期間、119:布設期間、120:単位工事期間当たりの作業日数、121:パラメータA、124:布設時期と線種を反映したケーブル長、126:従来の設計方法、202:期間の設定、203:ルート情報を加味した上で布設期間を設定、205:山崩し、206:機関の最適化、301:ドラム割り、302:ケーブル施工工事期間を考慮したケーブルドラム決定手法
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B