特許第5961552号(P5961552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5961552脂肪族カルボン酸のエステルの連続的製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961552
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】脂肪族カルボン酸のエステルの連続的製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/08 20060101AFI20160719BHJP
   C07C 69/14 20060101ALI20160719BHJP
   C07C 69/24 20060101ALI20160719BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20160719BHJP
   C07C 69/68 20060101ALI20160719BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160719BHJP
【FI】
   C07C67/08
   C07C69/14
   C07C69/24
   C07C69/54 Z
   C07C69/68
   !C07B61/00 300
【請求項の数】21
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-518034(P2012-518034)
(86)(22)【出願日】2010年6月9日
(65)【公表番号】特表2012-531452(P2012-531452A)
(43)【公表日】2012年12月10日
(86)【国際出願番号】EP2010003446
(87)【国際公開番号】WO2011000463
(87)【国際公開日】20110106
【審査請求日】2013年1月24日
(31)【優先権主張番号】102009031053.3
(32)【優先日】2009年6月30日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】398056207
【氏名又は名称】クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】クルル・マティアス
(72)【発明者】
【氏名】モルシュホイザー・ロマーン
【審査官】 瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05387397(US,A)
【文献】 特開昭63−277645(JP,A)
【文献】 特開2008−106009(JP,A)
【文献】 特開昭62−132840(JP,A)
【文献】 特開2007−001886(JP,A)
【文献】 特開平06−234700(JP,A)
【文献】 特開2005−322582(JP,A)
【文献】 特開平02−255637(JP,A)
【文献】 特表2009−523741(JP,A)
【文献】 特開2007−222696(JP,A)
【文献】 特表2006−516008(JP,A)
【文献】 特表2005−516999(JP,A)
【文献】 特表2005−506667(JP,A)
【文献】 特開平01−133910(JP,A)
【文献】 特開2006−272055(JP,A)
【文献】 特開2006−181533(JP,A)
【文献】 大島 厚太郎,マイクロ波加熱の原理と応用,色材,1971年,Vol.44,p.27-35
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/08
C07C 69/14
C07C 69/24
C07C 69/54
C07C 69/68
C07B 61/00
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族カルボン酸エステルを製造するための連続的方法であって、次式(I)
−COOH (I)
[式中、Rは、炭素原子数5〜50の場合により置換された脂肪族炭化水素残基を表す
で表される少なくとも一種の脂肪族カルボン酸と、次式(II)
−(OH) (II)
[式中、
は、炭素原子数1〜100の場合により置換された炭化水素残基を表し、そして
nは、1〜10の数を表す]
で表される少なくとも一種のアルコールとを、少なくとも一種のエステル化触媒の存在下に、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向にその長軸がある反応管中でマイクロ波照射下に反応させてエステルとし、ここで、マイクロ波による反応混合物の照射が、マイクロ波発生器に導波管を介して接続された中空導体内の、2.45GHz及び25℃で測定して0.01未満のtanδ値を有する反応管中で行われ、前記マイクロ波アプリケータが空洞共振器として構成されており及び前記空洞共振器がE01nモードで稼働され、この際nが3〜200の整数であり、反応は10bar〜500barの圧力下に行われ、
空洞共振器中に定常波が形成され、及び
反応生成物を反応管から出た直後に100℃未満に冷却する、
上記方法。
【請求項2】
が、炭素原子数2〜24の場合により置換された脂肪族基を表す、請求項1の方法。
【請求項3】
が、場合により置換されたC〜C12アリール基、または環員数5〜12の場合により置換されたヘテロ芳香族基を表す、請求項1の方法。
【請求項4】
脂肪族カルボン酸エステルを製造するための連続的方法であって、次式(I)
−COOH (I)
[式中、Rは、水素、または炭素原子数1〜50の場合により置換された脂肪族炭化水素残基を表す]
で表される少なくとも一種の脂肪族カルボン酸と、次式(II)
−(OH) (II)
[式中、
は、炭素原子数8〜24の場合により置換された脂肪族基を表し、そして
nは、1〜10の数を表す]
で表される少なくとも一種のアルコールとを、少なくとも一種のエステル化触媒の存在下に、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向にその長軸がある反応管中でマイクロ波照射下に反応させてエステルとし、ここで、マイクロ波による反応混合物の照射が、マイクロ波発生器に導波管を介して接続された中空導体内の、2.45GHz及び25℃で測定して0.01未満のtanδ値を有する反応管中で行われ、前記マイクロ波アプリケータが空洞共振器として構成されており及び前記空洞共振器がE01nモードで稼働され、この際nが3〜200の整数であり、反応は10bar〜500barの圧力下に行われ、
空洞共振器中に定常波が形成され、及び
反応生成物を、反応管から出た直後に100℃未満に冷却する、
上記方法。
【請求項5】
が、炭素原子数2〜30の場合により置換された脂肪族炭化水素残基である、請求項4の方法。
【請求項6】
が、炭素原子数1、2、3または4の場合により置換された飽和アルキル基である、請求項4の方法。
【請求項7】
が、炭素原子数2〜4の場合により置換されたアルケニル基を表す、請求項4の方法。
【請求項8】
が、カルボキシル基、ヒドロキシル基及び/またはC〜C20アリール基から選択される少なくとも一つの更なる置換基を有する、請求項4〜7のいずれか一つの方法。
【請求項9】
が、炭素原子数5〜50の場合により置換された脂肪族炭化水素残基を表す、請求項4の方法
【請求項10】
脂肪族カルボン酸エステルを製造するための連続的方法であって、次式(I)
−COOH (I)
[式中、Rは、炭素原子数2〜4の場合により置換されたアルケニル基を表す]
で表される少なくとも一種の脂肪族カルボン酸と、次式(II)
−(OH) (II)
[式中、
は、炭素原子数1〜100の場合により置換された炭化水素残基を表し、そして
nは、1〜10の数を表す]
で表される少なくとも一種のアルコールとを、少なくとも一種のエステル化触媒の存在下に、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向にその長軸がある反応管中でマイクロ波照射下に反応させてエステルとし、ここで、マイクロ波による反応混合物の照射が、マイクロ波発生器に導波管を介して接続された中空導体内の、2.45GHz及び25℃で測定して0.01未満のtanδ値を有する反応管中で行われ、前記マイクロ波アプリケータが空洞共振器として構成されており及び前記空洞共振器がE01nモードで稼働され、この際nが3〜200の整数であり、反応は10bar〜500barの圧力下に行われ、
空洞共振器中に定常波が形成され、及び
反応生成物を、反応管から出た直後に100℃未満に冷却する、
上記方法。
【請求項11】
が、カルボキシル基、ヒドロキシル基及び/またはC〜C20アリール基から選択される少なくとも一つの更なる置換基を有する、請求項10の方法。
【請求項12】
が、炭素原子数2〜24の場合により置換された脂肪族基を表す、請求項10または11の方法。
【請求項13】
が、場合により置換されたC〜C12アリール基、または環員数5〜12の場合により置換されたヘテロ芳香族基を表す、請求項10または11の方法。
【請求項14】
マイクロ波アプリケータが反射型空洞共振器として構成される、請求項1〜13のいずれか一つの方法。
【請求項15】
反応管が、中空導体の中央対称軸と軸状に整列される、請求項1〜14のいずれか一つの方法。
【請求項16】
反応物をマイクロ波照射によって120〜500℃の温度に加熱する、請求項1〜15のいずれか一つの方法。
【請求項17】
が、一つ、二つ、三つ、四つ、五つまたは六つのOH基を有する、請求項1〜16のいずれか一つの方法。
【請求項18】
がヒドロキシル基を有し、Rがカルボキシル基を有する、請求項1〜17のいずれか一つの方法。
【請求項19】
式(I)及び(II)が同じ反応体を表す、請求項18の方法。
【請求項20】
脂肪族カルボン酸(I)とアルコール(II)とを、それぞれカルボキシル基及びヒドロキシル基のモル当量を基準にして20:1〜1:20のモル比で反応させる、請求項1〜19のいずれか一つの方法。
【請求項21】
均一系触媒、不均一系触媒またはこれらの混合物の存在下に行われる、請求項1〜20のいずれか一つの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的な規模でマイクロ波照射下に脂肪族カルボン酸のエステルを製造するための連続的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エステルは工業的に非常に重要な物質群であり、多様な用途があり、例えば可塑剤もしくは潤滑剤としてまたは化粧料及び医薬品の成分として使用されている。実証されている多くの場合に使用されるエステルの製造方法は、触媒の存在下でのカルボン酸とアルコールとの縮合である。この際、反応混合物は、通常、数時間加熱され、そして生じた水は除去される。加えて、密閉系中で加圧及び高温下にエステル化を行う方法も知られている。例えば、国際公開第2007/126166号パンフレット(特許文献1)は、200〜350℃の温度及び10barまでの圧力下でのアルコールによる脂肪酸の慣用の熱エステル化法を開示している。しかし、進行中に、生ずる反応水を過剰のアルコールと共に連続的に除去するその数時間に渡る反応では、メチルエステルへの不完全な反応しか達成されず、そのため粗製生成物の煩雑な仕上げ処理もしくは二次処理が必要である。更に、このような高温反応では反応混合物の腐食性も問題であり、これは一方では反応容器を痛め、他方ではこうして製造されたエステル中に望ましくない金属含分を招く。
【0003】
エステル合成のためのより新しい方策は、マイクロ波により援助されたカルボン酸とアルコールとの反応であり、それによって、特に、満足な収量のために必要な反応時間が大きく短縮される。
【0004】
Pipusら,First European Congress on Chemical Engineering,Firenze,Italy,May 4−7,1997;AIDIC:Milan,Italy,1997; 45−48頁(非特許文献1)は、マイクロ波放射線で加熱された連続式管状反応器中で安息香酸をエタノールで、均一系及び不均一系触媒によりエステル化する方法を開示している。7atmの圧力及び140℃の温度下に、反応器中127秒間の滞留時間で30%の転化率が達成される。
【0005】
国際公開第03/014272号パンフレット(特許文献2)は、加水分解及びエステル化によってマイクロ波照射下にトリグリセリド及びメタノールから脂肪酸メチルエステルを製造する方法、並びに該方法を連続的に実施するための装置を開示しており、ここで反応は、約120cm長の攪拌されたスチール製シリンダ中で行われ、この際、マイクロ波照射は、多数のマグネトロン及び導波管を用いて反応容器中にカップリングされる。
【0006】
米国特許第2005/0274065号明細書(特許文献3)は、触媒の存在下に及び/またはマイクロ波エネルギーの影響下に、脂肪酸をアルコールでエステル化する方法を開示している。一つの具体的な実施形態では、受け器中に存在する反応物を連続的にポンプ循環し、その際にマイクロ波アプリケータ中にある攪拌容器中に通す。マイクロ波アプリケータに数回通して始めて、高いエステル化度が達成される。
【0007】
Amoreら,Macromolecular Rapid Communications,Volume28(2007),Issue,473−477頁(非特許文献2)は、プロピオン酸エステルを製造するためのマイクロ波援助方法を開示しており、ここでエステル化は、水の除去によって完遂される。
【0008】
Q.Yangら,Synth.Commun.2008,38,4107−4115(非特許文献3)は、マイクロ波照射の下で、様々なカルボン酸をアルコールで酸で触媒してエステル化する方法を開示している。この反応は、実験室規模で100℃で行われ、高い転化率を与える。
【0009】
しかし、このようなマイクロ波援助反応の実験室から工業的規模へのスケールアップ、それ故、工業的な用途に重要な空時収量で年間数トン、例えば数十トン、数百トンまたは数千トンの生産に適したプラントの開発は、これまで実現できていない。これの原因は、一つは、反応物中へのマイクロ波の侵入深度が通常数ミリメータ乃至数センチメータに限定され、このことが、特にバッチプロセスで行われる反応では小さな容器に限定されるかまたは攪拌反応器では非常に長い反応時間を招くことである。より多量の物質量をマイクロ波で照射するのに望ましい場の強さの増強は、特にこれまで化学反応のスケールアップに好ましく使用されてきたマルチモード装置では、その際起こる放電現象及びプラズマ形成によって厳しく制限される。更に、マイクロ波オーブン中に入射されるマイクロ波がその壁及び反応物の所で多かれ少なかれ不制御に反射することによって起き、マルチモード−マイクロ波装置中で反応物の局所的な過熱を招くマイクロ波場の不均一性が規模拡大の際の問題である。加えて、反応の際にしばしば変化する、反応混合物のマイクロ波吸収係数は、安全で再現性のある反応の実行という点で困難性を招く。
【0010】
国際公開第90/03840号パンフレット(特許文献4)は、実験室規模の連続式マイクロ波反応器中で、様々な化学反応、例えばエステル化を行うための連続的方法を開示している。しかし、達成される収量、並びにマルチモードで稼働されるマイクロ波の24mlの反応容積は、工業分野へのスケールアップを可能としない。反応物のマイクロ波吸収に関してのこの方法の効率は、マルチモード−マイクロ波アプリケータ中でアプリケータ空間に程度の差はあれ均一に分布してしまいそしてチューブコイル上に集中しないマイクロ波エネルギーの故に低い。入射されるマイクロ波出力を強く高めると、望ましくないプラズマ−放電、またはいわゆる熱暴走効果を招く恐れがある。更に、アプリケータ空間中でマイクロ波場が、ホットスポットと称される経時変化する空間的な非均一性を示し、これが大規模での安全でかつ再現性のある反応の実行を不可能にする。
【0011】
更に、Kappeら,Top.Curr.Chem.(2006)266:233〜276(非特許文献9)からは、一つの空間方向にだけ広がりそして正確な寸法の導波管によって反応容器に集中される単一波方式で作動する、モノモードもしくはシングルモードマイクロ波アプリケータが知られている。確かに、この装置はより高い局所的な場の強さを可能にするが、形状に対する要求の故に(例えば、電場の強さは、それの波頂で最も高くなり、そしてノードのところで0に近くなる)、従来実験室規模の小さな反応容積(≦50ml)に制限されてきた。
【0012】
例えば、Chematら,J.Microwave Power and Electromagnetic Energy 1998,33,88−94(非特許文献4)は、モノモードマイクロ波キャビティ内での様々な連続式に行われるエステル化を開示しており、ここでマイクロ波導波管は反応管に対して垂直に向いている。この際、不均一系触媒エステル化において、加速された反応が観察される。しかし、マイクロ波照射に利用できる体積が僅か20mlであり、そのため、有利な収量を達成するためには反応体を照射域に何度も通す必要がある。反応管の横断面積を相当に大きくすることは、アプリケータの形状の理由から可能ではなく、またマイクロ波の低い侵入深さの故からもスケールアップには適していない。
【0013】
米国特許出願公開第2006/228088号明細書(特許文献5)は、モノモードマイクロ波を使用してポリグリセロールを脂肪酸で連続的にエステル化する方法を記載している。しかし、この既知のエステル化では、反応流の長軸は、マイクロ波の伝播方向に対して、本発明方法のようにそれに沿ってではなく、横切って配置されるべきである。
【0014】
国際公開第2008/043493号パンフレット(特許文献6)は、マイクロ波を使用して脂肪酸を連続的にアミド化することによって脂肪酸アルカノールアミドを合成する方法を開示している。この際、マイクロ波は、一実施形態では、少なくとも一つのアンテナを用いて管末端を介して照射される。本発明の方法に対するこの既知の方法の相違点は、本発明ではエステル化であるのに対し、そこに記載されているのはアミド化であるという点である。
【0015】
B.TOUKONIITTYら:“Esterification of propionic acid under microwave irradiation over an ion−exchange resin”,CATALYSIS TODAY,ELSEVIER,NL,Bd.100,Nr.3−4,28.Februar 2005(2005−02−28),431〜435頁(非特許文献10)は、モノモードマイクロ波を使用してプロピオン酸をエタノールで連続的にエステル化する方法を記載している(431頁参照)。しかし、この既知のエステル化では、反応流の長軸は、マイクロ波の伝播方向に対し、本発明方法のようにそれに沿ってではなく、横切って配置されるべきである。
【0016】
Esveldら,Chem.Eng.Technol.23(2000),429−435(非特許文献5)は、ワックスエステルの製造のための連続的方法を開示しており、その方法では、脂肪アルコール及び脂肪酸を、溶剤不含で、モンモリオナイトの存在下でエステル化する。反応混合物を、コンベアベルトに載せてマイクロ波キャビティ中に通し、その際に、生じた反応水をほぼ除去することによって縮合を完遂する。この方法は、当然、高沸点アルコール及び酸にしか使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2007/126166号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/014272号パンフレット
【特許文献3】米国特許第2005/0274065号明細書
【特許文献4】国際公開第90/03840号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/228088号明細書
【特許文献6】国際公開第2008/043493号パンフレット
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Pipusら,First European Congress on Chemical Engineering,Firenze,Italy,May 4−7,1997;AIDIC:Milan,Italy,1997; 45−48頁
【非特許文献2】Amoreら,Macromolecular Rapid Communications,Volume28(2007),Issue,473−477頁
【非特許文献3】Q.Yangら,Synth.Commun.2008,38,4107−4115
【非特許文献4】Chematら,J.Microwave Power and Electromagnetic Energy 1998,33,88−94
【非特許文献5】Esveldら,Chem.Eng.Technol.23(2000),429−435
【非特許文献6】K.Lange,K.H.Loecherer,Taschenbuch der Hochfrequenztechnik”,第2巻,K21頁以降
【非特許文献7】D.Bogdal,Microwave−assisted Organic Synthesis,Elsevier 2005
【非特許文献8】“Microwave Synthesis”von B.L.Hayes,CEM Publishing 2002
【非特許文献9】Kappeら,Top.Curr.Chem.(2006)266:233〜276
【非特許文献10】B.TOUKONIITTYら:”Esterification of propionic acid under microwave irradiation over an ion−exchange resin”, CATALYSIS TODAY, ELSEVIER, NL, Bd. 100,Nr.3−4,28.Februar 2005(2005−02−28),431〜435頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
それ故、脂肪族カルボン酸及びアルコールを、マイクロ波照射下で、工業的規模でもエステルに転化することができる、脂肪族カルボン酸のエステルの製造方法が求められていた。この際、できるだけ高い、すなわち定量的なまでの転化率及び収量が達成されるべきである。更に、該方法は、できるだけエネルギー節約型のエステル製造を可能にするべきであり、すなわち使用されるマイクロ波の出力は、反応物によってできるだけ定量的に吸収されるべきであり、それ故該方法は、高いエネルギー効率を供するべきである。この際、副生成物は全く生じないかまたは副次的な量でのみ生ずるべきである。更にエステルは、できるだけ低い金属含有量及び低い固有色を有するべきである。加えて、該方法は、安全かつ再現可能な反応の実行を保証するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
驚くべきことに、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向にその長軸がある反応管中で、マイクロ波照射を用いて短時間加熱するだけで、連続的な方法で脂肪族カルボン酸をアルコールと直接反応させることによって、工業的に重要な量で脂肪族カルボン酸のエステルを製造できることことが見出された。この際、マイクロ波アプリケータ中に入射されるマイクロ波エネルギーは、実際上定量的に反応物によって吸収される。加えて、本発明の方法は、プロセス実行の間の高い安全性を有し、かつ調節される反応条件の高い再現性を供する。本発明の方法に従い製造されるエステルは、慣用の製造方法と比較して、追加的なプロセスステップ無しでは達成できない高い純度及び低い固有色を示す。
【0021】
本発明の対象は、カルボン酸エステルの連続式製造方法であって、次式(I)
−COOH (I)
[式中、Rは、水素、または炭素原子数1〜50の場合により置換された脂肪族炭化水素残基を表す]
で表される少なくとも一種の脂肪族カルボン酸を、次式(II)
−(OH) (II)
[式中、
は、炭素原子数1〜100の場合により置換された炭化水素残基を表し、そして
nは、1〜10の数を表す]
で表される少なくとも一種のアルコールと、少なくとも一種のエステル化触媒の存在下及びマイクロ波照射下に反応管中で反応させてエステルとし、前記反応管の長軸は、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向にある、前記方法である。
【0022】
式(1)の脂肪族カルボン酸としては、炭素原子数1〜50の場合により置換された脂肪族炭化水素残基上に少なくとも一つのカルボキシル基を有する全ての化合物、並びにギ酸が適している。好ましい実施形態の一つでは、脂肪族炭化水素残基は、置換されていないアルキル基またはアルケニル基である。更に別の好ましい実施形態の一つでは、脂肪族炭化水素残基は、一つまたはそれ以上の、例えば二つ、三つ、四つまたはそれ以上の置換基を有する。適当な置換基は、例えばハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシル基、C〜Cアルコキシ基、例えばメトキシ基、ポリ(C〜Cアルコキシ)基、ポリ(C〜Cアルコキシ)アルキル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、シアノ基、ニトリル基、ニトロ基、及び/または炭素原子数5〜20のアリール基、例えばフェニル基であるが、これらの置換基が、反応条件下に安定しており、そして副反応、例えば脱離反応などをしないことが条件である。上記のC〜C20アリール基は、それらが置換基、例えばハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、C〜C20アルキル基、C〜C20アルケニル基、C〜Cアルコキシ基、例えばメトキシ基、エステル基、アミド基、シアノ基、ニトリル基、及び/またはニトロ基を有することができる。前記アリール基は、一つまたはそれ以上のヘテロ原子、例えば窒素、酸素及び/または硫黄を含むことができるが、炭素原子の数より多いヘテロ原子は含まない。前記脂肪族炭化水素残基は、最大でも、それが原子価数を持つだけの数の置換基を有する。特別な実施形態の一つでは、前記脂肪族炭化水素残基Rは、更なるカルボキシル基を有する。それで、本発明の方法は、ポリカルボン酸、例えば二つ、三つ、四つまたはそれ以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸のエステル化にも同様に適している。この際、カルボキシル基は、完全にまたは部分的にのみエステル化することができる。エステル化度は、例えば、反応混合物中のカルボン酸とアルコールとの理論化学量によって調節することができる。
【0023】
本発明において特に好ましいものは、炭素原子数1〜30、特に炭素原子数2〜24、例えば炭素原子数3〜20の脂肪族炭化水素残基を有するカルボン酸(I)である。これらは、天然または合成由来のものであることができる。前記脂肪族炭化水素残基は、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素、リン及び/または硫黄を含むこともできるが、好ましくは炭素原子3個当たりヘテロ原子数は1以下である。
【0024】
前記脂肪族炭化水素残基は、線状、分枝状または環状であることができる。カルボキシル基は、第一、第二または第三炭素原子に結合することができる。好ましくは、これは第一炭素原子に結合する。炭化水素残基は、飽和であるか、炭化水素残基Rが少なくとも二つの炭素原子を含む場合には、不飽和であることもできる。不飽和炭化水素残基は、好ましくは一つまたはそれ以上のC=C二重結合を含み、特に好ましくは一つ、二つまたは三つのC=C二重結合を含む。それで、本発明の方法は、ポリ不飽和カルボン酸のエステルの製造に特に有利であることがわかった。というのも、不飽和カルボン酸の二重結合は、本発明の方法の反応条件下では攻撃されないからである。好ましい環状脂肪族炭化水素残基は、四つ、五つ、六つ、七つ、八つまたはそれ以上の環原子を有する少なくとも一つの環を有する。
【0025】
好ましい実施形態の一つでは、Rは、炭素原子数1、2、3または4の飽和アルキル基を表す。これは線状か、または炭素原子数が4の場合には分枝状であることもできる。カルボキシル基は、第一もしくは第二炭素原子にまたはピバリン酸の場合のように第三炭素原子に結合することができる。特に好ましい実施形態の一つでは、アルキル基は、置換されていないアルキル基である。更に別の特に好ましい実施形態の一つでは、アルキル基は、一つから九つ、好ましくは一つから五つ、例えば二つ、三つまたは四つの更なる置換基を有する。好ましい更なる置換基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、並びに場合により置換されたC〜C20アリール基である。
【0026】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、カルボン酸(I)は、エチレン性不飽和カルボン酸である。この際、Rは、炭素原子数2〜4の場合により置換されたアルケニル基を表す。ここで、エチレン性不飽和カルボン酸とは、カルボキシル基に対して共役したC=C二重結合を有するカルボン酸と理解される。好ましい実施形態の一つでは、アルケニル基は置換されていないアルケニル基である。特に好ましくは、Rは、炭素原子数2または3のアルケニル基である。更に別の好ましい実施形態の一つでは、アルケニル基は、一つまたはそれ以上、例えば二つ、三つまたはそれ以上の更なる置換基を有する。しかし、アルケニル基は、多くとも、それが原子価を持つだけの数の置換基を有する。特に好ましい実施形態の一つでは、アルケニル基Rは更なる置換基として、カルボキシル基、または場合により置換されたC〜C20アリール基を有する。それで、本発明の方法は、エチレン性不飽和ジカルボン酸の反応にも同様に好適である。
【0027】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、カルボン酸(I)は脂肪酸である。この場合、Rは、炭素原子数5〜50の場合により置換された脂肪族炭化水素残基を表す。この際、炭素原子数6〜30、特に炭素原子数7〜26、例えば炭素原子数8〜22の脂肪族炭化水素残基を有する脂肪酸が特に好ましい。特に好ましい実施形態の一つでは、脂肪酸の炭化水素残基は、置換されていないアルキル基またはアルケニル基である。更に別の好ましい実施形態の一つでは、脂肪酸の炭化水素残基は、一つまたはそれ以上の、例えば二つ、三つ、四つまたはそれ以上の更なる置換基を有する。
【0028】
本発明の方法に従いエステル化するために好適なカルボン酸は、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ピバリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2,2−ジメチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ケイ皮酸及びメトキシケイ皮酸、コハク酸、ブタンテトラカルボン酸、フェニル酢酸、(2−ブロモフェニル)酢酸、(メトキシフェニル)酢酸、(ジメトキシフェニル)酢酸、2−フェニルプロピオン酸、3−フェニルプロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、4−ヒドロキシフェノキシ酢酸、インドール酢酸、ヘキサン酸、シクロヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、ネオノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ネオウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、テトラデカン酸、12−メチルトリデカン酸、ペンタデカン酸、13−メチルテトラデカン酸、12−メチルテトラデカン酸、ヘキサデカン酸、14−メチルペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、15−メチルヘキサデカン酸、14−メチルヘキサデカン酸、オクタデカン酸、イソオクタデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸及びテトラコサン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ヘキサデカジエン酸、デルタ−9−cis−ヘプタデセン酸、オレイン酸、ペトロセリン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ガドレイン酸、ゴンド酸、イコサジエン酸、アラキドン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ドコサジエン酸及びテトラコセン酸、2−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、4−ヒドロキシペンタン酸、5−ヒドロキシペンタン酸、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸、5−ヒドロキシヘキサン酸、2−ヒドロキシオクタン酸、2−ヒドロキシテトラデカン酸、15−ヒドロキシペンタデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸及び12−ヒドロキシステアリン酸、ドデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸、ヒドロキシコハク酸、クエン酸、及び不飽和脂肪酸から製造可能なダイマー脂肪酸、並びにこれらの混合物である。更に、天然油脂から、例えば綿実油、ココナッツ油、ピーナッツ油、サフラワー油、マイズ油、パーム核油、ナタネ油、オリーブ油、カラシ油、ダイズ油、ヒマワリ油並びに獣脂油、骨油、及び魚油から得られるカルボン酸混合物も適している。本発明の方法のためのカルボン酸またはカルボン酸混合物としては、トール油脂肪酸並びに樹脂酸及びナフテン酸も同様に適している。
【0029】
本発明において特に好適な炭素原子数1〜4の低級脂肪族カルボン酸は、ギ酸、酢酸及びプロピオン酸、2−ヒドロキシプロピオン酸、並びにフェニル酢酸、及びアリール基が置換されたそれらの誘導体である。特に好ましいエチレン性不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。特に好ましい脂肪酸は、ナタネ油脂肪酸、ココナッツ脂肪酸、ステアリン酸、獣脂肪酸及びトール油脂肪酸である。
【0030】
好ましい実施形態の一つでは、Rは脂肪族基を表す。これは、好ましくは1〜24個、特に好ましくは2〜18個、特に3〜6個の炭素原子を有する。この脂肪族基は、線状、分枝状または環状であることができる。これは更に飽和であるか、または少なくとも三つの炭素原子を有する場合には、不飽和であることができ、好ましくは飽和である。この炭化水素残基は、置換基、例えばハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシル基、C〜Cアルコキシアルキル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトリル基、ニトロ基及び/またはC〜C20アリール基、例えばフェニル基を有することができる。前記C〜C20アリール基は、それらが場合によりハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシル基、C〜C20アルキル基、C〜C20アルケニル基、C〜Cアルコキシ基、例えばメトキシ基、エステル基、アミド基、シアノ基、ニトリル基及び/またはニトロ基で置換されていてもよい。特に好ましい脂肪族基Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル及びtert.−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル及びメチルフェニルである。
【0031】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、Rは、場合により置換されたC〜C12アリール基または環員数5〜12の場合により置換されたヘテロ芳香族基を表す。好ましいヘテロ原子は酸素、窒素及び硫黄である。少なくとも一つのヒドロキシル基を有するC〜C12アリール基または環員数5〜12のヘテロ芳香族基には、更なる環が縮合していてもよい。従って、前記アリールまたはヘテロ芳香族基は、単環式または多環式であることができる。適当な置換基の例は、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、並びにアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ニトリル基及びニトロ基である。
【0032】
特別な実施形態の一つでは、R基は、一つまたはそれ以上、例えば二つ、三つ、四つ、五つ、六つまたはそれ以上の更なるヒドロキシル基を有するが、R基が炭素原子を持つだけの数よりも多くのヒドロキシル基またはアリール基が原子価を持つだけの数よりも多くのヒドロキシル基は有さない。ヒドロキシル基は、隣接する炭素原子にまたは炭化水素残基の更に別の除去された炭素原子に結合することができるが、炭素原子一つあたり多くとも一つのOH基である。それで、本発明の方法は、ポリオール、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリトリトール、フルクトース及びグルコースのエステル化にも適している。この際、エステル化は、全エステル(Vollester)とも、部分エステルともすることができる。この際、エステル化度は、例えば、反応混合物中でのカルボン酸とアルコールとの理論化学量によって制御することができる。
【0033】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、Rは、ヘテロ原子が介在したアルキル基を表す。特に好ましいヘテロ原子は酸素及び窒素である。しかし、R基が窒素原子を含む場合には、その窒素原子は酸性プロトンを持たない。
【0034】
それで、Rは好ましくは次式(III)の基を表す。
【0035】
−(R−O)−R (III)
式中、
は、炭素原子数2〜18、好ましくは炭素原子数2〜12、特に炭素原子数2〜4のアルキレン基、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンまたはこれらの混合物を表し、
は、水素、または炭素原子数1〜24の炭化水素残基、または式−R−NR1011の基を表し、
nは、1〜500の数、好ましくは2〜200の数、特に3〜50の数、例えば4〜20の数を表し、そして
10、R11は、互いに独立して、炭素原子数1〜24、好ましくは2〜18の脂肪族基、環員数5〜12のアリール基もしくはヘテロアリール基、ポリ(オキシアルキレン)単位数1〜50のポリ(オキシアルキレン)基を表し、ここでポリオキシアルキレン単位は、炭素原子数2〜6のアルキレンオキシド単位から誘導され、またはR10とR11は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、環員数4、5、6またはそれ以上の環を形成する。
【0036】
適当なアルコールの例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ネオペンタノール、n−ヘキサノール、iso−ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、フェノール、ナフトール、及びこれらの混合物である。更に、天然の原料から得られる脂肪アルコール混合物、例えばココナッツ脂肪アルコール、パーム核脂肪アルコール及び獣脂アルコールも適している。
【0037】
本方法は、ギ酸エチルエステル、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、プロピオン酸エチルエステル、ステアリルステアレート、及びナタネ油脂肪酸メチルエステルの製造に特に適している。
【0038】
カルボン酸(I)が二つまたはそれ以上のカルボキシル基をそしてアルコール(II)が二つまたはそれ以上のヒドロキシル基を含む場合、または両反応体が、ヒドロキシカルボン酸のようにそれぞれカルボキシル基と少なくとも一つのヒドロキシ基を有する場合(この場合、反応体(I)と(II)は同じものであることができる)、本発明の方法では、オリゴマーまたはポリマーを製造することもできる。それ故、本発明の方法では、乳酸のオリゴマーまたはポリマーを製造することもできる。このような重縮合の場合には、マイクロ波照射の間に上昇する反応混合物の粘度を装置設計の際に考慮すべきである。
【0039】
本発明の方法では、脂肪族カルボン酸(I)とアルコール(II)は任意の比率で互いに反応させることができる。好ましくは、カルボン酸とアルコールとの反応は、それぞれカルボキシ基及びヒドロキシル基のモル当量を基準にして、20:1〜1:20、好ましくは10:1〜1:10、特に3:1〜1:3、例えば1.5:1〜1:1.5のモル比率で行われる。特別な実施形態の一つでは、カルボン酸とアルコールは当モル量で使用される。脂肪族カルボン酸(I)が一つまたはそれ以上のヒドロキシル基を有する場合には、反応は、好ましくは少なくとも当モル割合のアルコール(II)と、特に好ましくは脂肪族カルボン酸(I)とアルコール(II)との比率を1:1.01〜1:50、特に1:1.5〜1:20、例えば1:2〜1:10として行われる。
【0040】
多くの場合に、アルコールを過剰に使用して、すなわちヒドロキシル基とカルボキシル基とを少なくとも1.01:1.00、特に50:1〜1.02:1、例えば10:1〜1.1:1のモル比で作業することが有利であることが判明した。この際、カルボキシル基は実質的に定量的にエステルに転化される。該方法は、使用するアルコールが易揮発性の場合に特に有利である。ここで、易揮発性とは、アルコールが、常圧下に好ましくは200℃未満の沸点、特に好ましくは160℃未満、例えば100℃未満の沸点を有し、それ故蒸留することによってエステルから分離できることである。
【0041】
エステル化は、本発明の方法においては、均一系触媒、不均一系触媒またはこれらの混合物の存在下に行われる。この際、酸性触媒もアルカリ性触媒も適している。本発明において好ましいエステル化触媒は、酸性無機触媒、有機金属触媒または有機触媒、及び複数種のこのような触媒の混合物である。
【0042】
酸性無機触媒としては、本発明の意味において、例えば硫酸、リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、硫酸アルミニウム水和物、明礬、酸性シリカゲル及び酸性水酸化アルミニウムが挙げられる。更に、例えば、一般式Al(OR15のアルミニウム化合物及び一般式Ti(OR15のチタン酸塩も酸性無機触媒として使用可能であり、ここで基R15は、それぞれ同一かまたは異なることができ、そして互いに独立してC〜C10アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、neo−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、iso−アミル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニルまたはn−デシル、C〜C12シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル及びシクロドデシルから選択され、好ましいものは、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルである。好ましくは、Al(OR15またはTi(OR15中の基R15はそれぞれ同一であり、イソプロピル、ブチル及び2−エチルヘキシルから選択される。
【0043】
好ましい酸性有機金属触媒は、例えば、ジアルキルスズ酸化物(R15SnOから選択され、ここでR15は上述に定義した通りである。酸性有機金属触媒として特に好ましい物の一つはジ−n−ブチルスズ酸化物であり、これはいわゆるオキソスズ(Oxo−Zinn)またはFascat(登録商標)ブランドとして商業的に入手できる。
【0044】
好ましい酸性有機触媒は、例えばホスフェート基、スルホン酸基、スルフェート基またはホスホン酸基を有する、酸性有機化合物である。特に好ましいスルホン酸類は、少なくとも一つのスルホン酸基及び炭素原子数1〜40、好ましくは炭素原子数3〜24の少なくとも一つの飽和もしくは不飽和の線状、分枝状及び/または環状炭化水素残基を含む。特に好ましいものは、芳香族スルホン酸類、特に一つもしくはそれ以上のC〜C28アルキル基を有するアルキル芳香族系モノスルホン酸類、特にC〜C22アルキル基を有するアルキル芳香族系モノスルホン酸類である。適当な例は、メタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、2−メシチレンスルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸、4−ブチルベンゼンスルホン酸、4−オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸である。また、酸性イオン交換体も酸性有機触媒として使用することができ、例えば、約2モル%のジビニルベンゼンで架橋されたスルホン酸基含有ポリ(スチレン)樹脂を使用し得る。
【0045】
本発明方法の実行に特に好ましいものは、ホウ酸、リン酸、ポリリン酸及びポリスチレンスルホン酸である。特に好ましいものは、一般式Ti(OR15のチタン酸塩、特にチタンテトラブチレート及びチタンテトライソプロピレートである。
【0046】
酸性無機触媒、有機金属触媒または有機触媒を使用することが望ましい場合には、本発明では0.01〜10重量%、好ましくは0.02〜2重量%の触媒が使用される。
【0047】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波照射は、酸性の固形触媒の存在下に行われる。このような不均一系触媒は、反応混合物中に懸濁しそして反応混合物と一緒に反応管中にポンプ輸送することができる。特に好ましい実施形態の一つでは、場合によっては溶剤と混合された反応混合物を、反応管中に固定された固定床触媒上に導きそしてこの際マイクロ波放射に曝露する。適当な固形触媒は、例えばゼオライト、シリカゲル、モンモリロナイト及び(部分)架橋ポリスチレンスルホン酸であり、これらは場合によっては触媒活性金属塩が含浸されていてもよい。固形相触媒として使用することができる、ポリスチレンスルホン酸に基づく適当な酸性イオン交換体は、例えばRohm & Haas社からAmberlyst(登録商標)のブランド名で入手することができる。
【0048】
本発明のエステル製造方法は、カルボン酸、アルコール及び触媒を混合し、その後、この混合物を反応管中でマイクロ波で照射することによって行われ、ここでこの反応管の長軸は、モノモード−マイクロ波アプリケータ中のマイクロ波の伝播方向にある。
【0049】
好ましくは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波発生器と接続された中空導体内部に存在するマイクロ波に対しほぼ透明な反応管中で行われる。好ましくは、反応管は、中空導体の中央対称軸と軸状に整列される。
【0050】
マイクロ波アプリケータとして機能する中空導体は、好ましくは空洞共振器として構成される。更に、好ましくは、中空導体中で吸収されないマイクロ波はそれの端部で反射される。好ましくは、空洞共振器の長さは、その中に定常波が生ずるように寸法決めされる。反射タイプの共振器としてマイクロ波アプリケータを構成することによって、発生器から供給される同じ出力での電場強度の局所的強化及び高められたエネルギー利用が達成される。
【0051】
空洞共振器は、好ましくはE01n−モードで稼働され、ここでnは整数を表し、共振器の中央対称軸に沿うマイクロ波の電場最大点の数を示す。この稼働の際、電場は、空洞共振器の中央対称軸の方向に方向づけされる。これは、中央対称軸の範囲おいて最大を有し、そして外套面に向かうにつれて0の値まで減少する。この場の形態は、中央対称軸の周りに回転対称的に存在する。nが整数である長さを有する空洞共振器を使用することによって、定常波の形成が可能となる。反応管中を流れる反応物の所望の流速、必要な温度、及び共振器中での必要な滞留時間に応じて、共振器の長さが、使用されるマイクロ波放射線の波長に相対して選択される。好ましくは、nは1〜200、特に好ましくは2〜100、特に4〜50、就中3〜20の整数、例えば3、4、5、6、7、8、9または10である。
【0052】
空洞共振器のE01n−モードは、英語ではTM01n−モードとも称される。例えば、K.Lange,K.H.Loecherer,Taschenbuch der Hochfrequenztechnik”,第2巻,K21頁以降(非特許文献6)を参照されたい。
【0053】
マイクロ波アプリケータとして機能する中空導体中へのマイクロ波エネルギーの入射は、適当な寸法のホールまたはスリットを介して行うことができる。本発明の特に好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換を備えた中空導体中に存在する反応管中で行われる。この方法に特に好ましいマイクロ波装置は、空洞共振器、マイクロ波場を中空共振器にカップリングするためのカップリングデバイス、及び共振器に反応管を通すための二つの相対する末端壁上のそれぞれの一つの開口から構成される。空洞共振器中へのマイクロ波のカップリングは、好ましくは、空洞共振器中に突出するカップリングピンを介して行われる。好ましくは、カップリングピンは、カップリングアンテナとして機能する、好ましくは金属製の内部導体管として構成される。特に好ましい実施形態の一つでは、このカップリングピンは、末端開口部の一つを通って空洞共振器中に突出する。特に好ましくは、反応管は、同軸変換器の内部導体管に接続し、そして特にはそれの空洞を通って空洞共振器中に通される。好ましくは、反応管は、空洞共振器の中央対称軸と軸状に整列される。このためには、空洞共振器は、好ましくは、反応管を通すために相対する二つの末端壁上にそれぞれ一つの中央開口を有する。
【0054】
カップリングピン中へのまたはカップリングアンテナとして機能する内部導体管中へのマイクロ波の伝送は、例えば、同軸線路を用いて行うことができる。好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波場は中空導体を介して共振器に伝送され、この際、空洞共振器から突出するカップリングピンの末端が、中空導体の壁中に存在する開口を介して中空導体中へ通じており、そして中空導体からマイクロ波エネルギーが取り出されてそして共振器中にカップリングされる。
【0055】
具体的な実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換(koaxialem Uebergang)を備えたE01n円形中空導体中に軸対称的に存在するマイクロ波に対して透明な反応管中で行われる。この際、反応管は、カップリングアンテナとして機能する内部導体管の空洞を通して空洞共振器中に通される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の軸状伝送(axialer Einspeisung)を備えたE01n空洞共振器中に通したマイクロ波に対して透明な反応管中で行われ、この際、空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ以上の場の最大が生ずるように調節される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の軸状伝送を備えたE01n空洞共振器中に通したマイクロ波に対して透明な反応器中で行われ、ここで空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ以上の場の最大を有する定常波が生ずるように調節される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換を備えた円筒状E01n空洞共振器中に軸対称的に存在するマイクロ波に対して透明な反応管中で行われ、この際、空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ以上の場の最大が生ずるように調節される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換を備えた円筒状E01n空洞共振器中に軸対称的に存在するマイクロ波に対し透明な反応管中で行われ、この際、空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ以上の場の最大を有する定常波が生ずるように調節される。
【0056】
マイクロ波発生器、例えばマグネトロン、クライストロン及びジャイロトロンは当業者には既知である。
【0057】
本発明の方法の実行に使用される反応管は、好ましくは、マイクロ波に対しほぼ透明で、高融点の材料から作られる。特に好ましくは、非金属製の反応管が使用される。ここで、マイクロ波に対しほぼ透明とは、できるだけ少ないマイクロ波エネルギーを吸収しそしてこれを熱に変換する原材料と解される。マイクロ波エネルギーを吸収してこれを熱に変える物質の能力の目安としては、しばしば、誘電損失率tanδ=ε’’/ε’が用いられる。誘電損失率tanδは、誘電損失ε’’と誘電率ε’との比率と定義される。様々な材料のtanδ値の例は、例えばD.Bogdal,Microwave−assisted Organic Synthesis,Elsevier 2005(非特許文献7)に記載されている。本発明において適した反応管には、2.45GHz及び25℃で測定して、0.01未満のtanδ値、特に0.005未満、特に0.001未満のtanδ値を有する材料が好ましい。マイクロ波に対し透明でかつ温度安定性の好ましい材料としては、先ず第一には、鉱物ベースの原材料、例えば石英、酸化アルミニウム、サファイア、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素及び類似物が考慮される。温度安定性のプラスチック、例えば特にフルオロポリマー、例えばテフロン、及びエンジニアリングプラスチック、例えばポリプロピレン、またはポリアリールエーテルケトン、例えばガラス繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)も原材料として適している。反応中の温度条件に耐えるためには、特に上記のプラスチックでコーティングされた材料、例えば石英または酸化アルミニウムが反応器材料として有効であることが判明した。
【0058】
本発明の方法に特に適した反応管は、1ミリメータ〜約50cm、特に2mm〜35cm、就中5mm〜15cm、例えば10mm〜7cmの内径を有する。反応管とは、直径に対する長さの比率が5超、好ましくは10〜100,000、特に好ましくは20〜10,000、例えば30〜1,000の容器と解される。ここで、反応管の長さとは、マイクロ波照射が行われる反応管の長さと解される。反応管中には、フローバフル及び/または他の混合要素を設置することができる。
【0059】
本発明の方法に特に適したE01空洞共振器は、好ましくは、使用するマイクロ波放射線の少なくとも半分の波長に相当する直径を有する。好ましくは、空洞共振器の直径は、使用するマイクロ波放射線の半分の波長の1.0〜10倍、特に好ましくは1.1〜5倍、特に2.1〜2.6倍である。好ましくは、E01空洞共振器は丸い横断面を有し、これはE01円形中空導体とも称される。特に好ましくは、これは筒状の形状を有し、特に円筒状の形状を有する。
【0060】
該反応管は、通常は、入口に計量ポンプ及びマノメーター、及び出口に圧力保持デバイス及び熱交換器を備える。それ故、反応は、非常に幅の広い圧力及び温度範囲で可能である。
【0061】
カルボン酸、アルコール及び触媒からなる反応混合物の調製は、連続式、断続式または半バッチ式プロセスで行うことができる。例えば、反応混合物の調製は、上流の(半)バッチプロセスで、例えば攪拌容器中で行うことができる。好ましい実施形態の一つでは、原料としてのカルボン酸及びアルコール、並びに触媒を、互いに独立して場合により溶剤で希釈して、反応管中に入れる少し前になって初めて混合する。触媒はそのままでまたは原料のうちの一つとの混合物として反応混合物に加えることができる。例えば、カルボン酸、アルコール及び触媒の混合を混合域中で行い、それから反応混合物を反応管中に送ることが有利であることが判明した。更に、好ましくは、原料及び触媒は液体の形で本発明方法に供給される。このためには高融点及び/または高粘度の原料は、例えば溶融状態で及び/または溶剤を混合して、例えば溶液、分散液またはエマルションとして使用することができる。触媒は、反応管に入れる前に、原料の一つまたは原料混合物に加えられる。不均一系も本発明の方法に従い反応させることができ、この場合、反応物を輸送するための然るべき工業的な装置が必要である。
【0062】
反応混合物は、内部導体管中に通した末端、またはその反対側の末端から反応管中に供給することができる。そのため、反応混合物は、マイクロ波アプリケータ中を、マイクロ波の伝播方向に対して並行にまたは逆並行に通すことができる。
【0063】
管の横断面、照射域の長さ(以下、反応物がマイクロ波放射線に曝される反応管の長さと解される)、流速、空洞共振器の形状、及び入射されるマイクロ波出力を変えることによって、最大の反応温度が可能な限り速く達成されるようにそして最大温度での滞留時間が短くなって、副反応もしくは二次反応の発生が出来るだけ少なくなるように、反応条件が調節することが好ましい。反応物は、反応をより完全にするために、場合によっては中間冷却後に、反応管に数回通すことができる。ゆっくりと進行する反応の場合には、反応管を出た後の反応生成物を、なおも或る一定の時間、反応温度に維持することがしばしば有利であることが判明した。反応生成物を、反応管から出た直後に、例えば外套冷却または放圧によって冷却すると多くの場合に有利であると判明した。また、触媒を、反応管から出た後に直ぐに失活することが有利であると判明した。これは、例えば、中和によって、または不均一系触媒反応の場合には濾過によって行うことができる。
【0064】
好ましくは、マイクロ波照射によって生ずる温度上昇は、例えば、マイクロ波強度、流速の調節及び/または反応管の冷却、例えば窒素流による冷却によって最大500℃まで制限する。特に、120℃から最大400℃、特に150℃から最大300℃の温度、例えば180℃から270℃の温度で反応を行うことが有利であると判明した。
【0065】
マイクロ波照射の期間は、様々なファクター、例えば反応管の形状、入射されるマイクロ波エネルギー、特定の反応、及び所望とする転化率などに依存する。通常は、マイクロ波照射は、30分間未満の期間、好ましくは0.01秒間〜15分間、特に好ましくは0.1秒間〜10分間、特に1秒間〜5分間、例えば5秒間〜2分間の期間にわたり行われる。マイクロ波放射線の強度(出力)は、反応物が、空洞共振器から出る際に所望の最大温度を有するように調節される。好ましい実施形態の一つでは、反応生成物は、マイクロ波照射が完了した後直接、できるだけ早く120℃未満、好ましくは100℃未満、特に60℃未満の温度に冷却する。
【0066】
好ましくは、反応は、1bar(大気圧)〜500bar、特に好ましくは1.5〜200bar、特に3bar〜150bar、就中10bar〜100bar、例えば15〜50barの圧力で行われる。高められた圧力下での作業が特に有利であると判明し、この際、原料、生成物、場合により存在する溶剤、及び/または反応中に生成する反応水の沸点(常圧下)以上で作業される。特に好ましくは、圧力は、反応混合物がマイクロ波照射中に液状の状態に留まり、沸騰しない高さに調節される。
【0067】
副反応を避けて出来るだけ純粋な生成物を製造するためには、原料及び生成物を不活性保護ガス、例えば窒素、アルゴンまたはヘリウムの存在下に扱うことが有利であると判明した。
【0068】
たとえ原料としてのカルボン酸及びアルコールがしばしば扱いやすい反応混合物を与えるとしても、例えば反応媒体の粘度を低下させ及び/または反応混合物を(特にこれが不均一系である場合に)流動性にするために、溶剤の存在下に作業することが多くの場合に有利であると判明した。そのためには、原則的に、使用する反応条件の下に不活性でありかつ原料または生ずる生成物と反応しないものであれば、全ての溶剤を使用できる。適当な溶剤の選択にあたっての重要なファクターの一つは、一方では溶解特性をそして他方ではマイクロ波放射線との相互作用の程度を決定するそれの極性である。適当な溶剤を選択するにあたっての特に重要なファクターの一つは、それの誘電損失ε’’である。誘電損失ε’’は、マイクロ波放射線と物質との相互作用の際に熱に変換されるマイクロ波放射線の割合を示す。最後に挙げた値は、本発明の方法を実施するための溶剤の適性にとって特に重要な規準であることが判明した。
【0069】
できるだけ少ないマイクロ波吸収を示し、それゆえ反応系の加温にわずかな貢献しかしない溶剤中で作業することが特に有利であると分かった。本発明の方法に好ましい溶剤は、室温及び2450MHzで測定して、10未満、好ましくは1未満、例えば0.5未満の誘電損失ε’’を有する。様々な溶剤の誘電損失に関する一覧は、例えば、“Microwave Synthesis”von B.L.Hayes,CEM Publishing 2002(非特許文献8)に記載されている。本発明の方法には、特に、10未満のε’’値を有する溶剤、例えばN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドまたはアセトン、特に1未満のε’’値を有する溶剤が適している。1未満のε’’値を有する特に好ましい溶剤の例は、芳香族及び/または脂肪族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン、ヘキサン、シクロヘキサン、デカン、ペンタデカン、デカリン並びに商業的な炭化水素混合物、例えばベンジン留分、ケロシン、ソルベントナフサ、Shellsol(登録商標)AB、Solvesso(登録商標)150、Solvesso(登録商標)200、Exxsol(登録商標)、Isopar(登録商標)及びShellsol(登録商標)タイプである。好ましくは10未満、特に1未満のε’’値を有する溶剤混合物も、本発明方法の実行に同様に好ましい。
【0070】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、本発明の方法は、より高いε’’値、例えば5またはそれ以上のε’’値、特に10またはそれ以上のε’’値を有する溶剤中で行われる。この実施形態は、それ自体が、すなわち溶剤及び/または希釈剤の存在無しで、非常に低いマイクロ波吸収しか示さない反応混合物の反応において特に有効であると判明した。例えば、この実施形態は、10未満、好ましくは1未満の誘電損失ε’’を有する反応混合物において特に有効であると判明した。しかし、溶剤の添加によってしばしば観察される加速された反応混合物の加熱は、最大温度を維持するための措置を必要とする。
【0071】
溶剤の存在下に作業する場合には、反応混合物中でのそれの割合は好ましくは1〜95重量%、特に好ましくは2〜90重量%、特に5〜85重量%、就中10〜75重量%、例えば30〜60重量%である。特に好ましくは、反応は溶剤無しで行われる。
【0072】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、反応混合物に、それに不溶性のマイクロ波を強く吸収する物質を加える。これは、反応混合物の強い局所的な加熱を招き、そしてその結果、反応を更に加速させる。一つの適したこのような熱収集体は例えばグラファイトである。
【0073】
約1cm〜1mの波長及び約300MHz〜30GHzの周波数を有する電磁放射線がマイクロ波と称される。原則的にこの周波数範囲が本発明方法に適している。好ましくは、本発明方法には、工業用、学術用、医学用、家庭用または類似の用途に許可されている周波数を有するマイクロ波放射線、例えば915MHz、2.45GHz、5.8GHzまたは24.12GHzの周波数を有するマイクロ波放射線が使用される。
【0074】
本発明方法の実施のために空洞共振器中に入射するべきマイクロ波出力は、特に、目的とする反応温度に、加えて反応管の形状、それ故、反応容積に、並びに加熱域を通る際の反応物の流速に依存する。これは、通常は、200W〜数100kW、特に500W〜100kW、例えば1kW〜70kWである。これは、一つまたは複数のマイクロ波発生器によって発生させることができる。
【0075】
好ましい実施形態の一つでは、反応は耐圧性で化学的に不活性な管中で行われ、この際、生ずる反応水、並びに場合により原料、及び存在する場合には溶剤は圧力上昇をもたらす。反応の終了の後に、過剰圧を、反応水、過剰の原料、並びに場合により溶剤の揮発及び分離のために及び/または反応生成物の冷却のために、放圧により使用することができる。更に別の実施形態の一つでは、生じた反応水を、冷却及び/または放圧の後に、慣用の方法、例えば相分離、蒸留、ストリッピング、フラッシング及び/または吸収によって分離する。
【0076】
特に高い転化率を達成するためには、多くの場合に、得られた反応生成物を、反応水を除去した後に、並びに場合によっては生成物及び/または副生成物を排出した後に、再びマイクロ波照射に付すことが有利であることが分かった。この際、場合により、使用する各反応体の比率を、消費されたまたは不足の原料の分補うことができる。
【0077】
本発明方法の利点は、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向に及び特に(例えば同軸変換を備えた)E01空洞共振器の内部にその長軸がある反応管の内部の対称的マイクロ波場の中央で、反応物が非常に均一に照射されることである。この際、本発明の反応器設計は、反応を非常に高い圧力及び/または温度で行うことも可能とする。温度及び/または圧力を高めることによって、既知のマイクロ波反応器と比べても、転化率及び収量の明らかな向上が観察され、しかもこの際、望ましくない副反応及び/または着色を招かない。この際、驚くべきことに、空洞共振器中に入射されたマイクロ波エネルギーの利用の下に非常に高い効率が達成され、これは、入射されたマイクロ波出力の通常は50%超、しばしば80%超、一部では90%超、特別な場合では95%超、例えば98%超であり、それ故、慣用の製造方法並びに従来技術のマイクロ波方法に対して経済的かつエコロジー的な利点を供する。
【0078】
加えて、本発明の方法は、制御された安全でかつ再現性のある反応の実行を可能にする。反応物が、マイクロ波の伝播方向に並行して反応管中を移動するため、(例えば波頂及びノードにおいて)マイクロ波場の強度が変化することよって生ずる局所的な過熱を招く制御不能な場の分布による既知の過熱現象が、反応物の上記の流動運動によって均される。上記の利点は、1kW超、例えば2〜10kW、特に5〜100kW、一部ではより大きな高いマイクロ波出力を用いて作業することも可能とし、それ故、空洞共振器中での短い滞留時間だけとの組み合わせで、一つのプラントで1年間当たり100トンまたはそれ以上の多量の生産量を成し遂げることを可能とする。
【0079】
この際、連続的に通流される流管中でマイクロ波場中での反応混合物の滞留時間が非常に短いにも拘わらず、不足量で使用された成分を基準にして一般的に80%超、しばしば90%超、例えば95%超の転化率をもって非常に実質的なエステル化が起こり、しかもこの際、副生成物は目立つ量では生じないことは驚くべきことであった。更に、エステル化の際に生ずる反応水を分離せずともこれらの反応条件下に上述の転化率が達成できることも驚きべきことであった。熱外套加熱下での同じ寸法の流管中でのこの反応混合物の対応する反応では、適当な反応温度を達成するためには極めて高い壁温度が必要とされ、これは未定義のポリマー及び着色された化学種の形成を招き、しかし同じ時間間隔において明らかに減少したエステル形成を引き起こす。更に、本発明方法に従い製造された生成物は、粗製生成物の更なる仕上げ処理を必要とすることなく、非常に低い金属含有量を有する。例えば、本発明方法に従い製造された生成物の金属含有量は、主な元素としての鉄に基づいて、通常は25ppm未満、好ましくは15ppm未満、特に10ppm未満、例えば0.01〜5ppmの鉄である。
【0080】
それ故、本発明の方法は、工業的な量において高収量及び高純度でカルボン酸エステルを非常に迅速に、エネルギー節約的にかつ費用効果高く製造することを可能にする。この方法では、反応水の他には、実質的な量の副生成物は生じない。このような迅速でかつ選択的な反応は、従来の方法では達成することができず、ただ高温度に加熱することでは期待できなかったものである。
【実施例】
【0081】
マイクロ波照射下での反応混合物の反応を、筒状空洞共振器(60×10cm)中に軸対称的に存在するセラミック管(60×1cm)中で行った。空洞共振器の末端側の一つのところで、上記のセラミック管は、カップリングアンテナとして機能する内部導体管の空洞中を通って延びていた。マグネトロンから発生される2.45GHzの周波数を有するマイクロ波場は、前記のカップリングアンテナを用いて空洞共振器中にカップリングし(E01空洞アプリケータ、モノモード)、ここで定常波が生じた。
【0082】
マイクロ波の出力は、試験期間にわたりそれぞれ、照射域の端部で反応物の所望の温度が一定に維持されるように調節された。それ故、試験の記載において挙げるマイクロ波出力は、入射されたマイクロ波出力の時間平均値を表す。反応混合物の温度測定は、反応域(絶縁した特殊鋼キャピラリー(φ1cm)中約15cm長)を出た後直ぐにPt100温度センサーを用いて行った。反応混合物によって直接吸収されないマイクロ波エネルギーは、カップリングアンテナとは反対側の空洞共振器末端で反射した。逆行時にも反応混合物に吸収されず、マグネトロンの方向に反射するマイクロ波エネルギーは、プリズムシステム(サーキュレーター)を用いて、水を含む容器中に導いた。入射されたエネルギーとこの水負荷の加熱との差から、反応物中に取り入れられたマイクロ波エネルギーを計算した。
【0083】
高圧ポンプ及び適当な圧力逃し弁を用いて、全ての原料及び生成物もしくは縮合生成物を常に液状の状態に維持するのに十分な作業圧を、反応管中の反応混合にかけた。カルボン酸及びアルコールから調製される反応混合物を、一定の流速で、反応管中にポンプ輸送して通し、そして照射域中での滞留時間を流速を変更することによって調節した。
【0084】
生成物の分析は、H−NMR分光分析を用いてCDCl中で500MHzで行った。鉄含有率の測定は、原子吸収分光によって行った。
【0085】
例1:酢酸ブチルの製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に3.56kgのn−ブタノール(48モル)を仕込み、そして1.44kgの酢酸(24モル)及び0.05kgのメタンスルホン酸と混合した。こうして得られた混合物を、25barの作業圧下に連続的に5L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、そして2.7kWのマイクロ波出力をかけた。そのうち91%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約35秒間であった。反応管の末端の所で、この反応混合物は275℃の温度を有していた。この反応混合物を、反応器を出たら直ぐに、強力熱交換器を用いて室温に冷却し、そして触媒の中和のために炭酸水素塩溶液と混合した。
【0086】
理論値の84%の転化率が達成された。反応生成物は実質上無色であり、鉄含有率は<2ppmであった。反応水及び未反応原料を蒸留して分離し、及び生成物を蒸留した後に、>99%の純度を有する2.25kgの酢酸ブチルが得られた。
【0087】
例2:ヘキサン酸メチルエステルの製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に4.94kgのヘキサン酸(43モル)を仕込み、そして2.56kgのメタノール(80モル)及び0.075kgのメタンスルホン酸と混合した。こうして得られた混合物を、35barの作業圧下に連続的に7.5L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、そして3.0kWのマイクロ波出力をかけた。そのうち90%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約23秒間であった。反応管の末端で、反応混合物は279℃の温度を有していた。
【0088】
この反応混合物を、反応器を出た後直ぐに、強力熱交換器を用いて室温に冷却した。炭酸水素塩溶液で触媒を中和し、相分離を行い、残った水及び過剰のメタノールを蒸留して分離した後に、5.09kgのヘキサン酸メチルエステル(理論値の91%)が0.5mgKOH/gの残留酸価で得られた。この反応生成物は淡黄色に着色されており、生成物の鉄含有率は3ppm未満であった。
【0089】
例3:メタクリル酸メチルエステルの製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に4.8kgのメタクリル酸(56モル)を仕込み、そして2.7kgのメタノール(84モル)、1.5gのフェノチアジン(開始剤)及び0.075kgのメタンスルホン酸と混合した。
【0090】
こうして得られた混合物を35barの作業圧下に連続的に7.5L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、そして3.6kWのマイクロ波出力をかけた。そのうち95%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約23秒間であった。反応管の末端で、反応混合物は249℃の温度を有していた。この反応混合物を、反応器を出た後直ぐに、強力熱交換器を用いて室温に冷却した。
【0091】
理論値の82%の転化率が達成された。反応生成物は淡黄色に着色されていた。炭酸水素溶液で触媒を中和し、反応水及び未反応原料を蒸留して分離し、及び生成物を蒸留した後に、4.32kgのメチルメタクリレートが>99%の純度で得られた。
【0092】
例4:アクリル酸ステアリルエステルの製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に3.6kgのアクリル酸(50モル)を仕込み、そして6.8kgのステアリルアルコール(25モル)、3gのフェノチアジン(開始剤)と混合した。
【0093】
こうして得られた混合物を27barの作業圧下に連続的に4L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、そして3.1kWのマイクロ波出力をかけた。そのうち90%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約43秒間であった。反応管の末端で、この反応混合物は254℃の温度を有していた。この反応混合物を、反応器を出た後直ぐに、強力熱交換器を用いて60℃に冷却した。
【0094】
理論値の93%の転化率が達成された。反応生成物は黄色に着色されていた。過剰のアクリル酸を蒸留して分離した後、7.34kgのステアリルアクリレートが>97%の純度で得られた。
【0095】
例5:2−ヒドロキシプロパン酸ウンデシルエステルの製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に2.25kgの乳酸(90%水溶液の形、22.5モル)を仕込み、そして7.75kgのウンデシルアルコール(Exxon社のExxal(登録商標)11、45モル)及び0.075kgのメタンスルホン酸と混合した。
【0096】
こうして得られた混合物を、25barの作業圧下に連続的に6L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、そして3.7kWのマイクロ波出力をかけた。そのうち92%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約29秒間であった。反応管の末端で、反応混合物は267℃の温度を有していた。この反応混合物を、反応器を出た後直ぐに、強力熱交換器で室温に冷却した。
【0097】
理論値の89%の転化率が達成された。反応生成物は無色であった。炭酸水素溶液で触媒を中和し、そして反応水及び未反応原料を蒸留した分離した後、1mbar及び170℃での減圧蒸留後に4.7kgの乳酸−ウンデシルエステルが>98.5%の純度で得られた。
【0098】
例6:2−ヒドロキシプロピオン酸−2−エチルヘキシルエステルの製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に2.5kgの乳酸(90%水溶液の形、25モル)を仕込み、そして6.5kgの2−エチルヘキサノール(50モル)及び0.075kgのメタンスルホン酸と混合した。
【0099】
こうして得られた混合物を、25barの作業圧下に連続的に6L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、そして3.2kWのマイクロ波出力をかけた。そのうち94%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約29秒間であった。反応管の末端で、反応混合物は271℃の温度を有していた。この反応混合物を、反応器を出た後直ぐに、強力熱交換器を用いて室温に冷却した。
【0100】
理論値の92%の転化率が達成された。反応生成物は無色であった。炭酸水素溶液で触媒を中和し、そして反応水及び未反応原料を蒸留した分離した後に、減圧蒸留後に4.52kgの乳酸−2−エチルヘキシルエステルが>99%の純度で得られた。
例7:ポリ−(2−ヒドロキシプロパン酸)の製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に5.0kgの乳酸(90%濃度水溶液の形、50モル)を仕込み、10gの濃硫酸(0.2重量%)と混合し、そして60℃に加熱した。この乳酸溶液を、25barの作業圧下に連続的に3.5L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、そして3.4kWのマイクロ波出力をかけた。そのうち92%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約50秒間であった。反応管の末端で、反応混合物は235℃の温度を有していた。この反応混合物を、反応器を出た後直ぐに、強力熱交換器を用いて室温に冷却した。
【0101】
使用したCOOH官能基を基準に理論値の72%の転化率が達成された(酸価滴定によって測定)、これは、おおよそ4の平均重合度に相当する。この反応生成物は無色乃至淡黄色であり、明らかに粘性があった。
本願は、特許請求の範囲に記載に発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する。
1.
脂肪族カルボン酸エステルを製造するための連続的方法であって、次式(I)
−COOH (I)
[式中、Rは、水素、または炭素原子数1〜50の場合により置換された脂肪族炭化水素残基を表す]
で表される少なくとも一種の脂肪族カルボン酸と、次式(II)
−(OH) (II)
[式中、
は、炭素原子数1〜100の場合により置換された炭化水素残基を表し、そして
nは、1〜10の数を表す]
で表される少なくとも一種のアルコールとを、少なくとも一種のエステル化触媒の存在下に、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向にその長軸がある反応管中でマイクロ波照射下に反応させてエステルとする、上記方法。
2.
マイクロ波による反応混合物の照射が、マイクロ波発生器に導波管を介して接続された中空導体内のマイクロ波に対しほぼ透明な反応管中で行われる、上記1の方法。
3.
マイクロ波アプリケータが空洞共振器として構成される、上記1及び2の一つまたはそれ以上の方法。
4.
マイクロ波アプリケータが反射型空洞共振器として構成される、上記1〜3の一つまたはそれ以上の方法。
5.
反応管が、中空導体の中央対称軸と軸状に整列される、上記1〜4の一つまたはそれ以上の方法。
6.
反応混合物の照射が、マイクロ波の同軸変換を備えた空洞共振器中で行われる、上記1〜5の一つまたはそれ以上の方法。
7.
空洞共振器がE01nモードで稼働され、この際nが1〜200の整数である、上記1〜6の一つまたはそれ以上の方法。
8.
空洞共振器中に定常波が形成される、上記1〜7の一つまたはそれ以上の方法。
9.
反応物をマイクロ波照射によって120〜500℃の温度に加熱する、上記1〜8の一つまたはそれ以上の方法。
10.
マイクロ波照射を、大気圧よりも高い圧力下に行う、上記1〜9の一つまたはそれ以上の方法。
11.
が、炭素原子数2〜30の場合により置換された脂肪族炭化水素残基である、上記1〜10の一つまたはそれ以上の方法。
12.
が、炭素原子数1、2、3または4の場合により置換された飽和アルキル基である、上記1〜11の一つまたはそれ以上の方法。
13.
が、炭素原子数2〜4の場合により置換されたアルケニル基を表す、上記1〜11の一つまたはそれ以上の方法。
14.
が、カルボキシル基、ヒドロキシル基及び/またはC〜C20アリール基から選択される少なくとも一つの更なる置換基を有する、上記1〜13の一つまたはそれ以上の方法。
15.
が、炭素原子数5〜50の場合により置換された脂肪族炭化水素残基を表す、上記1〜11の一つまたはそれ以上の方法。
16.
が、炭素原子数2〜24の場合により置換された脂肪族基を表す、上記1〜15の一つまたはそれ以上の方法。
17.
が、場合により置換されたC〜C12アリール基、または環員数5〜12の場合により置換されたヘテロ芳香族基を表す、上記1〜15の一つまたはそれ以上の方法。
18.
が、一つ、二つ、三つ、四つ、五つまたは六つのOH基を有する、上記1〜17の一つまたはそれ以上の方法。
19.
が、次式(III)の基を表す、上記1〜15の一つまたはそれ以上の方法。
−(R−O)−R (III)
[式中、
は、炭素原子数2〜18のアルキレン基またはこれらの混合物を表し、
は、水素、または炭素原子数1〜24の炭化水素残基、または式−R−NR1011の基を表し、
nは、1〜500の数を表し、そして
10、R11は、互いに独立して、炭素原子数1〜24の脂肪族基、環員数5〜12のアリール基もしくはヘテロアリール基、ポリ(オキシアルキレン)単位数1〜50のポリ(オキシアルキレン)基を表し、ここで前記ポリオキシアルキレン単位は炭素原子数2〜6のアルキレンオキシド単位から誘導され、またはR10とR11は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、環員数4、5、6またはそれ以上の環を形成する]
20.
がヒドロキシル基を有し、Rがカルボキシル基を有する、上記1〜19の一つまたはそれ以上の方法。
21.
及びRが同じ意味を有する、上記20の方法。
22.
脂肪族カルボン酸(I)とアルコール(II)とを、それぞれカルボキシル基及びヒドロキシル基のモル当量を基準にして20:1〜1:20のモル比で反応させる、上記1〜21の一つまたはそれ以上の方法。
23.
均一系触媒、不均一系触媒またはこれらの混合物の存在下に行われる、上記1〜22の一つまたはそれ以上の方法。