特許第5961555号(P5961555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許59615554−カルボニルオキシキノリン誘導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961555
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】4−カルボニルオキシキノリン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 215/22 20060101AFI20160719BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160719BHJP
【FI】
   C07D215/22
   !C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-544273(P2012-544273)
(86)(22)【出願日】2011年11月16日
(86)【国際出願番号】JP2011076370
(87)【国際公開番号】WO2012067136
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2010-258856(P2010-258856)
(32)【優先日】2010年11月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006091
【氏名又は名称】Meiji Seikaファルマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】島野 静雄
(72)【発明者】
【氏名】森川 明紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 賢一
(72)【発明者】
【氏名】堀田 博樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 一美
(72)【発明者】
【氏名】中西 希
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 宣人
【審査官】 榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/007964(WO,A1)
【文献】 特開昭62−063541(JP,A)
【文献】 特開昭52−010237(JP,A)
【文献】 Canadian Journal of Chemistry,1985年,Vol.63, No.1,p.153-162
【文献】 Tetrahedron Letters,1979年,Vol.20, No.26,p.2431-2432
【文献】 Indian Journal of Chemistry,2006年,Vol.45,p.2485-2490
【文献】 実験化学講座27 生物有機,社団法人日本化学会 編,1991年 5月 5日,第4版,p.251-260
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 215/22
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
化学書資料館
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)の4−カルボニルオキシキノリン誘導体:
【化1】
〔式中、
、RおよびRは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキル基、またはハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルコキシ基を表し、ただし、R、RおよびRは同時に水素原子を表すことはなく、
およびRは互いに独立して、水素原子、またはハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキル基を表し、ただし、RおよびRが同時に水素原子を表すことはなく、あるいはRとRは一緒になって−(CH)m−(ここで、mは3または4を表す)を表し、
、R、R、RおよびR10は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−8アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−8アルコキシ基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−8アルキルチオ基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC2−4アルケニルオキシ基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC2−4アルケニルチオ基、またはハロゲン原子により置換されていてもよいC2−4アルキニルオキシ基を表し、
あるいはR、R、R、RおよびR10のいずれかの隣り合う二つの置換基が一緒になって1以上のハロゲン原子により置換されていてもよい−O−(CH)n−O−(nは1または2を表す)を表し、
11はハロゲン原子により置換されていてもよいC1−8アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC3−6環状アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC2−4アルケニル基、OR12(ここで、R12はハロゲン原子により置換されていてもよいC1−8アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC3−6環状アルキル基、またはハロゲン原子により置換されていてもよいC2−4アルケニル基を表す)、SR13(ここで、R13はハロゲン原子により置換されていてもよいC1−8アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC3−6環状アルキル基、またはハロゲン原子により置換されていてもよいC2−4アルケニル基を表す)を表す。〕の製造方法であって、
相間移動触媒、塩基、および溶媒の存在下、
一般式(2):
【化2】
〔式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、およびR10は式(1)で定義された内容と同義である。〕
で示されるキノロン誘導体と、
一般式(3):
【化3】
〔式中、R11は式(1)で定義された内容と同義であり、Xはフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素のいずれか1種を表す。〕
で示されるハロゲン化合物または一般式(4):
【化4】
〔式中、R11は式(1)で定義された内容と同義である。〕
で示される酸無水物とを反応させることを含んでなり、
ここで、該溶媒が、アミド類と、芳香族炭化水素またはハロゲン化脂肪族炭化水素とを含む混合溶媒系であり、ここで該アミド類がジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはN−メチルピロリドンである、製造方法。
【請求項2】
、RおよびRのうちのいずれか一つがメチル基、トリフルオロメチル基、またはメトキシ基を表し、残りの二つは水素原子を表し、RおよびRは互いに独立してハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキル基を表し、R、R、R、RおよびR10のうちのいずれか一つがトリフルオロメチル基、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基、または1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基を表し、残りの四つは水素原子を表し、あるいはRと、Rとが一緒になって−O−(CF−O−を表し、R11はOR12(ここでR12はC1−4アルキル基を表す)を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記相間移動触媒が四級アンモニウム塩であり、前記塩基がアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、またはアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸化物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記相間移動触媒が臭化テトラブチルアンモニウムである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記塩基がアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液、またはアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸化物の水溶液である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基が水酸化ナトリウム水溶液である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記塩基が30〜70重量%溶液である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
混合溶媒系の混合比が、アミド類が1質量部に対し、芳香族炭化水素またはハロゲン化脂肪族炭化水素が3〜20質量部である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アミド類がジメチルアセトアミドであり、芳香族炭化水素またはハロゲン化脂肪族炭化水素がトルエンである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本願特許出願は、2010年11月19日に出願された日本出願特願2010−258856号に基づく優先権の主張を伴うものであり、この日本出願の全開示内容は、引用することにより本願発明の開示の一部とされる。
【発明の背景】
【0002】
技術分野
本発明は、農薬として有用な4−カルボニルオキシキノリン誘導体の製造方法に関するものである。
【0003】
背景技術
4−カルボニルオキシキノリン誘導体は、国際公開第2006/013896号パンフレット(特許文献1)、特開2008−110953号公報(特許文献2)、および国際公開第2007/088978号パンフレット(特許文献3)において農園芸用殺虫剤として、または農園芸用殺菌剤として有用な化合物であることが開示されている。これらの4−カルボニルオキシキノリン誘導体は、鱗翅目、半翅目、鞘翅目、ダニ目、膜翅目、直翅目、双翅目、アザミウマ目、および植物寄生性線虫に対して高い殺虫活性を示す化合物である。さらに、当該4−カルボニルオキシキノリン誘導体は農園芸用殺菌剤として、様々な植物病原真菌に対して効果を示し、例えば、キュウリうどん粉病菌、コムギ赤さび病菌、オオムギうどん粉病菌、トマト輪紋病菌、リンゴ黒星病菌、モモ灰星病菌、およびイチゴ炭疸病菌に対して殺菌効果を示す化合物として知られている。また当該4−カルボニルオキシキノリン誘導体の製造方法が、国際公開第2010/007964号パンフレット(特許文献4)に開示されている。
【0004】
上記特許文献には、これらの4−カルボニルオキシキノリン誘導体の製造方法として、塩基存在下でキノロン誘導体と、ハロゲン化合物または酸無水物とを反応させ、4−カルボニルオキシキノリン誘導体を製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法で使用される水素化ナトリウムやナトリウム−t−ブトキシド等の塩基は反応性が高く、吸湿分解性であることから、取扱いが困難であり、生成物の分解を回避するため、厳密な仕込み当量管理を必要とする。加えて、水素化ナトリウムやナトリウム−t−ブトキシド等の塩基は高価な塩基であることから、工業的製造方法として更なる改良が求められる。さらに、水素化ナトリウムやナトリウム−t−ブトキシド等の塩基を用いた場合には、反応溶剤としてジメチルアセトアミド等の高沸点のアミド系溶剤を大量に使用する必要があり、また4−カルボニルオキシキノリン誘導体の単離操作においてさらに大量の水を投入することを必要とするため、その単離工程において、その操作効率の低下を招く恐れがある。また、大量のアミド系溶剤の排水への混入は排水負荷が大きく、水溶液からの溶剤回収が必要であるが、高沸点溶剤であることから回収操作に多大なエネルギーを必要とするため工業的製造には不利益を伴う場合があった。
【0005】
したがって、殺虫性化合物および殺菌性化合物としての有用性が見出されている4−カルボニルオキシキノリン誘導体の、さらに有利な工業的製造法が希求されているといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/013896号パンフレット
【特許文献2】特開2008−110953号公報
【特許文献3】国際公開第2007/088978号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2010/007964号パンフレット
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、4−カルボニルオキシキノリン誘導体の製造方法として、キノロン誘導体と、ハロゲン化合物または酸無水物との反応において、相間移動触媒を用いることにより、安価で取扱いが容易な塩基を用いることが可能となり、これにより、厳密な塩基仕込当量管理を必要とせず、また溜去容易な反応溶媒を適用することが可能となり、さらに排水への負荷が軽減される工業的に有利で、高収率な製造方法を見出した。本発明はこれら知見に基づくものである。
【0008】
従って、本発明の目的は、4−カルボニルオキシキノリン誘導体の工業的に有利な製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明によれば、一般式(1)の4−カルボニルオキシキノリン誘導体の工業的に有利な製造方法が提供される。すなわち、本発明によれば、一般式(1)の4−カルボニルオキシキノリン誘導体:
【化1】
〔式中、
、RおよびRは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキル基、またはハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルコキシ基を表し、ただし、R、RおよびRは同時に水素原子を表すことはなく、
およびRは互いに独立して、水素原子、またはハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキル基を表し、ただし、RおよびRが同時に水素原子を表すことはなく、あるいはRとRは一緒になって−(CH)m−(ここで、mは3または4を表す)を表し、
、R、R、RおよびR10は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−8アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−8アルコキシ基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−8アルキルチオ基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC2−4アルケニルオキシ基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC2−4アルケニルチオ基、またはハロゲン原子により置換されていてもよいC2−4アルキニルオキシ基を表し、
あるいはR、R、R、RおよびR10のいずれかの隣り合う二つの置換基が一緒になって1以上のハロゲン原子により置換されていてもよい−O−(CH)n−O−(nは1または2を表す)を表し、
11はハロゲン原子により置換されていてもよいC1−8アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC3−6環状アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC2−4アルケニル基、OR12(ここで、R12はハロゲン原子により置換されていてもよいC1−8アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC3−6環状アルキル基、またはハロゲン原子により置換されていてもよいC2−4アルケニル基を表す)、SR13(ここで、R13はハロゲン原子により置換されていてもよいC1−8アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC3−6環状アルキル基、またはハロゲン原子により置換されていてもよいC2−4アルケニル基を表す)を表す。〕
の製造方法であって、
相間移動触媒および塩基の存在下、
一般式(2):
【化2】
〔式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、およびR10は式(1)で定義された内容と同義である。〕
で示されるキノロン誘導体と、
一般式(3):
【化3】
〔式中、R11は式(1)で定義された内容と同義であり、Xはフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素のいずれか1種を表す。〕
で示されるハロゲン化合物または一般式(4):
【化4】
〔式中、R11は式(1)で定義された内容と同義である。〕
で示される酸無水物とを反応させることを含んでなる製造方法が提供される。
【0010】
本発明によれば、安価で取扱いが容易な塩基を用いることが可能となり、これにより、厳密な塩基仕込当量管理を必要とせず、また溜去容易な反応溶媒を適用することが可能となり、さらに排水への負荷が軽減される工業的に有利で、高収率な製造方法を提供することができる。
【発明の具体的説明】
【0011】
一般式中の置換基の定義
本明細書において「ハロゲン原子」とは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味し、好ましくはフッ素、塩素または臭素であり、より好ましくは塩素、フッ素である。
【0012】
本明細書において「環状アルキル基」とは、そのアルキル基が少なくとも一つの環状構造を含むことを意味する。環状アルキル基としては、例えば、シクロアルキル基、1以上のシクロアルキル基により置換されたアルキル基が挙げられ、これらはさらに1以上のアルキル基により置換されていてもよい。
【0013】
、RおよびRが表すC1−4アルキル基は直鎖であっても分岐していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、およびt−ブチル基が挙げられる。このC1−4アルキル基は、好ましくは直鎖C1−4アルキル基とされ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基およびn−ブチル基が挙げられ、より好ましくはメチル基またはエチル基とされる。
【0014】
、RおよびRが表すC1−4アルキル基はハロゲン原子により置換されていてもよい。R、RおよびRが表す、ハロゲン原子により置換されているC1−4アルキル基としては、例えば、クロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、(1−または2−)クロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、およびペンタフルオロエチル基が挙げられ、好ましくはトリフルオロメチル基とされる。
【0015】
、RおよびRが表すC1−4アルキル基はC1−4アルコキシ基により置換されていてもよい。R、RおよびRが表す、C1−4アルコキシ基により置換されているC1−4アルキル基としては、例えば、メトキシメチル基が挙げられる。
【0016】
、RおよびRが表すC1−4アルコキシ基は直鎖であっても分岐していてもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、i−ブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、およびt−ブチルオキシ基が挙げられる。このC1−4アルコキシ基は、好ましくは直鎖C1−4アルコキシ基とされ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、およびn−ブチルオキシ基が挙げられ、より好ましくはメトキシ基またはエトキシ基とされる。
【0017】
、RおよびRが表すC1−4アルコキシ基は、ハロゲン原子により置換されていてもよい。R、RおよびRが表す、ハロゲン原子により置換されているC1−4アルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、およびペンタクロロエトキシ基が挙げられる。
【0018】
本発明の好ましい実施態様によれば、R、RおよびRは互いに独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、またはトリフルオロメチル基を表し(ただし、R、RおよびRが同時に水素原子を表すことはない)、より好ましくはR、RおよびRのうちのいずれか一つがメチル基、トリフルオロメチル基、またはメトキシ基を表し、残りの二つが水素原子を表す。特に好ましくは、R、Rのうちいずれか一つがメチル基、トリフルオロメチル基、またはメトキシ基を表し、他方が水素原子であり、Rが水素原子である。
【0019】
およびRが表すC1−4アルキル基は直鎖であっても分岐していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、およびt−ブチル基が挙げられ、好ましくはメチル基またはエチル基とされる。
【0020】
およびRが表すC1−4アルキル基はハロゲン原子により置換されていてもよい。RおよびRが表す、ハロゲン原子により置換されているC1−4アルキル基としては、例えば、クロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、(1−または2−)クロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、およびペンタフルオロエチル基が挙げられる。
【0021】
およびRが表すC1−4アルキル基はハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルコキシ基により置換されていてもよい。RおよびRが表す、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルコキシ基により置換されているC1−4アルキル基としては、例えば、2−トリフルオロメトキシエチル基が挙げられる。
【0022】
本発明の好ましい実施態様によれば、RおよびRは互いに独立して、水素原子、またはハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキル基を表し、ただし、RおよびRが同時に水素原子を表すことはない。より好ましい実施態様によれば、RおよびRは互いに独立して、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキル基を表す。これらの実施態様におけるC1−4アルキル基は、好ましくは直鎖C1−4アルキル基とされる。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、Rは−CH−R14を表し、RはR14を表し、R14はC1−3アルキル基を表す。ここで、R14が表すC1−3アルキル基は直鎖であっても分岐していてもよいが、好ましくは直鎖C1−3アルキル基とされ、より好ましくはメチル基とされる。
【0024】
、R、R、RおよびR10が表すC1−8アルキル基は直鎖であっても分岐していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、(2−または3−メチル)ペンチル基、(2,3−、2,4−または3,4−ジメチル)ブチル基、2,3,4−トリメチルプロピル基、n−ヘプチル基、およびn−オクチル基が挙げられ、好ましくはメチル基またはエチル基とされる。
【0025】
、R、R、RおよびR10が表すC1−8アルキル基はハロゲン原子により置換されていてもよい。R、R、R、RおよびR10が表す、ハロゲン原子により置換されているC1−8アルキル基としては、例えば、クロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、(1−または2−)クロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、およびペンタフルオロエチル基が挙げられ、好ましくはトリフルオロメチル基、またはペンタフルオロエチル基とされる。
【0026】
、R、R、RおよびR10が表すC1−8アルキル基はハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルコキシ基により置換されていてもよい。R、R、R、RおよびR10が表す、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルコキシ基により置換されているC1−8アルキル基としては、例えば、2−トリフルオロメトキシエチル基が挙げられる。
【0027】
、R、R、RおよびR10が表すC1−8アルコキシ基は直鎖であっても分岐していてもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、i−ブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、(2−または3−メチル)ブチルオキシ基、2,3−ジメチルプロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、(2,3または4−メチル)ペンチルオキシ基、(2,3−、2,4−または3,4−ジメチル)ブチルオキシ基、2,3,4−トリメチルプロピルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、およびn−オクチルオキシ基が挙げられ、好ましくはメトキシ基またはエトキシ基とされる。
【0028】
、R、R、RおよびR10が表すC1−8アルコキシ基はハロゲン原子により置換されていてもよい。R、R、R、RおよびR10が表すハロゲン原子により置換されているC1−8アルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、およびペンタクロロエトキシ基が挙げられ、好ましくはトリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、または1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基とされ、より好ましくはトリフルオロメトキシ基、または1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基とされる。
【0029】
、R、R、RおよびR10が表すC1−8アルキルチオ基は直鎖であっても分岐していてもよく、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、i−ブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、(2−または3−メチル)ブチルチオ基、2,3−ジメチルプロピルチオ基、n−ヘキシルチオ基、(2,3−または4−メチル)ペンチルチオ基、(2,3,−、2,4−または3,4−ジメチル)ブチルチオ基、2,3,4−トリメチルプロピルチオ基、n−ヘプチルチオ基、およびn−オクチルチオ基が挙げられ、好ましくはメチルチオ基またはエチルチオ基とされる。
【0030】
、R、R、RおよびR10が表すC1−8アルキルチオ基はハロゲン原子により置換されていてもよい。R、R、R、RおよびR10が表す、ハロゲン原子により置換されているC1−8アルキルチオ基としては、例えば、トリフルオロメチルチオ基、トリクロロメチルチオ基、ジフルオロメチルチオ基、ジクロロメチルチオ基、トリフルオロエチルチオ基、トリクロロエチルチオ基、テトラフルオロエチルチオ基、テトラクロロエチルチオ基、ペンタフルオロエチルチオ基、ペンタクロロエチルチオ基、ヘプタフルオロ−n−プロピルチオ基、およびヘプタフルオロ−i−プロピルチオ基が挙げられ、好ましくはトリフルオロメチルチオ基、トリクロロメチルチオ基、ジフルオロメチルチオ基、ジクロロメチルチオ基、トリフルオロエチルチオ基、トリクロロエチルチオ基、テトラフルオロエチルチオ基、テトラクロロエチルチオ基、ヘプタフルオロ−n−プロピルチオ基、またはプタフルオロ−i−プロピルチオ基とされ、より好ましくはトリフルオロメチルチオ基、ジフルオロメチルチオ基、ヘプタフルオロ−n−プロピルチオ基、またはヘプタフルオロ−i−プロピルチオ基とされる。
【0031】
、R、R、RおよびR10が表すC2−4アルケニルオキシ基は直鎖であっても分岐していてもよく、例えば、ビニルオキシ基、(1−または2−)プロペニルオキシ基、(1−、2−または3−)ブテニルオキシ基、1−メチルビニルオキシ基、1−メチル−1−プロペニルオキシ基、および2−メチル−1−プロペニルオキシ基が挙げられる。このC2−4アルケニルオキシ基は、好ましくは直鎖C2−4アルケニルオキシ基とされ、例えば、ビニルオキシ基、(1−または2−)プロペニルオキシ基、および(1−、2−または3−)ブテニルオキシ基が挙げられる。
【0032】
、R、R、RおよびR10が表すC2−4アルケニルオキシ基はハロゲン原子により置換されていてもよい。R、R、R、RおよびR10が表す、ハロゲン原子により置換されているC2−4アルケニルオキシ基としては、例えば、2−フルオロビニルオキシ基、2−クロロビニルオキシ基、2,2−ジフルオロビニルオキシ基、2,2−ジクロロビニルオキシ基、および3,3−ジクロロ(1−または2−)プロペニルオキシ基が挙げられる。
【0033】
、R、R、RおよびR10が表すC2−4アルケニルオキシ基はハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルコキシ基により置換されていてもよい。R、R、R、RおよびR10が表す、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルコキシ基により置換されているC2−4アルケニルオキシ基としては、例えば、2−トリフルオロメトキシビニルオキシ基が挙げられる。
【0034】
、R、R、RおよびR10が表すC2−4アルケニルチオ基は直鎖であっても分岐していてもよく、例えば、ビニルチオ基、(1−または2−)プロペニルチオ基、(1−、2−または3−)ブテニルチオ基、1−メチルビニルチオ基、1−メチル−1−プロペニルチオ基、および2−メチル−1−プロペニルチオ基が挙げられる。このC2−4アルケニルチオ基は、好ましくは直鎖C2−4アルケニルチオ基とされ、例えば、ビニルチオ基、(1−または2−)プロペニルチオ基、および(1−、2−または3−)ブテニルチオ基が挙げられる。
【0035】
、R、R、RおよびR10が表すC2−4アルケニルチオ基はハロゲン原子により置換されていてもよい。R、R、R、RおよびR10が表す、ハロゲン原子により置換されているC2−4アルケニルチオ基としては、例えば、2−フルオロビニルチオ基、2−クロロビニルチオ基、2,2−ジフルオロビニルチオ基、および2,2−ジクロロビニルチオ基が挙げられる。
【0036】
、R、R、RおよびR10が表すC2−4アルケニルチオ基はハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルコキシ基により置換されていてもよい。R、R、R、RおよびR10が表す、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルコキシ基により置換されているC2−4アルケニルチオ基としては、例えば、2−トリフルオロメトキシビニルチオ基が挙げられる。
【0037】
、R、R、RおよびR10が表すC2−4アルキニルオキシ基は直鎖であっても分岐していてもよく、例えば、エチニルオキシ基、(1−または2−)プロピニルオキシ基、(1−、2−または3−)ブチニルオキシ基、1−メチルニチニルオキシ基、1−メチル−1−プロピニルオキシ基、および2−メチル−1−プロピニルオキシ基が挙げられる。このC2−4アルキニルオキシ基は、好ましくは直鎖C2−4アルキニルオキシ基とされ、例えば、エチニルオキシ基、(1−または2−)プロピニルオキシ基、および(1−、2−または3−)ブチニルオキシ基が挙げられる。
【0038】
、R、R、RおよびR10が表すC2−4アルキニルオキシ基はハロゲン原子により置換されていてもよい。R、R、R、RおよびR10が表す、ハロゲン原子により置換されているC2−4アルキニルオキシ基としては、例えば、フルオロエチニルオキシ基、クロロエチニルオキシ基、および3−クロロ(1−または2−)プロピニルオキシ基が挙げられる。
【0039】
、R、R、RおよびR10のいずれかの隣り合う二つの置換基が一緒になって表す、1以上のハロゲン原子により置換されていてもよい−O−(CH)n−O−(nは1または2を表す)としては、例えば、−O−(CF−O−、−O−(CH−O−、−O−CHCF−O−、−O−CHFCF−O−などが挙げられ、好ましくは−O−(CF−O−とされる。
【0040】
本発明の好ましい実施態様によれば、R、R、R、RおよびR10は互いに独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロメトキシ基、または1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基を表し、あるいはR、Rが一緒になって−O−(CF−O−を表す。より好ましい実施態様によれば、R、R、R、RおよびR10のうちのいずれか一つがトリフルオロメチル基、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基、または1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基を表し、残りの四つが水素原子を表す。あるいはR、Rが一緒になって−O−(CF−O−を表す。
【0041】
11、R12、およびR13が表すC1−8アルキル基は直鎖であっても分岐していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、(2−または3−メチル)ブチル基、2,3−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、(2,3または4−メチル)ペンチル基、(2,3−、2,4−または3,4−ジメチル)ブチル基、2,3,4−トリメチルプロピル基、n−ヘプチル基、およびn−オクチル基が挙げられる。
【0042】
11、R12、およびR13が表すC1−8アルキル基はハロゲン原子により置換されていてもよい。R11、R12、およびR13が表す、ハロゲン原子により置換されているC1−8アルキル基としては、例えば、クロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、(1−または2−)クロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、およびペンタフルオロエチル基が挙げられる。
【0043】
11、R12、およびR13が表すC1−8アルキル基はハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルコキシ基により置換されていてもよい。R11、R12、およびR13が表す、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルコキシ基により置換されているC1−8アルキル基としては、例えば、2−トリフルオロメトキシエチル基が挙げられる。
【0044】
11、R12、およびR13が表す、ハロゲン原子により置換されていてもよいC3−6環状アルキル基の具体例としては、シクロプロピルメチル基、シクロプロピルエチル基、シクロプロピルプロピル基、1−メチルシクロプロピルメチル基、2−(1−メチルシクロプロピル)エチル基、2,2−ジメチルシクロプロピルメチル基、2,2−ジクロロシクロプロピルメチル基、2−(2,2−ジクロロシクロプロピル)エチル基、3−(2,2−ジクロロシクロプロピル)プロピル基、2,2−ジフルオロシクロプロピルメチル基、2−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)エチル基、3−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)プロピル基、およびシクロヘキシル基が挙げられる。
【0045】
11、R12、およびR13が表すC2−4アルケニル基は直鎖であっても分岐していてもよく、例えば、ビニル基、(1−または2−)プロペニル基、(1−、2−または3−)ブテニル基、1−メチルビニル基、1−メチル−1−プロペニル基、および2−メチル−1−プロペニル基が挙げられる。このC2−4アルケニル基は、好ましくは直鎖C2−4アルケニル基とされ、例えば、ビニル基、(1−または2−)プロペニル基、および(1−、2−または3−)ブテニル基が挙げられる。
【0046】
11、R12、およびR13が表すC2−4アルケニル基はハロゲン原子により置換されていてもよい。R11、R12、およびR13が表す、ハロゲン原子により置換されているC2−4アルケニル基としては、例えば、2−フルオロビニル基、2−クロロビニル基、2,2−ジフルオロビニル基、および2,2−ジクロロビニル基が挙げられる。
【0047】
11、R12、およびR13が表すC2−4アルケニル基はハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルコキシ基により置換されていてもよい。R11、R12、およびR13が表す、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルコキシ基により置換されているC2−4アルケニル基としては、例えば、2−トリフルオロメトキシビニル基が挙げられる。
【0048】
本発明の好ましい実施態様によれば、R11は、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキル基、またはOR12(ここでR12はハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキル基を表す)を表す。より好ましい実施態様によれば、R11は、OR12(ここで、R12はC1−4アルキル基を表す)を表す。これらの実施態様におけるC1−4アルキル基は、好ましくは直鎖C1−4アルキル基とされ、より好ましくはメチル基とされる。
【0049】
置換基R〜R11の組み合わせに係る好ましい実施態様によれば、R、RおよびRは互いに独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、またはトリフルオロメチル基を表し、ただし、R、RおよびRが同時に水素原子を表すことはなく、RおよびRは互いに独立して、水素原子、またはハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキル基を表し、ただし、RおよびRが同時に水素原子を表すことはなく、R、R、R、RおよびR10は互いに独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロメトキシ基、または1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基を表し、あるいはR、Rが一緒になって−O−(CF−O−を表し、R11はハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキル基、またはOR12(ここでR12はハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキル基を表す)を表す。
【0050】
さらに好ましい実施態様によれば、R、RおよびRのうちのいずれか一つがメチル基、トリフルオロメチル基、またはメトキシ基を表し、残りの二つは水素原子を表し、RおよびRは互いに独立してハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキル基を表し、R、R、R、RおよびR10のうちのいずれか一つがトリフルオロメチル基、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基、または1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基を表し、残りの四つは水素原子を表し、あるいはR、Rが一緒になって−O−(CF−O−を表わし、R11はOR12(ここでR12はC1−4アルキル基を表す)を表す。
【0051】
特に好ましい実施態様によれば、RおよびRのうちのいずれか一つがメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基を表し、残りは水素原子を表し、Rが水素原子であり、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基、およびブチル基を表し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、およびブチル基を表し、R、R、R、RおよびR10のうちのいずれか一つがトリフルオロメチル基、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基、または1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基を表し、残りの四つは水素原子を表し、あるいはR、Rが一緒になって−O−(CF−O−を表し、R11はOR12(ここでR12はC1−4アルキル基を表す)を表す。
【0052】
本発明による方法では相間移動触媒および塩基の存在下、一般式(2)で示されるキノロン誘導体と、一般式(3)で示されるハロゲン化合物または一般式(4)で示される酸無水物とを縮合反応させることにより、農園芸用殺虫剤または農園芸用殺菌剤として有用な一般式(1)で示される4−カルボニルオキシキノリン誘導体を得ることができる。以下に本発明ついて説明する
【0053】
本発明の製造方法は、一般式(2)で示されるキノロン誘導体と、一般式(3)で示されるハロゲン化合物または一般式(4)で示される酸無水物とを反応させて、一般式(1)で示される4−カルボニルオキシキノリン誘導体とするものである。
【0054】
一般式(3)で示されるハロゲン化合物の具体例としては、酢酸ハライド、プロピオン酸ハライド、ブタン酸ハライド、シクロプロピルカルボン酸ハライド、シクロペンチルカルボン酸ハライド、シクロヘキシルカルボン酸ハライド、n−ヘキサン酸ハライド、n−オクタン酸ハライド、n−ノナン酸ハライド、2,2−ジメチルプロパン酸ハライド、アクリル酸ハライド、メタクリル酸ハライド、クロトン酸ハライド、イソクロトン酸ハライド、ハロゲン化蟻酸メチル、ハロゲン化蟻酸エチル、ハロゲン化蟻酸イソプロピル、ハロゲン化蟻酸ブチル、ハロゲン化蟻酸オクチル等が挙げられる。ハライド、ハロゲン化体としては、塩化物(クロライド)、臭化物(ブロミド)が好ましく、原材料の調製や入手容易性から、塩化物(クロライド)が特に好ましい。
【0055】
一般式(4)で示される酸無水物の具体例としては無水酢酸、クロロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物等が挙げられる。より好ましくは、無水酢酸である。
【0056】
本発明の製造方法は、相間移動触媒の存在下において行われる。使用される相間移動触媒としては、例えば、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化メチルトリオクチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩類、塩化テトラエチルホスホニウム、臭化テトラエチルホスホニウム、臭化テトラブチルホスホニウム等の四級ホスホニウム塩類、15−クラウン−5、18−クラウン−6等のクラウンエーテル類が挙げられる。用いられる相間移動触媒は、後述する同時に用いられる塩基との組み合わせにより、適宜、最適な選択がなされるべきである。塩基として金属炭酸化物、金属水酸化物、金属アルコキシド、金属水素化物を用いた場合には、相間移動触媒としては四級アンモニウム塩類を用いることが好ましく、より好ましくは臭化テトラブチルアンモニウムである。
【0057】
相間移動触媒の使用量は特に制限されるものではないが、キノロン誘導体に対して、好ましくは0.01〜0.1倍モル、さらに好ましくは0.03〜0.06倍モルである。
【0058】
本発明の製造方法は、塩基の存在下において行われる。使用される塩基としては、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸化物またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物等の無機塩基、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水素化金属類が挙げられ、好ましくは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、または水素化ナトリウムが挙げられる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸化物、またはこれらの水酸化物等の無機塩基は、危険度合いが低く取扱いが容易であり、また入手容易で価格が安価であることから、工業的製造において有利な塩基である。この観点から、使用される塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、特に好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0059】
当該塩基は、固体、または適当な溶媒による溶液として、いずれの状態において本発明の製造方法における反応に供しても良い。固体として反応に供する場合は、使用する塩基を微粒子に粉砕して用いることが好ましい。溶液として反応に供する場合は、当該塩基に不活性な可溶性溶媒に溶解して用いることが好ましい。塩基溶液は高濃度溶液として調製され、反応に供することが好ましい。具体的には、用いられる塩基としては8〜14規定濃度であることが好ましく、30〜70重量%溶液の使用がより好ましく、さらに好ましくは40〜60重量%溶液である。特に好ましい塩基の態様としては、8〜14規定の水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム水溶液、または炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウム水溶液が挙げられる。
【0060】
前記塩基の使用量は、キノロン誘導体に対して、好ましくは0.1〜5.0倍モル、さらに好ましくは0.5〜3.0倍モルである。
【0061】
本発明の製造方法は、典型的には溶媒の存在下において実施することができる。使用される溶媒は、反応を阻害しないものであればよく、特に制限されない。これらの溶媒は、単一系、もしくは組み合わせて混合溶媒系として用いてもよく、混合溶媒系がより好ましい。混合溶媒系としては、水と、有機溶媒とを混合して用いることが好ましい。本発明の製造方法に用いられる溶媒としては、例えば、水、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、ペプタン、ヘキサン、ヘプタン、2−メチルブタン、2−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、および2−ブタノン等のケトン類が挙げられる。
【0062】
前記芳香族炭化水素類、前記ハロゲン化芳香族炭化水素類、前記ハロゲン化脂肪族炭化水素類、前記脂肪族炭化水素類、前記アミド類、前記エーテル類は、前記キノロン誘導体、および前記ハロゲン化合物または前記酸無水物の溶解用反応溶媒として機能する。これら溶媒において、芳香族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類が入手容易で安価であり、また比較的容易に溶媒溜去できることから工業的に有利な溶媒であり、本発明の製造方法の主要な反応溶媒として使用する上で好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、塩化メチレンが特に好ましい。より好ましい溶媒系としては、少量の前記アミド類を共溶媒として、前記芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、またはハロゲン化脂肪族炭化水素類に添加した混合溶媒系であり、キノロン誘導体の溶解度を高め、使用溶媒量を削減することが可能である。特に好ましくは、前記芳香族炭化水素類と前記アミド類の混合溶媒系または前記ハロゲン化脂肪族炭化水素類と前記アミド類の混合溶媒系である。前記混合溶媒系においてその混合比は、前記アミド類が1質量部に対し、前記芳香族炭化水素類または前記ハロゲン化脂肪族炭化水素類が3〜20質量部を混用した混合溶媒系であることが好ましい。
【0063】
前記の溶媒の使用量は、キノロン誘導体に対して、好ましくは2〜50質量倍、さらに好ましくは3〜30質量倍である。
【0064】
一方、水は溶媒系に添加することにより前記塩基の溶解用溶媒として作用する。水は別途添加しても良いが、塩基水溶液として添加されても良い。水は添加する塩基が溶解できる量を用いることで良く、前記キノロン誘導体溶解用溶媒に対し、0.01〜0.1質量倍の添加である。
【0065】
本発明の製造方法において、特に好ましい溶媒系は、芳香族炭化水素類−アミド類−水の溶媒系である。また別の態様として、ハロゲン化脂肪族炭化水素類−アミド類−水の溶媒系である。
【0066】
本発明の製造方法は、相間移動触媒および塩基の存在下、キノロン誘導体とハロゲン化合物を、共に液相で接触させることが好ましく、例えば、不活性ガス雰囲気下にて、キノロン誘導体、相間移動触媒、塩基、ハロゲン化合物、および溶剤を混合して撹拌する方法によって、常圧下、加圧下、または減圧下で縮合反応が行われる。その際の反応温度は、好ましくは−50〜100℃、さらに好ましくは−10〜50℃である。キノロン誘導体は、前記塩基と塩を形成した状態で使用してもよい。
【0067】
本発明による目的生成物である4−カルボニルオキシキノリン誘導体は、反応終了後、抽出、沈析等の簡易な一般的後処理操作により単離することができる。本発明の製造方法は、上述したように、溶媒として芳香族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、具体的にはトルエン、キシレン、塩化メチレンを主反応溶媒とし、これに溶解補助を目的に少量のアミド類溶媒、具体的にはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンを共溶媒として混合させた混合溶媒系を採用することが好適な条件である。この場合、目的生成物の単離操作として、簡便な操作による主溶媒の溜去により、目的生成物である4−カルボニルオキシキノリン誘導体を析出させ、単離することができる。若しくは、主溶媒を溜去した後、目的生成物が不溶性または難溶性溶媒を少量添加することで目的生成物を析出させ、単離することができる。後者方法において、目的生成物を析出させるために添加する溶媒としては、特に限定されるものではないが、水が好ましい。本発明の製造方法は容易に溜去可能な溶媒を主反応溶媒として用いることができるため、目的生成物の単離操作が簡便である点、生成物析出槽の小容量化ができる点で工業的に有利な方法である。
本発明の製造方法により生成し、単離された4−カルボニルオキシキノリン誘導体は、濾過法により析出固体を回収することにより、高収率で高純度な単離生成物として得られる物である。必要に応じて、再結晶による方法によって分離・精製することにより、農薬として使用しても良い。
【0068】
本発明による方法によって得られる一般式(1)で表される4−カルボニルオキシキノリン誘導体の具体例を、以下の表1に示す。これらのキノリン誘導体は、農薬として有用である。
【0069】
【化5】
【表1】
【0070】
本発明の好ましい態様によれば、一般式(1)の4−カルボニルオキシキノリン誘導体の製造方法であって、四級アンモニウム塩およびアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の存在下、一般式(2)で示されるキノロン誘導体と、一般式(3)で示されるハロゲン化合物または一般式(4)で示される酸無水物とを反応させることを含んでなる製造方法が挙げられる。
【0071】
本発明の別の好ましい態様によれば、一般式(1)の4−カルボニルオキシキノリン誘導体の製造方法であって、臭化テトラブチルアンモニウムおよびアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の存在下、一般式(2)で示されるキノロン誘導体と、一般式(3)で示されるハロゲン化合物または一般式(4)で示される酸無水物とを反応させることを含んでなる製造方法が挙げられる。
【0072】
本発明の別の好ましい態様によれば、一般式(1)の4−カルボニルオキシキノリン誘導体の製造方法であって、四級アンモニウム塩および水酸化ナトリウムの存在下、一般式(2)で示されるキノロン誘導体と、一般式(3)で示されるハロゲン化合物または一般式(4)で示される酸無水物とを反応させることを含んでなる製造方法が挙げられる。
【0073】
本発明の別の好ましい態様によれば、一般式(1)の4−カルボニルオキシキノリン誘導体の製造方法であって、臭化テトラブチルアンモニウムおよび水酸化ナトリウムの存在下、一般式(2)で示されるキノロン誘導体と、一般式(3)で示されるハロゲン化合物または一般式(4)で示される酸無水物とを反応させることを含んでなる製造方法が挙げられる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0075】
実施例1:2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イル メチルカルボネートの合成
撹拌装置、温度計、還流冷却器を備えた容量3000mlのガラス製容器にトルエン810ml、ジメチルアセトアミド90ml、2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4(1H)−オン 113.2gおよび臭化テトラブチルアンモニウム4.8gを加え室温下撹拌した。48%水酸化ナトリウム水溶液50gを30〜35℃にて滴下し、同温度で1時間撹拌した。10〜15℃に冷却後クロロ蟻酸メチル34gを滴下し、同温度で1時間反応した。反応液中に水を加え、洗浄後、トルエンを溜去し、析出した固体を吸引濾過器にて濾過した。固体を減圧乾燥し、2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イル メチルカルボネート 128g(収率98%)を得た。H−NMRの測定結果により、得られた化合物は、国際公開第2006/013896号パンフレット(特許文献1)に記載されているNo.120の化合物であることを確認した。
【0076】
H−NMR(CDCl3):1.38(t,3H),2.31(s,3H),2.41(s,3H),3.01(q,2H),3.88(s,3H),6.97(d,2H),7.14(s,1H),7.20(d,2H),7.94(s,1H).
【0077】
実施例2:2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イル メチルカルボネートの合成
撹拌装置、温度計、還流冷却器を備えた容量3000mlのガラス製容器に塩化メチレン1000ml、ジメチルアセトアミド160ml、2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4(1H)−オン 113.2gおよび臭化テトラブチルアンモニウム4.8gを加え室温下撹拌した。48%水酸化ナトリウム水溶液50gを25〜30℃にて滴下し、同温度で1時間撹拌した。10〜15℃に冷却後クロロ蟻酸メチル34gを滴下し、同温度で1時間反応した。反応液中に水を加え、洗浄し、塩化メチレンを溜去後、メタノール990ml加え、加熱溶解する。水660mlを滴下し、結晶を析出させ、析出した固体を吸引濾過器にて濾過した。固体を減圧乾燥し、2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イル メチルカルボネート 124.4g(収率95.2%)を得た。H−NMRの測定結果により、得られた化合物は、国際公開第2006/013896号パンフレット(特許文献1)に記載されているNo.120の化合物であることを確認した。
【0078】
H−NMR(CDCl3):1.38(t,3H),2.31(s,3H),2.41(s,3H),3.01(q,2H),3.88(s,3H),6.97(d,2H),7.14(s,1H),7.20(d,2H),7.94(s,1H).
【0079】
比較例1:2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イル メチルカルボネートの合成
攪拌装置、温度計、還流冷却器を備えた容量2000mlのガラス容器にトルエン405ml、ジメチルアセトアミド45ml、および2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4(1H)−オン 56.6gを加え室温下撹拌した。48%水酸化ナトリウム水溶液25gを30〜35℃にて滴下し、同温度で1時間撹拌した。10〜15℃に冷却後、クロロ蟻酸メチル17gを滴下し、同温度で1時間反応した。反応液中に水を加え、析出した固体を濾別、乾燥し、未反応原料の2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4(1H)−オン6.5g(収率11.5%)を回収した。濾液のトルエン層を水で洗浄後、濃縮し、2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イル メチルカルボネート54.8g(収率83.9%)を得た。
【0080】
比較例2:2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イル メチルカルボネートの合成
攪拌装置、温度計、還流冷却器を備えた容量2000mlのガラス容器に、ナトリウム−t−ブトキシド15.1g、ジメチルアセトアミド45ml、トルエン405mlおよび2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4(1H)−オン 56.6gを加え、30〜35℃で1時間撹拌した。10〜15℃に冷却後、クロロ蟻酸メチル15gを滴下し、同温度で1時間反応した。反応液中に水を加え、析出した固体を濾別、乾燥し、未反応原料の2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4(1H)−オン6.4g(収率11.3%)を回収した。濾液のトルエン層を水で洗浄後、濃縮し、2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イル メチルカルボネート55.6g(収率85.1%)を得た。
【0081】
参考例1:国際公開第2010/007964号パンフレット(特許文献4)、実施例6:2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イル メチルカルボネートの合成
撹拌装置、温度計、還流冷却器を備えた容量1000mlのガラス製容器に窒素雰囲気下、ジメチルアセトアミド694ml、ナトリウム−t−ブトキシド35.2g、2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4(1H)−オン 131gを加え室温下撹拌した。クロロ蟻酸メチル34.4gを滴下し、室温にて1時間反応した。この反応混合物を5Lプラスチック容器中の水1735mlに注ぎ、室温にて2時間撹拌した。析出した固体を吸引濾過器にて濾過し、水で洗浄した。固体を減圧乾燥し、2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イル メチルカルボネート 149.5g(収率98.8%)を得た。
【0082】
参考例2:国際公開第2010/007964号パンフレット(特許文献4)、実施例8:2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イル メチルカルボネートの合成
撹拌装置、温度計、還流冷却器、塩化カルシウム管を備えた容量2000mlのガラス製フラスコに窒素雰囲気下、ジメチルアセトアミド980ml、2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4(1H)−オン98gを仕込み、15℃に冷却した。55%水素化ナトリウム18.2gを加え、15〜20℃で1時間撹拌した。クロロ蟻酸メチル32.1gを滴下し、室温にて1時間反応した。この反応混合物を10Lプラスチック容器中の氷水5Lに注ぎ、室温にて2時間撹拌した。析出した固体を吸引濾過器にて濾過し、n−ヘキサンと水で洗浄した。固体を減圧乾燥し、2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イル メチルカルボネート 103.3g(収率91.4%)を得た。
【0083】
発明の効果
参考例1、2(国際公開第2010/007964号パンフレット(特許文献4)、実施例6および8)の4−カルボニルオキシキノリン誘導体を得る従来の製造法では、塩基としてナトリウム−t−ブトキシドまたは水素化ナトリウムが使用されている。これら塩基は反応性が高く、過剰量を加えた場合には目的生成物の分解をもたらす。このため塩基仕込み当量を厳密に管理する必要がある。また、これら塩基は吸湿分解性を有するため取扱いが困難であり、また高価な塩基であることから工業的製造方法として更なる改良が求められる。さらに、反応溶媒としてジメチルアセトアミドを大量に使用する必要があることから、生成物の単離操作において、ジメチルアセトアミド仕込量の2.5〜5.1倍容量の水を添加する操作を必要とし、晶析槽の大容量化をもたらすと共に、析出固体の濾過回収操作において、操作効率の低下を招く恐れがある。さらに、濾液中のジメチルアセトアミド量が多く排水への負荷が大きいため、排水水溶液から高沸点溶媒であるジメチルアセトアミドの回収が必要となる場合がある。
【0084】
本発明による4−カルボニルオキシキノリン誘導体の製造方法は、相間移動触媒を使用することにより、水酸化ナトリウムなどの安価で取扱い容易な塩基が使用可能となった。また当該反応において、過剰塩基当量を供する場合でも目的生成物の分解がほとんどなく、厳密な塩基仕込当量管理を必要としない点で有利な製造方法である。
【0085】
さらに、溜去容易なトルエン、塩化メチレンなどの反応溶媒が適用可能である点で有利である。すなわち、反応終了後、簡便な水性洗浄による後処理の後、溶媒溜去することにより、目的生成物の晶析が小容量晶析槽にて操作でき、単離精製操作における効率において格段の効果が認められた。さらに、使用するジメチルアセトアミドが少量のため、排水への付加も軽減され、工業的に有利な製造方法であるといえる。
【0086】
すなわち、上記実施例によれば、本発明による4−カルボニルオキシキノリン誘導体の製造方法は、キノロン誘導体と、ハロゲン化合物または酸無水物との反応において、相間移動触媒を用いることにより、安価で取扱いが容易な塩基を用いることが可能となり、これにより、厳密な塩基仕込当量管理を必要とせず、また溜去容易な反応溶媒を適用することが可能となり、さらに排水への負荷が軽減される工業的に有利で、高収率な製造方法であることが実証された。