(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サンプリング区間内で、ステアリングが前記所定速度以上で操舵された時点の入力トルクである基準入力トルクと前記トルクセンサにて検出された入力トルクとの偏差の絶対値の最大値を演算する最大値演算部をさらに備え、
前記異常判定部は、前記最大値演算部によって演算された前記最大値が予め定められた基準値以下であり、かつ、前記積算値演算部によって演算された入力トルクの前記積算値が前記基準積算トルク以下の場合に、前記トルクセンサに異常が発生していると判定することを特徴とする請求項1に記載のトルクセンサの異常診断装置。
前記積算値演算部は、前記操舵角センサにて検出されたステアリングの操舵角の符号が変化した場合にステアリングが中立位置に戻ったと判定して、前記サンプリング区間内の入力トルクの積算値を演算することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトルクセンサの異常診断装置。
前記異常判定部は、入力トルクの積算値が前記基準積算トルク以下となるサンプリング区間が予め定められた所定回数連続した場合に、前記トルクセンサに異常が発生していると判定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のトルクセンサの異常診断装置。
前記サンプリング区間内で、ステアリングが前記所定速度以上で操舵された時点の入力トルクである基準入力トルクと前記トルクセンサにて検出された入力トルクとの偏差の絶対値の最大値を演算する最大値演算ステップをさらに含み、
前記異常判定ステップは、前記最大値演算ステップによって演算された前記最大値が予め定められた基準値以下であり、かつ、前記積算値演算ステップによって演算された入力トルクの前記積算値が前記基準積算トルク以下の場合に、前記トルクセンサに異常が発生していると判定することを特徴とする請求項6に記載のトルクセンサの異常診断方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
<第1実施形態>
まず、
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るトルクセンサの異常診断装置が適用される電動パワーステアリング装置100について説明する。
【0014】
電動パワーステアリング装置100は、ドライバによるステアリング1の操作に伴って回転する入力シャフト7と、上端がトーションバー4を介して入力シャフト7に接続され下端がラック軸5に連係する出力シャフト3とを有し、出力シャフト3の下端に設けられるピニオン3aと噛合するラック軸5を軸方向に移動させることで車輪6を操舵するものである。入力シャフト7と出力シャフト3とによってステアリングシャフト2が構成される。
【0015】
また、電動パワーステアリング装置100は、ドライバによるステアリング1の操舵を補助するための動力源である電動モータ10と、電動モータ10の回転をステアリングシャフト2に減速して伝達する減速機11と、入力シャフト7と出力シャフト3との相対回転によってトーションバー4に付与される入力トルクを検出するトルクセンサ12と、トルクセンサ12の検出結果に基づいて電動モータ10の駆動を制御するコントローラ13とを備える。
【0016】
減速機11は、電動モータ10の出力軸に連結されるウォームシャフト11aと、出力シャフト3に連結されウォームシャフト11aに噛み合うウォームホイール11bとからなる。電動モータ10が出力するトルクは、ウォームシャフト11aからウォームホイール11bに伝達されて出力シャフト3に補助トルクとして付与される。
【0017】
ステアリングシャフト2に付与される入力トルク(操舵トルク)はトルクセンサ12にて検出され、トルクセンサ12はその入力トルクに対応する電圧信号をコントローラ13に出力する。コントローラ13は、トルクセンサ12からの電圧信号に基づいて、電動モータ10が出力するトルクを演算し、そのトルクが発生するように電動モータ10の駆動を制御する。このように、電動パワーステアリング装置100は、ステアリングシャフト2に付与される入力トルクをトルクセンサ12にて検出し、その検出結果に基づいて電動モータ10の駆動をコントローラ13にて制御してドライバがステアリング1に加える操舵力をアシストする。
【0018】
ステアリングシャフト2には、ステアリング1の操舵角(絶対操舵角)を検出する操舵角センサ15が設けられる。ステアリングシャフト2の絶対回転角度とステアリング1の絶対操舵角とは等しいため、操舵角センサ15にてステアリングシャフト2の回転角度を検出することによってステアリングの操舵角が得られる。操舵角センサ15の検出結果はコントローラ13に出力される。操舵角センサ15は、ステアリング1が中立位置の場合には操舵角として零度を出力する。また、ステアリング1が中立位置から右切り方向に操舵される場合には、ステアリング1の回転に応じて+の符号の操舵角を出力する一方、ステアリング1が中立位置から左切り方向に操舵される場合には、ステアリング1の回転に応じて−の符号の操舵角を出力する。
【0019】
トルクセンサ12は、メイン系統とサブ系統の2つの系統にてコントローラ13に接続される。つまり、トルクセンサ12とコントローラ13とは、メイン系統用の第1ケーブル21とサブ系統用の第2ケーブル22の2本ケーブルにて接続される。第1ケーブル21と第2ケーブル22は、それぞれコネクタを介してコントローラ13に接続される。
【0020】
コントローラ13は、電動モータ10の動作を制御するCPUと、CPUの処理動作に必要な制御プログラムや設定値等が記憶されたROMと、トルクセンサ12や操舵角センサ15等の各種センサが検出した情報を一時的に記憶するRAMとを備える。
【0021】
図2はトルクセンサ12のメイン系統の出力特性図であり、
図3はトルクセンサ12のサブ系統の出力特性図である。双方の出力特性図とも、ステアリングシャフト2に付与される入力トルクとトルクセンサ12の出力電圧との関係を示す。
【0022】
図2に示すように、メイン系統の出力特性は、ステアリング1が操舵されておらずステアリングシャフト2に付与される入力トルクが零の場合には、出力電圧は出力範囲の中間値である2.5Vである。また、ステアリング1が中立位置から右切り方向に操舵される場合には入力トルクの増大に応じて出力電圧が2.5Vから0Vに減少する一方、ステアリング1が中立位置から左切り方向に操舵される場合には入力トルクの増大に応じて出力電圧が2.5Vから5Vまで増大する。
【0023】
図3に示すように、サブ系統の出力特性は、ステアリング1が操舵されておらずステアリングシャフト2に付与される入力トルクが零の場合には、出力電圧はメイン系統と同様に出力範囲の中間値である2.5Vである。また、ステアリング1が中立位置から右切り方向に操舵される場合には入力トルクの増大に応じて出力電圧が2.5Vから5.0Vまで増大する一方、ステアリング1が中立位置から左切り方向に操舵される場合には入力トルクの増大に応じて出力電圧が2.5Vから0Vまで減少する。
【0024】
コントローラ13による電動モータ10の制御には、トルクセンサ12のメイン系統から出力される出力電圧が用いられる。サブ系統から出力される出力電圧は、電動モータ10の制御には用いられず、トルクセンサ12の異常を診断するために用いられる。具体的には、コントローラ13は、メイン系統から出力された出力電圧をサブ系統から出力された出力電圧と比較し、その差が予め定められた許容差以上であると判断した場合には、トルクセンサ12に異常が発生していると判定する。
【0025】
ここで、トルクセンサ12は、第1及び第2ケーブル21,22が断線した場合や、第1及び第2ケーブル21,22のコネクタが外れた場合には、入力トルクが零に対応する2.5Vの出力電圧となる回路に構成されている。したがって、第1及び第2ケーブル21,22の双方が断線した場合や、第1及び第2ケーブル21,22の双方のコネクタが外れた場合には、メイン系統とサブ系統の出力電圧は同じになるため、コントローラ13は、メイン系統から出力された出力電圧とサブ系統から出力された出力電圧との差が許容差未満であると判断し、トルクセンサ12の異常を判定することができない。
【0026】
しかし、本実施形態では、このようなメイン系統とサブ系統の双方に異常が発生した場合でも、以下に説明する方法によってトルクセンサ12の異常を判定することができる。
図4及び
図5を参照して、その方法について説明する。
図4は、コントローラ13にて実行されるトルクセンサ12の異常を判定する手順を示すフローチャートである。
図5は、操舵角センサ15にて検出されたステアリング1の操舵角とトルクセンサ12のメイン系統にて検出されたステアリングシャフト2の入力トルクとの時間変化を示すグラフ図である。
図5において、操舵角は実線にて示し、入力トルクは点線にて示す。
【0027】
図4及び
図5を参照して、コントローラ13にて実行されるトルクセンサ12の異常を判定する手順について説明する。
【0028】
ステップ1では、操舵角センサ15にて検出されたステアリング1の操舵角の一定時間の変化量、つまり、操舵角の変化速度が予め定められた所定速度以上であるか否かを判定する。ステアリング1の操舵角の変化速度が所定速度以上であると判定された場合には、ステップ2へ進む。ステップ1がコントローラ13の操舵速度判定部にて実行される操舵速度判定ステップに該当する。
【0029】
ステップ2では、トルクセンサ12の検出結果に基づいて、入力トルクのサンプリングを開始する(
図5の時間t1)。
【0030】
ステップ3では、サンプリングした入力トルクを積算する。具体的には、入力トルクの関数を積分することによって積算する。
【0031】
ステップ4では、操舵角センサ15の検出結果に基づいて、ステアリング1が中立位置であるか否かを判定する。具体的には、操舵角センサ15が出力する操舵角が零度の場合に、ステアリング1が中立位置であると判定する。これに代わり、操舵角センサ15が出力する操舵角の符号が変化した場合に、ステアリング1が中立位置であると判定するようにしてもよい。ステアリング1が中立位置(操舵角が零度の点)を跨ぐ際には、操舵角センサ15が出力する操舵角は符号が+から−又は−から+へと変化する。したがって、操舵角の符号の変化によってもステアリング1が中立位置であることを判定することができる。ステップ4にてステアリング1が中立位置でないと判定された場合には、ステップ3へ戻り入力トルクの積算を継続する。
【0032】
ステップ4にてステアリング1が中立位置であると判定された場合には、ステップ5へ進み、入力トルクのサンプリングを終了する(
図5の時間t2)。ステップ2から5までが、コントローラ13の積算値演算部にて実行される積算値演算ステップに該当する。
【0033】
ステップ6では、ステアリング1が所定速度以上で操舵されてから中立位置に戻るまでのサンプリング区間(
図5の時間t1からt2の区間)内の入力トルクの積算値が予め定められた基準積算トルク以下であるか否かを判定する。
【0034】
ステップ6にて入力トルクの積算値が基準積算トルク以下であると判定された場合には、ドライバがステアリング1を操舵しているにもかかわらず、ステアリングシャフト2への入力トルクが検出できていない異常な状態であり、ステップ8へ進む。このような状態では、電動モータ10によるアシストは行われず、ステアリング1は重くなってしまう。
【0035】
一方、ステップ6にて入力トルクの積算値が基準積算トルクを超えていると判定された場合には、ステアリングシャフト2への入力トルクが検出できている正常な状態であり、ステップ7へ進み、トルクセンサ12が正常であると判定する。
図5に示す入力トルクの曲線は、ステアリングシャフト2への入力トルクが検出できている正常な状態を示すものである。一方、トルクセンサ12のメイン系統の第1ケーブル21が断線した場合のような異常な状態では、ドライバがステアリング1を操舵しているにもかかわらず、メイン系統の出力電圧は2.5Vとなり、入力トルクは零を示すことになる。
【0036】
ステップ6の判定に用いる入力トルクの基準値である基準積算トルクは、トルクセンサ12の異常が判定できる値に設定される。基準値としては、例えば、ドライバがステアリング1に加える操舵力をアシストする際に電動モータ10にて発生しなければならない最小のトルクよりも大きな値等を採用するとよい。
【0037】
ステップ8では、入力トルクの総和が基準積算トルク以下となるサンプリング区間が予め定められた所定回数連続したか否かを判定する。所定回数連続していないと判定された場合にはステップ1へ戻る。一方、所定回数連続したと判定された場合にはステップ9へ進む。具体的には、
図5に示すように、サンプリング区間1,2,3・・・のように連続したサンプリング区間で入力トルクの積算値が基準積算トルク以下となるサンプリング区間が複数回連続した場合にはステップ9へ進む。
【0038】
ステップ9では、トルクセンサ12に異常が発生していると判定し、コントローラ13の異常履歴にトルクセンサ12の異常診断情報を記録する。具体的には、トルクセンサ12のメイン系統とサブ系統の双方に異常があることを示す情報を、コントローラ13を構成するROMに記録する。これにより、コントローラ13の異常履歴を見ることによって、ステアリング1が重くなった原因が、トルクセンサ12のメイン系統とサブ系統の双方の異常であることがわかり、第1及び第2ケーブル21の断線やコネクタの外れ等の不具合に迅速に対処することができる。ステップ6,8,9が、コントローラ13の異常判定部にて実行される異常判定ステップに該当する。
【0039】
ステップ8では、トルクセンサ12の異常を判定する条件として、入力トルクの積算値が基準積算トルク以下となるサンプリング区間が複数回連続していることを条件とした。しかし、入力トルクの積算値が基準積算トルク以下となるサンプリング区間が1回あった場合に、トルクセンサ12を異常と判定するようにしてもよい。ただし、この場合には、誤ってトルクセンサ12を異常と判定するおそれがあるため、判定の精度を上げるためには複数回連続していることを判定の条件とするのが望ましい。
【0040】
以上にて説明したトルクセンサ12の異常診断は、メイン系統にて検出された入力トルクとサブ系統にて検出された入力トルクとの差を監視し、その差が許容差以上であるか否かを判断してトルクセンサ12の異常を判定する異常診断とは別に行われる。メイン系統のみに異常が発生した場合には、メイン系統とサブ系統の入力トルクの差が許容差以上になるため、両者の入力トルクの差を監視することによって、その異常を判定することができる。しかし、メイン系統とサブ系統の双方に異常が発生した場合には、両者の入力トルクの差を監視しても異常を判定することができない。その場合には、上記ステップ1〜9による異常診断にて、メイン系統とサブ系統の双方に異常が発生したことを判定することができる。
【0041】
以上では、メイン系統の入力トルクを監視することによってトルクセンサ12の異常診断を行う場合について説明した。しかし、サブ系統の入力トルクを監視することによってトルクセンサ12の異常診断を行うようにしてもよく、また、メイン系統とサブ系統の双方の入力トルクを監視することによってトルクセンサ12の異常診断を行うようにしてもよい。
【0042】
ここで、ステアリング1を操舵して中立位置に戻さずに車両を長時間離れるような場合には、
図4に示した手順では、入力トルクのサンプリングが終了しないため、ステップ6へと進みことができない。このような所定時間経過してもステアリング1が中立位置に戻らない場合には、
図6に示すように、所定時間経過時点(t2)でサンプリングを終了する。そして、ステアリング1が所定速度以上で操舵されてから所定時間が経過するまでのサンプリング区間(
図6の時間t1からt2の区間)内の入力トルクの積算値が予め定められた基準積算トルク以下である場合には、トルクセンサ12に異常が発生していると判定する。
【0043】
ステアリング1を操舵して中立位置に戻さずに車両を長時間離れるような場合でも、トルクセンサ12が正常な状態であれば、
図6に示すように、サンプリング区間にて入力トルクが検出されているはずであるため、このような方法でもトルクセンサ12の異常を判定することができる。
【0044】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0045】
第1実施形態に係る異常診断装置は、ステアリング1が所定速度以上で操舵されてから中立位置に戻るまでのサンプリング区間の入力トルクの積算値が基準積算トルク以下の場合にトルクセンサ12に異常が発生していると判定するものであるため、トルクセンサ12のメイン系統とサブ系統の双方に異常が発生しているか否かを精度良く診断することができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に、
図7を参照して、本発明の第2実施形態に係るトルクセンサの異常診断装置について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点について説明する。
【0047】
ステアリング1が所定速度以上で操舵されてから中立位置に戻るまでのサンプリング区間が短い場合には、トルクセンサ12が正常であるにもかかわらず、サンプリング区間内の入力トルクの積算値が基準積算トルク以下となってしまい、第1実施形態で示した判定方法ではトルクセンサ12が異常と判定されるおそれがある。そこで、判定の基準となる基準積算トルクを小さい値に設定することが考えられる。
【0048】
ここで、トルクセンサ12の第1及び第2ケーブル21,22が断線した場合や、第1及び第2ケーブル21,22のコネクタが外れた場合には、トルクセンサ12の出力電圧は、本来であれば、上述したように2.5Vとなる。しかし、トルクセンサ12の個体差や経年変化に起因して、実際には、トルクセンサ12の出力電圧が2.5Vよりも僅かに大きな値となる場合がある。トルクセンサ12の個体差や経年変化に起因して生じる出力電圧のずれは僅かであり、メイン系統から出力された出力電圧とサブ系統から出力された出力電圧との差が許容差以上となってトルクセンサ12が異常と判定される程度の量ではない。このようなずれが生じる場合において、基準積算トルクを小さい値に設定して第1実施形態で示した方法で判定を行うと、トルクセンサ12が異常であるにもかかわらず、入力トルクの積算値が基準積算トルクよりも大きくなってしまい、トルクセンサ12が正常と判定されるおそれがある。
【0049】
このような事情から基準積算トルクは小さい値に設定することができないため、上述のように、サンプリング区間が短い場合には、第1実施形態で示した判定方法ではトルクセンサ12の状態を正確に判定できないおそれがある。そこで、本第2実施形態では、第1実施形態の判定方法に加えて、以下の手順が行われる。
【0050】
図7に示すように、本第2実施形態では、第1実施形態のステップ2とステップ3の間でステップ10が行われると共に、ステップ5とステップ6の間でステップ11が行われる。それ以外のステップは第1実施形態と同じである。
【0051】
ステップ10では、サンプリング区間内で、ステアリング1が所定速度以上で操舵された時点の入力トルクを基準入力トルクとして記憶する。具体的には、ステップ1でステアリング1の操舵角の変化速度が所定速度以上であると判定された時点の入力トルクを基準入力トルクとして記憶する。
図5においては、基準入力トルクはT-baseである。
【0052】
ステップ11では、サンプリング区間内での基準入力トルクとトルクセンサ12にて検出された入力トルクとの偏差の絶対値の最大値を演算する。これが、コントローラ13の最大値演算部にて実行される最大値演算ステップに該当する。そして、演算した最大値が予め定められた基準値以下であるか否かを判定する。ステップ11にて最大値が基準値を超えていると判定された場合には、トルクセンサ12が入力トルクを正常に検出できているといえるため、ステップ7へ進み、トルクセンサ12が正常であると判定する。ステップ11の判定に用いる基準値は、トルクセンサ12の異常が判定できる値に設定される。基準値としては、例えば、コントローラ13がステアリング1が中立位置であると判断する際の公差に余裕を加えた値に設定される。少なくとも、トルクセンサ12の出力電圧の想定される最大のずれ量に対応するトルク値よりも大きい値に設定される。
【0053】
サンプリング区間が短い場合には、ステップ6のみでは、トルクセンサ12が正常であるにもかかわらずトルクセンサ12が異常と判定され、トルクセンサ12の状態を正確に判定できないおそれがある。しかし、ステップ6に先立ってステップ11を実行することによって、このような誤判定を防止することができる。
【0054】
ステップ11にて最大値が基準値以下であると判定された場合には、トルクセンサ12が入力トルクを正常に検出できていない可能性があるため、ステップ6に進み、サンプリング区間内の入力トルクの積算値が基準積算トルク以下であるか否かを判定する。ステップ6にて入力トルクの積算値が基準積算トルク以下であると判定された場合には、ステアリングシャフト2への入力トルクが検出できていない異常な状態であり、ステップ8へ進む。このように、第2実施形態では、ステップ11にて最大値が基準値以下であると判定され、かつ、ステップ6にて入力トルクの積算値が基準積算トルク以下であると判定された場合に、トルクセンサ12に異常が発生していると判定されることになる。
【0055】
トルクセンサ12が正常であっても、ステアリング1がゆっくり操舵されるような場合には、ステップ11にて最大値が基準値以下であると判定される可能性がある。しかし、このような場合には、サンプリング区間が長くなって入力トルクの積算値が大きくなるため、ステップ6にて入力トルクの積算値が基準積算トルクを超えていると判定されることになる。そして、ステップ7へ進み、トルクセンサ12が正常であると判定される。
【0056】
以上のように、第1実施形態の判定方法に、ステップ10と11を加えることによって、トルクセンサの異常をより精度良く診断することができる。
【0057】
本第2実施形態は、ステアリング1が所定速度以上で操舵されてから所定時間が経過するまでをサンプリング区間と設定する場合(
図6に示す場合)にも適用することができる。
【0058】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。