(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る作業機械の駆動装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る作業機械の駆動装置の第1実施形態を含む油圧ショベルを示す側面図である。
【0016】
第1実施形態を含む油圧ショベルは、走行体101を備え、走行体101の上には旋回体102を設けてある。走行体101と旋回体102から本体が構成されている。走行体101には油圧アクチュエータであり、左右の履帯に走行動力を与える走行モータ10bと図示していない走行モータ10aが備えられている。旋回体102は後述する油圧アクチュエータである旋回モータ10cにより走行体101に対し旋回可能となっている。また旋回体102はメインフレーム105に、前部に作業装置103、後部にカウンタウェイト108、左前部に運転室104を搭載している。カウンタウェイト108の前側には、原動機であるエンジン106が備えられ、さらにエンジン106からの駆動出力により駆動する駆動装置107を有する。
【0017】
作業装置103は、ブーム111、アーム112、バケット113からなる構造物がリンク機構により結合され、各々リンク軸を中心に回転運動を行い、掘削などの作業を行う。ブーム111、アーム112、バケット113、各々を回転運動させるために、油圧アクチュエータであるブームシリンダ7a、アームシリンダ7b、バケットシリンダ7cを備えている。
【0018】
図2は、
図1に示す油圧ショベルに備えられる駆動装置107の第1実施形態を示す回路構成図、
図3は、
図2に示す第1実施形態に備えられる油圧ポンプ状態量検出装置である圧力センサ30a〜30lと、コントローラ41の接続関係を示す図、
図4は、
図2に示す第1実施形態に備えられるコントローラ41の要部を示す図である。
【0019】
図2に示すように第1実施形態に係る駆動装置107は、油圧ポンプである可変容量型油圧ポンプ2a
〜2fとブームシリンダ7a、アームシリンダ7b、バケットシリンダ7c、および旋回モータ10cとが、コントロールバルブを介さず、配管を用いて接続している油圧閉回路システムと、可変容量型油圧ポンプ1a、1bと走行モータ10a、10bとが、供給流量と方向を制御するコントロールバルブ11を介して、配管を用いて接続している油圧開回路システムとから構成されている。
【0020】
なお、第1実施形態では油圧閉回路システムと油圧開回路システムを混在させているが、それにこだわるものではなく、作業機械の用途により、例えば全油圧アクチュエータを油圧閉回路システムで構成するなど、別の形態をとってもよい。
【0021】
ここで、上述した本油圧閉回路システムについて説明する。
【0022】
エンジン106と、エンジン106によりトルク、および回転数からなる駆動出力を、歯車機構等で構成された動力伝達装置13を介して、供給される複数の可変容量型油圧ポンプ2a
〜2fが備えられ、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの吐出流量を可変にする吐出流量可変装置である油圧レギュレータ3a〜3fと、ブームシリンダ7a、アームシリンダ7b、バケットシリンダ7c、および旋回モータ10cと、ブームシリンダ7a、アームシリンダ7b、バケットシリンダ7c、および旋回モータ10cと少なくとも一つ以上の可変容量型油圧ポンプ2a〜2fとを油圧閉回路接続するための接続装置である電磁切換弁12と、ブームシリンダ7a、アームシリンダ7b、バケットシリンダ7c、および旋回モータ10cへの操作信号であるレバー操作量を生成する操作装置40a、40bと、操作装置40a、40bのレバー操作量に応じて、可変容量型油圧ポンプ2a
〜2fとブームシリンダ7a、アームシリンダ7b、バケットシリンダ7c、および旋回モータ10cとの接続を設定する接続設定部41bを含み、接続設定部41bからの接続設定信号に応じて、油圧レギュレータ3a〜3fと電磁切換弁12を制御する制御装置と、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの状態量である吐出圧を検出する油圧ポンプ状態量検出装置である圧力センサ30a〜30lと、圧力センサ30a〜30lからの検出信号に基づいて、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの故障を判断する油圧ポンプ故障判断部41dとを備える。
【0023】
すなわち、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fは、ブームシリンダ7a、アームシリンダ7b、バケットシリンダ7c、および旋回モータ10cの駆動方向と吐出流量を与えるため、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fに備えられた2つの接続ポートの内各々から圧油を吐出可能とした両方向吐出機構を備えており、その両方向吐出機構は油圧レギュレータ3a〜3fにより制御される。
【0024】
両方向吐出機構により、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの2つの接続ポートの内、一方の接続ポートから圧油が吐出されると、電磁切換弁12を介して、ブームシリンダ7a、アームシリンダ7b、バケットシリンダ7c、および旋回モータ10cの内のいずれかの油圧アクチュエータに備えられた2つの接続ポートの内の一方の接続ポートに接続され、いずれかの油圧アクチュエータに備えられた2つの接続ポートの内、他方の接続ポートから戻り圧油が、電磁切換弁12を介して、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの2つの接続ポートの内、他方の接続ポートに戻される。すなわち、圧油がタンク9に戻ることなく、可変容量型油圧ポンプ2a
〜2fと油圧アクチュエータとの間を循環する油圧閉回路が構成される。
【0025】
なお、油圧閉回路システムでは、ブーム111、アーム112が重力方向に下がる場合や、旋回体102の旋回動作を停止する場合に発生するブーム111、アーム112の位置エネルギーや、旋回体102の運動エネルギーが、回生エネルギーとなって戻り圧油に伝達され、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fのいずれかに伝えられる。この際、可変容量型油圧ポンプ2a
〜2fはこの回生エネルギーにより回生動作する。この回生エネルギーは、駆動出力として動力伝達装置13を介し、他の油圧アクチュエータを駆動している可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの内の他のいずれかに伝えられる。この結果、エンジン106に対し、この回生エネルギー分の省エネ効果が得られる。
【0026】
電磁切換弁12は、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの内の複数を、ブームシリンダ7a、アームシリンダ7b、バケットシリンダ7c、および旋回モータ10cの内の一つに接続するために、“BM”用切換弁、“AM”用切換弁、“BK”用切換弁、および“SW”用切換弁からなる全18個の電磁切換弁から構成される。
【0027】
電磁切換弁12の内、“BM”用切換弁は、ブームシリンダ7aに接続するための切換弁で、電磁切換弁12の上流に位置する可変容量型油圧ポンプ2a〜2fを、最大で全て接続可能なように設けられている。“AM”用切換弁は、アームシリンダ7bに接続するための切換弁で、電磁切換弁12の上流に位置する可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの内、最大で可変容量型油圧ポンプ2a
〜2dを接続可能なように設けられている。“BK”用切換弁は、バケットシリンダ7cに接続するための切換弁で、電磁切換弁12の上流に位置する可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの内、最大で全て接続可能なように設けられている。“SW”用切換弁は、旋回モータ10cに接続するための切換弁で、電磁切換弁12の上流に位置する可変容量型油圧ポンプ2a
〜2fの内、最大で可変容量型油圧ポンプ2e、2fを接続可能なように設けられている。
【0028】
なお、上述の電磁切換弁12の接続形態は、これにこだわるものではなく、作業機械の用途により別の接続形態でもよい。
【0029】
オペレータが搭乗する運転室104には、油圧アクチュエータに操作指令を与える操作装置40a、40bが設けられている。図示はしないが操作装置40a、40bは前後左右に傾倒可能なレバーと、操作信号であるレバーの傾倒量、すなわちレバー操作量を電気的に検知する図示しない検出装置を含み、検出装置が検出したレバー操作量を、制御装置であるコントローラ41に電気配線を介して出力する。なお、上述の操作装置40a、40bは、レバー操作量を電気的に検知する機構を有しているが、これにこだわるものでなく、油圧機構等、別の機構でもよい。
【0030】
図3に示すように、前述した油圧ポンプ状態量検出装置である圧力センサ30a〜30lは、可変容量型油圧ポンプ2a
〜2fの2つの接続ポートから吐出される圧油の吐出圧を検出するように設置している。圧力センサ30a〜30lで検出された吐出圧は、コントローラ41の油圧ポンプ故障判断部41dに出力される。圧力センサ30a〜30lを用いた理由は、油圧ポンプが故障した場合の現象として、吐出圧が上がらないことがあり、検出した吐出圧に基づいて、故障判断ができるためである。吐出圧が上がらない原因として、油圧ポンプ内部の摩耗による容積効率低下が一因に挙げられる。なお、本実施形態では、圧力センサ30a〜30lを用いた例を示しているが、油圧ポンプ故障時の現象は、吐出圧に留まらず、吐出流量の減少や異音などが挙げられるため、それに応じた油圧ポンプ状態量検出装置、例えば流量計などを用いてもよい。
【0031】
コントローラ41では、後述する制御演算を実施して、油圧レギュレータ3a〜3f、に対し、後述する目標吐出流量を出力し、また、電磁切換弁12に対し、切換弁接続指令信号を出力し、各々制御を行う。
【0032】
なお、油圧開回路システムであるが、前述したように、走行モータ10a、10bの駆動方向と吐出流量を与えるためのコントロールバルブ11が下流に備えられているため、油圧開回路システムを構成する可変容量型油圧ポンプ1a、1bは片方向吐出機構を備える。すなわち、可変容量型油圧ポンプ1a、1bは、可変容量型油圧ポンプ1a、1bに備えられた2つの接続ポートの内、一方の接続ポートを、圧油を一時的に溜めるタンク9から吸い込む吸い込みポートとして、配管を用いてタンク9に接続し、他方の接続ポートを、吐出ポートとしてコントロールバルブ11の接続ポートに接続する。そして、吐出ポートからの吐出流量を片方向吐出機構により制御する。片方向吐出機構は油圧レギュレータ3g、3hにより制御される。また、走行モータ10a、10bからの戻り流量は、コントロールバルブ11を介してタンク9へ戻される。コントロールバルブ11、および油圧レギュレータ3g、3hは、運転室104に備えられた図示しない操作装置で生成されるレバー操作量に応じて制御される。レバー操作量は、コントローラ41に出力され、コントローラ41は、図示しない油圧閉回路システムとは別の制御演算を実施し、出力信号に変換して、電気配線を介し、コントロールバルブ11、および油圧レギュレータ3g、3hに出力する。
【0033】
以下、油圧閉回路システムの説明に戻る。
【0034】
次にコントローラ41の構成を、
図4を用いて説明する。
【0035】
すなわち、コントローラ41に含まれる接続設定部41bは、油圧ポンプ故障判断部41dからの出力信号に応じて、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fと、ブームシリンダ7a、アームシリンダ7b、バケットシリンダ7c、および旋回モータ10cとの接続設定を変更する処理を行う。
【0036】
また、コントローラ41は、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fとブームシリンダ7a、アームシリンダ7b、バケットシリンダ7c、および旋回モータ10cとの接続パターンを1つ以上有し、油圧ポンプ故障判断部41dからの出力信号に応じて、接続パターンを設定する接続パターン選定部41eを備え、接続設定部41bは、接続パターン選定部41eで選定された接続パターンに基づいて、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fとブームシリンダ7a、アームシリンダ7b、バケットシリンダ7c、および旋回モータ10cとの接続設定を変更する処理を行う。
【0037】
さらに、コントローラ41は、操作装置40a、40bからのレバー操作量に応じて、ブームシリンダ7a、アームシリンダ7b、バケットシリンダ7c、および旋回モータ10cへの必要流量を演算し、接続設定部41bに出力する油圧アクチュエータ必要流量演算部41aと、接続設定部41bからの演算結果に基づいて、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの目標吐出流量を設定し、油圧レギュレータ3a〜3fに出力する目標吐出流量設定部41cと、目標吐出流量設定部41cから得られる操作対象である各油圧アクチュエータと、それらに接続すべき油圧ポンプとの情報から、電磁切換弁12の内、開口すべき電磁切換弁に接続指令を出力する切換弁接続指令演算部41fを備える。
【0038】
なお、各部の間を結ぶ線は、レバー操作量、吐出圧、および演算結果等のデータの入出力関係を示す信号線であり、コントローラ41内部にある各部間で、データの共有ができる構成となっている。
【0039】
次に、
図4に示すコントローラ41の制御行程を説明する。
【0040】
図5は、
図4に示すコントローラ41の制御行程を示すフローチャート図、
図6は、
図4に示す油圧アクチュエータ必要流量演算部41aが有する、レバー操作量と油圧アクチュエータ必要流量との関係を示す特性線図、
図7は、
図5に示すステップS4の処理、すなわち接続パターン選定部41eと接続判断部41bとで行われる制御行程を示すフローチャート図、
図8は、
図4に示す接続判断部41bの油圧アクチュエータと接続可能な油圧ポンプとの接続パターンの一例を示す関係図である。
【0041】
図5に示すコントローラ41の制御行程は、
図5に示すステップS1のスタートで制御を開始し、ステップS6のリターンに到達すると、ステップS1のスタートに戻る。この制御はコントローラ41に備えられた、図示しない内部タイマーにより、予め設定された周期で行われる。
【0042】
ステップS1で制御が起動すると、ステップS2に移行する。ステップS1の制御は、エンジン106の始動を指示するキー操作や、専用スイッチなどの、図示しない外部にある装置からの指示信号を、コントローラ41が入力すると起動する。
【0043】
ステップS2では、オペレータが操作装置40a、もしくは40bを操作することで生成されるレバー操作量が、油圧アクチュエータ必要流量演算部41aに入力される行程を示し、ステップS3へ移行する。
【0044】
ステップS3では、油圧アクチュエータ必要流量演算部41aにて、レバー操作量に応じて操作対象である油圧アクチュエータへの必要流量を演算する行程を示す。本実施形態では、
図6に示すレバー操作量と油圧アクチュエータ必要流量との関係を示す特性線図を用いた演算を例示する。この特性線図は、レバー操作量に対し、必要流量が1対1の比例関係にあり、あるレバー操作量に対し、一意に必要流量が演算できる。操作対象である油圧アクチュエータを特定する情報とその必要流量とを外部へ出力し、ステップS4へ移行する。なお、各油圧アクチュエータは2方向に動作ができるため、ブーム、アーム、バケット、および旋回に対し、8つの特性線図が必要であるが、簡易に説明するため、2つの動作方向ともレバー操作量と各油圧アクチュエータの必要流量の特性を同じとし、4つの特性線図で示している。
【0045】
ステップS4では、接続判断部41bにて、油圧アクチュエータ必要流量演算部41aからの操作対象である油圧アクチュエータと、油圧ポンプ故障判断部41dでの故障判断に基づく接続パターン選定部41eからの、接続パターン選定結果とに応じて、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの内、操作対象である油圧アクチュエータに接続可能な油圧ポンプを決定し、さらに接続の優先順位、すなわち接続順位を設定する行程を示す。本実施形態では、ステップS4の制御行程として、
図7に示すフローチャートを例示する。
【0046】
ステップS401では、圧力センサ30a〜30lで検出された吐出圧に応じて、油圧ポンプ故障判断部41dで故障判断を行う。故障判断は、例えば検出された吐出圧に対し、予め設定された閾値との比較等で実施できる。油圧ポンプが正常の場合は、ステップS402に移行する。また、油圧ポンプが正常でない、すなわち故障している場合は、ステップS403へ移行する。なお、油圧ポンプ故障判断部41dは、故障している油圧ポンプの有無、および故障している場合は、故障している油圧ポンプの識別番号、例えば2a〜2f、を外部へ出力する。
【0047】
ステップS402では、油圧ポンプ故障判断部41dで油圧ポンプが、故障している油圧ポンプ無し、すなわち正常であると判断されたことにより、接続パターン選定部41eにて、接続パターンの内、基準接続パターンを選定し、外部へ出力する。なお、制御行程はステップS404へ移行する。
【0048】
本実施形態では、基準接続パターンの一例として、
図8に示す油圧アクチュエータと接続可能な油圧ポンプとの接続パターンを例示する。この接続パターンは操作対象である油圧アクチュエータに接続する油圧ポンプと、接続順位とを示している。すなわち、
図8に示す接続パターンに示した数字で、単独表記された数字、もしくは“/”の左側の数字は可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの操作対象である油圧アクチュエータに対する、優先的に接続させる接続順位を示し、“/”の右側の数字は、同じ油圧アクチュエータにおいて、/”の左側の数字が示す可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの接続順位が同じであった場合に、どちらが優先的に接続可能かを判断する接続順位を示す。
【0049】
例えば、操作対象である油圧アクチュエータがブームシリンダ7aの場合、接続可能な油圧ポンプは、可変容量型油圧ポンプ2a〜2f全部であり、接続順位は、2a、2d、2b、2e、2f、2cの順である。また、操作対象である油圧アクチュエータがブームシリンダ7aと、旋回モータ10cの場合、ブームシリンダ7aに接続可能な油圧ポンプとその接続順位は、可変容量型油圧ポンプ2a、2d、2b、2c、また、旋回モータ10cに接続可能な油圧ポンプとその接続順位は2e、2f、である。なお、ブームシリンダ7aの必要流量が、油圧ポンプ5個分必要で、かつ旋回モータ10cの必要流量が、可変容量型油圧ポンプ2e1個分でよい場合などが想定されるが、本実施形態では、簡易に説明するため、上述のような接続仕様とした。
【0050】
ステップS403では、油圧ポンプ故障判断部41dで油圧ポンプが故障していると判断されたことにより、接続パターン選定部41eにて、接続パターンの内、故障接続パターンを選定し、外部へ出力する。なお、制御行程はステップS404へ移行する。
【0051】
ステップS404では、接続設定部41bにて、油圧アクチュエータ必要流量演算部41aからの操作対象である油圧アクチュエータと、油圧ポンプ故障判断部41dでの故障判断に基づく接続パターン選定部41eからの接続パターン選定結果とに応じて、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの内、操作対象である油圧アクチュエータに接続可能な油圧ポンプの接続順位を設定し、外部へ出力する。なお、制御行程はステップS5へ移行する。
【0052】
図5に示すステップS5は、目標吐出流量設定部41cにて、油圧アクチュエータ必要流量演算部41aと、接続設定部41bとの出力に基づいて、操作対象である油圧アクチュエータに対する油圧ポンプの目標吐出流量を設定し、外部へ出力する。なお、制御行程はステップS6へ移行する。
【0053】
次に第1実施形態の作用について説明する。
【0054】
図9は、
図2に示す第1実施形態に備えられる操作装置40a、40bのレバー操作量の入力タイミングを示す時系列図で、第1実施形態の作用例を示す図、
図10は、
図6に示す特性線図で説明する、第1実施形態の作用例を示す図、
図11は、
図8に示す関係図で説明する、第1実施形態における油圧ポンプ正常時の作用例を示す図、
図12は、
図2に示す第1実施形態に備えられる油圧ポンプの目標吐出流量の吐出タイミングを示す時系列図で、第1実施形態における油圧ポンプ正常時の作用例を示す図、
図13は、
図8に示す関係図で説明する、第1実施形態における油圧ポンプ故障時の作用例を示す図、
図14は、
図2に示す第1実施形態に備えられる油圧ポンプの実吐出流量の吐出タイミングを示す時系列図で、第1実施形態における油圧ポンプ故障時の作用例を示す図、
図15は、
図8に示す関係図で説明する、第1実施形態における故障した油圧ポンプに応じた接続パターン設定時の作用例を示す図、
図16は、
図2に示す第1実施形態に備えられる油圧ポンプの目標吐出流量の吐出タイミングを示す時系列図で、第1実施形態における故障した油圧ポンプに応じた接続パターン設定時の作用例を示す図である。
【0055】
第1実施形態における、油圧ポンプ正常時の作用例として、アームシリンダ7b、バケットシリンダ7c、旋回モータ10cの複合動作時における作用例を、
図9乃至
図12を用いて説明する。
【0056】
図9に示すように、操作装置40a、40bにより、バケット、旋回、アームの順に時系列的に操作され、これらに応じたレバー操作量がコントローラ41の油圧アクチュエータ必要流量演算部41aに入力される。なお、この制御行程は、前述のステップS2である。
【0057】
油圧アクチュエータ必要流量演算部41aでは、レバー操作量に応じた操作対象である油圧アクチュエータへの必要流量を、
図10に示すように演算する。すなわち、各レバー操作量に対し、アームシリンダ7bは必要流量QA1、バケットシリンダ7cは必要流量QA2、旋回モータ10cは必要流量QA3、を各々求め、外部へ出力する。ここで説明を簡易にするため、必要流量QA1は、可変容量型油圧ポンプ2a、2bの各最大吐出流量の和に等しく、必要流量QA2は、可変容量型油圧ポンプ2c、2fの各最大吐出流量の和に等しく、さらに、必要流量QA3は、可変容量型油圧ポンプ2eの最大吐出流量に等しいとする。なお、この制御行程は、前述のステップS3である。
【0058】
ステップ3から前述のステップ4へ移行する。油圧ポンプ故障判断部41dでは、圧力センサ30a〜30lで検出された吐出圧に基づき、油圧ポンプが正常と判断し、故障している油圧ポンプ無し、すなわち正常である判断結果を、外部へ出力する。なお、この制御行程は、前述のステップS401である。
【0059】
接続パターン選定部41eでは、油圧ポンプ故障判断部41dから入力した、故障している油圧ポンプ無し、すなわち正常であるとの判断結果から、基準接続パターンを選定し、外部へ出力する。この制御行程は、前述のステップS402である。
【0060】
接続設定部41bでは、油圧アクチュエータ必要流量演算部41aからの操作対象である油圧アクチュエータと、接続パターン選定部41eで選定された基準接続パターンに応じて、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの内、操作対象である油圧アクチュエータに接続可能な油圧ポンプの接続順位を、
図11中の( )で覆った油圧ポンプに設定する。すなわち、アームシリンダ7bは可変容量型油圧ポンプ2b、2a、バケットシリンダ7cは可変容量型油圧ポンプ2c、2f、2d、旋回モータ10cは可変容量型油圧ポンプ2e、である。これらを設定後、外部へ出力する。なお、この制御行程は、前述のステップS404である。
【0061】
目標吐出流量設定部41cにて、油圧アクチュエータ必要流量演算部41aからのアームシリンダ7bに対する必要流量QA1、バケットシリンダ7cに対する必要流量QA2、旋回モータ10cに対する必要流量QA3と、接続設定部41bからの
図11に示す接続順位から、操作対象である油圧アクチュエータに対する油圧ポンプの目標吐出流量を、
図12に示すように設定し、外部へ出力する。
【0062】
図12は、油圧ポンプの目標吐出流量設定を、レバー操作量の入力タイミングに応じて時系列に表したものである。バケットシリンダ7cは必要流量QA2のため、可変容量型油圧ポンプ2c、2f各々に目標吐出流量を出力し、旋回モータ10cは必要流量QA3のため、可変容量型油圧ポンプ2eに目標吐出流量を出力し、さらに、アームシリンダ7bは必要流量QA1のため、可変容量型油圧ポンプ2b、2aに目標吐出流量を出力する。なお、この制御行程は、前述のステップS5である。
【0063】
次に、第1実施形態における、油圧ポンプ故障時の作用例として、アームシリンダ7b、バケットシリンダ7c、旋回モータ10cの複合動作時における作用例を、
図13乃至
図16を用いて説明する。なお、レバー操作量や、油圧ポンプの最大吐出流量などは油圧ポンプが正常な場合と同値とする。
【0064】
ここで、油圧ポンプの故障判断をせず、そのまま基準接続パターンを用いた場合を想定する。例えば可変容量型油圧ポンプ2eが故障した場合、
図13の“×”で示すように基準接続パターンの内、可変容量型油圧ポンプ2eが接続可能なブームシリンダ7a、バケットシリンダ7c、および旋回モータ10cへ吐出流量を供給できなくなる。したがって、この場合では、
図14に示すように、旋回モータ10cに実際に吐出される流量、すなわち、実吐出流量が供給できず、作業に支障を来すこととなる。
【0065】
そこで、本実施形態では、前述したステップS401にて、油圧ポンプ故障判断部41dが、可変容量型油圧ポンプ2eが故障したと判断し、接続パターン選定部41eに出力する。接続パターン選定部41eでは、可変容量型油圧ポンプ2eが故障したことを入力し、前述したステップS403にて、
図15に示す故障接続パターンを選定し、外部へ出力する。
【0066】
接続設定部41bでは、油圧アクチュエータ必要流量演算部41aからの操作対象である油圧アクチュエータと、接続パターン選定部41eで選定された故障接続パターンに応じて、可変容量型油圧ポンプ2a〜2fの内、操作対象である油圧アクチュエータに接続可能な油圧ポンプの接続順位を、
図13中の( )で覆った油圧ポンプに設定する。すなわち、アームシリンダ7bは可変容量型油圧ポンプ2b、2a、バケットシリンダ7cは、可変容量型油圧ポンプ2c、2d、旋回モータ10cは、可変容量型油圧ポンプ2f、である。これらを設定後、外部へ出力する。なお、この制御行程は、前述のステップS404である。
【0067】
目標吐出流量設定部41cにて、油圧アクチュエータ必要流量演算部41aからのアームシリンダ7bに対する必要流量QA1、バケットシリンダ7cに対する必要流量QA2、旋回モータ10cに対する必要流量QA3と、接続設定部41bからの
図15に示す接続順位から、操作対象である油圧アクチュエータに対する油圧ポンプの目標吐出流量を、
図16に示すように設定し、外部へ出力する。この結果、旋回モータ10cに対し、可変容量型油圧ポンプ2fから供給でき、作業に支障を来すことはない。なお、この制御行程は、前述のステップS5である。
【0068】
このように構成された本実施形態により、従来考慮されていなかった、油圧ポンプ故障状況を考慮して、油圧ポンプと油圧アクチュエータとの接続設定の変更処理を行う接続設定部の演算により、油圧閉回路システムに用いられる油圧ポンプが1つ以上故障した場合においても、従来懸念されていた作業の中断による作業行程への支障を生じることなく、作業の継続ができる。この結果、本実施形態は、現場での作業性を従来に比べ向上させることができる。
【0069】
図17は、本発明に係る作業機械の駆動装置の第2実施形態を示す回路構成図である。
【0070】
第1実施形態と同じ符号の要素については説明を省略する。
【0071】
図17に示すように、第2実施形態に係る駆動装置207は、第1実施形態におけるエンジン106に代えて、原動機である電動モータ116を備えている。すなわち、電動モータ116は外部電源118からの電力を、制御盤117を介して入力する。外部電源118は一般的な商用電源でよい。また制御盤117には図示しないブレーカや、始動装置などが含まれ、旋回体102に備えられる。電動モータ116の駆動出力は、動力伝達装置13を介して可変容量型油圧ポンプ2a〜2fに伝えられる。これ以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0072】
本実施形態で示した電動モータ116を原動機として搭載している作業機械は、例えば鉱山用油圧ショベルや、金属スクラップ処理機などにて多く用いられている。
【0073】
このように構成された第2実施形態は、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0074】
なお、第1実施形態において、油圧ポンプ故障判断部41dをコントローラ41内に含む構成としたが、これに拘るものでなく、コントローラ41とは別置きに備えてもよい。また、接続パターンは、
図8や、
図15に示したものに拘らず、作業状況等に応じた別の接続パターンを用いてもよく、これを考慮し複数用意しておいてもよい。さらに、第1実施形態では、一つの故障した油圧ポンプを示したが、予め別の接続パターンを用意しておけば、複数が故障した場合に対しても、変更処理が可能である。