特許第5961584号(P5961584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961584
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】気流式粉砕機
(51)【国際特許分類】
   B02C 17/16 20060101AFI20160719BHJP
   B02C 17/24 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B02C17/16 Z
   B02C17/24
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-95084(P2013-95084)
(22)【出願日】2013年4月30日
(65)【公開番号】特開2014-213301(P2014-213301A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年1月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、平成24年11月28日東京ビッグサイトにおいて開催された国際粉体工業展東京2012で公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000133467
【氏名又は名称】株式会社ダルトン
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124947
【弁理士】
【氏名又は名称】向江 正幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140969
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100161300
【弁理士】
【氏名又は名称】川角 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田中 基大
(72)【発明者】
【氏名】上野 隆司
(72)【発明者】
【氏名】浅井 直親
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−062475(JP,A)
【文献】 特開平02−258072(JP,A)
【文献】 特開2012−183475(JP,A)
【文献】 特開2006−026530(JP,A)
【文献】 特開2008−149271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 17/00 − 17/24
B02C 13/00 − 13/31
B02C 2/00 − 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給口から投入された原料を、粉砕室において気流を用いて粉砕した後、排出口に排出する気流式粉砕機であって、
前記粉砕室を内部に有するケーシングと、
前記粉砕室内に設けられており、回転することにより前記粉砕室内で気流を発生させる第一回転羽根および第二回転羽根とを備え、
前記粉砕室が、円筒面状の側壁面と、当該円筒面の軸方向に互いに対向する第一壁面および第二壁面とで区画されており、
前記第一回転羽根および前記第二回転羽根が、前記軸方向に互いに対向するとともに、前記軸周りに回転可能に設けられており、
前記第一回転羽根および前記第一壁面が前記供給口側に配置されており、前記第二回転羽根および前記第二壁面が前記排出口側に配置されており、
前記ケーシングが、外周を前記側壁面に密着させつつ、前記側壁面に対して前記軸方向に移動可能な可動部材を有し、
前記第一壁面および前記第二壁面の少なくともいずれか一方が、前記可動部材に設けられ、運転中に粉砕室の大きさを変えることを可能とする
ことを特徴とする気流式粉砕機。
【請求項2】
前記第一回転羽根と前記第二回転羽根との間の前記軸方向での距離が可変である
ことを特徴とする請求項1に記載の気流式粉砕機。
【請求項3】
前記第一回転羽根および前記第二回転羽根の少なくともいずれか一方が、
前記軸方向に垂直に配置され、貫通孔を有する円板と、
前記円板の外径より大径の円周上に配置された先端に向けて、前記円板から放射状に延びる複数のブレードとを有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の気流式粉砕機。
【請求項4】
前記複数のブレードが、
前記円板の中心部から前記先端まで延びる複数の長ブレードと、
前記円板の外径より小径の円周上に配置された基端から前記先端まで延びる複数の短ブレードとを含み、
前記長ブレードと前記短ブレードとが円周方向に交互に配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の気流式粉砕機。
【請求項5】
前記第二回転羽根より前記排出口側に配置された円環状の堰板をさらに備え、
前記堰板は前記第二回転羽根に対向しつつ前記軸と同心に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の気流式粉砕機。
【請求項6】
前記第一回転羽根より前記供給口側に、投入された原料を粗砕きして前記粉砕室に供給する粗砕羽根をさらに備え、
前記粗砕羽根は前記第一回転羽根と同期して前記軸周りに回転する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の気流式粉砕機。
【請求項7】
前記供給口から前記粉砕室を経由して前記排出口に向けて流れる気流を発生させる送風手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の気流式粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気流を用いて原料を粉砕する気流式粉砕機に関し、特に、羽根を回転させて気流を発生させ、その気流に乗せた原料同士を同体衝突させて粉砕する気流式粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
原料を粉砕する従来の技術として、原料を粉砕室内の気流に乗せて原料同士を衝突させることで粉砕をおこなう、いわゆる気流式粉砕方式が知られている。特許文献1には従来の気流式粉砕機が開示されており、粉砕室に配置された二つの回転羽根が回転することにより気流が発生し、この気流に乗った原料が旋回運動して、互いに衝突することにより粉砕されるよう構成されている。
【0003】
一方、特許文献2に開示されるように、粉砕室の大きさを変化させることが可能に構成された気流式粉砕機も知られている。図8に示す気流式粉砕機200は、粉砕室200bの大きさ、および回転羽根210,220同士の間隔を、固定ケーシング233を取り換えて調整するよう構成されている。図8(a)に示す気流式粉砕機は、固定ケーシング233に長寸ケーシング233aが用いられており、これにより粉砕室200bが広く、回転羽根210,220同士の間隔が長く構成されている。これに対して図8(b)に示す気流式粉砕機は、固定ケーシング233に短寸ケーシング233bが用いられており、これにより粉砕室200bが狭く、回転羽根210,220同士の間隔が短く構成されている。固定ケーシング233の交換は、気流式粉砕機200の運転を停止してからする必要がある。
【0004】
図8に示す気流式粉砕機において、もしも運転中に粉砕室200bの大きさを変えようとすれば、粉砕室200bが外部と繋がり原料が外部に漏出してしまう。また、特許文献2に開示される気流式粉砕機において、もしも運転中に粉砕室の大きさを変えようとすれば、粉砕室内に円周方向に延びる溝が形成され、粉砕室内の気流の乱れを招くことになる。すなわち、従来の気流式粉砕機は、運転中に粉砕室の大きさや回転羽根同士の間隔を変化させることができなかった。
【0005】
気流式粉砕機の運転中に、粉砕室への原料の投入が完了した後は、粉砕室内で循環・旋回する粉砕物は徐々に減少するため、原料同士の衝突頻度が減少し、粉砕効率が落ち、運転を終了した後に大量の未粉砕物が粉砕室に残る場合がある。そのため、原料の投入が完了した後、運転中に粉砕室を縮小することができれば、原料同士の衝突頻度を維持できる。そのため、粉砕効率を落とすこと無く、運転を終了した後の未粉砕物の残量を減らすことができる。しかし、特許文献2に開示される気流式粉砕機では、運転中に粉砕室を縮小することができないため、粉砕効率を維持することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−29757号公報
【特許文献2】特開2003−10712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、運転中に粉砕室の大きさを変えることが可能であり、運転中に粉砕効率が低下することなく維持される気流式粉砕機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、供給口から投入された原料を、粉砕室において気流を用いて粉砕した後、排出口に排出する気流式粉砕機であって、前記粉砕室を内部に有するケーシングと、前記粉砕室内に設けられており、回転することにより前記粉砕室内で気流を発生させる第一回転羽根および第二回転羽根とを備え、前記粉砕室が、円筒面状の側壁面と、当該円筒面の軸方向に互いに対向する第一壁面および第二壁面とで区画されており、前記第一回転羽根および前記第二回転羽根が、前記軸方向に互いに対向するとともに、前記軸周りに回転可能に設けられており、前記第一回転羽根および前記第一壁面が前記供給口側に配置されており、前記第二回転羽根および前記第二壁面が前記排出口側に配置されており、前記ケーシングが、外周を前記側壁面に密着させつつ、前記側壁面に対して前記軸方向に移動可能な可動部材を有し、前記第一壁面および前記第二壁面の少なくともいずれか一方が、前記可動部材に設けられ、運転中に粉砕室の大きさを変えることを可能とすることを特徴とする気流式粉砕機である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、運転中に粉砕室の大きさを変えることが可能であり、粉砕室中の原料の減少による粉砕効率の低下を防止し、高い粉砕効率が維持される気流式粉砕機を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記第一回転羽根と前記第二回転羽根との間の前記軸方向での距離が可変であることを特徴とする請求項1に記載の気流式粉砕機である。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、運転中に粉砕室の大きさを変えることが可能であるとともに、運転中に粉砕室内で発生する気流の状態を変化させることが可能な、気流式粉砕機を提供することである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記第一回転羽根および前記第二回転羽根の少なくともいずれか一方が、前記軸方向に垂直に配置され、貫通孔を有する円板と、前記円板の外径より大径の円周上に配置された先端に向けて、前記円板から放射状に延びる複数のブレードとを有することを特徴とする請求項1または2に記載の気流式粉砕機である。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、粉砕時に発生する熱量が小さく、粉砕物の品質に与える影響が小さい、気流式粉砕機を提供することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記複数のブレードが、前記円板の中心部から前記先端まで延びる複数の長ブレードと、前記円板の外径より小径の円周上に配置された基端から前記先端まで延びる複数の短ブレードとを含み、前記長ブレードと前記短ブレードとが円周方向に交互に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の気流式粉砕機である。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、長ブレードおよび短ブレードで、粉砕室内で気流を発生させるとともに、長ブレードで貫通孔から流出する気体を外周に誘導し、短ブレードで外周の気流を整流することにより、粉砕効率の高い気流式粉砕機を提供することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記第二回転羽根より前記排出口側に配置された円環状の堰板をさらに備え、前記堰板は前記第二回転羽根に対向しつつ前記軸と同心に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の気流式粉砕機である。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、第二回転羽根の中心部の近傍から粒度の粗い粉砕物が排出されることが阻止されることにより、粉砕物の粒度のばらつきが小さい気流式粉砕機を提供することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記第一回転羽根より前記供給口側に、投入された原料を粗砕きして前記粉砕室に供給する粗砕羽根をさらに備え、前記粗砕羽根は前記第一回転羽根と同期して前記軸周りに回転することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の気流式粉砕機である。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、原料を予め粗砕きしてから粉砕室に供給することにより、粉砕効率の高い気流式粉砕機を提供することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記供給口から前記粉砕室を経由して前記排出口に向けて流れる気流を発生させる送風手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の気流式粉砕機である。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、送風手段を制御することにより、粉砕室内の気流の状態を変化させることが可能な気流式粉砕機を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、運転中に粉砕室の大きさを変えることが可能であり、運転中に粉砕効率が低下することなく維持される気流式粉砕機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る気流式粉砕機を示す正面断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る気流式粉砕機の第一回転羽根を示す図であり、(a)が左側面図、(b)がA−A断面図、(c)が右側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る気流式粉砕機の第二回転羽根を示す図であり、(a)が左側面図、(b)がB−B断面図、(c)が右側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る気流式粉砕機の粗砕羽根および粗砕ライナを示す図であり、(a)が粗砕羽根および粗砕ライナを示す正面図、(b)が粗砕羽根の右側面図、(c)が粗砕羽根の斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る気流式粉砕機を示す図であり、図1に示す状態から第一壁面と第二壁面との間を離した状態を示す正面断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る気流式粉砕機の粉砕室で発生する気流の状態を示す模式図である。
図7】本発明の実施形態に係る気流式粉砕機に堰板を設けた状態を示す正面断面図である。
図8】従来の気流式粉砕機を示す図であり、(a)は粉砕室が拡張した状態を示す模式図であり、(b)は粉砕室が縮小した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0025】
(実施形態)
本発明に係る気流式粉砕機の実施形態について、図1〜4に基づき説明する。図1は、本発明の実施形態に係る気流式粉砕機を示す正面断面図である。図2は、本発明の実施形態に係る気流式粉砕機の第一回転羽根を示す図であり、(a)が正面図、(b)が右側面図、(c)が背面図である。図3は、本発明の実施形態に係る気流式粉砕機の粗砕羽根を示す図であり、(a)が正面図、(b)が右側面図、(c)が斜視図である。図4は、本発明の実施形態に係る気流式粉砕機を示す図であり、図1に示す状態から第一壁面と第二壁面との間を離した状態を示す正面断面図である。
【0026】
まず本実施形態に係る気流式粉砕機100全体の構成について、図1に基づき説明する。本実施形態に係る気流式粉砕機100は、原料が投入される供給口100a、原料の粉砕が行われる粉砕室100b、および粉砕物が排出される排出口100cを有している。気流式粉砕機100は、主な構成要素として、ケーシング30、第一回転羽根10、第二回転羽根20を備えている。ケーシング30の内部に粉砕室100bが設けられており、第一回転羽根10および第二回転羽根20は粉砕室100b内に設けられている。
【0027】
ケーシング30は、固定ケーシング33、第一可動ケーシング31および第二可動ケーシング32からなる。固定ケーシング33は円筒面状の側壁面33aを内部に備えている。第一可動ケーシング31および第二可動ケーシング32は、円筒面状である側壁面33aの軸X方向に可動に構成されている。第一可動ケーシング31には、略円形の第一壁面31aと、その外周に円筒状の密着面31bとが設けられている。第一可動ケーシング31は、密着面31bを側壁面33aに密着させつつ、図1における左右方向に移動する。なお、密着面31bにはOリング31cが設けられており、これにより、側壁面33aと密着面31bとの間に隙間は生じないよう構成されている。また、第二可動ケーシング32にも、略円形の第二壁面32aと、その外周に円筒状の密着面32bとが設けられている。第二可動ケーシング32は、密着面32bを側壁面33aに密着させつつ、図1における左右方向に移動する。なお、密着面32bにはOリング32cが設けられており、これにより、側壁面33aと密着面32bとの間に隙間は生じないよう構成されている。
【0028】
第一壁面31aと第二壁面32aとは、軸X方向に互い対向している。粉砕室100bは、側壁面33a、第一壁面31a、および第二壁面32aにより区画されている。粉砕室100bは、第一可動ケーシング31の貫通孔31dおよび第二可動ケーシング32の貫通孔32dを介して、供給口100aおよび排出口100cに繋がっている。
【0029】
第一回転羽根10および第二回転羽根20は、軸X方向に互いに対向するとともに、軸X周りにそれぞれ独立に回転可能に構成されている。第一回転羽根10は、軸X方向に延びる第一駆動シャフト40に結合されており、第一駆動シャフト40は図示しない駆動手段により回転駆動される。第一駆動シャフト40は、第一可動ケーシング31に設けられている貫通孔31dを通って粉砕室100b内に到達し、粉砕室100b内の第一回転羽根10を回転させる。第二回転羽根20は、軸X方向に延びる第二駆動シャフト50に結合されており、第二駆動シャフト50も図示しない駆動手段により回転駆動される。第二駆動シャフト50は、第二可動ケーシング32に設けられている貫通孔32dを通って粉砕室100b内に到達し、粉砕室100b内の第二回転羽根20を回転させる。
【0030】
第一駆動シャフト40は、シャフトケース41により支持されている。すなわち、シャフトケース41は、ベアリング42およびオイルシール43を介して、第一駆動シャフト40を軸X周りに回転可能に支持している。第二駆動シャフト50は、シャフトケース51により支持されている。すなわち、シャフトケース51は、ベアリング52およびオイルシール53を介して、第二駆動シャフト50を軸X周りに回転可能に支持している。
【0031】
第一回転羽根10より供給口100a側には、第一回転羽根10に隣接して粗砕羽根60が設けられている。粗砕羽根60も第一回転羽根10と同様に第一駆動シャフト40に結合されており、これにより第一回転羽根10と同期して軸X周りに回転可能に設けられている。また、粗砕羽根60と径方向に対向する粗砕ライナ63が、第一可動ケーシング31の貫通孔31dに設けられている。粗砕羽根60は、軸X方向について、供給口100aと略同一の位置に設けられており、粗砕羽根60は供給口100aのほぼ真下に配置されている。したがって、供給口100aから供給された原料は、最初に粗砕羽根60と粗砕ライナ63との隙間に移送される。
【0032】
第二回転羽根20より排出口100c側には、第二回転羽根20に隣接して排出羽根80が設けられている。この排出羽根80は、供給口100aから粉砕室100bを経由して排出口100cに向けて流れる気流を発生させる送風手段として設けられている。排出羽根80も第二回転羽根20と同様に第二駆動シャフト50に結合されており、これにより第二回転羽根20と同期して軸X周りに回転可能に設けられている。排出羽根80が回転することにより、排出口100cに向かう気流が発生する。図示の排出羽根80は、軸X方向について、排出口100cと略同一の位置に設けられており、排出羽根80は排出口100cのほぼ真上に配置されている。排出羽根80の形状および位置は、求める送風能力に応じて適宜設定することができる。排出羽根80を設けることなく気流式粉砕機100を構成することも、もちろん可能である。
【0033】
次に、第一回転羽根10について図2に基づき説明する。第一回転羽根10は、円板11、および円板11に結合された、複数の長ブレード13および複数の短ブレード14を有する。円板11の中心部には、第一駆動シャフト40に結合するためのボス15および結合孔16が設けられており、その周囲に、軸X方向に貫通する複数の貫通孔12が設けられている。長ブレード13および短ブレード14それぞれの先端13a,14aは、円板11の外径より大径の円周上に配置されている。長ブレード13は円板11の中心部から先端13aまで延びており、中心部においてボス15に繋がっている。また、長ブレード13は、円板11の中心部において貫通孔12に隣接している。短ブレード14は、基端14bから先端14aまで延びており、基端14bは円板11の外径より小径の円周上に配置されている。したがって、短ブレード14は長ブレード13より径方向に短く形成されている。長ブレード13および短ブレード14は、いずれも円板11の外周11aから径方向外側に突出しており(図2(a)参照)、また円板11から軸方向に突出している(図2(b)参照)。
【0034】
次に、第一回転羽根10が回転した場合の作用について説明する。第一回転羽根10が、図2(a)における反時計回りに回転すると、中心部から外周に向けて流れる気流が発生する。すなわち、第一回転羽根10の中心部にある貫通孔12から、図2(a)における手前側に気体が流出して、その気体は外周に向けて流れる。長ブレード13は円板11の中心部から先端13aまで途切れず連続しているため、貫通孔12から流出する気体を外周に運ぶ役割を果たす。一方、短ブレード14は、長ブレード13同士の間に挟まれて配置されており、外周において乱流となることを防止し、気流を整流する役割を果たす。粉砕室100b内での気流が整流されることにより、気流に乗った原料同士が衝突し、効率よく粉砕されることになる。第一回転羽根10は、原料との直接の接触の機会が少ないため発熱が小さく、粉砕物が過度に高温になることがない。
【0035】
次に、第二回転羽根20について、図3に基づき説明する。第二回転羽根20は、中心部から放射状に延びる複数のソリッドブレード21を有する。第二回転羽根20の中心部には、第二駆動シャフト50に結合するための結合孔22が設けられている。第二回転羽根20が、図3(a)における時計回りに回転すると、中心部から外周に向けて流れる気流が発生する。第二回転羽根20は、粉砕室100b内で循環流を発生させることにより、気流に乗った原料同士の衝突を促進する。また、第二回転羽根20は、原料とソリッドブレード21とが直接衝突することにより、原料を微粉砕することを可能とする。
【0036】
次に、粗砕羽根60について図4に基づき説明する。粗砕羽根60は、螺旋状に延びる複数のブレード61を有する。粗砕羽根60の中心部には、第一駆動シャフト40に結合される結合孔62が設けられている。前述のとおり、供給口100aから供給された原料は、最初に粗砕羽根60と粗砕ライナ63との隙間に移送される。粗砕羽根60が回転すると、粗砕羽根60と粗砕ライナ63との隙間にある原料には大きなせん断力が加えられ、粗砕きされる。粗砕きされた原料は、粉砕室100bに移動する。
【0037】
次に、本実施形態に係る気流式粉砕機100の粉砕室100bの大きさの変化について、図5に基づき説明する。第一可動ケーシング31および第二可動ケーシング32は、図示しないローラーなどを介して、図5における左右方向に移動可能に構成されている。図5に示す状態は、図1に示す状態に比べて粉砕室100bが拡張しているとともに、第一回転羽根10と第二回転羽根20との距離が離れている。
【0038】
気流式粉砕機100の運転により原料の粉砕が進み、粉砕室100b内で循環・旋回する粉砕物が減少していくと、粉砕効率が低下する。したがって、粉砕室100b内の原料が減少するのに従って粉砕室100bを縮小させていくことにより、粉砕効率の低下を阻止することが可能となる。
【0039】
なお、本実施形態に係る気流式粉砕機100は、固定ケーシング33に対して、第一可動ケーシング31および第二可動ケーシング32の両方が移動可能に構成されているが、これらのうちいずれか一方が移動可能に構成されていれば、粉砕室100bの大きさを変えることが可能となる。
【0040】
次に、本実施形態に係る気流式粉砕機100の粉砕室100b内で発生する気流の状態について、および粉砕の原因となる同体衝突について、さらに原料と回転羽根との衝突について、図6に基づき説明する。
【0041】
粉砕室100b内の、図6における左側には、図2に示した第一回転羽根10が回転しているため、中心部の貫通孔12を通り外周まで到達し再度貫通孔12を通るような、大きな循環流が発生する。第一回転羽根10には、気体が軸方向に行き来することを阻害する円板11が設けられているため、小さな循環流となることはない。そして短ブレード14の存在により、外周の近傍で気流が乱流となることが防止され、気流が整流される。そのため、原料同士の同体衝突の頻度が高くなり、効率よく粉砕することが可能となる。
【0042】
粉砕室100b内の、図6における右側には、図3に示した第二回転羽根20が回転しているため、図6における右側に示すような循環流が発生する。第二回転羽根20には、第一回転羽根10のような、気体の軸方向の運動を阻害する円板11が設けられていないため、図6に示すように、複数の循環流が発生し、気流に乗った原料が同体衝突を起こして粉砕される。また、第二回転羽根20は、原料とソリッドブレード21とが直接衝突することにより、原料が微粉砕される割合が高い。
【0043】
前述のとおり、第一可動ケーシング31および第二可動ケーシング32は、図5における左右方向に移動可能に構成されている。そして第一回転羽根10および第二回転羽根20は、それぞれ第一可動ケーシング31および第二可動ケーシング32に追従して移動する。第一回転羽根10と第二回転羽根20との間の距離を変えることにより、粉砕室100b中の気流の状態を変化させることが可能となり、同体衝突が発生する頻度を調整することが可能となる。
【0044】
なお、本実施形態では、第一回転羽根10と第二回転羽根20とを異なる構成のものとしたが、これら両方とも第一回転羽根10と同じ構成のものとすることも可能である。また、これら両方を第二回転羽根20と同じ構成のものとすることももちろん可能である。
【0045】
図7には、本実施形態に係る気流式粉砕機100に、粉砕途中の原料が粉砕室100bから排出されるのを阻止する堰板70が設けられている状態を示す。具体的には、粉砕室100bに隣接して、内径側堰板71および外径側堰板72が設けられている。内径側堰板71は円環状に形成されており、第二回転羽根20に取り付けられている。内径側堰板71は主に、粉砕室100bの中心部分から粒度の大きい粉砕物が排出されるのを阻止する。また、外径側堰板72も円環状に形成されており、第二可動ケーシング32に取り付けられている。外径側堰板72は主に、循環流に乗って粉砕途中にある粉砕物が排出されるのを阻止する。内径側堰板71および外径側堰板72は、軸Xに同心に設けられている。このように、気流式粉砕機100に堰板70を設けることにより、排出される粉砕物の粒度のばらつきを小さくすることが可能となる。
【0046】
なお、本実施形態では、供給口100aから粉砕室100bを経由して排出口100cに向けて流れる気流を発生させる送風手段として、ケーシング30内に収容された排出羽根80が採用されている。この送風手段はケーシング30の外部に設けることももちろん可能であり、例えば送風ファンやブロア等をケーシング30の外部に設けて気流を発生させることもできる。
【符号の説明】
【0047】
100 気流式粉砕機
100a 供給口
100b 粉砕室
100c 排出口
10 第一回転羽根
11 円板
12 貫通孔
13 長ブレード
14 短ブレード
20 第二回転羽根
30 ケーシング
31 第一可動ケーシング
31a 第一壁面
32 第二可動ケーシング
32a 第二壁面
33 固定ケーシング
33a 側壁面
60 粗砕羽根
70 堰板
80 排出羽根
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8