【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 壁内蔵給水栓に関する「機能比較表」及びこの付属書類である「比較表」(株式会社タブチ作成、平成25年4月18日配布) 壁内蔵給水栓のサンプル品(平成25年4月18日公開)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持手段は、前記壁内蔵体のうちで建物の壁内部に配置された部材に形成されたねじ部と、当該ねじ部に螺合可能なねじ部材とを備える請求項7に記載の化粧カバーの取付構造。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明につき、一実施形態として、洗濯機等に給水するために家屋等の建物の壁に埋め込まれる壁内蔵給水栓を取り上げて説明を行う。下記における方向の表現は、壁内蔵給水栓を
図1に示すように壁面Wに設置した場合における方向により、壁面を基準として手前への方向を「前方」と、奥に向かう方向を「後方」とする。また、「上下左右」は壁面に対向する位置から見た方向である。なお、本発明が下記において説明する方向の態様のみに限定解釈されないことは言うまでもない。
【0019】
本実施形態の壁内蔵給水栓Cは、
図1に示すようにして壁Wに取り付けられるもので、主に、ボックス部1、胴部(給水栓本体)2、化粧カバー3、ハンドル4、ホースフック部5から構成され、前記各部に種々の部材が取り付けられている。
【0020】
ボックス部1は硬質樹脂製の箱体であって、
図3〜
図5に示すように、上面部111、後面部112、左面部113、右面部114が閉鎖され、下面部及び前面部が開放された形状である。このボックス部1の外面にはリブ(図示していない)が形成されており、剛性が高められている。このため、石膏ボード等の壁板材Bを支持するために壁Wの内部に設置される角材Lへのボックス部1の固定を確実にすることができ、かつ、ボックス部1に対して胴部2を確実に固定することができる。角材Lは本実施形態では木材であるが、軽量鉄骨や樹脂とされる場合もある。また、後面部112における内面にも、後述のスライドレール部15と一体に、左右方向に延びるリブ16が形成されている。このリブの形成により、後面部112の剛性を高めることができて撓みの発生を抑制できる。
【0021】
また、上面部111、左面部113、右面部114には各部につき2箇所ずつ、ビス取付孔12が形成されている。このビス取付孔12は、前後方向に長い長孔である。通常では、左面部113、右面部114のうち一方と上面部111との外面が壁Wの内部に位置する角材Lに当接した状態で、ボックス固定ビスS1がねじ込まれてボックス部1の固定がなされる。ただし、左面部113、右面部114のうち一方のみ、または、上面部111のみが前記角材Lに当接した状態でボックス部1の固定がなされてもよい。
【0022】
また、上面部111、左面部113、右面部114における内面のうち、前後方向でビス取付孔12が形成された部分に対応する部分には、前方から後方に向かうにつれ順次内側にせり出す平面であるテーパ面13が形成されている。このテーパ面13は、ボックス固定ビスS1の設計上の取り付け方向(軸方向)に略直交する面とされている。ボックス固定ビスS1は、ボックス部1の内部から斜め後方へと取り付けられ、
図7に示すように、ボックス部1にて開放されている前面部から挿入される電動ドライバー等の工具Tによりねじ込みがなされる。これにより固定ビスS1は、
図4に示すように、軸方向が前後方向に対して傾斜するように取り付けがなされる。ボックス部1の内面にテーパ面13が形成されたことにより、前記傾斜したボックス固定ビスS1の頭部をボックス部1の内面に対して片当たりすることを抑制しつつ、当該頭部の全周において接触(線接触または面接触)させることができる。このため、工具Tによるねじ込み作業中に、ボックス固定ビスS1から力が不均等にボックス部1に働くことにより、ボックス部1がずれて角材Lに取り付けられてしまったり、ボックス固定ビスS1を取り付けた状態のボックス部1にぐらつきが発生したりすることを有効に抑制できる。
【0023】
また、上面部111、左面部113、右面部114における外面のうち、前方側端部の位置に位置決め突起14が形成されている。この位置決め突起14は、
図3に示すように、前後方向の縦断面形状が直角三角形とされており、
図4に示すように、後方に向かうにつれ縦断面形状が小さくなるようにされている。この位置決め突起14の前面141はボックス部1の前面と同一位置にある。
【0024】
ボックス部1が建物の壁Wに埋め込まれている角材L(
図7参照)に固定される際には、この角材Lにおける前方側の角部に、この位置決め突起14が引っ掛かるようにされる。この状態でビス取付孔12にボックス固定ビスS1がねじ込まることでボックス部1を角材Lに対して固定することができる。角材Lは位置決め突起14よりも相対的に柔らかいため、前記ボックス固定ビスS1のねじ込みに伴い、位置決め突起14は角材Lにおける角部にめり込む。ここで、ボックス固定ビスS1がボックス部1に対して傾斜して取り付けられることにより、ボックス部1には後方にずれようとする力が働くものの、前記位置決め突起14が角材Lに対して引っ掛かることでボックス部のずれは有効に抑制できる。このため、角材Lの前面に対してボックス部1の前面がほぼ一致するようにして容易に取り付けることができる。また、
図7に示すように、作業者は例えば左手でボックス部1を持つだけで、ボックス部1の角材Lに対する位置決めを行うことができる。よってこの場合、作業者は右手で工具Tの支持だけを行いつつ、工具Tを操作して前記ボックス固定ビスS1のねじ込み作業を行うことができる。以上、本実施形態では、ボックス部1に位置決め突起14が形成されたことにより、ボックス部1の固定に関しての施工性を向上できている。
【0025】
ボックス部1における左面部113及び右面部114の内面には、
図3〜
図5に示すように、スライドレール部15が前後方向に延びるように突出している。スライドレール部15は、左面部113の側と右面部114の側とで1組を構成する。スライドレール部15は、胴部2の前後方向での調整可能範囲に対応して形成されている。本実施形態では、上方に1組、下方に1組のスライドレール部15が形成されている。そして本実施形態では、上方に形成された1組のスライドレール部15に胴部2のスライド受部24が取り付けられる。なお、下方に形成されたスライドレール部15は本実施形態の胴部2に対しては用いられず、ボックス部1を本実施形態とは上下逆に設置して、上方から給水を行うよう構成された胴部2を取り付ける場合に用いられる。このスライドレール部15のうち、上方に形成されたものの縦断面形状は、前後方向にわたって一定の、長円を短軸方向に切断したような形状であって、上面及び下面が水平面であり、内側面が湾曲面(アール面)とされている。そして、スライドレール部15の下面には前後方向に延びるビス配置溝部151が形成されている。なお、スライドレール部15のうち、下方に形成されたものの縦断面形状は、前記上方に形成されたものに対して上下対称形状である。胴部2のスライド受部24は、前記縦断面形状における水平面と湾曲面の部分の両方に沿うように位置し、胴部2に取り付けられる胴固定ビスS2は、その先端が前記ビス配置溝部151の底面に当接する。
【0026】
次に、胴部2について説明する。この胴部2は、
図4〜
図6(
図6は本体(鋳物部分)のみを示す)に示すように銅合金製(本実施形態では銅鋳物)であって、入口部21、弁機構部22、出口部23、スライド受部24を備える。胴部2内にて水の通る流路25は、入口部21から上方に延び、弁機構部22を通ってから下方に転じ、出口部23から下斜め前方に延びるように形成される。つまり、弁機構部22は、胴部2における一方向側(本実施形態では上側)に位置し、入口部21及び出口部23は、胴部2における他方向側(本実施形態では下側)に位置している。
図5及び
図6(D)に示すように、前記流路25のうち、入口部21から上方へと延びる入口側流路251の前後方向における中心は、入口部21の前後方向における中心に対して後方にずれている。また、弁機構部22の下流側であり、下方へと延びる出口側流路252の前後方向における中心は、入口部21の前後方向における中心に対して前方にずれている。つまり、また、入口側流路251及び出口側流路252における通水空間は、横断面(通水方向に直交する断面)における幅方向寸法が前後方向寸法よりも長く、横断面における前後方向寸法は、前記入口部21における通水空間の通水方向に直交する断面での前後方向寸法よりも短い(入口側流路251の通水空間につき、
図6(C)に示した幅方向寸法(
図6(C)上の左右方向寸法)と
図6(D)に示した前後方向寸法(
図6(D)上の左右方向寸法)とを参照)。このため、入口側流路251と出口側流路252とは前後方向に積層した関係となる。この関係により胴部2をコンパクト化できる。よって、特にマンションやアパートにおける、一戸建て住宅に比べて相対的に厚みの小さな壁Wに対してであっても壁内蔵給水栓Cを容易に設置できる。
【0027】
また入口側流路251は、入口部21を出て弁機構部22に至る区間で直線状に延びるよう形成されている。そして出口側流路252は、弁機構部22から出口部23に入るまでの区間で直線状に延びるよう形成されている。これらの構成により、胴部2における損失水頭を小さくすることに貢献できる。
【0028】
この胴部2は、後面がほぼフラットに形成されており、後方への大きな突出が無い形状とされている。このため、ボックス部1に胴部2を取り付ける際に、胴部2の後面とボックス部1の後面部112との距離を小さくできる。よって壁内蔵給水栓Cの前後方向寸法のコンパクト化に貢献できる。
【0029】
また、この胴部2は左右対称形状とされている。このため、鋳造による胴部2の本体の形成が比較的容易である。
【0030】
入口部21は円筒状であって、壁Wに埋め込まれる給水配管I(
図5参照)が接続される。このため、この入口部21の外周面には配管係合部211として管用ねじが形成されている。なお、配管係合部211としては他にフランジ、ファスナー等、種々の構成を採用できる。そして、入口側流路251の下部であって入口部21への接続部26における前方側の内壁は、下流側に向かうにつれ後方側に傾斜する斜面261を有している。
【0031】
弁機構部22は、
図5に示すように、後方で入口側流路251に連通しており、側方で出口側流路252に連通している。この弁機構部22は、前方に突出する回動軸221と、この回動軸221に連動して流路25を開閉する弁部222とを備える。回動軸221のうち、弁機構部22から前方に突出した部分はスプライン軸とされており、このスプライン軸とされた部分に、回動軸221を回動させるためのハンドル4が取り付けられる。また、回動軸221の前端面にはハンドル4を固定するためのねじ孔が形成されている。弁部222は、厚み方向が前後方向に一致するように配置され、貫通孔を有するセラミック板222aに対し、回動軸221と連動する回動板222bが前記貫通孔を開閉するように回動することにより、開放及び閉鎖を行うよう構成されている。この構造の弁部222では、前記貫通孔を開閉する際に回動軸221が前後方向に移動しないため(ノンリフトタイプ)、回動軸221及びハンドル4が前方に突出することを前提とした設計をする必要がない。また、ハンドル4が弁部222の開度により突出したり引っ込んだりしないことから、美観に優れた壁内蔵給水栓Cを提供できる。
【0032】
弁機構部22のうち、胴部2の本体に属する部分は円筒状とされており、外周面にカバー固定ねじ部223が形成されている。このカバー固定ねじ部223は、化粧カバー3の壁面W1への係合状態を保持する保持手段の一部(ねじ部材)として機能し、化粧カバー3を胴部2に固定するためのカバー固定ナット6が取り付けられる。
【0033】
出口部23は、入口部21の上方かつ弁機構部22の下方に形成されており、下斜め前方に延びる略筒状のものである。出口部23の内周面にはねじが形成されており、遮断弁及び逆止弁を内蔵したカプラーユニット8を取り付けるためのニップル部7がねじ込まれる。なお、カプラーユニット8の遮断弁は、もしも出口部23に接続された洗濯機の給水ホース等が不意に外れた場合に通水を遮断して、壁内蔵給水栓Cの周辺が水浸しになることを防止するよう構成されている。
【0034】
ニップル部7は、一般的な六角ナットを締結する際に用いるスパナ等の一般的な工具で出口部23にねじ込みができるよう、外形が略六角柱状とされている。そしてカプラーユニット8は、一般的な規格に準拠した構成を有し、後方部がニップル部7の内部にねじ込まれ、前方部がニップル部7から突出する。またニップル部7の側面のうち、前記略六角柱状の角部には、ホースフック部5を固定するための凹部71が形成されている。
【0035】
ホースフック部5は、前方端に鍔状部51が形成された、略円筒状の硬質樹脂製の部材である。このホースフック部5の内面には、径方向に対向する関係にある平面部(図示していない)が1組形成されている。この平面部は幅寸法(前記略円筒状の周方向に沿う寸法)が、ニップル部7の前記略六角柱状の一つの側面の幅寸法と一致する。ホースフック部5の内面であり、この平面部の周方向端部には、ニップル部7にホースフック部5を固定するための凸部52が形成されている。
【0036】
このホースフック部5をニップル部7に取り付けるには、前記平面部をニップル部7の前記略六角柱状におけるいずれかの側面に合わせ、軸方向に押し込むことでなされる。この際、ニップル部7の前記凹部71に凸部52が係合することでホースフック部5が固定される。このホースフック部5の取り付け状態で、カプラーユニット8の一部は鍔状部51から前方に突出する。洗濯機の給水ホース等の先端に存在するフックH(
図1参照)はこの鍔状部51に引掛けられる。これにより、給水ホース等が不意に外れてしまうことを抑制できる。なお、ホースフック部5は軸方向に沿う方向に引き抜こうとすると、前記凹部71との係合が解除されて容易に引き抜くことができる。これに対し、給水ホース等のフックHは1箇所で鍔状部51に引掛けられているため、給水圧、または、人による不慮の引張り力により給水ホース等に引き抜き方向の力が発生した場合でも、この力は軸方向に沿う方向に対して傾いているため、ホースフック部5の前記凹部71への係合は解除されにくい。よって、給水圧の影響で給水ホース等がカプラーユニット8から不意に外れてしまうことを有効に抑制できる。
【0037】
また、ホースフック部5は、ニップル部7を介して胴部2に取り付けられる。ここで従来、化粧カバー3とホースフック部5とが一体に構成されている壁内蔵給水栓があった。この場合、胴部2が設計位置よりも後方に固定されてしまっていた場合、ホースフック部5と給水ホース側のフックHとが係合されているにもかかわらず、カプラーユニット8と給水ホースとの接続が不完全(両者が嵌まり切らない状態)となってしまうことがあり、この場合はカプラーユニット8と給水ホースとの接続部から水漏れが発生する可能性があった。これに対し、本実施形態では、ホースフック部5もカプラーユニット8も胴部2に取り付けられることから、ホースフック部5とカプラーユニット8との位置関係は常に一定である。このため、従来のような水漏れの発生を有効に防止できる。
【0038】
次に、出口部23は前方から見た場合、入口部21と弁機構部22との間に位置する。このことから、入口側流路251の延びる方向に沿う寸法(上下方向寸法)は、出口側流路252の延びる方向に沿うよりも長い。そして、入口側流路251の弁機構部22寄り端部の位置は、出口側流路252の弁機構部22寄り端部の位置よりも上方の位置である。そして前述のように、前記入口側流路251の接続部26における前方側の内壁は、下流側に向かうにつれ後方側に傾斜する斜面261を有している。そして、前記入口側流路251における前記接続部26よりも上方かつ前方にて、出口側流路252と出口部23とが接続されている。
【0039】
また、出口部23が、前方から見た場合に、入口部21と弁機構部22との間に位置するということは、即ち、入口部21の前方に出口部23が重なり合わないことである。ここで法律等の要請により、所定期間(例えば10年)毎に入口部21と給水配管Iとの間の水漏れを点検することが義務付けられることがあるが、この際、
図8(B)に示すような従来の構成では、入口部105の前方に出口部104が重なり合うため点検者の視界が遮られて点検しづらいことがあった。一方、本実施形態では、入口部21の前方に出口部23が重なり合わないことから、化粧カバー3を取り外しさえすれば、水漏れの点検を容易に行なうことができる。
【0040】
スライド受部24は弁機構部22から左右に突出している。前述のように、このスライド受部24はボックス部1のスライドレール部15に対して取り付けられる部分である。このため、スライド受部24には、前記スライドレール部15の水平面及び湾曲面に対応した形状であって、前後方向に延びる取付溝部241が形成されている。この取付溝部241は、
図4に示すように、縦断面形状が前後方向にわたって一定の形状である。このため、前記スライドレール部15に対して前後方向の位置を無段階に微調整できる。よって、前後方向の位置調整を容易にできる。
【0041】
また、スライド受部24のうち、前記取付溝部241に対して下方から貫通するねじ孔であるビス取付孔242が形成されている。このビス取付孔242に胴固定ビスS2がねじ込まれ、胴固定ビスS2の先端がボックス部1のスライドレール部15におけるビス配置溝部151の底面に当接するようにされる。これにより、前記前後方向の位置調整がなされた状態で胴部2をボックス部1に対して固定できる。このビス取付孔242は、下部が前方に、上部が後方に位置するように斜め方向に延びている。このため、ボックス部1において開放した前面部から作業者が工具Tを挿入し、胴固定ビスS2を固定する作業を行いやすい。
【0042】
化粧カバー3は硬質樹脂製で、壁Wの内部に少なくとも一部が位置するよう壁内蔵給水栓Cを配置する際に、壁Wに形成される貫通孔を前方から覆うためのものである。本実施形態の化粧カバー3は、ボックス部1の前方に位置して、ハンドル4、ホースフック部5(そのうち一部)、カプラーユニット8(そのうち一部)が前方に露出し、それ以外の部分を隠すことのできる、外形が略長方形の部材である。中央に、後方へ凹む凹部31を備え、この凹部31に、円形の貫通孔である弁機構部貫通部32と下斜め前方に延びるスリーブ状の出口部貫通部33とが形成されている。この凹部31により、化粧カバー3からのハンドル4、ホースフック部5、カプラーユニット8の前方への露出量を小さくできる。
【0043】
凹部31の底面であって弁機構部貫通部32の周囲には、ハンドル4が開放位置にあるのか閉鎖位置にあるのかが前方から見て一目でわかるように、「開」「閉」の開度表示36がされている。
【0044】
出口部貫通部33も貫通孔を有するが、この貫通孔は弁機構部貫通部32と異なり縦長の長円形とされている。これは、出口部貫通部33を胴部2の出口部23が斜めに貫通するためである。そして、ボックス部1と胴部2とは前述のように前後方向に位置調整できることから、前記位置調整に伴い、化粧カバー3と胴部2の出口部23との位置関係が上下に変動する可能性があることから、前記変動に対応させるためである。弁機構部貫通部32は、胴部2の弁機構部22が貫通した状態とされ、この状態で弁機構部22の外周面に備えるカバー固定ねじ部223に、化粧カバー3の壁面W1への係合状態を保持する保持手段の一部(ねじ部材)として機能するカバー固定ナット6が取り付けられる。これにより化粧カバー3が固定される。
【0045】
化粧カバー3は、少なくともボックス部1の前方から見た寸法よりも大きく形成されている。そして、この化粧カバー3の外周縁は、壁面W1を形成する壁紙Pに重なるように位置する。化粧カバー3の後面には、外周縁に沿い、壁面W1に対して係合する係合突起として機能する外周突起34が、その少し内側に内周突起35が、各々後方に突出している。各外周突起34及び内周突起35は全周にわたって連続して形成されているが、これに限られず、断続的に形成されていてもよい。また、各外周突起34及び内周突起35は化粧カバー3に一体に形成されているが、化粧カバー3の本体に対して別体に形成され、嵌め込み等により当該本体と一体にされるよう構成されていてもよい。各突起34,35の、延長方向に直交する断面における断面形状は、外周突起34に関しては、後方に向かうにつれ幅寸法が小さくなる(つまり、断面積が小さくなる)くさび形状であり、内周突起35に関しては、幅寸法一定の長方形状である。後方への突出寸法は、外周突起34の方が内周突起35よりも大きい。
【0046】
前記「くさび形状」は、外周突起34の後端部341における外側側面と内側側面とがなす角度が、30°以上90°以下(内外で対称形状である場合には、片側の側面が前後方向に対する角度が15°以上45°以下)の形状とされている。本実施形態では外側側面と内側側面とがなす角度が50°である。なお、前記角度範囲の形状は、外周突起34の全てに形成されていることは必須ではなく、外周突起34の少なくとも後端部341に存在していればよい。また、後端部341における端面の幅寸法は0.5mm以上1.5mm以下とされている。なお、後端部341が端面にアールを有する形状である場合、前記「幅寸法」は、前記アールの曲率半径を2倍した近似値で評価するものとする。本実施形態では幅寸法0.5mm以上1.0mm以下で形成される。
【0047】
前述のように、カバー固定ナット6を胴部2における弁機構部22のカバー固定ねじ部223にねじ込むと、ねじ込みによって生じる付勢力により、化粧カバー3は壁面W1(壁紙P)に押し付けられる。つまり、カバー固定ナット6は、螺合により化粧カバー3を後方向きに押圧する手段である。外周突起34はくさび形状であるため、外周突起34の後端部341が壁面W1(壁紙P)に食い込むことになる。これにより、化粧カバー3をカバー固定ナット6にて1箇所固定するだけで、化粧カバー3を壁面W1(壁紙P)に対してずれないように固定できる。このため、例えば化粧カバー3の四隅をビス留めしたり、ボックス部1に対して化粧カバー3を嵌合させたりする必要がないため、構成を簡素化できる。また、ボルト貫通孔の形成も不要であることから美観も向上できる。なお、外周突起34は、前記のように後端部341が壁面W1(壁紙P)に食い込むことができればよいため、本実施形態のような「くさび形状」に限定されず、例えば外周突起34の後端寄り部分だけが狭幅で突出したような形状であってもよい。
【0048】
なお、内周突起35は、壁面W1(壁紙P)に当接することにより外周突起34が必要以上に壁面W1に食い込むことを防止する役目、化粧カバー3の前面の歪みを防止する補強リブとしての役目、化粧カバー3の後方に結露防止のためのパッキンを組み込む場合におけるパッキン押さえとしての役目等を果たす。
【0049】
ハンドル4は、円板部41と、円板部41と一体に形成された持手部42を備える。円板部41は、前方から見た場合の外周形状が円形とされており、外周縁の1箇所に略半円形の切欠である開閉表示部43が形成されている。この開閉表示部43は、前述のように化粧カバー3の凹部31における開度表示36に、前方から視認可能なように一致させることができ、弁機構部22の開度のインジケータとして機能する。なお、開閉表示部43は円板部41中で1箇所だけに存在することから、前方から見て開度表示36のうち「開」が表示されている状態か(
図2)、「閉」が表示されている状態か(
図3)、「開」も「閉」も表示されていない状態(図示せず)のいずれかとなる。このため、弁機構部22が開放されているか、閉鎖されているか、それとも中間開度であるかを洗濯機の使用者等が一目で認識できる。なお、開閉表示部43は、本実施形態では円板部41に形成された切欠として実施しているがこれに限定されない。例えば、円板部41に形成された円形や多角形の貫通孔、または、円板部41の一部が透明とされた窓部であってもよい。
【0050】
持手部42は、円板部41の前方に、径方向に延びるようにして突出する。この持手部42を操作者がつまむことにより、弁機構部22を開閉することができる。
【0051】
ハンドル4の後面中央には、胴部2における弁機構部22の回動軸221にハンドル4を取り付けるための取付孔44を備える。この取付孔44はスプライン孔とされている。このスプライン孔の溝は9°毎に形成されている。一方、前記回動軸221におけるスプライン軸とされた部分の溝は18°毎に形成されている。つまり、スプライン孔の溝は一つおきに前記スプライン軸とされた部分に対して係合する。このように取付孔44が構成されたことにより、開度表示36(「開」「閉」の表示)とハンドル4とが外観上ずれないように、細かい角度範囲でハンドル4を取り付けることが可能である。このため、違和感なくハンドル4を取り付けることが容易にできることから施工性が良好である。本実施形態では、スプライン孔の溝の形成数と回動軸221におけるスプライン軸とされた部分の溝の形成数は2倍の関係にあるが、これに限定されず、整数倍の関係にあればよい。倍数を大きくするほどハンドル4を取り付ける角度範囲を細かく調整できる。
【0052】
また、前記取付孔44に連通して、回動軸221の前端面にねじ込まれるハンドル抜け止めビスS3を取り付けるための貫通孔45が形成されている。
【0053】
以上のように構成された壁内蔵給水栓Cの施工方法(作業者による壁Wへの取り付け方法)につき説明する。
【0054】
あらかじめ、胴部2の出口部23にはカプラーユニット8を組み込んだニップル部7を取り付けておく。出口部23とニップル部7との間にはOリング9を挿入する。そして、ボックス部1を角材Lに取り付ける。このボックス部1の取り付けは、一般的には、左右方向に延びる角材L1と上下方向に延びる角材L2とが交差する部分に、ボックス部1の上面部111と左面部113、右面部114のいずれかとが沿うようにしてなされる。次に、胴部2をボックス部1のスライドレール部15に差し込んでおく。この時点では、まだボックス部1に対して胴部2を固定しない。
【0055】
次に、給水配管Iを胴部2の入口部21に接続する。その後、角材Lにより壁内に形成されている空間に必要により断熱材が配置され、その上で角材Lの前方に石膏ボード等の壁板材Bを取り付ける。この壁板材Bには、少なくとも、化粧カバー3の凹部31を通すことのできる大きさの貫通孔を形成しておく。本実施形態では、ボックス部1に嵌合爪等によって化粧カバー3が直接固定されないことから、貫通孔をボックス部1の大きさに合わせて形成する必要がなく、現場で形成する貫通孔の大きさの精度もラフに設定できる。このため施工性が良い。次に、壁板材Bの前面に壁紙Pを貼り付け、前記壁板材Bの貫通孔に対応した孔を壁紙Pにも形成する。
【0056】
この後、胴部2のビス取付孔242に胴固定ビスS2をねじ込むことで、ボックス部1に胴部2を固定する。次に化粧カバー3を挟み込んだ状態で、カバー固定ナット6を胴部2の弁機構部22にねじ込むことで化粧カバー3を取り付ける。この際、化粧カバー3の外周突起34が壁紙Pに食い込むため、化粧カバー3の上下左右方向がずれないように注意しながら作業する。
【0057】
次に、ニップル部7にホースフック部5を取り付けるとともに、胴部2の回動軸221にハンドル4を取り付け、ハンドル抜け止めビスS3で固定する。以上で壁内蔵給水栓Cの施工は完了である。
【0058】
この壁内蔵給水栓Cを使用する際には、胴部2に取り付けられているカプラーユニット8に洗濯機の給水ホース等を接続し、ホースフック部5に給水ホース等の側のフックHを引掛ける。そして、通常は開度表示36のうち「開」の表示がハンドル4の開閉表示部43を通して視認できるまでハンドル4を回すことで、壁内蔵給水栓Cに接続された洗濯機等に給水できる。
【0059】
以上のように、本実施形態の壁内蔵給水栓Cは、現場での施工性が従来の壁内蔵給水栓よりも格段に向上しており、施工不良により引き起こされる水漏れ等の施工後トラブルの抑制が期待できる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0061】
例えば、ボックス部1を省略し、ボックス部1に代えて、例えばL字状に形成された金属製等のブラケットを用いて、胴部2を壁Wに固定することもできる。
【0062】
また、本実施形態の壁内蔵給水栓Cは、ハンドル4が上に、出口部23が下に配置されたレイアウトであるが、これとは逆に、ハンドル4が下に、出口部23が上に配置されたレイアウトや、ハンドル4と出口部23とが横に並ぶレイアウトとすることもできる。更には、本願出願人による特開2010−13864号に開示された構造のように、ハンドル4の中心に出口部23が貫通するレイアウトとすることもできる。
【0063】
また、胴部2の入口部21が給水用と給湯用の2箇所設けられ、胴部2を内部で湯水を混合するタイプのものとすることもできる。
【0064】
また、保持手段としては、本実施形態の、胴部2における弁機構部22に形成されたカバー固定ねじ部223とカバー固定ナット6との組み合わせに限定されない。他に、化粧カバー3の前方から当該化粧カバー3を貫通して後方へと差し込まれることで後方向きに押圧することのできる手段を用いることができる。例えば、ボルト、リベット、釘である。また他に、化粧カバー3の後方にて当該化粧カバー3を後方に引っ張ることの手段を用いることができる。例えば、弾性体、または、くさび部と係止部との組み合わせにより係止位置を保持できる手段(インシュロックタイ(登録商標)等)である。
【0065】
また、壁内蔵給水栓Cの接続対象は洗濯機に限られず、食器洗い機、湯沸かし器、浄水器、加湿器等、種々の機器とすることができる。
【0066】
また、前記壁内蔵給水栓用の化粧カバーはあくまでも実施の一例に過ぎず、他に、ライフライン接続部、または、ライフライン制御部に関する壁内蔵体の化粧カバーとして実施することができる。
【0067】
なお、前記「ライフライン」との用語は、一般的に用いられている概念にほぼ対応した意味を有しており、一例として電気、ガス、液体燃料、蒸気等の、エネルギー源となり得るものを通すための経路、または水、湯等の、建物における居住者等の生活または当該居住者等が行う事業に必要なものを通すための経路が挙げられる。また、前記「接続部」との用語には、前記「ライフライン」から各種物質または電気等を建物内に入れるための取入部と、前記「ライフライン」へと各種物質または電気を建物内から出すための送出部とを意味として含んでいる。また、前記「制御部」とは、前記「ライフライン」を通る各種物質または電気等の流通及び流通停止を行ったり、流通量調整を行ったりするための制御を行う部分であって、弁、スイッチ、ボリューム調整部が例示できる。
【0068】
更に、前記ライフライン接続部またはライフライン制御部に該当しないもの、例えば、テレビアンテナ端子、LAN端子、光ファイバー端子、マイク端子、スピーカー端子等の放送、通信、音響等に関する端子類や、温度、湿度、電流、電圧、電力量、流量、圧力等を表示する各種表示部や、医療機関における気体(酸素、麻酔ガス)の供給コンセント、また、消毒液や芳香剤の放出口や、エアシューターの投入口部に関する、壁内蔵体の化粧カバーとして実施することもできる。更には、単に壁の貫通孔を塞ぐためだけに用いられる化粧カバーとして実施することもできる。