(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶接工程において、前記第1平板、前記第2平板及び前記金属粉体に対して前記高エネルギービームを相対移動させて、前記高エネルギービームの相対移動方向に沿って前記流路壁を形成する、請求項1に記載の平板式熱交換器の製造方法。
前記溶接工程において、前記高エネルギービームを照射することにより、前記第1平板の一部、前記第2平板の一部及び前記金属粉体の一部に前記溶融物としての溶融池を形成すると共に、前記溶融池にキーホールを形成しながら、前記高エネルギービームを相対移動させる、請求項2に記載の平板式熱交換器の製造方法。
前記溶接工程において、前記高エネルギービームの焦点を、前記第1平板又は前記第2平板の外面から、前記金属粉体の内部までのいずれかの位置に設定した状態で、前記第1平板又は前記第2平板の外側から、前記第1平板、前記第2平板及び前記金属粉体へ向けて前記高エネルギービームを照射する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の平板式熱交換器の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る平板式熱交換器10と、平板式熱交換器10の製造方法について、
図1〜
図5を用いて説明する。
図1(A)の斜視図に示すように、平板式熱交換器10は、例えばステンレス鋼製の一対の平板12A、12Bを有し、平板12A、12Bは周囲の端部を閉じ、所定の間隔(距離H)を開けて対向配置されている。平板12A、12Bの内部には、流体18が通過する閉じられた空間Cが形成されている。
【0020】
空間Cには、平板12A、12Bの対向面同士をつなぐ流路壁14が複数形成されている。流路壁14は、空間Cを区画して、複数の流路16を形成している。流路16には、例えば熱交換媒体として、液状の流体18が矢印Qの方向へ流される。
平板12A又は12Bの長手方向(X方向)の一方の端部には、流体18の流入口34が設けられ、流入口34は空間Cの内部に設けられた分岐部20と連通されている。分岐部20には、流路壁14の一方の端部が配置されており、分岐部20と、流路壁14で仕切られた全ての流路16がつながっている。
これにより、流入口34から注入された流体18は、分岐部20へ流入した後、分岐部20から各流路16へ分岐され、各流路16を矢印Qで示す方向へ移動させられる。
【0021】
また、平板12A、12Bの長手方向の他方の端部には、流体18の流出口38が設けられている。流出口38は、空間Cの内部に形成された集合部36と連通されている。集合部36には、流路壁14の他方の端部が配置され、集合部36は、流路壁14で仕切られた全ての流路16につながっている。これにより、矢印Qで示す方向へ流路16を移動させられた流体18は、集合部36へ集められ、流出口38から排出される。なお、流出口38は平板12Aに設けているが、平板12Bに設けてもよい。
【0022】
流路壁14の製造方法は後述するが、流路壁14は、
図1(A)に示すように平板12A、12Bの長手方向に沿って、直線状に複数形成され、平板12A、12Bの短手方向(Y軸方向)に、所定の距離dを開けて並べられている。また、
図1(B)に示すように、流路壁14は平板12A、12Bと一体化されている。
これにより、流体18を、分岐部20から集合部36へ向けて、矢印Qの方向へ流すことができる。ここに、所定の距離dは、熱交換性能によって定まる値であり、均等間隔に限定されず、場所により異なる間隔としてもよい。
【0023】
また、
図2の正面図に示すように、流路壁14の長手方向の端部を、分岐部20及び集合部36の周囲で折り曲げても良い。具体的には、流入口34から流入した流体18を分岐する分岐部20において、流入口34から遠い位置にある流路壁14の端部を、流入口34の方向へ折り曲げ、分岐部20で流路16を狭める。同様に、流出口38から流体18を集めて流出させる集合部36において、流出口38から遠い位置にある流路16の端部を、流出口38の方向へ折り曲げ、集合部36で流路16を狭める。
これにより、各流路16における圧力損失の均等化が図れ、それぞれの流路16へ均等に流体18を流すことができる。
【0024】
平板式熱交換器10は、例えば、平板式熱交換器10の内部に第1の流体(例えば液体)18を流し、平板式熱交換器10の周囲に熱交換媒体として、空気等の第2の流体(例えば気体)19を流すことで、流体18と流体19の間で熱交換させることができる。
【0025】
また、
図3の斜視図に示すように、平板式熱交換器10を複数枚(図では3枚)、奥行き方向(Z方向)へ重ね、積層熱交換器11として使用することもできる。このときは、1つの平板式熱交換器10を流れた第1の流体18を、次の平板式熱交換器10に流し、更に、次の平板式熱交換器10へと順次流す。また、第2の流体19を、複数の平板式熱交換器10の周囲に流す。この構成とすることにより、交換熱量を大きくすることができる。
【0026】
次に、平板式熱交換器10の製造方法について説明する。
平板式熱交換器10は、流路壁14の製造方法に特徴がある。流路壁14の製造方法を中心に、
図4、
図5を用いて説明する。
流路壁14の製造に先立ち、先ず、一対の平板12A、12Bが所定の距離Hを開けて対向配置される。このとき、一対の平板12A、12Bは、周囲の端部が閉じられて、中央部に閉じた空間が形成されている。また、平板12Aの一方の端部には、開口部が設けられ、流体18を導入する流体の入口となる流入口34が取付けられる。また、平板12Aの他方の端部にも開口部が設けられ、流体18を排出する流出口38が取付けられる(
図1(A)参照)。なお、流入口34、流出口38の位置は例示であり、平板式熱交換器10の利用形態に応じて決定すればよい。
【0027】
次に、平板12A、12Bの間に形成された空間Cに、例えばステンレス鋼の金属粉体(金属粉末)32が充填される。金属粉体32の粒度は、一例として70〜250メッシュ(約50〜200μm)の粉体を使用する。金属粉体32は、例えば流入口34、又は流出口38を利用して必要量が注入される。金属粉体32の充填量は、少なくとも、後述する高エネルギービーム22が照射される部位においては、平板12A、12Bの間の空間が、金属粉体32で隙間なく満たされる量とされている。
【0028】
続いて、流路壁14を製造する。
図4(A)に示すように、流路壁14を製造する製造装置48は、高エネルギービーム22を出射する出射部24と、この出射部24から出射された高エネルギービーム22を対象物に向けて照射する照射部26と、平板12A、12Bを矢印M1で示す方向に移動させる駆動部28と、これらを制御する制御部30とを備えている。製造装置48は、市販されている装置でよい。なお、駆動部28は、照射部26を矢印M2の方向へ移動させる構成でもよいし、平板12A、12Bを矢印M1の方向へ移動させると共に、照射部26を矢印M2の方向へ移動させる構成でも良い。
【0029】
出射部24から出射される高エネルギービーム22は、一例として、レーザビームとしており、この場合、出射部24は、レーザ発振器である。この出射部24では、出射される高エネルギービーム22のエネルギーが調節可能となっている。照射部26は、レンズ等を含む光学系により構成されている。この照射部26では、レンズ等が移動されることにより、照射される高エネルギービーム22の焦点距離が調節可能となっている。
【0030】
ビーム照射装置から高エネルギービーム22を、流路壁14を形成しようとしている位置に照射することで、金属粉体32が溶融固化されて流路壁14が形成される。このとき、平板12A、12Bと流路壁14は、それぞれの接合部が溶融して一体化される。
【0031】
ここで、高エネルギービーム22により、金属粉体32が溶融固化される状態を、
図5(A)〜
図5(E)を用いてより具体的に説明する。
図5(A)に示すように、制御部30によって照射部26が制御され、照射部26内のレンズ等が移動されることにより、高エネルギービーム22の焦点距離が調節される。そして、高エネルギービーム22の焦点22Aが、平板12Aの内側の面12Sよりも金属粉体32側に設定される。この状態で、平板12Aの外側から、金属粉体32に向けて高エネルギービーム22が照射される。
【0032】
このように高エネルギービーム22が照射されると、平板12A、12Bの一部、及び金属粉体32の一部に溶融物としての溶融池44が形成される。高エネルギービーム22のパワー密度が高い場合、溶融池44の表面では金属の蒸発が生じ、金属の蒸気42が発生する。また、この蒸気42によって溶融池44の表面に反発力が発生し、溶融池44の中央部にくぼみが生じる。そして、このくぼみが深くなると、この溶融池44にキーホール46が形成される。このように溶融池44にキーホール46が形成されると、このキーホール46を通じて高エネルギービーム22が金属粉体32の深い位置まで届くようになる。
【0033】
そして、
図5(B)に示すように、溶融池44にキーホール46を形成しながら、平板12A、12B及び金属粉体32に対して高エネルギービーム22が相対移動される。この高エネルギービーム22の相対移動方向は、平板12A、12Bの平面と平行方向とされる。この平板12A、12B及び金属粉体32に対する高エネルギービーム22の相対移動は、制御部30によって駆動部28が作動され、駆動部28によって照射部26を移動させることで実現される。
【0034】
そして、高エネルギービーム22が相対移動されると、
図5(B)に示すように、この高エネルギービーム22の相対移動方向に沿って溶融池44が生成される。このとき、相対移動する高エネルギービーム22の照射位置Pでは溶融池44が形成されるが、溶融池44が広がる前に高エネルギービーム22が相対移動されるので、高エネルギービーム22の相対移動方向における照射位置Pよりも後側Rでは、溶融池44が冷却されて固化される。
【0035】
このように、本実施形態では、相対移動する高エネルギービーム22の照射位置Pでは溶融池44が形成されるが、高エネルギービーム22の相対移動方向における照射位置Pよりも後側Rでは、溶融池44が冷却されて固化されるように、高エネルギービーム22の相対移動速度が設定される。
【0036】
そして、
図5(C)に示すように、溶融池44が冷却されて固化されることにより、平板12A、12Bの間に流路壁14が形成される。この流路壁14は、平板12A、12Bの一部、及び金属粉体32の一部が溶融されて生成された溶融池44が固化されることで形成されたものであるので、平板12A、12Bに一体に形成される。また、上述のように高エネルギービーム22は、平板12Aの表面に平行に相対移動されるので、流路壁14は、平板12A、12Bの間に順次、連続して距離Hを塞いで形成される。
【0037】
なお、本実施形態では、
図5(C)に示されるように、平板12A、12Bの間に充填された金属粉体32のうちの一部のみが溶融され、溶融されなかった部分は残存する。この残存した金属粉体32は、溶融池44が冷却されて固化される際には、溶融池44に対して型の役割(溶融池44の形状保持及び放熱)を果たすようになる。このため、本実施形態では、溶融池44の形状(高エネルギービーム22の光軸方向を深さ方向とする形状)が維持された状態で、溶融池44が固化されて流路壁14が形成される。
【0038】
そして、
図4(A)に示すように、制御部30によって駆動部28が作動されて、照射部26が矢印M2の方向に移動される。その後、上記動作が繰り返されることにより、所定距離Hだけ離して配置された平板12A、12Bの間に、複数の流路壁14がそれぞれ形成される。
【0039】
その後、
図4(B)に示すように、平板12Aと平板12Bの間から、この平板12A、12Bの内側に残存する金属粉体32が外部に排出される。金属粉体32は、流動性を有しており、傾斜させることで、流入口34や流出口38から容易に排出することができる。必要ならば、圧縮空気を吹き付けても良いし、平板12A、12Bに、新たな開口部を設けて排出しても良い。
【0040】
上記工程を実行することにより、一方の平板12Aの内側壁と、他方の平板12Bの内側壁が流路壁14でつながれ、流体18の流路16が形成される。
【0041】
図5(D)には、以上の要領で製造された流路壁14及びその周辺部の側面断面図が示されており、
図5(E)には、この流路壁14及びその周辺部の正面断面図が示されている。なお、高エネルギービーム22の相対移動速度を変化させることで、流路壁14の厚さや深さが調節される。
【0042】
なお、高エネルギービーム22の照射位置は、例えば、平板12A側から平板12Bへ向けて照射しても良いし、平板12B側から平板12Aへ向けて照射しても良い。また、高エネルギービーム22の照射方向は、平板12A、12Bの表面と直交する方向のみでなく、表面に対して傾斜した方向から照射させても良い。これにより、流路壁を、平板12A、12Bの壁面に対して傾斜させることができる。
【0043】
次に、作用及び効果について、従来の平板式熱交換器と対比しながら説明する。
図10、
図11は、平板式熱交換器60を示している。平板式熱交換器60は、従来の平板式熱交換器の一例であり、凹凸面64を備えた伝熱板62を、凹凸面64の位置で複数枚重ね合わせ、伝熱板62と伝熱板62との間に流体を流し熱交換させる構成である。
【0044】
具体的には、
図10(A)の伝熱板62の平面図、
図10(B)の伝熱板62の断面図に示すように、伝熱板62は、平面視において角部が丸くされた正方形に形成され、中央の平板部が凹凸面64とされている。凹凸面64の周囲からは側縁部67が立ち上げられ、側縁部67には、更に上方へ傾斜して立ち上げられた外縁部66が形成されている。
ここに、凹凸面64には、プレス加工で一方向に連続したV字状の凹凸が形成されている。また、伝熱板62の中心から90度の間隔で離れた放射状位置には、2つの開孔69、70が形成されている。開孔70の周囲には、平板部から突縁72が立ち上がられ、突縁72の外径は、開孔69に隙間なく挿入可能な寸法とされている。
【0045】
図10(C)に示すように、伝熱板62は、90度ずつ回転させて複数枚が積層される(図では4枚)。このとき、凹凸面64は、V字状の凹凸が直交する方向に重ねられ、開孔69は、積層される伝熱板62の開孔70と重ねられ、積層される伝熱板62の突縁72が、開孔69に隙間なく挿入される。
これにより、直交する方向に重ねられた凹凸面64により、熱交換させる流体を流す流路が形成される。また、突縁72により、伝熱板62の一枚おきに流路が連結される。これにより、2種類の流体(第1流体、第2流体)を、交互(伝熱板62の一枚おきに)に流すことができる。
【0046】
図11(A)に伝熱板62を13枚積層した平板式熱交換器60を示す。平板式熱交換器60には、第1流体を流入させる第1入口73、排出させる第1出口109、及び第2流体を流入させる第2入口108、排出させる第2出口75が取付けられている。
ここに、
図11(B)に示すように、平板式熱交換器60は、必要枚数の伝熱板62を積層した状態で、伝熱板62の外縁部66と側縁部67が形成する溝部に、リング状のろう材78を置き、更に、積層された伝熱板62の凹凸面64の間には、シート状のろう材79を置いて、電気炉内で加熱して、重ね面をろう付けして一体化される。
これにより、上下に重ねられた凹凸面64に流路が形成され、第1流体と第2流体の間で熱交換させることができる。
【0047】
ここに、従来の伝熱板62は、V字状の凹凸を形成するためプレス加工で製造されていた。具体的には、
図12に示すように、平板状の伝熱板用プレス板材86を、凹凸面64の形状が彫り込まれたプレス用金型84(上金型84A、下金型84B)でプレス加工していた。
即ち、先ず、プレス用金型84に伝熱板用プレス板材86をセットして、上金型84Aを矢印DN方向へ移動させてプレス加工を開始する(
図12(A)参照)。
次に、上金型84Aが所定位置まで移動して、下金型84Bと重ねられたとき、伝熱板用プレス板材86に凹凸面64がプレス成形される(
図12(B)参照)。
最後に、上金型84Aを矢印UP方向へ移動させ、凹凸面64が形成された伝熱板用プレス板材86を取り出す。これにより、凹凸面64を備えた伝熱板62が形成される(
図12(C)参照)。
【0048】
しかしこの方法では、大きな伝熱板62を形成するには大きなプレス用金型が必要となる。プレス用金型84の大型化には物理的、経済的に限界がある。また、凹凸面64の形状の変更にも、プレス用金型84の変更が必要となっていた。更に、複数の伝熱板62を積層し、電気炉内でろう付けする作業が必要となり、作業性が制限されていた。
【0049】
これに対し、本実施形態では、
図4、
図5で説明したように、平板12A、12Bの外側から、高エネルギービーム22により流路壁14を形成するため、流路壁14の形成にはプレス加工を必要としない。この結果、大型の平板12A、12Bに流路壁14を形成する場合にも、高エネルギービーム22の制御において、例えば照射部26の移動範囲を拡大することで、流路壁14の形成に柔軟に対応可能となる。また、複雑な形状の流路製作や流路形状の変更にも、高エネルギービーム22の制御で柔軟に対応可能となる。
更に、本実施形態では、流路壁14の形成で流路16が完成するため、流路16を形成するためのろう付け作業が不要となり、製造コストの低減が期待できる。
【0050】
従来の平板式熱交換器の他の例として、EGRクーラー(排気再循環装置)50がある。EGRクーラー50の製造方法と対比しながら、本実施形態を説明する。
図13(A)の断面図、
図13(B)のフィン部の斜視図に示すように、EGRクーラー50は排ガス冷却に用いられ、外筒51の内部が熱交換部53とされている。熱交換部53は、両端部が仕切板56で塞がれ冷却水58を流す冷却水流路55を有し、冷却水流路55には、冷却水58の方向と交差する方向に冷却水流路55を貫通する通気管52が設けられている。
また、通気管52の内部には、小型のフィン54が形成されている。これにより、排ガス57を、フィン54が設けられた通気管52を通過させれば、通気管52を通過する際に、排ガス57が冷却水58で冷却される。
【0051】
EGRクーラー50は、小型化が要求されると共に、内部の圧力損失を抑え、かつ、熱交換能力の確保が要求されている。このため、例えば、熱交換部としてのフィン54は、狭い幅Wに加工された複雑な流路が採用されている。また、フィン54は、通気管52とろう付けで固定されている。プレス加工では小型化に限界があり、これ以上のフィン54の小型化は困難であった。また、通気管52内部でのろう付け作業に手間を要していた。
【0052】
本実施形態では、高エネルギービーム22の制御により、フィン54の小型化、複雑化に対応可能である。即ち、プレス用の金型を必要とせず、小型の熱交換部の製作にも柔軟に対応可能である。更に、通気管52とフィン54を一体に形成できるため、ろう付け作業が不要となり、製造コストの低減が期待できる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、流路壁14は、一対の平板12A、12Bが形成する空間に封入された金属粉体32に、製造装置48から、高エネルギービーム22を照射して形成されるため、プレス工程を必要としない。即ち、高エネルギービーム22を制御することで、平板式熱交換器10の大型化、及び小型化に対応できる。
更に、平板12A及び平板12Bと流路壁14を一体で形成するためにろう付け作業を必要とせず、製造コストを低減することができる。
【0054】
また、流路壁14は、金属粉体32を溶融固化させて形成されているため、表面には金属粉体32の粒子が、溶融池44に接触した部分のみ不完全に溶融し、一体として固化した状態で仕上げ加工されることなくそのまま残り、いわゆる粗面状となっている。このため、表面付近を流れる流体18の流れを乱し、熱交換効率を高めることができる。また、高エネルギービーム22の軌跡に沿って、流路壁14を容易に形成することができるため、高い自由度で、適切に流路16を形成することができる。
【0055】
また、本実施形態の平板式熱交換器10の製造方法は、溶接工程において、一対の平板12A、12B及び金属粉体32に対して高エネルギービーム22を相対移動させて、高エネルギービーム22の相対移動方向に沿って流路壁14を形成する。この平板式熱交換器10の製造方法によれば、平板12A、12B及び金属粉体32に対して高エネルギービーム22を相対移動させて、この高エネルギービーム22の相対移動方向に沿って流路壁14を形成するので、高エネルギービーム22の相対移動方向に、連続した流路壁14を形成することができる。
【0056】
また、本実施形態の平板式熱交換器10の製造方法は、溶接工程において、高エネルギービーム22を照射することにより、平板12Aの一部、平板12Bの一部及び金属粉体32の一部に溶融物としての溶融池44を形成すると共に、溶融池44にキーホール46を形成しながら、高エネルギービーム22を相対移動させる。この平板式熱交換器10の製造方法によれば、平板12Aの一部、平板12Bの一部及び金属粉体32の一部に形成された溶融池44に、キーホール46を形成しながら、高エネルギービーム22を相対移動させる。従って、キーホール46を通じて高エネルギービーム22を、深い位置まで届かせることができるので、平板12Aと平板12Bの間に流路壁14を形成することができる。
【0057】
次に、展開例について説明する。
本実施形態では、流路壁14の連続形成においては、一例として、一対の平板12A、12Bの位置を固定して、製造装置48の照射部26を移動させる方法について記載した。しかし、これに限定されることはなく、例えば、一対の平板12A、12Bが小さい場合には、照射部26を固定して、一対の平板12A、12Bを移動させても良い。また、照射部26と、一対の平板12A、12Bの両者を同時に移動させても良い。
【0058】
また、他の展開例として、出射部24は、レーザ発振器により構成され、高エネルギービーム22は、一例として、レーザビームとされていた。しかしながら、出射部24は、例えば、電子ビームやプラズマビームなどレーザ以外の高エネルギービームを出射する構成とされていても良い。そして、このレーザ以外の高エネルギービームを用いて流路壁14が形成されても良い。
【0059】
また、上記実施形態では、一対の平板12A、12Bの外側から照射する場合において、高エネルギービーム22の焦点22Aは、一対の平板12A、12Bの対向する面よりも金属粉体32側に設定されていた。しかし、これに限定されることはなく、例えば、一対の平板12A、12Bの一部、及び金属粉体32の一部を溶融させることができるのであれば、高エネルギービーム22の焦点22Aは、一対の平板12A、12Bの外面から金属粉体32の内部までのいずれかの位置に設定しても良い。
【0060】
この平板式熱交換器10の製造方法によれば、高エネルギービーム22の焦点22Aを、一対の平板12A、12Bの外面から金属粉体32の内部までのいずれかの位置に設定するので、一対の平板12A、12Bの一部、及び金属粉体32の一部を効果的に溶融させて、溶融物を生成することができる。
【0061】
また、このように高エネルギービーム22の焦点22Aが、一対の平板12A、12Bの外面から金属粉体32の内部までのいずれかの位置に設定された場合に、一対の平板12A、12Bの一部、及び金属粉体32の一部に溶融池44が形成されると共に、この溶融池44にキーホール46が形成されても良い。
【0062】
また、本実施形態では、一対の平板12A、12Bの材質、及び金属粉体32は、いずれもステンレス鋼を例にとり説明した。しかし、これに限定されることはなく、例えば、チタン、チタン合金等の他の金属でもよい。
また、本実施形態では、平板式熱交換器10の内部を流れる第1の流体18は液体を、平板式熱交換器10の外側を流れる第2の流体19は気体を例にとり説明した。しかし、これに限定されることはなく、第1の流体18として気体を、第2の流体19として液体を採用して良い。また、第1の流体18と第2の流体19のいずれも液体を採用しも良いし、第1の流体18と第2の流体19のいずれも気体を採用しても良い。
【0063】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る平板式熱交換器80について、
図6を用いて説明する。
図6(A)の斜視図、
図6(B)の部分断面図に示すように、平板式熱交換器80は、一対の平板12A、12Bの間の外周部が、全周囲に渡り外周壁82と接合されている点において、第1実施形態における平板式熱交換器10と相違する。相違点を中心に説明する。
【0064】
外周壁82は、第1実施形態で説明した高エネルギービーム22で、金属粉体32を溶融固化して形成されている。このとき、外周壁82の位置に金属粉体32を充填するため、平板12A、12Bの全周囲を予め型枠で囲み、金属粉体32が平板12A、12Bの外側へこぼれ落ちないようにした後、外周壁82の形成部に金属粉体32を充填すれば良い。型枠は、高エネルギービーム22で金属粉体32を溶融固化した後、取り外す。
これにより、平板12A、12Bの全周囲をプレス加工しなくても、平板式熱交換器80を形成することができる。他の構成及び流路壁14の製造方法は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0065】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る平板式熱交換器74について、
図7を用いて説明する。
平板式熱交換器74は、流路壁76が、平板12A、12Bの長手方向(X方向)に延びると共にジグザグ状に折り曲げられている点において、第1実施形態における平板式熱交換器10と相違する。相違点を中心に説明する。
【0066】
図7(A)の斜視図、
図7(B)の部分断面図に示すように、平板式熱交換器74は複数の流路壁76を有し、流路壁76の全てが、平板12A、12Bの長手方向に延びると共に、ジグザグ状に折り曲げられて形成されている。ここに、流路壁76は、第1実施形態で説明したように、金属粉体32を高エネルギービーム22で溶融固化して形成されている。
【0067】
本実施形態によれば、流体18を、流路壁76に沿ってジグザグ状に方向を変化させながら、矢印Qの方向へ流すことができる。これにより、流体18の流れを乱し、熱交換効率を高くすることができる。なお、ジグザグ状に折り曲げる形状は、直線のみの組み合わせでも良いし、直線と曲線の組み合わせでも良い。直線と曲線を組み合わせることにより、流体18をスムーズに流すことができる。
【0068】
また、流路壁76の形成にプレス加工、及び、ろう付け作業を必要とせず、高エネルギービーム22の制御で、流路壁76を一対の平板12A、12Bの間に形成することができる。この結果、流路壁76の加工が容易となり、安価に平板式熱交換器74を形成できる。他の構成及び流路壁76の製造方法は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0069】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係る平板式熱交換器90について、
図8を用いて説明する。
平板式熱交換器90は、3枚の平板12A、12B、12Cを用いて、2つの熱交換部98、99を形成した構成である。第1実施形態で説明した平板式熱交換器10との相違点を中心に説明する。
【0070】
図8(A)の斜視図、
図8(B)の断面図に示すように、平板式熱交換器90は、一対の平板12A、12Bの間に流路16を形成した第1熱交換部98を有している。これは、第1実施形態で説明した平板式熱交換器10と同じ構成である。また、平板式熱交換器90は、平板12Bを共有して、一対の平板12B、12Cの間に流路16を形成した第2熱交換部99を有している。これも、第1実施形態で説明した平板式熱交換器10と同じ構成である。
【0071】
第1熱交換部98の平板12Aには、第1流体95用の流入口34と、流出口38が設けられ、流入口34から流入された第1流体95は、平板12A、12Bの間の流路16を通り流出口38から流出される。一方、第2熱交換部99の平板12Cには、第2流体96用の流入口92と、流出口93が設けられ、流入口92から流入された第2流体96は、平板12B、12Cの間の流路16を通り流出口93から流出される。これにより、第1熱交換部98と第2熱交換部99の間で、熱交換させることができる。
【0072】
ここに、流路壁14の形状は、第1実施形態と第2実施形態で説明したように直線状でもよいし、第3実施形態で説明したように、長手方向に延びると共にジグザグ状に折り曲げられてもよい。また、第1流体95と第2流体96は、両者が液体であっても良いし、両者が気体であっても良いし、いずれか一方が液体で他方が気体であってもよい。
他の構成及び流路壁14の製造方法は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0073】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態に係る平板式熱交換器100について、
図9を用いて説明する。
平板式熱交換器100は、第4実施形態で説明した平板式熱交換器90を、厚さ方向(Z方向)へ2段に重ねた構成である。平板式熱交換器90との相違点を中心に説明する。
【0074】
図9(A)の斜視図、
図9(B)の断面図に示すように、平板式熱交換器100は、第1熱交換器110と第2熱交換器112を、厚さ方向に積層した構成である。
ここに、第1熱交換器110と第2熱交換器112は、流路壁14等の基本的な内部構造は、第4実施形態で説明した平板式熱交換器90と同じであり、説明は省略する。
【0075】
第1熱交換器110の平板12Aには、第1流体95用の流入口102と流出口103が設けられている。流入口102は、第1熱交換器110及び第2熱交換器112の分岐部20と連結されており、流出口103は、第1熱交換器110及び第2熱交換器112の集合部36と連結されている。
更に、第1熱交換器110の平板12Aには、第2流体96用の流入口104と流出口105が設けられている。流入口104は、第1熱交換器110及び第2熱交換器112の分岐部20と連結されており、流出口105は、第1熱交換器110及び第2熱交換器112の集合部36と連結されている。
【0076】
これにより、流入口102から流入された第1流体95は、第1熱交換器110の流路16を通り流出口103から流出される流れと、第2熱交換器112の流路16を通り流出口103から流出される流れを形成する。一方、流入口104から流入された第2流体96は、第1熱交換器110の流路16を通り流出口103から流出される流れと、第2熱交換器112の流路16を通り流出口105から流出される流れを形成する。
これにより、第1熱交換器110と第2熱交換器112において、それぞれ第1流体95と第2流体96の間で熱交換させることができる。
【0077】
また、本実施形態では、第1熱交換器110及び第2熱交換器112のそれぞれの流路壁14が直線状の場合について説明した。しかし、これに限定されることはなく、流路壁14の一部又は全部が、長手方向に延びると共にジグザグ状に折り曲げられた形状であっても良い。
【0078】
また、第1流体と第2流体は、両者が液体であっても良いし、両者が気体であっても良い。更に、いずれか一方が液体で他方が気体であってもよい。
他の構成及び流路壁14の製造方法は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。