特許第5961600号(P5961600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961600
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】金属製オープンペール缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 21/02 20060101AFI20160719BHJP
   B65D 8/04 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B65D21/02 410
   B65D8/04 E
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-257462(P2013-257462)
(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公開番号】特開2015-113155(P2015-113155A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】399031643
【氏名又は名称】株式会社長尾製缶所
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100069578
【弁理士】
【氏名又は名称】藤川 忠司
(72)【発明者】
【氏名】長尾 浩志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昇
【審査官】 山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−525919(JP,A)
【文献】 特開2011−148520(JP,A)
【文献】 実開平07−028035(JP,U)
【文献】 実公昭39−036492(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶本体の外周面上部の径方向両側に帽子形の把手取付金具がその開放側の周縁部で溶接固着され、蔓形把手の両端のフック部が各々把手取付金具の頂面に設けた差込み穴に挿嵌係止された金属製オープンペール缶であって、
缶本体は、上端の開口周縁が外側へ巻き込むカール部を形成し、少なくとも前記把手取付金具の固着位置よりも下位側が下方へ縮径すると共に、その下位側には周方向に沿って外側へ膨出する環状ビード部を有さず、
該把手取付金具の下端部と缶本体の外周面との間に隙間が構成され、
緩衝カバー部に係止突片を一体形成した合成樹脂又は合成ゴム成形物からなる緩衝部材が、その係止突片を前記隙間から把手取付金具の内側へ挿嵌することにより、緩衝カバー部が該把手取付金具の下面側を覆うように係着されてなる金属製オープンペール缶。
【請求項2】
缶本体は、前記把手取付金具の固着位置よりも上位側に、周方向に沿って外側へ膨出する環状ビード部を有してなる請求項1に記載の金属製オープンペール缶。
【請求項3】
前記緩衝部材は、緩衝カバー部が湾曲した帯板状をなし、前記係止突片が該緩衝カバー部の片側側縁の中央部より湾曲凹側へ立ち上げ形成されてなる請求項1又は2に記載の金属製オープンペール缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料油、潤滑油、塗料、インキ、溶剤、接着剤、食用油等の液状製品の天蓋付き容器として汎用される金属製オープンペール缶、特に所謂T型として缶本体が下方へ縮径した該オープンペール缶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブリキ、ティンフリースチール、ステンレス鋼等の金属製のオープンペール缶として、図8(a)に示すようなラグタイプのオープンペール缶P11と、図8(b)に示すようなバンドタイプのオープンペール缶P12が汎用されている。前者のラグタイプでは缶蓋2Aが周縁に設けた多数のラグ21によって缶本体1の開口縁部に加締めて固定されるのに対し、後者のバンドタイプでは缶蓋2Bが断面コ字形の緊締バンド5による締め付けで缶本体1の開口縁部に固定されるという違いはあるが、缶本体1は両タイプで略共通した形態であって、上部に蔓形把手3が取り付けられている。なお、ラグタイプの缶蓋2Aには図示の如く注出口22を設けるのが普通である。
【0003】
一般的に、上記両タイプの缶本体1は、金属板を円筒状に曲げ加工して端部同士をシーム溶接して得られる胴部11の下端に、円板状の地板12を巻締め固着したものであり、その開口周縁が外側へ巻き込むカール部〔図9(b)の符号13〕をなすと共に、該胴部11の上部側には周方向に沿って外側へ膨出する上下2本の環状ビード部11a,11bが形成されている。そして、上側の環状ビード部11aのやや下位の径方向両側に、イヤー(耳)と称される帽子形の把手取付金具4がスポット溶接等で固着されている。蔓形把手3は、略半円弧状に湾曲した針金材31の両端フック部31aを各々把手取付金具4内に挿嵌することで、該缶本体1に対して上下回動自在に取り付けられており、その中間部には木製やプラスチック製の円筒状の握り32が嵌装されている(特許文献1)。
【0004】
一方、このようなオープンペール缶には、T型(テーパペール型)として図示の如く缶本体1の胴部11が下方へ縮径したものと、S型(ストレートペール型)として該胴部11が上下に径変化しないものとがある。そして、前者のT型のオープンペール缶では、空状態での搬送や保管に際し、缶本体1と缶蓋2A,2Bを別にして各々積み重ねることにより、全体の嵩を減らしてスペース効率を高め得るという利点がある。その缶本体1同士は、図9(a)(b)に示すように、胴部11が下方へ縮径していることを利用して入れ子式に積み重ねるが、その積重ね状態で上位側の缶本体1における下側の環状ビード部11bが下位側の缶本体1における開口周縁のカール部13上に載る形になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−148520号公報(図5図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、従来のT型のオープンペール缶P11,P12では、缶本体1同士を図9(a)の如く入れ子式に積み重ねても、かなりの嵩高になるため、特にトラック等で搬送する場合に缶数当りの輸送費を抑える上で、積重ね状態の嵩をより低くすることが望まれる。そこで、従来のT型のオープンペール缶P11,P12における缶本体1の下側ビード11bを省いた形態の改良オープンペール缶P13とし、その缶本体1同士を入れ子式に積み重ねれば、図10(a)(b)に示すように、上位側の缶本体1における両側の把手取付金具4が下位側の缶本体1における開口周縁のカール部13上に載る形になり、それだけ積重ね高さを減じることになる。この場合、例えば図9(a)に示す従来品の8缶分に略相当する積重ね高さで、改良品では図10(a)に示すように12缶を積み重ねることができ、同じ高さスペースでの積重ね缶数が約5割増しになるから、従来に比して缶数当りの輸送費を大幅に低減でき、また保管時のスペース効率も格段に向上する。
【0007】
ところが、上記改良品の改良オープンペール缶P13では、缶本体1同士を入れ子式に積み重ねると、缶重量が上位側から順次に両側の把手取付金具4を介して下位の缶本体1のカール部13に負荷するため、その負荷重量が増す下位の缶本体1ほど、カール部13における把手取付金具4の接当位置に凹み変形を生じ易くなる。また、その積重ね作業時にも、下位の缶本体1のカール部13に上位の缶本体1の把手取付金具4が衝当することで、該カール部13に凹みや傷が発生する懸念がある。そして、このようなカール部13に凹みや傷のある缶本体1を用いると、液状製品を収容して缶蓋2A,2B(図8参照)を取り付けても封止が不完全になり、搬送等の取扱い中に液漏れを生じることになる。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みて、空状態で缶本体同士を入れ子式に積重ね可能なT型の金属製オープンペール缶として、従来品に比して積重ね状態の嵩を大幅に低減できる上、その積重ね荷重及び積重ね時の衝当による凹みや傷の発生を未然に防止し得るものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明は、缶本体1の外周面上部の径方向両側に帽子形の把手取付金具4がその開放側の周縁部で溶接固着され、蔓形把手3の両端のフック部31aが各々把手取付金具4の頂面に設けた差込み穴41に挿嵌係止された金属製オープンペール缶P1,P2であって、缶本体1は、上端の開口周縁が外側へ巻き込むカール部13を形成し、少なくとも把手取付金具4の固着位置よりも下位側が下方へ縮径すると共に、その下位側には周方向に沿って外側へ膨出する環状ビード部を有さず、該把手取付金具4の下端部と缶本体1の外周面との間に隙間tが構成され、緩衝カバー部51に係止突片52,53を一体形成した合成樹脂又は合成ゴム成形物からなる緩衝部材5が、その係止突片52,53を隙間tから把手取付金具4の内側へ挿嵌することにより、緩衝カバー部51が該把手取付金具4の下面側を覆うように係着されてなるものとしている。
【0010】
請求項2の発明は、上記請求項1の金属製オープンペール缶P1,P2において、缶本体1は、把手取付金具4の固着位置よりも上位側に、周方向に沿って外側へ膨出する環状ビード部11aを有してなるものとしている。
【0011】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の金属製オープンペール缶において、緩衝部材5は、緩衝カバー部51が湾曲した帯板状をなし、係止突片52,53が該緩衝カバー部51の片側側縁の中央部より湾曲凹側へ立ち上げ形成されてなるものとしている。
【発明の効果】
【0012】
次に本発明の効果を図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明に係る金属製オープンペール缶P1,P2では、空状態で缶本体1同士を入れ子式に積み重ねた際、缶重量が上位側から順次に両側の把手取付金具4を介して下位の缶本体1のカール部13に負荷するが、各把手取付金具4の下面側とカール部13との間に緩衝部材5の緩衝カバー部51が介在するから、該カール部13の凹み変形が防止されると共に、その積重ね作業時にも把手取付金具4が下位の缶本体1のカール部13に直接に衝当することによる凹みや傷の発生を未然に防止できる。
【0013】
請求項2の発明によれば、缶本体1は、把手取付金具4の固着位置よりも上位側に環状ビード部11aを有するから、その補強作用で管体としての強度が向上する。この環状ビード部11aは、上端のカール部13と把手取付金具4との間に位置するから、缶本体1同士の入れ子式の積重ね状態で他と接触せずに外側へ露呈することになる。
【0014】
請求項3の発明によれば、緩衝部材5は、湾曲した帯板状の緩衝カバー部51に、その片側側縁の中央部より係止突片52,53が湾曲凹側へ立ち上げ形成されているから、該係止突片52,53を把手取付金具4の下端部と缶本体1の外周面との隙間tに挿嵌するだけで容易に装着できると共に、緩衝カバー部51が把手取付金具4の下面側に沿って配置するから、積重ね作業時に下位の缶本体1の内側へ上位の缶本体を多少傾いた姿勢で落とし込んでも、把手取付金具4が直接に下位の缶本体1のカール部13に衝当する懸念はなく、該カール部13の凹みや傷の発生をより確実に防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る金属製オープンペール缶を例示し、(a)は18L型オープンペール缶の側面図、(b)は12L型オープンペール缶の側面図である。
図2】同オープンペール缶に用いる把手取付金具を示し、(a)は正面図、(b)は(a)におけるX−X線の断面図である。
図3】同オープンペール缶に用いる緩衝部材の斜視図である。
図4】同緩衝部材を把手取付金具に装着した状態を示し、(a)は正面図、(b)は(a)縦断側面図である。
図5】同オープンペール缶の缶本体同士を入れ子式に積み重ねた状態を示す要部の縦断側面図である。
図6】同オープンペール缶に用いる緩衝部材の他の形態を示す正面図である。
図7】同他の形態の緩衝部材を把手取付金具に装着した状態を示す正面図である。
図8】従来の金属製オープンペール缶を例示し、(a)はラグタイプの斜視図、(b)はバンドタイプの斜視図である。
図9】同従来の金属製オープンペール缶の缶本体同士を入れ子式に積み重ねた状態を示し、(a)は側面図、(b)は要部の縦断側面図である。
図10】改良型の金属製オープンペール缶の缶本体同士を入れ子式に積み重ねた状態を示し、(a)は側面図、(b)は要部の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る金属製オープンペール缶の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、実施形態において、既述した従来品及び改良品のオープンペール缶と共通する部分には、形状及びサイズの違いがあっても同一符号を付している。
【0017】
図1(a)は本発明に係る25L型オープンペール缶P1の、図1(b)は同12L型オープンペール缶P2の、それぞれ缶本体1を示す。これらの缶本体1は、従来品と同様にブリキ、ティンフリースチール、ステンレス鋼等の金属板を円筒状に曲げ加工して端部同士をシーム溶接し、得られる胴部11の下端に円板状の地板12を巻締め固着したものである。そして、該缶本体1の開口周縁は外側へ巻き込むカール部13をなし、胴部11の上部側の径方向両側位置には、蔓形把手3を取り付けるための帽子形の把手取付金具4がスポット溶接等で固着され、これら把手取付金具4の固着位置よりも上位に、周方向に沿って外側へ膨出する1本の環状ビード部11aが形成されているが、従来品とは異なって同固着位置よりも下位側には同様な環状ビード部を有さず、また各把手取付金具4の下面側には合成樹脂又は合成ゴム成形物からなる緩衝部材5が装着される。なお、該缶本体1は、既述のT型(テーパペール型)として、胴部11の環状ビード部11aよりも下位側が下方へ縮径している。
【0018】
把手取付金具4は、図2(a)(b)に示すように、略円形のカップ部4aの開放縁より左右外側へ張出する溶接用鍔部4bを有し、カップ部4aの中央に円形の差込み穴41を備えると共に、各溶接用鍔部4bの上下二箇所に皺寄り状のスポット溶接部42,42を設けている。また、カップ部4aの開放縁の上下両側は、缶本体1の胴部11の円周面に沿うように凹円弧状をなすが、更に曲率の大きい中央の凹円弧部43により、図2(b)の仮想線で示す胴部11の外周面との間に略三日月状の隙間tが構成されている。
【0019】
緩衝部材5は、図3に示すように、湾曲した帯板状の緩衝カバー部51と、その片側側縁の中央部より湾曲凹側へ立ち上げ形成された係止突片52とからなる。その係止突片52は、先端側が三角状に尖った形になっており、把手取付金具4の下側で缶本体1の胴部11との間に構成される隙間tに対して、三角状の先端側を除いた幅及び厚みが僅かに入り込めないサイズに設定されている。そして、この緩衝部材5は、図1(a)(b)の矢印で示すように、その合成樹脂又はゴム材料の弾力性を利用して、係止突片52を該隙間tから把手取付金具4の内側へ強制挿嵌することにより、図4(a)(b)に示すように、緩衝カバー部51が把手取付金具4のカップ部4aの下面側を覆うように係着される。なお、緩衝部材5の緩衝カバー部51の厚みは、0.5〜3mm程度に設定される。
【0020】
蔓形把手3は、従来品と同様に、略半円弧状に湾曲した針金材31の中間部に、木製やプラスチック製の円筒状の握り32が嵌装されており、図4(a)(b)に示すように、針金材31の両端のフック部31a,31aを各々把手取付金具4の差込み穴41に挿嵌することで、該缶本体1に対して上下回動自在に取り付けられている。また、図示を省略しているが、これらオープンペール缶P1,P2の缶本体1に対しては、ラグタイプやバンドタイプとして従来同様の缶蓋(図8で示す符号2A,2B)が嵌着される。
【0021】
上記構成のオープンペール缶P1,P2では、空状態での搬送や保管に際し、缶本体1と缶蓋を別にして積み重ねるが、缶本体1はT型(テーパペール型)として胴部11が下方へ縮径しているので上下に入れ子式に積み重ねることになる。そして、この缶本体1同士の入れ子式の積み重ねでは、既述の改良品として例示したように、該缶本体1における把手取付金具4の固着位置よりも下位側には外側へ膨出する環状ビード部がないため、上位側の缶本体1の両側の把手取付金具4が下位側の缶本体1のカール部13上に載る形になり、缶重量が上位側から順次に両側の把手取付金具4を介して下位の缶本体1のカール部13に負荷する。しかるに、図5に示すように、上位側の缶本体1の両側把手取付金具4,4と下位側の缶本体1のカール部13との間には、それぞれ緩衝部材5の帯板状の緩衝カバー部51が介在するから、該カール部13の凹み変形が防止されると共に、その積重ね作業時にも各把手取付金具4が下位の缶本体1のカール部13に直接に衝当しないから、その衝当に起因した該カール部13の凹みや傷の発生が未然に防止される。
【0022】
また、図6に示す缶本体1同士の積重ね状態では、既述した改良品のオープンペール缶P13の図10(b)に示す缶本体1同士の積重ね状態に比較し、緩衝部材5の緩衝カバー部51の厚み分だけ積重ね高さが増すが、該緩衝カバー部51の厚みは0.5〜3mm程度と薄いから、例えば20缶の積み重ねでも改良品の積重ね状態に対して僅か数cm高くなるだけで大差ない。従って、これらオープンペール缶P1,P2の缶本体1でも、例えば図9に示す従来品の積み重ね状態に対し、同じ高さスペースでの積重ね缶数が約5割増しになり、もって従来に比して缶数当りの輸送費を大幅に低減でき、また保管時のスペース効率も格段に向上する。
【0023】
本発明で用いる緩衝部材5としては、緩衝カバー部51及び係止突片52の形状が種々異なるものを採用でき、例えば緩衝カバー部51が把手取付金具4の下面側一部を覆うような短い平板状であっても差し支えない。しかるに、図3に例示した緩衝部材5のように、湾曲した帯板状の緩衝カバー部51の片側側縁の中央部より係止突片52が湾曲凹側へ立ち上がる形態では、該係止突片52を前記隙間tに挿嵌するだけで容易に装着できると共に、緩衝カバー部51が把手取付金具4のカップ部4aの下面側に沿って配置するから、積重ね作業時に下位の缶本体1の内側に、上位の缶本体を多少傾いた姿勢で落とし込んでも、把手取付金具4が直接に下位の缶本体1のカール部13に衝当する懸念はなく、該カール部13の凹みや傷の発生をより確実に防止できるという利点がある。
【0024】
なお、緩衝部材5自体は極めて軽量であるため、図3に例示した形態の係止突片52を前記隙間tに強制挿嵌することで、その挿嵌部での摩擦力によって把手取付金具4から抜落しないように自己保持される。しかるに、より確実な抜落防止を図る上で、係止突片が二股状をなす形態としてもよい。例えば、図6に例示した緩衝部材5では、湾曲した帯板状の緩衝カバー部51の片側側縁の中央部より、二股状の係止突片53,53が湾曲凹側へ先側を開いた形で立ち上げ形成されており、そのままでは両係止突片53,53は開き幅が大きいために前記隙間tに挿嵌できないが、図示仮想線のように緩衝カバー部51の湾曲を強めて両係止突片53,53が閉じるように変形させることで、両係止突片53,53の先側幅が狭まって前記隙間tに挿嵌可能となるように寸法設定されており、その挿嵌後に手放すことにより、図7に示すように両係止突片53,53が材料弾性によって開いた状態に復元し、もって該隙間tから抜落不能となる。
【0025】
また、実施形態として例示したオープンペール缶P1,P2のように、缶本体1における把手取付金具4の固着位置よりも上位側に環状ビード部11aを有する構成とすれば、該環状ビード部11aによる補強作用で管体としての強度が向上するという利点がある。また、実施形態では、缶本体1の胴部11が環状ビード部11aより下側で下方へ縮径しているが、少なくとも把手取付金具4の固着位置よりも下位側が縮径しておればよく、カール部13以下の胴部11全体が下方へ縮径する形態でもよい。なお、環状ビード部11aは、上端のカール部13と把手取付金具4との間に位置するから、缶本体1同士の入れ子式の積重ね状態で他と接触せずに外側へ露呈することになる。
【0026】
その他、本発明においては、金属製オープンペール缶の容量、蔓形把手3のフック部31aの曲げ形状、把手取付金具4のカップ部4a及び溶接用鍔部4bの形状と溶接位置、隙間tの形状、カール部13と把手取付金具4との間隔等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 缶本体
11 胴部
11a 環状ビード部
13 カール部
3 蔓形把手
31a フック部
4 把手取付金具
41 差込み穴
5 緩衝部材
51 緩衝カバー部
52,53 係止突片
P1,P2 金属製オープンペール缶
t 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10