特許第5961602号(P5961602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961602
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】植栽容器
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   A01G9/02 103G
   A01G9/02 103U
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-266863(P2013-266863)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-119693(P2015-119693A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2013年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】593178409
【氏名又は名称】株式会社オーティス
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】岩田 充智
【審査官】 本村 眞也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−192566(JP,U)
【文献】 特開2005−263313(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3118473(JP,U)
【文献】 特開平10−035643(JP,A)
【文献】 特開昭54−066226(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3008632(JP,U)
【文献】 特開2002−000082(JP,A)
【文献】 特開平07−222528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00−9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形状の中央部を角形輪状の外周部で囲んで平板状に形成された植栽容器用シートを折り曲げにより角形パン状に形成した植栽容器であって、
底面側より上方に向かう平面視L字状のスリットが形成されたL字状のクリップを備えており、
前記中央部は硬質板よりなり、
前記中央部と前記外周部との間の折目部および前記外周部の側辺部、隅部のすべてよりなる折目部は軟質材で形成されており、
前記外周部は、前記中央部と前記外周部との間の折目部に沿って折り曲げ起立され、前記隅部における折目部に沿って折りたたまれ、折りたたまれて起立した隅部が前記クリップの前記スリットに差し込まれるようにして前記クリップで保形されたことを特徴とする植栽容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽容器用シートにより形成された植栽容器に関する。
【背景技術】
【0002】
屋上緑化システムや研究機関の植物工場などでは、たとえば発泡スチロールなどで製した角形(矩形)パン状の植栽容器が用いられている(たとえば、特許文献1、2参照)。角形(矩形)パン状に形成されているため、植栽容器に植栽した後の運搬がたやすくできる。そのため、追加設置や設置場所の変更が簡単にできる。屋上緑化システムなど広い面積で利用する場合には、特に利便性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−176850号公報 図1
【特許文献2】特開2012−44983号公報 図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、たとえば工場出荷後の搬送において未使用の植栽容器を運搬する場合や、多数の未使用の植栽容器を保管する場合、容器の形状からして、かさばらないように積み重ねることはできない。このように、この種の植栽容器は、未使用のものを大量に運搬、保管するのには不便であった。
【0005】
なお、特許文献2には、シート状のものを組み立てて使用できるようにした植栽容器が開示されているが、製造コストがかかるし、組立てが面倒でもあり、問題点がある。また、側壁部間の角部には隙間ができるおそれがあり、水耕栽培には不向きでもある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、大量の植栽容器をシートの状態で効率的に運搬、保管できる植栽容器用シートにより組み立てられた植栽容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の植栽容器は、角形状の中央部を角形輪状の外周部で囲んで平板状に形成された植栽容器用シートを折り曲げにより角形パン状に形成した植栽容器であって、底面側より上方に向かう平面視L字状のスリットが形成されたL字状のクリップを備えており、中央部は硬質板よりなり、中央部と外周部との間の折目部および外周部の側辺部、隅部のすべてよりなる折目部は軟質材で形成されており、外周部は、中央部と外周部との間の折目部に沿って折り曲げ起立され、隅部における折目部に沿って折りたたまれ、折りたたまれて起立した隅部がクリップのスリットに差し込まれるようにしてクリップで保形されたことを特徴とする。
【0008】
(削除)
【0009】
(削除)
【発明の効果】
【0010】
本発明の植栽容器によれば、植栽容器用シートの中央部に硬質板が使用されているため、組み立てられた植栽容器の底部が安定する。そのため、植栽容器に植栽した後に台車などで移動する場合でも、内部の土や水がこぼれるおそれがない。
【0011】
また、植栽容器を形成するための植栽容器用シートは、上述した構成となっているため、取り扱いがしやすく、大量の植栽容器をシートの状態で効率的に運搬、保管することができ、かつ簡単に容器形状に組み立てることができる。
【0012】
また、屋上緑化システムや研究機関の植物工場などで植栽容器を大量に必要とする場合でも、組立てが簡単にできるため、植栽容器として利用するまでの間はシートの状態で保管しておけばよく、積み重ねてもかさばらないので、保管スペースも小さくて済む。
【0013】
また、植栽容器用シートは、硬軟同時成形にて形成されるようにすれば、簡易な設備で大量に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態(参考例)に係る、植栽容器を形成するための植栽容器用シートの平面図である。
図2】(a)は、植栽容器用シートを用いて形成した植栽容器の形成例を示した斜視図である。(b)は植栽容器を保形するためのクリップの他の例を示す斜視図、(c)はさらに他の例を示す展開図である。
図3】(a)、(b)は本発明の第2の実施形態に係る、植栽容器を形成するための植栽容器用シートの平面図である。(a)、(b)には植栽容器用シートの異なる使用態様の2例を示した。(c)は本発明の第3の実施形態に係る、植栽容器を形成するための植栽容器用シートの部分拡大平面図である。
図4】(a)は植栽容器の植栽例を示す縦断面図である。(b)は植栽容器の利用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0016】
以下に示す種々の実施形態に係る、植栽容器を形成するための植栽容器用シート10(以下、たんにシート10という)は、角形状の中央部11を角形輪状の外周部12で囲んで全体が矩形の平板状に形成され、折目16での折り曲げにより、図2(a)に示すような角形パン状の植栽容器20を形成可能とした植栽容器用シート10である(図1および図3(a)〜(c)参照)。
【0017】
以下の複数の実施形態では、矩形状のシート10、それによって形成される矩形パン状の植栽容器20を例示したが、他の角形状のものであってもよい。たとえば、三角形、ひし形、台形などの角形状のものにも適用可能である。
【0018】
中央部11は硬質板よりなる。その中央部11と、その周囲の口の字状の外周部12との間の折目部15A、15および外周部12のうちの隅部14における折目部15B、15は軟質材よりなる(以上、図1および図3(a)〜(c)参照)。
【0019】
なお、折目部15A、15B、15は植栽容器20を形成する際の折目16を含むその周辺部位のことをいう。この折目16はシート10においては仮想的なものであり、各図では破線で示した。なお、折目16は、視認できるように目印用に線を引いたものであってもよい。
【0020】
以下、各実施形態について個別に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態(参考例)に係る、植栽容器を形成するための植栽容器用シートの平面図である。
【0021】
図1に示したシート10は、中央部11と、外周部12のうちの中央部11の四方に配された矩形状の側辺部13、13、・・・とが硬質板で形成されている。中央部11の周囲に配された折目16を含む線状の4辺縁部は折目部15A、15A、・・・を構成し、それらの折目部15A、15A、・・・は軟質材で形成されている。また、4つの矩形(正方形)状の隅部14、14、・・・は、折目16を含む折目部15B、15B、・・・を構成し、それぞれの全体が軟質材で形成されている。これらの2種の折目部15A、15Bは両者相互に連続している。なお、これら2種の折目部15A、15Bは、それらを区別するために、以下では前者を折目部(辺)15A、後者を折目部(隅)15Bと記載する。
【0022】
ようするに、図1に示したシート10は、クロスハッチングを付した部位が硬質板で形成され、それ以外の部位が軟質材で形成されている。このクロスハッチングを付した部位を除く部位が折目部15A、15Bを構成する。
【0023】
硬質板の素材は合成樹脂、金属のいずれであってもよい。軟質材は、折り曲げが可能で、折り曲げても分断されにくい材料であればよく、柔軟な合成樹脂材で製されることが望ましいが、折り曲げ自在な金属薄板であってもよい。また、水耕栽培を目的とした植栽容器用のシート10であれば、水を通さないものが適しているが、土壌栽培を目的としたものであれば、たとえば繊維状の材料などの水を通すものであってもよい。
【0024】
このように構成したシート10によれば、かさばらないため取り扱いがしやすく、大量の植栽容器20をシートの状態で効率的に運搬、保管することができ、かつ簡単に容器形状に組み立てることができる。屋上緑化システムや研究機関の植物工場などで植栽容器20を大量に必要とする場合でも、組立てが簡単にできるため、植栽容器20として利用するまでの間はシートの状態で保管しておけばよく、積み重ねてもかさばらないので、保管スペースも小さくて済む。
【0025】
このようなシート10は、硬軟同時成形にて形成される。2種類の材料を同時あるいは順に金型内に流し込む異材質成形法で成形してもよい。また、金型内に金属よりなる硬質板を挿入しておき、その後、金型内に軟質材としての樹脂を注入するインサート成形法で成形してもよい。
【0026】
このように硬軟同時成形にてシート10を形成する方法を用いれば、簡易な設備で大量に植栽容器用シート10を製造できる。
【0027】
ついで、このシート10を加工してなる植栽容器20について、さらに図2および図3を参照して説明する。
【0028】
植栽容器20は、矩形パン形状とされ、図1に示したシート10を折目16に沿って折り曲げることで形成される。
【0029】
すなわち、シート10の外周部12を、折目部(辺)15A、15Aの折目16、16に沿って折り曲げ起立させて概ねの外形を形成し、折目部(隅)15B、15B、・・・の折目16、16、・・・に沿って折りたたみ、さらに、折りたたんだ容器隅部23、23、・・・に図例のようなクリップ30、30を取り付けて保形することで、植栽容器20を形成することができる。このように折り曲げ形成することで、植栽容器20の底部21にはシート10の中央部11が配され、側壁部22にはシート10の外周部12が配される。
【0030】
クリップ30は、図2(a)に示したような平面視L字状の部材であり、底面側より上方に向かうL字状のスリット31が形成されている。L字状のスリット31に容器隅部23を差し込むことで、折りたたんだ部分が元に復元することなく保形され、しかも容器隅部23が安定する。このようにクリップ30を取り付けることで、側壁部22、22、・・・が平面状態に戻ることを防止できる。
【0031】
クリップ30は、図2(b)に示したような二股の引っ掛け部32、32が形成されたものでもよい。また、図2(c)の展開図に示した板材を破線位置で折り曲げて、図2(b)のようなクリップ30を形成するようにしてもよい。図2(c)に示したクリップ30は、容器隅部23の外側にあてがって、折り曲げ作業をしながらクリップ形状にしてもよい。
【0032】
なお、容器隅部23は、粘着テープや接着剤、ホチキスなどを用いて、折りたたんだ部分を固定するようにしてもよい。また、水耕栽培として使用しない場合には、シート10の隅部14を適宜な位置で切断または切り取りして固定するようにしてもよい。
【0033】
以上に示した植栽容器20によれば、植栽容器用シート10の中央部11に硬質板が使ってあるため、組み立てられた植栽容器20の底部21が安定する。そのため、植栽容器20に植栽した後に台車などで移動する場合でも、内部の土や水がこぼれるおそれがない。また、側壁部22、22、・・・にも硬質板が用いられているため、容器全体がしっかりする。
【0034】
つぎに、本発明の他の実施形態に係る、植栽容器を形成するための植栽容器用シートについて、図3(a)〜(c)を参照して説明する。
【0035】
図3(a)、(b)は、第2の実施形態に係る、植栽容器を形成するための植栽容器用シートの平面図であり、図3(a)、(b)には本実施形態に係る植栽容器用シートにおける異なる使用態様の2例を示した。このシート10は、中央部11は硬質板よりなり、その周囲の外周部12の側辺部13および隅部14を含むすべてが軟質材よりなる。つまり、図3(a)、(b)におけるクロスハッチングを付した中央部11を除く部位が折目部15を構成する。
【0036】
植栽容器用シート10をこのように構成すれば、図3(a)、(b)のように、異なる位置に折目16を設けることで植栽容器20(図2(a)参照)の形状、寸法を異ならせることができる。つまり、側壁部22(図2(a)参照)の高さを異ならせたり、底部21(図2(a)参照)の大きさを異ならせたりすることができる。
【0037】
図3(a)、(b)の例のように、中央部11の周辺のすべてを軟質材で形成すれば、折目部15を広く確保することができ、種々の折目16で種々の形状の植栽容器20(図2(a)参照)を形成することができる。たとえば、植栽容器20(図2(a)参照)の開口を底部よりも大きくしたり、小さくしたりすることもできる。なお、図3(a)、(b)に示したシート10は、中央部11の外側の折目部と隅部14における折目部との境界がないため、図中には折目部として符号15を付記した。
【0038】
図3(c)は、本発明の第3の実施形態に係る、植栽容器を形成するための植栽容器用シートの部分拡大平面図である。このシート10は、実際の折目16に対応して折目部(辺)15A、折目部(隅)15Bを線状に形成したものである。つまり、図3(c)に示すように、中央部11と、外周部12のうちの中央部11の四方の側辺部13とが硬質板で形成されているほか、隅部14における折目部(隅)15Bを除く2つの三角形の部位も硬質板で形成されており、それらを除く線状の折目部(辺)15A、折目部(隅)15Bが軟質材で形成されている。
【0039】
このように、折目16に沿った部位(折目部(辺)15A、折目部(隅)15B)が軟質材で形成されているため、軟質材の形成部位にしたがって折り曲げ、折りたたむだけで簡単に植栽容器20(図2(a)参照)を形成することができる。また、硬質板よりなる部位が多くなるため、植栽容器20の側壁部22(図2(a)参照)が頑丈になる。
【0040】
以上に示した種々の植栽容器20は、たとえば図4(a)に示すように、水耕栽培用の容器として使用できる。植栽容器20に水を張り、孔35aを開けた発泡スチロール板35を浮かべ、その孔35aに野菜などの植物37(苗)を根が水に漬かるように固定すれば、植栽容器20を水耕栽培用に使用できる。
【0041】
もちろん、本植栽容器20は土壌栽培用の容器としても利用できる。底部21に水抜き用の孔(不図示)を開けて使用すればよい。軟質材よりなる折目部(辺)15Aや折目部(隅)15B(図1参照)に孔を開けてもよいし、繊維状の軟質材により製した折目部で水抜きできるようにしてもよい。
【0042】
また、図4(b)に示すように、複数の植栽容器20、20を台車機能を有した複数段の植栽台39に設置すれば、家庭用の植栽トレイセットを簡単に構成でき、また移動も容易に行える。
【符号の説明】
【0043】
10 植栽容器用シート、シート
11 中央部
12 外周部
13 側辺部
14 隅部
15A 折目部、折目部(辺)
15B 折目部、折目部(隅)
15 折目部
16 折目
20 植栽容器
21 底部
22 側壁部
23 容器隅部
30 クリップ
31 スリット
32 引っ掛け部
35 発泡スチロール板
35a 孔
37 植物
39 植栽台
図1
図2
図3
図4