(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る固定デバイス及びカテーテルセットについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0025】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る固定デバイス10及び当該固定デバイス10を備えたカテーテルセット12の概略構成を示す一部省略側面図である。このカテーテルセット12は、固定デバイス10と、カテーテル14とにより構成され、固定デバイス10がカテーテル14のシャフト16の上に装着されている。なお、固定デバイス10と、カテーテル14とは、
図1に示すように予め固定デバイス10がカテーテル14に装着されている場合に限らず、使用する際に固定デバイス10をカテーテル14に装着してもよい。
【0026】
以下、固定デバイス10及びカテーテル14の構成について説明するが、当該固定デバイス10及びカテーテル14並びにそれらの構成要素に関し、
図1、
図3〜
図6、
図8、
図9、
図11〜
図15中の左側を「先端(前方)」、右側を「基端(後端、後方)」という。
【0027】
カテーテル14は、血管等の生体器官内に導入して生体器官内の病変部を検査・処置するために使用される医療用器具であり、例えば、PTCA(経皮的冠動脈形成術)に用いられるガイディングカテーテル、バルーンカテーテル等として構成され得る。図示した構成例のカテーテル14は、シャフト16の先端に湾曲形状が付けられたガイディングカテーテルとして構成されている。
【0028】
カテーテル14は、細径で長尺なシャフト16と、シャフト16の基端に連結されたハブ18と、ハブ18の先端に設けられるとともにシャフト16の基端外周を包囲する耐キンクプロテクタ20とを備える。
【0029】
シャフト16は、中空な円筒状に形成されるとともに、術者がその基端側を把持及び操作しながら血管等の生体器官内へと円滑に挿通させることができるように適度な可撓性と適度な強度を有する樹脂等で構成されている。シャフト16の先端部は、図示例のものは、湾曲形状が付けられているが、用途に応じてストレート形状や、僅かに湾曲した形状であってもよい。
【0030】
シャフト16の長さは、人体の血管への挿入部位(穿刺部位)から目的部位までの長さや操作性を考慮して設定される。シャフト16の内部には、長手方向に沿って延在するルーメンが貫通形成されており、当該ルーメンには、カテーテル14を目的部位へと導くためのガイドワイヤーや治療用デバイス(例えば、バルーンカテーテル等)が挿通される。
【0031】
ハブ18は、その先端にてシャフト16の基端部を保持する中空状の部材であり、例えば、ポリカーボネート等の硬質の樹脂等により構成され、その中空部をなす内腔は、シャフト16のルーメンと連通している。ハブ18の基端部は、シリンジ等の他の器具を接続するための接続口又は治療用デバイスを挿入するための挿入口として機能する。
【0032】
耐キンクプロテクタ20は、シャフト16のハブ18の接続部での屈曲(キンク)を防止するためのものであり、例えば先細りのチューブ状に形成された適度の可撓性及び剛性を有する樹脂製の部材である。
【0033】
次に、固定デバイス10の構成を説明する。固定デバイス10は、カテーテル14のシャフト16に装着して使用されるものであり、その装着位置を任意に変更して固定できるように構成されている。
【0034】
図2及び
図3Aに示すように、固定デバイス10は、管状部材22と、当該管状部材22の両端部近傍に設けられた第1突起部24及び第2突起部26と、第1突起部24と第2突起部26との間に配置された可動筒状体28と、管状部材22の前方に配置された先端部30と、可動筒状体28と先端部30とを繋ぐ支持部32とを備える。
【0035】
管状部材22は、シャフト16が挿通可能な中空部34を有する中空円筒形であり、軸線方向(長手方向)に縮むことで中空部34の径が拡大(拡径)し、軸線方向に伸びることで中空部34の径が縮小(縮径)するように構成されている。本実施形態において、管状部材22の骨格部分は、細線が織り合わされた編組体(ブレード)36により構成されている。細線は剛性を有しており、ステンレスなどの金属や硬質の樹脂からなる。編組体36は、断面長方形状の細線(板状素材)が織り合わされたメッシュ状で且つ全体として管状に構成された部材である。
【0036】
自然状態(何らの外力も付与されていない状態)において、管状部材22の最も細い部分の内径は、固定デバイス10に挿通されるカテーテル14の外径と略同じか、それよりも僅かに小さく設定される。この場合、カテーテル14(シャフト16)に固定デバイス10が装着された状態で、固定デバイス10とカテーテル14とが相対回転できるように管状部材22の上記内径を設定しておくのがよい。これにより、固定デバイス10を装着した状態でも、カテーテル14を回転させる手技を円滑に遂行することができる。
【0037】
編組体36は、軸線方向(長手方向)の中央部が先端部及び後端部よりも細くなるように(中空部の径が小さくなるように)形成されている。このような形状をした編組体36は、カテーテル14のシャフト16の外径よりも太い筒状の編組体(基材としての編組体)を、シャフト16の外径よりも細くなるように長手方向に引っ張ることで製作できる。この場合、細くする部分は、編組体36の一部若しくは全体のいずれでもよい。
【0038】
図示した構成例において、編組体36は、樹脂層38によって外周部の略全体が覆われている。この樹脂層38は、編組体36の動き(軸線方向の伸縮、拡径、縮径)を許容する(阻害しない)ような柔軟性(弾性)のある材料で構成され、例えば、カテーテル14のシャフト16を構成する樹脂と同様のものを用いることができる。このような樹脂層38を編組体36の外周部に設けることで、編組体36の外表面が露出することがなく、樹脂層38を設けない場合と比較して、使用者が管状部材22の端部に触れて操作するときの操作感を向上させることができる。
【0039】
編組体36が伸縮を繰り返すと、中空部34の径が拡大したまま縮径しにくくなる(自然状態に戻りにくくなる)が、樹脂層38が細線を覆っていることにより、自然状態で、細線を伸長した状態のまま(中空部34が縮径した状態のまま)に保持できる。そして、樹脂層38が細線を覆っていると、意図しない力が中空部34の拡径方向に働いた場合でも、編組体36が伸縮しにくいため、容易に固定状態が解除されにくくなる。
【0040】
また、樹脂層38を編組体36の全長にわたって設けることで、管状部材22全体として適度な剛性が付与され、カテーテル14に固定デバイス10を装着する際に、管状部材22の撓みの発生を抑制することができ、固定デバイス10の装着作業をスムーズに行うことができる。
【0041】
なお、編組体36の内周部にも、上記の樹脂層38と同様の材料で構成された樹脂層(内側樹脂層)を設けてもよい。このようにすると、管状部材22の内側に挿通されるカテーテル14のシャフト16に対して摺接した場合に、シャフト16の外表面に傷がつくことや、カテーテルを管状部材22内に挿入するときにカテーテル14先端が編組体36の隙間に引っ掛かることを防止することができる。
【0042】
図3Aに示す管状部材22に代えて、
図3Bに示す変形例に係る管状部材23のように、編組体36の外周部及び内周部を覆い、且つ、編組体36の隙間(細線と細線との間の空間)を埋める樹脂層38aを配設してもよい。このような管状部材23の構成によれば、編組体36の構造が全体的に安定し、固定デバイス10の固定や摺動をよりスムーズに行うことができる。なお、このような構成の管状部材23は、後述する第2〜第4実施形態、他の変形例1、2においても採用し得る。
【0043】
第1突起部24及び第2突起部26は、管状部材22の外周部に、管状部材22の軸線方向に互いに間隔をおいて設けられている。図示した構成例では、第1突起部24及び第2突起部26は、ともに円環状に形成されており、そのため、管状部材22の外周面から半径方向外方に突出し、且つ周方向に延在している。
【0044】
第1突起部24は、管状部材22の先端近傍に配置されるとともに、上述した樹脂層38によって管状部材22に固着されており、第2突起部26は、管状部材22の後端近傍に配置されるとともに、樹脂層38によって管状部材22に固着されている。すなわち、本実施形態における樹脂層38は、第1突起部24及び第2突起部26を管状部材22に固定する接着剤としての役割も担っている。
【0045】
可動筒状体28は、中空円筒状に形成された部材であり、第1突起部24と第2突起部26との間で管状部材22を囲んで配置され、第1突起部24及び第2突起部26により規制された範囲内で管状部材22に対して軸線方向に移動可能に構成されている。可動筒状体28の全長は、第1突起部24と第2突起部26との間の距離よりも短い。
【0046】
可動筒状体28の内径は、管状部材22の外径よりも大きく且つ第1突起部24及び第2突起部26の外径よりも小さい。このため、可動筒状体28は、第1突起部24と第2突起部26とにより管状部材22に対する軸線方向の移動範囲が制限されている。
【0047】
先端部30は、第2突起部26から第1突起部24に向かう管状部材22の先端方向の延長上に配置され、医療用管状デバイスの内腔に挿通されたカテーテル14に固定デバイス10が装着された状態で医療用管状デバイスの基端部に少なくとも当接可能な部分である。
【0048】
先端部30と可動筒状体28との距離(支持部32の長さ)は、可動筒状体28が管状部材22に対して最も後退したときに、先端部30の後端面と管状部材22の先端とが接触しないように設定される。
図2に示すように、先端部30は、カテーテル14のシャフト16を挿通可能な開口部40を有し、図示例では、円環状に形成されている。なお、先端部30の形状は、円環状に限らず、周方向に部分的に分割された形態であってもよい。
【0049】
支持部32は、先端部30と可動筒状体28とを連結し先端部30を支持する部分であり、図示例の構成では、可動筒状体28から先端方向に延出する一対のアーム32a、32bからなる。第1突起部24は、一対のアーム32a、32bの間から外側(半径方向外側)に突出している。この構成により、第1突起部24を容易に把持して、第1突起部24に対する操作を確実に行うことができる。
【0050】
本実施形態に係る固定デバイス10及びカテーテルセット12は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について
図4A〜
図4Dを参照して説明する。
図4A〜
図4Dでは、カテーテル14が挿通される医療用管状デバイスが、別のカテーテル(外カテーテル42)である場合を説明するが、本発明はこの例に限らない。例えば、カテーテル14が挿通される医療用管状デバイスは、シースイントロデューサであってもよい。この点は、後述する第2及び第3実施形態においても同様である。
【0051】
図4Aにおいて、外カテーテル42のルーメンに、固定デバイス10をシャフト16の上に装着したカテーテル14が内カテーテルとして挿通されている。なお、
図4A〜
図4Dを参照した説明において、カテーテル14を「内カテーテル14」と呼ぶ場合がある。
【0052】
固定デバイス10の位置をカテーテル14に対して先端方向に移動させたい場合、
図4Aに示すように、カテーテル14を一方の手指F1で保持した状態で、他方の手指F2で第2突起部26を先端方向に押すと、管状部材22が軸線方向に縮んで拡径する。これにより、管状部材22とカテーテル14(シャフト16)との間の摩擦力が解除され、固定デバイス10がカテーテル14に沿って先端方向に移動できる。
【0053】
固定デバイス10の位置をカテーテル14に対して基端方向に移動させたい場合、
図4Bに示すように、カテーテル14を一方の手指F1で保持した状態で、他方の手指F2で第1突起部24を基端方向に押すと、管状部材22が軸線方向に縮んで拡径する。これにより、管状部材22とカテーテル14(シャフト16)との間の摩擦力が解除され、固定デバイス10がカテーテル14に沿って基端方向に移動できる。
【0054】
図4A及び
図4Bを参照した上記説明から了解されるように、本実施形態に係る固定デバイス10によれば、カテーテル14上での位置を容易且つ迅速に任意の位置に変更できる。
【0055】
本実施形態の場合、固定デバイス10は、外カテーテル42に対して固定されていないので、
図4Cに示すように、一方の手指F1で内カテーテル14を保持し、且つ他方の手指F2で外カテーテル42を保持した状態で、内カテーテル14から外カテーテル42を引き抜く方向に、内カテーテル14及び外カテーテル42に力をかけると、外カテーテル42と内カテーテル14は互いに自由に相対移動できる。このように、本実施形態の場合、外カテーテル42に対し内カテーテル14を遠ざける方向には、相対移動の抑止効果は得られない。
【0056】
一方、
図4Dに示すように、第2突起部26を保持しないで、一方の手指F1で内カテーテル14を保持し、且つ他方の手指F2で外カテーテル42を保持した状態で、内カテーテル14を外カテーテル42に挿入する方向(外カテーテル42に対して内カテーテル14を前進させる方向)に、内カテーテル14及び外カテーテル42に力をかけると、やがて外カテーテル42のハブ44の基端面と固定デバイス10の先端部30が当接する。
【0057】
そうすると、可動筒状体28が第2突起部26を基端方向に押圧し、管状部材22が軸線方向に伸びて縮径することで、固定デバイス10が内カテーテル14に対して固定(ロック)される。これにより、これ以上、内カテーテル14は外カテーテル42に対して前進することができず、外カテーテル42と内カテーテル14の相対位置が保持される。よって、内カテーテル14の外カテーテル42からの突出長が大きくならないように一定に保持できる。
【0058】
本実施形態の場合、支持部32は、可動筒状体28から先端方向に延出する一対のアーム32a、32bからなり、第1突起部24は、一対のアーム32a、32bの間から外側に突出するので、第1突起部24を基端方向に押圧操作する際、第1突起部24を容易に把持することができ、第1突起部24に対する操作によりカテーテル14における固定デバイス10の位置を変更しやすい。
【0059】
本実施形態の場合、管状部材22は、細線が織り合わされた編組体36により構成されているので、第1突起部24又は第2突起部26に軸線方向に力が作用したときに、織り合わされた細線の互いに重なり合う要素がすべて動くため、周方向に均一に拡径する。すなわち、連鎖した力が周方向に等しく分配され、力の作用箇所とは反対側の端部まで力が減衰せずに伝達されることで、長手方向の摩擦力がすべて同時に解除される。よって、固定デバイス10の位置の変更をスムーズに行うことが可能となる。
【0060】
図1に示したカテーテルセット12のように、カテーテル14に固定デバイス10が予め装着されていると、医療現場で固定デバイス10をカテーテル14に装着する作業を省略でき、迅速な手技の遂行に寄与できる。
【0061】
<第2実施形態>
次に、
図5を参照し、第2実施形態に係る固定デバイス50について説明する。なお、第2実施形態に係る固定デバイス50において、第1実施形態の固定デバイス10と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0062】
固定デバイス50は、医療用管状デバイスに対して解除可能に係合するロック部52が先端部30aに設けられる点で、第1実施形態に係る固定デバイス10と異なる。図示した構成例のロック部52は、固定デバイス10が装着されたカテーテル14が挿通される医療用デバイス(例えば、外カテーテル42としての他のカテーテル、シースイントロデューサ等)の基端部にネジ嵌合により係合可能に構成されている。
【0063】
具体的には、ロック部52は、内周部に雌ネジ部54aが形成された円筒部54と、円筒部54の基端に設けられた基部56とを有する。基部56には、カテーテル14が挿通可能であり且つ円筒部54内と連通した内腔56aが形成されている。このように構成されているため、ロック部52を医療用管状デバイスの基端部に対して螺合させると、医療用管状デバイスに対して固定デバイス50がロック部52に固定される。
【0064】
基部56の先端側には、半径方向外方に膨出したフランジ部58が一体的に設けられている。このフランジ部58は、基部56の外径よりも大きい外径を有し360°の範囲に渡って周方向に延在している。このフランジ部58はロック部52の内周部の雌ネジ部54aの基端側に形成された空間54bに配置される。このフランジ部58は、ロック部52の内周部と独立して軸線方向を軸心として回転可能である。
【0065】
空間54b内においてフランジ部58の先端側には、弁体59が軸線方向に並ぶように配置されている。弁体59は、例えば、シリコーンゴムなどから形成されたリング状の部材であり、中心には孔59aが形成され、カテーテル14が挿通可能となっている。また弁体59の先端側には医療用管状デバイス(例えば、外カテーテル42のハブ44)の基端面が弁体59に対して液密に接するようになっている。このように構成すると、医療用管状デバイスを固定デバイス50のロック部52に固定した際に、医療用管状デバイスの内腔を通過する液体が医療用管状デバイスと固定デバイス50のロック部52との連結部から漏れ出ることを防止することができる。また、弁体59と雌ネジ部54aの間に流路の分岐部を有していてもよい。
【0066】
次に、第2実施形態に係る固定デバイス50の作用・効果を説明する。
図6Aにおいて、カテーテル14のシャフト16の上に固定デバイス50が装着され、これによりカテーテルセット51が構成されている。また、外カテーテル42のルーメンに、固定デバイス50を装着したカテーテル14が内カテーテルとして挿通されるとともに、外カテーテル42のハブ44にロック部52が螺合(係合)して固定されている。なお、
図6A〜
図6Dを参照した説明において、カテーテル14を「内カテーテル14」と呼ぶ場合がある。
【0067】
固定デバイス50をカテーテル14に対して先端方向に移動させたい場合、
図6Aに示すように、カテーテル14を一方の手指F1で保持した状態で、他方の手指F2で第2突起部26を先端方向に押すと、管状部材22が軸線方向に縮んで拡径する。これにより、管状部材22とカテーテル14(シャフト16)との間の摩擦力が解除され、固定デバイス50がカテーテル14に沿って先端方向に移動できる。
【0068】
固定デバイス50の位置をカテーテル14に対して基端方向に移動させたい場合、
図6Bに示すように、カテーテル14を一方の手指で保持した状態で、他方の手指で第1突起部24を基端方向に押すと、管状部材22が軸線方向に縮んで拡径する。これにより、管状部材22とカテーテル14(シャフト16)との間の摩擦力が解除され、固定デバイス50がカテーテル14に沿って基端方向に移動できる。
【0069】
図6A及び
図6Bを参照した上記説明から了解されるように、本実施形態に係る固定デバイス50によれば、第1実施形態に係る固定デバイス10と同様に、カテーテル14上での位置を容易且つ迅速に任意の位置に変更できる。
【0070】
図6Cに示すように、一方の手指F1で内カテーテル14を保持し、且つ他方の手指F2で外カテーテル42を保持した状態で、外カテーテル42から内カテーテル14を引き抜く方向に、内カテーテル14及び外カテーテル42に力をかける。この場合、固定デバイス50は、外カテーテル42に対して固定されているので、ロック部52及び支持部32を介して外カテーテル42に固定された可動筒状体28に第1突起部24が係合することで、管状部材22が軸線方向に伸びて縮径するので、外カテーテル42と内カテーテル14との相対移動が阻止される。
【0071】
図6Dに示すように、第2突起部26を保持しないで、一方の手指F1で内カテーテル14を保持し、且つ他方の手指F2で外カテーテル42を保持した状態で、内カテーテル14を外カテーテル42に挿入する方向(外カテーテル42に対して内カテーテル14を前進させる方向)に、内カテーテル14及び外カテーテル42に力をかける。この場合、ロック部52及び支持部32を介して外カテーテル42に固定された可動筒状体28に第2突起部26が係合することで、管状部材22が軸線方向に伸びて縮径するので、外カテーテル42と内カテーテル14との相対移動が阻止される。
【0072】
図6C及び
図6Dを参照した上記説明から了解されるように、本実施形態に係る固定デバイス50によれば、医療用管状デバイスに対してカテーテル14を遠ざける方向と近づける方向のいずれについても、自動的にロック状態となり、医療用管状デバイスとカテーテル14との相対移動を阻止できる。特に医療用管状デバイスが外カテーテル42の場合、内カテーテル14の外カテーテル42からの突出長を一定に保持できる。
【0073】
なお、第2実施形態において、第1実施形態と共通する各構成部分については、第1実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0074】
<第3実施形態>
次に、
図7及び
図8を参照し、第3実施形態に係る固定デバイス60について説明する。なお、第3実施形態に係る固定デバイス60において、第1及び第2実施形態に係る固定デバイス10、50と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0075】
固定デバイス60は、可動筒状体28、第1突起部24及び第2突起部26を収容する管状操作部62を備える点で、第2実施形態に係る固定デバイス50と異なる。この管状操作部62は、管状部材22及び可動筒状体28に対して軸線方向(長手方向)に移動可能であり、使用者(操作者)によって軸線方向に移動操作される部分である。
【0076】
図示した構成例の管状操作部62は、軸線方向の両端に開口部(先端開口部64及び基端開口部66)を有する中空円筒形に形成されている。管状操作部62の先端開口部64からは、管状部材22の先端部及び一対のアーム32a、32bが先端方向に突出している。管状部材22の基端開口部66からは、管状部材22の基端部が基端方向に突出している。
【0077】
管状操作部62は、使用者が指でつまんで操作する部分であるため、つまみやすいように適度の長さ及び外径を有し、さらに、外周面に滑り止め用の突起又は溝が設けられているのがよい。管状操作部62の構成材料としては、特に限定されながい、例えば、ポリカーボネート等の硬質の樹脂やステンレス等の金属が挙げられる。
【0078】
図8に示すように、管状操作部62は、可動筒状体28よりも先端側に配設された第1係合部68と、可動筒状体28よりも後端側に配設された第2係合部70とを有する。図示した構成例の場合、第1係合部68は、管状操作部62の胴体部の先端から内方に突出した先端壁であり、第1係合部68の内周面によって先端開口部64が規定されている。また、図示した構成例の場合、第2係合部70は、管状操作部62の胴体部の基端から内方に突出した基端壁であり、第2係合部70の内周面によって基端開口部66が規定されている。
【0079】
第1係合部68の内径は、管状部材22の外径より大きく且つ第1突起部24の外径よりも小さい。このため、第1突起部24は、第1係合部68と可動筒状体28の先端との間で移動範囲が規制される。第2係合部70の内径は、管状部材22の外径より大きく且つ第2突起部26の外径よりも小さい。このため、第2突起部26は、第2係合部70と可動筒状体28の後端との間で移動範囲が規制される。
【0080】
次に、
図9A〜
図9Dを参照し、第3実施形態に係る固定デバイス60の作用・効果を説明する。
図9Aに示すにように、カテーテル14のシャフト16の上に固定デバイス60が装着され、これによりカテーテルセット61が構成されている。また、外カテーテル42のルーメンに、固定デバイス60を装着したカテーテル14が内カテーテルとして挿通されるとともに、外カテーテル42のハブ44にロック部52が螺合(係合)して固定されている。なお、
図9A〜
図9Dを参照した説明において、カテーテル14を「内カテーテル14」と呼ぶ場合がある。
【0081】
固定デバイス60をカテーテル14に対して先端方向に移動させたい場合、
図9Aに示すように、カテーテル14を一方の手指F1で保持した状態で、他方の手指F2で管状操作部62の任意の箇所を把持し、管状操作部62を先端方向に押す。そうすると、管状操作部62の第2係合部70が、第2突起部26に係合して先端方向に押圧し、これによって管状部材22が軸線方向に縮んで拡径するので、固定デバイス60がカテーテル14に沿って先端方向に移動できる。
【0082】
固定デバイス60の位置をカテーテル14に対して基端方向に移動させたい場合、
図9Bに示すように、カテーテル14を一方の手指F1で保持した状態で、他方の手指F2で管状操作部62の任意の箇所を把持し、管状操作部62を基端方向に押す。そうすると、第1係合部68が、第1突起部24に係合して後端方向に押圧し、これによって管状部材22が軸線方向に縮んで拡径するので、固定デバイス60がカテーテル14に沿って基端方向に移動できる。
【0083】
図9A及び
図9Bを参照した上記説明から了解されるように、本実施形態に係る固定デバイス60によれば、カテーテル14に対する固定デバイス60の位置を移動させる際に、第1突起部24及び第2突起部26を選択して操作する(第1及び第2突起部26を持ち替える)必要がなく、管状操作部62の任意の箇所を保持して軸線方向に操作すればよく、固定デバイス60の位置の変更をより容易且つ迅速に行うことができる。
【0084】
図9Cに示すように、一方の手指F1で内カテーテル14を保持し、且つ他方の手指F2で外カテーテル42を保持した状態で、外カテーテル42から内カテーテル14を引き抜く方向に、内カテーテル14及び外カテーテル42に力をかける。この場合、固定デバイス60は、外カテーテル42に対して固定されているので、ロック部52及び支持部32を介して外カテーテル42に固定された可動筒状体28に第1突起部24が係合することで、管状部材22が軸線方向に伸びて縮径するので、外カテーテル42と内カテーテル14との相対移動が阻止される。
【0085】
図9Dに示すように、第2突起部26を保持しないで、一方の手指F1で内カテーテル14を保持し、且つ他方の手指F2で外カテーテル42を保持した状態で、内カテーテル14を外カテーテル42に挿入する方向(外カテーテル42に対して内カテーテル14を前進させる方向)に、内カテーテル14及び外カテーテル42に力をかける。この場合、ロック部52及び支持部32を介して外カテーテル42に固定された可動筒状体28に第2突起部26が係合することで、管状部材22が軸線方向に伸びて縮径するので、外カテーテル42と内カテーテル14との相対移動が阻止される。
【0086】
図9C及び
図9Dを参照した上記説明から了解されるように、本実施形態に係る固定デバイス60によれば、第2実施形態に係る固定デバイス50と同様に、医療用管状デバイスに対してカテーテル14を遠ざける方向と近づける方向のいずれについても、自動的にロック状態となり、医療用管状デバイスとカテーテル14との相対移動を阻止できる。このとき、管状操作部62は規制された移動範囲において可動筒状体28の軸線方向の動きを防げず、可動筒状体28に対して独立に動く。
【0087】
<第4実施形態>
次に、
図10〜
図13を参照し、第4実施形態に係る固定デバイス100について説明する。なお、第4実施形態に係る固定デバイス100において、第1〜第3実施形態に係る固定デバイス10、50、60と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。本実施形態に係る固定デバイス100は、第1突起部110、第2突起部112及び管状操作部102の構成において、第3実施形態に係る固定デバイス60と異なる。
【0088】
図10及び
図11に示すように、第1突起部110と第2突起部112は、管状部材22の外周部に、管状部材22の軸線方向に間隔をおいて設けられている。第1突起部110と第2突起部112は、ともに円環状に形成されており、そのため、管状部材22の外周面から半径方向外方に突出し、且つ周方向に延在している。
【0089】
第1突起部110は、管状部材22の先端位置から若干だけ固定デバイス100の基端方向にずれた位置に配置されるとともに、樹脂層38によって管状部材22に固着されている。上述した第1突起部24と異なり、本実施形態における第1突起部110は、第2突起部112から軸線方向に離れるに従って縮径する外周面112aを有する。第2突起部112は、管状部材22の基端位置から若干だけ固定デバイス100の先端方向にずれた位置に配置されるとともに、樹脂層38によって管状部材22に固着されている。上述した第2突起部26と異なり、本実施形態における第2突起部112は、第1突起部110から軸線方向に離れるに従って外径が縮小する外周面112aを有する。第1突起部110と第2突起部112との間隔は、可動筒状体28の全長よりも大きく、第1突起部110及び第2突起部112の外径は、可動筒状体28の内径よりも大きい。このため、可動筒状体28は、第1突起部110と第2突起部112との間で、規制された範囲で軸線方向に移動可能に配置されている。
【0090】
管状操作部102は、第1突起部110、第2突起部112及び可動筒状体28を収容するとともに、管状部材22及び可動筒状体28に対して軸線方向(長手方向)に移動可能であり、使用者(操作者)によって軸線方向に移動操作される部分である点で、
図7等に示した管状操作部62と同じであるが、以下に述べる点で、管状操作部62と異なる。
【0091】
管状操作部102は、自然状態で可動筒状体28を隙間を介して囲む胴体部104と、胴体部104の先端側に設けられ内周部が第1係合部106と、胴体部104の基端側に設けられた第2係合部108とを有し、胴体部104が軸線方向に直交する両側から内方向の押圧力を受けた際に胴体部104とともに第1係合部106及び第2係合部108が弾性変形によって縮径するように構成されている。
【0092】
胴体部104の全長は、可動筒状体28の全長よりも長く、胴体部104の内径は、可動筒状体28の外径よりも大きい。このため、少なくとも管状操作部102の自然状態において、胴体部104と可動筒状体28との間には、可動筒状体28の全長に渡って、軸線方向に延在する環状の隙間120が形成されている。なお、管状操作部102に関し、「自然状態」とは、管状操作部102が弾性変形によって縮径していない状態(非縮径状態)を意味する。
【0093】
本実施形態において、管状操作部102は、軸線方向の両端が開口した中空円筒形に形成されている。第1係合部106は、管状操作部102の胴体部104の先端から内方且つ先端方向に突出した先端壁であり、第2係合部108は、管状操作部102の胴体部104の基端から内方且つ基端方向に突出した基端壁である。
【0094】
先端側に設けられた第1係合部106の開口部107から管状部材22の先端部が先端方向に突出し、基端側に設けられた第2係合部108の開口部109から管状部材22の基端部が基端方向に突出している。第1係合部106において、支持部32の一対のアーム32a、32bに対応する箇所(2箇所)には、開口部107に連通する切欠部111a、111b(
図10参照)が設けられ、当該切欠部111a、111bを通してアーム32a、32bが先端方向に突出している。
【0095】
第1係合部106は、管状操作部102が自然状態のとき、第1突起部110から離間した状態で可動筒状体28の先端に当接することが可能であり、管状操作部102が縮径状態のとき、第1突起部110に当接して当該第1突起部110を軸線方向に操作可能に構成されている。また、第2係合部108は、管状操作部102が自然状態のとき、第2突起部112から離間した状態で可動筒状体28の基端に当接することが可能であり、管状操作部102が縮径状態のとき、第2突起部112に当接して当該第2突起部112を軸線方向に操作可能であるように構成されている。本実施形態において、第1係合部106と第2係合部108は、具体的には、以下のように構成されている。
【0096】
第1係合部106の内径及び第2係合部108の内径は、それぞれ管状部材22の外径と略同じか、それより僅かに大きく、第1係合部106の内縁は、可動筒状体28のうち第1突起部110が設けられた箇所よりも先端側の外周面に当接し、第2係合部108の内縁は、可動筒状体28のうち第2突起部112が設けられた箇所よりも基端側の外周面に当接している。これにより、管状操作部102は、胴体部104の内周面と可動筒状体28の外周面との間に環状の隙間120を形成した状態で、第1係合部106の内縁と第2係合部108の内縁において管状部材22の外周面によって支持されている。また、第1係合部106の内径及び第2係合部108の内径は、それぞれ管状部材22の外径より僅かに小さくともよい。この場合も、管状操作部102は、第1係合部106の内縁と第2係合部108の内縁において管状部材22の外周面と当接し、管状部材22の外周面によって支持されている。
【0097】
本実施形態において、第1係合部106は、その外周面106a及び内周面106bが第1係合部106から離れる方向に向かって縮径している。外周面106aの軸線に対する傾斜角度は、内周面106bの軸線に対する傾斜角度よりも大きい。また、管状操作部102の内面において、第1係合部106の径方向途中位置(第1係合部106の内端と胴体部104との間の箇所)には第1角部122が設けられている。第1角部122は、第1係合部106のテーパ状の内周面106bと胴体部104の内周面との間を形成する面106cの内縁部によって構成されている。第1角部122の内径は、可動筒状体28の外径よりも小さい。
【0098】
本実施形態において、第2係合部108は、その外周面108a及び内周面108bが第2係合部108から離れる方向に向かって縮径している。外周面108aの軸線に対する傾斜角度は、内周面108bの軸線に対する傾斜角度よりも大きい。また、管状操作部102の内面において、第2係合部108の径方向途中位置(第2係合部108の内端と胴体部104との間の箇所)には第2角部124が設けられている。
【0099】
第2角部124は、第2係合部108のテーパ状の内周面108bと胴体部104の内周面との間を形成する面108cの内縁部によって構成されている。第2角部124の内径は、可動筒状体28の外径よりも小さい。第1角部122と第2角部124との間の間隔は、可動筒状体28の全長よりも大きく、このため、管状操作部102は、自然状態において、第1角部122と第2角部124との間で規制された範囲内で可動筒状体28に対して軸線方向に変位自在となっている。
【0100】
管状操作部102の構成材料としては、操作者が胴体部104を手指で摘み力をかけた際に、弾性変形して、胴体部104とともに第1係合部106及び第2係合部108が縮径するものであれば特に限定されず、例えば、比較的軟質の合成樹脂が挙げられる。比較的軟質の合成樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等が挙げられる。
【0101】
次に、第4実施形態に係る固定デバイス100の作用・効果を説明する。
図12Aにおいて、カテーテル14のシャフト16の上に固定デバイス100が装着され、これによりカテーテルセット128が構成されている。また、外カテーテル42のルーメンに、固定デバイス100を装着したカテーテル14が内カテーテルとして挿通されるとともに、外カテーテル42のハブ44にロック部52が螺合(係合)して固定されている。なお、
図12A〜
図13Bを参照した説明において、カテーテル14を「内カテーテル14」と呼ぶ場合がある。
【0102】
固定デバイス100をカテーテル14に対して基端方向に移動させたい場合、
図12Aに示すように、カテーテル14を一方の手指F1で保持した状態で、他方の手指F2で管状操作部102の胴体部104の任意の箇所を把持するとともに径方向内方に向かって押圧する。そうすると、胴体部104とともに第1係合部106と第2係合部108が弾性変形によって縮径する。第1係合部106と第2係合部108が縮径する際、第1角部122と第2角部124は、軸線方向に互いに離れる方向に変位する。
【0103】
そして、第1係合部106と第2係合部108を縮径させたまま、管状操作部102を基端方向に押すと、第1係合部106と第2係合部108が管状部材22の外周面を摺動し、やがて
図12Aに示すように、第1係合部106が第1突起部110の外周面110aに当接するとともに、第1突起部110が可動筒状体28の先端面に当接する。このとき、第1係合部106の第1角部122が自然状態の場合と比較して第2突起部112から離れる方向に変位し、且つ第1突起部110が第1係合部106と可動筒状体28との間に介在しているため、第1角部122は可動筒状体28の先端面には当接しない。
【0104】
このような操作により、第1突起部110が、管状操作部102の第1係合部106により基端方向に押圧され、これによって管状部材22が軸線方向に縮んで拡径する。管状部材22の拡径により、固定デバイス100とカテーテル14との相対位置の固定が解除される。従って、固定デバイス100を、カテーテル14に沿って基端方向に移動させることができる。管状操作部102に対する内方向の押圧を解除すると、管状操作部102は弾性復元力により、元の状態(自然状態)まで拡径し、第1係合部106と第1突起部110とは
図11のように再び互いに離間した状態となる。
【0105】
固定デバイス100をカテーテル14に対して先端方向に移動させたい場合、
図12Bに示すように、カテーテル14を一方の手指F1で保持した状態で、他方の手指F2で管状操作部102の胴体部104の任意の箇所を把持するとともに径方向内方に向かって押圧する。そうすると、胴体部104とともに第1係合部106と第2係合部108が弾性変形によって縮径する。第1係合部106と第2係合部108が縮径する際、第1角部122と第2角部124は、軸線方向に互いに離れる方向に変位する。
【0106】
そして、第1係合部106と第2係合部108を縮径させたまま、管状操作部102を先端方向に押すと、第1係合部106と第2係合部108が管状部材22の外周面を摺動し、やがて
図12Bに示すように、第2係合部108が第2突起部112の外周面112aに当接するとともに、第2突起部112が可動筒状体28の基端面に当接する。このとき、第2角部124が自然状態の場合と比較して第1突起部110から離れる方向に変位し、且つ第2突起部112が第2係合部108と可動筒状体28との間に介在しているため、第2角部124は可動筒状体28の基端面には当接しない。
【0107】
このような操作により、第2突起部112が、管状操作部102の第2係合部108により先端方向に押圧され、これによって管状部材22が軸線方向に縮んで拡径する。管状部材22の拡径により、固定デバイス100とカテーテル14との相対位置の固定が解除される。従って、固定デバイス100を、カテーテル14に沿って先端方向に移動させることができる。管状操作部102に対する内方向の押圧を解除すると、管状操作部102は弾性復元力により、元の状態(自然状態)まで拡径し、第2係合部108と第2突起部112とは
図11のように再び互いに離間した状態となる。
【0108】
以上の説明から了解されるように、本実施形態に係る固定デバイス100では、管状操作部102の胴体部104を両側から内方向に押圧して第1係合部106と第2係合部108を縮径させることにより、第1突起部110及び第2突起部112を軸線方向に操作可能な状態となる。
【0109】
固定デバイス100では、管状操作部102に対する上記操作を行わない場合、上述した第3実施形態に係る固定デバイス60と同様の作用により、カテーテル14と固定デバイス100との相対位置の固定機能が発揮される。すなわち、一方の手指F1で内カテーテル14を保持し、且つ他方の手指F2で外カテーテル42を保持した状態で、外カテーテル42から内カテーテル14を引き抜く方向に、内カテーテル14及び外カテーテル42に力をかけた場合、可動筒状体28の先端に第1突起部110が係合することで、管状部材22が軸線方向に伸びて縮径するので、外カテーテル42と内カテーテル14との相対移動が阻止される。一方の手指F1で内カテーテル14を保持し、且つ他方の手指F2で外カテーテル42を保持した状態で、内カテーテル14を外カテーテル42に挿入する方向(外カテーテル42に対して内カテーテル14を前進させる方向)に、内カテーテル14及び外カテーテル42に力をかけた場合、可動筒状体28の基端に第2突起部112が係合することで、管状部材22が軸線方向に伸びて縮径するので、外カテーテル42と内カテーテル14との相対移動が阻止される。
【0110】
第3実施形態に係る固定デバイス60は、管状操作部62を把持して軸線方向に操作することにより、カテーテル14に対する固定デバイス60の位置の変更を容易に行うことができるものであるが、管状操作部62に意図せずに何らかの物体が触れた際には、当該物体により管状操作部62が軸線方向に押されることにより固定デバイス60の位置の固定が解除される可能性がある。これに対し、本実施形態に係る固定デバイス100によれば、以下に説明するように、管状操作部102に意図せずに何らかの物体が触れた場合でも、カテーテル14と固定デバイス100との相対位置の固定が解除されることを防止することができる。
【0111】
図13Aのように、管状操作部102の特に第1係合部106に物体Mが接触することにより、管状操作部102を基端方向に押す力が働いた場合を想定する。この場合、管状操作部102は縮径していないため、管状操作部102が基端方向に移動すると、第1係合部106が第1突起部110に触れることなく、第1角部122が可動筒状体28の先端面に当接するとともに、可動筒状体28の基端面が第2突起部112に当接する。この状態では、管状部材22が軸線方向に短くならず、拡径しないため、カテーテル14と固定デバイス100との相対移動が阻止された状態が維持される。
【0112】
図13Bのように、管状操作部102の特に第2係合部108に物体Mが接触することにより、管状操作部102を先端方向に押す力が働いた場合を想定する。この場合、管状操作部102は縮径していないため、管状操作部102が先端方向に移動すると、第2係合部108が第2突起部112に触れることなく、第2角部124が可動筒状体28の基端面に当接するとともに、可動筒状体28の先端面が第1突起部110に当接する。この状態では、管状部材22が軸線方向に短くならず、拡径しないため、カテーテル14と固定デバイス100との相対移動が阻止された状態が維持される。
【0113】
なお、管状操作部102の胴体部104に何らの物体Mが接触し、これにより胴体部104を内方向に押圧する力が働いた場合には、
図12A及び
図12Bと同様に、第1係合部106と第2係合部108が縮径することにより、第1突起部110及び第2突起部112を軸線方向に操作可能な状態が生じ得る。しかしながら、その状態を保持したままで、その物体Mの力の作用する方向を軸線方向に変化させて固定デバイス100を移動させることは相当に困難であると考えられる。従って、固定デバイス100によれば、実質的に、殆どの意図しない移動の発生を防止することができる。
【0114】
以上説明したように、本実施形態に係る固定デバイス100によれば、管状操作部102を内方向に押圧した状態で軸線方向に移動させたときだけ、管状操作部102による第1突起部110又は第2突起部112に対する操作を可能としたので、管状操作部102に意図せずに何らかの物体Mが触れた場合でも、カテーテル14と固定デバイス100との相対位置の固定が解除されることを有効に防止することができる。
【0115】
また、本実施形態の場合、第1突起部110の外周面110aと第1係合部106の内周面106bが、固定デバイス100の先端方向に向かって縮径するように形成されるとともに、第2突起部112の外周面112aと第2係合部108の内周面108bが、固定デバイス100の基端方向に向かって縮径するように形成されているので、管状操作部102の自然状態において、管状操作部102が軸線方向に動いても、第1係合部106が第1突起部110に接触することを確実に防止できるとともに、第2係合部108が第2突起部112に接触することを確実に防止することができる。
【0116】
なお、第4実施形態において、第3実施形態と共通する各構成部分については、第1実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0117】
<他の変形例1>
上述した第1〜第4実施形態では、編組体36の全長にわたって樹脂層38を設けたが、
図14に示す固定デバイス80の管状部材22aのように、編組体36の長手方向の中央部には樹脂層を設けず、編組体36の両端部を含み且つ第1突起部24及び第2突起部26の前後を含む一定範囲のみに樹脂層82、84を設けてもよい。このような構成によっても、編組体36の両端部の外表面が露出することがないため、樹脂層82、84がない場合と比較して、使用者が管状部材22aの端部に触れて操作するときの操作感を向上させることができる。
【0118】
<他の変形例2>
上述した第1〜第4実施形態では、編組体36により構成された管状部材22が適用されたが、
図15に示す固定デバイス90のように、コイル部材92により構成された管状部材22bを適用してもよい。この場合、
図15に示すように、コイル部材92は、巻き数が少なくなるように、断面円形の線状素材でもよいが、断面が平板状の素材を螺旋状に巻いて製作したものがよい。
【0119】
コイル部材92が断面平板状の素材により形成された場合、断面円形の線状素材の場合と比較して、シャフト16との接触面積が大きく、縮径した際に十分な摩擦力が得られやすい。また、剛性が高いため、長手方向の一端部から他端部に向けて力をかけた際に力が伝わりやすい。このため、コイル部材92が十分に拡径し、シャフト16に対する摩擦力を確実に解除して、固定デバイス90とカテーテル14との相対移動を許容することができる。
【0120】
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。