特許第5961607号(P5961607)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5961607オルソゴナルリガンドによって活性化される改変PYR/PYL受容体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961607
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】オルソゴナルリガンドによって活性化される改変PYR/PYL受容体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160719BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20160719BHJP
   A01H 5/00 20060101ALI20160719BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20160719BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20160719BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   A01H1/00 A
   A01H5/00 A
   C07K14/705
   A23L33/10
   C12N5/10
【請求項の数】42
【全頁数】66
(21)【出願番号】特願2013-508226(P2013-508226)
(86)(22)【出願日】2011年4月27日
(65)【公表番号】特表2013-526858(P2013-526858A)
(43)【公表日】2013年6月27日
(86)【国際出願番号】US2011034202
(87)【国際公開番号】WO2011139798
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2014年2月5日
(31)【優先権主張番号】61/434,407
(32)【優先日】2011年1月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/328,999
(32)【優先日】2010年4月28日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】カトラー ショーン アール.
(72)【発明者】
【氏名】パク サン‐ヨル
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 Science,2009年 4月30日,Vol. 324,p. 1068-1071
【文献】 the Plant journal,2009年11月 9日,Vol. 61,p. 290-299
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
A01H 1/00
A01H 5/00
C12N 5/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
CiNii
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含む異種発現カセットを含む植物であって、
該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがPYR1(SEQ ID NO: 1)のK59位に対応するアミノ酸残基において変異を含み、該アミノ酸残基がアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンに変異し、かつ化学物質を該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該化学物質によって刺激され、かつ該化学物質が200μM以下の濃度で存在し、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触した場合には、該化学物質は該野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドの活性化を誘導しない、
前記植物。
【請求項2】
化学物質が、殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、殺線虫剤、植物活性化物質、相乗剤、除草剤薬害軽減剤(herbicide safener)、植物成長調節物質、昆虫忌避剤、または肥料を含む、請求項1記載の植物。
【請求項3】
化学物質が、ブロモキシニル、クロロキシニル、イオキシニル、クマテトラリル、ジクロベニル、フェンヘキサミド、ベノキサコル、およびBTH(アシベンゾラル-s-メチル)からなる群より選択される、請求項1記載の植物。
【請求項4】
SEQ ID NO: 1のK59位に対応するアミノ酸がアルギニンに変異する、請求項1記載の植物。
【請求項5】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の21位、41位、50位、57位、60位、82位、92位、102位、116位、125位、141位、および/または151位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、該変異が、H21Y、P41L、R50G、T57A、H60R、I82N、S92T、E102G、R116K、T125A、E141Q、E141D、N151D、またはそれらの組合せより選択され、ブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ブロモキシニル、該クロロキシニル、または該イオキシニルによって刺激される、請求項1記載の植物。
【請求項6】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の10位、12位、25位、27位、29位、33位、42位、43位、44位、47位、49位、74位、75位、81位、97位、110位、120位、123位、124位、133位、138位、139位、144位、154位、158位、163位、172位、173位、174位、および/または177位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、該変異が、R10Q、E12G、E12K、L25R、P27L、S29N、L33F、P42S、E43G、L44F、S47P、V49I、R74C、V75I、V81M、D97N、I110S、Y120C、Y120H、V123I、T124M、N133D、V138M、V139I、V144A、E154G、M158I、V163I、A172T、T173A、V174I、および/もしくはA177T、またはそれらの組合せより選択され、フェンヘキサミドを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該フェンヘキサミドによって刺激される、請求項1記載の植物。
【請求項7】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の59位、120位、および158位に対応するアミノ酸において変異を含み、該変異が、K59R、Y120H、およびM158Iであり、フェンヘキサミドを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該フェンヘキサミドによって刺激される、請求項1記載の植物。
【請求項8】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の62位および110位に対応するアミノ酸位置においてイソロイシン残基をさらに含む、請求項7記載の植物。
【請求項9】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の27位および/または63位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、該変異が、P27L、K63N、またはそれらの組合せより選択され、ジクロベニルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ジクロベニルによって刺激される、請求項1記載の植物。
【請求項10】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の119位に対応するアミノ酸において変異をさらに含み、該変異がN119Yであり、ベノキサコルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ベノキサコルによって刺激される、請求項1記載の植物。
【請求項11】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の24位、82位、159位、および/または161位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異をさらに含み、該変異が、Q24R、I82T、F159L、D161G、またはそれらの組合せより選択され、BTH(アシベンゾラル-s-メチル)を該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該BTH によって刺激される、請求項1記載の植物。
【請求項12】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがSEQ ID NO: 131〜139のいずれかと少なくとも90%同一であり、ブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、該ブロモキシニル、該クロロキシニル、または該イオキシニルによって刺激される、請求項1記載の植物。
【請求項13】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがSEQ ID NO: 124〜130または165〜178のいずれかと少なくとも90%同一であり、フェンヘキサミドを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該フェンヘキサミドによって刺激される、請求項1記載の植物。
【請求項14】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがSEQ ID NO: 140〜144のいずれかと少なくとも90%同一であり、ジクロベニルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ジクロベニルによって刺激される、請求項1記載の植物。
【請求項15】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがSEQ ID NO: 145〜146のいずれかと少なくとも90%同一であり、ベノキサコルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ベノキサコルによって刺激される、請求項1記載の植物。
【請求項16】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがSEQ ID NO: 147〜148または164のいずれかと少なくとも90%同一であり、BTH(アシベンゾラル-s-メチル)を該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該BTHによって刺激される、請求項1記載の植物。
【請求項17】
化学物質と接触した場合に、発現カセットを欠く植物と比べて改善された非生物的ストレスに対する耐性を有する、請求項1〜16のいずれか一項記載の植物。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか一項記載の植物に由来する植物細胞。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか一項記載の植物に由来する種子、花、葉、果実、加工食品、または食品成分。
【請求項20】
植物をブロモキシニル、クロロキシニル、イオキシニル、クマテトラリル、ジクロベニル、フェンヘキサミド、ベノキサコル、およびBTH(アシベンゾラル-s-メチル)からなる群より選択される化学物質と接触させることによって、請求項1〜16のいずれか一項記載の植物の、非生物的ストレスに対する耐性を改善する方法。
【請求項21】
(a)野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに変異を誘発させる段階;
(b)1つまたは複数の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを化学物質と接触させる段階;および
(c)該化学物質が1つまたは複数の該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを活性化するかどうかを判定する段階であって、活性化によって、1つまたは複数の該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該化学物質で刺激されることが確認される、段階
を含む、化学物質を変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に該化学物質によって刺激される該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを作製する方法であって、
該化学物質が200μM以下の濃度で存在し、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触した場合には、該化学物質は該野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドの活性化を誘導しない、
前記方法。
【請求項22】
1つまたは複数の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを化学物質と接触させる前に、該化学物質をスクリーニングして、該化学物質が野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに結合するかどうかを判定する段階を、段階(b)の前にさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含む発現カセットであって、
該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがPYR1(SEQ ID NO: 1)のK59位に対応するアミノ酸残基において変異を含み、該アミノ酸残基がアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンに変異し、かつ化学物質を該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該化学物質によって刺激され、かつ該化学物質が200μM以下の濃度で存在し、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触した場合には、該化学物質は該野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドの活性化を誘導しない、
前記発現カセット。
【請求項24】
SEQ ID NO: 1のK59位に対応するアミノ酸残基がアルギニンに変異する、請求項23記載の発現カセット。
【請求項25】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の21位、41位、50位、57位、60位、82位、92位、102位、116位、125位、141位、および/または151位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、該変異が、H21Y、P41L、R50G、T57A、H60R、I82N、S92T、E102G、R116K、T125A、E141Q、E141D、N151D、またはそれらの組合せより選択され、ブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ブロモキシニル、該クロロキシニル、または該イオキシニルによって刺激される、請求項23記載の発現カセット。
【請求項26】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の10位、12位、25位、27位、29位、33位、42位、43位、44位、47位、49位、74位、75位、81位、97位、110位、120位、123位、124位、133位、138位、139位、144位、154位、158位、163位、172位、173位、174位、および/または177位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、該変異が、R10Q、E12G、E12K、L25R、P27L、S29N、L33F、P42S、E43G、L44F、S47P、V49I、R74C、V75I、V81M、D97N、I110S、Y120C、Y120H、V123I、T124M、N133D、V138M、V139I、V144A、E154G、M158I、V163I、A172T、T173A、V174I、および/もしくはA177T、またはそれらの組合せより選択され、フェンヘキサミドを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該フェンヘキサミドによって刺激される、請求項23記載の発現カセット。
【請求項27】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の59位、120位、および158位に対応するアミノ酸において変異を含み、該変異が、K59R、Y120H、およびM158Iであり、フェンヘキサミドを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該フェンヘキサミドによって刺激される、請求項23記載の発現カセット。
【請求項28】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の62位および110位に対応するアミノ酸位置においてイソロイシン残基をさらに含む、請求項27記載の発現カセット。
【請求項29】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の27位および/または63位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、該変異が、P27L、K63N、またはそれらの組合せより選択され、ジクロベニルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ジクロベニルによって刺激される、請求項23記載の発現カセット。
【請求項30】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の119位に対応するアミノ酸において変異をさらに含み、該変異がN119Yであり、ベノキサコルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ベノキサコルによって刺激される、請求項23記載の発現カセット。
【請求項31】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の24位、82位、159位、および/または161位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異をさらに含み、該変異が、Q24R、I82T、F159L、D161G、またはそれらの組合せより選択され、BTH(アシベンゾラル-s-メチル)を該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該BTH によって刺激される、請求項23記載の発現カセット。
【請求項32】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがSEQ ID NO: 131〜139のいずれかと少なくとも90%同一であり、ブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、該ブロモキシニル、該クロロキシニル、または該イオキシニルによって刺激される、請求項23記載の発現カセット。
【請求項33】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがSEQ ID NO: 124〜130または165〜178のいずれかと少なくとも90%同一であり、フェンヘキサミドを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該フェンヘキサミドによって刺激される、請求項23記載の発現カセット。
【請求項34】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがSEQ ID NO: 140〜144のいずれかと少なくとも90%同一であり、ジクロベニルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ジクロベニルによって刺激される、請求項23記載の発現カセット。
【請求項35】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがSEQ ID NO: 145〜146のいずれかと少なくとも90%同一であり、ベノキサコルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ベノキサコルによって刺激される、請求項23記載の発現カセット。
【請求項36】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがSEQ ID NO: 147〜148または164のいずれかと少なくとも90%同一であり、BTH(アシベンゾラル-s-メチル)を該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該BTHによって刺激される、請求項23記載の発現カセット。
【請求項37】
プロモーターが誘導性である、請求項23記載の発現カセット。
【請求項38】
プロモーターが組織特異的プロモーターである、請求項23記載の発現カセット。
【請求項39】
請求項23〜38のいずれか一項記載の発現カセットを含む、発現ベクター。
【請求項40】
SEQ ID NO: 124〜148または164〜178のいずれかと少なくとも90%同一であり、PYR1(SEQ ID NO: 1)のK59位に対応するアミノ酸残基において変異を含み、該アミノ酸残基がアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンに変異する、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を成長させる段階を含む、増大したストレス耐性を有する植物を作製する方法であって、
該トランスジェニック植物が該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現する、
前記方法。
【請求項41】
SEQ ID NO: 124〜148または164〜178のいずれかと少なくとも90%同一であり、PYR1(SEQ ID NO: 1)のK59位に対応するアミノ酸残基において変異を含み、該アミノ酸残基がアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンに変異する、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを含む、ポリペプチドであって、化学物質を該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該化学物質によって刺激され、かつ該化学物質が200μM以下の濃度で存在し、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触した場合には、該化学物質は該野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドの活性化を誘導しない、前記ポリペプチド
【請求項42】
SEQ ID NO: 124〜148または164〜178のいずれかと少なくとも90%同一であり、PYR1(SEQ ID NO: 1)のK59位に対応するアミノ酸残基において変異を含み、該アミノ酸残基がアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンに変異する、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドであって、化学物質を該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該化学物質によって刺激され、かつ該化学物質が200μM以下の濃度で存在し、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触した場合には、該化学物質は該野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドの活性化を誘導しない、前記ポリヌクレオチド
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、各内容があらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる、2010年4月28日に出願された米国特許仮出願第61/328,999号、および2011年1月19日に出願された米国特許仮出願第61/434,407号に対して優先権の恩典を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究および開発のもとで行われた発明に対する権利に関する記載
本発明は、米国国立科学財団(National Science Foundation)によって授与された助成金番号IOS0820508のもとで、政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
温度の上昇および淡水供給の減少は環境ストレスの2つの形態であり、非生物的ストレスとも呼ばれ、農業によって生産される食物の量を減少させる。非生物的ストレスに対する耐性の重要な調節物質は、様々な非生物的ストレスに応答した植物によって合成され、植物の生存を促進する適応応答を調整する植物ホルモンアブシジン酸(ABA)である(Cutler, S. et al., Annual Review of Plant Biology (2009)(非特許文献1); Nambara, E. et al., Annual Review of Plant Biology 56:165-185 (2005)(非特許文献2))。ABA感受性が増大するように操作された作物は、乾燥条件下での収穫量の改善を示す(Wang, Y. et al., Plant J 43:413-424 (2005)(非特許文献3))。さらに、農場の植物にABAまたはABA類似体を直接的に適用することにより、水の使用効率が改善することが示されている(Hawkins, A.F. et al., Plant Growth Regulators for Agricultural and Amenity Use (British Crop Protection Council) (1987)(非特許文献4); Kreeb, K.H. et al., Structural and Functional Responses to Environmental Stresses (Balogh Scientific Books) (1989)(非特許文献5));しかしながら、ABAの複雑な製造手順(route)および高いコストが原因で、この用途向けにABAを商用化することには成功していない。
【0004】
興味深いことに、多数の殺真菌剤および殺虫剤は、メカニズムが不明なストレス耐性「副次的作用」を示し、ストレス耐性用途向けに商用化されており、このことから、ストレス耐性を制御するための化学的方法に対する強い関心および認識された必要性が示される(Asrar, J. et al., US 2009/0270254 A1 (USA, Monsanto Technology) (2003)(特許文献1); Beckers, G.J.M. et al., Current Opinion in Plant Biology 10:425-431 (2007)(非特許文献6); Schulz, A. et al., US 2007/0124839 A1 (USA, Bayer Crop Sciences) (2006)(特許文献2))。この関心の重要な推進要因(driver)となっているのは、過去100年間に達成されたトウモロコシ収穫量の飛躍的な増加は、トウモロコシの新しい高収量品種における非生物的ストレスに対する耐性の改善に主に起因し得るという認識である(Duvick, D.N. et al., Crop Science 39:1622-1630 (1999)(非特許文献7); Tollenaar, M. et al., Field Crops Research 75:161-169 (2002)(非特許文献8); Tollenaar, M. et al., Crop Sci 39:1597-1604 (1999)(非特許文献9))。ABAは、植物ストレス生理の不可欠なホルモン調節物質として認識されているため、作物のABA経路を調節することに強い関心が持たれている。ABAシグナル伝達経路を制御するための見込みある1つの箇所は受容体タンパク質であり、原理的には、ABAシグナル伝達およびストレス耐性の化学的調節および遺伝的調節の両方を可能にするはずである。
【0005】
近年、ABA受容体の新しいファミリーであるピラバクチン耐性/PYR様(「PYR/PYL」)ファミリーが、ABAシグナル伝達の調節物質として同定された(Park, S.Y. et al., Science 324:1068-1071 (2009)(非特許文献10))。ABA受容体PYL5の過剰発現は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)植物に耐乾燥性を与ることから(Santiago, J. et al., The Plant Journal 9999 (2009)(非特許文献11))、この新しい受容体ファミリーが植物のストレス耐性を制御するための重要な標的であることが実証される。しかしながら、遺伝子の過剰発現は、「収量低下(yield drag)」と呼ばれる収穫量の不利な結果を招き得る。収量低下は、成長の遅れと関連付けられているストレス耐性経路の無秩序な活性化が、正常条件下(すなわち、乾燥も他のストレス要因もない条件下)で起こることが原因で発生すると考えられている。ABAシグナル伝達の調節された制御を実現する1つの方法は、ABA受容体を活性化する化学的作用物質(すなわちアゴニスト)を開発することである。乾燥条件または他のストレス条件が順々に続いた後にこれらを植物に適用することができ、これにより、不利な条件における選択的防御が可能になる。これにより、理想的な成長条件下で収穫量を低下させることなく、ストレス耐性という利点を得ることが可能になる。
【0006】
原理的に、ABAは、これらの有利な点を得るためのアゴニストとして使用され得る。しかしながら、これは、製造に費用がかかり、UV光異性化および代謝不活性化の両方によって急速に分解する天然産物である。また、これは、農業化学品として使用するための適性にあるいは影響を及ぼし得る生理的作用を哺乳動物において有する(Guri, A.J. et al., Clin Nutr. (2010)(非特許文献12))。したがって、安価で環境的に安定であり非毒性の分子が、ABAシグナル伝達を制御するために用いる理想的な試薬である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】Asrar, J. et al., US 2009/0270254 A1 (USA, Monsanto Technology) (2003)
【特許文献2】Schulz, A. et al., US 2007/0124839 A1 (USA, Bayer Crop Sciences) (2006)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Cutler, S. et al., Annual Review of Plant Biology (2009)
【非特許文献2】Nambara, E. et al., Annual Review of Plant Biology 56:165-185 (2005)
【非特許文献3】Wang, Y. et al., Plant J 43:413-424 (2005)
【非特許文献4】Hawkins, A.F. et al., Plant Growth Regulators for Agricultural and Amenity Use (British Crop Protection Council) (1987)
【非特許文献5】Kreeb, K.H. et al., Structural and Functional Responses to Environmental Stresses (Balogh Scientific Books) (1989)
【非特許文献6】Beckers, G.J.M. et al., Current Opinion in Plant Biology 10:425-431 (2007)
【非特許文献7】Duvick, D.N. et al., Crop Science 39:1622-1630 (1999)
【非特許文献8】Tollenaar, M. et al., Field Crops Research 75:161-169 (2002)
【非特許文献9】Tollenaar, M. et al., Crop Sci 39:1597-1604 (1999)
【非特許文献10】Park, S.Y. et al., Science 324:1068-1071 (2009)
【非特許文献11】Santiago, J. et al., The Plant Journal 9999 (2009)
【非特許文献12】Guri, A.J. et al., Clin Nutr. (2010)
【発明の概要】
【0009】
本発明は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含む異種発現カセットを含む植物(または植物細胞、種子、花、葉、果実、もしくはそのような植物に由来する他の植物部分、またはそのような植物に由来する加工食品もしくは食品成分)であって、化学物質を変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該化学物質によって刺激され(agonized)、かつ該化学物質を野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合には、該化学物質は野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを顕著には刺激しない、植物(または植物細胞、種子、花、葉、果実、もしくはそのような植物に由来する他の植物部分、またはそのような植物に由来する加工食品もしくは食品成分)を提供する。
【0010】
いくつかの態様において、化学物質は、殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、殺線虫剤、植物活性化物質、相乗剤、除草剤薬害軽減剤(herbicide safener)、植物成長調節物質、昆虫忌避剤、または肥料を含む。
【0011】
いくつかの態様において、化学物質は、ブロモキシニル、クロロキシニル、イオキシニル、クマテトラリル、ジクロベニル、フェンヘキサミド、ベノキサコル、およびBTH(アシベンゾラル-s-メチル)からなる群より選択される。
【0012】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸はXであり、Xは、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンである。
【0013】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸はXであり、Xは、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンであり、化学物質は、ブロモキシニル、クロロキシニル、イオキシニル、ジクロベニル、ベノキサコル、またはフェンヘキサミドである。
【0014】
ブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルによって刺激されるいくつかの態様において、SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸はXであり、Xは、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンであり、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の21位、41位、50位、57位、60位、82位、92位、102位、116位、125位、141位、および/または151位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、この変異は、H21Y、P41L、R50G、T57A、H60R、I82N、S92T、E102G、R116K、T125A、E141Q、E141D、N151D、またはそれらの組合せより選択される。
【0015】
フェンヘキサミドを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがフェンヘキサミドによって刺激されるいくつかの態様において、SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸はXであり、Xは、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンであり、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の10位、12位、25位、27位、29位、33位、42位、43位、44位、47位、49位、74位、75位、81位、97位、110位、120位、123位、124位、133位、138位、139位、144位、154位、158位、163位、172位、173位、174位、および/または177位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、この変異は、R10Q、E12G、E12K、L25R、P27L、S29N、L33F、P42S、E43G、L44F、S47P、V49I、R74C、V75I、V81M、D97N、I110S、Y120C、Y120H、V123I、T124M、N133D、V138M、V139I、V144A、E154G、M158I、V163I、A172T、T173A、V174I、A177T、またはそれらの組合せより選択される。
【0016】
フェンヘキサミドを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがフェンヘキサミドによって刺激されるいくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の59位、120位、および158位に対応するアミノ酸において変異を含み、これらの変異は、K59R、Y120H、およびM158Iである。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の62位および110位に対応するアミノ酸位置においてイソロイシン残基をさらに含む。
【0017】
ジクロベニルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがジクロベニルによって刺激されるいくつかの態様において、SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸はXであり、Xは、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンであり、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の27位および/または63位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、この変異は、P27L、K63N、またはそれらの組合せより選択される。
【0018】
ジクロベニルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがジクロベニルによって刺激されるいくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の26位、37位、71位、および/または94位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異を含み、この変異は、D26G、R37Q、F71S、E94D、またはそれらの組合せより選択される。
【0019】
ベノキサコルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがベノキサコルによって刺激されるいくつかの態様において、SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸はXであり、Xは、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンであり、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の119位に対応するアミノ酸において変異をさらに含み、この変異はN119Yである。
【0020】
ベノキサコルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがベノキサコルによって刺激されるいくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の110位、114位、および/または 138位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異を含み、この変異は、I110T、E114D、V138M、またはそれらの組合せより選択される。
【0021】
BTHを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがBTHによって刺激されるいくつかの態様において、SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸はXであり、Xは、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンであり、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の24位、82位、159位、および/または161位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異をさらに含み、この変異は、Q24R、I82T、F159L、D161G、またはそれらの組合せより選択される。
【0022】
BTHを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがBTHによって刺激されるいくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の115位および/または159位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異を含み、この変異は、H115Y、F159S、F159L、またはそれらの組合せより選択される。
【0023】
いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、または119のいずれかと実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)であり、本明細書において説明する1つまたは複数の変異を含む。
【0024】
いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 131〜139のいずれか(すなわち、SEQ ID NO: 131、132、133、134、135、136、137、138、または139のいずれか)の配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)であり、ブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、ブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルによって刺激される。
【0025】
いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 124〜130または165〜178のいずれか(すなわち、SEQ ID NO: 124、125、126、127、128、129、130、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、または178のいずれか)の配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)であり、フェンヘキサミドを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、フェンヘキサミドによって刺激される。
【0026】
いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 140〜144のいずれか(すなわち、SEQ ID NO: 140、141、142、143、または144のいずれか) の配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)であり、ジクロベニルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、ジクロベニルによって刺激される。
【0027】
いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 145またはSEQ ID NO: 146のいずれかの配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)であり、ベノキサコルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、ベノキサコルによって刺激される。
【0028】
いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 147、148、または164のいずれかの配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)であり、BTH(アシベンゾラル-s-メチル)を変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、BTHによって刺激される。
【0029】
いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR/PYL受容体ポリペプチドのリガンド結合ポケットを構成するアミノ酸残基において少なくとも1つの変異を含む。
【0030】
いくつかの態様において、植物は、化学物質と接触した場合に、発現カセットを欠く植物と比べて改善された非生物的ストレスに対する耐性を有する。
【0031】
本発明はまた、植物をブロモキシニル、クロロキシニル、イオキシニル、クマテトラリル、ジクロベニル、フェンヘキサミド、ベノキサコル、およびBTH(アシベンゾラル-s-メチル)からなる群より選択される化学物質と接触させることによって、前述したような植物の、非生物的ストレスに対する耐性を改善する方法も提供する。
【0032】
本発明はまた、(例えば、本明細書において説明するような)本発明の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを含むポリペプチドも提供する。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO: 124〜148または164〜178のいずれか(すなわち、SEQ ID NO: 124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、または178のいずれか)の配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)である変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを含む。
【0033】
本発明はさらに、(例えば、本明細書において説明するような)1つまたは複数の本発明の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO: 124〜148または164〜178のいずれか(すなわち、SEQ ID NO: 124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、または178のいずれか)の配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)である1つまたは複数の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする。本発明はさらに、(例えば、本明細書において説明するような)1つまたは複数の本発明の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸も提供する。
【0034】
本発明はまた、化学物質を変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に該化学物質によって刺激される変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを作製する方法であって、該化学物質を野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合には、該化学物質は野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを顕著には刺激しない、方法も提供し、該方法は以下の段階を含む:
(a)野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに変異を誘発させる段階;
(b)1つまたは複数の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを化学物質と接触させる段階;および
(c)該化学物質が1つまたは複数の該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを活性化するかどうかを判定する段階であって、活性化によって、1つまたは複数の該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該化学物質で刺激されることが確認される、段階。
【0035】
いくつかの態様において、この方法は、1つまたは複数の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを化学物質と接触させる前に、化学物質をスクリーニングして、その化学物質が野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに結合するかどうかを判定する段階を、段階(b)の前にさらに含む。
【0036】
いくつかの態様において、この方法の判定する段階(c)は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドと2型タンパク質ホスファターゼ(PP2C)との相互作用を検出するツーハイブリッド系を含む細胞に化学物質を接触させる段階であって、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドとPP2Cとの化学物質特異的な相互作用がある場合、この化学物質によって変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが刺激されることが確認される、段階を含む。
【0037】
いくつかの態様において、この方法の化学物質は、殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、殺線虫剤、植物活性化物質、相乗剤、除草剤薬害軽減剤、植物成長調節物質、昆虫忌避剤、または肥料を含む。
【0038】
いくつかの態様において、この方法の化学物質は、ブロモキシニル、クロロキシニル、イオキシニル、クマテトラリル、ジクロベニル、フェンヘキサミド、ベノキサコル、およびBTH(アシベンゾラル-s-メチル)からなる群より選択される。
【0039】
本発明はまた、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含む発現カセットであって、化学物質を変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該化学物質によって刺激され、かつ該化学物質を野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合には、該化学物質は野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを顕著には刺激しない、発現カセットも提供する。
【0040】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含み、SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸はXであり、Xは、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンである。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸はXであり、Xは、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンであり、化学物質は、ブロモキシニル、クロロキシニル、イオキシニル、ジクロベニル、ベノキサコル、またはフェンヘキサミドである。
【0041】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含み、ブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルによって刺激され、SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸はXであり、Xは、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンであり、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の21位、41位、50位、57位、60位、82位、92位、102位、116位、125位、141位、および/または151位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、この変異は、H21Y、P41L、R50G、T57A、H60R、I82N、S92T、E102G、R116K、T125A、E141Q、E141D、N151D、またはそれらの組合せより選択される。
【0042】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含み、フェンヘキサミドを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはフェンヘキサミドによって刺激され、SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸はXであり、Xは、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンであり、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の10位、12位、25位、27位、29位、33位、42位、43位、44位、47位、49位、74位、75位、81位、97位、110位、120位、123位、124位、133位、138位、139位、144位、154位、158位、163位、172位、173位、174位、および/または177位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、この変異は、R10Q、E12G、E12K、L25R、P27L、S29N、L33F、P42S、E43G、L44F、S47P、V49I、R74C、V75I、V81M、D97N、I110S、Y120C、Y120H、V123I、T124M、N133D、V138M、V139I、V144A、E154G、M158I、V163I、A172T、T173A、V174I、A177T、またはそれらの組合せより選択される。
【0043】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含み、フェンヘキサミドを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはフェンヘキサミドによって刺激され、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の59位、120位、および158位に対応するアミノ酸において変異を含み、これらの変異は、K59R、Y120H、およびM158Iである。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の62位および110位に対応するアミノ酸位置においてイソロイシン残基をさらに含む。
【0044】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含み、ジクロベニルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはジクロベニルによって刺激され、SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸はXであり、Xは、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンであり、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の27位および/または63位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、この変異は、P27L、K63N、またはそれらの組合せより選択される。
【0045】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含み、ジクロベニルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはジクロベニルによって刺激され、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の26位、37位、71位、および/または94位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異を含み、この変異は、D26G、R37Q、F71S、E94D、またはそれらの組合せより選択される。
【0046】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含み、ベノキサコルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはベノキサコルによって刺激され、SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸はXであり、Xは、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンであり、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の119位に対応するアミノ酸において変異をさらに含み、この変異はN119Yである。
【0047】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含み、ベノキサコルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはベノキサコルによって刺激され、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の110位、114位、および/または138位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異を含み、この変異は、I110T、E114D、V138M、またはそれらの組合せより選択される。
【0048】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含み、BTHを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはBTHによって刺激され、SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸はXであり、Xは、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンであり、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の24位、82位、159位、および/または161位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異をさらに含み、この変異は、Q24R、I82T、F159L、D161G、またはそれらの組合せより選択される。
【0049】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含み、BTHを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはBTHによって刺激され、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の115位および/または159位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異を含み、この変異は、H115Y、F159S、F159L、またはそれらの組合せより選択される。
【0050】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含み、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 131〜139のいずれか(すなわち、SEQ ID NO: 131、132、133、134、135、136、137、138、または139のいずれか)の配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)であり、ブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルによって刺激される。
【0051】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含み、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 124〜130または165〜178のいずれか(すなわち、SEQ ID NO: 124、125、126、127、128、129、130、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、または178のいずれか)の配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)であり、フェンヘキサミドを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはフェンヘキサミドによって刺激される。
【0052】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含み、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはSEQ ID NO: 140〜144のいずれか(すなわち、SEQ ID NO: 140、141、142、143、または144のいずれか)の配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)であり、ジクロベニルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはジクロベニルによって刺激される。
【0053】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含み、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはSEQ ID NO: 145またはSEQ ID NO: 146のいずれかの配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)であり、ベノキサコルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはベノキサコルによって刺激される。
【0054】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含み、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはSEQ ID NO: 147、148、または164のいずれかの配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)であり、BTH(アシベンゾラル-s-メチル)を変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはBTHによって刺激される。
【0055】
いくつかの態様において、発現カセットは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモータを含み、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR/PYL受容体ポリペプチドのリガンド結合ポケットを構成するアミノ酸残基において少なくとも1つの変異を含む。
【0056】
本発明はまた、(例えば、本明細書において説明するような)本発明の発現カセットを含む発現ベクターも提供する。
【0057】
本発明はさらに、(例えば、本明細書において説明するような)本発明の発現カセットを含むポリヌクレオチド配列も提供する。
【0058】
本発明はさらに、増大したストレス耐性を有する植物を作製する方法も提供する。いくつかの態様において、この方法は、SEQ ID NO: 124〜148または164〜178のいずれか(すなわち、SEQ ID NO: 124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、または178のいずれか)の配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)である変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を成長させる段階を含み、このトランスジェニック植物は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現する。
【0059】
いくつかの態様において、この方法は、SEQ ID NO: 131〜139のいずれかの配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)である変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を成長させる段階を含み、このトランスジェニック植物は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現し、ブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、ブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルによって刺激される。
【0060】
いくつかの態様において、この方法は、SEQ ID NO: 124〜130または165〜178のいずれかの配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)である変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を成長させる段階を含み、このトランスジェニック植物は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現し、フェンヘキサミドを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異受容体ポリペプチドはフェンヘキサミドによって刺激される。
【0061】
いくつかの態様において、この方法は、SEQ ID NO: 140〜144のいずれかの配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)である変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を成長させる段階を含み、このトランスジェニック植物は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現し、ジクロベニルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはジクロベニルによって刺激される。
【0062】
いくつかの態様において、この方法は、SEQ ID NO: 145〜146のいずれかの配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)である変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を成長させる段階を含み、このトランスジェニック植物は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現し、ベノキサコルを変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはベノキサコルによって刺激される。
【0063】
いくつかの態様において、この方法は、SEQ ID NO: 147〜148または164のいずれかの配列を有するか、または実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)である変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を成長させる段階を含み、このトランスジェニック植物は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現し、BTH(アシベンゾラル-s-メチル)を変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはBTHによって刺激される。
【0064】
いくつかの態様において、この方法は、SEQ ID NO: 1〜119のいずれか(すなわち、SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、または119のいずれか)と実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)であり、かつSEQ ID NO: 1のK59位に対応する位置にアミノ酸Xを含み、Xが、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンである変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を成長させる段階を含み、このトランスジェニック植物は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現する。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1の21位、41位、50位、57位、60位、82位、92位、102位、116位、125位、141位、および/または151位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、この変異は、H21Y、P41L、R50G、T57A、H60R、I82N、S92T、E102G、R116K、T125A、E141Q、E141D、N151D、またはそれらの組合せより選択される。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1の10位、12位、25位、27位、29位、33位、42位、43位、44位、47位、49位、74位、75位、81位、97位、110位、120位、123位、124位、133位、138位、139位、144位、154位、158位、163位、172位、173位、174位、および/または177位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、この変異は、R10Q、E12G、E12K、L25R、P27L、S29N、L33F、P42S、E43G、L44F、S47P、V49I、R74C、V75I、V81M、D97N、I110S、Y120C、Y120H、V123I、T124M、N133D、V138M、V139I、V144A、E154G、M158I、V163I、A172T、T173A、V174I、A177T、またはそれらの組合せより選択される。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1の27位および/または63位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、この変異は、P27L、K63N、またはそれらの組合せより選択される。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1の119位に対応するアミノ酸において変異をさらに含み、この変異はN119Yである。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1の24位、82位、159位、および/または161位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異をさらに含み、この変異は、Q24R、I82T、F159L、D161G、またはそれらの組合せより選択される。
【0065】
いくつかの態様において、方法は、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかと実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)であり、かつSEQ ID NO: 1の26位、37位、71位、および/または94位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異を含み、この変異が、R37Q、F71S、E94D、またはそれらの組合せより選択される、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を成長させる段階を含み、このトランスジェニック植物は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現する。
【0066】
いくつかの態様において、方法は、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかと実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)であり、かつSEQ ID NO: 1の110位、114位、および/または138位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異を含み、この変異が、I110T、E114D、V138M、またはそれらの組合せより選択される、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を成長させる段階を含み、このトランスジェニック植物は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現する。
【0067】
いくつかの態様において、方法は、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかと実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)である変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を成長させる段階を含み、この変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1の115位および/または159位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異を含み、この変異は、H115Y、F159S、F159L、またはそれらの組合せより選択され、このトランスジェニック植物は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現する。
【0068】
いくつかの態様において、方法は、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかと実質的に同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一)である変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を成長させる段階を含み、この変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1の59位、120位、および158位に対応するアミノ酸において変異を含み、この変異は、K59R、Y120H、およびM158Iであり、このトランスジェニック植物は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現する。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1の62位および110位に対応するアミノ酸位置においてイソロイシン残基をさらに含む。
[本発明1001]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含む異種発現カセットを含む植物であって、
化学物質を該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該化学物質によって刺激され、かつ該化学物質を野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合には、該化学物質は該野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを顕著には刺激しない、
前記植物。
[本発明1002]
化学物質が、殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、殺線虫剤、植物活性化物質、相乗剤、除草剤薬害軽減剤(herbicide safener)、植物成長調節物質、昆虫忌避剤、または肥料を含む、本発明1001の植物。
[本発明1003]
化学物質が、ブロモキシニル、クロロキシニル、イオキシニル、クマテトラリル、ジクロベニル、フェンヘキサミド、ベノキサコル、およびBTH(アシベンゾラル-s-メチル)からなる群より選択される、本発明1001の植物。
[本発明1004]
SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸がXであり、Xが、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファンである、本発明1001の植物。
[本発明1005]
化学物質が、ブロモキシニル、クロロキシニル、イオキシニル、ジクロベニル、ベノキサコル、またはフェンヘキサミドである、本発明1004の植物。
[本発明1006]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の21位、41位、50位、57位、60位、82位、92位、102位、116位、125位、141位、および/または151位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、該変異が、H21Y、P41L、R50G、T57A、H60R、I82N、S92T、E102G、R116K、T125A、E141Q、E141D、N151D、またはそれらの組合せより選択され、ブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ブロモキシニル、該クロロキシニル、または該イオキシニルによって刺激される、本発明1004の植物。
[本発明1007]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の10位、12位、25位、27位、29位、33位、42位、43位、44位、47位、49位、74位、75位、81位、97位、110位、120位、123位、124位、133位、138位、139位、144位、154位、158位、163位、172位、173位、174位、および/または177位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、該変異が、R10Q、E12G、E12K、L25R、P27L、S29N、L33F、P42S、E43G、L44F、S47P、V49I、R74C、V75I、V81M、D97N、I110S、Y120C、Y120H、V123I、T124M、N133D、V138M、V139I、V144A、E154G、M158I、V163I、A172T、T173A、V174I、および/もしくはA177T、またはそれらの組合せより選択され、フェンヘキサミドを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該フェンヘキサミドによって刺激される、本発明1004の植物。
[本発明1008]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の59位、120位、および158位に対応するアミノ酸において変異を含み、該変異が、K59R、Y120H、およびM158Iであり、フェンヘキサミドを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該フェンヘキサミドによって刺激される、本発明1001の植物。
[本発明1009]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の62位および110位に対応するアミノ酸位置においてイソロイシン残基をさらに含む、本発明1008の植物。
[本発明1010]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の27位および/または63位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異をさらに含み、該変異が、P27L、K63N、またはそれらの組合せより選択され、ジクロベニルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ジクロベニルによって刺激される、本発明1004の植物。
[本発明1011]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の26位、37位、71位、および/または94位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異を含み、該変異が、D26G、R37Q、F71S、E94D、またはそれらの組合せより選択され、ジクロベニルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ジクロベニルによって刺激される、本発明1001の植物。
[本発明1012]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の119位に対応するアミノ酸において変異をさらに含み、該変異がN119Yであり、ベノキサコルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ベノキサコルによって刺激される、本発明1004の植物。
[本発明1013]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の110位、114位、および/または 138位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異を含み、該変異が、I110T、E114D、V138M、またはそれらの組合せより選択され、ベノキサコルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ベノキサコルによって刺激される、本発明1001の植物。
[本発明1014]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の24位、82位、159位、および/または161位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異をさらに含み、該変異が、Q24R、I82T、F159L、D161G、またはそれらの組合せより選択され、BTH(アシベンゾラル-s-メチル)を該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該BTH によって刺激される、本発明1004の植物。
[本発明1015]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PYR1(SEQ ID NO: 1)の115位および/または159位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異を含み、該変異が、H115Y、F159S、F159L、またはそれらの組合せより選択され、BTH(アシベンゾラル-s-メチル)を該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該BTHによって刺激される、本発明1001の植物。
[本発明1016]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがSEQ ID NO: 131〜139のいずれかと実質的に同一であり、ブロモキシニル、クロロキシニル、またはイオキシニルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、該ブロモキシニル、該クロロキシニル、または該イオキシニルによって刺激される、本発明1001の植物。
[本発明1017]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがSEQ ID NO: 124〜130または165〜178のいずれかと実質的に同一であり、フェンヘキサミドを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該フェンヘキサミドによって刺激される、本発明1001の植物。
[本発明1018]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがSEQ ID NO: 140〜144のいずれかと実質的に同一であり、ジクロベニルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ジクロベニルによって刺激される、本発明1001の植物。
[本発明1019]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがSEQ ID NO: 145〜146のいずれかと実質的に同一であり、ベノキサコルを該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該ベノキサコルによって刺激される、本発明1001の植物。
[本発明1020]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがSEQ ID NO: 147〜148または164のいずれかと実質的に同一であり、BTH(アシベンゾラル-s-メチル)を該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該BTHによって刺激される、本発明1001の植物。
[本発明1021]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが、該PYR/PYL受容体ポリペプチドのリガンド結合ポケットを構成するアミノ酸残基において少なくとも1つの変異を含む、本発明1001の植物。
[本発明1022]
化学物質と接触した場合に、発現カセットを欠く植物と比べて改善された非生物的ストレスに対する耐性を有する、本発明1001〜1021のいずれかの植物。
[本発明1023]
本発明1001〜1021のいずれかの植物に由来する植物細胞。
[本発明1024]
本発明1001〜1021のいずれかの植物に由来する種子、花、葉、果実、加工食品、または食品成分。
[本発明1025]
植物をブロモキシニル、クロロキシニル、イオキシニル、クマテトラリル、ジクロベニル、フェンヘキサミド、ベノキサコル、およびBTH(アシベンゾラル-s-メチル)からなる群より選択される化学物質と接触させることによって、本発明1001〜1021のいずれかの植物の、非生物的ストレスに対する耐性を改善する方法。
[本発明1026]
(a)野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに変異を誘発させる段階;
(b)1つまたは複数の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを化学物質と接触させる段階;および
(c)該化学物質が1つまたは複数の該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを活性化するかどうかを判定する段階であって、活性化によって、1つまたは複数の該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該化学物質で刺激されることが確認される、段階
を含む、化学物質を変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に該化学物質によって刺激される該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを作製する方法であって、
該化学物質を野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合には、該化学物質は該野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを顕著には刺激しない、
前記方法。
[本発明1027]
1つまたは複数の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを化学物質と接触させる前に、該化学物質をスクリーニングして、該化学物質が野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに結合するかどうかを判定する段階を、段階(b)の前にさらに含む、本発明1026の方法。
[本発明1028]
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含む発現カセットであって、
化学物質を該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが該化学物質によって刺激され、かつ該化学物質を野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合には、該化学物質は該野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを顕著には刺激しない、
前記発現カセット。
[本発明1029]
本発明1028の発現カセットを含む、発現ベクター。
[本発明1030]
SEQ ID NO: 124〜148または164〜178のいずれかと実質的に同一である変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を成長させる段階を含む、増大したストレス耐性を有する植物を作製する方法であって、
該トランスジェニック植物が該変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現する、
前記方法。
[本発明1031]
SEQ ID NO: 124〜148または164〜178のいずれかと実質的に同一である変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを含む、ポリペプチド。
[本発明1032]
SEQ ID NO: 124〜148または164〜178のいずれかと実質的に同一である変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】PYR1変異体27-18は、フェンヘキサミドに対する応答性を与えるが、ABAに対する応答性は与えない。インビトロのPP2Cホスファターゼ活性アッセイ法を用い、野生型PYR1対照と比較して、濃度を漸増させたアブシジン酸(「ABA」)(A)およびフェンヘキサミド(B)に対する代表的PYR1変異体27-18(S47P、K59R、およびY120Hの置換変異を含む)の応答性を試験した。
図2】27C-2変異体のフェンヘキサミド応答性のために不可欠な残基の同定。A:変異体(パネルの左側に列挙した)をpBD-PYR1において構築し、Y190 pAD-HAB1酵母細胞に形質転換した。次いで、濃度を漸増させたフェンヘキサミドのもとで形質転換体を増殖させ、Park et al., 2009において説明されているようにして実施したX-gal染色によって応答性を採点した。図に示されるように、変異K59R、Y120H、およびM158Iは、27C-2によるフェンヘキサミド応答に必要である。B:PYR1 K59R、Y120H、M158I変異体のインビトロでの特徴付け。以前に説明されているようにして組換え野生型PYR1タンパク質および組換え変異PYR1タンパク質を作製し、2:1の比率の受容体とホスファターゼを使用したことを除いては以前に説明されているようにして(Park et al., 2009)、PP2Cアッセイ法で使用した。
図3】PYL2へのフェンヘキサミド応答性の人工的作出(Engineering)。A:PYR1におけるフェンヘキサミド応答性のために十分であるもの(K59R、Y120H、M158I)に相同な変異をPYL2に導入した(K64R、Y124H、M164I)。さらに、V114Iおよび/またはV67Iにおけるポケット残基変異も導入した。変異体(パネルの左側に列挙した)をpBD-PYL2において構築し、Y190 pAD-HAB1酵母細胞に形質転換した。次いで、濃度を漸増させたフェンヘキサミドのもとで形質転換体を増殖させ、Park et al., 2009において説明されているようにして実施したX-gal染色によって応答性を採点した。図に示されるように、フェンヘキサミド応答性は、これらの変異の組合せによって人工的に作り出すことができる。B:PYL2 K64R、Y124H、M164I、V67I、V114I変異体のインビトロでの特徴付け。以前に説明されているようにして組換え野生型PYL2タンパク質および組換え変異PYL2タンパク質を作製し、2:1の比率の受容体とホスファターゼを使用したことを除いては以前に説明されているようにして(Park et al., 2009)、PP2Cアッセイ法で使用した。
図4】35S::GFP-PYL2 K64R、Y124H、M164I、V67I、V114Iトランスジェニック植物におけるフェンヘキサミドに対する実生応答の特徴付け。インビボでのフェンヘキサミド応答性PYL2受容体の感受性を調査するために、アグロバクテリウムを媒介とした形質転換によって、野生型受容体タンパク質および変異受容体タンパク質を発現するトランスジェニック植物を作製した。初代トランスジェニック植物(T1)から分離しているGFP発現T2実生を示している。コロンビアは、野生型バックグラウンドであり、非トランスジェニックである。野生型のPYL2過剰発現株に加えて、2つの独立したPYL2 K64R、Y124H、M164I、V67I、V114I(「PYL2 MUT」)トランスジェニック株の特徴付けを行った。各株に由来する種を、暗所、100μMフェンヘキサミドを含有する培地上で発芽させ、吸水後2日目に採点した。図に示されるように、これら2種のトランスジェニック株は、顕著な発芽後の停止を示すのに対し、対照株は示していない。上のパネルは代表的な実生の透過光画像を示し、下のパネルは落射蛍光を示して、株のGFP発現を裏付け、株の発現レベルが同様であることを示している。データから、PYL2 K64R、Y124H、M164I、V67I、V114I受容体タンパク質がフェンヘキサミドに応答して、十分に特徴付けられているABA応答(成長阻害)の活性化を可能にすることが示される。
図5】35S::GFP-PYL2 K64R、Y124H、M164I、V67I、V114Iトランスジェニック植物におけるフェンヘキサミドに対する実生転写応答の特徴付け。ペトリ皿上で発芽させた後に、各株に由来するGFP発現T2実生を単離し、落射蛍光顕微法によってプレスクリーニングし、続いて、液体培地培養で7日間成長させ、その後、100μMフェンヘキサミドまたは対照(0.1%DMSO)のいずれかで6時間、実生を処理した。続いて、RNAを試料から単離し、(Park et al., 2009に以前に説明されているようにして)十分に特徴付けられている3種のABA応答性転写物を用いた定量的RT-PCR実験において使用した。RT-PCR解析に使用したプライマー配列は、Rocheから入手し、Invitrogenによって合成された。BioRad CFX 96リアルタイムPCR機器においてSybrGreenを用いて、定量的RT-PCRを実施した。mRNAコピー数は、1ナノグラムの全RNA当たりのコピー数として表している。データは、ACT2遺伝子を用いて正規化した。コピー数は、濃度が公知である標的遺伝子の検量線を用いて明らかにした。得られたデータから、PYL2 K64R、Y124H、M164I、V67I、V114I受容体タンパク質がフェンヘキサミドに応答して、ABAシグナル伝達経路の活性化を可能にすることが示される。示したデータは、三つ組の技術的反復の平均であり、誤差棒は標準偏差を示す。
図6A】フェンヘキサミドは、PYL2K64R、Y124H、M164I、V67I、V114I発現トランスジェニック植物における水分損失を減少させる。対照、100μMフェンヘキサミド含有溶液、または100μM ABA含有溶液で処理したトランスジェニック植物において実施した3回の独立した水分損失実験(A〜C)の1つを示している。下記の実施例セクションで説明するようにして植物を処理し、空中のロゼットからの水分損失を脱離後に測定した。全実験において、トランスジェニックPYL2株は、フェンヘキサミド処理に応答して、水分損失の減少を示した。
図6B】フェンヘキサミドは、PYL2K64R、Y124H、M164I、V67I、V114I発現トランスジェニック植物における水分損失を減少させる。対照、100μMフェンヘキサミド含有溶液、または100μM ABA含有溶液で処理したトランスジェニック植物において実施した3回の独立した水分損失実験(A〜C)の1つを示している。下記の実施例セクションで説明するようにして植物を処理し、空中のロゼットからの水分損失を脱離後に測定した。全実験において、トランスジェニックPYL2株は、フェンヘキサミド処理に応答して、水分損失の減少を示した。
図6C】フェンヘキサミドは、PYL2K64R、Y124H、M164I、V67I、V114I発現トランスジェニック植物における水分損失を減少させる。対照、100μMフェンヘキサミド含有溶液、または100μM ABA含有溶液で処理したトランスジェニック植物において実施した3回の独立した水分損失実験(A〜C)の1つを示している。下記の実施例セクションで説明するようにして植物を処理し、空中のロゼットからの水分損失を脱離後に測定した。全実験において、トランスジェニックPYL2株は、フェンヘキサミド処理に応答して、水分損失の減少を示した。
図7】フェンヘキサミドで前処理を行っても、野生型コロンビア植物の水分損失は減少しない。対照、100μMフェンヘキサミド含有溶液、または100μM ABA含有溶液でコロンビア植物を処理した。下記の実施例セクションで説明するようにして植物を処理し、空中のロゼットからの水分損失を脱離後に測定した。
【発明を実施するための形態】
【0070】
定義
「PYR/PYL受容体ポリペプチド」という用語は、野生型においてアブシジン酸(ABA)およびABA類似体のシグナル伝達を媒介する、ポリケチドシクラーゼドメイン2(PF10604)、ポリケチドシクラーゼドメイン1(PF03364)、およびBet VIドメイン(PF03364)の内の1つもしくは複数またはすべての存在を一つには特徴とするタンパク質を意味する。多種多様のPYR/PYL受容体ポリペプチド配列が、当技術分野において公知である。いくつかの態様において、PYR/PYL受容体ポリペプチドは、
またはSEQ ID NO: 15〜119のいずれかと実質的に同一であるポリペプチドを含む。
【0071】
「野生型PYR/PYL受容体ポリペプチド」とは、アブシジン酸(ABA)およびABA類似体のシグナル伝達を媒介する天然のPYR/PYL受容体ポリペプチドを意味する。
【0072】
「変異PYR/PYL受容体ポリペプチド」または「改変PYR/PYL受容体ポリペプチド」とは、天然の(すなわち野生型)PYR/PYL受容体ポリペプチドに由来する変種であるPYR/PYL受容体ポリペプチドを意味する。本明細書において使用される場合、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドまたは改変PYR/PYL受容体ポリペプチドは、対応する野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを基準として1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。この文脈において、「変異」ポリペプチドまたは「改変」ポリペプチドは、非野生型ヌクレオチド配列を作製するための任意の方法によって作製することができる。変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、アブシジン酸 (ABA)およびABA類似体のシグナル伝達を媒介する場合もあればしない場合もある。
【0073】
「[特定の配列]の[X]位に対応する」アミノ酸とは、指定された配列の同等のアミノ酸とアラインする、関心対象のポリペプチド中のアミノ酸を意味する。通常、本明細書において説明するように、PYR/PYL受容体ポリペプチドのある位置に対応するアミノ酸は、BLASTのようなアライメントアルゴリズムを用いて決定することができる。本発明の典型的な態様において、アミノ酸位置の「対応」は、本明細書においてさらに論じるように、SEQ ID NO: 1を含むPYR/PYL受容体ポリペプチドの領域にアラインすることによって決定される。(例えば、アミノ酸の変更またはアミノ酸の付加もしくは欠失によって)PYR/PYL受容体ポリペプチド配列がSEQ ID NO: 1と異なる場合、野生型PYR/PYLを刺激しない化学物質による刺激に関連付けられている特定の変異が、SEQ ID NO: 1中の場合と同じ位置番号に存在しない可能性がある。例えば、PYL1(SEQ ID NO: 2)のアミノ酸位置K86は、SEQ ID NO: 1のアミノ酸位置K59とアラインし、これは、これら2つの配列のアライメントにおいて容易に示され得る。この例において、SEQ ID NO: 2のアミノ酸86位における変異は、SEQ ID NO: 1の59位に対応する。
【0074】
2つの核酸配列またはポリペプチドは、それら2つの配列中のそれぞれヌクレオチドまたはアミノ酸残基の配列が、後述するように最大限一致するようにアラインされた場合に同じである場合、「同一」であると称される。2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における「同一の」または「同一性」パーセントという用語は、後述の配列比較アルゴリズムの内の1つを用いて、または手動アライメントおよび目視検査によって測定した際に、比較ウィンドウの全体に渡って最大限一致するように比較およびアラインさせた場合に、同じであるか、または、同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを特定の比率で有する、2つまたはそれ以上の配列または部分配列を意味する。配列同一性の比率がタンパク質またはペプチドに関して使用される場合、同一ではない残基位置はしばしば保存的アミノ酸置換によって異なることが認識されており、その際、アミノ酸残基は、化学的特性(例えば、電荷または疎水性)が類似している他のアミノ酸残基で置換されており、したがって、分子の機能的特性を変更しない。配列が保存的置換によって異なる場合、置換の保存的性質に対する補正を織り込むために、配列同一性パーセントを高い値に調整することができる。この調整を行うための手段は、当業者には周知である。典型的には、これは、完全な不一致ではなく部分的な不一致として保存的置換をスコア付けし、それによって配列同一性の比率を高めることを伴う。したがって、例えば、同一のアミノ酸にスコア1が与えられ、非保存的置換にスコア0が与えられる場合、保存的置換には0〜1の間のスコアが与えられる。保存的置換のスコア付けは、例えばプログラムPC/GENE(Intelligenetics, Mountain View, California, USA)において実行される、例えばMeyers & Miller, Computer Applic. Biol. Sci. 4:11-17 (1988)のアルゴリズムに従って算出される。
【0075】
「実質的に同一」という語句は、2つの核酸またはポリペプチドの文脈において使用される場合、参照配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有する配列を意味する。あるいは、同一性パーセントは、60%〜100%の任意の整数でもよい。いくつかの態様は、本明細書において説明するプログラム、好ましくは、後述するような標準的なパラメーターを用いたBLASTによって参照配列と比較した場合に、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。本発明の態様は、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかに実質的に同一であるポリペプチドをコードする核酸を提供する。
【0076】
配列比較をする場合、典型的には、一方の配列が参照配列の役割を果たし、それに対してテスト配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、テスト配列および参照配列がコンピュータに入力され、必要な場合には部分配列座標(subsequence coordinate)が指定され、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターが指定される。初期設定プログラムのパラメーターを使用してもよく、または代替のパラメーターを指定してもよい。次いで、配列比較アルゴリズムは、そのプログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対するテスト配列の配列同一性パーセントを算出する。
【0077】
「比較ウィンドウ」とは、本明細書において使用される場合、20〜600、通常は約50〜約200、より普通には約100〜約150からなる群より選択される数の隣接位置のいずれか1つからなるセグメントへの言及を含み、このセグメントにおいて、ある配列を、同数の隣接位置の参照配列と、それら2つの配列を最適にアラインした後に比較することができる。比較のために配列をアライメントする方法は、当技術分野において周知である。比較のための最適な配列アライメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピュータによる実行によって、または手動アライメントおよび目視検査によって、実施することができる。
【0078】
配列同一性パーセントおよび配列類似性パーセントを決定するのに適しているアルゴリズムは、Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410 およびAltschul et al. (1977) Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402にそれぞれ記載されているBLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)のウェブサイトから公的に入手可能である。アルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインさせた場合に、何らかの正の値の閾値スコアTに合致するかまたはそれを満たす、クエリ配列中の長さWの短い「ワード」を特定することによって、高スコア配列ペア(HSP)を最初に特定する段階を含む。Tは、近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al,前記)。これら初期の近隣ワードのヒットは、それらを含むより長いHSPを発見するための検索を開始するためのシードの役割を果たす。次いで、これらのワードヒットを、累積アライメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に伸長させる。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合、パラメーターM(1対の一致残基に対するリワード(reward)スコア、常に0より大きい)およびパラメーターN(不一致残基に対するペナルティスコア、常に0未満)を用いて、算出する。アミノ酸配列の場合は、スコアリングマトリックスを用いて、累積スコアを算出する。各方向へのワードヒットの伸長は以下の場合に停止される:累積アラインメントスコアが、その最大達成値から量Xだけ減少する場合;累積スコアが、1つもしくは複数の負スコアの残基アライメントの蓄積が原因で、0以下になる場合;または、いずれかの配列の末端に達した場合。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXは、アライメントの感度および速度を決定する。(ヌクレオチド配列用の)BLASTNプログラムは、初期設定として、ワードサイズ(W)28、期待値(E)10、M=1、N=-2、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、初期設定として、ワードサイズ(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照されたい)。
【0079】
また、BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計学的解析も実施する(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの測定値は、最小確率和(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の一致が偶然によって起こると考えられる確率の指標を与える。例えば、核酸は、テスト核酸を参照核酸と比較した際の最小確率和が約0.01未満、より好ましくは約10-5未満、および最も好ましくは約10-20未満である場合、参照配列に類似しているとみなされる。
【0080】
「保存的に改変された変種」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変種とは、同一もしくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を意味するか、またはその核酸がアミノ酸配列をコードしない場合は、本質的に同一の配列を意味する。遺伝コードには縮重があるため、多数の機能的に同一の核酸が、任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはいずれも、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって指定されているすべての位置において、そのコドンを、コードされるポリペプチドを変更することなく、記載した対応するコドンのうちのいずれかに変更することができる。このような核酸変種(variation)は、保存的に改変された変種の1種である、「サイレント変種」である。あるポリペプチドをコードする本明細書における核酸配列はすべて、その核酸の存在し得るすべてのサイレント変種も説明する。当業者は、核酸中の各コドン(通常はメチオニンに対する唯一のコドンであるAUG以外)を改変して、機能的に同一の分子を得ることができることを認識するであろう。したがって、あるポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変種は、説明した各配列に暗黙に含まれる。
【0081】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされる配列中の単一のアミノ酸または低比率のアミノ酸を変更する、核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列、またはタンパク質配列における個々の置換は、その変更により、あるアミノ酸が化学的に類似したアミノ酸で置換されている「保存的に改変された変種」であることを認識すると考えられる。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当技術分野において周知である。
【0082】
以下の6つのグループは、互いに保存的置換であるアミノ酸をそれぞれ含む。
1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照されたい)。
【0083】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチド中の置換変異が、本明細書において、例えば、実施例のセクションまたは明細書の図面もしくは表のいずれかにおいて挙げた特定のアミノ酸置換だけでなく、それらの特定のアミノ酸の保存的置換であるアミノ酸も、保存的に置換されるアミノ酸が野生型アミノ酸ではない限り含むことが企図される。非限定的な例として、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがセリンからトレオニンへの置換を含む場合、トレオニンおよびアラニンは互いに保存的置換であるため、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、セリンからアラニンへの置換を代わりに含んでよいことが企図される;しかし、セリンは野生型PYR/PYLポリペプチド中に存在するアミノ酸であるため、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドはセリンからセリンへの置換は含まない。
【0084】
本明細書において使用される場合、「アゴニスト(agonist)」または「アゴニスト(agonists)」という用語は、本明細書の別の箇所で説明するように、説明される標的タンパク質の活性に関してインビトロのアッセイ法およびインビボのアッセイ法を用いて同定される分子を意味する。アゴニストは、例えば、説明される標的タンパク質の発現を誘導もしくは活性化するか、または説明される標的タンパク質(もしくはコードするポリヌクレオチド)に結合、刺激、増大、開放(open)、活性化、促進、活性化の強化、感受性化、もしくは活性を上方調節する作用物質である。アゴニストには天然分子および合成分子が含まれる。いくつかの態様において、アゴニストは、農薬、例えば、殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、および/または肥料である。アゴニストが標的タンパク質を「刺激する」か「刺激しない」かを判定するためのアッセイ法は、例えば、精製した標的タンパク質に推定上のアゴニストを接触させる段階、および次いで、前述したように、説明される標的タンパク質の活性に対する機能的影響を測定する段階、または標的タンパク質を発現する細胞に推定上のアゴニストを接触させる段階、および次いで、前述したように、説明される標的タンパク質の活性に対する機能的影響を測定する段階を含む。当業者は、アッセイ法が、アゴニストが標的タンパク質を刺激するか刺激しないかを判定するのに適しているかどうかを判定することができる。推定上のアゴニストで処理される説明される標的タンパク質を含む試料またはアッセイ法が、アゴニストを用いない対照試料と比較されて、影響の程度が検討される。対照試料(アゴニストで処理していない)に相対的活性値100%が割り当てられる。対照を基準とした活性値が110%、任意で150%、任意で200%、300%、400%、500%、または1000〜3000%もしくはそれ以上高い場合、説明される標的タンパク質の活性化(agonism)が実現されている。
【0085】
本明細書において使用される場合、「オルソゴナル(orthogonal)受容体」という用語は、新しいリガンド(「オルソゴナルリガンド」)を選択的に認識するように改変された受容体を意味する。本明細書において使用される場合、「オルソゴナルリガンド」という用語は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドまたは改変PYR/PYL受容体ポリペプチドを刺激するが、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドは刺激しない作用物質を意味する。いくつかの態様において、オルソゴナルリガンドは、農薬、例えば、殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、殺線虫剤、植物活性化物質、相乗剤、除草剤薬害軽減剤、植物成長調節物質、昆虫忌避剤、および/または肥料である。
【0086】
「植物」という用語は、植物全体、苗条の栄養器官および/または栄養構造体(例えば、葉、茎、および塊茎)、根、花および花器(例えば、苞葉、萼片、花弁、雄ずい、心皮、葯)、胚珠(卵細胞および中心細胞を含む)、種子(接合体、胚、内乳、および種皮を含む)、果実(例えば、成熟した子房)、実生、植物組織(例えば、維管束組織および基本組織など)、細胞(例えば、孔辺細胞、卵細胞、および毛状突起など)、ならびにそれらの子孫を含む。一般に、本発明の方法において使用され得る植物のクラスは、形質転換技術を受け入れられる高等植物および下等植物のクラスと同じくらい幅広く、被子植物(単子葉植物および双子葉植物)、裸子植物、シダ、および多細胞性藻類を含む。これは、異数体、多数体、二倍体、一倍体、および半接合体を含む、様々な倍数性レベルの植物を含む。
【0087】
「プロモーター」という用語は、本明細書において使用される場合、細胞においてコード配列の転写を推進することができるポリヌクレオチド配列を意味する。したがって、本発明のポリヌクレオチド構築物中で使用されるプロモーターには、遺伝子の転写のタイミングおよび/または速度の調節または調整に関与しているシス作動性の転写制御エレメントおよび調節配列が含まれる。例えば、プロモーターは、転写調節に関与しているエンハンサー、プロモーター、転写ターミネーター、複製起点、染色体組込み配列、5'非翻訳領域および3'非翻訳領域、またはイントロン配列を含む、シス作動性の転写制御エレメントでよい。これらのシス作動性配列は、典型的には、タンパク質または他の生体分子と相互作用して、遺伝子転写を実施する(オン/オフにする、調節する、調整するなど)。「植物プロモーター」とは、植物細胞において転写を開始できるプロモーターである。「構成的プロモーター」は、ほぼすべての組織型において転写を開始できるものであるのに対し、「組織特異的プロモーター」は、1種類または数種の特定の組織型においてのみ転写を開始する。
【0088】
ポリヌクレオチド配列は、外来種に由来する場合、または同じ種に由来するならば、原形から改変されている場合、生物または第2のポリヌクレオチド配列に対して「異種」である。例えば、プロモーターが、異種コード配列に機能的に連結されていると述べられる場合、これは、そのコード配列がある1つの種に由来するのに対し、プロモーター配列は別の異なる種に由来するか;または両方とも同じ種に由来するならば、そのコード配列が、天然ではプロモーターと関連していない(例えば、例えば同じ種の別の遺伝子、または別の生態型もしくは種類に由来する対立遺伝子に由来する、遺伝的に操作されたコード配列である)ことを意味する。
【0089】
「発現カセット」とは、宿主細胞中に導入された場合に、RNAまたはポリペプチドの転写および/または翻訳をそれぞれもたらす核酸構築物を意味する。翻訳されない、または翻訳することができないアンチセンス構築物またはセンス構築物は、この定義によって特別に含まれる。導入遺伝子の発現および内因性遺伝子の抑制(例えば、アンチセンス抑制またはセンス抑制による)の両方の場合において、当業者は、挿入されるポリヌクレオチド配列は同一である必要はなく、それが由来する遺伝子の配列と実質的に同一であるだけでよいことを認識するであろう。本明細書において説明されるように、これらの実質的に同一の変種は、個々の核酸配列を参照することにより、具体的に包含される。
【0090】
本明細書において使用される場合、「非生物的ストレス」、「ストレス」、または「ストレス条件」という用語は、植物の代謝、成長、発生、繁殖、または生存(まとめて「成長」)に悪影響を及ぼす非生体的(「非生物的」)な物理的作用物質または化学的作用物質への植物または植物細胞などの曝露を意味する。ストレスは、例えば、水(例えば、洪水、乾燥、もしくは脱水)、嫌気的条件(例えば、低レベルの酸素もしくは高レベルのCO2)、異常な浸透圧条件、塩分、もしくは温度(例えば、高温/熱、寒冷、酷寒、もしくは霜)、栄養素の不足もしくは汚染物質への曝露などの環境因子が原因で、またはホルモン、セカンドメッセンジャー、もしくは他の分子によって、植物に加えられ得る。例えば、嫌気的ストレスは、ストレス応答をもたらすのに十分な、酸素レベルの低下(低酸素または無酸素)に起因する。洪水ストレスは、モンスーン、雨期、射流洪水、または過剰な植物の灌漑などの間に起こるような、植物、植物部分、組織、または単離された細胞の液体媒体における長期または一次的な浸漬に起因し得る。寒冷ストレスまたは熱ストレスは、個々の植物種にとっての成長温度の最適範囲からの温度の低下または上昇が原因でそれぞれ発生し得る。このような最適成長温度の範囲は、容易に決定されるか、または当業者に公知である。脱水ストレスは、細胞、組織、器官、または植物全体の水分の損失、膨圧の低下、または水含有量の減少によって誘導され得る。乾燥ストレスは、細胞、組織、器官、または生物に対する水の枯渇または水供給量の減少によって誘導され得るか、またはそれらに関連し得る。塩分によって誘導されるストレス(塩ストレス)は、細胞の細胞内環境または細胞外環境の浸透ポテンシャルの混乱に関連し得るか、またはそれらによって誘導され得る。本明細書において使用される場合、「非生物的ストレスに対する耐性」または「ストレス耐性」という用語は、正常条件下の植物と比べて増大した、非生物的ストレスに対する植物の抵抗性または耐性、および非生物的ストレス条件下にある場合に比較的影響を受けずに動作する(perform)能力を意味する。本明細書において使用される場合、「乾燥抵抗性」および「耐乾燥性」という用語は、正常な状況と比べて増大した、水の入手が困難になることによって誘導されるストレスに対する植物の抵抗性または耐性、ならびに水の少ない環境において機能および生存し、比較的影響を受けずに動作する植物の能力を意味するのに使用される。
【0091】
発明の詳細な説明
I 導入
驚くべきことに、アブシジン酸(ABA)受容体の1ファミリーであるPYR/PYL受容体ファミリーに属するタンパク質を、ABA以外の化学物質に結合し応答するように変異させることができる。ある種の農業化学品は、ABAの存在下で野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、ABAによるPYR/PYL受容体活性化のレベルを低下させることが判明した。その他の驚くべき新事実は、野生型PYR/PYL受容体においてABAに接触するPYR/PYLリガンド結合ポケットの保存残基であるPYR1の残基K59に対応するアミノ酸を多くの変種に変異させて、複数のオルソゴナルリガンドに対するオルソゴナル受容体の作製を可能にできるという発見であった。
【0092】
続いてPYR/PYL受容体ポリペプチドに変異を誘発させ、これらの新しい化学的アゴニストに結合するPYR/PYL受容体が改善され得るかどうかを確かめるためにスクリーニングした際、PYR/PYL受容体ポリペプチドのある種の変異が、非天然リガンド(オルソゴナルリガンド)による変異PYR/PYLポリペプチドの活性化をもたらすことが予想外に発見された。さらに、場合によっては、これらの変異はPYR/PYLのリガンド結合ポケットを再構築し、したがって同時に、天然リガンド(ABA)が変異PYR/PYLポリペプチドを活性化する能力を無効にした。
【0093】
したがって、PYR/PYL受容体ポリペプチドのようなABA受容体を、それらを選択的に活性化するためにABA以外の化合物を使用できるように変更することが可能である。さらに、(例えば、水分欠乏に対する植物応答を改善するためのプログラムの一環として)オルソゴナルリガンドを適用することによって変異PYR/PYL受容体(オルソゴナル受容体)を選択的に活性化できるため、「収量低下」という問題を回避することができる。収量低下は、昔から受容体過剰発現に関連付けられており、正常成長条件または最適成長条件(すなわち、乾燥も他のストレス要因もない場合)の間の遺伝子過剰発現が、鈍化した成長に関連付けられている。
【0094】
II 変異PYR/PYL受容体ポリペプチド
本発明は、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを刺激しない化学物質によって刺激される変異PYR/PYL受容体ポリペプチド、ならびに野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを刺激しない化学物質によって刺激される変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを刺激しない化学物質によって刺激される変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットおよび発現ベクター;野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを刺激しない化学物質によって刺激される変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを含む植物;野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを刺激しない化学物質によって刺激される変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを含む植物を作製する方法;ならびに変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを作製する方法を提供する。
【0095】
いくつかの態様において、化学物質ブロモキシニル、クロロキシニル、イオキシニル、クマテトラリル、ジクロベニル、フェンヘキサミド、ベノキサコル、またはBTH(アシベンゾラル-s-メチル)をPYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは該化学物質によって刺激されるが、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドは刺激されない。本発明の別の態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを刺激しない化学物質によって刺激され、また、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを刺激する化合物であるABAによっても刺激される。
【0096】
多種多様の野生型(天然の)PYR/PYLポリペプチド配列が、当技術分野において公知である。PYR1は、シロイヌナズナのアブシジン酸(ABA)受容体としてもともとは同定されたが、実際には、PYR1は、同じくABAシグナル伝達を媒介するシロイヌナズナの同じタンパク質ファミリー中の少なくとも14種のタンパク質(PYR/PYLタンパク質)からなるグループのメンバーである。このタンパク質ファミリーは他の植物にも存在しており(例えば、配列リストを参照されたい)、ポリケチドシクラーゼドメイン2(PF10604)、ポリケチドシクラーゼドメイン1(PF03364)、およびBet VIドメイン(PF03364)の内の1つもしくは複数またはすべての存在を一つには特徴とする。START/Bet v 1スーパーファミリードメインは、例えば、Radauer, BMC Evol. Biol. 8:286 (2008)において説明されている。いくつかの態様において、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかを含む。いくつかの態様において、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかと実質的に同一(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一)である。
【0097】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、天然(すなわち野生型)のPYR/PYL受容体ポリペプチドに由来する変種である。変種には、例えば、活性を保持している融合タンパク質、欠失、挿入、または変異が含まれる。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、または119のいずれかと実質的に同一(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一)であり、対応する野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを基準として、本明細書において説明する1個、2個、3個、4個、5個、6個、またはそれ以上の変異を含む。さらに、いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、異種アミノ酸配列とのアミノ末端融合物および/またはカルボキシル末端融合物をさらに含む。
【0098】
本発明者らは、化学物質への応答に影響を及ぼすいくつかの変異を発見した。いくつかの変異は、試験した様々な化学物質の全般で発生し、場合によっては、改変PYR/PYL受容体タンパク質が多種多様な化学物質に応答して機能するのを可能にするようである。常にこうであるとは限らない;いくつかの変異は、1種の化学物質に対して選択的であると思われ、他の化学物質による改変PYR/PYL受容体タンパク質の活性化を促進するとは思われない。場合によっては、改変PYR/PYL受容体タンパク質が化学的アゴニストによって刺激されるのに、1つの変異で十分である。他の場合では、複数の変異によって、改変PYR/PYL受容体タンパク質が化学的アゴニストによって刺激されるのが可能になる。場合によっては、改変PYR/PYL受容体タンパク質は、そのタンパク質が化学的アゴニストによって刺激されるために、2個、3個、4個、5個、6個、またはそれ以上の変異を含む。
【0099】
改変PYR/PYL受容体タンパク質は、PYR/PYL受容体ポリペプチド配列の任意の位置において変異していてよい。いくつかの場合において、かつ本明細書において論じるように、変異は、PYR/PYLポリペプチドのリガンド結合ポケット中に存在してよい。しかしながら、変異は、オルソゴナルリガンドによる活性化を実現するために、PYR/PYLポリペプチドのリガンド結合ポケット中に存在する必要はない。特定の理論に拘泥するものではないが、オルソゴナルリガンドによるPYR/PYL受容体タンパク質の活性化をもたらす、リガンド結合ポケットの外側の変異は、リガンド結合の構造に間接的な影響を与え、その結果、受容体がオルソゴナルリガンドによって活性化されることが可能になるという仮説が立てられている。さらに、PYR1(SEQ ID NO: 1)のアミノ酸K59に対応する位置の特定の変異により、PYR/PYL受容体ポリペプチドが野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドよりもオルソゴナルリガンドによってより簡単に活性化されることが可能になるという仮説も立てられており、これは、オルソゴナル受容体を人工的に設計するために望ましい性質である。
【0100】
本明細書において説明する変異のいずれかは、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかのポリペプチドまたはSEQ ID NO: 1〜119のいずれかと実質的に同一のポリペプチド中に引き起こすことができる。あるいは、前述の変異のいずれかは、例えば後述するような、PYR/PYLタンパク質を特定するコンセンサス配列のいずれかを含むポリペプチド中に引き起こしてもよい。
【0101】
コンセンサス配列
PYR/PYL受容体タンパク質は、保存されたアミノ酸またはモチーフ(すなわち、配列の変更がタンパク質機能に影響を及し得る場所)および配列のアライメントにおいて変化(variation)が存在する領域(すなわち、配列の変化がタンパク質活性に顕著に影響を及ぼす可能性が低い場所)を特定する配列アライメントを参照することにより、説明することができる。SEQ ID NO: 120〜123は、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを同定するのに有用なコンセンサス配列を提供する。SEQ ID NO: 120〜123のコンセンサス配列は、シロイヌナズナPYR/PYL受容体タンパク質ファミリーの14種のメンバーすべてをアラインすることによって作り出した。SEQ ID NO: 120〜123のコンセンサス配列において、大文字で書かれた文字は、シロイヌナズナPYR/PYL受容体タンパク質ファミリーの14種のメンバーすべてにおいて完全に保存されているアミノ酸残基を表すのに対し、「x」は、14種のファミリーメンバーすべてにおいて完全には保存されておらず、任意のアミノ酸でよいアミノ酸残基を表す。「x」の印を付けた位置に挿入するためのアミノ酸を選択する際、いくつかの態様において、そのアミノ酸は、野生型PYR/PYLタンパク質または変異PYR/PYLタンパク質の対応する位置に存在するアミノ酸から選択されることが、認識されるであろう。
【0102】
コンセンサス配列
は、PYR1(SEQ ID NO: 1)のアミノ酸30〜65に対応する領域を含む。コンセンサス配列
は、PYR1(SEQ ID NO: 1)のアミノ酸76〜100に対応する領域を含む。コンセンサス配列GGxHRLxNYxS(SEQ ID NO: 122)は、PYR1(SEQ ID NO: 1)のアミノ酸112〜122に対応する領域を含む。
は、PYR1(SEQ ID NO: 1)のアミノ酸141〜171に対応する領域を含む。
【0103】
場合によっては、PYR/PYL変異は、SEQ ID NO: 120〜123のコンセンサス配列の内部の残基に存在する。場合によっては、変異は、PYR/PYL受容体タンパク質ファミリーの14種のメンバーすべてにおいて完全に保存されている残基に存在する。場合によっては、変異は、完全には保存されていない残基に存在する。本明細書において説明する場合、コンセンサス配列の内部の残基における置換変異は、コンセンサス配列のアミノ酸の代わりに角括弧として表される。複数のアミノ酸が前記角括弧によって囲まれている場合、前記角括弧によって囲まれているアミノ酸のいずれかで、コンセンサス配列のその残基の位置の野生型アミノ酸を置換してよいことを示す。
【0104】
さらに、改変PYR/PYL受容体タンパク質は、コンセンサス配列の内部に複数の変異を含んでよく、または各コンセンサス配列が少なくとも1つの変異を有する少なくとも2つもしくはそれ以上のコンセンサス配列を含んでよい。
【0105】
K59。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0106】
Y120。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列GGxHRLxN[HC]xS(SEQ ID NO: 150)を含む。
【0107】
I110。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0108】
P42。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0109】
S47。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0110】
K59およびY120。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0111】
K59およびI110。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0112】
K59およびP42。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0113】
K59およびS47。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0114】
H60。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0115】
S92。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0116】
E140。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0117】
K59およびH60。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0118】
K59およびS92。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0119】
K59およびE140。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0120】
E94。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0121】
K59およびE94。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0122】
N119。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列GGxHRLx[Y]YxS(SEQ ID NO: 161)を含む。
【0123】
K59およびN119。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0124】
H115。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列GGx[Y]RLxNYxS(SEQ ID NO: 162)を含む。
【0125】
F159。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0126】
K59およびF159。いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体は、コンセンサス配列
を含む。
【0127】
したがって、いくつかの態様において、本発明の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、1つもしくは複数の前述のコンセンサス配列(SEQ ID NO: 149〜163)またはその保守的変種を含む。いくつかの態様において、本発明は、1つもしくは複数の前述のコンセンサス配列(SEQ ID NO: 149〜163)またはその保守的変種を含む1つまたは複数の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0128】
改変PYR/PYL受容体タンパク質は、あるいはPYR/PYLポリペプチドの配列識別子(「SEQ ID」)を参照することによって説明することもできる。改変PYR/PYL受容体は、本明細書において列挙するSEQ IDを含んでよく、本明細書において説明するように、あるアミノ酸位置において少なくとも1つ(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個など)の変異(例えば、置換変異、欠失変異、または挿入変異)をさらに含んでよい。したがって、いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかを含み、任意のアミノ酸位置において少なくとも1つの変異をさらに含む。
【0129】
あるいは、改変PYR/PYL受容体は、本明細書において列挙するSEQ IDに実質的に同一でよく、あるアミノ酸位置において少なくとも1つ(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個など)の変異をさらに含んでよい。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかに実質的に同一であり、任意のアミノ酸位置において少なくとも1つの変異をさらに含む。
【0130】
いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体タンパク質は、PYR1(SEQ ID NO: 1)のアミノ酸59位に対応する残基において改変された。「K59」とも呼ばれるこの残基における変異は、改変PYR/PYL受容体タンパク質のABA応答性を妨害する。
【0131】
いくつかの場合において、K59変異は、改変PYR/PYL受容体タンパク質のABA感受性を無効にするのに十分であるだけでなく、新しい化学的アゴニスト(「オルソゴナルリガンド」)に対する感受性を改変PYR/PYL受容体タンパク質に与えるのにも十分である。いくつかの場合において、オルソゴナルリガンドによる受容体活性化をもたらすK59変異は、アラニン残基による野生型残基の置換、システイン残基による野生型残基の置換、アスパラギン酸残基による野生型残基の置換、グルタミン酸残基による野生型残基の置換、フェニルアラニン残基による野生型残基の置換、グリシン残基による野生型残基の置換、ヒスチジン残基による野生型残基の置換、ロイシン残基による野生型残基の置換、メチオニン残基による野生型残基の置換、アスパラギン残基による野生型残基の置換、グルタミン残基による野生型残基の置換、アルギニン残基による野生型残基の置換、セリン残基による野生型残基の置換、トレオニン残基による野生型残基の置換、バリン残基による野生型残基の置換、チロシン残基による野生型残基の置換、またはトリプトファン残基による野生型残基の置換である。
【0132】
さらに、改変PYR/PYL受容体タンパク質は、K59変異に加えて、少なくとももう1つの変異を含んでよい。下記の表1〜5に示すように、改変が、K59変異およびタンパク質中の他の残基における1個、2個、3個、4個、または5個のさらなる変異を含む場合、多数の化学的アゴニストが改変PYR/PYL受容体タンパク質を活性化することが判明した。K59が1つの変異部位であり、改変PYR/PYL受容体がABAによっては刺激されないがオルソゴナルリガンドによっては刺激される例示的な変異組合せの非限定的なリストは、以下のものを含む:
【0133】
したがって、いくつかの態様において、SEQ ID NO: 1のK59位に対応する変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸はXであり、Xは、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、またはトリプトファンである。
【0134】
いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の10位、12位、25位、27位、29位、33位、42位、43位、44位、47位、49位、74位、75位、81位、97位、110位、120位、123位、124位、133位、138位、139位、144位、154位、158位、163位、172位、173位、174位、および/または177位に対応するアミノ酸において、天然の残基から非天然の残基への少なくとも1つのさらなる変異をさらに含む。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の10位、12位、25位、27位、29位、33位、42位、43位、44位、47位、49位、74位、75位、81位、97位、110位、120位、123位、124位、133位、138位、139位、144位、154位、158位、163位、172位、173位、174位、および/または177位に対応するアミノ酸において、天然の残基からアラニン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、フェニルアラニン残基、グリシン残基、ヒスチジン残基、イソロイシン残基、リジン残基、ロイシン残基、メチオニン残基、アスパラギン残基、プロリン残基、グルタミン残基、アルギニン残基、セリン残基、トレオニン残基、バリン残基、トリプトファン残基、またはチロシン残基への少なくとも1つのさらなる変異を含む。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の10位、12位、25位、27位、29位、33位、42位、43位、44位、47位、49位、74位、75位、81位、97位、110位、120位、123位、124位、133位、138位、139位、144位、154位、158位、163位、172位、173位、174位、および/または177位に対応するアミノ酸において少なくとも1つのさらなる変異を含み、この変異は、R10Q、E12G、E12K、L25R、P27L、S29N、L33F、P42S、E43G、L44F、S47P、V49I、R74C、V75I、V81M、D97N、I110S、Y120C、Y120H、V123I、T124M、N133D、V138M、V139I、V144A、E154G、M158I、V163I、A172T、T173A、V174I、A177T、またはそれらの組合せより選択される。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の62位および110位に対応するアミノ酸位置の内の1つまたは複数においてイソロイシン残基をさらになお含む。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の62位および110位に対応するアミノ酸位置の内の1つまたは複数においてバリンからイソロイシンへの変異を含む。いくつかの態様において、本発明は、1つまたは複数の前記変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0135】
いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体タンパク質は、K59残基以外の残基において改変された。改変PYR/PYL受容体タンパク質のABA刺激を無効にするがオルソゴナルリガンド活性化を促進する、K59以外の変異の非限定的な例示的リストは以下を含む:
D26
E94
F159。
【0136】
したがって、いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)のアミノ酸26位に対応するアミノ酸において変異を含み、この変異はD26Gである。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)のアミノ酸94位に対応するアミノ酸において変異を含み、この変異はE94Dである。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)のアミノ酸159位に対応するアミノ酸において変異を含み、この変異はF159Lである。いくつかの態様において、本発明は、1つまたは複数の前記変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0137】
いくつかの場合において、改変PYR/PYL受容体タンパク質は、K59残基以外の少なくとも2個の残基において改変された。K59変異を含まず、かつ改変PYR/PYL受容体タンパク質のABA刺激を無効にするがオルソゴナルリガンド活性化を促進する、例示的な変異組合せの非限定的なリストは以下を含む:
R37およびF71
I110、E114、およびV138
H115およびF159。
【0138】
したがって、いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の37位、71位、110位、114位、115位、138位、および/または159位に対応するアミノ酸において少なくとも2つの変異を含み、これらの変異は、R37Q、F71S、I110T、E114D、H115Y、V138M、F159S、またはそれらの組合せより選択される。いくつかの態様において、本発明は、1つまたは複数の前記変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0139】
いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO: 124〜148または164〜178のいずれかを含む。
【0140】
PYR/PYLのリガンド結合ポケット
PYR/PYL受容体タンパク質は、「ゲート」および「ラッチ」と呼ばれる2つのループによってはさまれた、保存されたSTARTドメインリガンド結合ポケットを有する(Melcher, K. et al., Nature 462 (2009))。ABAは、PYR/PYL受容体タンパク質のリガンド結合ポケットに結合し、ABAの結合により、ループの閉鎖が引き起こされて、リガンド結合ポケットの内側にABAが閉じ込められる。野生型PYR/PYL受容体タンパク質において、リガンド結合ポケットを構成する残基は、ABAまたはABAがPYR/PYL受容体タンパク質のポケットに結合する際にABAに付随する水分子から4オングストローム以内にある側鎖を有する残基である。例えば、PYR1(SEQ ID NO: 1)のリガンド結合ポケットを構成する残基は、P55、K59、F61、I62、R79、V81、V83、P88、A89、S92、E94、F108、I110、H115、L117、Y120、E141、F159、V163、およびN167である。
【0141】
いくつかの態様において、PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR/PYL受容体タンパク質のリガンド結合ポケットを構成する少なくとも1つのアミノ酸残基において変異している。したがっていくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO: 1)の55位、59位、61位、62位、79位、81位、83位、88位、89位、92位、94位、108位、110位、115位、117位、120位、141位、159位、163位、および/または167位に対応するアミノ酸において少なくとも1つの変異を含み、この変異は、P55、K59、F61、I62、R79、V81、V83、P88、A89、S92、E94、F108、I110、H115、L117、Y120、E141、F159、V163、N167、またはそれらの組合せより選択される。いくつかの態様において、本発明は、1つまたは複数の前記変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0142】
本発明の態様は、本発明の方法および組成物(例えば、発現カセット、植物など)における、上記のタンパク質および/またはそのようなポリペプチドをコードする核酸配列の使用を提供する。(例えば、PYR/PYL配列がまだ同定されていない植物からの)植物野生型PYR/PYL受容体をコードするポリヌクレオチド配列の単離は、いくつかの技術によって遂行することができる。例えば、本明細書において開示される(例えば、配列リストに挙げる)PYR/PYLコード配列に基づくオリゴヌクレオチドプローブを用いて、cDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリー中の所望の野生型PYR/PYL遺伝子を同定することができる。ゲノムライブラリーを構築するためには、例えば制限エンドヌクレアーゼを用いたランダム断片化によって、ゲノムDNAの大きなセグメントを作製し、ベクターDNAと連結して、適切なベクター中にパッケージすることができるコンカテマーを形成させる。cDNAライブラリーを調製するためには、特定の植物種の葉のような所望の組織からmRNAを単離し、関心対照の遺伝子転写物を含むcDNAライブラリーをそのmRNAから調製する。あるいは、cDNAは、PYR/PYL遺伝子が発現される他の組織から抽出したmRNAから調製してもよい。
【0143】
次いで、本明細書において開示するPYR/PYL遺伝子の配列に基づいたプローブを用いて、cDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーをスクリーニングすることができる。プローブをゲノムDNA配列またはcDNA 配列とハイブリダイズさせるために使用して、同じ植物種または異なる植物種中の相同遺伝子を単離することができる。あるいは、ポリペプチドに対して産生させた抗体を用いて、mRNA発現ライブラリーをスクリーニングすることもできる。
【0144】
あるいは、増幅技術を用いて、PYR/PYLをコードする核酸を核酸試料から増幅することもできる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて、ゲノムDNA、cDNA、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーから、PYR/PYLのコード配列を直接増幅することができる。PCRおよび他のインビトロ増幅方法はまた、例えば、発現させるべきPYR/PYLをコードするポリヌクレオチド配列をクローニングするのに、試料中の所望のmRNAの存在を検出するためのプローブとして使用するための核酸を作製するために、核酸の配列決定のために、または他の目的のために有用であり得る。PCRの一般的な概要については、PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications. (Innis, M., Gelfand, D., Sninsky, J. and White, T., eds.), Academic Press, San Diego (1990)を参照されたい。植物組織から配列を同定するための適切なプライマーおよびプローブは、本明細書において提供する配列を他の関連遺伝子と比較することにより作製される。
【0145】
いくつかの態様において、いくつかの植物のゲノムの一部分またはゲノム全体を配列決定し、オープンリーディングフレームを特定した。BLAST検索によって、様々な植物の野生型PYR/PYLのコード配列を同定することができる。
【0146】
III 化学的アゴニストおよびアゴニスト製剤
本発明の態様は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドおよび/または変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを含む植物に接触させるために製剤化された農薬製剤であって、本発明の変異PYR/PYLポリペプチドのアゴニストを含む農薬製剤を提供する。いくつかの態様において、農薬アゴニストは、殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、殺線虫剤、植物活性化物質、相乗剤、除草剤薬害軽減剤、植物成長調節物質、昆虫忌避剤、または肥料を含む。いくつかの態様において、農薬アゴニストは、ブロモキシニル、クロロキシニル、イオキシニル、クマテトラリル、ジクロベニル、フェンヘキサミド、ベノキサコル、およびBTH(アシベンゾラル-s-メチル)からなる群より選択される。
【0147】
農業化学品は、取込みおよび有効性を向上させ得るエステルまたは塩としてしばしば調製され植物に適用される。遍在性細胞エステラーゼの作用により、エステル(またはアシベンゾラルのS-メチル誘導体のような同族化合物)が、生物活性型である遊離の酸またはアルコールに変換され得る。例えば、ブロモキシニルブチラート、ブロモキシニルヘプタノアート、ブロモキシニルオクタノアート、およびブロモキシニル-カリウムは、ブロモキシニルの代替の製剤である。吸収後、これらの化合物は、植物中で同じ生物活性種(ブロモキシニル)を形成する。クロロキシニルおよびイオキシニルの同様の変種を作製することができ、公知である(例えば、イオキシニル-リチウム、イオキシニルオクタノアート、イオキシニル-ナトリウムなど)。BTHは、アシベンゾラル(植物中でのBTHの活性型)のS-メチル誘導体である。
【0148】
フェンヘキサミド
PYR/PYL受容体ポリペプチド中の少なくとももう1つのアミノ酸を変異させると共に、SEQ ID NO: 1のK59に対応するアミノ酸を変異させると、改変受容体がフェンヘキサミドによって活性化されるようになることが判明した(表1、表7、および表8)。改変PYR/PYL受容体がフェンヘキサミドによって刺激されるようにする、例示的な変異組合せの非限定的なリストは、以下のものを含む:
【0149】
したがって、いくつかの態様において、改変PYR/PYL受容体はフェンヘキサミドによって刺激される。いくつかの態様において、改変PYR/PYLタンパク質は、前述のものに対応する1つまたは複数の変異セットを含む。いくつかの態様において、前述のものに対応する変異セットのいずれかを含む改変PYR/PYL受容体タンパク質は、PYR1(SEQ ID NO: 1)の62位および110位に対応するアミノ酸位置の内の1つまたは複数においてイソロイシン残基をさらに含む。いくつかの態様において、改変PYR/PYL受容体タンパク質は、PYR1(SEQ ID NO: 1)の62位および110位に対応するアミノ酸位置の内の1つまたは複数においてバリンからイソロイシンへの変異(例えば、PYR1の62位および110位にそれぞれ対応するPYL2(SEQ ID NO: 3)のアミノ酸位置64位および/または114位におけるバリンからイソロイシンへの変異)を含む。いくつかの態様において、改変PYR/PYL受容体タンパク質は、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかと実質的に同一であり、かつ/またはSEQ ID NO: 149〜163より選択される1つもしくは複数のコンセンサス配列を含む。いくつかの態様において、本発明は、1つまたは複数の前記改変PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0150】
さらに、本発明のいくつかの態様において、改変PYR/PYL受容体ポリペプチドをスクリーニングする方法は、改変ポリペプチドをスクリーニングして、フェンヘキサミドによってそれが刺激されるかどうかを判定する段階を含む。
【0151】
ブロモキシニル
また、PYR/PYL受容体ポリペプチド中の少なくとももう1つのアミノ酸を変異させると共に、SEQ ID NO: 1のK59に対応するアミノ酸を変異させると、改変された受容体がブロモキシニルによって活性化されるようになることも判明した(表2)。改変PYR/PYL受容体がブロモキシニルによって刺激されるようにする、例示的な変異組合せの非限定的なリストは、以下のものを含む:
【0152】
したがって、いくつかの態様において、本発明の改変PYR/PYL受容体は、ブロモキシニルまたはブロモキシニル類似体であるクロロキシニルおよびイオキシニルによって刺激される。いくつかの態様において、改変PYR/PYLタンパク質は、前述のものに対応する1つまたは複数の変異セットを含む。いくつかの態様において、このようなタンパク質は、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかと実質的に同一であり、かつ/またはSEQ ID NO: 149〜163より選択される1つもしくは複数のコンセンサス配列を含む。いくつかの態様において、本発明は、1つまたは複数の前記改変PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0153】
さらに、本発明のいくつかの態様において、改変PYR/PYL受容体ポリペプチドをスクリーニングする方法は、改変ポリペプチドをスクリーニングして、ブロモキシニルまたはブロモキシニル類似体であるクロロキシニルおよびイオキシニルによってそれが刺激されるかどうかを判定する段階を含む。
【0154】
ジクロベニル
いくつかの場合において、SEQ ID NO: 1のK59に対応するアミノ酸のみを変異させると、改変された受容体がジクロベニルによって活性化されるようになる(表3)。いくつかの場合において、PYR/PYL受容体ポリペプチド中の少なくとももう1つのアミノ酸を変異させると共に、SEQ ID NO: 1のK59に対応するアミノ酸を変異させると、改変された受容体がジクロベニルによって活性化されるようになる。いくつかの場合において、PYR/PYL受容体ポリペプチドの別のアミノ酸において少なくとも1つの変異がある限り、ジクロベニルが受容体を活性化するために、SEQ ID NO: 1のK59に対応するアミノ酸が改変PYR/PYL受容体ポリペプチドにおいて変異している必要はない。改変PYR/PYL受容体がジクロベニルによって刺激されるようにする、例示的な変異および変異組合せの非限定的なリストは、以下のものを含む:
K59R
D26G
E94D
R37QおよびF71S
P27L、K59R、およびK63N。
【0155】
したがって、いくつかの態様において、改変PYR/PYL受容体はジクロベニルによって刺激される。いくつかの態様において、改変PYR/PYLタンパク質は、前述のものに対応する1つまたは複数の変異セットを含む。いくつかの態様において、このようなタンパク質は、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかと実質的に同一であり、かつ/またはSEQ ID NO: 149〜163より選択される1つもしくは複数のコンセンサス配列を含む。いくつかの態様において、本発明は、1つまたは複数の前記改変PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0156】
さらに、本発明のいくつかの態様において、改変PYR/PYL受容体ポリペプチドをスクリーニングする方法は、改変ポリペプチドをスクリーニングして、ジクロベニルによってそれが刺激されるかどうかを判定する段階を含む。
【0157】
ベノキサコル
いくつかの場合において、SEQ ID NO: 1のK59に対応するアミノ酸のみを変異させると、改変された受容体がベノキサコルによって活性化されるようになる(表4)。いくつかの場合において、PYR/PYL受容体ポリペプチドの別のアミノ酸において少なくとも1つの変異がある限り、ベノキサコルが受容体を活性化するために、SEQ ID NO: 1のK59に対応するアミノ酸が改変PYR/PYL受容体ポリペプチドにおいて変異している必要はない。改変PYR/PYL受容体がベノキサコルによって刺激されるようにする、例示的な変異組合せの非限定的なリストは、以下のものを含む:
K59RおよびN119Y
I110T、E114D、およびV138M。
【0158】
したがって、いくつかの態様において、改変PYR/PYL受容体はベノキサコルによって刺激される。いくつかの態様において、改変PYR/PYLタンパク質は、前述のものに対応する1つまたは複数の変異セットを含む。いくつかの態様において、このようなタンパク質は、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかと実質的に同一であり、かつ/またはSEQ ID NO: 149〜163より選択される1つもしくは複数のコンセンサス配列を含む。いくつかの態様において、本発明は、1つまたは複数の前記改変PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0159】
さらに、本発明のいくつかの態様において、改変PYR/PYL受容体ポリペプチドをスクリーニングする方法は、改変ポリペプチドをスクリーニングして、ベノキサコルによってそれが刺激されるかどうかを判定する段階を含む。
【0160】
BTH
いくつかの場合において、PYR/PYL受容体ポリペプチドの1つのアミノ酸を変異させると、改変された受容体がBTHによって活性化されるようになる(表5)。いくつかの場合において、PYR/PYL受容体ポリペプチドの2つまたはそれ以上のアミノ酸を変異させると、改変された受容体がBTHによって活性化されるようになる。改変PYR/PYL受容体がBTHによって刺激されるようにする、例示的な変異および変異組合せの非限定的なリストは、以下のものを含む:
Q24R、K59R、I82T、F159L、およびD161G
H115YおよびF159S
F159L。
【0161】
したがって、いくつかの態様において、改変PYR/PYL受容体はBTHによって刺激される。いくつかの態様において、改変PYR/PYLタンパク質は、前述のものに対応する1つまたは複数の変異セットを含む。いくつかの態様において、このようなタンパク質は、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかと実質的に同一であり、かつ/またはSEQ ID NO: 149〜163より選択される1つもしくは複数のコンセンサス配列を含む。いくつかの態様において、本発明は、1つまたは複数の前記改変PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0162】
さらに、本発明のいくつかの態様において、改変PYR/PYL受容体ポリペプチドをスクリーニングする方法は、改変ポリペプチドをスクリーニングして、BTHによってそれが刺激されるかどうかを判定する段階を含む。
【0163】
化学的アゴニストは、当業者に公知の様々な方法、例えば、Comprehensive Organic Transformations, 2d ed., Richard C. Larock, 1999において説明されているものによって調製することができる。前述の方法のための出発原料は、市販されている(Sigma-Aldrich)か、または当業者に公知の方法によって調製することができる。
【0164】
いくつかの態様において、企図される農薬製剤は、植物に接触させるために製剤化される。これらの製剤は、例えば担体中で、本発明に従って、植物または植物繁殖材料(propagation material)、例えば種子を処理するのに適し得る。適切な添加剤には、緩衝剤、湿潤剤、コーティング剤、多糖、および研磨剤が含まれる。例示的な担体には、水、水溶液、スラリー、固形物および乾燥粉末(例えば、ピート、コムギ、フスマ、バーミキュライト、粘土、低温殺菌された土、多数の形態の炭酸カルシウム、ドロマイト、様々なグレードの石膏、ベントナイト、および他の粘土鉱物、リン鉱石および他のリン含有化合物、二酸化チタン、腐植質、タルク、アルギナート、ならびに活性炭)が含まれる。当業者に公知の農業的に適切な任意の担体が許容され、本発明において使用するために企図される。任意で、これらの製剤は、少なくとも1種の界面活性剤、除草剤、殺真菌剤、殺虫剤、または肥料も含んでよい。
【0165】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドへの農薬製剤の接触は、インビトロ(例えば、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが精製された形態で存在する場合もしくは酵母細胞において発現される場合)、またはインビボ(例えば、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが植物によって発現される場合)で実施することができる。インビトロでの変異PYR/PYL受容体ポリペプチドへの農薬製剤の接触は、様々な公知の方法を用いて、例えば、タンパク質結合アッセイ法、哺乳動物ツーハイブリッドアッセイ法もしくは酵母ツーハイブリッドアッセイ法、競合アッセイ法、または他の生物を用いた細胞ベースのアッセイ法に製剤を適用することによって実施することができる。
【0166】
インビボでの変異PYR/PYL受容体ポリペプチドへの(例えば、植物への)農薬製剤の接触は、様々な公知の方法を用いて、例えば、繁殖材料の上に組成物をスプレーするか、噴霧するか、振りかけるか、もしくは散布するか、または植物に組成物を刷毛で塗るか、もしくは注ぐか、もしくは別の方法で接触させるか、または種子の場合には、種子をコーティングするか、カプセル化するか、もしくは別の方法で処理することによって、実施することができる。植物または植付け前の種子を直接処理することの代案となる方法において、本発明の製剤はまた、種子が植え付けられる予定の土または他の媒体中に導入されてもよい。いくつかの態様において、担体もまた、この態様において使用される。上述したように、担体は固体でも液体でもよい。いくつかの態様において、化学的アゴニストの担体としての水の中にピートが懸濁され、この混合物が、土もしくは植付け媒体の中に、かつ/または植え付けられる際に種子の上に、スプレーされる。
【0167】
IV 変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを作製する方法
本発明の態様は、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを刺激しない化学的アゴニストによって刺激される変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを作製する方法を提供する。いくつかの態様において、この方法は、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに変異を誘発させる段階、1つまたは複数の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを推定上の化学的アゴニストと接触させる段階、およびその化学物質が1種または複数種の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを活性化するかどうかを判定する段階であって、活性化によって、1種または複数種の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドがその化学物質で刺激されることが確認される、段階を含む。
【0168】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドは、例えば、部位特異的変異誘発と一般に呼ばれる技術を用いて、対応する野生型PYR/PYL受容体ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO: 1〜119のいずれかの野生型PYR/PYLポリペプチドまたは本発明の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドの由来元である対応する変種)をコードするDNA配列を変異させることによって構築することができる。野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする核酸分子は、当業者に周知の様々なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術によって変異させることができる。(例えば、PCR Strategies (M. A. Innis, D. H. Gelfand, and J. J. Sninsky eds., 1995, Academic Press, San Diego, CA) Chapter 14; PCR Protocols : A Guide to Methods and Applications (M. A. Innis, D. H. Gelfand, J. J. Sninsky, and T. J. White eds., Academic Press, NY, 1990を参照されたい。)
【0169】
非限定的な例として、変異誘発は、DNA複製におけるエラー率の上昇を促進するために(例えば、エラープロンなポリメラーゼを用いて、マグネシウム濃度もしくはマンガン濃度を変化させて、または不釣り合いなdNTP比率を提供することによって)PCR反応条件を変更するエラープロンPCR増幅(ePCR)によって遂行することができる。GeneMorph(登録商標)PCR変異誘発キット(Stratagene)およびDiversify(登録商標)PCRランダム変異誘発キット(Clontech)などのePCR変異誘発のためのキットが市販されている。簡単に説明すると、DNAポリメラーゼ(例えばTaqポリメラーゼ)、塩(例えば、MgCl2、MgSO4、またはMnSO4)、不釣り合いな比率のdNTP、反応緩衝液、およびDNA鋳型がまとめられ、製造業者の取扱い説明書に従って標準的なPCR増幅に供される。ePCR増幅後、反応産物は、変異誘発ライブラリーを構築するために適切なベクター中にクローニングされ、次いで、このライブラリーは、後述するように、その後のスクリーニング(例えば、ツーハイブリッドスクリーニングによる)のために適切な細胞(例えば酵母細胞)に形質転換され得る。
【0170】
あるいは、変異誘発は、組換え(すなわちDNAシャッフリング)によって遂行することもできる。手短に言えば、ランダムに導入された点変異をもたらす、親DNAのランダム断片化とそれに続くPCRを用いた再構築によるインビトロの相同組換えを用いたDNAシャッフリングによって、シャッフルされた変異体ライブラリーが作製される。DNAシャッフリングを実施する方法は、当技術分野において公知である(例えば、Stebel, S.C. et al., Methods Mol Biol 352:167-190 (2007)を参照されたい)。
【0171】
任意で、単離される変異タンパク質の効率を上げるために、複数回の変異誘発を実施してもよい。したがって、いくつかの態様において、ePCRおよび後続のスクリーニングによって単離されたPYR/PYL変異体を集め、その後の変異誘発のための鋳型として使用してよい。
【0172】
V 変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアゴニズム(agonism)のスクリーニング
また、本発明の態様は、推定上の化学的アゴニストをスクリーニングして、推定上のアゴニストをPYR/PYL受容体ポリペプチドに接触させた場合に推定上のアゴニストが変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを刺激するが野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを顕著には刺激しないかどうかを判定する方法も提供する。本明細書において使用される場合、作用物質が存在することにより、受容体の活性が活性化または上方調節されて、例えば、PYR/PYL受容体からの下流のシグナル伝達が増大する場合、作用物質はPYR/PYL受容体タンパク質を「刺激する」。本発明の場合、作用物質が200μM以下の濃度で存在する場合にその作用物質をPYR/PYL受容体に接触させると、PYR/PYL受容体の活性が活性化または上方調節される場合、作用物質はPYR/PYL受容体を刺激する。作用物質が200μM以下の濃度で存在する場合にその作用物質がPYR/PYL受容体タンパク質の活性の活性化も上方調節も誘導しない場合、作用物質はPYR/PYL受容体を顕著には刺激しない。本明細書において使用される場合、「活性化」は、その作用物質によって誘導され得る活性の最低閾値を必要とする。活性のこの最低閾値に達したかどうかの判定は、例えば、誘導されなければならない酵素活性レベルの最低値を設定する酵素ホスファターゼアッセイ法を用いることによって、または比色検出試薬(例えば、para-ニトロフェニルホスファート)の存在下で酵素ホスファターゼアッセイ法を用いることによって(色の変化が観察された場合、活性の最低閾値に達している)、遂行することができる。
【0173】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを刺激するが野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを刺激しない化学的作用物質を同定するために、いくつかの様々なスクリーニングプロトコールが使用され得る。スクリーニングは、単離された、精製された、またはある程度精製された反応物(reagent)を用いて行うことができる。いくつかの態様において、精製された、またはある程度精製されたPYR/PYLポリペプチドが使用され得る。
【0174】
あるいは、細胞ベースのスクリーニング方法または植物ベースのスクリーニング方法が使用され得る。例えば、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを天然に発現する細胞または野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドもしくは変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを組換えによって発現する細胞が使用され得る。いくつかの態様において、使用される細胞は、限定されるわけではないが、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞を含む、植物細胞、動物細胞、細菌細胞、真菌細胞である。一般論として、スクリーニング方法は、1種または複数種の化学的作用物質をスクリーニングして、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドの活性を刺激する(例えば、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを活性化するか、または変異PYR/PYL受容体ポリペプチドもしくは変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする転写物の発現を増大させる)が、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドの活性を刺激しない作用物質を同定する段階を含む。任意で、スクリーニング方法は、2つのスクリーニングプロセスを含んでよい:最初に、複数の推定上のアゴニストをスクリーニングして、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドと弱い力で相互作用する化合物(「弱いリガンド」)を同定し、次いで、それらの弱いリガンドを野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドおよび複数の変異誘発されたPYR/PYL受容体ポリペプチドに対してスクリーニングして、どの変異PYR/PYL受容体ポリペプチドが弱いリガンドによって刺激されるか、およびどの弱いリガンドが変異PYR/PYL受容体ポリペプチドだけを選択的に刺激し、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドは刺激しないかを判定する。
【0175】
結合アッセイ法
任意で、野生型PYR/PRL受容体ポリペプチドに結合できる作用物質を求めてスクリーニングすることによって、予備スクリーニングを実施してもよい。弱い力で結合するリガンドを予備選択することにより、作用物質によって刺激される変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを単離する頻度が改善され、これは、おそらくは分子認識を実現するのに必要とされるリガンド結合部位の変更の数が少ないためである。
【0176】
結合アッセイ法は、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを1種または複数種の化学的作用物質と接触させる段階、およびタンパク質と化学的作用物質とが結合複合体を形成するのに十分な時間を与える段階を含んでよい。形成された任意の結合複合体は、いくつかの確立された解析技術のいずれかを用いて検出することができる。タンパク質結合アッセイ法には、非変性SDS-ポリアクリルアミドゲル上での共沈殿または共移動(co-migration)を測定する方法、およびウェスタンブロット上での共移動を測定する方法が含まれるが、それらに限定されるわけではない(例えば、Bennet, J.P. and Yamamura, H.I. (1985) "Neurotransmitter, Hormone or Drug Receptor Binding Methods," Neurotransmitter Receptor Binding (Yamamura, H. I., et al., eds.), pp. 61-89を参照されたい)。他の結合アッセイ法は、PYR/PYLポリペプチドに結合された分子を同定するための質量分析法もしくはNMR技術の使用、または標識された基質(例えば、標識された農業化学品)の置換を含む。このようなアッセイ法において使用されるPYR/PYLポリペプチドタンパク質は、天然に発現されるか、クローン化されるか、または合成されてよい。
【0177】
アゴニストアッセイ法
アゴニストアッセイ法は、推定上の化学的アゴニスト(弱い結合リガンドとして予備選択されたものでも、されてないものでもよい)をスクリーニングして、どの推定上のアゴニストが、少なくとも1種の変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを刺激するが野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドは刺激しないかを判定する段階、および/または変異誘発されたPYR/PYL受容体ポリペプチドを推定上の化学的アゴニスト(弱い結合リガンドとして予備選択されたものでも、されてないものでもよい)を用いてスクリーニングして、どの変異誘発されたPYR/PYL受容体ポリペプチドが推定上のアゴニストによって刺激されるかを判定する段階を含んでよい。
【0178】
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのアゴニストをスクリーニングするために、任意の数のアッセイ法を用いることができる。1つの活性アッセイ法は、推定上のアゴニストが、アゴニストに特異的に2型タンパク質ホスファターゼ(PP2C)ポリペプチドへの変異PYR/PYLタンパク質の結合を誘導できるかどうかを試験する段階を含む。哺乳動物または酵母のツーハイブリッドアプローチ(例えば、Bartel, P.L. et. al. Methods Enzymol, 254:241 (1995)を参照されたい)を用いて、細胞中で一緒に発現された場合に相互作用するか、または結合するポリペプチドまたは他の分子を同定することができる。いくつかの態様において、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを刺激するが野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを刺激しない作用物質は、PYR/PYLポリペプチドと2型タンパク質ホスファターゼ(PP2C)ポリペプチドとのツーハイブリッドアッセイ法において同定され、その際、アゴニストは、PYR/PYLポリペプチドおよびPP2Cポリペプチドの結合を活性化するか、または可能にする作用物質として同定される。したがって、これら2種のポリペプチドは、その作用物質の存在下では結合するが、非存在下では結合しない。任意で、ポジティブ選択スキームとネガティブ選択スキームの両方が、ツーハイブリッドアッセイ法において使用され得る。例えば、酵母ツーハイブリッドアッセイ法は、ポジティブ選択とネガティブ選択の両方を実施するためにURA3レポーター株を使用してよい;外部から供給されるウラシルがない状況でのURA株の増殖により、アゴニスト応答性(すなわち、アゴニストによって促進されるタンパク質間の相互作用)を改善する変異体のポジティブ選択が可能になり、一方、FOA(5-fluoro-orotic acid(5-フルオロ-オロト酸)、URA3によって代謝されて毒性代謝産物になる)の存在下での増殖により、(例えば、構成的相互作用、すなわちリガンド非結合の相互作用をもたらす変異体を除去するための)アゴニスト応答を促進する変異体の除外(selection against)が可能になる。
【0179】
また、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドの発現を増大させるが野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドの発現は増大させない化合物のスクリーニングも提供される。スクリーニング方法は、一般に、PYR/PYLポリペプチドを発現する1つまたは複数の細胞と試験化合物を接触させる細胞ベースのアッセイ法または植物ベースのアッセイ法を実施する段階、およびPYR/PYL発現の増大(転写物または翻訳産物のいずれか)を次いで検出する段階を含む。アッセイ法は、野生型PYR/PYLを天然に発現する細胞を用いて、または変異PYR/PYLもしくは野生型PYR/PYLを発現するように組換えによって変更された細胞において実施され得る。レポーター構築物を欠く細胞との並行反応、またはレポーター構築物を有する細胞を試験化合物と接触させない並行反応を実施することを含む、様々な対照を実施して、観察される活性が信頼できるものであることを保証することができる。
【0180】
前述のスクリーニング方法のいずれかによって最初に同定される作用物質および変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをさらに試験して、見かけの活性を確認し、かつ/または作用物質および/もしくは変異PYR/PYL受容体ポリペプチドの他の生物学的作用を決定することができる。いくつかの場合において、同定された作用物質および/または変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを、植物ストレス(例えば耐乾燥性)、種子の発芽、またはABAの影響を受ける別の表現型をもたらす能力について試験する。いくつかのこのようなアッセイ法および表現型が当技術分野において公知であり、本発明の方法に従って使用することができる。
【0181】
VI 組換え発現ベクター
変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列が得られたら、異種プロモーターの指示を受ける、トランスジェニック植物において変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現させるための発現カセットを調製するためにそれを使用することもできる。変異PYR/PYLポリヌクレオチドの発現の増大は、例えば、内因性PYR/PYL受容体タンパク質を刺激しない化学的アゴニストに応答し、それによって、非生物的ストレスに対する抵抗性を高めることができる植物を作製するのに有用である。
【0182】
当技術分野において周知であるいくつかの手段のいずれかを用いて、植物において変異PYR/PYLの活性または発現を推進することができる。苗条の栄養器官/構造体(例えば、葉、茎、および塊茎)、根、花および花器/構造体(例えば、苞葉、萼片、花弁、雄ずい、心皮、葯、および胚珠)、種子(胚、内乳、および種皮を含む)、ならびに果実などの任意の器官を標的とすることができる。あるいは、(例えばCaMV 35Sプロモーターを用いて)変異PYR/PYLポリヌクレオチドを構成的に発現させることもできる。
【0183】
上記の技術において変異PYR/PYL受容体ポリペプチドのポリヌクレオチド配列を使用するために、植物細胞の形質転換に適した組換えDNAベクターが調製される。多種多様の高等植物種を形質転換するための技術が周知であり、技術文献および科学文献において説明されている。例えば、Weising et al. Ann. Rev. Genet. 22:421-477 (1988)を参照されたい。好ましくは、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするDNA配列は、形質転換された植物の意図された組織中の遺伝子に由来する配列の転写を指示する転写および翻訳の開始調節配列と組み合わされる。
【0184】
例えば、植物プロモーター断片を使用して、再生された植物の全組織における変異PYR/PYLポリヌクレオチドの発現を指示することができる。このようなプロモーターは、本明細書において「構成的」プロモーターと呼ばれ、大半の環境条件および発生または細胞分化の状態のもとで活性である。構成的プロモーターの例には、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S転写開始領域、アグロバクテリウム・ツマファシエンス(Agrobacterium tumafaciens)のT-DNAに由来する1'-プロモーターまたは2'-プロモーター、および当業者に公知の様々な植物遺伝子に由来する他の転写開始領域が含まれる。
【0185】
あるいは、植物プロモーターは、特定の組織において変異PYR/PYL受容体タンパク質の発現を指示し得る(組織特異的プロモーター)か、またはさもなければ、より厳密な環境的制御下にあり得る(誘導性プロモーター)。発生制御下にある組織特異的プロモーターの例には、葉または孔辺細胞など特定の組織においてのみ転写を開始するプロモーターが含まれる(限定されるわけではないが、WO/2005/085449;米国特許第6,653,535号; Li et al. , Sci China C Life Sci. 2005 Apr;48(2):181-6; Husebye, et al., Plant Physiol, April 2002, Vol. 128, pp. 1180-1188;およびPlesch, et al., Gene, Volume 249, Number 1, 16 May 2000 , pp. 83-89(7)において説明されているものを含む)。誘導性プロモーターによる転写に影響し得る環境条件の例には、嫌気的条件、温度上昇、または光の存在が含まれる。
【0186】
適切なタンパク質発現が望ましい場合、コード領域の3'末端のポリアデニル化領域が含まれるべきである。ポリアデニル化領域は、天然のPYR/PYL遺伝子、様々な他の植物遺伝子、またはT-DNAに由来してよい。
【0187】
これらの配列(例えば、プロモーターまたはPYR/PYLコード領域)を含むベクターは、典型的には、植物細胞に選択可能な表現型を与えるマーカー遺伝子を含む。例えば、マーカーは、殺生物剤抵抗性、特に、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、ヒグロマイシンに対する抵抗性などの抗生物質抵抗性、またはクロロスルホロン(chlorosluforon)もしくはBastaに対する抵抗性などの除草剤抵抗性をコードし得る。
【0188】
いくつかの態様において、変異PYR/PYL核酸配列は、植物細胞において組換えによって発現される。様々な異なる発現構築物、例えば、植物細胞の形質転換に適した発現カセットおよびベクターが調製され得る。多種多様の高等植物種を形質転換するための技術が周知であり、技術文献および科学文献において説明されている。例えば、Weising et al. Ann. Rev. Genet. 22:421-477 (1988)を参照されたい。PYR/PYLタンパク質をコードするDNA配列は、形質転換された植物の意図された組織における転写のタイミング、組織型、およびレベルを指示するために、シス作用性(プロモーター)およびトランス作用性(エンハンサー)の転写調節配列と組み合わせることができる。また、翻訳制御エレメンも使用され得る。
【0189】
また、本発明の態様は、いくつかの態様において植物におけるPYR/PYLコード配列の転写を推進することができるプロモーターに機能的に連結された変異PYR/PYL核酸も提供する。このプロモーターは、例えば、植物供給源またはウイルス供給源に由来してよい。プロモーターは、例えば、構成的に活性、誘導性、または組織特異的でよい。本発明の組換え発現カセット、ベクター、トランスジェニック体の構築において、様々なプロモーターを選択し、使用して、例えば、植物または動物の一部の組織またはすべての組織における遺伝子発現を差次的に指示することができる。
【0190】
構成的プロモーター
プロモーター断片を使用して、例えば、再生された植物のものとしての形質転換されたすべての細胞または組織における変異PYR/PYL核酸の発現を指示することができる。「構成的調節エレメント」という用語は、構成的調節エレメントが発現される細胞型または組織型から比較的独立している機能的に連結された核の分子(nucleic molecule)に、あるレベルの発現を与える調節エレメントを意味する。植物において発現される構成的調節エレメントは、一般に、多数の細胞型および組織型で幅広く発現される。生理的条件下で継続的に発現を推進するプロモーターは、「構成的」プロモーターと呼ばれ、大半の環境条件および発生または細胞分化の状態のもとで活性である。
【0191】
トランスジェニック植物における異所発現に有用である様々な構成的調節エレメントが、当技術分野において周知である。例えば、カリフラワーモザイクウイルス35S(CaMV 35S)プロモーターは、あらゆる植物組織において高レベルの発現をもたらす、十分に特徴付けられている構成的調節エレメントである(Odell et al., Nature 313:810-812 (1985))。CaMV 35Sプロモーターは、多数の様々な植物種におけるその活性のおかげで、特に有用であり得る(Benfey and Chua, Science 250:959-966 (1990); Futterer et al., Physiol. Plant 79:154 (1990); Odell et al., 前記、1985)。内因性プロモーターエレメントを二倍にした(duplicated)タンデムな35Sプロモーターは、未改変の35Sプロモーターと比較して、より高い発現レベルを与える(Kay et al., Science 236:1299 (1987))。他の有用な構成的調節エレメントには、例えば、カリフラワーモザイクウイルス19Sプロモーター;ゴマノハグサモザイクウイルスプロモーター;およびノパリンシンターゼ(nos)遺伝子プロモーターが含まれる(Singer et al., Plant Mol. Biol. 14:433 (1990); An, Plant Physiol. 81:86 (1986))。
【0192】
単子葉植物における効率的な発現のためのものを含むその他の構成的調節エレメントもまた、当技術分野において公知であり、例えば、pEmuプロモーターおよびコメアクチン-1の5'領域に基づいたプロモーターである(Last et al., Theor. Appl. Genet. 81:581 (1991); Mcelroy et al., Mol. Gen. Genet. 231:150 (1991); Mcelroy et al., Plant Cell 2:163 (1990))。異なる遺伝子に由来するエレメントを組み合わせるキメラ調節エレメントもまた、変異PYR/PYL受容体タンパク質をコードする核酸分子を異所的に発現させるのに有用であり得る(Comai et al., Plant Mol. Biol. 15:373 (1990))。
【0193】
構成的プロモーターの他の例には、アグロバクテリウム・ツマファシエンス(tumafaciens)のT-DNAに由来する1'-プロモーターまたは2'-プロモーター(例えば、Mengiste (1997) 前記;O'Grady (1995) Plant Mol. Biol. 29:99-108を参照されたい);シロイヌナズナアクチン遺伝子プロモーターのようなアクチンプロモーター(例えば、Huang (1997) Plant Mol. Biol. 1997 33:125-139を参照されたい); アルコールデヒドロゲナーゼ(Adh)遺伝子プロモーター(例えば、Millar (1996) Plant Mol. Biol. 31:897-904を参照されたい);シロイヌナズナ由来のACT11(Huang et al. Plant Mol. Biol. 33:125-139 (1996))、シロイヌナズナ由来のCat3(GenBank番号U43147、Zhong et al., Mol. Gen. Genet. 251:196-203 (1996))、セイヨウアブラナ(Brassica napus)由来のステアロイル-アシルキャリアータンパク質不飽和化酵素をコードする遺伝子(Genbank番号X74782、Solocombe et al. Plant Physiol. 104:1167-1176 (1994))、トウモロコシ由来のGPc1(GenBank番号X15596、Martinez et al. J. Mol. Biol 208:551-565 (1989))、トウモロコシ由来のGPc2(GenBank番号 U45855、Manjunath et al., Plant Mol. Biol. 33:97-112 (1997))、当業者に公知の様々な植物遺伝子に由来する他の転写開始領域が含まれる。Holtorf Plant Mol. Biol. 29:637-646 (1995)も参照されたい。
【0194】
誘導性プロモーター
あるいは、植物プロモーターは、変化する環境条件または発生条件の影響のもとで変異PYR/PYLポリヌクレオチドの発現を指示し得る。誘導性プロモーターによる転写をもたらし得る環境条件の例には、嫌気的条件、温度上昇、乾燥、または光の存在が含まれる。このようなプロモーターは、本明細書において「誘導性」プロモーターと呼ばれる。例えば、本発明は、トウモロコシの乾燥誘導性プロモーター(例えば、トウモロコシrab17乾燥誘導性プロモーター)のような乾燥特異的プロモーター(Vilardell et al. (1991) Plant Mol. Biol. 17:985-993; Vilardell et al. (1994) Plant Mol. Biol. 24:561-569));あるいはジャガイモに由来する寒冷、乾燥、および高塩濃度誘導性プロモーター(Kirch (1997) Plant Mol. Biol. 33:897-909)を含むことができる。
【0195】
あるいは、オーキシンのような植物ホルモンに曝露された際に誘導可能である植物ホルモンが、変異PYR/PYLポリヌクレオチドを発現させるのに使用される。例えば、本発明は、ダイズ(Glycine max L.(ダイズ))中のオーキシン応答エレメントであるE1プロモーター断片(AuxRE)(Liu (1997) Plant Physiol. 115:397-407);オーキシン応答性シロイヌナズナGST6プロモーター(サリチル酸および過酸化水素にも応答性)(Chen (1996) Plant J. 10: 955-966);タバコ由来のオーキシン誘導性parCプロモーター(Sakai (1996) 37:906-913);植物ビオチン応答エレメント(Streit (1997) Mol. Plant Microbe Interact. 10:933-937);およびストレスホルモンアブシジン酸に応答性のプロモーター(Sheen (1996) Science 274:1900-1902)を使用することができる。
【0196】
除草剤または抗生物質など植物に適用され得る化学物質試薬に曝露された際に誘導可能な植物プロモーターもまた、変異PYR/PYLポリヌクレオチドを発現させるのに有用である。例えば、ベンゼンスルホンアミド除草剤薬害軽減剤によって活性化されるトウモロコシIn2-2プロモーターが使用され得る(De Veylder (1997) Plant Cell Physiol. 38:568-577);様々な除草剤薬害軽減剤の適用により、根、排水組織、および茎頂分裂組織における発現を含む、独特な遺伝子発現パターンが誘導される。また、PYR/PYLコード配列は、例えばエンバク(Avena sativa L.)(オートムギ)のアルギニンデカルボキシラーゼ遺伝子を含むトランスジェニックタバコ植物を用いて説明されているような、例えばテトラサイクリン誘導性プロモーター(Masgrau (1997) Plant J. 11:465-473)またはサリチル酸応答エレメント(Stange (1997) Plant J. 11:1315-1324; Uknes et al., Plant Cell 5:159-169 (1993); Bi et al., Plant J. 8:235-245 (1995))の制御下にあってもよい。
【0197】
有用な誘導性調節エレメントの例には、銅誘導性調節エレメント(Mett et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:4567-4571 (1993); Furst et al., Cell 55:705-717 (1988));テトラサイクリン誘導性およびクロルテトラサイクリン誘導性調節エレメント(Gatz et al., Plant J. 2:397-404 (1992); Roder et al., Mol. Gen. Genet. 243:32-38 (1994); Gatz, Meth. Cell Biol. 50:411-424 (1995));エクジソン誘導性調節エレメント(Christopherson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:6314-6318 (1992); Kreutzweiser et al., Ecotoxicol. Environ. Safety 28:14-24 (1994));熱ショック誘導性調節エレメント(Takahashi et al., Plant Physiol. 99:383-390 (1992); Yabe et al., Plant Cell Physiol. 35:1207-1219 (1994); Ueda et al., Mol. Gen. Genet. 250:533-539 (1996));および例えばIPTG誘導性発現を与えるために、構成的に発現されるlacリプレッサーと組み合わせて使用されるlacオペロンエレメント(Wilde et al., EMBO J. 11:1251-1259 (1992))が含まれる。また、本発明のトランスジェニック植物において有用な誘導性調節エレメントは、例えば、ホウレンソウ亜硝酸還元酵素遺伝子に由来する硝酸誘導性プロモーター(Back et al., Plant Mol. Biol. 17:9 (1991))またはRuBPカルボキシラーゼの小サブユニットもしくはLHCP遺伝子ファミリーに関連しているもののような光誘導性プロモーター(Feinbaum et al., Mol. Gen. Genet. 226:449 (1991); Lam and Chua, Science 248:471 (1990))でもよい。
【0198】
組織特異的プロモーター
あるいは、植物プロモーターは、特定の組織において変異PYR/PYLポリヌクレオチドの発現を指示してもよい(組織特異的プロモーター)。組織特異的プロモーターは、植物発生の間の特定の時点に特定の細胞または組織中で、例えば、栄養組織または生殖組織中でのみ活性である転写制御エレメントである。
【0199】
発生制御下にある組織特異的プロモーターの例には、栄養組織(例えば、根もしくは葉)、または生殖組織(果実、胚珠、種子、花粉、ピストル(pistol)、花、もしくは任意の胚組織など)、または表皮もしくは葉肉などの特定の組織においてのみ(または主にこれらにおいてのみ)転写を開始するプロモーターが含まれる。生殖組織特異的プロモーターは、例えば、胚珠特異的、胚特異的、内乳特異的、外皮特異的、種子特異的および種皮特異的、花粉特異的、花弁特異的、萼特異的、またはそれらの何らかの組合せでよい。いくつかの態様において、プロモーターは、細胞型特異的、例えば、孔辺細胞特異的である。
【0200】
他の組織特異的プロモーターには種子プロモーターが含まれる。適切な種子特異的プロモーターは、次の遺伝子に由来する:トウモロコシ由来のMAC1(Sheridan (1996) Genetics 142:1009-1020); トウモロコシ由来のCat3(GenBank番号L05934、Abler (1993) Plant Mol. Biol. 22:10131-1038);シロイヌナズナ由来のビブパラス(vivparous)-1(Genbank番号U93215);シロイヌナズナ由来のatmyc1(Urao (1996) Plant Mol. Biol. 32:571-57; Conceicao (1994) Plant 5:493-505);セイヨウアブラナ由来のnapA(GenBank番号J02798、Josefsson (1987) JBL 26:12196-1301);およびセイヨウアブラナ由来のnapin遺伝子ファミリー(Sjodahl (1995) Planta 197:264-271)。
【0201】
葉、茎、根、および塊茎などの栄養組織において特異的に活性である様々なプロモーターもまた、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現させるのに使用され得る。例えば、ジャガイモ塊茎の主な貯蔵タンパク質であるパタチンを制御するプロモーターが使用され得る。例えば、Kim (1994) Plant Mol. Biol. 26:603-615; Martin (1997) Plant J. 11:53-62を参照されたい。根において高い活性を示すアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)由来ORF13プロモーターもまた、使用され得る(Hansen (1997) Mol. Gen. Genet. 254:337-343)。他の有用な栄養組織特異的プロモーターには、次のものが含まれる:タロイモ(Colocasia esculenta L. Schott(タロイモ))の主な球茎タンパク質ファミリーに由来するグロブリンであるタリン(tarin)をコードする遺伝子のタリンプロモーター(Bezerra (1995) Plant Mol. Biol. 28:137-144);タロイモ球茎の発達中に活性なクルクリンプロモーター(de Castro (1992) Plant Cell 4:1549-1559)、ならびに根分裂組織および未成熟な中心柱領域に発現が局在しているタバコ根特異的遺伝子TobRB7のプロモーター(Yamamoto (1991) Plant Cell 3:371-382)。
【0202】
リブロース二リン酸カルボキシラーゼ(RBCS)プロモーターのような葉特異的プロモーターが使用され得る。例えば、トマトのRBCS1遺伝子、RBCS2遺伝子、およびRBCS3A遺伝子は、葉および光照射下で成長させた(light-grown)実生において発現され、RBCS1およびRBCS2のみが、発育中のトマト果実において発現される(Meier (1997) FEBS Lett. 415:91-95)。Matsuoka (1994) Plant J. 6:311-319によって説明されている、ほぼ葉身および葉鞘中の葉肉細胞においてのみ高レベルで発現されるリブロース二リン酸カルボキシラーゼプロモーターが、使用され得る。別の葉特異的プロモーターは、集光性クロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子プロモーターであり、例えば、Shiina (1997) Plant Physiol. 115:477-483; Casal (1998) Plant Physiol. 116:1533-1538を参照されたい。Li (1996) FEBS Lett. 379:117-121によって説明されているシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)myb関連遺伝子プロモーター (Atmyb5)は、葉特異的である。Atmyb5プロモーターは、発達中の葉毛状突起、托葉、ならびに若いロゼットおよび茎生葉の辺縁の表皮細胞、ならびに未成熟な種子において発現される。Atmyb5 mRNAは、受精と胚発生の16細胞期との間に出現し、ハート型期(heart stage)より後まで持続する。Busk (1997) Plant J. 11:1285-1295によってトウモロコシ中で同定された葉プロモーターもまた、使用され得る。
【0203】
有用な栄養組織特異的プロモーターの別のクラスは、分裂組織(根先端および茎頂)プロモーターである。例えば、Di Laurenzio (1996) Cell 86:423-433およびLong (1996) Nature 379:66-69によって説明されている、発育中の苗条分裂組織または根端分裂組織において活性である「SHOOTMERISTEMLESS」プロモーターおよび「SCARECROW」プロモーターが使用され得る。別の有用なプロモーターは、発現が分裂組織および花組織(柱頭の分泌領域、成熟した花粉粒、雌しべの管組織、および受精胚珠)に限定されている3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素HMG2遺伝子の発現を制御するものである(例えば、Enjuto (1995) Plant Cell. 7:517-527を参照されたい)。また、分裂組織に特異的な発現を示す、トウモロコシおよび他の種に由来するkn1関連遺伝子も有用である。例えば、Granger (1996) Plant Mol. Biol. 31:373-378; Kerstetter (1994) Plant Cell 6:1877-1887; Hake (1995) Philos. Trans. R. Soc. Lond. B. Biol. Sci. 350:45-51を参照されたい。例えば、シロイヌナズナKNAT1プロモーター(例えば、Lincoln (1994) Plant Cell 6:1859-1876を参照されたい)。
【0204】
当業者は、組織特異的プロモーターが、標的組織以外の組織において、機能的に連結された配列の発現を推進し得ることを認識するであろう。したがって、本明細書において使用される場合、組織特異的プロモーターは、標的組織において優先的に発現を推進するが、他の組織においても同様にいくらかの発現をもたらし得るものである。
【0205】
別の態様において、変異PYR/PYLポリヌクレオチドは、転移因子を介して発現される。これにより、構成的に活性なポリペプチドの構成的ではあるが周期的かつ稀な発現が可能になる。本発明はまた、例えば、トバモウイルスノムのサブゲノムプロモーター(Kumagai (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:1679-1683);感染したイネ植物の師部細胞においてのみ複製し、師部特異的レポーター遺伝子の強い発現を推進するプロモーターを有するイネツングロバシリフォームウイルス(RTBV);維管束要素、葉の葉肉細胞、および根先端において最も高い活性を有するキャッサバ葉脈モザイクウイルス(CVMV)プロモーター(Verdaguer (1996) Plant Mol. Biol. 31:1129-1139)を含む、ウイルス由来の組織特異的プロモーターの使用も提供する。
【0206】
VII トランスジェニック植物の作製
本明細書において詳述するように、本発明の態様は、本明細書において説明する変異PYR/PYL受容体タンパク質を植物において発現させるための組換え発現カセットを含むトランスジェニック植物を提供する。いくつかの態様において、トランスジェニック植物の種以外の種に由来するポリヌクレオチドの完全な配列または部分的な配列を含むトランスジェニック植物が作製される。トランスジェニック植物は、発現カセットが導入される植物または植物細胞、ならびに染色体中に安定に組み込まれた発現カセットを有する子孫を含む、発現カセットを含むこのような植物または植物細胞の子孫を包含することが認識されるべきである。
【0207】
異種プロモーターによって推進されるPYR/PYLコード配列を含む組換え発現ベクターは、様々な従来の技術によって、所望の植物宿主のゲノム中に導入され得る。例えば、DNA構築物は、植物細胞プロトプラストのエレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションなどの技術を用いて、植物細胞のゲノムDNA中に直接導入してもよく、またはDNA構築物は、DNA微粒子銃のような弾道的方法を用いて、植物組織に直接導入することもできる。あるいは、DNA構築物を適切なT-DNA隣接領域と組み合わせて、従来のアグロバクテリウム・チュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)宿主ベクター中に導入してもよい。アグロバクテリウム・チュメファシエンス宿主のビルレンス機能によって、細胞がこの細菌に感染した場合、植物細胞DNA中への構築物および隣接したマーカーの挿入が指示されると考えられる。変異PYR/PYLの一過性発現は本発明に包含されるが、通常、本発明の構築物の発現は、例えば、少なくとも数代の植物子孫もまた、組み込まれた発現カセットを含むように、植物ゲノム中に発現カセットを挿入することによる。
【0208】
マイクロインジェクション技術もまた、この目的のために有用である。これらの技術は当技術分野において周知であり、文献において十分に説明されている。ポリエチレングリコール沈降を用いたDNA構築物の導入は、Paszkowski et al. EMBO J. 3:2717-2722 (1984)において説明されている。エレクトロポレーション技術は、Fromm et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:5824 (1985)において説明されている。弾道的な形質転換技術は、Klein et al. Nature 327:70-73 (1987)において説明されている。
【0209】
武装解除およびバイナリーベクターの使用を含む、アグロバクテリウム・チュメファシエンスを介した形質転換技術は、科学文献において十分に説明されている。例えば、Horsch et al. Science 233:496-498 (1984)およびFraley et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:4803 (1983)を参照されたい。
【0210】
上記の形質転換技術のいずれかによって誘導される形質転換植物細胞を培養して、形質転換された遺伝子型、したがって、非生物的ストレスに対する増強された抵抗性のような所望の表現型を有する完全体の植物を再生することができる。このような再生技術は、典型的には、所望のヌクレオチド配列と一緒に導入された殺生物剤マーカーおよび/または除草剤マーカーに依拠する、組織培養増殖培地中のいくつかの植物ホルモンの操作に依拠する。培養されたプロトプラストからの植物再生は、Evans et al., Protoplasts Isolation and Culture, Handbook of Plant Cell Culture, pp. 124-176, MacMillilan Publishing Company, New York, 1983;およびBinding, Regeneration of Plants, Plant Protoplasts, pp. 21-73, CRC Press, Boca Raton, 1985において説明されている。また、再生は、植物カルス、外植片、器官、またはそれらの一部分から実現することもできる。このような再生技術は、Klee et al. Ann. Rev. of Plant Phys. 38:467-486 (1987)においておおまかに説明されている。
【0211】
当業者は、発現カセットがトランスジェニック植物中に安定に組み込まれ、機能的であることが確認された後に、性的交雑によってそれを他の植物に導入できることを認識するであろう。交雑させる種に応じて、いくつかの標準的な育種技術のいずれかを用いることができる。
【0212】
本発明の発現カセットは、本質的に任意の植物に非生物的ストレスに対する抵抗性を与えるのに使用され得る。したがって、本発明は、アスパラガス属(Asparagus)、ベラドンナ属(Atropa)、カラスムギ属(Avena)、アブラナ属(Brassica)、ミカン属(Citrus)、スイカ属(Citrullus)、トウガラシ属(Capsicum)、キュウリ属(Cucumis)、カボチャ属(Cucurbita)、ニンジン属(Daucus)、オランダイチゴ属(Fragaria)、ダイズ属(Glycine)、ワタ属(Gossypium)、ヒマワリ属(Helianthus)、ヘテロカリス属(Heterocallis)、オオムギ属(Hordeum)、ヒヨス属(Hyoscyamus)、アキノノゲシ属(Lactuca)、アマ属(Linum)、ドクムギ属(Lolium)、トマト属(Lycopersicon)、リンゴ属(Malus)、イモノキ属(Manihot)、マヨラナ属(Majorana)、ウマゴヤシ属(Medicago)、タバコ属(Nicotiana)、イネ属(Oryza)、パニエウム属(Panieum)、パネセタム属(Pannesetum)、ワニナシ属(Persea)、エンドウ属(Pisum)、ナシ属(Pyrus)、サクラ属(Prunus)、ダイコン属(Raphanus)、ライムギ属(Secale)、キオン属(Senecio)、シロガラシ属(Sinapis)、ナス属(Solanum)、モロコシ属(Sorghum)、トリゴネラ属(Trigonella)、コムギ属(Triticum)、ブドウ属(Vitis)、ササゲ属(Vigna)、およびトウモロコシ属(Zea)に由来する種を含む、幅広い植物に渡る用途を有する。いくつかの態様において、植物は、コメ、トウモロコシ、コムギ、ダイズ、綿、キャノーラ、芝草、およびアルファルファからなる群より選択される。いくつかの態様において、植物は観賞植物である。いくつかの態様において、植物は野菜生産植物または果実生産植物である。
【0213】
当業者は、いくつかの植物種が、他の植物における導入遺伝子発現の表現型への影響を予測するためのモデルとして使用され得ることを認識するであろう。例えば、タバコ(タバコ属)植物およびシロイヌナズナ植物の両方が、特に他の双子葉植物における導入遺伝子発現の有用なモデルであることが十分に認識されている。
【0214】
いくつかの態様において、本発明の植物は、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドの発現を除いてその他の点では同一である植物と比べて、ある種の化学的アゴニストに対して増強された感受性を有する。ABA受容体のPYR/PYLファミリーを刺激するアゴニストに対する感受性は、ABAによってもたらされる任意の表現型を観察または測定することによってモニターすることができる。当業者は、ABAが十分に研究された植物ホルモンであること、およびABAが特徴に多くの変化をもたらし、いずれかの変化をモニターして、ABA感受性が調節されたかどうかを判定できることを認識するであろう。いくつかの態様において、調節されたABA感受性は、変化した種子発芽のタイミングまたは変化したストレス(例えば乾燥)耐性により明らかになる。
【0215】
非生物的ストレスに対する抵抗性は、いくつかの周知の技術のいずれかに従って分析することができる。例えば、耐乾燥性の場合、最適量未満の水が植物に提供される条件下で植物を成長させることができる。乾燥抵抗性は、膨圧、成長、および収穫量などを含むいくつかの標準的な指標のいずれかに基づいて、判定することができる。
【実施例】
【0216】
以下の実施例は、特許請求される本発明を例示するために提供されるが、それを限定するものではない。
【0217】
実施例1:PYR1オルソゴナル受容体の単離
変異(オルソゴナル)PYR/PYL受容体を単離するために、適切な標的リガンドを最初に同定する。次に、受容体変異誘発実験および選択実験を用いて、標的オルソゴナルリガンドに応答するオルソゴナル受容体を同定する。通常、変異誘発する前の受容体に対する標的リガンドの開始時の親和性が高いほど、標的の認識を実現させるために必要とされる変異の数は少ない。相手を選ばない(promiscuous)リガンド結合ポケットを有するタンパク質は、高度に選択的な結合ポケットよりも多数のリガンドと弱い力で接触する可能性が高いため、先天的に、高度に選択的であるポケットを有するものよりも優れた、人工的設計作業(engineering effort)のための開始点である。さらに、S.セレビシエ(S. cerevisiae)のような異種宿主において機能を測定できる受容体タンパク質は、このようなアッセイ法により、多数の変種受容体を迅速にスクリーニングすることが可能になるため、受容体の人工的設計(engineering)のための好ましい標的である。
【0218】
方法および結果
PYR1オルソゴナル受容体を単離するために、2段階のプロセスを使用した。最初に、大規模な化合物コレクションをスクリーニングして、競合実験において受容体に結合されたABAに取って代わる能力に基づいてそのようなものと定義される、受容体と弱い力で相互作用する化合物を同定した。弱い結合物が同定された後、最終用途の観点から最も望ましい特性を有するものを、反復される変異誘発および選択のスキームのための標的として使用した。弱い力で結合するリガンドを予備選択することにより、新しい受容体タンパク質を単離する頻度が改善され、これは、分子認識を実現するのに必要とされるリガンド結合部位の変更の数が少ないためである。しかしながら、予備選択は成功するための前提条件ではない。
【0219】
リガンドの予備選択。約1500種の市販の農業化学品からなるより大きなセットから、74種の構造的に多様な農業化学品を入手し、選択した。これら74種の化合物を、ABAに対して1000倍過剰な量で添加された場合(すなわち、100nMのABAおよび100μMの試験化学物質)に、適切な酵母株においてABAによって促進されるPYR/PYL-PP2Cタンパク質間相互作用を低減させる能力について試験した。この試験的スクリーニングにより、密接に関連した除草剤であるブロモキシニルおよびそのクロロ類似体クロロキシニル、殺鼠剤クマテトラリル、除草剤ジコルベニル(dicholbenil)、ならびに殺真菌剤フェンヘキサミドはみな、ABAを得るために競合することが明らかになった。スクリーニングした化合物74種の内の5種という観察されたこのヒット率から、PYR/PYL リガンド結合ポケットへの弱い結合が一般的で、STARTタンパク質が相手を選ばないリガンド結合ポケットを有するという観察結果と一致していることが実証される(Mogensen, J.E. et al., Journal of Biological Chemistry 277:23684-23692 (2002))。
【0220】
PCRに基づいたPYR1変異誘発。アゴニスト応答性を変更するPYR/PYL変異を同定するために、確立されたプロトコールを用いたエラープロンPCRによってPYR1のコード配列を変異させ(Lin-Goerke et al., Biotechniques 23:409-412 (1997))、酵母ツーハイブリッドベクターpBD-GAL4中にクローニングして、約70,000 個の変異体からなるライブラリー(ePCR1ライブラリーと名付ける)を得た。以前に説明されているようにして(Park et al., Science 324:1068-1071 (2009))、このプラスミドライブラリーを大腸菌(E. coli)において増幅させ、次いで、プラスミドpAD-HAB1によってコードされるGal4活性化ドメイン(AD)-PP2C融合タンパク質で同時形質転換されたS.セレビシエ株MAV99中に形質転換した。MAV99(Vidal et al., Proc Natl Acad Sci USA 93:10315-10320 (1996))は、Gal4によって活性化されるURA3レポーター遺伝子を含む逆ツーハイブリッド株である。この株は、外部から供給されるウラシルがない状況では増殖しない。しかしながら、この株がPYR1とHAB1のタンパク質間相互作用を可能にするPYR1変異体を発現する場合、URA3レポーター遺伝子は活性化され、これにより、株の増殖およびその後のコロニー形成が可能になる。したがって、MAV99株におけるBD-PYR1およびAD-HAB1の同時発現は、非天然アゴニストがPYR1-HAB1相互作用を促進するのを可能にするPYR1変異に関するポジティブ選択スキームを可能にし、これは、添加されるウラシルがない状況でアゴニストによって促進された増殖として観察され得る。さらに、増殖培地中にウラシルの代わりに化合物5-フルオロ-オロト酸(FOA、URA3によって代謝されて毒性代謝産物になる)を含めることにより、アゴニストに依存しない様式でBD-PYR1-AD-HAB1相互作用を与える変異(「構成的変異」)を除外することが可能になる。標的農業化学品分子は構成的変異体の活性を調節しないと思われるため、構成的変異はこのスクリーニング戦略において望ましくない。調節されたPYR1変異体および構成的PYR1変異体の両方とも、外部から供給されるウラシルがない状況でMAV99株を発現するHAB1-ADの増殖を可能にするため、ポジティブ選択スキームおよびネガティブ選択スキームの両方を利用することは有益である。
【0221】
農業化学品応答性変異体の単離。非天然農業化学的アゴニストに対する応答性を与えるPYR1変異を特定するために、MAV99/pAD-HAB1株にePCR1ライブラリーを形質転換して、「A」と呼ぶライブラリーを作製した。次いで、0.15%FOA含有培地上でAライブラリーを増殖させた。これにより、構成的変異の数が減らされたPYR1変異体のライブラリーである、「A'」と呼ぶ変異体ライブラリーを作製した。
【0222】
次いで、様々な農業化学品を用いた様々な選択実験のために、A'ライブラリーを用いた。例えば、フェンヘキサミド応答性変異を単離するために、ウラシルを欠き200μMフェンヘキサミドを含有する増殖培地上に約300,000個のA'細胞を播種した。数日間のインキュベーション後に、約80個のコロニーが出現し、これらを個別に回収し、フェンヘキサミドを含有する増殖培地またはフェンヘキサミドを欠く増殖培地のいずれかにおいて再試験した。フェンヘキサミドを欠くプレート上で増殖したコロニーは、A'ライブラリーの調製中に排除されなかった構成的変異を含み、これらを廃棄した。残る約30種の変異のPYR1コード配列を配列決定した。これにより、下記の7種の異なる変異体配列(表1)が単離されていたことが明らかになった:
【0223】
(表1)フェンヘキサミド応答性 PYR/PYL受容体ポリペプチド変異体
ePCR1=PYR1のエラープロンPCR変異誘発ライブラリー、開始サイズ:クローン70,000個。
*ウラシルを欠く培地上で、レポーター株MAV99(アゴニストによって促進されるPYR1-GAL4 BDとHAB1-GAL4 ADのタンパク質間相互作用によってGAL4活性が復元され、株のURA3遺伝子の発現が可能になる場合にのみ増殖する)を用いて、増殖を測定した。
【0224】
代表的な変異体に対して酵母ツーハイブリッドを用いて、PYR1変異体のフェンヘキサミド応答性を確認した。3つの代表的な変異体クローン(27-9、27-18、および27-36)のプラスミドを初代酵母細胞から単離し、Gal4がLacZレポーター遺伝子の発現を推進して、アゴニスト応答の比色表示を可能にするYRG-2レポーター株を発現するpAD-HAB1(Park et al., Science 324:1068-1071 (2009))中に形質転換した。フェンヘキサミドは、濃度1μM、5μM、10μM、25μM、および50μMで使用した。変異体27-18は、顕著な青色(LacZ陽性)の染色によって判定されるように、試験した全濃度のフェンヘキサミドに強く応答した。変異体27-9は、濃度5μM、10μM、25μM、および50μMのフェンヘキサミドに強く応答し、1μMの場合は弱い陽性を示した。変異体27-36は、濃度25μMおよび50μMのフェンヘキサミドに応答性であった。
【0225】
オルソゴナル受容体-リガンド相互作用をさらに調査するために、PYR1中に3つの変異を有するフェンヘキサミド応答性変異体27-18の組換えタンパク質を発現させた。野生型PYR1タンパク質と一緒に6×His-PYR1(27-18)タンパク質を発現させ、精製した。PP2C活性の阻害に基づいてPYR/PYL受容体の活性化をモニターするホスファターゼ活性アッセイ法を用いて、濃度を漸増させたABAまたはフェンヘキサミドのいずれかに応答してPP2C活性を阻害する能力について両方のタンパク質を試験した(図1)。ホスファターゼ活性アッセイ法は、アッセイ緩衝液としてMg++の代わりに10mM Mn++を使用するという少しの変更を加えて、Park et al., Science 324:1068-1071 (2009)において説明されているようにして実施した;この変更により、HAB1の比活性が約10倍増大することが判明した。ABAは変異体27-18を活性化しないが、野生型PYR1タンパク質は効率的に活性化する(図1A)ことが判明した。したがって、変異体27-18がABAに非感受性であることが実証された。さらに、変異体27-18はフェンヘキサミドによって活性化されたのに対し、野生型PYR1タンパク質は活性化されなかった(図1B)。したがって、変異PYR/PYL受容体ポリペプチドを用いて、フェンヘキサミドに応答してPP2C活性を制御できることが実証された。
【0226】
フェンヘキサミドについて前述したようにして、ブロモキシニル応答性PYR1変異体(表2)、ジクロベニル応答性PYR1変異体(表3)、およびベノキサコル応答性PYR1変異体(表4)のスクリーニングを実施した。200μMの試験化合物および前述のようにして作製したA'ライブラリーをそれぞれ使用した。酵母ツーハイブリッドアッセイ法により、代表的な変異体クローン74A-1および74A-2のブロモキシニル応答性が確認された。濃度5μM、10μM、25μM、および50μMのブロモキシニルを使用した。変異体74A-1および74A-2の両方とも、濃度10μM、25μM、および50μMのブロモキシニルに応答性であった。
【0227】
(表2)ブロモキシニル応答性PYR/PYL受容体ポリペプチド変異体
ePCR1=PYR1のエラープロンPCR変異誘発ライブラリー、開始サイズ:クローン70,000個。シャッフル、第1回=単離されたePCR変異体を用いて作製したPYR1シャッフル変異体ライブラリー。
*ウラシルを欠く培地上で、レポーター株MAV99(アゴニストによって促進されるPYR1-GAL4 BDとHAB1-GAL4 ADのタンパク質間相互作用によってGAL4活性が復元され、株のURA3遺伝子の発現が可能になる場合にのみ増殖する)を用いて、増殖を測定した。
【0228】
(表3)ジクロベニル応答性PYR/PYL受容体ポリペプチド変異体
ePCR1=PYR1のエラープロンPCR変異誘発ライブラリー、開始サイズ:クローン70,000個。
*ウラシルを欠く培地上で、レポーター株MAV99(アゴニストによって促進されるPYR1-GAL4 BDとHAB1-GAL4 ADのタンパク質間相互作用によってGAL4活性が復元され、株のURA3遺伝子の発現が可能になる場合にのみ増殖する)を用いて、増殖を測定した。
【0229】
(表4)ベノキサコル応答性 PYR/PYL受容体ポリペプチド変異体
ePCR1=PYR1のエラープロンPCR変異誘発ライブラリー、開始サイズ:クローン70,000個。
*ウラシルを欠く培地上で、レポーター株MAV99(アゴニストによって促進されるPYR1-GAL4 BDとHAB1-GAL4 ADのタンパク質間相互作用によってGAL4活性が復元され、株のURA3遺伝子の発現が可能になる場合にのみ増殖する)を用いて、増殖を測定した。
【0230】
DNAシャッフリングによる、初代変異体の改良。DNAシャッフリングによる既存の変異または変種の組換えは、タンパク質の機能および活性を迅速に向上させるための定評のある方法である(Stemmer, Nature 370:389-391 (1994))。単離されたブロモキシニル応答性PYR1変異体を改良するために、A'ライブラリーのスクリーニングによって同定された7種の変異体配列(74A-12、74A-24、74A-1、74A-4、74A-13、74A-2、および74A-15)のプラスミドDNAを、元のPYR1 ePCR1変異体ライブラリーの等モル量のプラスミドと組み合わせた。シャッフリング反応にePCR1 DNAを添加することにより、既存の変異に新しい変異を導入することが可能になった。したがって、潜在的な配列多様性が増大する。確立されたプロトコール(Muller et al., Nucleic Acids Res 33:e117 (2005))を用いて、混合したDNAをシャッフルし、シャッフルされたPCR産物DNAをpBD-GAL4中にクローニングして、約50,000個のクローンを作製し、これらを回収して「B」ライブラリーと名付けた。このBライブラリーを大腸菌中で増幅させ、pAD-HAB1で同時形質転換した酵母株MAV99中に導入した。次いで、これらの細胞を0.15% FOA存在下で増殖させて構成的変異体を除去して、「B'」ライブラリーを得た。次いで、添加されるウラシルを欠き、0.5μMブロモキシニルを含むプレートにおいて、B'ライブラリーを増殖させた。2種の独特な非構成的クローンを単離した(74B-1および74B-7)(表2)。
【0231】
これらの実験によって示されるPYR1の柔軟性を前提として、本発明者らは、前述の酵母競合アッセイ法によって弱い結合に関してプレスクリーニングされなかった標的リガンドに対してオルソゴナル受容体を単離できるか確かめようとした。前述したのと同じスクリーニング方法論を用いて、BTH(アシベンゾラル-s-メチル)に応答する変異体をスクリーニングした。このスクリーニングの結果、BTHに応答する3種の異なるPYR1変異体の単離に成功した(表5)。酵母ツーハイブリッドアッセイ法により、代表的な変異体クローンBTH-9のBTH応答性が確認された。ブロモキシニルを濃度25μM、50μM、100μM、および200μMで適用し、変異体BTH-9は、濃度50μM、100μM、および200μMのBTHに応答性であった。したがって、PYR1の柔軟性により、多くのオルソゴナル受容体変種を単離することができる。
【0232】
(表5)BTH応答性 PYR/PYL受容体ポリペプチド変異体
ePCR1=PYR1のエラープロンPCR変異誘発ライブラリー、開始サイズ:クローン70,000個。
*ウラシルを欠く培地上で、レポーター株MAV99(アゴニストによって促進されるPYR1-GAL4 BDとHAB1-GAL4 ADのタンパク質間相互作用によってGAL4活性が復元され、株のURA3遺伝子の発現が可能になる場合にのみ増殖する)を用いて、増殖を測定した。
【0233】
実施例2:K59位の変異は、PYRを様々なオルソゴナルリガンドに対して感受性にする
表1〜5のスクリーニングデータの精査により、スクリーニングしたすべての化学物質に対して、K59位に変異を含む受容体が少なくとも1度単離されていることが明らかになった。たいていの場合、K59R変異が、スクリーニングした各化学物質に対して単離されたオルソゴナル受容体の大多数中に存在していた。この驚くべき観察結果から、K59が、有効なオルソゴナル受容体を人工的に設計するために有益に標的とされ得る制御箇所であることが示唆される。PYR1のアミノ酸K59に対応する位置に変異が頻繁に出現することに関する2つの妥当と思われる仮説は、「ブレーキ」仮説および「ポケット形」仮説である。ブレーキ仮説は、K59残基が、結合されたABAがない状況で受容体を「オフ」状態で維持するのを助ける「ブレーキング」メカニズムの一環として機能し;したがって、K59における変異は、ABA結合に関係している受容体活性化を維持し、受容体が非天然リガンドによって活性化されるのを防止する制御メカニズムを混乱させ得ると提唱する。ポケット形仮説は、K59に対応する位置における変異がPYR/PYL受容体の結合ポケットを変化させて、PYR/PYLとオルソゴナルリガンドとの相互作用を促進して結合親和性を向上させる新しいポケット表面を作り出すと提唱する。
【0234】
これらの2つの仮説を検証するために、一連のK59変異体をPYR1において構築し、ネイティブのリガンドABAおよびオルソゴナルリガンドであるジクロベニルに対する感受性を検査した(表6)。ジクロベニルは弱いPYR/PYLアゴニストである(すなわち、濃度200μMまたはそれ以上において受容体をわずかに活性化し得る)ことが観察されていたため、これらの研究のためのオルソゴナルリガンドモデルとしてジクロベニルを選択した。したがって、ジクロベニルは、オルソゴナルリガンドに対する変異体の感受性を調査するために用いられる有用な試験分子となる。
【0235】
(表6)オルソゴナルリガンドであるジクロベニルに対するK59 変異の応答性
【0236】
表6に示すように、野生型PYR1は、50μMジクロベニルによって活性化されなかった。しかしながら、構築された16種のK59置換変異体の内の14種は、50μMジクロベニルによって活性化された。したがって、K59における変異の大多数によって、ジクロベニル感受性は高まる。(例えば、実施例1および表1〜5の)本明細書において説明するスクリーニングにおいて単離されたK59R変異の普及と結び付けて、これらの結果から、K59における多くの変異が、非ネイティブ(すなわちオルソゴナル)リガンドによって活性化される受容体を構築するのに有益であることが示唆され、さらに、K59 は、ポケット形仮説よりもブレーキ仮説に従って作用している可能性がより高いことも示唆される(ポケット形仮説から、1種のオルソゴナルリガンドの結合を促進する変化したポケット表面が、別のオルソゴナルリガンドの結合を促進する形状でもある見込みは少ないことが予測されるため)。
【0237】
考察
変異体コレクションにおいて単離された受容体変異は、側鎖がPYR1のリガンド結合ポケット中に向いている残基に優先的に位置している。PYR1のリガンド結合ポケットの表面は、新しいリガンドと接触するように再び形を整えなければならないため、これは意外ではない。さらに、オルソゴナル受容体において単離された変異(すなわち、K59R、S92T)によって、PYR/PYL ABA受容体ファミリー内で不変な位置が変異する。これらの位置は、ABA認識に関与しており、適切なABA結合のための強い天然選択下にあるため、不変である。保存されているABA結合残基の変異は、ABA応答性を低減させることが公知であるため、オルソゴナル受容体は、植物細胞において発現される場合、ABAに対して非感受性であることが予想できる。この特徴の利点は、オルソゴナル受容体の過剰発現が、制御的なオルソゴナルリガンドがない状況ではABAシグナル伝達の活性化をもたらさないはずであることである。
【0238】
通常、PYR1タンパク質およびPYR/PYLタンパク質の生化学機能は、PP2C活性を阻害することである。これは、酵母ツーハイブリッド方法または他の細胞ベースの方法を用いて、生細胞において測定することができる。また、比色検出試薬(例えば、para-ニトロフェニルホスファート)の存在下で酵素ホスファターゼアッセイ法を用いることによって、インビトロで測定することもできる。本発明者らは、上記で使用した酵母ベースのアッセイ法が、リガンド結合の間接的な指標を提供することに注目する。スクリーニングされるいくつかの化合物が、中央のポケットに直接結合することなく、酵母株のABA応答性を低減させ得る可能性がある。この潜在的な制約に対処するために、弱く結合する標的化合物を同定するための代替えアプローチとして、インビトロ競合アッセイ法または他の生物を用いた細胞ベースのアッセイ法を使用することができる。
【0239】
実施例3:フェンヘキサミド受容体の感受性の向上
フェンヘキサミド応答性PYR1変種の作製
実施例1で詳述したように、フェンヘキサミド応答性変異体を求めてePCR1変異体ライブラリーをスクリーニングすることにより、フェンヘキサミドに応答するいくつかの変異PYR1受容体が単離された(表1)。フェンヘキサミド受容体の感受性を向上させるために、先に概説したのと同じ一般的実験スキームを用いて、DNAシャッフリングを使用した。手短に言えば、表1に示すフェンヘキサミド受容体の等モル量のプラスミドDNAを集め、等モル量のePCR1ライブラリーDNAと混合した。集めた鋳型をDNAシャッフリングのために使用した。DNAシャッフリングは、実施例1で説明したようにして実施した。約400,000個のシャッフルされた変種からなるライブラリー(「27B」と名付けた)を調製した。前述したようにして、このライブラリーのDNAをMAV99 pAD-HAB1酵母株に導入し、得られた酵母細胞を集め、FOAを含むプレート上で増殖させてライブラリー中の構成的変異体を減少させて、27B'ライブラリーを得た。ウラシルを欠くが20μMフェンヘキサミドを含有する培地上に27B'ライブラリーを播いた。これらのプレートから約50個の陽性体を選択し、続いて、ウラシルを欠く培地上で再試験して、構成的変異体(すなわち偽陽性体)を、フェンヘキサミドに特異的に応答して増殖する変異体(すなわち、真の陽性体)と区別した。真の陽性体のPYR1コード配列を配列決定して、以下の一連のフェンヘキサミド応答性PYR1変種を得た(表7)。
【0240】
(表7)第2回のシャッフリング後に同定されたフェンヘキサミド応答性PYR/PYL受容体ポリペプチド変異体
【0241】
表7に示す「27B」変異体のDNAとePCR1ライブラリーを組み合わせることによって第3回のシャッフリングを実施して、約150,000個のクローンからなるライブラリーを作り出し、次いでこれをMAV99 pAD-HAB1に形質転換した。次いで、FOAの存在下で増殖させることによって構成的変異体を枯渇させ、その後、前述の方法を用いて、ウラシルを欠くが1.5μMフェンヘキサミドを含有する培地上で増殖させることによって、フェンヘキサミド感受性変異体を選択した。この試みにより、以下のフェンヘキサミド応答性変種が得られた(表8)。
【0242】
(表8)第3回のシャッフリング後に同定されたフェンヘキサミド応答性PYR/PYL受容体ポリペプチド変異体
【0243】
フェンヘキサミド応答性変異体27C-2における特異的変異の役割の確認
変異誘発プロトコールは、所望の機能性に影響を与えない擬似変異(spurious mutation)をしばしば誘導する。本発明者らのスクリーニングによって同定された残基の関連性を確かめるために、本発明者らは、野生型PYR1配列と比べて5つの変異(P42S、K59R、R74C、Y120H、およびM158I;SEQ ID NO: 171;表8を参照されたい)を含む、同定された感受性の高いフェンヘキサミド応答性変異体27C-2を重点的に取り扱った。他の多くの単離された変異体中にK59R、Y120H、およびM158Iが存在することから、それらがフェンヘキサミド感受性に寄与する変異である可能性が高いことが示唆された。フェンヘキサミド応答における5つの変異の役割を調査するために、部位特異的変異誘発によって、これらの各残基を野生型残基に復帰変異させた。次いで、得られたクローンをY190 pAD-HAB1酵母レポーター株に形質転換し、様々な濃度においてフェンヘキサミド応答性を試験した。図2Aに示したように、この試みにより、フェンヘキサミド感受性のためにはK59R、Y120H、およびM158Iで十分であることが定められ、変異P42SおよびR74Cは、27C-2クローンのフェンヘキサミド感受性に寄与するには十分でないことが確かめられた。さらに、インビトロ受容体アッセイ法により、PYR1K59R、Y120H、M158I三重変異体がフェンヘキサミドに感受性である(IC50値は約0.4μM)(図2B)ことが示され、これにより、観察されたPYR1K59R、Y120H、M158I三重変異体のフェンヘキサミドに対する感受性は、三重変異体を同定するために使用される酵母アッセイ系の人為的結果ではないことが実証される。
【0244】
PYL2へのフェンヘキサミド感受性の人工的な導入(engineering)
PYR1は、シロイヌナズナにおいては14種のメンバーを含むPYR/PYL受容体タンパク質ファミリーのメンバーである。さらに、27C-2におけるフェンヘキサミド応答性のために十分な変異は、リガンド結合ポケット(K59R、Y120H)またはPYR/PYL-PP2C境界(M158I)内の不変残基または保存残基中に位置している。これらの残基の保存された性質を前提として、本発明者らは、他のPYR/PYL受容体中の相同残基を変異させることによって、他の受容体ファミリーメンバーにフェンヘキサミド感受性を人工的に導入できると推測した。これを検証するために、本発明者らは、PYL2に相同変異(K64R、PYR1のK59Rに対応;Y124H、PYR1のY120Hに対応;およびM164I、PYR1のM158Iに対応)を導入して、変異体PYL2K64R、Y124H、M164Iを作り出した。図3Aに示したように、この変異体は、酵母ツーハイブリッドアッセイ法(Y190 pAD-HAB1株)を用いて試験した場合、フェンヘキサミド応答性を示さない。最近の研究(Peterson et al., Nat Struct Mol Biol 17:1109-1113 (2010))により、受容体ファミリーメンバー間のわずかな配列の差が、選択的アゴニストピラバクチンに対する受容体の感受性に影響を及ぼすことが示された。特に、PYR1およびPYL1はピラバクチンに強い応答性を示すのに対し、PYL2(および他のファミリーメンバー)は示さない。遺伝的研究、生化学的研究、および構造的研究により、PYR1のリガンド結合ポケット中の2つの鍵となる残基が、PYR1およびPYL2のピラバクチンアゴニスト活性の差を決定することが示された。PYR1では、これらの残基はイソロイシンI62およびI110であるのに対し、PYL2では、相同残基(それぞれアミノ酸64位および114位)が、かさが小さいバリンV67およびV114に入れ替わっている。受容体間のリガンド応答性の差に影響を及ぼす上でのこれら2つの残基の公知の役割に基づいて、本発明者らは、I62およびI110がフェンヘキサミド応答において重要な役割を果たし得るという仮説を立てた。したがって、本発明者らは、PYL2K64R、Y124H、M164I受容体にV67I変異およびV114I変異を(単独でまたは組み合わせて)導入した。V67I変異およびV114I変異を一緒に追加することにより、最終的な変異受容体PYL2K64R、Y124H、M164I、V67I、V114Iが、酵母アッセイ法(図3A)およびインビトロPP2C阻害アッセイ法(図3B)においてフェンヘキサミドに応答することが可能になった。
【0245】
植物におけるオルソゴナル受容体の有効性
酵母実験およびインビトロ実験で観察されるフェンヘキサミド応答が植物において機能するか調査するために、6×ヒスチジンタグがGFPのN末端に付加された改良型のpEGAD中への標準的な分子クローニング方法(Cutler et al., Proc Natl Acad Sci USA 97:3718-3723 (2000))を用いて、トランスジェニック植物35S::GFP-PYL2および35S::GFP-PYL2K64R、Y124H、M164I、V67I、V114Iを構築した。フローラル・ディップ法を用いてトランスジェニック植物を作製し、Leica GFP解剖顕微鏡を用いて落射蛍光に基づいて実生をスクリーニングすることによって、初代トランスジェニック体(T1)を同定した。GFP+トランスジェニック植物を成熟するまで成長させ、さらに解析するためにT2種子を採取した。
【0246】
フェンヘキサミド応答性PYL2K64R、Y124H、M164I、V67I、V114I変異体が植物体において機能するかを確かめるために、T2分離個体および適切な野生型対照を、100μMフェンヘキサミドの存在下で成長する能力について試験した(受容体の活性化により、発芽が阻害されるはずであるため)。変異受容体を発現する植物は強い成長阻害を示すことから、変異受容体を発現する植物ではABA経路がフェンヘキサミドによって活性化されているが、野生型受容体を発現する植物では活性化されていないことが示唆される(図4)。ABA応答活性化をさらに調査するために、本発明者らは次に、定量的RT-PCR法を用いて、GFP+トランスジェニック体(T2分離個体)および適切な対照を、液体培養時のフェンヘキサミドへの曝露に応答した3種のABAレポーター遺伝子(P5CS1、RD29A、およびNCED3)の活性化について試験した。図5に示したように、3種の遺伝子はすべて、2つの独立したPYL2K64R、Y124H、M164I、V67I、V114Iトランスジェニック株においてフェンヘキサミドによる実質的な誘導を示す。したがって、通常はインビボでABAによって調節される遺伝子を、PYL2K64R、Y124H、M164I、V67I、V114I変異受容体を用いることにより、フェンヘキサミドによって活性化することができる。
【0247】
フェンヘキサミド応答性PYL2K64R、Y124H、M164I、V67I、V114I変異受容体が植物体において機能するかをさらに確かめるために、本発明者らは、野生型植物またはPYL2K64R、Y124H、M164I、V67I、V114Iを過剰発現する植物の取り外した葉における水分損失をフェンヘキサミドが減少させる能力を検査した。16時間/8時間の明暗サイクルのもとで3週間、トランスジェニック植物または対照(野生型)植物を成長させ、次いで、100μM(+)-ABA、100μMフェンヘキサミド、または対照(0.1% Tween-20、0.1% DMSOを含む)のいずれかで処理した。ABA処理は、陽性対照として実施した。水分損失実験を実施する前に、夜に植物にスプレーした。翌朝、処理後約16時間目に、実験試料の地上ロゼットを採取し、秤量皿に移し、測定される試料につき8個の植物を、約90〜100μアインシュタイン/m2の蛍光灯照明のもとで維持した。8個の植物からなる4グループを20分間隔の時点で測定した。8週間隔の過程を通じて、これらの実験を3回繰り返した。すべての実験において、フェンヘキサミド前処理は、ABAよりは有効性が劣ったが、PYL2K64R、Y124H、M164I、V67I、V114Iトランスジェニック植物からの水分損失を減少させるのに十分であった(図6A〜C)。しかしながら、ABAは植物ゲノム中のPYR/PYL受容体のすべて(シロイヌナズナでは少なくとも13種)を活性化できるが、フェンヘキサミドは単一の人工的に設計された受容体PYL2K64R、Y124H、M164I、V67I、V114Iを選択的に活性化することに注意すべきである。フェンヘキサミドの効果の対照として、本発明者らは、トランスジェニック植物に関して前述したのと同じプロトコールに従って、100μM(+)-ABA、100μMフェンヘキサミド、または対照(0.1%Tween-20、0.1%DMSOを含む)のいずれかによる処理に野生型植物を供した。これらの実験により、フェンヘキサミドが野生型植物の水分損失に影響を及ぼさないことが示された(図7)。したがって、トランスジェニック植物におけるフェンヘキサミド応答性PYL2K64R、Y124H、M164I、V67I、V114I変異体の発現により、フェンヘキサミドがABAシグナル伝達および生理学的応答を活性化することが可能になる。
【0248】
本明細書に記載された実施例および実施形態は、例示するためのものにすぎないこと、ならびにそれらを踏まえた様々な修正および変更が当業者に示唆され、かつそれらが本出願の精神および範囲内、ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれ得ることが理解される。本明細書に引用したすべての刊行物、特許、および特許出願は、あらゆる目的のために、全体が参照により本明細書に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]