特許第5961619号(P5961619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5961619イオン性架橋ポリマー微粒子を用いて紙を作製する方法及び該方法により作製された製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961619
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】イオン性架橋ポリマー微粒子を用いて紙を作製する方法及び該方法により作製された製品
(51)【国際特許分類】
   D21H 17/41 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   D21H17/41
【請求項の数】23
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-536766(P2013-536766)
(86)(22)【出願日】2011年10月26日
(65)【公表番号】特表2013-540916(P2013-540916A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】US2011057798
(87)【国際公開番号】WO2012058258
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2014年10月10日
(31)【優先権主張番号】61/408,262
(32)【優先日】2010年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590003238
【氏名又は名称】バックマン・ラボラトリーズ・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】BUCKMAN LABORATORIES INTERNATIONAL INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100152319
【弁理士】
【氏名又は名称】曽我 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】バン,ウェイピン
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−241197(JP,A)
【文献】 特開平07−054294(JP,A)
【文献】 特表2004−511679(JP,A)
【文献】 特表2005−506398(JP,A)
【文献】 特表2008−540853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙又は板紙を作製する方法であって、イオン性架橋ポリマー微粒子を製紙パルプに添加し、処理済パルプを形成することと、該処理済パルプを紙又は板紙に形成することとを含み、
前記イオン性架橋ポリマー微粒子が架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーを含み、 該コポリマーが、以下の構造:
【化1】
(式中、Rは水素又は1個〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり;Rは1個〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1個〜20個の炭素原子を有するアルコキシル基、又は1個〜20個の炭素原子を独立して有するアルコキシ及びアルキルを有するアルコキシアルキル基であり;xは該コポリマーの総重量ベースで1重量%〜99重量%の重量パーセントであり、yは該コポリマーの総重量ベースで99重量%〜1重量%の重量パーセントである)を有し、前記コポリマーの数平均分子量が5000〜1000000である、
紙又は板紙を作製する方法。
【請求項2】
前記イオン性架橋ポリマー微粒子を、前記製紙パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり少なくとも約4.536g(乾燥固形分ベース)の量で該パルプに添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー微粒子を、以下の特性:Muetek DFR−4テスターを用いて測定される、該ポリマー微粒子と同じ投与量及びサイズで非晶質シリカ微粒子を含有するパルプで作製された紙と比較した、
a)少なくとも10%の填料の歩留まりの増大(%)、
b)少なくとも10%の濾水の増大(g/30秒)、及び/又は、
c)少なくとも10%の濁度の低減(NTU)、
の内の少なくとも1つを与えるのに効果的な量で前記パルプに添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー微粒子の非膨潤平均粒径が1ナノメートル〜10マイクロメートルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン性架橋ポリマー微粒子がアニオン性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アクリル酸−アクリレートコポリマー、エチレン性不飽和の2つ以上の非共役点、2つ以上の非共役ビニリデン基、ジアルデヒド、又はそれらの任意の組合せを含有する架橋剤を用いて架橋されている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アクリル酸−アクリレートコポリマーを、ジビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、トリメチレングリコールジアクリレート又はジメチルアクリレート、ジビニルキシレン、ジビニルエチルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、多価化合物のアリルエーテル、ジビニルスルフィド、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、ジアリルスクシネート、ジアリルカーボネート、ジアリルマロネート、ジアリルオキサレート、ジアリルアジペート、ジアリルセバケート、ジアリルタートレート、ジアリルシリケート、トリアリルイソシアネート、トリリルトリカルバリレート、トリアリルホスフェート、トリアリルシトレート、トリアリルアコニテート、N,N'−メチレンジアクリルアミド、N,N'−メチレンジメタクリルアミド、N,N'−エチレンジアクリルアミド、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、テトラアリルペンタエリスリトール、トリアリルペンタエリスリトール、ジアリルペンタエリスリトール、エチレングリコールジメタクリレート、N,N'−メチレンビスアクリルアミド、又はそれらの任意の組合せである架橋剤を用いて架橋する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー、該コポリマーの架橋を誘導するのに十分な、該コポリマーに存在するモノマー単位ベースで1mppm〜10000mppmの架橋剤含量で架橋剤を用いて架橋されている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン性架橋ポリマー微粒子が少なくとも90重量%の前記架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーが1重量%未満の、アクリルアミド官能基性を有する総モノマー単位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーが0.1重量%未満の、アクリルアミド官能基性を有する総モノマー単位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記イオン性架橋ポリマー微粒子を、少なくとも1つの界面活性剤を更に含むエマルションとして前記パルプに添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記イオン性架橋ポリマー微粒子を、ポリマー微粒子の添加量ベースで0.1重量%〜15重量%の範囲の量で界面活性剤を更に含むエマルションとして前記パルプに添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記イオン性架橋ポリマー微粒子を、界面活性剤を更に含むエマルションとして前記パルプに添加し、該界面活性剤が非イオン性、カチオン性又はアニオン性である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
湿潤強度助剤及び/又は乾燥強度助剤を前記パルプに前記ポリマー微粒子と連続して、同時に、又はブレンドとして添加することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記強度助剤がカチオン性、アニオン性又は両性である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記強度助剤がデンプン、デンプン誘導体、ポリアクリルアミド、グリオキサール架橋ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、グアーガム、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン樹脂、ポリビニルアルコール又はそれらの任意の組合せを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
凝結剤と有機凝集剤とを前記パルプに前記ポリマー微粒子と連続して、同時に、又はブレンドとして添加することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記パルプに、該パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり少なくとも4.536g(無水ベース)の量で前記イオン性架橋ポリマー微粒子と、該パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり少なくとも45.360g(無水ベース)の量で凝結剤と、該パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり少なくとも22.680g(無水ベース)の量で有機凝集剤とを添加することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記パルプに添加されるシリカ及びベントナイト微粒子の総量が該パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり4.536g以下の量である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記パルプに添加されるシリカ及びベントナイト微粒子の総量が該パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり0.454g以下の量である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記紙がセルロース系繊維の不織紙匹を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーが5重量%未満の、アクリルアミド官能基性を有する総モノマー単位を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙を作製する方法、より具体的にはイオン性架橋ポリマー微粒子含有歩留まり助剤システムを用いて紙を作製する方法及び該方法により作製された製品に関する。
【0002】
本願は、2010年10月29日付けで出願された先の米国仮特許出願第61/408,262号(その内容全体が引用することにより本明細書の一部を成すものとする)の米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
製紙機器によりセルロース繊維の希薄水性懸濁液から紙及び板紙を生産する際、懸濁液を1つ又は複数の剪断工程に通すことができ、得られる懸濁液を、ワイヤを通して濾水させ、シート状にし、それからそれを乾燥させる。プロセス又はその製品を改善するために懸濁液中に様々な無機添加剤及び/又は有機ポリマー材料を含めることが一般的である。プロセスの改善、例えば最終紙シートの歩留まり特性、濾水特性、及び乾燥特性、地合(formation)(又は構造)特性の改善が過去に求められてきた。しかしながら、これらの又は他の製紙パラメータは予測不可能に相反する場合がある。歩留まりはパルプ繊維及び完成紙料に添加される他の添加剤が仕上げ紙に保持される程度を示すのに製紙において用いられる用語である。歩留まり助剤は一般的に、パルプ繊維及び添加剤の凝集傾向を増大し、抄紙機のワイヤ又はスクリーンを通す濾水中のパルプ繊維及び添加剤の喪失を抑えることにより作用する。濾水又は脱水は、抄紙機のシート形成域における水性パルプ懸濁液の含水量の急速な低減が求められる場合のような、歩留まりと相反する傾向にある別の製紙要件である。
【0004】
微粒子及び他の粒子状物質が歩留まり助剤として製紙パルプに添加されている。水溶性のポリマー歩留まりシステムとは異なり、微粒子歩留まりシステムは通常、不水溶性の微粒子歩留まり助剤を指す。製紙における歩留まり助剤の無機又は無機物の微粒子としてシリカ、シリカゾル及びベントナイトを使用することが知られている。特定のポリマー微粒子が製紙における歩留まり助剤として使用されている。例えば、特許文献1は、会合性ポリマーと、非イオン性モノマー、イオン性モノマー及び架橋剤のコポリマーである有機微粒子と、任意でシリカ(siliceous)物質とを含む組成物の製紙スラリーへの添加をもたらす方法に関する。特許文献2は架橋したアニオン性微粒子及び両性微粒子に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0142430号
【特許文献2】米国特許第5,171,808号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまでの微粒子とは異なる他の化学的性質及び形態の有機微粒子は、製紙におけるウェットエンドの濾水性及び歩留まりを改善させるのに有用である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、イオン性架橋ポリマー微粒子を用いて製紙におけるウェットエンドの濾水性及び歩留まりを改善するために強化した添加剤システムを提供することである。
【0008】
本発明の別の特徴は、イオン性架橋ポリマー微粒子を含む歩留まり/濾水添加剤システムによる製紙歩留まり効率及び脱水速度の増大をもたらすことである。
【0009】
本発明の更なる特徴は、イオン性架橋ポリマー微粒子を含有する紙製品を提供することである。
【0010】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下の記載において一部説明されており、本明細書から一部明らかとなるものであるか、又は本発明の実施により認識することができる。本発明の目的及び他の利点は、本明細書及び添付の特許請求の範囲において具体的に指摘された要素及び組合せを用いることで実現及び達成される。
【0011】
これら及び他の利点を達成するために、また本発明の目的に従って、本明細書中に具体化され、広く記載されるように、本発明は一部、紙を作製する方法と、その製品とに関する。本方法は、架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーを含むイオン性架橋ポリマー微粒子を製紙パルプに添加し、処理済パルプを形成する、添加することと、処理済パルプを紙又は板紙に形成することとを含む。イオン性架橋ポリマー微粒子は不水溶性のアニオン性微粒子であり得る。イオン性架橋ポリマー微粒子を、例えばシリカ微粒子を有する懸濁液で作製された紙と比較して、十分な地合特性及び強度特性を維持しながら、繊維の歩留まりの増大に関する性能及び濾水性能を改善するのに効果的な量で添加することができる。
【0012】
本発明は更に、製紙パルプを紙又は板紙に形成する製紙システムであって、製紙パルプの供給部と、パルプの供給部と連通したブレンドチェストと、ブレンドチェストからの排出後にパルプを回収するためのスクリーン、任意でスクリーンに到達する前に通る1つ又は複数の更なる加工ユニットと、紙形成前にパルプに適用するために、架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーを含む上記のイオン性架橋ポリマー微粒子を含む組成物をパルプに給送するための組成物給送デバイスと、を備える、製紙パルプを紙又は板紙に形成する製紙システムに関する。
【0013】
上記の一般的記述及び以下の詳細な記述は両方とも例示的及び説明的なものにすぎず、特許請求されるような本発明の更なる説明を与えることを意図しているにすぎないことを理解すべきである。添付の図面は引用することにより本願の一部を成すものとし、本発明の幾つかの実施形態を示し、本明細書とともに本発明の原理を説明する役割を果たすものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による製紙方法の一例を示すフローチャートである。
図2】アニオン性ポリアクリルアミドを適用するアニオン性凝集剤システムにおける様々な投与量レベルでの歩留まり性能に関する、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子と2つのシリカ製品との比較を与える本明細書の実施例のデータを示すグラフである(シリカと比較して填料の歩留まりの10%〜25%の増大)。
図3】等しい適用コストでアニオン性ポリアクリルアミドを適用する際の填料の歩留まり効率に関する、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子とシリカとの比較を与える本明細書の実施例のデータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は紙を作製する方法及び製紙製品に関する。本発明は一部、紙又は板紙を作製する方法、及び一種類又は複数種類のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーを含有する一種類又は複数種類のイオン性架橋ポリマー微粒子を含むかかる方法のための歩留まり助剤を提供する。イオン性架橋ポリマー微粒子は例えば、不水溶性のアニオン性微粒子とすることができる。イオン性架橋ポリマー微粒子を、十分な地合特性及び強度特性を維持しながら、改善した製紙濾水性能及び歩留まり性能で作製された紙製品を提供するために製紙における添加剤として使用することができる。本発明はシリカ系の微粒子システムの性能に匹敵し得る又はそれを超え得る有機微粒子システムを提供することにも関する。本発明は更に、より低い処理投与量で一部の従来の無機微粒子製品と比較して同じ又はより良好な歩留まり性能及び濾水性能をもたらすことができる。本発明のイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子は経済的に性能の改善をもたらすことができる。本発明のイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子の他の有益性及び利点は記載されているか、又は本明細書の記載等から明らかにすることができる。
【0016】
本明細書に記載されるように、本発明のイオン性架橋ポリマー微粒子は、部分的に、大部分、実質的に、本質的に、又は更には全体的にイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーから形成され得る。本明細書では、「イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子」という用語は、本明細書において任意の従来のイオン性架橋ポリマー微粒子と区別されるものとして本発明によるイオン性架橋ポリマー微粒子を特定するのにも用いられている。したがって、「イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子(複数の場合もあり)」という用語を本明細書で使用することは、そのような指定がなければ、同じ微粒子内において異なる物質(複数の場合もあり)が同時に存在することを排除することを必ずしも意味するものではない。本発明のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子は例えば、不水溶性のイオン性架橋ポリマー微粒子状物質(イオン性架橋ポリマー微粒子又はマイクロビーズとしても知られる)とすることができる。
【0017】
イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子は例えば、エマルションで形成することができ、例えば処理するために水性の処理組成物及び/又は繊維懸濁液中に分散させることができる。イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を製紙パルプに適用することができる。製紙パルプをイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子に接触させた後、得られるパルプを更に加工して、紙又は板紙に形成することができる。紙製品又は板紙製品を作製するパルプのシートは、同様のパルプに対するシリカ微粒子又はポリアクリルアミド系の微粒子の効果から導かれ得る任意の予測を上回る、パルプ細粒の優れた濾水性及び/又は優れた歩留まりを示すことができる。本願では、「パルプ」、「ストック」、「紙ストック」又は「繊維懸濁液」という用語は区別なく用いることができる。
【0018】
本発明の方法を、本発明に鑑みて容易に行うことができる変更を加えて従来の製紙機で実施することができる。本発明の方法を、例えば本発明に鑑みて容易に行うことができる変更を加えて従来の製紙機のウェットエンドアセンブリで実施することができる。本方法は多くの異なる種類の製紙パルプ又はそれらの組合せを利用することができる。
【0019】
本明細書に記載されるような実験研究により示されるように、本発明によるイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の使用によって、製紙プロセスにおいて大幅な歩留まり及び脱水の改善を得ることができる。例えば、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を、以下の特性:Muetek DFR−4テスターを用いて測定された、ポリマー微粒子と同じ投与量及びサイズで非晶質シリカ微粒子を含有するパルプで作製された紙と比較した、a)少なくとも約10%、若しくは少なくとも約15%、若しくは少なくとも約20%の填料の歩留まりの増大(%);b)少なくとも約10%、若しくは少なくとも約15%、若しくは少なくとも約20%の濾水の増大(g/30秒);及び/又はc)少なくとも約10%、若しくは少なくとも約15%、若しくは少なくとも約20%の濁度の低減(NTU)の内の少なくとも1つを与えるのに効果的な量でパルプに添加することができる。本発明では、以下の特性:a)Muetek DFR−4テスターを用いて測定された、パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり0.3ポンドの投与量のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を用いて少なくとも約60%、若しくは少なくとも約65%、若しくは少なくとも約70%、若しくは約60%〜約75%、若しくは約65%〜約74%の填料の歩留まり;b)Muetek DFR−4テスターを用いて測定された、パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり1ポンドの投与量のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を用いて少なくとも約130g/30秒、若しくは少なくとも約150g/30秒、若しくは少なくとも約180g/30秒、若しくは約130g/30秒〜約180g/30秒、若しくは約140g/30秒〜約170g/30秒の濾水;及び/又はc)Muetek DFR−4テスターを用いて測定された、パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり1ポンドの投与量のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を用いて約950比濁計濁度単位(NTU)未満、若しくは850NTU未満、若しくは約800NTU未満、若しくは約700NTU〜約950NTU、若しくは約725NTU〜約900NTUの濾液濁度の内の少なくとも1つを与えるのに効果的な量でイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子で処理した紙パルプを含む紙製品を提供することができる。
【0020】
例えば製紙のウェットエンドにおける固体微粒子としてシリコン含有粒子の代わりにイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を用いることは特有の歩留まり性能及び濾水性能を達成するのに重要である。濾水速度を増大させるとともに歩留まり効率を改善させる能力によって、例えば白水の再循環又は取扱/処分要件を増大させることなく生産サイクルを加速させることができることから、より経済的な生産を達成することが可能となる。さらに、本発明によるイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子添加剤システムを用いて作製された紙製品において得られる繊維の歩留まり特性及び濾水速度特性の同時改善は予期せぬ驚くべきものである。
【0021】
本発明による方法を本発明に鑑みて容易に行うことができる変更を加えて、長網抄紙機等の従来の製紙機で実施することができる。イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子は通常、製紙工場のウェットエンドにおいて製紙中での水抜き(water removal)及び微小粒子の歩留まりの向上のために希釈セルロース繊維懸濁液に添加される。イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を例えば、エマルション、又は水分散液、又はそれらの組合せの形態である製紙機内の繊維懸濁液に、その中の唯一の活性剤として又は他の活性剤若しくは他の添加剤と組み合わせて直接添加することができる。イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーをシート形成前に繊維懸濁液に導入するのが好ましい。この導入は例えば、微粒子が紙を形成する構成要素とともに分散し、それにより紙を形成する構成要素と同時に作用することができるように、水性組成物の形態のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を混合タンク、加工ユニット間の流導管、又は好適にかき混ぜられる製紙機の幾つかの他の場所で繊維懸濁液に添加することにより実施することができる。フォーミングワイヤスクリーン上で回収されたパルプを更に濾水、プレス加工及び乾燥することができ、任意で更にコーティング及び変換することができる。ワイヤによって濾水された任意のパルプ繊維を任意で白水サイロへと再循環させることができる。脱水前に、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子で処理した繊維懸濁液は、製紙において従来的に用いられるものを含む1つ又は複数の異なるプロセス添加剤及び/又は機能性添加剤のような、繊維懸濁液に混合された1つ又は複数の任意的な更なる添加剤を有することができる。使用する場合、これらの他の添加剤はイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の導入前、導入中、及び/又は導入後に添加することができる。例えば、任意的な添加剤を、例えば従来のブレンドチェスト、及び/又はシート形成の前及び/又は後の製紙システム内の他の都合の良い場所で導入することができる。イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を含む添加剤システムを、例えば約5〜約9、又は約5.5〜7.5、又は他の値のpH等の広範なpH値にわたって繊維懸濁液に添加することができる。本明細書に記載のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子は、これらのpH値でセルロース繊維により容易に吸収又は保持することができる。
【0022】
示されるように、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子は本発明の改善した歩留まり/濾水添加剤システムの構成要素である。イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子はアニオン性とすることができる。本発明による有機微粒子を形成するイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーは、以下の例示的な構造I:
【化1】
(式中、Rは水素、又は1個〜8個の炭素原子若しくは2個〜8個の炭素原子若しくは3個〜8個の炭素原子若しくは4個〜8個の炭素原子若しくは1個〜4個の炭素原子を有するアルキル基(例えば置換又は非置換のメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)であり;Rは水素、又は1個〜20個の炭素原子若しくは2個〜20個の炭素原子若しくは3個〜20個の炭素原子若しくは4個〜20個の炭素原子若しくは1個〜10個の炭素原子を有するアルキル基(例えば置換又は非置換のメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)、1個〜20個の炭素原子若しくは2個〜20個の炭素原子若しくは3個〜20個の炭素原子若しくは4個〜20個の炭素原子若しくは1個〜10個の炭素原子を有するアルコキシル基(例えば置換又は非置換のメトキシル、エトキシル、プロポキシル、ブトキシル、ペントキシル(正:pentoxyl)、ヘキソキシル等)、又は1個〜20個の炭素原子若しくは2個〜20個の炭素原子若しくは3個〜20個の炭素原子若しくは4個〜20個の炭素原子若しくは1個〜10個の炭素原子を独立して有するアルコキシ及びアルキルを有するアルコキシアルキル基(例えば置換又は非置換のメトキシルメチル、メトキシルエチル、エトキシルメチル、エトキシルエチル、プロポキシルメチル、プロポキシルエチル、プロポキシルプロピル、ブトキシルメチル、ブトキシルエチル、ブトキシルプロピル、ブトキシルブチル等)である)を有する基本コポリマー樹脂(すなわち架橋前)を組み込んだものとすることができる。構造Iの基本ポリマーにおいて、該構造におけるアクリル酸単位の全重量パーセント「x」は、コポリマーの総重量ベースで約1重量%〜約99重量%、又は約1重量%〜約45重量%、又は約5重量%〜約30重量%、又は約5重量%〜約95重量%、又は約10重量%〜約90重量%、又は約20重量%〜約80重量%、又は約30重量%〜約70重量%、又は約35重量%〜約65重量%、又は約40重量%〜約60重量%とすることができ、同じコポリマー構造におけるアクリレート単位の全重量パーセント「y」は、コポリマーの総重量ベースで約99重量%〜約1重量%、又は約99重量%〜約65重量%、又は約95重量%〜約70重量%、又は約95重量%〜約5重量%、又は約90重量%〜約10重量%、又は約80重量%〜約20重量%、又は約70重量%〜約30重量%、又は約65重量%〜約35重量%、又は約60重量%〜約40重量%とすることができる。式Iのコポリマーの数平均分子量は例えば、約5000〜約1000000、又は約7500〜約750000、又は約10000〜約500000、又は約15000〜約100000、又は他の分子量とすることができる。ポリマーの分子量は例えばWatersのBreeze System、すなわちゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて特性化することができる。
【0023】
構造Iのアクリル酸−アクリレートコポリマーは、x単位及びy単位がそれぞれ記載のアクリル酸モノマー単位及びアクリレートモノマー単位を含んで形成される、個々の又は組み合わせた交互コポリマー、ランダムコポリマー、ジブロックコポリマー、グラフトコポリマーとすることができる。それぞれのモノマー単位は、単一単位として、又は例えば短鎖セグメントのような鎖として他の同様のモノマー単位に直接連結した複数の単位としてコポリマーに存在することができる。これらの異なる種類のコポリマーの混合物も使用することができる。アニオン性のイオン性アクリル酸−アクリレートコポリマーが好ましい。したがって、コポリマーのアクリル酸構成要素は酸形態で存在することができるのが好ましいが、これらの単位を組み込んだ得られるモノマーがアニオン性である場合にはアクリル酸の水溶性塩としてそれを使用することができる。アクリル酸モノマーは例えばアクリル酸のカリウム塩又はナトリウム塩とすることができる。同様の考察をコポリマーのアクリレートモノマー構成要素に適用することができる。アクリレートモノマーは例えば非イオン性とすることができる。したがって、非イオン性アクリレートモノマーは、ポリアルキル化アンモニウム官能基を有するようなカチオン性モノマー又はその塩とは異なる。コポリマーは不水溶性のアニオン性架橋ポリマー微粒子の形態で存在する。本明細書では、「アニオン性」は両性(すなわちカチオン電荷とアニオン電荷との両方を含有する)を包含しない。
【0024】
本明細書では、「アクリル酸モノマー」という用語は、その単数形又は複数形で使用される場合、概してアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、プロパクリル酸、N−プロパクリル酸、ブタクリル酸、N−ブタクリル酸の少なくとも1つのモノマー、及び/又は式IのRで示される定義に包含されるような他のモノマーに関し得る。本明細書では、「アクリレートモノマー」という用語は、その単数形又は複数形で使用される場合、概してアクリレート、メタクリレート、プロパクリレート、N−プロパクリレート、ブタクリレート、N−ブタクリレートの少なくとも1つのモノマー、及び/又は式IのRで示される定義に包含されるような他のモノマーに関し得る。
【0025】
本発明によるイオン性架橋ポリマー微粒子を得るために、構造Iの基本ポリマー等のアクリル酸−アクリレートコポリマーを、エチレン性不飽和の2つ以上の非共役点、2つ以上の非共役ビニリデン基、ジアルデヒド、又はそれらの任意の組合せを含有する架橋剤を用いて架橋することができる。本明細書で使用する場合、「熱硬化(thermosetting)」及び「架橋(crosslinking)」並びに同様の用語は、例えば組成物における別々の分子間の共役化学反応又はイオン相互作用により生じる構造的及び/又は形態的な変化を包含するように意図される。アクリル酸−アクリレートコポリマーを、架橋剤(複数の場合もあり)、例えばジビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、トリメチレングリコールジアクリレート若しくはジメチルアクリレート、ジビニルキシレン、ジビニルエチルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、多価化合物のアリルエーテル、ジビニルスルフィド、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、ジアリルスクシネート、ジアリルカーボネート、ジアリルマロネート、ジアリルオキサレート、ジアリルアジペート、ジアリルセバケート、ジアリルタートレート、ジアリルシリケート、トリアリルイソシアネート、トリリルトリカルバリレート、トリアリルホスフェート、トリアリルシトレート、トリアリルアコニテート、N,N’−メチレンジアクリルアミド、N,N’−メチレンジメタクリルアミド、N,N’−エチレンジアクリルアミド、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、テトラアリルペンタエリスリトール、トリアリルペンタエリスリトール、ジアリルペンタエリスリトール、エチレングリコールジメタクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、又はそれらの任意の組合せと架橋することができる。架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーを、例えばコポリマーの架橋を誘導するのに十分な、コポリマーに存在する単量体単位ベースで約1mppm〜約10000mppm(molar parts per million)若しくは約10mppm〜約1000mppmの架橋剤含量、又は他の架橋剤量で架橋剤を用いて架橋することができる。
【0026】
イオン性架橋ポリマー微粒子を、少なくとも25重量%、又は少なくとも約50重量%、又は少なくとも約75重量%、少なくとも約90重量%、又は少なくとも約95重量%、又は少なくとも約99重量%、又は約90重量%〜100重量%、又は約95重量%〜約99重量%のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーを含む、構造Iに示されるようなアクリル酸−アクリレート基本ポリマーを用いて調製することができる。微粒子を形成するのに使用することができる構造Iの基本ポリマーは例えば、アクリル酸単位及びアクリレート単位以外の限られた量の他の種類の単量体単位を有する。例えば、構造Iの基本ポリマーは、例えば約5重量%未満、又は約1重量%未満、又は約0.1重量%未満、又は約0.01重量%未満、又は0重量%〜1重量%、又は0重量%〜0.1重量%、又は0重量%〜0.01重量%、又は測定限度内において0重量%の、アクリルアミド官能基を有する総単量体単位を含有することができる。微粒子を形成する構造Iの基本ポリマーは、約5重量%未満、又は約1重量%未満、又は約0.1重量%未満、又は0重量%〜1重量%、又は0重量%〜0.1重量%、又は測定限度内において0重量%の総量の、アクリルアミド官能基、アルキルホルムアミド官能基、ビニルアセトアミド官能基、ビニルピロリドン官能基、及び/又はポリアルキル化アンモニウム官能基、又はそれらの塩を有する単量体単位を含むこともできる。微粒子を形成する構造Iの基本ポリマーは、約5重量%未満、又は約1重量%未満、又は約0.1重量%未満、又は0重量%〜1重量%、又は0重量%〜0.1重量%、又は測定限度内において0重量%の総量のカチオン性モノマーである単量体単位を含むこともできる。
【0027】
イオン性架橋ポリマー微粒子を、アクリル酸、アクリレートモノマー、及び架橋剤、すなわち構造Iに示されるような基本ポリマーの共重合プロセスによっても調製することができる。イオン性架橋ポリマー微粒子を作製するのに用いられる架橋反応を、例えば(a)初めのポリマーの合成、及びその後のポリマーの架橋、又は代替的に(b)重合反応中に行うことができる架橋反応を含む少なくとも2つの経路によって実施することができる。
【0028】
逆相乳化重合法を用いて、本発明のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を調製することができるが、当業者に既知の他の重合方法を使用してもよい。逆相乳化重合は高分子量の水溶性ポリマー又はコポリマーを調製するための化学プロセスとして使用することができる。本明細書のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を調製する際に、逆相乳化重合プロセスを、例えばa)アクリル酸モノマーとアクリレートモノマーとの水溶液を準備すること、b)水溶液を適切な乳化界面活性剤(複数の場合もあり)又は界面活性剤混合物を含有する炭化水素液と接触させ、逆相モノマーエマルションを形成すること、c)多官能性架橋剤の存在下においてモノマーエマルションをフリーラジカル重合させること、及び任意でd)水に添加した場合にエマルションの転相が高まるように、ブレーカー(breaker)界面活性剤を添加することにより実施することができる。
【0029】
したがって、イオン性架橋ポリマー微粒子を、逆相乳化重合を用いてアクリル酸モノマー及びアクリレートモノマーをベースとする微粒子として形成することができる。記載の構造Iの基本ポリマーはこの重合経路の中間生成物(例えば非架橋コポリマー)であり得る。基本ポリマーの記載は、最終的に架橋する微粒子のモノマー構成成分を特性化するのに用いられる便宜的なものである。モノマーの電荷が反応し、コポリマーを形成する、逆相乳化重合に用いられるような重合条件は、反応のコポリマー生成物が水性のセルロース系繊維懸濁液中で不水溶性の架橋ポリマー微粒子状生成物又はマイクロビーズ生成物として働くことができるように選択される。本発明のコポリマー微粒子を、当業者にとって一般的に知られるような逆相(油中水型)乳化重合法を適用することにより調製することができる。例えば特許文献1(その内容全体が引用することにより本明細書の一部を成すものとする)を参照されたい。乳化重合に用いられる界面活性剤及びその濃度は当業者に既知である。界面活性剤は通常、全体組成に依存する広範なHLB(親水性親油性バランス)値を有することができる。1つの界面活性剤又は界面活性剤の組合せを使用することができる。界面活性剤は例えば、少なくとも1つのジブロック界面活性剤若しくはトリブロック界面活性剤、エトキシ化アルコール、ポリオキシエチル化ソルビトール、ヘキサオレエート、ジエタノールアミンオレエート、エトキシ化ラウリルスルフェート、又はそれらの任意の組合せとすることができる。好適な界面活性剤には引用された特許文献1に記載されるようなものが含まれ得る。
【0030】
記載のように、アクリル酸モノマーとアクリレートモノマーとの逆相乳化重合を、多官能性架橋剤の存在下において実施し、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を含有する架橋組成物を形成する。この重合経路に用いられる多官能性架橋剤及びその濃度は上記のものを含む。
【0031】
イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーの分子量は、例えば反応温度、反応における固体の濃度、開始剤の量、連鎖移動剤の量を変えることにより、及び/又は他の方法により影響を受け得る。連鎖移動剤には、例えばイソプロピルアルコール、メルカプタン、ナトリウムホルメート、及びナトリウムアセテートが含まれ得る。より高い分子量を、例えばこれらのパラメータの制御によってもたらすことができる。コポリマー生成物のより高い分子量は、反応のイオン性架橋コポリマー微粒子状生成物の不水溶性と相関する又はそれに寄与する因子であり得る。
【0032】
イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を逆相乳化反応以外の他の重合経路により調製することができる。構造Iの基本ポリマーは、例えば予め形成させた水溶性形態のポリマーとして得ることができる。それから基本ポリマーを架橋して、不水溶性のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を形成することができる。記載のような多官能性架橋剤を使用することができる。
【0033】
記載のように、アクリル酸モノマーとアクリレートモノマーとの逆相乳化重合を多官能性架橋剤の存在下において実施し、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を含有する架橋組成物を形成することができる。
【0034】
イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーで形成されるイオン性架橋ポリマー微粒子の非膨潤平均粒径は、例えば約1ナノメートル〜約10マイクロメートル(10000nm)若しくはそれ以上、又は約1.5ナノメートル〜約7.5マイクロメートル(7500nm)、又は約2ナノメートル〜約5マイクロメートル(5000nm)、又は約2.5ナノメートル〜約2.5マイクロメートル(2500nm)、又は約3ナノメートル〜約1マイクロメートル(1000nm)、又は約4ナノメートル〜約0.5マイクロメートル(500nm)、又は約5ナノメートル〜約0.1マイクロメートル(100nm)、又は約5nm〜約50nm、又は約1nm〜約50nm、又は約1nm〜約40nm、又は他の粒径とすることができる。
【0035】
本発明による方法に用いられる微粒子形態のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーの供給源として使用することができる架橋ポリマー微粒子の市販の供給源としては例えば、ALCOGUM(商標)L−12及びALCOGUM(商標)L−15(Akzo Nobel)、ACUSOL(商標)810A(DOW-Rohm & Haas)が挙げられ得る。ALCOGUM(商標)L−12は、水の中において28.5%の活性固形分で供給されるアニオン性のアクリレート含有アルカリ膨潤性エマルションコポリマーである。
【0036】
必要に応じて、所望の粒径及び/又は粒子分布を得るために、未処理の(raw)イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー粒子を粉砕した後に製紙に使用することができる。これに関しては例えば湿式粉砕を用いることができる。イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の分散液を、例えば一般的に知られる粉砕機器及び使用方法を用いて、例えば高剪断ミキサー、ホモミキサー若しくはラインミル、又は他の既知の湿式粉砕機、好ましくは高速剪断力を適用することができるものを使用することにより湿式粉砕することができる。
【0037】
記載の逆相乳化重合法により調製されるか、又はそれ以外の方法で得られるような本発明によるイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子は、そのまま若しくは希釈した水性形態で即座に製紙に用いることができるか、又は紙の製造での後の使用のために水溶液、分散液若しくは元のエマルション形態として保持若しくは保管することができる。本発明はイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を含むこれらのエマルション及び水分散液及び水溶液にも関する。本発明のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を、例えば60rpm、37℃で#2スピンドルを用いてBrookfield粘度計で測定される、約45cps未満(例えば1cps〜24cps、又は5cps〜20cps、又は10cps〜20cps)、又は特に25cps未満の粘度を有するエマルション及び分散液に配合することができる、又はエマルション及び分散液として得ることができる。これらの粘度は、例えば室温で保管する際には1日〜28日間維持することができる。イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子は、例えば予め形成させたエマルション中に実質的に均一に分散される又は水溶液中に分散される離散微粒子又はマイクロビーズとして製紙の際にパルプ又は繊維懸濁液に接触させることができる。水性媒体、水溶液、水性エマルション、又は他の水性送達システムにおけるイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の濃度は特に限定されない。通常、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子は、製紙ウェットエンド及び/又は他のプロセス段階に組み込まれる際に繊維の歩留まり及び濾水性を改善するのに効果的な濃度及び量で使用することができる。微粒子を含有する又は微粒子を含む水性添加剤又はパッケージにおいて、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の濃度は例えば、約1重量%〜約99重量%、又は2重量%〜約95重量%、又は約3重量%〜約75重量%、又は約5重量%〜約60重量%、又は約7重量%〜約50重量%、又は約10重量%〜約40重量%、又は約12重量%〜約30重量%、又は他の濃度とすることができる。本発明のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子は、保管及び輸送のために商業的に有用でかつ優れた安定性を有することができる。またコポリマー微粒子は様々な適用要件に合わせて容易に調整可能な構造特徴を有することもできる。例えば、架橋度を性能、適用条件及びエマルション固形分の要件に応じて調整することができる。別の例としては、コポリマーにおけるアクリル酸とアクリレートとの比を疎水性と親水性とのバランス要件に応じて調整することができる。別の例としては、アクリル酸の代わりにマレイン酸等の他のアニオン性モノマーを使用することができる。
【0038】
イオン性架橋ポリマー微粒子を、製紙プロセスにおいて、例えばウェットエンドで、製紙パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり少なくとも約0.1ポンド(乾燥固形分ベース)、又は1トン当たり少なくとも0.2ポンド(乾燥固形分ベース)、又は1トン当たり少なくとも1ポンド(乾燥固形分ベース)、又は1トン当たり約0.1ポンド〜約10ポンド(乾燥固形分ベース)、又は1トン当たり約0.3ポンド〜約5ポンド(乾燥固形分ベース)、又は1トン当たり約0.4ポンド〜約4ポンド(乾燥固形分ベース)、又は1トン当たり約0.5ポンド〜約3ポンド(乾燥固形分ベース)、又は1トン当たり約0.8ポンド〜約2.5ポンド(乾燥固形分ベース)の総量でパルプに添加することができるが、他の量を用いてもよい。
【0039】
本発明によるイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を含む添加剤システムは、任意の特定の種類の紙の処理に限定されるものではなく、さらしパルプ、未さらしパルプ又はそれらの組合せを用いて作製された紙を含むあらゆるグレードの紙、クラフト紙、亜硫酸紙、セミケミカル紙等に適用されるものとする。例えば、本発明によるイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子による濾水性及び歩留まりの改善は、様々な種類のパルプにおいて観察することができる。例えば、パルプは未加工(virgin)亜硫酸パルプ、損紙(broke)パルプ、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、かかるパルプの混合物等の未加工パルプ及び/又は再利用パルプを含み得る。再利用パルプはくず紙、ダンボール古紙(OCC)及び他の使用済み紙製品及び紙材料であり得る、又はこれを含み得る。例えば、本発明を適用することができる多様な機械パルプ化方法が存在する。例えば、熱機械パルプ(TMP)は加熱木材チップと機械プロセスとの組合せを用いる。砕木パルプ(SGW)は木材チップを磨砕又は浸軟する。化学熱機械パルプ(CTMP)はパルプを生産するのに多様な化学物質、加熱法及び磨砕法を用いる。異なる種類のパルプには異なる種類の紙が必要とされるが、多くの紙は幾つかの異なる種類のパルプと、再利用/再生紙との組合せすなわち「ブレンド」を用いることができる。製紙パルプ又はストックはパルプ又はストックにおける総乾燥固形分含量の例えば少なくとも約50重量%の濃度で水性媒体中にセルロース繊維を含有することができるが、他の濃度を用いることができる。これらのパルプ配合物は繊維完成紙料と称することができる。
【0040】
イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子に加えて、本発明のパルプ又はストック又は繊維懸濁液を、製紙システム内において1つ又は複数の任意的な添加剤で処理することができる。これらの任意的な添加剤には、1つ又は複数の、例えばカチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー及び/又は非イオン性ポリマー等の水溶性ポリマー、凝結剤、凝集剤、二次微粒子若しくは他の補助的な歩留まり助剤、クレー、填料(例えば沈降炭酸カルシウム又は粉砕炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム;二酸化チタン;タルク;カオリン)、界面活性剤、強度助剤、染料、色素、殺菌剤、(ヘミ)セルロース分解(正:cellulolytic)酵素、消泡剤、アラム(alum)、アルミン酸ナトリウム等のpH調整剤、及び/又は硫酸等の無機酸、殺菌剤、均染剤、潤沢剤、湿潤剤、光学的光沢剤、色素分散剤、架橋剤、粘度調整剤若しくは増粘剤、若しくはそれらの任意の組合せ、及び/又は他の従来型の及び非従来型の製紙添加剤若しくは加工添加剤が含まれ得る。使用する場合、これらの任意的な添加剤はそれらのそれぞれの目的に合わせて効果的な量で使用される。これに関して、これらの他の任意的な添加剤の含量は、イオン架橋性アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子により与えられる有益な濾水効果及び歩留まり効果に悪影響を与えない又は有益な濾水効果及び歩留まり効果を損なわないことが重要である。記載のように、これらの添加剤を、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の導入前、導入中、及び/又は導入後に添加することができる。例えば、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を、全てではないがほとんどの他の添加剤及び構成要素がパルプに添加された後に添加することができるが、他の添加順序を用いてもよい。強度助剤、凝結剤、界面活性剤、二次微粒子等の一部の任意的な添加剤を例えば、予混合物としてコポリマー粒子とともに(simultaneously)又は別々の導入源から同時に添加することができる。限定的なものではないが、一般的に(処理済)パルプのpHを、約4.0〜約8.5、より好適には約4.5〜約8.0の規定のレベルまで制御することができる。
【0041】
イオン性架橋ポリマー微粒子を、例えば非イオン性、カチオン性又はアニオン性である界面活性剤等の1つ又は複数の任意的な添加剤を更に含むエマルションとしてパルプに添加することができる。界面活性剤を、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の逆相エマルション等の別の処理組成物の構成要素として繊維懸濁液に担持させても、又は繊維懸濁液に別々に添加しても、又はそれらを組み合わせてもよい。界面活性剤の例としては例えば上記されたものが挙げられる。含まれる場合には、界面活性剤はパルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり約0.01%〜約5%、又は約0.1%〜約1.0%ポンド(無水ベース)の量でパルプに使用することができる。イオン性架橋ポリマー微粒子の分散液及びエマルションは、イオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子と別々に、イオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子と同時に、又はイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子とのブレンドとしてパルプに添加することで湿潤強度助剤及び/又は乾燥強度助剤を含めることができる。強度助剤はカチオン性、アニオン性又は両性とすることができる。強度助剤は例えば、水溶性物質とすることができる。強度助剤は例えば、デンプン、デンプン誘導体、ポリアクリルアミド、グリオキサール架橋ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、グアーガム、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン樹脂、ポリビニルアルコール又はそれらの(正:thereof)任意のブレンドとすることができる。凝結剤、有機凝集剤又はその両方をポリマー微粒子と連続して、ポリマー微粒子と同時に、又はポリマー微粒子とのブレンドとしてパルプに添加することができる。凝結剤はカチオン性凝結剤の構成要素とすることができ、カチオン性有機ポリマー凝結剤、カチオン性無機凝結剤、又はそれらの組合せであり得るか又はそれらを含み得る。カチオン性有機ポリマー凝結剤は例えば、ポリアミン、ポリアミドアミン−グリコール、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(Poly−DADMAC)、グリオキサール化カチオン性ポリアクリルアミド、ビニルアミンとアクリルアミドとのコポリマー、又はそれらの任意の組合せとすることができる。使用することができるカチオン性無機凝結剤は、カチオン性無機化学物質(例えば硫酸アルミニウム(アラム)、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄)、カチオン性無機ポリマー(例えばポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ硫酸アルミニウム(PAS)、ポリ硫酸アルミニウムシリケート(PASS))、カチオン性の水分散性鉱物粒子(例えばカチオン性アルミナ鉱物粒子、カチオン性コロイドシリカゾル)、ポリ塩化アルミ(ACH)、又はそれらの任意の組合せであり得るか又はそれらを含み得る。凝集剤は例えば、歩留まり及び/又は濾水性を製紙完成紙料においてイオン性架橋ポリマー微粒子により与えられる性能の向上まで更に増大させることができる、カチオン性、アニオン性、非イオン性、双性イオン性、又は両性のポリマー凝集剤とすることができる。凝集剤を固体形態で、水溶液として、油中水型エマルションとして、又は水分散液として使用することができる。代表的なカチオン性ポリマーとしては例えば、(メタ)アクリルアミドと、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEM)とのコポリマー及びターポリマー、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル第4級塩−アクリルアミドコポリマー、及びナトリウムアクリレート−アクリルアミドコポリマー、及び加水分解ポリアクリルアミドポリマーが挙げられる。
【0042】
パルプは例えば、パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり少なくとも約0.1ポンド(無水ベース)の量でイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子と、パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり少なくとも約0.3ポンド(無水ベース)の量で凝結剤と、パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり少なくとも約0.05ポンド(無水ベース)の量で有機凝集剤とを含むことができる。パルプは例えば、パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり約0.1ポンド〜約10ポンド又は約0.25ポンド〜約1ポンド(無水ベース)の量でイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子と、パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり約0.3ポンド〜約10ポンド又は約0.5ポンド〜約3ポンド(無水ベース)の量で凝結剤と、パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり約0.05ポンド〜約10ポンド又は約0.1ポンド〜約3ポンド(無水ベース)の量で有機凝集剤とを含むことができる。イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の他の組合せと、記載の任意的な添加剤の様々な組合せとを使用することができる。
【0043】
イオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子を填料の歩留まり及び濾水性の向上を得るために製紙プロセスに適用される歩留まりシステムにおける唯一の微粒子として使用することができる。シリコン含有微粒子等の他の微粒子は必要とされない。本発明による製紙パルプ又はストックは任意で、他の種類の微粒子を更に含有していてもよい。本発明のイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子を、無機微粒子とともに配合し、製紙ウェットエンド用途のために異なる微粒子の複合材料又は物理的混合物を作製することが可能である。異なる微粒子を共通の混合物に、又は製紙プロセスにおける処理対象の繊維懸濁液に別々に添加することができる。添加する場合、1つ又は複数の異なる種類のかかる二次微粒子添加剤、すなわちイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子とは異なる任意の微粒子をパルプにプロセス中のどの時点で添加してもよい。使用する場合、二次微粒子添加剤は例えば、シリカ、ベントナイト、カチオン性の繊維状コロイドアルミナ、天然系又は合成系のヘクトライト、ゼオライト、非酸性のアルミナゾル、カチオン性のコロイドアルミナ微粒子、又は当業者に既知である任意の従来の粒子状添加剤とすることができる。本発明のパルプ又はストックに添加する場合、シリカ及びベントナイト等の二次微粒子添加剤の総量は、微粒子及び紙ストックの両方の乾燥固形分重量ベースで紙ストック1トン当たり0ポンド〜約3ポンド、又は紙ストック1トン当たり約0.001ポンド〜紙ストック1トン当たり約2ポンド、又は紙ストック1トン当たり約0.01ポンド〜紙ストック1トン当たり約1ポンドのような任意の量で存在することができるが、他の量を用いることができる。記載のように、二次微粒子(例えばシリカ及びベントナイト)はパルプに本質的に又は全く存在していなくてもよい。パルプにおけるシリカ及びベントナイト等の二次微粒子添加剤の総含量は任意で、例えばパルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり0ポンド〜約0.1ポンド、又は1トン当たり約0ポンド〜約0.01ポンド、又は1トン当たり約0ポンド〜約0.001ポンドの量に限定され、有用でかつ改善された繊維歩留まり性能及び濾水性能をもたらすことができる。
【0044】
本発明のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を含む紙製品を提供することができる。該製品はイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を含有する少なくとも1つの紙層又は紙匹、例えば紙シート、ライナーボード、新聞印刷用紙、板紙、ティッシュペーパー、中しん原紙及び壁板を含み得る。本発明による方法で作製された紙は、例えば乾燥繊維1トン当たり約0.1ポンド〜約2.5ポンド(lb.)のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子、又は乾燥繊維1トン当たり約0.1lb.〜約1lb.のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子、又は乾燥繊維1トン当たり約0.2lb.〜約0.8lb.のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子(固形分/固形分ベースで)を含むことができる。紙に添加されるイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の量は固形分ベースで重量パーセント単位で表すことができ、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の添加量はセルロース繊維の乾燥重量の約0.005wt%と少なくすることができ、通常約1.0重量%を超えない。乾燥紙重量の約0.01wt%〜0.1wt%の範囲のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の量がより一般的とされる。
【0045】
本発明によるポリマー微粒子に基づく歩留まりシステムの添加は、例えば従来型の製紙機(例えばフードリニア型抄紙機)で、例えば製紙機のウェットエンドアセンブリで実行することができる。本発明の方法の1つを行うための製紙システムのフローチャートを図1に示す。図1に、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の添加点のオプションA、B及びCが示されている。これらのオプションの少なくとも1つ、2つ又は3つ全てを使用することができる。示されたシステムは本発明を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものとしては決して意図されないことを理解すべきである。
【0046】
図1のシステムでは、示されるパルプの供給部は、例えばパルプ貯蔵タンク又はサイロから供給されるようなパルプのフローを表す。図1に示されるパルプの供給部は、導管、貯蔵タンク若しくは混合タンク、又は他のコンテナ、流体路(passageway)、又はパルプのフローの混合域であり得る。パルプがリファイナを通って、それからブレンドチェストを通り、ここで任意的な添加剤を処理済パルプと合わせることができる。リファイナはパルプタンクの排出口と連通した注入口と、ブレンドチェストの注入口と連通した排出口とを備える。図1によれば、ブレンドチェストで処理されたパルプがブレンドチェストの排出口からマシンチェストの注入口へと連通路を通って移動し、このマシンチェストにおいても任意的な添加剤を処理済パルプと合わせることができる。ブレンドチェスト及びマシンチェストは当業者に既知の任意の従来型のものであり得る。マシンチェストにより、レベルヘッド、すなわちシステムの下流部分にわたる、特にヘッドボックスでの処理済パルプ又はストックの定圧が確保される。マシンチェストから、パルプは白水サイロへと移動し、それからファンポンプへと移動した後、パルプはスクリーンを通過する。スクリーンは、例えばヘッドボックスに供給される繊維状物質に組み込むことができる使用可能な繊維をスクリーン上に保持しながら、白水の望ましくない又は使用不能な成分(例えば細粒、灰分)を含有する水がスクリーンを通過するようなサイズにすることができる。スクリーニングしたパルプはヘッドボックスへと移動し、そこでワイヤ上に濡れた紙シートが形成され、濾水が起こる。ワイヤ部は、例えば従来的に用いられ、本発明の方法における使用に容易に適合させることができる設備を備え得る。フォーミングワイヤ上に湿紙匹として回収されるパルプに、例えば更なる濾水、プレス加工、乾燥、カレンダー仕上げ、又は製紙機に通常用いられるような他の加工処理の内の1つ又は複数等の更なる加工処理を施した後、パルプをワインダへと運ぶことができ、それを紙シートへと更に運ぶか、又はコーティングステーション及び変換ステーション(図示せず)に運ぶことができる。図1のシステムでは、ヘッドボックスでの製紙により得られる濾水したパルプが白水サイロへと再循環する。製紙システムにおけるプロセス温度は限定されておらず、例えば約15℃〜約35℃、又は約20℃〜約34℃、又は約25℃〜33℃、又は約32℃とすることができるが、他の温度を使用してもよい。
【0047】
本発明のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を含む歩留まりシステムを例えば、製紙システムのウェットエンドにおいて導入オプションA、B、Cの1つ若しくは複数、又はそれらの任意の組合せでパルプに導入するのが好ましい。記載の添加オプションA、B及び/又はCでのコポリマー微粒子の供給部は例えば、加工ユニット間の1つ又は複数のフローラインと連通した排出口を備える貯蔵タンクであるか(図示せず)、図示されるように直接加工ユニットに供給するか、又はその両方であり得る。従来の添加剤の導入に関連して用いられる従来のバルブ及びポンプを、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の導入に使用することができる。本発明の製紙機器は好適な濃度のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子又は他の添加剤をパルプのフローに供給する秤量装置を備えることができる。
【0048】
図1に示されるように、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の導入を、白水サイロとファンポンプとの間で、及び/又はファンポンプとスクリーンとの間で、及び/又はスクリーンとヘッドボックスとの間で、又はこれらの導入位置の任意の組合せを用いて、及び/又は製紙機内の他の位置で行うことができる。したがって、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を初めに、白水サイロとファンポンプとの間でリファイニングした処理済パルプに添加することができる。代替的に又は付加的に、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーをパルプがスクリーンを通った後で、かつヘッドボックスでシートが形成される直前に添加することができる。代替的に又は付加的に、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーを、白水サイロへと再循環される前にヘッドボックスで回収された濾水済みの繊維に添加することができる。
【0049】
イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーを含む組成物で処理したパルプ又はストックはワイヤ上での紙匹の形成中に良好な濾水性を示すことができる。パルプ又はストックは紙匹製品において繊維細粒及び填料の所望の高い歩留まりも示すことができる。さらに、イオン性架橋ポリマー微粒子の使用によって、より速い濾水速度と合わせて達成することができる濾液の濁度の低下がもたらされ得る。
【0050】
製紙において使用されるものとして説明しているが、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子は、水処理(廃水処理、又は製紙以外の産業プロセス水若しくは水性システム)、スラッジ脱水、繊維材料の濾過助剤、不織生産プロセスの添加剤、無機填料処理、凝集、又は表面コーティング等の他の用途に使用することができる。
【0051】
本発明は、任意の順序及び/又は任意の組合せでの以下の実施形態/特徴/態様を包含する:
1.本発明は、紙又は板紙を作製する方法であって、イオン性架橋ポリマー微粒子を製紙パルプに添加し、処理済パルプを形成する、添加することと、処理済パルプを紙又は板紙に形成することとを含み、イオン性架橋ポリマー微粒子が架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーを含む、紙又は板紙を作製する方法に関する。
2.イオン性架橋ポリマー微粒子を、製紙パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり少なくとも約0.01ポンド(乾燥固形分ベース)の量でパルプに添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
3.ポリマー微粒子を、以下の特性:Muetek DFR−4テスターを用いて測定される、ポリマー微粒子と同じ投与量及びサイズで非晶質シリカ微粒子を含有するパルプで作製された紙と比較した、
a)少なくとも約10%の填料の歩留まりの増大(%)、
b)少なくとも約10%の濾水の増大(g/30秒)、及び/又は、
c)少なくとも約10%の濁度の低減(NTU)、
の内の少なくとも1つを与えるのに効果的な量でパルプに添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
4.ポリマー微粒子の非膨潤平均粒径が約1ナノメートル〜約10マイクロメートルである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
5.イオン性架橋ポリマー微粒子がアニオン性である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
6.コポリマーが以下の構造:
【化2】
(式中、Rは水素又は1個〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり;Rは水素又は1個〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1個〜20個の炭素原子を有するアルコキシル基、又は1個〜20個の炭素原子を独立して有するアルコキシ及びアルキルを有するアルコキシアルキル基であり;xはコポリマーの総重量ベースで1重量%〜99重量%の重量パーセントであり、yはコポリマーの総重量ベースで99重量%〜1重量%の重量パーセントである)を有し、コポリマーの数平均分子量が約5000〜約1000000である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
7.アクリル酸−アクリレートコポリマーを、エチレン性不飽和の2つ以上の非共役点、2つ以上の非共役ビニリデン基、ジアルデヒド、又はそれらの任意の組合せを含有する架橋剤を用いて架橋する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
8.アクリル酸−アクリレートコポリマーを、ジビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、トリメチレングリコールジアクリレート又はジメチルアクリレート、ジビニルキシレン、ジビニルエチルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、多価化合物のアリルエーテル、ジビニルスルフィド、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、ジアリルスクシネート、ジアリルカーボネート、ジアリルマロネート、ジアリルオキサレート、ジアリルアジペート、ジアリルセバケート、ジアリルタートレート、ジアリルシリケート、トリアリルイソシアネート、トリリルトリカルバリレート、トリアリルホスフェート、トリアリルシトレート、トリアリルアコニテート、N,N’−メチレンジアクリルアミド、N,N’−メチレンジメタクリルアミド、N,N’−エチレンジアクリルアミド、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、テトラアリルペンタエリスリトール、トリアリルペンタエリスリトール、ジアリルペンタエリスリトール、エチレングリコールジメタクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、又はそれらの任意の組合せである架橋剤を用いて架橋する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
9.架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーを、コポリマーの架橋を誘導するのに十分な、コポリマーに存在するモノマー単位ベースで約1mppm〜約10000mppmの架橋剤含量で架橋剤を用いて架橋する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
10.イオン性架橋ポリマー微粒子が少なくとも約90重量%の上記架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
11.架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーが約1重量%未満の、アクリルアミド官能基を有する総モノマー単位を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
12.架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーが約0.1重量%未満の、アクリルアミド官能基を有する総モノマー単位を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
13.イオン性架橋ポリマー微粒子を、少なくとも1つの界面活性剤を更に含むエマルションとしてパルプに添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
14.イオン性架橋ポリマー微粒子を、ポリマー微粒子の添加量ベースで約0.1重量%〜約15重量%の範囲の量で界面活性剤を更に含むエマルションとしてパルプに添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
15.イオン性架橋ポリマー微粒子を、界面活性剤を更に含むエマルションとしてパルプに添加し、界面活性剤が非イオン性、カチオン性又はアニオン性である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
16.湿潤強度助剤及び/又は乾燥強度助剤をパルプにポリマー微粒子と連続して、同時に、又はブレンドとして添加することを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
17.強度助剤がカチオン性、アニオン性又は両性である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
18.強度助剤がデンプン、デンプン誘導体、ポリアクリルアミド、グリオキサール架橋ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、グアーガム、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン樹脂、ポリビニルアルコール又はそれらの任意の組合せを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
19.凝結剤と有機凝集剤とをパルプにポリマー微粒子と連続して、同時に、又はブレンドとして添加することを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
20.パルプに、パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり少なくとも約0.01ポンド(無水ベース)の量でイオン性架橋ポリマー微粒子と、パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり少なくとも約0.1ポンド(無水ベース)の量で凝結剤と、パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり少なくとも約0.05ポンド(無水ベース)の量で有機凝集剤とを添加することを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
21.パルプに添加されるシリカ及びベントナイト微粒子の総量がパルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり約0.01ポンド以下の量である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
22.パルプに添加されるシリカ及びベントナイト微粒子の総量がパルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり約0.001ポンド以下の量である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
23.紙がセルロース系繊維の不織紙匹を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
24.製紙パルプを紙又は板紙に形成する製紙システムであって、
製紙パルプの供給部と、
上記パルプの供給部と連通したブレンドチェストと、
ブレンドチェストからの排出後にパルプを回収するためのスクリーン、任意でスクリーンに到達する前に通る1つ又は複数の更なる加工ユニットと、
紙形成前にパルプに適用するために、架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーを含むイオン性架橋ポリマー微粒子を含む組成物をパルプに給送するための組成物給送デバイスと、
を備える、製紙パルプを紙又は板紙に形成する製紙システム。
25.組成物が少なくとも1つの界面活性剤を更に含むエマルションである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のシステム。
26.イオン性架橋ポリマー微粒子を含有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法により作製された紙を含む製品。
27.紙シート、板紙、ティッシュペーパー、又は壁板である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の製品。
28.新聞印刷用紙又はライナーボードである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の製品。
29.以下の特性:
a)Muetek DFR−4テスターを用いて測定される、パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり0.3ポンドの投与量のイオン性架橋ポリマー微粒子を用いた少なくとも約60%の填料の歩留まり、
b)Muetek DFR−4テスターを用いて測定される、パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり1ポンドの投与量のイオン性架橋ポリマー微粒子を用いた少なくとも約130g/30秒の濾水、及び/又は、
c)Muetek DFR−4テスターを用いて測定される、パルプの乾燥固形分重量ベースで1トン当たり1ポンドの投与量のイオン性架橋ポリマー微粒子を用いた約950NTU未満の濾液濁度、
の内の少なくとも1つを与えるのに効果的な量で架橋アクリル酸−アクリレートコポリマーを含むイオン性架橋ポリマー微粒子で処理した紙パルプを含む紙製品。
【0052】
本発明は、文及び/又は段落に記載のような上記及び/又は下記のこれらの様々な特徴又は実施形態の任意の組合せを包含し得る。本明細書に開示される特徴の任意の組合せは本発明の一部とみなされ、組合せ特徴に関しては限定されないことが意図される。
【0053】
本発明を以下の実施例により更に明らかにするが、これは本発明を純粋に例示するものであることが意図され、その中で百分率、部、比率等は全て他に特に規定がなければ重量による割合とする。
【実施例】
【0054】
これらの実験において、水性セルロース懸濁液の脱水速度特性及び歩留まり特性に対する例示的な本発明のイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の効果を幾つかの市販の無機微粒子のものと比較した。
【0055】
実施例1
パルプ懸濁液の填料の歩留まり試験及び濾水試験
この試験では、懸濁液の繊維歩留まり及び脱水速度に対するさらしクラフトパルプ上でのイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を伴う又は伴わない異なる微粒子の効果を研究した。パルプストック(70%広葉樹パルプ、30%針葉樹パルプ)(CSF 450)を米国において民間の製紙工場により得られた市販のパルプ板紙から調製した。パルプ板紙は標準的な工業製品であった。パルプでは、さらしサザンパインクラフトパルプ板紙(針葉樹パルプ板紙)と、さらしサザンパイン混合広葉樹パルプ板紙を試験に使用した。リファイニングでは、針葉樹パルプ板紙と広葉樹パルプ板紙を別々に細かく裂いて、一晩水に浸漬させた。パルプのそれぞれをリファイニングのためにバレービーターに入れた。TAPPI標準方法をパルプリファイニングに適用した(T200 om−89)。パルプを所望のカナダ標準濾水度(CSF)450までリファイニングした。リファイニングした針葉樹パルプと広葉樹パルプとを30:70(針葉樹:広葉樹)の比で混合し、使用できる状態とした。これらの研究に用いた歩留まりプログラムは、微粒子と、凝結剤と、凝集剤との組合せであった。
【0056】
歩留まりプログラム添加剤を導入した開始完成紙料の組成(wt%)は80%パルプ及び20%填料(80% PCC、20% TiO)であった。完成紙料の稠度(consistency)は0.7wt%、pH7.0であった。本明細書の表では「N−1」と示されるイオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子を、ACUSOL 810A(DOW-Rohm & Haas)としてエマルション形態で入手した。N−2と示される有機微粒子をALCOGUM(商標)L−12(Akzo Nobel)として入手し、N−3と示される有機微粒子をACUSOL 805として入手し、N−4と示される有機微粒子をACUSOL 880として入手し、N−5と示される有機微粒子をACUSOL 835として入手し、N−6と示される有機微粒子をACUSOL 882として入手し、N−42と示される有機微粒子をACUSOL 842として入手した。使用するシリカ微粒子は、市販のシリカBUFLOC(商標)5461(Buckman Laboratories International, Inc.、米国テネシー州メンフィス)(本明細書の表では「5461」)、又は市販のアニオン性シリカゾルEKA NP890(Eka Chemicals, Inc.、ジョージア州マリエッタ)(本明細書の表では「NP890」)であった。使用するベントナイトは市販のBUFLOC(商標)5456であった。使用する凝結剤は、市販のポリアミン凝集剤BUFLOC(商標)5031(Buckman Laboratories International, Inc.)(本明細書の表では「5031」)、又は市販のBUFLOC(商標)5567のデンプン(Buckman Laboratories International, Inc.)(本明細書の表では「5567」)であった。使用する凝集剤は、市販のアニオン性ポリアクリルアミド凝結剤BUFLOC(商標)5631(Buckman Laboratories International, Inc.)(本明細書の表では「5631」)、又は市販のカチオン性ポリアクリルアミドBUFLOC(商標)594(BuckmanLaboratories International, Inc.)(本明細書の表では「594」)であった。サンプルに使用されるこれらの様々な歩留まりプログラム添加剤の投与量を本明細書の表に示す。
【0057】
典型的な試験では、800mLの1.0%パルプ懸濁液をMutek DFR−4濾水/歩留まりテスターに添加し、それから900rpmで混合した。凝結剤を凝集剤の添加の5秒前に添加した。凝集剤の添加の5秒後に、混合速度を650rpmまで低下させた。微粒子歩留まり助剤、すなわちイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子若しくはシリカ微粒子及び/又はベントナイト微粒子を、混合速度を650rpmまで低下させた直後に添加した。表1〜表7に、構成要素の投与量を、乾燥繊維1トン当たりの構成要素のポンド(lb)単位で記載する。更に5秒後、混合を停止させ、400mLの濾液を60メッシュのワイヤに通した。より高い濾水速度はより速い生産速度を示すものであり、このことが紙乾燥プロセス中のエネルギー消費の低下に繋がり得る。濾液の濁度を、HACH 2100濁度計を用いて記録した。より低い濁度はより高い歩留まり効率を示すものである。
【0058】
表1の試験結果は、イオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子で処理したサンプルとシリカ微粒子で処理したサンプルとの歩留まり性能の比較を示す。この結果によって、イオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子がはるかに低い投与量レベルで、すなわちシリカ投与量の約35%でBUFLOC(商標)5461シリカと同程度の歩留まりを得たことが示される。さらに、イオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子は、同じ投与量でBUFLOC(商標)5461シリカよりも良好な歩留まり性能、すなわち填料の歩留まりの10%を超える増大を達成した。
【0059】
表1.歩留まり試験結果
【表1】
【0060】
表2の試験結果は、アニオン性凝集剤システムにおいてイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子で処理したサンプルと、シリカ微粒子で処理した比較サンプルとの歩留まり性能を比較したものである。より少ない、例えばシリカよりも50%少ない投与量を適用することで、ポリマー微粒子はシリカゾル(EKA NP890)よりも僅かに良好であり、BUFLOC(商標)5461シリカよりも10%高い歩留まりを得た。
【0061】
表2.歩留まり試験結果
【表2】
【0062】
表3の試験結果は、カチオン性凝集剤システムにおけるイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子を用いて作製されたサンプルとシリカ微粒子を用いて作製されたサンプルとの歩留まり比較を示すものである。シリカの投与量と比較してより低い、例えば50%少ない投与量のイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子を用いておよそ10%の填料の歩留まりの増大を達成した。
【0063】
表3.歩留まり試験結果
【表3】

【0064】
表4の試験結果は、カチオン性凝集剤システムにおけるシリカ微粒子で処理した比較サンプルと比較した異なる投与量レベルのイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子で処理したサンプルの歩留まり効率を示すものである。シリカ微粒子と比較してイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子で処理したサンプルでは、填料の歩留まりの8%〜10%の増大が観察された。
【0065】
表4.歩留まり試験結果
【表4】
【0066】
図2は、アニオン性凝集剤システムにおける様々な微粒子投与量レベルでのイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子(N−1)と記載の2つのシリカ製品(すなわちEKA NP890及びBUFLOC(商標)5461)で処理した比較サンプルとの歩留まり性能の比較結果を示すものである。シリカ微粒子のいずれか1つで処理したサンプルと比較して、イオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子で処理したサンプルでは填料の歩留まりの10%〜25%の増大が示される。
【0067】
表5の試験結果は、イオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子で処理したサンプルに対する凝結剤の影響を研究するための、シリカ微粒子で処理した比較サンプルとの比較を示すものである。結果により示されるように、異なる投与量レベルのポリアミン凝結剤BUFLOC(商標)5031の適用は、より大きい凝結剤投与量がイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子の性能に有益であり得ることを示し、凝結剤としてカチオン性デンプンを適用しても、シリカ微粒子と比較してイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子を用いた歩留まり性能に対する正の影響は示されなかった。
【0068】
表5.歩留まり及び濁度の試験結果
【表5】
【0069】
表6の試験結果は、デンプン−カチオン性凝集剤システムにおけるイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子で処理したサンプルとシリカ微粒子で処理した比較サンプルとの歩留まり性能の比較を示すものである。イオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子はシリカ微粒子よりも良好な性能、例えばシリカ微粒子と比較した填料の歩留まりの10%〜15%の増大を示した。
【0070】
表6.歩留まり試験結果
【表6】
【0071】
表7の試験結果は、イオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子をベントナイトとともに配合させることが、同様にサンプルの処理においてシリカ微粒子に対して競合的な歩留まり性能を示したことを示すものである。
【0072】
表7.歩留まり試験結果
【表7】
【0073】
図3はアニオン性ポリアクリルアミド凝集剤システムにおいて等しい適用コストでイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子(N−1)で処理したサンプルと、シリカ微粒子(BFL 5461)で処理した比較サンプルとの填料の歩留まり効率を比較する試験結果を示す。イオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子のより良好な歩留まり性能が同様に確認された。
【0074】
表8の試験結果は、イオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子で処理したサンプル及び配合ベントナイトで処理したサンプルと、シリカで処理した比較サンプルとの新聞印刷用紙の濾水の比較を示すものである。シリカと比較してイオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子で処理したサンプルにおいて濾水のおよそ15%の増大及び濁度の20%を超える低減が観察された。これらの試験サンプルにおいて、BUFLOC(商標)5031の投与量レベルは4.0lb/トンであり、BUFLOC(商標)5511の投与量レベルは0.2lb/トンであり、微粒子は1.0lb/トンの投与量で使用した。
【0075】
表8.新聞印刷用紙の濾水及び濁度における微粒子の性能
【表8】
【0076】
表9の試験結果は、イオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子で処理したサンプルと、シリカ微粒子で処理した比較サンプルとの地合特性及び強度特性の比較を示すものである。概して、イオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子とシリカ微粒子とを比較してもサンプルの強度には有意差が観察されなかった。
【0077】
表9.地合特性及び強度特性の試験結果
【表9】
【0078】
表1〜表8及び図2図3において示されるように、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子の添加が全ての製品の歩留まり/濾水性能を有意に増大させた。さらに、イオン性架橋アクリル酸−アクリレートコポリマー微粒子含有製品では、シリカ微粒子で処理した従来の市販の微粒子と比較してより速い濾水速度(表8)と合わせて、はるかに低い濾液の濁度(表5)が得られた。さらに、試験結果によって、イオン性架橋アクリル酸−アクリレート微粒子がシリカ微粒子による処理と比較して同程度の紙強度特性を維持しながら、歩留まり及び濾水性の改善を得ることができることが示される。
【0079】
出願人らはこの開示における全ての引用文献の内容全体を具体的に援用している。さらに、量、濃度又は他の値若しくはパラメータが範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値と好ましい下限値とのリストのいずれかとして与えられる場合、これは範囲が別々に開示されているかに関わらず、任意の範囲上限又は好ましい値と、任意の範囲下限又は好ましい値との任意の組合せからなるあらゆる範囲を具体的に開示するものと理解されるものとする。数値の範囲が本明細書で言及されている場合、特に指定のない限り、範囲はその端点、並びに範囲内の全ての整数及び少数を含むことが意図される。本発明の範囲は、範囲を規定する場合に言及された特定の値に限定することは意図されない。
【0080】
本発明の他の実施形態は、本明細書の検討、及び本明細書に開示される本発明の実施により当業者にとって明らかとなるであろう。本明細書及び実施例は例示的なものにすぎず、本発明の真の範囲及び趣旨は以下の特許請求の範囲及びその均等物により示されることが意図される。
図1
図2
図3