【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するために、本願発明者らは種々検討を行ない、次のような着想を得た。つまり、COC構造を有するチップの実装において、下側チップの大きさを拡張することによりチップCOC水平水準及びワイヤボンディング領域を確保し、且つ、拡張部又はチップ上の特定の領域にバンプを配置することにより応力に起因する装置の動作不具合を抑制することに想到した。
【0017】
具体的に、本開示の半導体装置は、第1の半導体チップ及び第1の半導体チップの側面から外方に拡張するように設けられた拡張部を含む拡張型半導体チップと、複数のバンプを介して拡張型半導体チップに接続されると共に、第1の半導体チップと電気的に接続された第2の半導体チップとを備え、第1の半導体チップは、第2の半導体チップよりも小さく、拡張部に、少なくとも1つの外部端子が設けられている。
【0018】
このような半導体装置によると、第1の半導体チップが第2の半導体チップよりも小さい(平面視における面積が小さい)場合にも、第1の半導体チップの周囲に拡張部を設けて拡張型半導体チップとすることにより、COC接合の下側チップとして用いることができる。つまり、第2の半導体チップを第1の半導体チップ上にCOC接合する際に、拡張部を利用できるので、水平水準を保つことができる。このことから、半導体装置の製造歩留りが向上し、製造コストが低減される効果も発揮される。
【0019】
また、拡張部に備えられ、半導体装置を実装基板等に接続する際に用いる外部端子(ワイヤボンド用パッド等)により、第2の半導体チップよりも小さい第1の半導体チップをCOC接合の下側チップとして用いる場合にも、ボンディング領域が確保される。
【0020】
また、複数のバンプは、第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間に設けられた第1のバンプと、拡張部と第2の半導体チップとの間に配置された第2のバンプとを含んでいても良い。
【0021】
このようにすると、半導体チップの一部領域、例えば中央付近にバンプが集中した構造となるのを避けることができ、より確実に第2の半導体チップをCOC接合する際の水平水準を確保できる。
【0022】
また、第2の半導体チップにおける拡張部に対向する部分上に第1のパッドが設けられ、拡張部と第2の半導体チップとの間に配置されたバンプは、第2の半導体チップにおける第1のパッドに接続されていても良い。
【0023】
また、拡張部上に第2のパッドが設けられ、拡張部と第2の半導体チップとの間に配置された第2のバンプは、拡張部の第2のパッドに接続されていても良い。
【0024】
拡張部と第2の半導体チップとの間に配置されたバンプについて、以上のどちらであっても良い。更には、拡張部側及び第2の半導体チップ側の両方にパッドが設けられていても良い。尚、拡張部上に位置するバンプは、第1の半導体チップに対して応力を印加することがないので、第1の半導体チップにおける誤動作の原因になるのを避けることができる。これは、製造歩留りの向上、ひいては製造コスト抑制に貢献する。
【0025】
また、第1のバンプと第2のバンプとは異なる高さを有していても良い。
【0026】
このようなバンプの高さの違いは、第2の半導体チップの水平水準を確保するために利用できる。
【0027】
また、第1のバンプは、第1の半導体チップに設けられた第3のパッドに接続され、第1のパッド、第2のパッド及び第3のパッドは凹部を有し、第1のバンプと第2のバンプとは異なる高さを有し、第1のバンプが接続された第3のパッドと、第2のバンプが接続された第1のパッド又は第2のパッドとは凹部の大きさが異なっていても良い。
【0028】
凹部を有するパッドにバンプが形成されている場合に、凹部の大きさが異なると、その上に設けられるバンプの大きさ(高さ等)が異なるようになる。これにより、第1の半導体チップ上と、拡張部上とについてバンプの高さを変えることができ、このことを第2の半導体チップの水平水準を確保するために利用できる。
【0029】
また、バンプの高さ及び拡張部の厚さは、接合時温度及び接合後温度の差による第1の半導体チップ、第2の半導体チップ、拡張部及び実装基板のそれぞれの反り量をもとにして決定されても良い。
【0030】
また、バンプの高さ及び拡張部の厚さは、第1の半導体チップ、第2の半導体チップ、拡張部及び実装基板のそれぞれの線膨張係数を基にして決定されても良い。
【0031】
第2の半導体チップのCOC接合における水平水準を確保するために、このようにしても良い。
【0032】
また、複数のバンプは、第1の半導体チップ及び第2の半導体チップの少なくとも一方におけるトランジスタ配置領域を避けて配置されていても良い。
【0033】
このようにすると、接合時等にバンプに対して加わる外部応力の影響がトランジスタに及ぶのを抑制することができる。この結果、トランジスタの動作特性の変動、複数のトランジスタ間の動作速度のバラツキ等を抑制し、半導体装置の誤動作を抑制することができる。尚、トランジスタ配置領域に対する配置を完全に避けることが最も望ましいが、トランジスタ配置領域に配置されるバンプが存在する場合にも、できるだけこのような配置を避けることによって誤動作を抑制する効果は得られる。
【0034】
また、複数のバンプは、第1の半導体チップ及び第2の半導体チップの少なくとも一方におけるタイミングばらつきによる誤動作の発生が無いセルが配置された領域に配置されており、タイミングばらつきによる誤動作の発生が無いセルは、ESD(electro-static discharge;静電気放電)保護セル、Tieセル、ボーナスセル、面積率調整セル、電源容量セル、入力Tie固定されたセル及びレベルシフタの少なくとも1つであっても良い。
【0035】
これにより、半導体装置の誤動作を抑えることができる。
【0036】
また、複数のバンプのうち少なくとも1つは、第1の半導体チップ及び第2の半導体チップの少なくとも一方におけるスクライブレーン又はシールリング領域に配置されていても良い。
【0037】
また、複数のバンプのうち少なくとも1つは、第1の半導体チップ及び第2の半導体チップの少なくとも一方におけるチップコーナー部セル領域に配置されていても良い。
【0038】
また、複数のバンプのうち少なくとも1つは、第1の半導体チップ及び第2の半導体チップの少なくとも一方における電源配線上に配置されていても良い。
【0039】
このようにすると、接合時等にバンプに対して加わる外部応力の影響がトランジスタに及ぶのを抑制することができる。この結果、トランジスタの動作特性の変動、複数のトランジスタ間の動作速度のバラツキ等を抑制し、半導体装置の誤動作を抑制することができる。
【0040】
ここで、以上に述べた領域とは異なる部分に配置されるバンプが存在する場合にも、そのような配置のバンプをできるだけ減らすことにより、半導体装置の誤動作を抑制する効果が得られる。
【0041】
また、第1の半導体チップ及び第2の半導体チップの両方に関して、以上のようなバンプの配置となっていることがより望ましい。このようにすると、両方のチップに関して誤動作抑制等の効果が得られる。
【0042】
また、複数のバンプは、拡張型半導体チップと第2の半導体チップとを電気的に接続していないダミーバンプを含み、第1の半導体チップと第2の半導体チップとの電気的な接続が行なわれる第1領域よりも外側である第2領域に、ダミーバンプが配置されていても良い。
【0043】
このようにすると、第2の半導体チップの水平水準を確保するためにダミーバンプを利用することができる。ダミーバンプは、拡張部内及び第1の半導体チップ面内の一方又は両方に位置していても良い。
【0044】
また、ダミーバンプは、拡張部と第2の半導体チップとの間に配置された第2のバンプに含まれていても良い。
【0045】
また、第1領域は、第1の半導体チップにおける中央部、第1の半導体チップにおける1つ又は複数の辺に沿った領域、第1の半導体チップにおける角付近の領域及び第1の半導体チップにおける向かい合う一組の辺から距離をおいた帯状の領域の少なくとも1つであっても良い。
【0046】
ダミーバンプにより水平水準を確保することができるので、電気的接続に関わるバンプの配置領域が半導体チップの中央領域であることは必須ではない。
【0047】
また、第1領域は略四角形であり、ダミーバンプは、第1領域の向かい合う一対の辺に沿って形成されていても良い。
【0048】
また、第1領域は略四角形であり、ダミーバンプは、第1領域の4辺に沿って形成されていても良い。
【0049】
また、第1領域は略四角形であり、ダミーバンプは、第1領域の角部に沿って形成されていても良い。
【0050】
ダミーバンプの配置として、このようになっていても良い。
【0051】
また、ダミーバンプは、第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間に配置された第1のバンプに含まれていても良い。
【0052】
また、バンプは、第1の半導体チップ又は第2の半導体チップとの電気的接続を有しないバンプを含んでいても良い。
【0053】
つまり、第1の半導体チップと第2の半導体チップとの固定には寄与しているが、電気的接合には寄与しないバンプが含まれていても良い。このようなバンプも、COC接合の水平水準を確保する効果は有する。
【0054】
また、ダミーバンプは、非金属材料により形成されていても良い。
【0055】
非金属材料としては、例えば樹脂であっても良い。このようなバンプであっても、第2の半導体チップの水平水準を確保することに利用できる。また、金属バンプに対し、剛性等の違いにより、接合時にバンプを介して加わる応力を緩和することができる。尚、金属バンプとする場合には、電気的接続のためのバンプと水平水準を確保するためのバンプとが同じ材料であることから、接合部応力の緩和が可能である。
【0056】
また、拡張部の厚さは、第1の半導体チップの厚さよりも大きくても良い。
【0057】
このようにしても、第2の半導体チップの水平水準を確保するために拡張部を利用することができる。この場合、例えば、拡張部と第2の半導体チップとの間のバンプを他の部分のバンプよりも低くする。
【0058】
また、拡張部の厚さは、第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間の距離と、第1の半導体チップの厚さとを合わせた厚さであっても良い。
【0059】
このようにすると、COC接合時に、拡張部上面に第2の半導体チップの下面が接することになる。このようにしても、水平水準を確保することができる。
【0060】
また、拡張部は、金属材料又は樹脂からなっていても良い。
【0061】
拡張部は、例えばこれらの材料を用いて形成することができる。ここで、特に樹脂を用いた場合、半導体チップよりも剛性が低いことから、応力を小さくすることができる。
【0062】
また、拡張型半導体チップ及び第2の半導体チップを搭載する基板を更に備え、基板は、拡張型半導体チップにおける第2の半導体チップに接合される面とは反対側の面に接合され、外部端子は、ワイヤボンディングパッドであり且つ金属細線を介して基板に接続されていても良い。
【0063】
また、拡張型半導体チップ及び第2の半導体チップを搭載する基板を更に備え、基板は、拡張型半導体チップにおける第2の半導体チップに接合される面とは反対側の面に接合され、外部端子は、ボール電極を介して基板に接続されていても良い。
【0064】
このように、拡張型半導体チップ及び第2の半導体チップは、基板に対し、ワイヤボンディングされるか又はボール電極によって接続され、基板に搭載された半導体装置を構成しても良い。