(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961629
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】過負荷状態の間チョッパ型増幅器における入力漏れを低減するための回路及び方法
(51)【国際特許分類】
H03F 3/70 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
H03F3/70
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-548529(P2013-548529)
(86)(22)【出願日】2012年1月5日
(65)【公表番号】特表2014-502127(P2014-502127A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】US2012020280
(87)【国際公開番号】WO2012094461
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2014年12月22日
(31)【優先権主張番号】12/930,366
(32)【優先日】2011年1月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】アミット ケイ グプタ
(72)【発明者】
【氏名】カーティケヤン サウンダラパンディアン
【審査官】
緒方 寿彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0264970(US,A1)
【文献】
米国特許第07292095(US,B2)
【文献】
米国特許第06515540(US,B1)
【文献】
特開2005−339355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00− 3/45、3/50− 3/52、
3/62− 3/64、3/68− 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョッパ安定化増幅器であって、
(a)第1の増幅器、
(b)第1の入力チョッパ回路であって、第1の入力信号を受け取るように結合される第1の入力と、前記第1の増幅器の第1の入力に結合される第1の出力と、前記第1の増幅器の第2の入力に結合される第2の出力とを有し、前記第1の増幅器の前記第2の入力が第1のフィードバック信号を受け取るように結合され、前記第1の入力チョッパ回路がチョッピングクロックに応答して及びチョップイネーブル信号に応答して動作する、前記第1の入力チョッパ回路、
(c)前記第1のフィードバック信号を生成するため前記第1の増幅器の出力と前記第1の増幅器の前記第2の入力との間に結合される第1のフィードバック抵抗、
(d)前記第1の増幅器の前記第2の入力に結合される第1の端子と所定の電圧を受け取るように結合される第2の端子とを有する利得抵抗、及び
(e)飽和検出回路要素であって、前記第1の増幅器が通常動作モードである場合前記チョップイネーブル信号を生成するように信号経路内の信号レベルを基準と比較するため、及び、前記第1の増幅器が飽和状態に許容できないほど近い場合前記チョップイネーブル信号をディセーブルするため、前記チョッパ安定化増幅器内の前記信号経路に結合される、前記飽和検出回路要素、
を含む、チョッパ安定化増幅器。
【請求項2】
請求項1に記載のチョッパ安定化増幅器であって、前記第1の入力チョッパ回路が、前記第1のチョッパ回路の第2の入力からの前記第1のフィードバック信号のチョップされた表現を前記第1の増幅器の前記第2の入力に結合する、チョッパ安定化増幅器。
【請求項3】
請求項1に記載のチョッパ安定化増幅器であって、チョッピングイネーブル回路を含み、前記チョッピングイネーブル回路が、前記チョッピングクロックを受け取るための第1の入力と、前記チョップイネーブル信号を受け取るためのイネーブル入力と、前記第1の入力チョッパ回路内のチョッピングスイッチを制御するためのイネーブルされたチョッピングクロック信号を生成するための出力とを有するAND演算する回路を含む、チョッパ安定化増幅器。
【請求項4】
請求項1に記載のチョッパ安定化増幅器であって、前記第1の増幅器が、前記第1の増幅器の前記出力に結合される出力チョッパ回路要素を含み、前記チョッパ安定化増幅器の第1の出力信号が、前記第1の増幅器の前記出力に前記出力チョッパ回路要素によって生成される、チョッパ安定化増幅器。
【請求項5】
請求項3に記載のチョッパ安定化増幅器であって、前記チョッピングイネーブル回路が、前記イネーブルされたチョッピングクロック信号の論理補完である、イネーブルされたチョッピングクロック補完信号を生成するための回路要素を含む、チョッパ安定化増幅器。
【請求項6】
請求項4に記載のチョッパ安定化増幅器であって、前記飽和検出回路要素が、
第1のコンパレータであって、第1の基準電圧に結合される第1の入力と、前記第1の出力信号を受け取るように結合される第2の入力と、前記チョッパイネーブル信号が生成される出力を有するOR演算する回路の第1の入力に結合される出力とを有する、前記第1のコンパレータ、及び
第2のコンパレータであって、前記第1の出力信号を受け取るように結合される第1の入力と、第2の基準電圧に結合される第2の入力と、前記OR演算する回路の第2の入力に結合される出力とを有する、前記第2のコンパレータ、
を含む、チョッパ安定化増幅器。
【請求項7】
請求項4に記載のチョッパ安定化増幅器であって、前記飽和検出回路要素が、
第1のコンパレータであって、内蔵オフセットを有し、且つ、前記第1の入力信号に結合される第1の入力と、前記第1のフィードバック信号を受け取るように結合される第2の入力と、前記チョッパイネーブル信号が生成される出力を有するOR演算する回路の第1の入力に結合される出力とを有する、前記第1のコンパレータ、及び
第2のコンパレータであって、前記第1のフィードバック信号を受け取るように結合される第1の入力と、前記第1の入力信号を受け取るように結合される第2の入力と、前記OR演算する回路の第2の入力に結合される出力とを有する、前記第2のコンパレータ、
を含む、チョッパ安定化増幅器。
【請求項8】
請求項6に記載のチョッパ安定化増幅器であって、
前記第1の増幅器が第1の供給電圧及び第2の供給電圧によって電力供給され、
前記チョッパ安定化増幅器が前記第1の供給電圧と前記第2の供給電圧の間で直列に結合される第1、第2、及び第3の抵抗を含む基準回路を含み、前記第1の抵抗が前記第1の供給電圧と前記第2基準電圧の間で結合され、前記第2の抵抗が前記第2の基準電圧と前記第1の基準電圧の間で結合され、前記第3の抵抗が前記第1の基準電圧と前記第2の供給電圧の間で結合される、
チョッパ安定化増幅器。
【請求項9】
請求項6に記載のチョッパ安定化増幅器であって、
前記チョッパ安定化増幅器が、前記第1の増幅器、前記第1の入力チョッパ回路、前記第1のフィードバック抵抗、前記利得抵抗、及び前記飽和検出回路要素を含むチョッパ安定化計装増幅器であり、
前記計装増幅器が更に、
第2の出力信号が生成される出力を有する第2の増幅器、
第2の入力チョッパ回路であって、第2の入力信号を受け取るように結合される第1の入力と、第2のフィードバック信号を受け取るように結合される第2の入力と、前記第2の増幅器の第1の入力に結合される第1の出力と、前記第2の増幅器の第2の入力に結合される第2の出力とを有し、前記チョッピングクロックに応答して及び前記チョップイネーブル信号に応答して動作する、前記第2の入力チョッパ回路、及び
前記第2のフィードバック信号を生成するため前記第2の増幅器の出力と前記第2の入力チョッパ回路の前記第2の入力との間に結合される第2のフィードバック抵抗、
を含み、
前記利得抵抗の前記第2の端子が前記第2の入力チョッパ回路の前記第2の入力に結合され、
前記飽和検出回路要素が第3のコンパレータを含み、前記第3のコンパレータが、前記第2の出力信号を受け取るように結合される第1の入力と、前記第2の基準電圧に結合される第2の入力と、前記OR演算する回路の第3の入力に結合される出力とを有し、
前記飽和検出回路要素が更に第4のコンパレータを含み、前記第4のコンパレータが、前記第1の基準電圧を受け取るように結合される第1の入力と、前記第2の出力信号を受け取るように結合される第2の入力と、前記OR演算する回路の第4の入力に結合される出力とを有する、
チョッパ安定化増幅器。
【請求項10】
請求項8に記載のチョッパ安定化増幅器であって、前記第1の基準電圧が、前記第2の供給電圧及び前記第2の基準電圧よりも約1ミリボルト大きい、チョッパ安定化増幅器。
【請求項11】
請求項5に記載のチョッパ安定化増幅器であって、
前記入力チョッパ回路が第1、第2、第3、及び第4のスイッチを含み、
前記第1のスイッチが、前記イネーブルされたチョッピングクロック信号によって制御され、且つ、第1の端子を有し、更に前記第1の増幅器の前記第2の入力に結合される第2の端子を有し、
前記第2のスイッチが、前記イネーブルされたチョッピングクロック信号によって制御され、且つ、第1の端子を有し、更に前記第1の増幅器の前記第1の入力に結合される第2の端子を有し、
入力差信号が前記第1及び第2のスイッチの前記第1の端子間に印加され、
前記第3のスイッチが、前記イネーブルされたチョッピングクロック補完信号に従って制御され、且つ、前記第1のスイッチの前記第1の端子に結合される第1の端子と、前記第1の増幅器の前記第1の入力に結合される第2の端子とを有し、
前記第4のスイッチが、前記イネーブルされたチョッピングクロック補完信号に従って制御され、且つ、前記第3のスイッチの前記第1の端子に結合される第1の端子と、前記前記第1の増幅器の前記第2の入力に結合される第2の端子とを有する、
チョッパ安定化増幅器。
【請求項12】
請求項9に記載のチョッパ安定化増幅器であって、前記第1及び第2の増幅器が相互コンダクタンス増幅器である、チョッパ安定化増幅器。
【請求項13】
請求項9に記載のチョッパ安定化増幅器であって、前記第1、第2、第3、及び第4のコンパレータが、前記第1及び第2の増幅器より低いオフセット及び高い帯域幅を有する、チョッパ安定化増幅器。
【請求項14】
請求項9に記載のチョッパ安定化増幅器であって、前記所定の電圧が固定基準電圧である、チョッパ安定化増幅器。
【請求項15】
チョッパ安定化増幅器内の入力漏れ電流を低減するための方法であって、
前記チョッパ安定化増幅器が、
増幅器、
入力信号を受け取るように結合される第1の入力と前記増幅器の第1の入力に結合される出力とを有する入力チョッパ回路、及び
フィードバック信号を前記増幅器の第2の入力に結合するように前記増幅器の出力に結合されるフィードバック抵抗、
を含み、
前記チョッパ安定化増幅器が出力信号を生成し、前記入力チョッパ回路がチョッピングクロックに応答して動作し、
前記方法が、
(a)前記チョッパ安定化増幅器を通常モードで動作させるステップ、
(b)前記チョッパ安定化増幅器の信号経路内の信号レベルを基準値と比較することによって前記増幅器が飽和状態に許容できないほど近いかを判定するステップ、及び
(c)前記増幅器が前記飽和状態に許容できないほど近いと判定される場合、前記チョッピングクロックをディセーブルするステップ、
を含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記通常モードにおける前記動作の間前記入力チョッパ回路内のチョッピングスイッチを制御するため前記チョッピングクロック及びチョップイネーブル信号を論理AND演算してイネーブルされたチョッピングクロック信号を生成するステップを含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
ステップ(c)が第1の基準電圧と前記第1の出力信号の差を比較し、前記差が正の場合、前記イネーブルされたチョッピングクロック信号をディセーブルすること、及び前記第1の出力信号と第2の基準電圧の差を比較し、前記差が正の場合、前記イネーブルされたチョッピングクロック信号をディセーブルすること、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記第1の基準電圧が前記増幅器の低側供給電圧よりも約1ミリボルト大きく、前記第2の基準電圧が前記増幅器の高側供給電圧よりも約1ミリボルト小さい、方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、前記イネーブルされたチョッピングクロック信号に応答してイネーブルされたチョッピングクロック補完信号を生成すること、及び前記イネーブルされたチョッピングクロック補完信号に直接応答して前記チョッピングスイッチの一部を制御することを含む、方法。
【請求項20】
低入力漏れ電流を有するチョッパ安定化増幅器であって、
前記チョッパ安定化増幅器が、
増幅器、
入力信号を受け取るように結合される第1の入力と前記増幅器の第1の入力に結合される出力とを有する入力チョッパ回路、及び
フィードバック信号を前記増幅器の第2の入力に結合するように前記増幅器の出力に結合されるフィードバック抵抗、
を含み、
前記チョッパ安定化増幅器が出力信号を生成し、
前記入力チョッパ回路が、チョッピングクロックに応答して及びチョップイネーブル信号に応答して動作し、
前記チョッパ安定化増幅器が、
(a)前記チョッパ安定化増幅器を通常モードで動作させるための手段、
(b)前記チョッパ安定化増幅器の信号経路内の信号レベルを基準値と比較することによって前記増幅器が飽和状態に許容できないほど近いかを判定するための手段、及び
(c)前記増幅器が前記飽和状態に許容できないほど近いと判定される場合、前記チョッピングクロックをディセーブルするための手段、
を含む、チョッパ安定化増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して、チョッパ安定化増幅器に関し、より詳細には、出力過負荷状態の間入力漏れ電流が極めて小さくなるチョッパ安定化増幅器及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1Aを参照すると、従来のチョッパ安定化INA(計装増幅器)1Aがオペアンプ3を含み、オペアンプ3は、導体5によって入力チョッパ2の1つの出力に結合される(+)入力を有する。増幅器(3)の(−)入力は、導体7によって入力チョッパ回路2の別の出力に結合される。入力チョッパ2の1つの入力が、入力電圧V
IN+を受け取るように導体4によって結合される。入力チョッパ2の別の入力が、導体8及び抵抗値R2のフィードバック抵抗9によって増幅器3の出力6に結合される。Cpと表される様々な寄生容量が、それぞれ、導体5及び7に結合される。同様に、INA 1Aはオペアンプ11も含み、オペアンプ11は、導体15によって入力チョッパ10の1つの出力に結合される(+)入力を有する。増幅器11の(−)入力は、導体13によって入力チョッパ10の別の出力に結合される。入力チョッパ10の1つの入力が、入力電圧V
IN−を受け取るように導体12によって結合される。入力チョッパ10の別の入力が、導体18及び抵抗値R2のフィードバック抵抗16によって増幅器11の出力14に結合される。
図1Aの入力チョッパ2及び10は、続いて説明する
図1Bの入力チョッパ2に類似し得ることに留意されたい。抵抗値R1の抵抗17が、導体8と18の間に結合される。様々な寄生容量Cpが、それぞれ、導体15及び13に結合される。入力チョッパ2及び10は、チョッパクロック信号CHOP_CLKによってクロックされる。入力導体4と12の間に印加される差動入力電圧ΔV
INはV
IN+−V
IN−に等しい。
【0003】
増幅器3及び11はそれぞれ、続いて説明する
図1Bの出力チョッパ27に類似し得る、従来の出力チョッパ回路を含むことに留意されたい。増幅器3の出力導体6は計装増幅器の出力電圧V
OUT+を伝導させ、増幅器11の出力導体14は計装増幅器の出力電圧V
OUT−を伝導させる。そのため、チョッパ安定化INA 1Aによって生成される差動入力電圧ΔV
OUTはV
OUT+−V
OUT−に等しい。増幅器3及び11のそれぞれの出力チョッパ回路要素27は、チョッパクロック信号CHOP_CLKによってクロックされる。
【0004】
図1Bは、2007年11月6日にBurtらに付与され、本願と同じ出願人が所有する、発明の名称「Notch Filter for
Ripple Reduction in Chopper Stabilized Amplifiers」の特許第7,292,095号の
図2Aに示されている従来のチョッパ安定化増幅器の概略図である。
図1Bの入力チョッパ2は(+)入力端子を含み、(+)入力端子は、入力電圧V
INPUT+を受け取り、スイッチ41A及び44Aの各々の1つの端子に接続される。入力チョッパ2は(−)入力端子も含み、(−)入力端子は、入力電圧V
INPUT−を受け取り、スイッチ42A及び43Aの各々の1つの端子に接続される。スイッチ43A及び44Aは内部チョッピングクロック信号Φによって制御され、スイッチ41A及び42Aは内部チョッピングクロック補完信号/Φによって制御される。
図1BのΦは、
図1AのCHOP_CLKと同じとし得るか、又はそれから導出し得ることに留意されたい。
【特許文献1】米国特許番号第7,292,095号
【0005】
相互コンダクタンス増幅器3などの適切な増幅器の(+)入力は、スイッチ43A及び41Aの各々の第2の端子に接続され、相互コンダクタンス増幅器3の(−)入力は、スイッチ42A及び44Aの各々の第2の端子に接続される。相互コンダクタンス増幅器3の(+)出力は、導体56によって出力チョッパ回路27のスイッチ42B及び43Bの各々の第1の端子に結合され、相互コンダクタンス増幅器3の(−)出力は、導体57によって出力チョッパ回路27のスイッチ41B及び44Bの各々の第1の端子に結合される。
図1Bに示すチョッパ安定化増幅器の出力導体58が、スイッチ43B及び41Bの各々の第2の端子に接続され、出力電圧V
OUTPUT+を伝導させ、チョッパ安定化増幅器の別の出力導体59が、スイッチ42B及び44Bの各々の第2の端子に接続され、出力電圧V
OUTPUT−を伝導させる。入力チョッパ2及び出力チョッパ27内のスイッチは、例えばCMOS送信ゲートによるなど、様々な方法で実装され得る。(出力チョッパ27の動作は、チョッパ安定化増幅器の入力漏れ電流に実質的な影響を与えないことに留意されたい。)
【0006】
図1Bに示すチョッパ安定化増幅器は、下記文献の
図4に示されている従来のチョッパと本質的に等価である。Sanduleanuの文献の
図5は、出力チョッピングスイッチが相互コンダクタンス増幅器の折り返しカスコード段の後ではなくその内部に組み込まれる、別の類似の回路を示している。Sanduleanuの文献の関連する文章では、いくつかのアプリケーションについて、
図4の実装形態に対する
図5の実装形態の利点が説明されている。
【非特許文献1】“A Low Noise, LowResidual Offset, Chopped Amplifier for Mixed Level Applications” byM. Sanduleanu, A. van Tuigal, R. Wasasenaar, and H. Wallinga, Electronics, Circuitsand Systems, IEEE International Conference, Septermber 7-10 in Lisboa,Portugal, ISBN 0-7803-5008-1
【0007】
図1Aのチョッパ安定化INA 1Aの通常動作の場合、増幅器の利得が大きいと仮定すると、下記の2つの式が有効である。
式1:DV
OUT 1(2R2/R1)DV
IN
ここで、Δ
VOUT=V
OUT+−V
OUT−、及びΔV
IN=V
IN+−V
IN−である。
式2:ΔV=0
チョッパ安定化INA 1Aの許容入力ダイナミックレンジは、式1の利得項に依存し、この利得項は抵抗R1及びR2によって決まる。式1及び2が有効である通常動作条件下では、入力漏れ電流I
LEAKAGEは極めて小さく、例えば数ピコアンペアである。しかし、ΔV
INがチョッパ安定化INA 1Aのダイナミック入力電圧範囲限界を超えると、チョッパ安定化INA 1Aの出力は「飽和」する。そして式2が有効でなくなり、下記の式に従って、漏れ電流I
LEAKAGEが極めて大きくなる。
式3:I
LEAKAGE=2Cp×ΔV×f
CHOP
ここで、f
CHOPは入力チョッピング周波数である。式3によって与えられるI
LEAKAGEの値はマイクロアンペア範囲であり得、多くのアプリケーションにおいて大き過ぎて許容されない。例えば、或る量の電流、例えば1マイクロアンペア、より大きな電流が人体に流れ込んだり人体から流れ出したりすることが許容されない医療安全仕様がある。診断心電図機器用のANSI/AAMI EC11(米国標準規格/医療器具開発協会(American National
Standard/Association for the Advancement of Medical Instrumentation))規格では、人体に流れ込む又は人体から流れ出す電流は100nA未満に制限されている。
【0008】
生体電位測定では、電極とチョッパ安定化増幅器の入力との電気接続が緩んでいるか否かを判定することが重要である。そのために、人体に取り付けられた電極に(数十ナノアンペアの桁の)極めて小さい電流が注入される。この考え方は、開放電極の場合、増幅器の入力が供給電圧レールに達し、これを検出し得るというものである。下記で説明するように、飽和の間チョッパ安定化増幅器内の過大な漏れ電流はこの検出を妨げる。電極の接続が外されると、増幅器の入力は供給電圧レールに向かって移動し始める。これは、利得が1よりも大きい場合、チョッパ安定化増幅器の出力を飽和させ得る。飽和の間I
LEAKAGEが、人体に流れ込むか又は流れ出す電流より大きな値まで増加すると、入力信号が供給電圧に充分に近くならないことがあるため、人体から電極が外れたことの検出の信頼性が損なわれる。したがって、出力過負荷状態の間でも漏れ電流を低くしておくことが不可欠である。
【0009】
増幅器の通常動作の間、チョッパ安定化が用られない場合、典型的には1ピコアンペア未満の極めて小さい入力電流しか流れない。しかし、増幅器がチョッパ安定化されると、I
LEAKAGEは、通常動作中は数ピコアンペアに過ぎないほど小さくなり得るが、増幅器の過負荷状態(本明細書では飽和状態とも称する)が生じると、I
LEAKAGEのこの値は数マイクロアンペアまで(例えば百万倍よりも大きく)増加し得る。
【0010】
本明細書で用いる増幅器の「過負荷」又は「飽和」という用語は、増幅器入力電圧ΔV
INと増幅器利得の積がV
DD−V
SSを超える状態を指す。増幅器を含むほとんどのシステムは、増幅器出力が供給電圧を超えようとする、すなわち、増幅器出力電圧が「飽和」している状況を補正しようとする。多くの場合、これは、飽和状態を阻止又は是正するように増幅器の利得を1まで低減することによって実現される。これを実現するための従来の技術の一つは、利得制御回路要素を用いて増幅器の利得を1まで低減することである。多くの場合、システム内のDSP(デジタル信号プロセッサ)が、まず、増幅器出力電圧を表すデジタル化されたデータから飽和状態を認識する。次いで、DSPは、飽和状態を取り除くためこの増幅器の利得を低減するように利得制御回路要素に制御信号を供給する。
【0011】
しかし、現在利用可能なチョッパ安定化増幅器のユーザは、増幅器の出力のデジタル化された表現しか見ず、しかも、それを飽和状態のかなり後になってからしか見ない。したがって、DSPは、デジタル化された出力を観察しながら、飽和状態のかなり後になってからしか適切な是正措置を講じない。遺憾ながら、増幅器の利得を低減することによって増幅器の過負荷/飽和状態を阻止するための上記の技術は、I
LEAKAGEを低減する方法としては許容されない。
【0012】
そのため、増幅器の過負荷状態の間の入力漏れ電流が極めて小さいチョッパ安定化増幅器に対する要求が満たされていない。
【0013】
確立された規格に従って最大入力漏れ電流が設定される医療機器のアプリケーションを含めて、高入力インピーダンスを有する増幅器を必要とする任意のアプリケーションに要求される極めて小さい入力漏れ電流の仕様を満たし得るチョッパ安定化増幅器に対する要求も満たされていない。
【0014】
増幅器の過負荷/飽和状態の間生じる入力漏れ電流の増加を自動的に制限するチョッパ安定化増幅器に対する要求も満たされていない。
【0015】
ユーザが、増幅器の過負荷/飽和状態を検出し、過大な入力漏れ電流を阻止するための是正措置を講じる必要性のない、チョッパ安定化増幅器に対する要求も満たされていない。
【発明の概要】
【0016】
本発明の一つの目的は、増幅器の過負荷状態の間極めて小さい入力漏れ電流を提供するためのチョッパ安定化増幅器及び方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、確立された規格に従って最大入力漏れ電流が設定される医療機器のアプリケーションを含めて、高入力インピーダンスを有する増幅器を必要とする任意のアプリケーションに要求される極めて小さい入力漏れ電流の仕様を満たし得るチョッパ安定化増幅器及び方法を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、増幅器の過負荷/飽和状態の間生じる入力漏れ電流の増加を自動的に制限するチョッパ安定化増幅器を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、ユーザが、増幅器の過負荷/飽和状態を検出し、過大な増幅器の入力漏れ電流を阻止するための是正措置を講じる必要性がない、チョッパ安定化増幅器を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、飽和又は飽和に近い状態を内部で検出し、且つ、飽和又は飽和に近い状態の検出に応答して内部入力信号チョッピング動作を自動的にディセーブルし得る、集積回路チョッパ安定化増幅器を提供することである。
【0021】
一実施形態に従って簡単に説明すると、本発明はチョッパ安定化増幅器(20A)を提供し、チョッパ安定化増幅器は、増幅器(3)、入力チョッパ回路(2A)であって、入力信号(V
IN+)を受け取る第1の入力(4)と増幅器の第1の入力に結合される出力(5)とを有する入力チョッパ回路、及びフィードバック抵抗(9)であって、入力チョッパの第2の入力(8)及び第2の出力(7)を介して増幅器の第2の入力にフィードバック信号(V
FB+)を結合するように増幅器の出力(6)に結合されるフィードバック抵抗を含む。入力チョッパは、チョッピングクロック(CHOP_CLK)に応答して動作する。増幅器が飽和状態に許容できないほど近づくと、チョッピングクロック(CHOP_CLK)がディセーブルされてチョッパ安定化増幅器の入力漏れ電流(I
LEAKAGE)が減少する。
【0022】
本発明の一実施形態では、本発明はチョッパ安定化増幅器(20A)を提供し、チョッパ安定化増幅器は、第1の増幅器(3)、及び第1の入力チョッパ回路(2A)であって、第1の入力信号(V
IN+)を受け取るように結合される第1の入力(4)と、第1の増幅器の第1の入力(+)に結合される第1の出力(5)と、第1の増幅器の第2の入力(−)に結合される第2の出力(7)とを有する第1の入力チョッパ回路を含む。第1の増幅器の第2の入力(−)は、第1のフィードバック信号(V
FB+)を受け取るように結合される。第1のチョッパ入力回路は、チョッピングクロック(CHOP_CLK)に応答して、及びチョップイネーブル信号(CHOP_EN)に応答して動作する。第1のフィードバック抵抗(9)が、第1の増幅器の出力(6)と第1の増幅器の前記第2の入力(−)との間に結合されて第1のフィードバック信号(V
FB+)を生成する。利得抵抗(17)が、第1の増幅器の第2の入力(−)に結合される第1の端子と、所定の電圧を受け取るように結合される第2の端子(18)とを有する。飽和検出回路要素(52−1)がチョッパ安定化増幅器内の信号経路に結合され、信号経路内の信号レベル(例えばV
IN+又はV
OUT+)と基準とを比較して、増幅器が通常動作モードである場合チョップイネーブル信号(CHOP_EN)を生成し、第1の増幅器が飽和状態に許容できないほど近い場合チョップイネーブル信号(CHOP_EN)をディセーブルする。一実施形態では、第1の入力チョッパ回路は、第1のチョッパ回路の第2の入力(8)からの第1のフィードバック信号(V
FB+)のチョップされた表現を第1の増幅器の第2の入力(−)に結合する。
【0023】
一実施形態では、チョッピングイネーブル回路(34)が、AND演算する回路(54)を含み、AND演算する回路は、チョッピングクロック(CHOP_CLK)を受け取るための第1の入力と、チョップイネーブル信号(CHOP_EN)を受け取るためのイネーブル入力と、第1の入力チョッパ回路(2A)内のチョッピングスイッチ(41、42、43、44)を制御するためのイネーブルされたチョッピングクロック信号(Φ)を生成するための出力とを有する。
【0024】
一実施形態では、第1の増幅器(3)は、第1の増幅器の出力(6)に結合される出力チョッパ回路要素(
図1Bの27)を含み、チョッパ安定化増幅器(20A)の第1の出力信号(V
OUT+)が第1の増幅器の出力で出力チョッパ回路要素によって生成される。
【0025】
一実施形態では、チョッピングイネーブル回路(34)は、イネーブルされたチョッピングクロック(Φ)の論理補完である、イネーブルされたチョッピングクロック補完信号(/Φ)を生成するための回路要素(55)を含む。
【0026】
一実施形態では、飽和検出回路要素(
図2の52−1)は第1のコンパレータ(23)を含み、第1のコンパレータは、第1の基準電圧(V
33)に結合される第1の入力(+)と、第1の出力信号(V
OUT+)を受け取るように結合される第2の入力(−)と、チョッパイネーブル信号(CHOP_EN)が生成される出力(21)を有するOR演算する回路(22)の第1の入力に結合される出力とを有する。第2のコンパレータ(25)が、第1の出力信号(V
OUT+)を受け取るように結合される第1の入力(+)と、第2の基準電圧(V
32)に結合される第2の入力(−)と、OR演算する回路の第2の入力に結合される出力とを有する。
【0027】
一実施形態では、飽和検出回路要素(
図4の52−2)は第1のコンパレータ(25)を含み、第1のコンパレータは、内蔵オフセット(V
OS)を有し、且つ、第1の入力信号(V
IN+)に結合される第1の入力(+)と、第1のフィードバック信号(V
FB+)を受け取るように結合される第2の入力(−)と、OR演算する回路(22)の第1の入力に結合される出力とを有する。OR演算する回路は、チョッパイネーブル信号(CHOP_EN)が生成される出力(21)を有する。第2のコンパレータ(24)が、第1のフィードバック信号(V
FB+)を受け取るように結合される第1の入力(+)と、第1の入力信号(V
IN+)を受け取るように結合される第2の入力(−)とを有し、更に、OR演算する回路の第2の入力に結合される出力を有する。
【0028】
一実施形態では、第1の増幅器(3)は、第1の供給電圧(V
DD)及び第2の供給電圧(V
SS)によって電力供給され、チョッパ安定化増幅器(20A)は基準回路を含み、基準回路は、第1の供給電圧と第2の供給電圧の間で直列に結合される第1の抵抗(29)、第2の抵抗(30)、及び第3の抵抗(31)を含む。第1の抵抗は第1の供給電圧と第2基準電圧(V
32)の間で結合され、第2の抵抗は第2の基準電圧と第1の基準電圧(V
33)の間で結合され、第3の抵抗は第1の基準電圧と第2の供給電圧の間で結合される。
【0029】
一実施形態では、チョッパ安定化増幅器は、第1の増幅器(3)、第1の入力チョッパ回路(2A)、第1のフィードバック抵抗(9)、利得抵抗(17)、及び飽和検出回路要素(52−1)を含むチョッパ安定化計装増幅器(20−1)である。チョッパ安定化計装増幅器は、第2の出力信号(V
OUT−)が生成される出力(14)を有する第2の増幅器(11)、及び第2の入力チョッパ回路(10A)も含む。第2の入力チョッパ回路は、第2の入力信号(V
IN−)を受け取るように結合される第1の入力(12)と、第2のフィードバック信号(V
FB−)を受け取るように結合される第2の入力(18)と、第2の増幅器の第1の入力(+)に結合される第1の出力(15)と、第2の増幅器の第2の入力(−)に結合される第2の出力(13)とを有する。第2の入力チョッパ回路は、チョッピングクロック(CHOP_CLK)に応答して及びチョップイネーブル信号(CHOP_EN)に応答して動作する。第2のフィードバック抵抗(16)が、第2の増幅器の出力(14)と第2の入力チョッパ回路の第2の入力の間に結合されて第2のフィードバック信号(V
FB−)を生成する。利得抵抗の第2の端子は第2の入力チョッパ回路の第2の入力に結合される。飽和検出回路要素(
図2の52−1)は第3のコンパレータ(24)を含み、第3のコンパレータは、第2の出力信号(V
OUT−)を受け取るように結合される第1の入力(+)と、第2の基準電圧(V
32)に結合される第2の入力(−)と、OR演算する回路(22)の第3の入力に結合される出力とを有する。飽和検出回路要素は第4のコンパレータ(26)も含み、第4のコンパレータは、第1の基準電圧(V
33)を受け取るように結合される第1の入力(+)と、第2の出力信号(V
OUT−)を受け取るように結合される第2の入力(−)と、OR演算する回路の第4の入力に結合される出力とを有する。
【0030】
一実施形態では、入力チョッパ回路(2A)は、第1のスイッチ(44A)、第2のスイッチ(43A)、第3のスイッチ(41A)、及び第4のスイッチ(42A)を含み、第1のスイッチは、イネーブルされたチョッピングクロック信号(Φ)によって制御され、且つ、第1の端子(55)を有し、更に、第1の増幅器(3)の第2の入力(−)に結合される第2の端子を有する。第2のスイッチは、イネーブルされたチョッピングクロック信号(Φ)によって制御され、且つ、第1の端子(51)を有し、更に、第1の増幅器の第1の入力(+)に結合される第2の端子を有する。入力差信号(例えばΔV又はΔV
IN)が第1及び第2のスイッチの第1の端子間に印加される。第3のスイッチは、イネーブルされたチョッピングクロック補完信号(/Φ)に従って制御され、且つ、第1のスイッチの第1の端子に結合される第1の端子と、第1の増幅器の第1の入力(+)に結合される第2の端子とを有する。第4のスイッチは、イネーブルされたチョッピングクロック補完信号(/Φ)に従って制御され、且つ、第3のスイッチの第1の端子に結合される第1の端子と、前記第1の増幅器の第2の入力(−)に結合される第2の端子とを有する。
【0031】
一実施形態では、第1の増幅器(3)及び第2の増幅器(11)は相互コンダクタンス増幅器である。
【0032】
一実施形態では、第1のコンパレータ(23)、第2のコンパレータ(25)、第3のコンパレータ(24)、及び第4のコンパレータ(26)は、第1の増幅器(3)及び第2の増幅器(11)より低いオフセット及び高い帯域幅を有する。
【0033】
一実施形態では、所定の電圧(18)は固定基準電圧である。
【0034】
一実施形態では、本発明は、チョッパ安定化増幅器(20A)内の入力漏れ電流(I
LEAKAGE)を低減するための方法を提供し、チョッパ安定化増幅器は、増幅器(3)、入力チョッパ回路(2A)であって、入力信号(V
IN+)を受け取るように結合される第1の入力(4)と増幅器の第1の入力(+)に結合される出力(5)とを有する入力チョッパ回路、及びフィードバック信号(V
FB+)を増幅器の第2の入力(−)に結合するように増幅器の出力(6)に結合されるフィードバック抵抗(9)を含む。チョッパ安定化増幅器は出力信号(V
OUT+)を生成し、入力チョッパ回路はチョッピングクロック(CHOP_CLK)に応答して動作する。この方法は、チョッパ安定化増幅器を通常モードで動作させること、チョッパ安定化増幅器の信号経路内の信号レベル(例えばV
OUT+又はV
IN+)を基準値(例えばV
32、V
33、又はV
OS)と比較することによって増幅器が飽和状態に許容できないほど近いかを判定すること、及び増幅器が飽和状態に許容できないほど近いと判定される場合チョッピングクロック(CHOP_CLK)をディセーブルすることを含む。
【0035】
一実施形態では、この方法は、チョッピングクロック(CHOP_CLK)及びチョップイネーブル信号(CHOP_EN)を論理AND演算して、イネーブルされたチョッピングクロック信号(Φ)を生成して、通常モードにおける動作の間入力チョッパ回路(2A)内のチョッピングスイッチ(41A、42A、43A、44A)を制御することを含む。
【0036】
一実施形態では、この方法は、第1の基準電圧(V
33)と出力信号(V
OUT+)の差を比較し、この差が正の場合、イネーブルされたチョッピングクロック信号(Φ)をディセーブルすること、及び第1の出力信号(V
OUT+)と第2の基準電圧(V
32)の差を比較し、この差が正の場合、イネーブルされたチョッピングクロック信号(Φ)をディセーブルすることを含む。
【0037】
一実施形態では、本発明は、低入力漏れ電流(I
LEAKAGE)を有するチョッパ安定化増幅器(20A)を提供する。チョッパ安定化増幅器は、増幅器(3)、入力チョッパ回路(2A)であって、入力信号(V
IN+)を受け取るように結合される第1の入力(4)と増幅器の第1の入力(+)に結合される出力(5)とを有する入力チョッパ回路、及びフィードバック抵抗(9)であって、フィードバック信号(V
FB+)を増幅器の第2の入力(−)に結合するように増幅器の出力(6)に結合されるフィードバック抵抗を含む。チョッパ安定化増幅器は出力信号(V
OUT+)を生成する。第1のチョッパ入力回路は、チョッピングクロック(CHOP_CLK)に応答して及びチョップイネーブル信号(CHOP_EN)に応答して動作する。チョッパ安定化増幅器は、チョッパ安定化増幅器を通常モードで動作させるための手段(34、2A、3)、チョッパ安定化増幅器(20A)の信号経路内の信号レベル(例えばV
OUT+又はV
IN+)を基準値(例えばV
32、V
33、又はV
OS)と比較することによって増幅器が飽和状態に許容できないほど近いかを判定するための手段(例えば52−1又は52−2)、及び増幅器が飽和状態に許容できないほど近いと判定される場合、チョッピングクロック(CHOP_CLK)をディセーブルするための手段(22、21)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1A】従来のチョッパ安定化計装増幅器のブロック図である。
【0039】
【
図1B】従来のチョッパ安定化増幅器の基本的概略図である。
【0040】
【0041】
【
図3】
図2の入力チョッパ2Aに含まれるチョッピングクロックイネーブル回路要素の論理図である。
【0042】
【発明を実施するための形態】
【0043】
図2を参照すると、チョッパ安定化計装増幅器(INA)20−1は「上側の」チョッパ安定化増幅器20Aを含み、チョッパ安定化増幅器20Aは、入力チョッパ2A、増幅器3、及び出力チョッパ27Aを含む。INA20−1は「下側の」チョッパ安定化増幅器20Bも含み、チョッパ安定化増幅器20Bは、入力チョッパ10A、増幅器11、及び出力チョッパ28Aを含む。増幅器3及び11は各々、先に説明した
図1Bの出力チョッパ27と本質的に同じとし得る出力チョッパ回路を含む。入力チョッパ2Aも、
図1Bの入力チョッパ2と本質的に同じに実装し得、特定のアプリケーション要件に応じて、
図2の入力チョッパ2と増幅器3の組合せは、前述の非特許文献1のM. Sanduleanu、A. van Tuigal、R. Wasasenaar、及びH. Wallingaによる「A Low Noise, Low
Residual Offset, Chopped Amplifier for Mixed Level Applications」の
図4に示される、入力チョッパ、折り返しカスコード増幅器、及び出力チョッパと同じとし得る。つまり、
図2の入力チョッパ2Aは
図1Bの入力チョッパ2と本質的に同じとし得、
図2の増幅器3の増幅回路要素はSanduleanuの文献の
図4に示される差動入力段及び折り返しカスコード回路と本質的に同じとし得、
図2の増幅器3内の出力チョッパは
図1Bの出力チョッパ27と本質的に同じとし得る。
【0044】
或いは、
図2の増幅器3は、Sanduleanuの文献の
図5に示される差動入力段及び折り返しカスコード段と本質的に同じとし得、この場合、入力チョッパ2Aは
図1Bの入力チョッパ2と本質的に同じであり、
図2の増幅器3内の増幅回路要素及び出力チョッパは、Sanduleanuの文献の
図5に示される差動入力段並びに上側及び下側の内蔵出力チョッパ回路を備えた折り返しカスコード回路と本質的に同じである。
【0045】
入力チョッパ2Aの1つの入力は、入力電圧V
IN+を受け取るように導体4によって結合される。増幅器3は、その(+)入力が導体5によって入力チョッパ2Aの1つの出力に結合される。増幅器3の(−)入力は、導体7によって入力チョッパ2Aの別の出力に結合される。入力チョッパ2Aの別の入力は導体8上のフィードバック信号V
FB+を受け取り、導体8はフィードバック抵抗R2によって増幅器3の出力6に結合される。寄生容量Cpが導体5及び7に結合される。入力漏れ電流I
LEAKAGEが入力導体4を介して流れる。
【0046】
同様に、チョッパ安定化増幅器20Bにおいて、入力チョッパ10Aの1つの入力が、入力電圧V
IN−を受け取るように導体12によって結合される。前述の増幅器3と同じとし得る増幅器11は、その(+)入力が導体15によって前述の入力チョッパ2Aと同じとし得る入力チョッパ10Aの1つの出力に結合される。増幅器11の(−)入力は、導体13によって入力チョッパ10Aの別の出力に結合される。入力チョッパ10Aの別の入力は導体18上のフィードバック信号V
FB−を受け取り、導体18は、抵抗値R2のフィードバック抵抗16によって増幅器11の出力14に結合される。入力漏れ電流I
LEAKAGEが入力導体12を介して流れる。利得抵抗R1が導体8と18の間に結合される。寄生容量Cpが導体15及び13に結合される。
【0047】
図3に示すように、入力チョッパ2A及び10Aは、チョッパクロック信号CHOP_CLK及びチョッパイネーブル信号CHOP_ENに応答して生成されるイネーブルされたチョッパクロック信号Φによってクロックされる。
図3で、チョッピングクロックイネーブル回路34は、1つの入力がチョッピングクロックCHOP_CLKを受け取るように結合され、別の入力がチョッピングクロックイネーブル信号CHOP_ENを受け取るように結合されるANDゲート54を含む。ANDゲート54の出力は、イネーブルされた内部チョッピングクロック信号Φ(
図1B参照)を生成し、また、イネーブルされた内部論理チョッピングクロック補完信号/Φを生成するインバータ55の入力にも接続される。
図3に示すチョッピングクロックイネーブル回路34は、外付けとしてもよいし、入力チョッパ2A及び10Aの各々に含まれてもよい。同様に、出力チョッパ27についても、チョッピングクロックイネーブル回路34は増幅器3及び11の各々に含まれ、それによって、入力チョッパ2A及び10Aの各々で必要とされ、増幅器3及び11(
図1B参照)の各々に含まれる出力チョッパ27でも必要とされる、内部チョッピング信号Φ及びその論理補完信号/Φが生成される。
【0048】
図2で、増幅器3の出力導体6はチョッパ安定化増幅器20−1の出力電圧V
OUT+を伝導させ、増幅器11の出力導体14はチョッパ安定化増幅器20−1の出力電圧V
OUT−を伝導させる。
【0049】
チョッパ安定化INA20−1は、INA20−1が飽和又は過負荷状態になる時点又はその状態に近くなる時点をV
OUT+及びV
OUT−の値から判定する飽和検出回路52−1を含む。この状態が検出されると、飽和検出回路52−1は、入力チョッパ2A及び10A(並びに前述の出力チョッパ27)によるチョッピング動作をディセーブルするように動作し、それによって前述のI
LEAKAGEの大きな増加を阻止する。こうしないと飽和状態の間I
LEAKAGEが大きく増加してしまう。飽和検出回路52−1は、4つのコンパレータ23、24、25、26、NORゲート22、及び電圧基準回路を含み、電圧基準回路は、V
DDとV
SSの間で直列に結合される抵抗29、30、及び31を含む。抵抗29はV
DDと導体32の間に接続され、抵抗30は導体32と導体33の間に接続され、抵抗31は導体33とV
SSの間に接続される。抵抗29、30、及び31の抵抗値は、例えば、それぞれ、xR、R、及びxRとし得、ここでxは少数(small fraction)である。コンパレータ23の(+)及び(−)入力は、それぞれ、導体33上のV
33及びV
OUT+に結合される。同様に、コンパレータ24の(+)及び(−)入力は、それぞれ、V
OUT−及び導体32上のV
32に結合される。コンパレータ25の(+)及び(−)入力は、それぞれ、V
OUT+及びV
32に結合される。コンパレータ26の(+)及び(−)入力は、それぞれ、V
33及びV
OUT−に結合される。コンパレータ23、24、25、及び26の出力は、それぞれ、NORゲート22の4つの入力に接続される。コンパレータ23、24、25、及び26は、好ましくは、増幅器3及び11より低いオフセット及び高い帯域幅を有するように設計される。チョッパイネーブル信号CHOP_ENは、NORゲート22によって導体21上に生成される。
【0050】
チョッパ安定化INA20−1の正常動作では、V
OUT+及びV
OUT−がともに、V
DDよりも約100ミリボルト以上低く、V
SSよりも約100ミリボルト以上高くなければならず、INA20−1の出力は、V
OUT+又はV
OUT−のいずれかがV
DD又はV
SSのいずれかから100ミリボルト以内である場合「範囲外」であるとみなされる。したがって、抵抗29、30、及び31は、それぞれ、抵抗値xR、R、及びxRであり得、ここで、xは、導体32上の電圧V
32がV
DD−100ミリボルトにほぼ等しくなり、且つ、導体33上の電圧V
33がV
SS+100ミリボルト(或いはINA20−1が飽和状態にあるか又はそれに近い状態にあることを示す任意の他の電圧)にほぼ等しくなるように選択される。飽和検出回路52−1が飽和状態を検出すると、飽和検出回路52−1は、チョッパ安定化INA20−1の出力V
OUT+及び/又はV
OUT−が範囲外である場合は必ず入力チョッパ2A及び10Aの動作をディセーブルするように動作する。
【0051】
チョッパ安定化INA20−1の通常動作の間、増幅器3が過負荷又は飽和状態でない限り、フィードバック抵抗9及び導体8を介するフィードバックループによって入力チョッパ2Aへの入力電圧ΔVがゼロにされる。同様に、増幅器11が過負荷又は飽和状態でない限り、通常動作の間、フィードバック抵抗16及び導体18を介するフィードバックループによって入力チョッパ10Aへの入力電圧ΔVがゼロにされる。しかし、飽和/過負荷状態中では、各電圧ΔV及び対応する各入力漏れ電流I
LEAKAGEは、式3によって求められ、極めて大きくなり得、例えば前述の医療機器規格による約1マイクロアンペア要件よりも大きくなり得る。
【0052】
このように、飽和検出回路52−1の基本的動作により、
図3のチョッパイネーブル回路34は、V
OUT+又はV
OUT−のいずれかがV
DD又はV
SSのいずれかから約100ミリボルト以内になるときはいつでも、内部チョッピング信号Φ及びその内部論理補完信号/Φの生成を停止し、それによって、入力チョッパ2A及び10Aの入力チョッピング動作がディセーブルされ、I
LEAKAGEが過大にならないようにされる(更に、出力チョッパ27A及び28Aの出力チョッピング動作もディセーブルされる)。
【0053】
図4は別のチョッパ安定化INA20−2を示し、チョッパ安定化INA20−2は、
図2と同様に、入力チョッパ2A及び増幅器3を含む第1のチョッパ安定化増幅器20Aを含み、入力チョッパ10A及び増幅器11を含む第2のチョッパ安定化増幅器20Bも含む。
図2と同様に、入力チョッパ回路2A及び10Aの両方、並びに増幅器3及び11の各々に含まれる出力チョッパ回路27は、
図3のイネーブル回路34を用いて、チョッパイネーブル信号CHOP_ENによってイネーブルされた後、チョッパクロック信号CHOP_CLKに応答してクロックされる。
【0054】
図4のチョッパ安定化INA20−2は飽和検出回路52−2を含み、飽和検出回路52−2は、INA20−2が飽和状態になる時点又はそれに近くなる時点を入力電圧V
IN+及びV
IN−から判定し、それにしたがって、入力チョッパ2A及び10Aによる入力信号チョッピング、並びに増幅器3及び11の各々における出力チョッパ27による出力信号チョッピングをディセーブルして、前述のI
LEAKAGEの大きな増加が生じないようにする。そうしないと、飽和の間I
LEAKAGEが大きく増加してしまう。
【0055】
飽和検出回路52−2は、4つのコンパレータ23、24、25、26、及びNORゲート22を含む。各コンパレータ23、24、25、及び26は、コンパレータの(+)入力に接続される(−)端子を有する電圧源V
OSとして
図4でモデル化される内蔵オフセット電圧V
OSを有するように設計される。各電圧源V
OSの(+)入力は、対応するコンパレータの「実際の」入力とみなされることに留意されたい。コンパレータ23の実際の(+)入力及び(−)入力は、それぞれ、V
FB−及びV
IN−に結合される。コンパレータ24の実際の(+)入力及び(−)入力は、それぞれ、V
FB+及びV
IN+に結合される。コンパレータ25の実際の(+)入力及び(−)入力は、それぞれ、V
IN+及びV
FB+に結合される。コンパレータ26の実際の(+)入力及び(−)入力は、それぞれ、V
IN−及びV
FB−に結合される。
【0056】
コンパレータ23、24、25、及び26の出力は、それぞれ、NORゲート22の4つの入力に接続される。チョッパイネーブル信号CHOP_ENは、NORゲート22によって導体21上に生成される。各コンパレータ23、24、25、及び26の内蔵オフセット電圧V
OSは、約10ミリボルトよりもいくらか小さくし得る。
【0057】
このように、チョッパ安定化増幅器20Aの入力ΔV=V
IN+−V
FB+は、前述の内蔵オフセットV
OSを有するコンパレータへの入力である。このΔVがこのコンパレータの内蔵V
OSを超える場合、入力チョッパ2Aはディセーブルされる。また、同じ入力ΔVが別のコンパレータの相対の(+)及び(−)入力の間に印加され、このΔVがこのコンパレータの内蔵オフセットV
OSを超える場合、入力チョッパ2Aがディセーブルされる。同様に、チョッパ安定化増幅器20Bの入力ΔV=V
IN−−V
FB−が、前述の内蔵オフセットV
OSを有するコンパレータへの入力である。このΔVがこのコンパレータの内蔵オフセットV
OSを超える場合、入力チョッパ10Aはディセーブルされる。また、同じ入力ΔVがさらに別のコンパレータの相対の(+)及び(−)入力の間に印加され、このΔVがこのコンパレータの内蔵Voffsetを超える場合、入力チョッパ10Aはディセーブルされる。
【0058】
しかし、
図4の構造は、ΔVがオフセット電圧V
OS未満の場合、漏れ電流I
LEAKAGEを完全になくすようには動作しない。
図4の構造及び技術は、電圧ΔVをV
OSまで増加させてしまうという欠点を有する。これは、ΔV=V
OSに対応するある量の入力漏れ電流I
LEAKAGEが許容されなければならないことを意味する。また、入力チョッパ2A及び10Aは、増幅器のスルーイングの間、又は、増幅器のフィードバックループ利得が不充分な場合、ディセーブルされることがあり、望ましくない。したがって、多くのアプリケーションでは、
図4に示す「入力飽和検出」技術よりも
図2に示す「出力飽和検出」技術が好ましい。
【0059】
本発明は、計装増幅器同様、単一の通常のチョッパ安定化増幅器にも適用可能であることを理解されたい。例えば、
図2で、利得抵抗R1の下側端子18が接地又はV
SSに接続され、コンパレータ23及び25並びに2入力NORゲート22と組み合わされるチョッパ安定化増幅器20Aは、本発明に従って単一のチョッパ安定化増幅器を提供し得る。
【0060】
本発明の説明した実施形態の1つの利点は、DSPなどが、デジタル化された増幅器出力データに基づいて飽和又は飽和に近い状態をまず認識し、次いで、I
LEAKAGEを低減するための是正措置を講じるために必要とされる実質的な遅延の間過大な入力漏れ電流I
LEAKAGEが回避されることである。代わりに、飽和又は飽和に近い状態の認識及び入力チョッピングディスエーブル信号の生成が、デジタルドメインではなくアナログドメインにおいて極めて迅速に行われる。
【0061】
本発明の説明した実施形態の別の利点は、チョッパ安定化増幅器内で提供される局所フィードバックにより極めて速い是正措置が自動的に実行されることが保証されること、及び、チョッパ安定化増幅器のユーザが過度な漏れ電流I
LEAKAGEについて関与する必要がないことである。
【0062】
本発明の説明した実施形態のさらに別の利点は、チョッパ安定化増幅器の出力信号がその適切な範囲内に入ると付加的な回復時間の必要がないことである。
【0063】
このように、本発明の説明した実施形態は、チョッパ安定化増幅器内の局所フィードバックを提供し、その中で増幅器の出力が飽和又は飽和に近い状態になると素早い是正措置が講じられる。より詳細には、本発明は、増幅器出力の過負荷又は飽和の結果入力漏れ電流が所定の制限を超えて増加することを、飽和が存在するか又は差し迫っているかを判定することによって、防ぐチョッパ安定化増幅器を提供する。飽和が存在するか又は差し迫っている場合、増幅器への入力のチョッピングがディセーブルされる。
【0064】
ANDゲートの使用及びNORゲートの使用が開示されているが、これは定義を目的とするものであり、本明細書で用いられる「OR演算するゲート」という用語はORゲート又はNORゲートのいずれかを含むことが意図され、本明細書で用いられる「AND演算するゲート」という用語はANDゲート又はNANDゲートのいずれかを含むことが意図されていることを理解されたい。そして、当然のことながら、「AND演算する」ゲートは「負論理」入力に対して「OR演算」機能を実施し得、「OR演算する」ゲートは負論理入力に対して「AND演算」機能を実施し得る。
【0065】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した実施形態に改変をなし得ること、及び多くの他の実施形態が可能であることが本発明が関連する当業者には理解されよう。