(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インナーロッドおよび前記アウターチューブと同心状に整列した最外部チューブを更に含み、前記アウターチューブと前記最外部チューブとの間に外側流路が規定される、請求項1に記載のノズル。
前記インナーロッドが前記ノズルのスプレイエンドにセンターピースを含み、前記アウターチューブが前記ノズルのスプレイエンドに末端部分を含み、前記センターピースが前記末端部分に対して凹部を有する、請求項1に記載のノズル。
前記インナーロッドが前記ノズルのスプレイエンドにセンターピースを含み、前記アウターチューブが前記ノズルのスプレイエンドに末端部分を含み、前記センターピースが前記末端部分に対して延在している、請求項1に記載のノズル。
前記少なくとも1つの帯電可能なノッチが複数のノッチを含み、前記複数のノッチが互いに間隔を空けて配置され、前記複数のノッチが帯電している時に、前記複数のノッチの1つにより作られる電界が前記複数のノッチの近接するノッチにより作られる電界によって妨げられない、請求項1に記載のノズル。
前記少なくとも1つの帯電可能なノッチが第1ノッチおよび第2ノッチを含み、前記第1ノッチおよび第2ノッチが互いに間隔を空けて配置され、電圧が前記第1ノッチおよび第2ノッチに供給されている時、前記第1ノッチによって作られる電界が前記第2ノッチによって作られる電界を妨げない、請求項10に記載のシステム。
前記インナーロッドおよび前記アウターチューブと同心状に整列した最外部チューブを提供し、前記アウターチューブと前記最外部チューブとの間に外側流路が形成されることと、
前記外側流路を通してシース液を送り出すことと、
をさらに含む請求項15に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、例示的な電気スプレイシステムの配線図である。
【
図2】
図2は、
図1のシステムと共に使用され得る例示的なノズルの断面図である。
【
図7】
図7は、いくつかの数のノズルに対して、安定したマルチジェット操作を確立するために印加する電圧を示すグラフである。
【
図8A】
図8A〜
図8Cは、6個、12個および20個のノッチを備えるノズルについてのスプレイ電流を、適用する電圧の関数として示すグラフである。
【
図8B】
図8A〜
図8Cは、6個、12個および20個のノッチを備えるノズルについてのスプレイ電流を、適用する電圧の関数として示すグラフである。
【
図8C】
図8A〜
図8Cは、6個、12個および20個のノッチを備えるノズルについてのスプレイ電流を、適用する電圧の関数として示すグラフである。
【
図9】
図9は、液体流量の最大値を噴霧液の導電率の関数として示すグラフである。
【
図10】
図10は、液体シートノズルの液体流量の最大値の、単一細管ノズルの液体流量の最大値に対する比率を示すグラフである。
【
図11】
図11は、
図1のシステムと共に使用され得る例示的なノズルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態は、凝集していない単分散の液滴を製造するように液体シート(または自由液膜、a liquid sheet)を用いる電気流体力学的噴霧を提供する。既知の電気スプレイ(ES)システムで用いられる細管/管とは対照的に、出口スリットの開口(exit slit opening)を備えるノズルは、噴霧液がスリットの開口から出るので、噴霧液を薄い液体シートに形成する。安定したマルチジェット操作は、スリットの端部に沿ってノッチを含むことにより達成される。ノッチは液体シートをマルチジェットに分離し、定着した(anchoring)安定的なマルチジェット操作を提供する。すなわち、それぞれのノッチが、ノズルの周りで対応するジェットが移動するのを防ぐことにより、対応するジェットを定着させ(anchor)、実質的にジェットの位置を固定(fix)する。いくつかの実施形態において、液体シートの電気スプレイ技術および本明細書に記載するノズルは、高質量の処理能力および多目的の多重化スプレイシステムを提供し、一方で技術的な労力(engineering effort)と高い製造コストを低減する。
【0009】
例示的な電気スプレイシステム100の配線図を
図1に示す。システム100は、シリンジポンプ102、ノズル104および高電圧源106を含む。ひとつの例示的な実施形態においてシリンジポンプ102は、Harvard Apparatus PHD2000シリーズのポンプである。あるいは、シリンジポンプ102は、システム100が本明細書に記載のように機能することを可能とする任意のポンプである。
【0010】
高電圧源106は、ノズル104のスプレイエンド108に電圧を印加することができるように、ノズル104につながっている。1つの例示的な実施形態において、高電圧源106は、13kVから16kVの範囲の電圧をスプレイエンド108に供給する。あるいは高電圧源は、システム100が本明細書に記載するように機能することができる任意の電圧をノズル104に印加してもよい。
【0011】
システム100はまた、モニタリングシステム110も含む。モニタリングシステム110は、顕微鏡レンズ112、デジタルカメラ114、モニター116およびコンピューター118を含み、ノズル104により作られたスプレイをモニタリングシステム110が観察することができる。
【0012】
システム100はまた、電流システム120も含む。電流システム120は、接地124と電気的につながり、また抵抗器128を越えてリング126に電気的につながる回路計(またはマルチメーター、multimeter)122を含む。抵抗器128を越える電圧を測定することで、電流システム120はノズル104により作られたスプレイの電流を測定することができる。回路計122を通って、リング126も接地124に電気的につながる。
【0013】
図2は、システム100とともに用いることができる、例示的なノズル200の断面図である。ノズル200はソースエンド202およびスプレイエンド204を含む。ノズル200は、ノズル200の縦軸210に沿ってアウターチューブと同軸状に整列したインナーロッド206を含む。環状流路212はアウターチューブ208の内表面214とインナーロッド206の外表面216との間に規定される。スプレイエンド204で、環状流路212は円形スリット218になる。1つの例示的な実施形態において、円形スリット218の内径220は2950μmであり、円形スリット218の外径222は3250μmであり、円形スリット218の幅224は150μmである。あるいは、円形スリット218は、ノズル200が本明細書で記載するように機能することができる任意の寸法を有してよい。
【0014】
操作中、シリンジポンプ102は圧力を噴霧液に印加し噴霧液はノズル200に向かって押され、ノズル200のソースエンド202で受けられる。噴霧液はそれから、環状流路212に均一に分配され、円形スリット218から薄い液体シートとして放出される。
図2に示す1つの例示的な実施形態において、放出される液体シートは実質的に円筒形状である。
【0015】
ノズル200はさらに、円形スリット218に近接する1つ以上のノッチ230を含む。本明細書で使用される“ノッチ”は、ノズル200のスプレイエンド204から伸びるノッチ230のような、ノズルのスプレイエンドから伸びて突き出た要素を意味する。例えば、このようなノッチは、このようなノッチで分けられたスプレイエンドの他の領域よりもさらにスプレイジェットの方向に伸びても、または突き出してもよい。1つの例示的な実施形態において、ノッチ230はインナーロッド206およびアウターチューブ208の両方の上に位置する。あるいは、ノッチ230はインナーロッド206またはアウターチューブ208のどちらかの上にのみ位置してもよい。高電圧源106がノズル200のスプレイエンド204に電圧を印加するとき、ノッチ230の形状と構成が、ノッチ230における電界の局所的な向上を容易にする。噴霧液が円形スリットに達するとき、噴霧液は環状流路212の形状により薄い液体シートとしてノズル200を出て行く。ノズル200のスプレイエンド204に印加される十分に高い電圧により、液体シートは複数のジェットへ分けられる。それぞれのノッチ230で局所的に高まった電界により、それぞれのジェットはノッチ230の1つに位置する。さらにスプレイエンド204に印加される十分に高い電圧により、安定したマルチジェット操作が達成され得る。いくつかの実施形態において、“安定したマルチジェット操作”は、噴霧液のジェットがノズル200上のノッチ230のそれぞれから放出されることを意味する。
【0016】
図3Aおよび
図3Bは、
図1のシステムとともに使用され得る例示的なノズル200の斜視図である。
図4Aおよび
図4Bは、
図3Aおよび
図3Bで示すノズル200の平面図である。
図3Aおよび
図4Aで示す実施形態は、6個のノッチ230を含み、
図3Bおよび
図4Bに示す実施形態は20個のノッチ230を含む。ノッチ230は円周方向の距離240ずつ、円周方向に互いに間隔を空けて配置している。いくつかの実施形態において、円周方向の距離240はノッチ230の寸法以上である。円周方向の距離240は、増大された電界領域を維持しながら、ノッチ230の数が最大限になるように選択される。すなわち、ノッチ230間の円周方向の距離240が小さすぎると、1つのノッチ230に発生する電界が近接するノッチ230に発生する電界を妨げるであろう。しかし、ノッチ230間の円周方向の距離240が増大すると、より少ないノッチ230がノズル200上に位置することができる。より少ないノッチ230によって、より少ないジェットが作られ、そしてノズル200の全体的な処理質量は減少する。
【0017】
図5A〜
図5Cは、噴霧液の複数のジェット250を作るノズル200の画像である。
図5A、5Bおよび5Cのノズル200は、それぞれ6個、12個、20個のノッチ230を含む。
【0018】
図6A〜
図6Lは、
図1のシステムに用いられ得る例示的なノズル300の断面図である。
図6A〜
図6Lに示す実施形態により実現されるように、ノズル300のいくつかの異なる構成はノズル300が本明細書で記載するように機能することができる。さらに、ノズル300の構成は、本明細書に具体的に記載されるものに限定するものでない。
【0019】
図6A〜6Lのそれぞれのノズル300は、ソースエンド302およびスプレイエンド304を含む。さらに、それぞれのノズル300は、ノズル300の縦軸310に沿ってアウターチューブ308の同軸上に整列したインナーロッド306を含む。環状流路312は、アウターチューブ308の内表面314とインナーロッド306の外表面316との間に規定される。スプレイエンド304で、環状流路312は円形スリット318になる。さらに、スプレイエンド304でインナーロッド306はセンターピース(center piece)320を含み、アウターチューブ308は末端部分(またはエンドポーション、end portion)を含む。それぞれのノズル300はまた、
図2に示すノッチ230と実質的に同様に機能する複数のノッチ330を含む。
図6A〜
図6Lの実施形態は、それぞれを以下に詳細に記載する。
【0020】
図6Aに示すノズル300の実施形態において、インナーロッド306とアウターチューブ308の両方ともがノッチ330をその上に含む。さらに、センターピース320は末端部分322に対して、凹部を有しておらず、または延在していない。
図6Aに示す実施形態に操作する間、噴霧液は円形スリット318から放出される。
【0021】
図6Bに示すノズル300の実施形態において、アウターチューブ308だけがその上にノッチ330を含む。すなわち、インナーロッド306はノッチ330を含まない。さらに、センターピース320は末端部分322に対して凹部を有している。
図6Bに示す実施形態の操作の間、噴霧液は円形スリット318から放出される。
【0022】
図6Cに示すノズル300の実施形態は、
図6Cに示す実施形態がインナーロッド306通って規定される中央流路340を含むことを除いては、
図6Aに示す実施形態と実質的に同様である。同様に、
図6Dに示すノズル300の実施形態は、
図6Dに示す実施形態がインナーロッド306を通って規定される中央流路340を含むことを除いては、
図6Bに示す実施形態と実質的に同様である。
図6Cおよび
図6Dの実施形態において、安定化ガスは中央流路340から放出される。放出されるガスは、噴霧液が円形スリット318から放出されるときに、噴霧液の薄い液体シートの形状を維持することを容易にする。
【0023】
図6Eおよび
図6Fに示すノズル300の実施形態は、安定化ガスの代わりに安定化液体が中央流路340から放出されることを除いては、それぞれ
図6Cおよび
図6Dに示す実施形態と実質的に同様である。安定化ガスと同様に安定化液体は、噴霧液が円形スリット318から放出されるときに、噴霧液の薄い液体シートの形状を維持することを容易にする。
図6Gに示すノズル300の実施形態は、センターピース320が末端部分322に対して延在していることを除いては、
図6Fに示す実施形態と実質的に同様である。
【0024】
図6Hおよび
図6Iに示すノズル300の実施形態は、
図6Hおよび
図6Iの実施形態がさらに2つ目のアウターチューブ350を含むことを除いては、
図6Cおよび
図6Dに示す実施形態とそれぞれ実質的に同様である。2つ目のアウターチューブ350は、アウターチューブ308と同心状に整列し、2つ目の環状流路352は、アウターチューブ308の外表面354と2つ目のアウターチューブ350の内表面356との間に規定される。2つ目の環状流路352は、スプレイエンド304で2つ目の円形スリット360になる。
【0025】
図6Hおよび
図6Iに示す実施形態において、2つ目のアウターチューブ350はその上にノッチ330を含む。1つ目の円形スリット318から放出される噴霧液に加えて、シース液(sheath liquid)が薄い(または細い、thin)液体シートの形状で2つ目の円形スリット360から放出される。噴霧液およびシース液(両方ともにノズル300から放出される)があることにより、粒子の封入(または被覆、encapsulation)が容易になり、ノズル300から作られる粒子は、シース液の粒子により封入された噴霧液の粒子および/または噴霧液の粒子により封入されたシース液の粒子を含む。
図6Cおよび
図6Dに示す実施形態と同様に、中央流路340から放出される安定化ガスは、噴霧液およびシース液の薄い液体シート形状を維持することを容易にする。あるいは、
図6E〜
図6Gと同様に、安定化ガスは中央流路340から放出されてもよい。
図6Jに示す実施形態は、センターピース320が末端部分322に対して延在していることを除いては、
図6Iに示す実施形態と実質的に同様である。
【0026】
図6Kに示すノズル300の実施形態は、
図6Kに示す実施形態がさらに3つ目のアウターチューブ370を含むことを除いては、
図6Hに示す実施形態と実質的に同様である。3つ目のアウターチューブ370は2つ目のアウターチューブ350と同心状に整列し、3つ目の環状流路372は2つ目のアウターチューブ350の外表面374と3つ目のアウターチューブ370の内表面376との間に規定される。3つ目の環状流路372はスプレイエンド304で円形スリット380になる。
【0027】
図6Kに示す実施形態において、3つ目のアウターチューブ370はその上にノッチ330を含む。1つ目の円形スリット318から放出される噴霧液および2つ目の円形スリット360から放出されるシース液に加えて、3つ目の円形スリット380から外周液(outer liquid)が薄い液体シートの形状で放出される。1つ目の円形スリット318、2つ目の円形スリット360および3つ目の円形スリット380からの液体の放出は、粒子の封入および多層粒子(multilayered particles)の製造を容易にする。
図6Cおよび
図6Dに示す実施形態と同様に、中央流路340から放出される安定化ガスは、放出される液体の薄い液体シート形状を維持することを容易にする。あるいは、
図6E〜
図6Gと同様に安定化液体が中央流路340から放出されてもよい。
【0028】
円形スリット318、360および380が階段形状に構成され、アウターチューブ308が2つ目のアウターチューブ350に対して延在し、2つ目のアウターチューブ350が3つ目のアウターチューブ370に対して延在していることを除いては、
図6Lに示す実施形態は
図6Kに示す実施形態と実質的に同様である。階段形状により、
図6Kに示す実施形態よりも低い電圧を
図6Lに示す実施形態に印加して、安定したマルチジェット操作を達成してもよい。
図6Lおよび
図6Kに示す実施形態において、3つ目の円形スリット380から放出される外周液は、1つ目の円形スリット318から放出される噴霧液および2つ目の円形スリット360から放出されるシース液のうち少なくとも一方と同じ液体であってよい。あるいは、噴霧液、シース液および外周液は、全て異なる液体であってもよい。さらに、
図6A〜
図6Lに示す実施形態において、特定の流路がガスまたは液体を含むように示されるが、その他にも、ノズル300が本明細書に記載されるように機能できるように、任意の適切な流体(すなわち、ガス、液体)が任意の流路に供給されてもよい。
【0029】
本明細書に記載するノズルを使用して複数の実験が実行された。以下の例では、イソプロパノールを噴霧液として選択し、硝酸をイオン添加剤として使用し、噴霧液の導電率を0.0079μS/cm(純イソプロパノール)から1,044μS/cmまで変化させた。噴霧液の導電率は導電率計(Orion 162A、Thermo Electron Corporation)により測定され、純イソプロパノールの電気抵抗率は研究室で作成した液体セルにより測定した。あるいは、当業者なら容易に理解するように、システム100が本明細書に記載するように機能することができる任意の噴霧液が使用されてよい。
【0030】
図7は、異なる数のノッチを有するノズルに対する、安定したマルチジェット操作を確立ために印加する電圧を示すグラフである。グラフは、印加する電圧がノッチの数とともに増加することを実証する。また、安定したマルチジェット操作の確立のために印加する電圧も、供給する噴霧液の流量にわずかに比例するということもわかる。
【0031】
1つの実施例において、複数のジェット形成の発達(または変遷、evolution)を調べるため、スプレイ電流が測定され、印加する電圧が連続的に上昇しそれから低下させたときのジェットの数が数えられた。
図8A〜
図8Cは、6個、12個および20個のノッチを備えるノズルのそれぞれについてのスプレイ電流を、印加する電圧の関数として示すグラフである。スプレイ電流およびジェットの数は印加する電圧の上昇に伴って増加した。安定したマルチジェット操作(ジェットの数がノッチの数と同じである)は、十分に高い印加電圧で達成された。印加する電圧が低下すると、ジェットの数はそれに応じて減少した。さらに、グラフに示すように、ヒステリシス現象が観測された。
【0032】
他の実施例において、ノズルの質量処理能力を決定するために、様々な導電率の噴霧液を用いてノズル操作に対する最大液体流量(Qmax)を見出した。
図9は、最大液体流量を噴霧液の導電率の関数として示したグラフである。グラフは、噴霧している液体の導電率が上昇するにつれてQmaxの値が著しく低下し、高い導電率を有する噴霧液であるほど、安定したマルチジェット操作を確立するのにより強い電界を一般的に使用するという事実に起因することを実証する。グラフはまた、ノッチの数が増加するにつれてQmaxが増加することも実証する。これは、ノッチの数が多量であるほどより多くのジェットを確立することができ、これにより噴霧液の流量および全体の質量処理能力が増加するためである。
【0033】
図10は、既知の単一細管ノズルの最大液体流量に対する本明細書に記載の液体シートノズルの最大液体流量の比率を、噴霧液の導電率の関数として示すグラフである。この例において、単一細管ノズルの直径および液体シートノズルの円形スリットの幅は、ともに150μmである。
図10のグラフ内に示すように、0.0079μS/cmの導電率の噴霧液を使用するとき、20個のノッチを備える液体シートノズルの最大液体流量、すなわちQmaxは、単一細管ノズルの最大流量よりも166倍大きかった。さらに、1,044μS/cmの導電率の噴霧液を使用するとき、20個のノッチを備える液体シートノズルの最大液体流量は、単一細管ノズルの最大液体流量よりも70倍大きかった。
【0034】
とりわけ、20個のノッチを備える液体シートのノズルのQmaxの値は、20個の単一細管ノズル全体の液体流量の合計よりも、はるかに高い。この同様の現象は、6個および12個のノッチを備える液体シートノズルを使用しても観測される。これは、単一細管ノズルの既存の一次元配列および二次元配列に比べて、液体シートノズルが、広い範囲の導電率を有する噴霧液の質量処理能力を劇的に増加させる可能性を持っていることを意味する。
【0035】
図11は、システム100で使用することができる代替ノズル500の平面図である。
図12は、
図11で示すノズル500の斜視図である。1つの実施形態において、ノズル500は第1プレート502、第2プレート504、ソースエンド506およびスプレイエンド508を含む。平面的な流路510は、第1プレート502と第2プレート504との間に規定される。平面的な流路510は、スプレイエンド508で線形のスリット512になる。操作中、噴霧液は線形のスリット512からのノズル500から放出される。ノズル200から放出される薄い液体シートが実質的に円筒形状であるのに対し、ノズル500から放出される薄い液体シートは実質的に平面状である。
【0036】
1つの例示的実施形態において、複数のノッチ514は、第1プレート502および第2プレート504の両方の上に位置し、互い違いとなる。あるいは、ノッチ514は、第1プレート502と第2プレート504のうちの1つの上にのみ位置してもよい。ノッチ514に電圧を印加することで、ノッチ514は薄い液体シートを複数のジェットに分離しやすくなり、実質的にノズル200のノッチ230と同様である。
【0037】
図1〜6L、11、12に示すノズルは、液体シートを放出するための例示的な手段を構成する。さらに、
図2〜6L、11、12に示すノッチは、ノズルから放出された液体シートをマルチジェットに分離するための例示的な手段を構成する。さらに、
図6C〜6Lに示すノズルは、ノズルから放出される液体シートの形状を維持するための例示的な手段を構成する。
【0038】
本明細書で具体的に記載される円筒形状および平面状のノズルに加えて、当業者なら容易に理解するように、本明細書で記載するようにシステム100を機能することができる任意のノズルの形状および/または構成が利用されてもよい。
【0039】
本明細書で記載する実施形態は、薄い液体シートを作り出すノズルを用いる電気流体力学的噴霧、すなわち電気スプレイ(ES)を可能にする。本明細書で記載の方法およびシステムはESシステムの質量処理能力を増加し、複数の単一細管ノズルを用いる既知のESシステムに比べて構成費用および製造費用を低減する。本明細書で記載するノズルは、噴霧液の薄い液体シートを放出するよう構成される環状および/または平面状のスリットを含む。薄い液体シートを複数のジェットに分離するように、またそのジェットを安定的な操作のために固定するように、複数のノッチが環状および/または平面上スリットに含まれる。すなわち、それぞれのノッチは、対応するジェットがノズルの周りに移動するのを防ぐことにより、その対応するジェットを固定し、実質的にその対応するジェットの位置を固定する。本明細書に記載するノズルに電圧が印加されるとき、これらのノッチの局所的な電界の増大が可能になる。さらに、本明細書に記載のノズルの安定的なマルチジェット操作は、様々な導電率を有する噴霧液の広範囲にわたって確立することができる。
【0040】
さらに、複数列の(an arrays of)単一細管ノズルを用いる既知のESシステムに比べて、複数の液体流れの給水流路および/または分配流路は、本明細書に記載するノズルにはもはや必要でない。このように、本明細書に記載するノズルの構成概念および製作は既知のノズルよりも単純であり、ノズルの構成および/または配置の融通(または柔軟性、flexibility)を可能とする。
【0041】
本明細書で記載するノズルを利用した実験を通して、ジェットの数および液体流量の両方ともが増加するにつれ、安定したマルチジェット操作を確立するために印加される電圧が増加することが実証された。さらに、本明細書で記載するノズルを通る最大の運用流量は、噴霧液の導電率の関数となった。さらに、いくつかの数のノッチを備える液体シートノズルの最大流量は、並べられた同数の単一細管ノズルの総流量合計よりも常に大きくなる。その結果、本明細書で記載する液体シートノズルは優れたES技術を可能とする。さらに、噴霧液の液体シートの形状は、既知の単一細管ノズルから放出されるコーンジェットとは対照的に、ノズルのデザインが、限定されるものではないが、環状および/または平面上のスリットを含む様々な幾何学形状を有することを可能にする。
【0042】
本明細書で例示および記載する開示の実施形態での操作の遂行または実行(execution or performance)の順序は、特に明記しない限り、不可欠な要素ではない。すなわち、特に明記しない限り、任意の順序で操作を遂行してよく、開示の実施形態は、追加的な操作を、または本明細書に記載されるよりも少ない操作を含んでよい。例えば、別の操作の前、同時または後に特定の操作の実行または遂行をすることは、開示の態様の範囲内である。
【0043】
開示の態様またはその実施形態の要素を取り上げるとき、冠詞“a”、“an”、“the”および“said”は、1つ以上の要素があることを意味することを目的とする。“〜を含む(comprising)”、“〜を含む(including)”および“〜を有する”は、包括的であり、記載された要素以外に付加的な要素があってもよいことを意味することを意図する。
【0044】
ここに書かれた記載は、実施例を用いて最良の形態を含む開示を公開し(disclose the disclosure)、また当業者が、任意の装置またはシステムを作ること、および用いること、ならびに任意の取り込まれた方法を実行することを含む開示を実行することも可能である。本開示の特許を受けることが出来る範囲は、請求項によって規定され、また当業者が思いつく他の実施例を含んでもよい。このような他の実施例は、それらが、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言と均等な構造要素を有する場合、当該特許の範囲内であることが意図される。
なお、本発明は、以下の態様を含む。
・態様1
インナーロッドと、
前記インナーロッドと同心状に整列するアウターチューブと、
前記インナーロッドと前記アウターチューブとの間に規定され、ノズルのスプレイエンドに円形スリットを形成する環状流路と、
前記円形スリットに近接する前記インナーロッドと前記アウターチューブの、少なくとも一方の上に位置する少なくとも1つの帯電可能なノッチと、
を含む電気流体力学的噴霧のためのノズル。
・態様2
前記インナーロッドが、その内部を通って規定される中央流路を含む、態様1に記載のノズル。
・態様3
前記中央流路が、その内部を通る安定化ガスおよび安定化液体の少なくとも一方の流れを容易にするように構成される、態様2に記載のノズル。
・態様4
前記インナーロッドおよび前記アウターチューブと同心状に整列した最外部チューブを更に含み、前記アウターチューブと前記最外部チューブとの間に外側流路が規定される、態様1に記載のノズル。
・態様5
前記最外部チューブ上に位置する少なくとも1つの帯電可能なノッチを更に含む、態様4に記載のノズル。
・態様6
前記少なくとも1つの帯電可能なノッチが、前記インナーロッドと前記アウターチューブのどちらか一方にのみ位置する、態様1に記載のノズル。
・態様7
前記インナーロッドが前記ノズルのスプレイエンドにセンターピースを含み、前記アウターチューブが前記ノズルのスプレイエンドに末端部分を含み、前記センターピースが前記末端部分に対して凹部を有する、態様1に記載のノズル。
・態様8
前記インナーロッドが前記ノズルのスプレイエンドにセンターピースを含み、前記アウターチューブが前記ノズルのスプレイエンドに末端部分を含み、前記センターピースが前記末端部分に対して延在している、態様1に記載のノズル。
・態様9
前記少なくとも1つの帯電可能なノッチが複数のノッチを含み、前記複数のノッチが互いに間隔を空けて配置され、前記複数のノッチが帯電している時に、前記複数のノッチの1つにより作られる電界が前記複数のノッチの近接するノッチにより作られる電界によって妨げられない、態様1に記載のノズル。
・態様10
電気流体力学的噴霧のシステムであって、
ノズルであって、
ソースエンドと、
スプレイエンドと、
第1表面を含む第1部品と、
第2表面を含む第2部品と、
第1表面と第2表面との間に規定され、前記ノズルの前記スプレイエンドに出口スリ
ットを形成する流路と、
前記出口スリットに近接する前記第1部品および前記第2部品の少なくとも一方の上
に位置する、少なくとも1つの帯電可能なノッチと、
を含むノズルと、
前記ノズルに電気的につながれ、前記少なくとも1つの帯電可能なノッチに電圧を供給するように構成された電源と、
前記ノズルの前記ソースエンドで流体連通し、前記ノズルを通る噴霧液を押し出すように構成されるシリンジポンプと、
を含む電気流体力学的噴霧のシステム。
・態様11
前記第1部品が第1プレートを含み、前記第2部品が第2プレートを含み、前記流路が実質的に平面状である、態様10に記載のシステム。
・態様12
液体シートの放出のためのノズル手段をさらに含む、態様10に記載のシステム。
・態様13
前記ノズルから放出される液体シートを複数のジェットに分離するためのノッチ手段をさらに含む、態様10に記載のシステム。
・態様14
前記ノズルから放出される液体シートの形状を維持するための手段をさらに含む、態様10に記載のシステム。
・態様15
前記少なくとも1つの帯電可能なノッチが第1ノッチおよび第2ノッチを含み、前記第1ノッチおよび第2ノッチが互いに間隔を空けて配置され、電圧が前記第1ノッチおよび第2ノッチに供給されている時、前記第1ノッチによって作られる電界が前記第2ノッチによって作られる電界を妨げない、態様10に記載のシステム。
・態様16
電気流体力学的噴霧の方法であって、
ノズルであって、インナーロッド、前記インナーロッドと同心状に整列したアウターチューブ、前記インナーロッドと前記アウターチューブとの間に規定される環状流路、前記ノズルのスプレイエンドに円形スリットを形成する前記環状流路および前記円形スリットに近接する前記インナーロッドおよび前記アウターチューブの少なくとも一方の上に位置する複数のノッチ、を含むノズルを提供することと、
前記複数のノッチに電圧を供給することと、
前記ノズルの前記環状流路を介して噴霧液を送り出すことと、
を含む方法。
・態様17
前記インナーロッドが、その内部を通って規定される中央流路を含み、前記方法が、前記中央流路を通じて安定化ガスを送り出すことをさらに含む、態様16に記載の方法。
・態様18
前記インナーロッドが、その内部を通って規定される中央流路を含み、前記方法が、前記中央流路を通じて安定化液体を送り出すことをさらに含む、態様16に記載の方法。
・態様19
前記インナーロッドおよび前記アウターチューブと同心状に整列した最外部チューブを提供し、前記アウターチューブと前記最外部チューブとの間に外側流路が形成されることと、
前記外側流路を通してシース液を送り出すことと、
をさらに含む態様16に記載の方法。
・態様20
電圧の供給が、前記複数のノッチのそれぞれで噴霧液のジェットが形成されるような電圧の提供を含む、態様16に記載の方法。